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2014年12月12日 (金)

統計力学の基礎(6)(量子統計力学4)

 統計力学の基礎概念への脱線から離れて,再び,量子統計力学3の

続きです。

 

経路積分と摂動論に戻る最後の関門の第2量子化とGreen関数

について記述します。

 

今日は,まず,第2量子化について述べます。

そのため,最初はBose統計に従う粒子に着目します。

 

粒子数の演算子rを考えます。

添字rは具体的にはBoseスカラー粒子なら波数(運動量)だけ

ですが,Fermi粒子かスピンが1のBose粒子ならスピン変数をσ

としてr=(,σ)などを意味します。

 

便宜上,適宜この添字rを省略して個数演算子を,その固有値

nを持つ状態を,ケットベクトル |n>で記述します。

|n>=n|>です。

 

固有値nは整数値のみを取り,固有ベクトル|n>は

<m|n>=δmn直交規格化されているとします。

 

こうしたの固有状態に対して次のような作用を及ぼす演算子 

,を導入します。

 

すなわち, |n>=n1/2|n-1>,

|n>=(n+1)1/2|n+1> なる作用です。

 

つまり,は粒子数を1つ減らす演算子,は1つ増やす演算子

です。そこでを消滅演算子,を生成演算子と呼びます。

 

これらは状態のケットにのみに作用して,その係数には作用せず

素通りするとします。

 

すると|n>=n1/2|n-1>=n|n>, 

aa|n>=(n+1)1/2|n+1>=(n+1)|n>

が成立します。

 

それ故,が,個数演算子の役割をすることがわかります。

 

そじで添字rを復活させると,rrrです。

 

,の行列要素をつくると,任意のm,nに対して, 

<m||n>=n1/2<m|n-1>=n1/2δm,n-1であり, 

<n||m>=(m+1)1/2δm,n+1=n1/2δm,n-1ですから 

<n||m>=<m||n>* が成立します。

 

したがって,のHermite共役です。

よって,rrのHermite共役です。

 

そこで,上添字+(ダガー)を文字通り演算子のHermite共役を意味

する記号と考えれば,r=(rr)rrrとなるため

rは実数のみを固有値とするHermite演算子なので,この意味では

定義は無矛盾です。 

 

また,|n>=n|n>,aa|n>=(n+1)|n>より,

全ての|n>に対して,(aa|n>=|n>ですから,

aa=1 が成立します。

任意の演算子,に対して交換子[,]を

[,]≡ABBAで定義すれば, 

[,]=1と書けます。

一方,[,]=[,]=0 は自明です。

あるいは,これを一般化して[r,]=δrs,

[r,]=[,]=0 とします。

 

これは,異なる添字r≠sのr,の固有状態なら固有値が

同じnであっても直交し無関係であることを意味しますが,

これは例えば添字rが運動量意味するBose粒子では,異なる

での個数は無関係なので当然の規約です。

 

これらの交換関係は,改めて固有値と固有ベクトルの表現を添字

付きで,|n>=n|n>etc.とすれば,一般化された固有

ベクトルは,|..,n..,n..>=..|n>..|n>..の

ような直積表現と解釈され,

 

r≠sなら.|..,n..,n..>

=(n1/2(1/2|..,n-1 ..,n-1..> 

|..,n..,n..>,

 

|..,n..,n..>

=(n+1)1/2(n+1)1/2|..,n+1 ..,n+1..> 

=a|..,n..,n..>n..,n..>,

 

そして, 

|..,n..,n..>

=n1/2(n+1)1/2|..,n-1 ..,n+1..> 

=a|..,n..,n..>n..,n..>であり,

 

r=sなら,|..,n..,n..>

=(n+1)|..,n..,> 

(+1)|..,n..,n..>となりますから

明らかです。

 

Fermi統計に従うFermi粒子の場合,|n>=n|n

のnは0,1の2つの値しか取り得ないので,消滅,生成演算子

,|n>=n1/2|n-1>,

|n>=(n+1)1/2|n+1>で同じように定義しても,

 

固有状態 |n>としては,固有値nがn=0,1の状態

|0>,|1> の2つしか存在しないため,全ての作用を具体的に

書くことができて,|1>=|0>,|0>=|1>であり,

一方,|0>=|1>=0 でなければなりません。

 

それ故,|1>=0,|0>=0 です。 

また.|0>=0,|1>=0 も明らかですから

演算子として0です。

 

他方,|0>=|0>,|1>=|0>ですから, 

|1>=0, |0>=0の成立と合わせると, 

()|0>=|0>,

()|1>=|1> を得ます。

 

よって,Fermi粒子の場合は,任意の演算子,に対して

反交換子{,}{,}≡ABBAで定義して, 

{r,}=δrs,{r,}={,}=0  

と規約すれば,全ての辻褄があって無矛盾となります。

 

Fermi粒子でも個数演算子はであり,

|n>=n|nが成立します。

 

なお,粒子が存在しない状態 |0>に対しては,Fermi粒子だけ

でなくBose粒子でも|0>=0 が成立して,これ以上は粒子

を消滅させることができないとしています。

 

|0>に対してこのように規約すれば.Bose粒子の

|n>=n|nを満たす固有値nについても許される

のは非負の整数のみ:n=0,1,2..です。

 

そして,全てのrについての粒子がゼロの状態 |0>の直積で

与えられる全く粒子の存在しない状態 

|..,n..,n..>=|0,..,0...,0,..>を真空(vacuum)と

呼ぶことにします。

 

量子論では零点振動とか零点エネルギーと呼ばれる真空の

エネルギ-なるものの存在について論じられることもありますが

そうしたものは無視して,真空はHamiltomian の固有値がゼロ

の固有状態であるとします。

 

つまり,真空 |0,..,0...,0,..>はエネルギ^-がゼロの

基底状態(エネルギーの原点)であるとします。

 

すると,演算子は,εを添字rに対応する1粒子のエネルギー

として,=Σε=Σεと表現されます。

 

特に,粒子が自由粒子でr=(,σ)なら,ε=hc22/(2m)

です。

 

次に,とスピンsの関数としてこの粒子の場の演算子:

φσ(,s)を,φσ(,s)=V-1/2Σexp(ikx)δ(s,σ)

によって導入します。

 

ただし,δ(s,σ)はスピン部分の関数でδ(s,σ)はσ=s

のとき1でそれ以外はゼロの関数です。

 

スピンがゼロのBose粒子なら常にσ=s=0ですから,

δ(s,σ)=δ(s,0)≡1 であって,場はスカラー場

φ()≡φ0(,0)と表現されます。

 

一方,スピンが1/2のFermi粒子の場合,σ=±,で 

φ±(,s)=φ±()δ(±,s)と書くと,これは2成分が

φ±()のスピノール:(φ+(), φ())で表わされます。

 

さらに,スピンが1のBose粒子の場合,やはり,σ=1,-1,0の場

φσ(,s)φσ(,s)=φσ()δ(s,σ)と書いて,3成分

φ±(),φ0()の3行1列の列ベクトル

(φ+(),φ(),φ0())で表現されます。

 

そして,場φσ(,s)のHermite共役 φσ+(,s)を, 

φs+(,s)=V-1/2Σexp(-ikx)δ(s,σ)

とします。

 

改めて,交換子 [,]を[,],反交換子 {,}

を[,]と書くことにします。

つまり,[,]±AB-±BA(複号同順)です。

 

場の演算子に対しては,+の反交換子がFermi粒子,-の交換子

がBose粒子に対応して,交換関係,反交換関係: 

[φσ1(1) φσ2+(2)]±=δ3(12σ1,σ2, 

[φσ1(1) φσ12(2)]±=[φσ1+(1) ψσ2s2(2)]±=0  

が成立しています。

 

また,=Σεは,ポテンシャルUが存在する

場合,=∫d3xφσ+()[-hc22/(2m)+U()]φσ() 

と書けます。

 

何故なら,=Σε=Σεですが, 

簡単のためスピンがゼロのBose粒子を想定しrの添字rが運動量 

(波数)である場合を考えて,r()と書くことにすると, 

ε=ε()=2/(2m)+U() です。

 

ただし,U()はポテンシャルU()のfourier変換,または

位置共役な物理量である運動量表示のポテンシャル

です。

 

()=V-1∫d3U()exp(ikx)

⇔ U()=∫d3U()exp(-ikx) なる式で与えられます。

 

個数演算子もこの表示ではrrr()=()()

と書けます。

 

交換関係 [r,]=δrs,[r,]=[,]=0  

,r=1,s=2として,[(1)(2)]=δ3(12), 

[(1),(2)]=[(1),(2)]=0 となります。

 

故に,=Σε=∫d3ε()()() 

=∫d33ε()()(3 ()ですが, 

δ3 ()=V-1∫d3exp{-i()}なので, 

=V-1∫d3∫d3()exp(-ikx)

∫d3ε()()exp(ipx) 

=V-1/2∫d3xφ()∫d3[2/(2m)+]ε()

()exp(ipx) 

=∫d3xφ()[-hc22/(2m)+U()]φ()

となるからです。

 

(注釈):ここで第2量子化についての薀蓄を少し述べたく

なりました。

 

元々の通常の(第一量子化の)1粒子量子力学では

=-hc22/(2m)+U()であり,多粒子系では

=Σk{-hc22/(2mk)}+U(1,2..,)であった 

のに対して,

 第2量子化で全ての質量mkが同じmの同一粒子

ではH=∫d3φσ+()[-hc22/(2m)+U()]φσ()

と表現されるのには,どういう意味があるのでしょうか?

 

第2量子化(場の量子化)は波動関数を演算子と見なす操作で行う

ことが可能なため,量子論の基礎付けを根底から大転換する新理論

のように見えますが,実はそれほど重大な意味はなくて,単に表示

を位置座標表示表示から個数表示にユニタリ変換するだけの

表示の変換過ぎないと考えられます。

 

すなわち,抽象的なあるHilbert空間の状態ベクトルに作用

する線型作用素(演算子)としてHamiltonianを,運動量を

すると,2/(2m)+U です。

 

このとき,表示での演算子の行列要素は位置座標で対角化

されています。

 

つまり,表示では任意の演算子の行列要素<||>は

対角成分のみがゼロでない対角行列の形をしています。

 

 演算子が運動量なら,特にSchroedinger表現でのについて

表示では,<||>=-ihcδ3()であり,また,

ポテンシャル||>=U()]δ3()で与えられ

ます。

 

 Hについても,

||>=[-hc22/(2m)+U()]δ3() です。

 

多粒子系なら,位置座標が(1,2..,),および,

(1,2..,)の状態を挟むと,行列要素は,

1,2..,||1,2.., 

 =k|-hc2k2/(2mk)]+U(1,2..,)] 

 δ3(113(11)..δ3() です。

 

ただし,U(1,2..,)は,の行列要素が

1,2..,||1,2..,=U(1,2..,)

δ3(113(11)..δ3() なる対角成分

のみを持つとした多体系のポテンシャルを意味します。

 

状態 |Ψ>の波動関数,つまり位置表示での状態ベクトル

Ψ(1,2..,),|Ψ>に含まれる位置の固有状態

|1,2..,>の成分,

あるいは,その位置固有状態で展開した展開係数であって

粒子の存在確率の確率振幅を表わすものですから

Ψ(1,2..,)=<1,2..,|Ψ>なる式で与え

られます。

 

 ここで,便宜上,=(1,2..,)と略記すると,

 Ψ()=<|Ψ>です。

 

 そこで,

<Ψ||Ψ>=∫d<Ψ|><||><|Ψ> 

=∫d<Ψ()<||>Ψ() 

=∫d Ψ()()Ψ() となります。

 

ただし,ここでも<||=H()δ(),と書け

ますが,≡d3132..d3, 

δ()≡δ3(113(11)..δ3() 

と略記しました。

 

つまり,1粒子量子力学の波動関数ψ()で張られる2乗可積分

関数の状態空間に作用するHamiltonian演算子は

()=-hc22/(2m)+U()であり,多粒子系の波動関数

Ψ()で張られる2乗可積分関数の空間に作用するHamiltonian

演算子は()=Σk|-hc2k2/(2m)]+U()です。

 

一方,個数表示では,添字rを省略すると,

であり,|n>=(n!)-1/2()|0>です。

 

任意の演算子の個数表示による行列要素を表示での

完全系条件∫d><|=1を挿入して表示で展開

すると,

<m||n>=∫d<m|><||><|n>

であり,

一方,任意の状態におけるの期待値は

<Ψ||Ψ>=Σm,n<Ψ|m><m||n><n|Ψ> 

=Σn<Ψ|n>n<n|Ψ> と書けます。

 

ただし,<m||n>=Aδmn です。

 

特に,については,

<Ψ||Ψ>=Σm,n<Ψ|m><m||n><n|Ψ> 

=Σn<Ψ|n>n<n|Ψ>であり,

<m||n>=Hδmnです。

 

 この個数状態 |n>全体で張られる空間の状態に作用して

 <m||n>を与えるHamiltonian演算子については, 

 スカラー場のBose粒子の場合に,

 H=Σε

 =∫d3xφ()[-hc22/(2m)+U()]φ() 

 =∫d3xφ()()φ()で与えられることを既に

 見ました。

 

要するに,それぞれのが異なるのは,それが作用すべき状態

の作る状態空間が異なるためです。

第2量子化した場合も,単に状態空間が変わるだけで,本質的 

にそれらは,演算子の期待値,あるいは行列要素がどの空間でも

一致するようにユニタリ変換で結びついていて謂わゆる表示が

異なるだけで量子力学が新しくなったわけではありません。

(注釈終わり※)


 このところ,薀蓄=脱線注釈部分を書いていて参考書も

なく頭の中にある知見をヒケラかそうとする余り,文章の堂々巡りが多くて長時間を費やしてしまいいました。

※本ブログ2007年8/8の過去記事「量子力学の基礎(表示の話)(1)」, 

および,「量子力学の基礎(表示の話)(2)」も参照してください。

 

今日はここまでにします。


(参考文献):阿部龍蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会)


 PS:これに関連して,26歳(1976年)の春4月に一人で電車を

乗り継ぎ,途中東京で東大の友人のところに一泊し翌日青函

連絡船乗って早朝に船酔いでゲロを吐きつつ初めての北海道

に渡り,旅館に一泊後,北大に遠路はるばる博士課程を受けに行

ったのを思い出しました。


(※今は博士課程(大学院後期過程)もあるようですが当時

は私の在籍大学には修士課程しかありませんでしたから。。)


 テストは当然,修士
論文説明であろうと予想していたの

に,思いもかけず,研究室個室朝から晩まで期限無しで参考

書を見たり外出するのも自由の4,5問程度のペーパーテスト

を出されました。

 
 その第1問目が,Diracのテキストにあるような量子論の定式化

の話で,上記と同じような話を如何にして明快な解答にするか?

に夢中になった余り,堂々巡りの悪戦苦闘で,もちろん,参考書

などは持参してないし,まさか無期限で外出自由でも慣れない

札幌の地で大学内や外の図書館や本屋まで行って調べようと

いう気にもなりません。

(※慣れない一人旅で,心身もかなり疲れていました。)


 結局,第1問を考えているだけで夜の8時になり,往復5千円

の切符しかもってなくて,旅館にもう一泊する余裕もなく,

あきらめて,もう帰宅してしまっている出題した教授の部屋

ドアのポストに答案用紙を入れて帰途についたのを昨日

ことのように思い出しました。


 未だに覚えているのは,よほど悔しかったからでしょう。。

これも人生を左右する1つの岐路でしたね。。

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