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2015年2月24日 (火)

連分数と近似分数(3)

 連分数と近似分数に関する記事の続きです。

 この項目はこれで最後です。

 前回最後では,まず,「2次の無理数ωの連分数展開が初項から

 直ちに循環が始まる純循環連お分数になるための必要十分条件は

 ω>1かつ,-1<ω<0 が成立することである。」という

 純循環連分数に対するGalois(ガロア)の定理を証明し,

 

その応用として,

「2以上の正の整数で平方数でない数dの平方根√dの

連分数展開√d=[k0,k1,k2,..]は,初項のすぐ次の第1項

ら純循環連分数である。」

という謂わゆるLagrange(ラグランジュ)の定理を証明しました。

 

今回の記事では,まず,実際にいくつかの平方数でない素数dに

ついて平方根√dの循環連分数展開表現を与えて,これにより

具体的な無理数である√dの近似分数を計算してみます。

 

まず,√3,については,既に√3=[1,1,2]なることをを示しました。

 

そこで,既に示した手法による√3の近似分数列の最初の5つ

は,α01,α1=[1.1]=1+1=2,α2=[1.1,2]=1+1/(1+1/2)

=5/3=1.666..,α3[1.1,2,1]=1+1/[1+1/{2+1}]]

=7/4=1.75,α4[1.1,2,1,2]=1+1/[1+1/{2+1/(1+1/2)}

=19/11=1.72727.., となります。

 

これ以上の近似は,計算が面倒なので上で得られた公式に従って

行ないます。

 

すなわちn=pn/qnとn次近似の既約分数を表わすと,

n=pn-1n+p-n-2,n =qn-1n+qn-2 です。

 

この公式から5=[1,1,2,1,2,1]=p5/q5,

において,p5=p45++p3,5 =q45+q3より,

5=19×1+7=26,q5 =11×1+4=15なので, 

α526/15=1.73..,です。

 

同様に6=(26×2+19)/(15×2+11)=71/41=1.731707317..

となります。

 

冒頭で述べたように,分母が100よりも小さいにも関わらず,

分数173/100よりも3の真の値との近似誤差が小さい√3の近似

分数:71/41が得られました。

 

また,√2については,ω=√2-1と置くと,(1+ω)2=2より, 

ω(ω+2)=1です。

 

故に, ω=√2-1は,ω=1/(2+ω)=1/{2+1/(2+ω)}

=1/[2+1/{2+1/(2+ω)}]=..=[2]となって,長さが1の

純循環連分数[2]で表現されます。

 

したがって,√2は,√2=[1,2]と表わされます。

 

そこで,√2の,近似分数列は,

α0=1,α1=[1.2]=1+1/2=3/2=1.5, 

α2[1.2,2]=1+1/(2+1/2)=7/5=1.4, 

α3[1.2,2,2]=1+1/[2+1/{2+1/2}]]=17/12=1.41666..,

と続きます。

 

以下4=[1.2,2,2,2]=(17×2+7)/(12×2+5)=41/29

=1.413793103..,α5[1.2,2,2,2,2]=(41×2+17)/(29×2+12)

=99/70=1.414285714... です。

 

しかしながら,実際にω=√2-1=[2]という風に循環連分数として

明確に表現することができないなら,いくら連分数からっ分数への

近似法がわかっていても,絵に書いたモチのようなものです。

 

例えば,元の講談社ブルーバックスのタネ本には√23=[4,1,3,1,8]

という例が書いてありました。

 

このタネ本の中では,上述のLagrangeの定理の応用として,

0=[√23]=4 から,ω=4+√23,および,ω=4-√23が

Galoisの定理の純循環連分数の条件を満たし,

ω=4+√23=[8,1,1,3]と書けるということから,

√23=[4,1,3,1,8]を導出していましたが,これ以上は具体的

な記述がありませんでした。

 

そして,入院中の私にはいくらトライしても

ω=4+√23=[8,1,1,3]も,√23=[4,1,1,3,8]も自力で導く

ことができず,そのときはあきらめて挫折しました。

 

この√23の値は,てっとり早く電卓で調べてみると,

√23=4.795831523..です。

 

取り敢えず,√23=[4,1,3,1,8]という表現を信用して近似分数列

を計算すれば,

まず0=4,α1=[4.1]=5,

α2=[4,1,3]=4+1/(1+1/3)=19/4=4.75, 

α3[4,1,3,1]=4+1/[1+1/(3+1)]]=24/5=4.8..

となります。

 

以下,公式を用いてさらに続けると, 

α4[4,1.3,1,8]=(24×8+19)/(5×8+4)

=211/44=4.795454545.., 

α5[4,1.3,1,8,1]=(2111×1+24)/(44×1+5)

=235/49=4.7918367..と連分数による近似分数列

が得られます。

 

これらは確かに真の値の両側から挟むように

23=4.795831523..に収束していっていると見えます。

 

しかし,もしも√23=[4,1,3,1,8]の右辺のような循環連分数

展開の表現を正しく得る方法が不明なら,こうした精緻な近似

分数を得ることはできません。

 

私は,入院中には,√3や√2の連分数展開を求めた場合と同様に, 

23ついてもω=√23-4と置いて,

(ω+4)2=23からω(ω+8)=7より,ω=7/(ω+8)なる式から

出発して,右辺を分子が1の連分数に変形する方法にこだわって

ずっと考えていました。

 

しかし,結局,√23については挫折したので,上記の√3や√2に

ついて連分数を求めた方法は,必ずしも全ての√dの展開にも

当てはまるような系統だった方法ではなく,別の方法を見つける

必要があるのでは?と思うに至りさらに考えて見ましたが,

そのときは,自由に動けなくて適切な参考書もなく,あきらめて

別のことに興味が移行したのでした。

 

退院してからは,それ以上の努力を怠って,安易な他力本願の道

に入り,連分数について書かれたいくつかの文献をネット検索

してみました。

 

結局,詫間項等工業専門学校の橋本竜太氏のPDF

実数の有理数近似と連分数展開 

に適切な手法が書かれているのを見つけて,それをマネて

計算しました。

 

すなわち,まず,ω=4+√23に対して,まず,k0=[ω]=8です。

 

ここで,ω=[k0,k1,k2,..km,0,k1,..]=[0,k1,k2,..km]

なら,これは,ω=k0+1/[k1+1/{k2+1/(k3+..,を意味します。

 

そこで,k0=[ω]=8に対し,ω1=1/(ω-k0)=1/(√23-4)

=(√23+4)/7と置けば,

ω=k0+1/[k1+1/{k2+1/(k3+..,によって, 

1[1/(ω-k0)]=[ω1]となるはずですから,

1=1を得ます。

 

以下,同様に,ω2=1/(ω1-k1)=7/(√23-3)=(√23+3)/2

より,22]=3です。

そして,ω3=1/(ω2-k2)=2/(√23-3)=(√23+3)/7 

より,k3=[ω2]=1です。

 

さらに4=1/(ω3-k3)=7/(√23-4)=(√23+4)より, 

44]=8ですが,ここでω4がω=4+√23に一致するため 

以下のkjは循環することがわかります。

 

すなわち,ω=4+√23=[8,1,3,1,8,1,..]となって確かに

純循環連分数となり,ω=4+√23=[0,k1,k2,k3]=[8,1,1,3]

であることがわかりました。

 

したがって,√23=ω-4=[4,1,3,1,8] が得られました。

 

試しに,参考書には載ってない√41の連分数展開にトライして

みました。

 

まず,ω=6+√41に対して,k0=[ω]=12 です。 

次に1=1/(ω-k0)=1/(√41-6)=(√41+6)/5より, 

11]=2です。

 

以下2=1/(ω1-k1)=5/(√41-4)=(√41+4)/5より,

2=[ω2]=2,ω31/(ω2-k2)=5/(√41-6)=(√41+6)

より,k3=[ω2]=12,

そして,ω41/(ω3-k3)=7/(√23-4)=(√23+4)より,

4=[ω4]=8です。

 

結局,ω=6+√41=[12,2,2]であり,√41=[6,2,2,12]と

なることがわかりました。

 

さて,電卓によれば,√41の値は√41=6.403124237ですが, 

連分数展開:√41=[12,2,2]による近似分数の列を構成すれば, 

α06,α1=[6.2]=6+1/2=6.5,α2=[6,2,2]=6+1/(2+1/2)

=32/5=6.4,α3[6,2,2,12]=6+1/[2+1/(2+1/12)]]

=397/62=6.403225806,

 

さらに漸化式の公式から4=[6,2.2,12,2]

=(397×2+32)/(62×2+5)826/129=,6.403100775..,,

および,α5[6,2.2,12,2,2]=(826×2+397)/(129×2+62)

=2049/320=6.403125を得ます。

 

確かに√41に収束する近似分数列になっているようです。

 

高校時代に語呂で覚えていたものくらいはエクササイズで全部

やってみました。

 

5=[2,4]={2,9/4,38/17,161/72.682/305,..}, 

6=[2,2,4]={2,5/2,22/9,49/20,218/89.485/198,..}, 

7=[2,1,1,1,4]

={2,3,5/2,8/3,37/14,45/17,82/31.373/141,..}, 

8=[2,1,4]={2,3,14/5,17/6,82/29,99/35,478/169,..}, 

10=[3,6]={3,19/6,117/37,721/228…} です。

 

ここで,改めて気付きました。 

8=[2,1,4]は,2√2=[1,2]の2倍の2√2に等しいいのですが,

連分数展開は線型演算ではないこともあり単純に

8=2√2=[2,4]ではないということです。

 

ただし,√2=1+1/[2+1/{2+1/(2+..ですから, 

8=2√2=2+2(1/[2+1/{2+1/(2+..)

=2+1//[1+1/2+1/(4+1/1+1/4+.より,

この場合は√8=[2,1,4]となることは簡単にわかります。

 

さて,最後に,ここまで追求してきた無理数の連分数展開に

よる近似値が,

「できるだけ分母が小さくて,しかもできるだけ真の値から

 の誤差が小さい分数(有理数)」という意味での最良近似値

を与えることを示します。

 

その内容は次の定理です。

 

[定理](最良近似)連分数展開による無理数ωの第n次近似分数 

αn=pn/qn (n≧1)はωの最良近似分数である。

 

すなわち,0<q≦qnを満たす任意の分数p/qに対して 

常に,|ω-(pn/qn)|≦|ω-(p/q)|が成立する。

 

特に等号はp=pn,かつ,q=qnのときのみである。

 

(証明)無理数ωが与えられ,それに対する連分数展開が既知

であり,近似分数列αn=pn/qn がわかっているとします。

 

このとき,任意の有理数a,bについての{aω+b}という形

の実数全体の集合は,係数a,bを有理数体,の元に限定する

と,ω,および,1の2つの元を一次独立な基底ベクトルとする

2次元の線型空間(ベクトル空間)を形成することは明らかです。

 

そして,この線型空間はωと1の代わりに,(qnω-pn-1)と

(qn-1ω-pn-1)を2つの基底とする有理数体の上の線型空間

とすることもできます。

 

それ故,今,0<q<≦qnを満たす任意の分数p/qを与える

整数p,qに対して(qω-p)を作ると,これを(qnω-pn)

と(qn-1ω-pn-1)の線型結合として,有理数係数A,Bにより,

qω-p=A(qnω-pn)+B(qn-1ω-pn-1)と表現すること

が常に可能です。

 

これから,(Aqn+Bqn-1-q)ω+(Apn+Bpn-1-p=0

ですから,q=Aqn+Bqn-1,p=Apn+Bpn-1 です。

 

これを,A,Bを未知数とする連立一次方程式と見てA,Bに

ついて解くと, 

A=-(pqn-1-qpn-1)/(pnn-1-qnn-1), 

B=-(pqn-qpn)/(pnn-1-qnn-1)ですが,

分母はnn-1-qnn-1(-1)n-1ですから,

 

A=(―1)n(pqn-1-qpn-1),B=(-1)n(pqn-qpn)

です。

 

もしもA=0 なら,pqn-1=qpn^1より,p/q=pn-1/qn-1=αn-1

であって,いずれも既約分数を仮定しているため,p=pn-1,q=qn-1

です。

 

一方,A≠0の場合,A>0,かつ,B>0とすると, 

A=(―1)n(pqn-1-qpn-1),B=(-1)n(pqn-qpn)は

共に整数なのでA≧1,かつ,B≧1です。

 

そこで,q=Aqn+Bqn-1より

q/qn=A+B(qn-1/qn-)>A≧1 なので, 

q>qn-1となり,0<q≦qnという仮定に矛盾します。

同様にA<0,かつ,B<0とすると, A≦-1,かつ,B≦-1

ですから/qn=A+B(qn-1/qn-)<A≦-1ですが,

そもそもqとqnは共に正整数ですから,こうなることは

ありません。

 

よって,AとBは互いに異符号です。

 

一方,以前に証明したように,近似分数列は1つおきに,一方は

ωより大きい方から他方はωより小さい方から,単調にωに収束

するため,隣り合った(ω-pn/qn)と(ω-pn-1/qn-1)も異符号

です。

 

n-1,qnは正整数ですから,これは(qn-1ω-pn-1)と(qnω-pn)

が互いに異符号であることを意味します。

 

したがって,結局,A(qnω-pn)とB(qn-1ω-pn-1)は同符号

ですから,|A(qn--pn)+B(qn-1ω-pn-11)| 

|A(qnω-pn)|+|B(qn-1ω-pn-1)| が成立します。

 

それ故,

|A(qnω-pn)+B(qn-1ω-pn-1)|≧|A|qnω-pn|

であり,等号はB(qn-1ω-pn-1)|=0 のとき,

まり,B=(-1)n(pqn-qpn)=0 のとき,

p=pn,かつ,q=qnのときのみであるのは明らかです。

 

 不等式:|A(qnω-pn)+B(qn-1ω-pn-1)|≧|A|qnω-pn|

 において,Aは整数ですから,|A|≧1より, 

 |A(qnω-pn)+B(qn-1ω-pn-1)|≧|qnω-pn|

 です。

 

 ここで,qω-p=A(qn-1ω-pn-1)+B(qnω-pn) 

 であったことから,|qω-p|≧|qnω-pn|と結論されます。

 

 両辺をq>0で割ると,|ω-(p/q)|≧|qnω-pn|/q

ですが,さらに,0<q≦qnより,(q/qn)≧1 ですから, 

 |qnω-pn|/q≧|ω-(pn/qn)|です。

 

 以上から,|ω-(p/q)|≧|ω-(pn/qn)|が成立し,

 αn=pn/qnこの大きさの分母でのωとの誤差最小

の近似値であることが証明されました。  (証明終わり)

 

これで,連分数を用いて無理数の近似分数を求めるという

テーマの記事を終わります。

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303. 代数学・数論」カテゴリの記事

コメント

I think this is a valid great article.Really show appreciation you! Will study on…

投稿: Delmer | 2015年3月10日 (火) 14時44分

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