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2015年3月26日 (木)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論 10)

ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)の続きです。

 

生成汎関数Z[J]とn点Green関数G(n)(x1,..,x)の関係は 

 定義によって,Z[J]=Σn=0(1/n!)

 [∫d41..d4{J(j1)..J(x)G(n)(x1,..,x)} 

 で与えられます。

 

 一方,Z[J]の経路積分表式の分子は,

 <exp[i∫dx{int(φ)+J*φ}]>0=Σ=0(1/m!)

[∫d41..d4<iint(y1)..iint(y)exp(iJ*φ)>0]

であり,このうち最後の指数関数因子は,

 exp(iJ*φ)=exp{i∫d4xJ(x)φ(x)}=Σ=0(1/n!)

 [∫d41..d4{J(j1)..J(x)φ(x1)..φ(x)} 

 と級数展開でされます。

 

Z[J]の経路積分表式の分母は,<exp[i∫dx{int(φ)}>0 

ですから,(n)(x1,..,x)×<exp[i∫dx{int(φ)}>0 

=Σ=0(i/m!)[∫d41..d4

<φ(x1)..φ(x)int(y1)..int(y)]>0 

 なる等式が成立することがわかります。

 

そこで,n点Green関数G(n)(x1,..,x)に寄与するFeynman

グラフでは,点x1,..,xが端点となるわけです。

(※再掲下図4.5を参照)

 

 これらの端点に直接つながる線を外線(Eexternal Line)といい,

それ以外の線を内線(Internal Line)といいます。

 

 そして,Z[J]の計算に効くグラフのZ[J]の表式の分子の計算へ

 の寄与では端点xの外線には必ず,外場J(x)のi倍が掛かって

 います。

 Z[J]に効くグラフの中には図4.5(d)のように外場Jにつながる

 外線だけの部分と外場Jとは全く連結していない独立な部分とに

 完全に分離しているものがあります。

 

どの外場Jにも全く連結していないグラフは,真空泡グラフ

(Vacuum Bubble)と呼ばれますが,これは下の図4.7に示す

ような端点を持たないグラフです。

 

  ここで,1つでも外場Jと連結した外線を持つグラフを連結

  グラフ(Connected diagram)と呼び,それら連結グラフ全ての

  寄与を摂動の次数にわたって加え上げたものに定数1を足し

  た総和をとします。

 

 一方,外線を一切持たない真空泡グラフのみの寄与を全ての

 摂動の次数にわたって加えあげたものに定数1を足したもの

 をと書くことにします。

 

 すると,任意のFeynmanグラフは,連結グラフとそれには

 つながらない独立した真空泡グラフに分離されます。

 (↑※ただし,全く分離できないものも,もちろん存在します

 が単一であっても独立グラフに分離されたグラフであると

 いう広い意味に解釈しています。この場合,連結グラフ単独

 なら真空泡因子を1,真空泡単独なら連結部分を1の因子と

 勘定することを含んだ表現です。)

 

  そこで,各々のグラフの評価は,それぞれ

  (連結グラフの寄与)×(真空グラフの寄与)

  として得られます。

 

  それ故,

 (Z[J]の分子)=<exp[i∫dx{int(φ)+J*φ}]>0 

  =Σ=0(1/m!)[∫d41..d4

  <iint(y1)..iint(y)exp(iJ*φ)>0 

  =Σ全てのグラフ,[(連結グラフの寄与)×(真空泡グラフの寄与)] 

  =連結(連結グラフの寄与)]×[Σ真空(真空泡グラフの寄与)] 

  =×

  と書けます。

 

 他方,m次の真空泡グラフのみの寄与は,

 通常のn点Green関数: 

 G(n)(x1,..,x)・<exp[i∫dx{int(φ)}>0 

  =Σ=0(i/m!)[∫d41..d4

  <φ(x1)..φ(x)int(y1)..int(y)}>0

 

  の右辺の項から端点に結合するφ(x1)..φ(x)を除いた

  ものであり,これはnには無関係で,mの0次(m=0)の寄与

  は定数の1ですから,真空泡グラフの総和

 

 Β=Σ=0(i/m!)

 [∫d41..d4int(y1)..int(y)}>0 

  =Σ=0(i/m!)

  [∫d41..d4int(y1)..int(y)]>0 

  で与えられることになります。

  つまり,=<exp[i∫dx{int(φ)}>0

  =(Z[J]の分母) です。

 

 以上から,Z[J]=(Z[J]の分子)/(Z[J]の分母)

 =(×)/連結(連結グラフの寄与)] 

 と結論されるわけです。

 

 (※注4):現実には,具体的に評価すると,分母のも分子の

 (×)も共に有限な値ではなく無限大と評価されるため,

 (×)/なる等式は(無限大)/(無限大)なる演算 

 で,必ずしも数学的には正当化されない等式ですが,形式的

 には,このように解釈されるわけです。

 

ところで,こうした上記記事の内容は,今の経路積分による

定式化に限った話ではなく,場の理論での散乱遷移現象の評価

では常に現われるものです。(注4終わり※)

 

したがって,生成関数[J]やGreen関数の評価では真空泡

グラフの寄与を無視して単に連結グラフのみを対象として

評価すれば十分です。

 

 ところで,真空泡グラフを除いた連結グラフであっても,

 それは外線があってどれかの端点につながっているという

 条件が満たされているだけで,全ての部分が分離不可能な

 単一の連結グラフという意味ではありません。

 

そこで1本以上の外線で端点につながっているけれど,

独立な2つ以上の連結部分には決して分離できない連結

グラフを固有グラフ(Proper diagram)と呼ぶことにします。

 

そして,それら単一の固有グラフの摂動の全ての次数の寄与

の総和をと書けば,固有グラフが2個非連結で独立に並んで

いるような全ての連結グラフの寄与の総和は2/2!,また,

固有グラフが3個あるグラフの寄与の総和は3/3!....

ということになります。

 

したがって,結局,Z[J]==Σk=0[(/k!)

=expP です。

 

 そこで,新たにJの汎関数W(J)をZ[J]=exp[iW(j)]

 で定義すれば,P=(固有グラフの総和)=iW(J)ですが, 

 iW(j)=Σn=0(1/n!)[∫d41..d4

 {J(j1)..J(x)Gconn(n)(x1,..,x) 

 

 と書いて,これで生成されるGreen関数Gconn(n)(x1,..,x)

 を定義すれば,これは端点x1,..,xが全て,伝播関数と頂点

 によって1つに連結されたグラフのみの寄与から成るため,

 連結Green関数と呼ばれます。

 

 さて,前回の図4.5のグラフとそれに対する計算式や上述の

 真空泡グラフに対する考察からn点Green関数G(n)(x1,..,x)

 を計算する一般的規則を書き下すことができます。

 これはFeynmanルールと呼ばれるものです。

 

(0) まず,与えられたn個の点x1,..,xをと摂動のm次

でm個のint(φ)を与えるint(y1)..int(y)の頂点

1..,yをあらゆる可能な仕方で結ぶグラフ=Feynman

グラフを書きます。

 

 その際,点yでのint(y)が先に例示したφ3-相互作用

 int(φ)=(-g/3!)φ3(y)なら,各頂点から3本の線が,

 φ4-相互作用 int(φ)=(-λ/4!)φ4(y)なら,4本の線

 が出るものとします。

 そして,真空泡グラフに相当するグラフは除きます。

 

 得られた個々のFeynmanグラフに対して, 

 (ⅰ)端点や頂点を結ぶ各線にFeynman伝播関数を対応させる。

 すなわち,xとyをつなぐ線なら(x-y)を因子と

 して付与する。 

 (ⅱ)各頂点にはintの結合定数を付与する。 

 すなわち3-頂点には(-ig)を,φ4-頂点には(-iλ)

 を付与する。 

 (ⅲ)各頂点yjについて積分∫d4jを実行する。 

 (ⅳ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。

 

以上が通常の4次元時空のx空間(座標空間)で計算する

Feynman規則ですが,実際の計算ではFourier変換して

p空間(運動量空間)で評価する方が便利なことが多いので

p空間でのFeynman規則に直しておきます。

 

 そのため,x表示のGreen関数 G(n)(x1,..,x)をFourier変換

 して4元運動量保存を考慮して得られるp表示のGreen関数G~(n)

 を次の式で定義します。

 

すなわち,∫d41..d4n..

[exp(ip11+..+ipnn)G(n) (x1,..,x) 

 =(2π)4δ4(p1+..+pn)G~(n)(p1,..pn) です。

 

先に与えたx空間でG(n) (x1,..,x)を計算するFeynman

規則をp空間でG~(n)(p1,..pn)を計算するFeynman規則に

読み直します。

 

 グラフの各線での座標空間のFeynman伝播関数iΔに,Fourier

 積分表示

 (x-y)=∫d4k(2π)-4[exp{-ik(x―y)}

  /(k2-m2+iε)]を代入すれば,端点座標x1,..,x

 相互作用頂点座標y1,..,yへの依存性が明確になります。

 

 端点xと頂点yとを結ぶ外線上の運動量をkとすれば,

 伝播関数は

 iΔ(xi-yj)=∫d4(2π)-4[exp{-ik(xi-yj)}

  /(kj 2-m2+iε)]であり.

 また,頂点yにつながる頂点yを結ぶ内線上の運動量を

 kとすれば

 iΔ(y-y)=∫d4(2π)-4[exp{-ik(y-y)}

 /(k 2-m2+iε)] です。

 

 これらは,∫d41..d4n..

 [exp(ip11+..+ipnn)G(n) (x1,..,x) 

 =(2π)4δ4(p1+..+pn)G~(n)(p1,..pn) における

 G~(n)(p1,..pn)の因子として寄与しますから,

 端点xに流入する運動量をpとすると,

 exp{i(p-k)xi)なる因子の積分∫d4から

 外線伝播関数のkと端点から流入するpが等しい 

 という因子:(2π)4δ4(p-k)が出現します。

 

 また,頂点yにつながる頂点yを結ぶ内線や端点x

 を結ぶ伝播関数から,その頂点yに流出入する外線,および,

 内線の運動量を流入か流出のいずれかを正にするという

 規約で符号を決め直すと,

 exp{±i(Σ)yj}なる因子があって∫d4より,

 yjへの流出入運動量の代数和がゼロになるという運動量

 保存の因子(2π)4δ4)が出現します。

 

 したがって,暫定的にG~(n)(p1,..pn)の規則として

 次を得ます。 

 (ⅰ)'各線に積分記号∫d4(2π)-4と因子:i/(ki 2-m2+iε)

 を付与する。 

 (ⅱ)'各端点に(2π)4δ4(p-k)を付与する。 

 (ⅲ)'各頂点yjに(2π)4δ4)を付与する。

 

 なお,(0)可能なあらゆる連結Feynmanグラフを書く。

 ただし,真空泡グラフは除く。 

  (ⅳ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。 

  という規則については変更無しです。

 ところが,(ⅰ)'の積分∫d4(2π)-4のうち,kが外線

 であるものは(ⅱ)'(2π)4δ4(p-k)によってδ関数

 の積分遂行で積分因子が相殺されます。

 

 また,(ⅲ)'の(2π)4δ4)を用いると,独立な式

 は(頂点の数-1)個ですから,この個数の内線のkの積分

 因子∫d4(2π)-4が相殺されます。

 

 つまり,p-k=0,および,各頂点のΣ=0 は

 全てが独立tというわけではなく,全体としての保存則の

 因子 δ4(p1+..+pn)によるΣ=0 があるので 

 1個の条件は過剰です。

 それをδ4(p1+..+pn)で補充するしても,これは一切

 を含んでないため,この条件は∫d4(2π)-4の相殺

 には無関係です。

 

 したがって,外線の(2π)4δ4(p-k)を全て独立と見て

 使用すれば,残る(2π)4δ4)は(頂点の数-1)個のみ

 が独立です。

 

 これでもなお残る内線運動量の積分∫d4(2π)-4はグラフ

 のループを回る運動量のみです。

 

 こうして,最終的なFeynman規則が得られます。 

 (ⅰ)運動量がpiの外線には,因子:i/(pi 2-m2+iε)

 を付与する。 

 (ⅱ)運動量がkの内線には,因子:i/(k 2-m2+iε)

 を付与する。 

 (ⅲ)各頂点にはintの結合定数因子:すなわち,φ3-頂点

 には(-ig)を,φ4-頂点には(-iλ)を付与する。

 

 (ⅳ)なお,(ⅱ)の内線運動量kは各頂点での運動量保存

 を考慮に入れて外線運動量に基づいて決めておくことが

 できます。

 

 どうしても決まらない運動量はループにおけるそれであり

 それをlとおいて積分∫d4(2π)-4を実行する。

 

 (ⅴ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。

 です。

 

 上記説明から,任意のグラフに対して,内線伝播関数の数 P,

 頂点の数 Vとループの数 Lとの間にはP-(V-1)=Lなる

 関係が一般に成立することがわかります。

 

最後にT積と,以下に定義するT積について述べます。

 

 経路積分に基づいて定義されるGreen関数は明白に

 Lorntz共変であるべきで,実際Lorentz共変ですが,

 一般に,経路積分定式化の以前の正純定式化でGreen関数

 はT積(時間順序積)の真空期待値で 定義されています。

 

しかし,このT積は一般には共変ではないことが示されます。 

 すなわち,通常のn点Green関数

 G(n)(x1,..,x)=<0|T[φ(x1)..φ(x)]|0>

 の場合は,T積の中には場φの微分が含まれないため

 共変ですから問題ないのですが,

 

  例えば,T積の定義から,

  <0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>

 =θ(x0-y0)<0|∂xμφ(x)∂yνφ(y)|0> 

  +θ(y0-x0)<0|∂yνφ(y)∂xμφ(x)|0> 

  です。

 

  これも何らかのGreen関数と呼ばれますが,これはLorentz

  共変ではありません。

 

  何故なら, 

  ∂xμyν0|T[φ(x)φ(y)]|0>

  =∂xμ<0|T[φ(x)∂yνφ(y)]|0> 

  =<0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>+iδδδ4(x-y)

  です。

  左辺は,i∂xμyνΔ(x-y)なので明白にLorentz共変

  であるのに対し,右辺のc-数項δδ4(x-y)

  共変ではないからです。

 

  (※注5):上記等式を証明します。 

  <0|T[φ(x)φ(y)]|0>=θ(x0-y0)<0|φ(x)φ(y)|0> 

  +θ(y0-x0)<0|φ(y)φ(x)|0> なので,

 

  ∂y00|T[φ(x)φ(y)]|0>

  =-δ(x0-y0)<0|[φ(x),φ(y)]|0> 

  +<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0> です。

 

 ところが,x0=y0の同時刻交換関係(量子条件)から

 [φ(x),φ(y)]=0 なので, 

  ∂y00|T[φ(x)φ(y)]|0>=<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0>

  です。

 

  さらに,∂x0<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0> 

  =δ(x0-y0)<0|[φ(x),∂y0φ(y)]|0>

  +<0|T[∂x0φ(x)∂y0φ(y)]|0> であり,

  x0=y0の同時刻で,

  [φ(x),∂y0φ(y)]=[φ(x),π(y)]=iδ3()

 です。

 

  したがって,結局,∂x0y0<0|T[φ(x)φ(y)]|0> 

 =∂x00|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0> 

 =<0|T[∂x0φ(x)∂y0φ(y)]|0>+iδ4(x-y)

 

  および,∂xy<0|T[φ(x)φ(y)]|0>

  =∂x<0|T[φ(x)∂yφ(y)]|0> 

 =<0|T[∂xφ(x)∂yφ(y)]|0> を得ます。

 (注5終わり※)

 

  一方,以前の記事

 「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論8)」

  特にその後半の(※注1)に考察したように,

  今の例の微分を含むGreen関数

  <0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>に経路積分表現

  で対応すると考えられる量は,

 

  <∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫d4int(φ)]>0 

  /<exp[i∫d4int(φ)]>0 

  =(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}

  *∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫d4int(φ)])φ=0/(分母) 

 です。

 

これは,生成汎関数の経路積分表現: 

 Z[J]=<exp[i∫d4y{int(φ)+Jφ}]|>0/

 <exp[i∫dx{int(φ)}]>0 

 から従うものです。

 

ところが,元々その表現の出発点の生成汎関数の

経路積分表現は, 

 Z[J]=N∫φ exp[i∫dx{(φ)+Jφ}]

 でした。

 

これを,Klein-Gordon演算子と相互作用の部分に

分離して

[J]=N∫φexp[i∫dx{(-1/2)φ(□+μ2

int(φ)+Jφ}]と書き,

 Klein-Gordon演算子の

Dφ exp[i∫dx{(-1/2)φ(□+μ2)φ}の部分

(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}なる演算子

に変換して,

 

 Z[J]=<exp[i∫d4y{int(φ)+Jφ}]|>0

 /<exp[i∫dx{int(φ)}]>0なる表式が得られた

 のでした。

 

  一方,Z[J]=N∫φ exp[i∫dx{(φ)+Jφ}]

  で,Z[J=0]=1となるようにNを規格化したものは, 

  Z[J]=∫φ exp[i∫dx{(φ)+Jφ}]

  /∫φ exp[i∫dx{(φ)}] です。

 

  そこで,Green関数 :

  <0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>に対応する

  経路積分表示のGreen関数は,

 <∂xμφ(x)∂yνφ(y)]exp[i∫d4y{int(φ)}]|>0 

  /<exp[i∫d4y{int(φ)}]|>0 なる表式と同時に,

 

 ∫φ∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫dz{(φ)}] 

 /∫φ exp[i∫dz{(φ)}]

 と表わすことができるとわかります。

 

  特に,この最後の経路積分式を分母の規格化定数も含め, 

  <∂xμφ(x)∂yνφ(y)> と定義します。

 

  すると,この式では微分の定義から明らかなように,

  微分演算∂xμ,∂yνφの外に出すことができる

  ため,<∂xμφ(x)∂yνφ(y)>=∂xμyν<φ(x)φ(y)>

  が成立します。

 

  微分を含まない通常のGreen関数では明らかに, 

  <φ(x)φ(y)>=<0|T[φ(x)φ(y)]|0> なので,

 <∂xμφ(x)∂yνφ(y)>

  =∂xμyν<0|T[φ(x)φ(y)]|0> です。

 

  それ故,場と場の微分のスカラー汎関数Fに対し, 

  <F(φ,∂φ)>

  =∫φF(φ,∂φ)exp[i∫dx{(φ)}] 

  /∫φ exp[i∫dy{(φ)}] で定義される

  ような量はLorentz不変です。

 

 ここで,新たにT積なる概念を導入して,一般に積

 の内部の場に対する演算をT積の外側で行うものと

 定義します。

 すなわち,任意の(x)に対して 

 T[∂x1μ(x1)(x2)..(x)]

 =∂x1μ[(x1)(x2)..(x)] 

 T[φ(x1)φ(x2)..φ(x)]

 =T[φ(x1)φ(x2)..φ(x)]

 なる式でT積を定義します。

 

すると,T積:T[(x1)(x2)..(x)]

は経路積分の表式 :

<O(x1)O(x2)..O(x)> 

 =∫φO(x1)O(x2)..O(x)exp[i∫d(φ)] 

 /∫φ exp[i∫dy{(φ)}] 

 と常に一致するはずです。

そして,T積をT積に置き換えたGreen関数は定義

から明らかにLorentz不変です。

 

経路積分に基づくFeynman 規則によるGreen関数の計算

では,相互作用intに場の微分結合がある場合でも摂動展開

の任意のステップでLorentz共変性が維持されるT積の摂動

近似Green関数が得られるため,以下,T積といえば積を

意味するものとして両者を区別しないことにします。

 

ただし,Waed-Takahahi恒等式などのように,違いを考察すべき

ときには特に区別することを,その都度注釈します。

 

 今日はここまでにします。

 

次は電子などのFermion場(スピノル場)の摂動論に入る

予定です。

 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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