ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論 10)
「ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)の続きです。
生成汎関数Z[J]とn点Green関数G(n)(x1,..,xn)の関係は
定義によって,Z[J]=Σn=0∞(1/n!)
[∫d4x1..d4xn{J(jx1)..J(xn)G(n)(x1,..,xn)}
で与えられます。
一方,Z[J]の経路積分表式の分子は,
<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0=Σm=0∞(1/m!)
[∫d4y1..d4ym<iLint(y1)..iLint(ym)exp(iJ*φ)>0]
であり,このうち最後の指数関数因子は,
exp(iJ*φ)=exp{i∫d4xJ(x)φ(x)}=Σn=0∞(1/n!)
[∫d4x1..d4xn{J(jx1)..J(xn)φ(x1)..φ(xN)}
と級数展開でされます。
Z[J]の経路積分表式の分母は,<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
ですから,G(n)(x1,..,xn)×<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=Σm=0∞(im/m!)[∫d4y1..d4ym
<φ(x1)..φ(xN)Lint(y1)..Lint(ym)]>0
なる等式が成立することがわかります。
そこで,n点Green関数G(n)(x1,..,xn)に寄与するFeynman
グラフでは,点x1,..,xnが端点となるわけです。
(※再掲下図4.5を参照)
これらの端点に直接つながる線を外線(Eexternal Line)といい,
それ以外の線を内線(Internal Line)といいます。
そして,Z[J]の計算に効くグラフのZ[J]の表式の分子の計算へ
の寄与では端点xの外線には必ず,外場J(x)のi倍が掛かって
います。
Z[J]に効くグラフの中には図4.5(d)のように外場Jにつながる
外線だけの部分と外場Jとは全く連結していない独立な部分とに
完全に分離しているものがあります。
どの外場Jにも全く連結していないグラフは,真空泡グラフ
(Vacuum Bubble)と呼ばれますが,これは下の図4.7に示す
ような端点を持たないグラフです。
ここで,1つでも外場Jと連結した外線を持つグラフを連結
グラフ(Connected diagram)と呼び,それら連結グラフ全ての
寄与を摂動の次数にわたって加え上げたものに定数1を足し
た総和をCとします。
一方,外線を一切持たない真空泡グラフのみの寄与を全ての
摂動の次数にわたって加えあげたものに定数1を足したもの
をBと書くことにします。
すると,任意のFeynmanグラフは,連結グラフとそれには
つながらない独立した真空泡グラフに分離されます。
(↑※ただし,全く分離できないものも,もちろん存在します
が単一であっても独立グラフに分離されたグラフであると
いう広い意味に解釈しています。この場合,連結グラフ単独
なら真空泡因子を1,真空泡単独なら連結部分を1の因子と
勘定することを含んだ表現です。)
そこで,各々のグラフの評価は,それぞれ
(連結グラフの寄与)×(真空グラフの寄与)
として得られます。
それ故,
(Z[J]の分子)=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
=Σm=0∞(1/m!)[∫d4y1..d4ym
<iLint(y1)..iLint(ym)exp(iJ*φ)>0
=Σ全てのグラフ,[(連結グラフの寄与)×(真空泡グラフの寄与)]
=[Σ連結(連結グラフの寄与)]×[Σ真空(真空泡グラフの寄与)]
=C×B
と書けます。
他方,m次の真空泡グラフのみの寄与は,
通常のn点Green関数:
G(n)(x1,..,xn)・<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=Σm=0∞(im/m!)[∫d4y1..d4ym
<φ(x1)..φ(xn)Lint(y1)..Lint(ym)}>0
の右辺の項から端点に結合するφ(x1)..φ(xn)を除いた
ものであり,これはnには無関係で,mの0次(m=0)の寄与
は定数の1ですから,真空泡グラフの総和Bは
Β=Σm=0∞(im/m!)
[∫d4y1..d4ym<Lint(y1)..Lint(ym)}>0
=Σm=0∞(im/m!)
[∫d4y1..d4ym<Lint(y1)..Lint(ym)]>0
で与えられることになります。
つまり,B=<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=(Z[J]の分母) です。
以上から,Z[J]=(Z[J]の分子)/(Z[J]の分母)
=(C×B)/B=C =[Σ連結(連結グラフの寄与)]
と結論されるわけです。
(※注4):現実には,具体的に評価すると,分母のBも分子の
(C×B)も共に有限な値ではなく無限大と評価されるため,
(C×B)/B=C なる等式は(無限大)/(無限大)なる演算
で,必ずしも数学的には正当化されない等式ですが,形式的
には,このように解釈されるわけです。
ところで,こうした上記記事の内容は,今の経路積分による
定式化に限った話ではなく,場の理論での散乱遷移現象の評価
では常に現われるものです。(注4終わり※)
したがって,生成関数Z[J]やGreen関数の評価では真空泡
グラフの寄与を無視して単に連結グラフのみを対象として
評価すれば十分です。
ところで,真空泡グラフを除いた連結グラフであっても,
それは外線があってどれかの端点につながっているという
条件が満たされているだけで,全ての部分が分離不可能な
単一の連結グラフという意味ではありません。
そこで1本以上の外線で端点につながっているけれど,
独立な2つ以上の連結部分には決して分離できない連結
グラフを固有グラフ(Proper diagram)と呼ぶことにします。
そして,それら単一の固有グラフの摂動の全ての次数の寄与
の総和をPと書けば,固有グラフが2個非連結で独立に並んで
いるような全ての連結グラフの寄与の総和はP2/2!,また,
固有グラフが3個あるグラフの寄与の総和はP3/3!....
ということになります。
したがって,結局,Z[J]=C =Σk=0∞[(Pk/k!)
=expP です。
そこで,新たにJの汎関数W(J)をZ[J]=exp[iW(j)]
で定義すれば,P=(固有グラフの総和)=iW(J)ですが,
iW(j)=Σn=0∞(1/n!)[∫d4x1..d4xn
{J(jx1)..J(xn)Gconn(n)(x1,..,xn)
と書いて,これで生成されるGreen関数Gconn(n)(x1,..,xn)
を定義すれば,これは端点x1,..,xnが全て,伝播関数と頂点
によって1つに連結されたグラフのみの寄与から成るため,
連結Green関数と呼ばれます。
さて,前回の図4.5のグラフとそれに対する計算式や上述の
真空泡グラフに対する考察からn点Green関数G(n)(x1,..,xn)
を計算する一般的規則を書き下すことができます。
これはFeynmanルールと呼ばれるものです。
(0) まず,与えられたn個の点x1,..,xnをと摂動のm次
でm個のLint(φ)を与えるLint(y1)..Lint(ym)の頂点
y1..,ymをあらゆる可能な仕方で結ぶグラフ=Feynman
グラフを書きます。
その際,点yでのLint(y)が先に例示したφ3-相互作用
Lint(φ)=(-g/3!)φ3(y)なら,各頂点から3本の線が,
φ4-相互作用 Lint(φ)=(-λ/4!)φ4(y)なら,4本の線
が出るものとします。
そして,真空泡グラフに相当するグラフは除きます。
得られた個々のFeynmanグラフに対して,
(ⅰ)端点や頂点を結ぶ各線にFeynman伝播関数を対応させる。
すなわち,xとyをつなぐ線ならiΔF(x-y)を因子と
して付与する。
(ⅱ)各頂点にはLintの結合定数を付与する。
すなわち,φ3-頂点には(-ig)を,φ4-頂点には(-iλ)
を付与する。
(ⅲ)各頂点yjについて積分∫d4yjを実行する。
(ⅳ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。
以上が通常の4次元時空のx空間(座標空間)で計算する
Feynman規則ですが,実際の計算ではFourier変換して
p空間(運動量空間)で評価する方が便利なことが多いので
p空間でのFeynman規則に直しておきます。
そのため,x表示のGreen関数 G(n)(x1,..,xn)をFourier変換
して4元運動量保存を考慮して得られるp表示のGreen関数G~(n)
を次の式で定義します。
すなわち,∫d4x1..d4xn..
[exp(ip1x1+..+ipnxn)G(n) (x1,..,xn)
=(2π)4δ4(p1+..+pn)G~(n)(p1,..pn) です。
先に与えたx空間でG(n) (x1,..,xn)を計算するFeynman
規則をp空間でG~(n)(p1,..pn)を計算するFeynman規則に
読み直します。
グラフの各線での座標空間のFeynman伝播関数iΔFに,Fourier
積分表示
iΔF(x-y)=∫d4k(2π)-4[exp{-ik(x―y)}
/(k2-m2+iε)]を代入すれば,端点座標x1,..,xnと
相互作用頂点座標y1,..,ymへの依存性が明確になります。
端点xiと頂点yjとを結ぶ外線上の運動量をkjとすれば,
伝播関数は
iΔF(xi-yj)=∫d4kj(2π)-4[exp{-ikj(xi-yj)}
/(kj 2-m2+iε)]であり.
また,頂点yjにつながる頂点ylを結ぶ内線上の運動量を
klとすれば
iΔF(yj-yl)=∫d4kl(2π)-4[exp{-ikl(yj-yl)}
/(kl 2-m2+iε)] です。
これらは,∫d4x1..d4xn..
[exp(ip1x1+..+ipnxn)G(n) (x1,..,xn)
=(2π)4δ4(p1+..+pn)G~(n)(p1,..pn) における
G~(n)(p1,..pn)の因子として寄与しますから,
端点xiに流入する運動量をpiとすると,
exp{i(pi-kj)xi)なる因子の積分∫d4xiから
外線伝播関数のkjと端点から流入するpjが等しい
という因子:(2π)4δ4(pi-kj)が出現します。
また,頂点yjにつながる頂点ylを結ぶ内線や端点xi
を結ぶ伝播関数から,その頂点yjに流出入する外線,および,
内線の運動量klを流入か流出のいずれかを正にするという
規約で符号を決め直すと,
exp{±i(Σlki)yj}なる因子があって∫d4yjより,
yjへの流出入運動量の代数和がゼロになるという運動量
保存の因子(2π)4δ4(Σiki)が出現します。
したがって,暫定的にG~(n)(p1,..pn)の規則として
次を得ます。
(ⅰ)'各線に積分記号∫d4ki(2π)-4と因子:i/(ki 2-m2+iε)
を付与する。
(ⅱ)'各端点に(2π)4δ4(pi-kj)を付与する。
(ⅲ)'各頂点yjに(2π)4δ4(Σiki)を付与する。
なお,(0)可能なあらゆる連結Feynmanグラフを書く。
ただし,真空泡グラフは除く。
(ⅳ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。
という規則については変更無しです。
ところが,(ⅰ)'の積分∫d4ki(2π)-4のうち,kiが外線
であるものは(ⅱ)'の(2π)4δ4(pi-kj)によってδ関数
の積分遂行で積分因子が相殺されます。
また,(ⅲ)'の(2π)4δ4(Σiki)を用いると,独立な式
は(頂点の数-1)個ですから,この個数の内線のkiの積分
因子∫d4ki(2π)-4が相殺されます。
つまり,pi-kj=0,および,各頂点のΣiki=0 は
全てが独立tというわけではなく,全体としての保存則の
因子 δ4(p1+..+pn)によるΣipi=0 があるので
1個の条件は過剰です。
それをδ4(p1+..+pn)で補充するとしても,これは一切
kiを含んでないため,この条件は∫d4ki(2π)-4の相殺
には無関係です。
したがって,外線の(2π)4δ4(pi-kj)を全て独立と見て
使用すれば,残る(2π)4δ4(Σiki)は(頂点の数-1)個のみ
が独立です。
これでもなお残る内線運動量の積分∫d4ki(2π)-4はグラフ
のループを回る運動量のみです。
こうして,最終的なFeynman規則が得られます。
(ⅰ)運動量がpiの外線には,因子:i/(pi 2-m2+iε)
を付与する。
(ⅱ)運動量がkjの内線には,因子:i/(kj 2-m2+iε)
を付与する。
(ⅲ)各頂点にはLintの結合定数因子:すなわち,φ3-頂点
には(-ig)を,φ4-頂点には(-iλ)を付与する。
(ⅳ)なお,(ⅱ)の内線運動量kjは各頂点での運動量保存
を考慮に入れて外線運動量に基づいて決めておくことが
できます。
どうしても決まらない運動量はループにおけるそれであり
それをljとおいて積分∫d4li(2π)-4を実行する。
(ⅴ)それぞれのグラフの統計因子を計算して掛ける。
です。
上記説明から,任意のグラフに対して,内線伝播関数の数 P,
頂点の数 Vとループの数 Lとの間にはP-(V-1)=Lなる
関係が一般に成立することがわかります。
最後にT積と,以下に定義するT*積について述べます。
経路積分に基づいて定義されるGreen関数は明白に
Lorntz共変であるべきで,実際Lorentz共変ですが,
一般に,経路積分定式化の以前の正純定式化でGreen関数
はT積(時間順序積)の真空期待値で 定義されています。
しかし,このT積は一般には共変ではないことが示されます。
すなわち,通常のn点Green関数
G(n)(x1,..,xn)=<0|T[φ(x1)..φ(xn)]|0>
の場合は,T積の中には場φの微分が含まれないため
共変ですから問題ないのですが,
例えば,T積の定義から,
<0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>
=θ(x0-y0)<0|∂xμφ(x)∂yνφ(y)|0>
+θ(y0-x0)<0|∂yνφ(y)∂xμφ(x)|0>
です。
これも何らかのGreen関数と呼ばれますが,これはLorentz
共変ではありません。
何故なら,
∂xμ∂yν<0|T[φ(x)φ(y)]|0>
=∂xμ<0|T[φ(x)∂yνφ(y)]|0>
=<0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>+iδ0μδ0νδ4(x-y)
です。
左辺は,i∂xμ∂yνΔF(x-y)なので明白にLorentz共変
であるのに対し,右辺のc-数項 iδ0μδ0νδ4(x-y)は
共変ではないからです。
(※注5):上記等式を証明します。
<0|T[φ(x)φ(y)]|0>=θ(x0-y0)<0|φ(x)φ(y)|0>
+θ(y0-x0)<0|φ(y)φ(x)|0> なので,
∂y0<0|T[φ(x)φ(y)]|0>
=-δ(x0-y0)<0|[φ(x),φ(y)]|0>
+<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0> です。
ところが,x0=y0の同時刻交換関係(量子条件)から
[φ(x),φ(y)]=0 なので,
∂y0<0|T[φ(x)φ(y)]|0>=<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0>
です。
さらに,∂x0<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0>
=δ(x0-y0)<0|[φ(x),∂y0φ(y)]|0>
+<0|T[∂x0φ(x)∂y0φ(y)]|0> であり,
x0=y0の同時刻で,
[φ(x),∂y0φ(y)]=[φ(x),π(y)]=iδ3(x-y)
です。
したがって,結局,∂x0∂y0<0|T[φ(x)φ(y)]|0>
=∂x0<0|T[φ(x)∂y0φ(y)]|0>
=<0|T[∂x0φ(x)∂y0φ(y)]|0>+iδ4(x-y)
および,∂xi∂yj<0|T[φ(x)φ(y)]|0>
=∂xi<0|T[φ(x)∂yjφ(y)]|0>
=<0|T[∂xiφ(x)∂yjφ(y)]|0> を得ます。
(注5終わり※)
一方,以前の記事
「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論8)」
特にその後半の(※注1)に考察したように,
今の例の微分を含むGreen関数
<0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>に経路積分表現
で対応すると考えられる量は,
<∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫d4yLint(φ)]>0
/<exp[i∫d4yLint(φ)]>0
=(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}
*∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫d4yLint(φ)])φ=0/(分母)
です。
これは,生成汎関数の経路積分表現:
Z[J]=<exp[i∫d4y{Lint(φ)+Jφ}]|>0/
<exp[i∫d4x{Lint(φ)}]>0
から従うものです。
ところが,元々その表現の出発点の生成汎関数の
経路積分表現は,
Z[J]=N∫Dφ exp[i∫d4x{L(φ)+Jφ}]
でした。
これを,Klein-Gordon演算子と相互作用の部分に
分離して
Z[J]=N∫Dφexp[i∫d4x{(-1/2)φ(□+μ2)φ
+Lint(φ)+Jφ}]と書き,
Klein-Gordon演算子の
∫Dφ exp[i∫d4x{(-1/2)φ(□+μ2)φ}の部分
を(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}なる演算子
に変換して,
Z[J]=<exp[i∫d4y{Lint(φ)+Jφ}]|>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}]>0なる表式が得られた
のでした。
一方,Z[J]=N∫Dφ exp[i∫d4x{L(φ)+Jφ}]
で,Z[J=0]=1となるようにNを規格化したものは,
Z[J]=∫Dφ exp[i∫d4x{L(φ)+Jφ}]
/∫Dφ exp[i∫d4x{L(φ)}] です。
そこで,Green関数 :
<0|T[∂xμφ(x)∂yνφ(y)]|0>に対応する
経路積分表示のGreen関数は,
<∂xμφ(x)∂yνφ(y)]exp[i∫d4y{Lint(φ)}]|>0
/<exp[i∫d4y{Lint(φ)}]|>0 なる表式と同時に,
∫Dφ∂xμφ(x)∂yνφ(y)exp[i∫d4z{L(φ)}]
/∫Dφ exp[i∫d4z{L(φ)}]
と表わすことができるとわかります。
特に,この最後の経路積分式を分母の規格化定数も含め,
<∂xμφ(x)∂yνφ(y)> と定義します。
すると,この式では微分の定義から明らかなように,
微分演算∂xμ,∂yνを∫Dφの外に出すことができる
ため,<∂xμφ(x)∂yνφ(y)>=∂xμ∂yν<φ(x)φ(y)>
が成立します。
微分を含まない通常のGreen関数では明らかに,
<φ(x)φ(y)>=<0|T[φ(x)φ(y)]|0> なので,
<∂xμφ(x)∂yνφ(y)>
=∂xμ∂yν<0|T[φ(x)φ(y)]|0> です。
それ故,場と場の微分のスカラー汎関数Fに対し,
<F(φ,∂φ)>
=∫DφF(φ,∂φ)exp[i∫d4x{L(φ)}]
/∫Dφ exp[i∫d4y{L(φ)}] で定義される
ような量はLorentz不変です。
ここで,新たにT*積なる概念を導入して,一般に積
の内部の場に対する演算をT積の外側で行うものと
定義します。
すなわち,任意のO(x)に対して
T*[∂x1μO(x1)O(x2)..O(xn)]
=∂x1μT*[O(x1)O(x2)..O(xn)]
T*[φ(x1)φ(x2)..φ(xn)]
=T[φ(x1)φ(x2)..φ(xn)]
なる式でT*積を定義します。
すると,T*積:T*[O(x1)O(x2)..O(xn)]
は経路積分の表式 :
<O(x1)O(x2)..O(xn)>
=∫DφO(x1)O(x2)..O(xn)exp[i∫d4yL(φ)]
/∫Dφ exp[i∫d4y{L(φ)}]
と常に一致するはずです。
そして,T積をT*積に置き換えたGreen関数は定義
から明らかにLorentz不変です。
経路積分に基づくFeynman 規則によるGreen関数の計算
では,相互作用Lintに場の微分結合がある場合でも摂動展開
の任意のステップでLorentz共変性が維持されるT*積の摂動
近似Green関数が得られるため,以下,T積といえばT*積を
意味するものとして両者を区別しないことにします。
ただし,Waed-Takahahi恒等式などのように,違いを考察すべき
ときには特に区別することを,その都度注釈します。
今日はここまでにします。
次は電子などのFermion場(スピノル場)の摂動論に入る
予定です。
(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)
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