弱い相互作用の旧理論(2)(Fermi理論)
弱い相互作用の旧理論の続きです。
この続きをアップするまで,前回から10日余りも経過しました。
以前なら2~3日もあればできた原稿書きもモチベーション
劣化や体力視力の衰えで数倍の時間がかかります。
この初期アップを体裁を整えて図も入れるという作業もある
のですが。。当座の時間がないです。
朝8時半にはでかけないといけません。。
これから順天大病院 での外来で二タ月に1度ですが,循環器と糖尿病
の内科に行って診察にかからなければならず。。。
来週の11/2は,もう1つ形成外科にもかかる予定です。
全部火曜日なら通院は1度で済むのですが。。形成外来は主治医
が月曜なので。。。
最近病院がとても混んでいて帰宅は夕方になるのでこの記事を
直して完成させることができるのは夜ですかね。
(※PS:やはり,病院はとても混んでいて診察終了13時40分頃,それから
薬をもらえたのが14時50分頃で帰りに巣鴨の西友で,電池切れで測定
不可能な血糖測定器用のボタン電池を買って帰宅したのは17時40分
頃でした。 一服してから,このブログの誤字等を直しています。※)
さて,前回の最後では,β崩壊のS行列要素を与える式:
Sfi(e-)=-iΣαβγδ=∫d4x1..d4x4
Ψα(p)+(x1)Ψβ(n)(x2)Ψγ(e)+(x3)Ψα(ν)(x4)
×Fαβγδ(x1,..,.x4) における未知関数Fの形は,
相対座標x1,x2,x3,x4の違いが大きい場合については以後
30年余の探求により完全に決定されました。
と書きました。
この因子Fの性質について最も簡単な仮定は,「大きい時空間距離:
(xi-xj)(i,j=1,,3,4)に対してはFは消える。」
ということです。
実際,Fが消えない時空間距離のレンジが,hc/Eβc~ 10-12cm
に比して小さい,あるいはβ崩壊の電子e(β線)のエネルギー
Eβが ~ 10MeVに比して大きい,場合なら, Fは局所相互作用
であるという第1近似を採用することができます。
すなわち, 第1近似では,
Fαβγδ(x1,x2,x3,x4)
=Fαβγδ・δ4(x1-x2)δ4(x1-x3)δ4(x1-x4)
なる形を仮定するわけです。
ただし,Fαβγδはスピノル因子を結合させる4×4×4×4
の定行列です。
これは,これまでの観測結果に対しては1つの極度に良い近似
を与えることがわかっています。
Fαβγδ(x1,x2,x3,x4)
=Fαβγδ・δ4(x1-x2)δ4(x1-x3)δ4(x1-x4)
を用いてFαβγδ(x1,x2,x3,x4)を運動量空間にFourier
変換すれば,
Fαβγδ(k1,k2,k3,k4) =∫d4x1..d4x4
×exp{i(k1x1+k2x2+k3x3+k4x4)}
×Fαβγδ(x1,x2,x3,x4)
=∫d4x1 exp{i(k1+k2+k3+k4)x1)}Fαβγδ
=(2π)4δ4(k1+k2+k3+k4)Fαβγδ
となります。
結局,こうした形の局所相互作用は単に相互作用頂点における
エネルギー・運動量の保存を表現するδ-関数を定数行列倍
したものです。
これは,質量がμのπ中間子の交換による核子-核子散乱
(N-N散乱)のケースと対比させるべきでは?という誘惑
に駆られます。
すなわち,そうしたπ中間子交換の強い相互作用では
F ~ 1/(q2-μ2)でした。
(※)ここで以下,本ブログ過去記事の「強い相互作用の理論
(湯川相互作用)」の復習をします。
まず,始状態:|i>には4元運動量P1=(E1,P1 ),
および,P2=(E2,P2)を持っていた2つの核子(nucleon)
N:(陽子pまたは中性子n)が衝突した結果,
終状態:|f>には4元運動量P1'=(E1',P1'),および,
P2'=(E2',P2')を持つに至る場合のS行列(散乱行列)の
要素Sfi=は,
Sを散乱演算子として,
Sfi=<f|S|i>=<P1',P2'|S|P1,P2>
で与えられます。
これは,先の弱い相互作用(β崩壊)での4つのFermi粒子と
同じくΨ(N)(x)を入射して散乱放出される核子Nの4元スピノル
として,やはり,
Sfi=-iΣαβγδ=∫d4x1..d4x4
Ψα(N)+(x1)Ψβ(N)(x2)Ψγ(N)+(x3)Ψα(N)(x4)
×Fαβγδ(x1,..,.x4)
なる形に書けます。
衝突の始状態と終状態で共に2核子のみが観測される弾性衝突
では,核子のエネルギーも運動量も保存されます。
'
すなわち,P1μ+P2μ=P1'μ+P2'μ(μ=0,1,2,3)です。
これはエネルギーと運動量を分けて書くと,
E1++E2=E1'+E2',P1+P2=P1'+P2'です。
運動量遷移(momentum
ransfer)をq=P1'-P1で定義し,
4元ベクトルとしてq=(E1'-E1,P1'-P1)とおけば,
P1+P2=P1'+P2'より,P1'-P1= P2-P2'ですから,
q2=(P1'-P1)2=(E1'-E1)2-(P1'-P1)2
=(P2'-P2) 2=(E2'-E2 )2-(P2'-P2)2 です。
静止した標的粒子2に,粒子1が運動量P1で衝突して粒子2
の粒子1に対する中心力ポテンシャル:V(x)=V(r),
ただしr=|x|,xx=x2-x1によって,散乱された結果,
粒子1の運動量がP1からP1'に変わるというポテンシャル散乱
をイメージしたBorn近似では,同じN-N散乱'のS行列要素は
単純に,Sfi=-(2πi)δ(E1'-E1)<P1'|V|P1>
で与えられます。
この場合は,核子1の衝突による標的核子2の反跳が微小であり
運動量の変化q=P2'-P2に対しエネルギーの変化:
q0=E2'-E2 が無視できる近似になっていて,
q2=(E1'-E1 )2-(P1'-P1)2 ~ -q 2 です。
強い相互作用では,ポテンシャルVを謂わゆる湯川ポテンシャル
としてV(x)=-kexp(-μr)/(4πr)(ただしr=|x|)で
与えます。
ただし,核力が引力であればk>0です。
これを3次元空間でFourier変換すると,
∫d3xexp(-iqx)V(x)=k/(q 2+μ 2)ですが.
これの逆変換は,V(x)=-kexp(-μr)/(4πr)
=-k∫d3q(2π)-3exp(iqx)/(q 2+μ 2) です。
※(注2-1):つまり, 湯川ポテンシャルVは質量がμの
自由スカラー粒子が満たす,Klein-Gordon方程式:
(□+μ 2)φ(x)=0,の時間的に定常な∂φ/∂t=0
の解を与えるHelmholtzの方程式:(Δ-μ2)φ(x)=0
の中心対称で無限遠でゼロとなる,
(Δ-μ2)φ(x)=δ3(x)を満たすGreen関数
になっています。
V(x)=-kexp(-μr)/(4πr)の定数係数kを1と
おいてφ(x)=-exp(-μr)/(4πr)とすれば,
(Δ-μ2)φ(x)=(Δ-μ2){-exp(-μr)/(4πr)}
=δ3(x)=∫d3q(2π)-3exp(iqx) です。
それ故,両辺に(Δ-μ2)-1を掛けて
(2π2)exp(-μr)/r=∫d3q exp(iqx)/(q2+μ2)
あるいは,∫d3q(2π)-3exp(iqx)/(q 2+μ 2)
=exp(-μr)/(4πr)です。
一方,相対論的量子論で質量がμでスピンがゼロの中間子
を交換する場合,中間子のFeynman伝播関数:ΔF(x)は,
ΔF(x)=∫d4q(2π)-4exp(-iqx)/(q 2-μ 2+iε)
で与えられますが,これはq0 ~ 0 では,
-∫d4q(2π)-4exp(-iqx)/( q 2+μ 2)
=-(2π)-1∫dq0 exp(-iq0t)
∫d3q(2π)-3exp(iqx)/(q 2+μ 2)
=δ(q0) exp(-μr)/(4πr)
となります。
核子流JN(x)とπ中間子との相互作用が
(□+μ 2)φ(x)=JN(x)であれば,(□+μ 2)-1,
つまり,Green関数ΔF(x―y)によって積分形で,
φ(x)=∫d4yΔF(x―y)JN(y)と書けますが,
標的核子2のスピノルΨ(N)(x2)が4元運動量P2,からP2'
に遷移する遷移流を電磁相互作用における結合定数(素電荷)
eに対応する強い相互作用の結合定数gにより,
核子流としてJN(x2)=gΨ(N)P2'~(x2)iγ5Ψ(N)P2(x2)
とすれば,
この核子2の遷移流から生成されるπ中間子の波動関数φ(x)
は,φ(x)=∫d4x1ΔF(x―x2)JN(x2)で与えられます。
このπ中間子との相互作用で核子1が散乱されると見れば,
Sfi=(-ig)∫d4x1
Ψ(N)P1'~(x1) iγ5φ(x2)Ψ(N)P1(x1)
=(-ig2)∫d4x1d4x2
Ψ(N)P1'~(x1) iγ5Ψ(N)P1(x1)ΔF(x1-x2)
×Ψ(N)P2'~(x2)iγ5Ψ(N)P2(x2)
と書けます。
自由 Dirac方程式:(iγμ∂μ-MN) Ψ(N) P(x)=0
の4元運動量P=(E,P)を持つ平面波の解を,
Ψ(N)P(x)=(2π)1-3/2 (M/E)1/2u(P,s)exp(-iPx)
と書けば,
Sfi=-ig∫d4x1Ψ(N)P1'~(x1) iγ5φ(x2)Ψ(N)P1(x1)
=-ig2∫d4x1d4x2Ψ(N)P1'~(x1) iγ5Ψ(N)P1(x1)
×iΔF(x1―x2)Ψ(N)P2’~(x2)iγ5Ψ(N)P2(x2)
より,
Sfi=(-ig)2(2π)4δ4(P1'+P2'-P1-P2)
(2π)-6{(MN4/(E1'E1E2'E2))1/2
u~(P1',s1')γ5u(P1,s1)u~(P2',s2')γ5u(P2,s2)
×{i/(q 2-μ 2+iε)} となります。
標的粒子2のエネルギー・運動量は単独に保存されて,
ほぼ静止して核子1に衝突されても動かないという
E2'=E2=MN の近似では ,
Sfi=(-ig)2(2π)4δ4(P1'-P1)(2π)-6
{(MN2/(E1'E1E2'E2))1/2
u~(P1',s1')γ5u(P1,s1)u~(P2'',s2')γ5u(P2,s2)
×{i/(q 2-μ 2+iε)}
=-(2πi)δ4(P1’+P1) (2π)-3{MN2/(E1'E1)}1/2
u~(P1',s1')γ5u(P1,s1)(-g2)/(q 2+μ 2)
i何故なら,(E1'-E1)=0では,
ΔF(x1―x2)=i∫d4q(2π)-4 exp|-iq(x1-x2)}
/(q 2-μ 2+iε)
=-iδ(E1'-E1)∫d3q(2π)-3exp{iq(x1-x2)}/(q 2+μ 2)
=-iδ(E1’-E1)
×∫d3q(2π)-3kexp{iq(x1-x2)}/(q 2+μ 2)
となるからです。
一方,Born近似は,
Sfi=-(2πi)δ(E1'-E1)<P1'|V|P1>
=-(2πi)δ(E1’-E1)
{(2π)-3∫d3xΨ(N)P1'~(x)V(x)Ψ(N)P1(x)
=-(2πi)δ(E1'-E1δ4(P1'-P1)
(2π) -3k/(q 2+μ
2) u~(P1',s1')γ5u(P1,s1)
となります。
何故なら,<P1'|V|P1>
=∫d3xexp(-iqx) V(x)Ψ(N)P1’~(x)V(x)Ψ(N)P1(x)
=(2π) -3{MN2/(E1'E1)}1/2 (2π) -3k/(q 2+μ 2)
それ故,k=g2>0であり湯川ポテンシャル:
V(x)=-g2 exp(-μr)/(4πr)による相互作用
が核力の大部分を体現しているとすれば,これは運動量空間
でのπ中間子の交換:
g2/(q 2-μ 2+iε) ~ -g2/(q 2+μ 2)
に対応していると考えられます。
(強い相互亜用の復習終わり(※)
さて,ポテンシャル:V(x)=-g2 exp(-μr)/(4πr)
において,μr ≦ 1を満たすr≦(1/μ)の領域を核力のレンジ
と呼んでいます。
観測されたπ中間子の質量 or エネルギー:μ ~ 140 MeVから
核力のレンジ(1/μ)を長さの単位に換算すると,これは
hc/(μc) ~ 10-13cmであり,実際の核力の及ぶ範囲に一致
しています。
しかし,もしもこの,粒子間の力を仲介する中間子の質量が
より大きくなることを許すなら,小さいq 2に対sてはβ崩壊の
ような弱い力の状況にも同様のアプロ―チができると予想されます。
これは,つまりそうしたより重い中間子の交換が β崩壊のような
弱い相互作用に関わる4つのFerm粒子の近似的な1点結合を与える
ことを意味します。
逆にいえば,逆β反応:ν~+p → n+e+のように弱い相互
作用に巻き込まれるエネルギーが増加するとき,相互作用は1点
でなく非局所的な拡がりをもつようになるであろうと予測されます。+
そこで,例えば可能な重いBose粒子W+がp-n系とe-ν系で交換
されているかも知れないし,あるいは,より複雑な非局所性が生じ
ているのかも知れません。
※(注2-2):Fermiのカレント-カレント4体相互作用理論主流の当時
でも,重いBose粒子が2体間の力を仲介するという仮説は存在して
いましたが,その後,ゲージ理論が発展してWeinberg-Salam
(ワインバーグ-サラム)モデルという画期的な理論が出現しました。
本来の素朴なゲージ理論では,力を仲介するBose粒子
(ゲージボソン)が存在し,それは質量がゼロであるべきで,さも
なければゲージ不変の対称性を維持きないのですが,
宇宙初期の非常に熱い空間の状態では,そうした質量ゼロの
ゲージ対称性が満たされていたげれど,宇宙が膨張して冷えて
いくにしたがい,ある時期に低温故の自発的な対称性の破れ
が生じて,
1つには質量ゼロの南部-Goldstoneボゾンが出現し,,
他方ではHiggsメカニズムによって,本来質量ゼロであった
ゲージボソンも質量を持つようになるという理論
に基づいた弱い相互作用の理論を具体化したのが
Weinberg-Salam理論です。
これによる予想では弱い相互作用を仲介する重い質量の
ゲージボソンが存在するはずですが,近年,実際にWボソンや
Zボソンといった重いボソンの存在が確認されてこの仮説は
裏付けられたにわけです。(注2-2終わり)※
さて,現在(当時)の論議に対しては,
Fαβγδ(x1,x2,x3,x4)
=Fαβγδ・δ4(x1-x2)δ4(x1-x3)δ4(x1-x4)
および,Fαβγδ(k1,k2,k3,k4) =∫d4x1..d4x4
×exp{i(k1x1+k2x2,+k3x3+k4x4)}
Fαβγδ(x1,x2,x3,x4)
=∫d4x1 exp{i(k1+k2+k3+k4)x1)}Fαβγδ
という局所相互作用の形式は近似段階に留まっています。
低エネルギーのβ崩壊の領域では,核子nやpの反跳
(recoiling:崩壊や衝突反応の反動の小運動)もまた,
~|q|/MNの範囲内では微小なので,無視できます。
ただし,ここでのqは陽子pの反跳運動量です。
そして,中性子nと陽子pの波動関数は,
Sfi(e-)=-iΣαβγδ=1 4∫d4x1..d4x4
Ψα(p)+(x1)Ψβ(n) (x2)Ψγ(e)+(x3)Ψα(ν) (x4)
×Fαβγδ(x1,..,.x4)
において, Ψ(p)(x1), Ψ(n)(x)で表わされていますが,
これは一定のスピノルに置き換えることができます。
このS行列要素の絶対値を平方し終粒子に対して総和し,始状態
の非偏極中性子でのスピンで平均を取ると,遷移率
(=単位時間当たりの遷移確率),または微分断面積に比例する
量として,
|Sfi|2/(VT)
∝ (4EeEν)-1ΣA,BTr(pe+m)ΓApν~ΓB
(2π)4δ4(pe+pν~+Pp-Pn)
なる式を得ます。 ただし,p=γp=γμpμです。
また,ΓA,ΓBは16種類のガンマ行列:1,γ5,γμ,γ5γμ,
σμν=(i/2)]γμ,γν]のいずれか,または,それらの線型結合
です。
このΓ=1,γ5,γμ,γ5γμ,σμνは,それらを,Ψ~(x)と
Ψ (x)で挟んだ双1次形式:Ψ~(x)ΓΨ(x)で与えられる
カレントは,
それぞれ,スカラー(S),擬スカラー(P),ベクトル(V),
軸性ベクトル(A),2階テンソル(T)を示すものです。
ΓA,ΓBは,実際の局所相互作用を示す行列Fαβγδが如何なる
構造を持つかに依存して決まります。
トレース因子:ΣA,BTr(pe+m)ΓApν~ΓB の計算を実行する
と,これは次の一般形を持つはずです。
すなわち,
ΣA,BTr(pe+m)ΓApν~ΓB
=AEν~+BEeEν~+CEeEν~βep^ν~
です。ただし,A,B,Cは定数で,
βe=pe/Ee,p^ν~=pν~/Eν~です。
※(注2-3):何故なら,ΣA,BTr(pe+m)ΓApν~ΓB
=ΣA,BTrpeΓApν~ΓB+mΣA,BTrΓApν~ΓBにおいて
右辺の第2項は明らかにpν~に比例しますが, pν~0=Eν~より
特にpνに平行な方向をz軸(3軸)とする空間座標を採用すれば
pν~=γμpν~μ=Eν~(γ0-γ3)ですから,
一般に第2項:ΣA,BTrΓApν~ΓBはEν~に比例します。
一方,右辺の第1項はpepν~のスカラー積や
peμpν~νaAμνのような形でに係数が付くので.
EeEν~に比例する項とpepν~に比例する項に分割
されます。(注2-3終わり)※
そこで,始状態:|i>から終状態:|f>への遷移率として,
|Sfi|2/(VT)∝ (A/Ee+B+Cβep^ν~)
×(2π)4δ4(pe+pν~+Pp-Pn)
なる表式を得ます。
これに基づき,終状態:|f>=|pe,pν,Pp>に対する
位相空間因子:d3pe, d3pν~,d3Ppを掛けて
陽子とニュートリノの運動量Ppとpν~にわたってのみ積分を
実行すると,中性子nのβ崩壊における電子eのスペクトル
の分布を見出すことができます。
すなわち,
dΩe ∝ ∫d3Pp∫d3pνδ(Mn-Mp-Ee-Eν~)
(A/Ee+B+Cβep^ν~)
∝ peEe(Mn-Mp-Ee)2(A/Ee+B)dEe です。
(dΩe はd3pe=|pe|2d|pe|dΩeで定義される量です。)
※(注2-4):何故なら,
∫d3Ppδ4(pe+pν~+Pp-Pn)=δ(Mn-Mp-Ee-Eν~)
d3pν~=|pν~|2d|pν~|dΩν~=Eν~2dEν~dΩν
そして,δ(Mn-Mp-Ee-Eν~)からEν~=Mn-Mp-Ee)
でp^ν~を含む項はdΩνの∫において奇関数なので積分の結果
ゼロです。
そこでd3pν~の積分の結果,
4πd3pe(Mn-Mp-Ee)2(A/Ee+B)です。
さらに,d3pe=|pe|2d|pe|dΩe=|pe|EedEe
であるからです。(注2-4終わり)※
そこで, (peEe)-1(Mn-Mp~-Ee)-2(dΩe /dEe)
をEe軸に対してプロットすることにより,
エネルギー依存性:A/Eν~+B)を見出すという段階に到
達しました。
自由中性子だけでなく,許される遷移として知られている
広いクラスの原子核のβ崩壊についても電子スペクトルは
この依存性を持ち,さらにA=0となることが実験において
観測されました。
同じ意図ですが,よりなじみ深いデ-タを得る方法はKurie
のプロットによるものです。
すなわち, {(peEe)-1(dΩe /dEe)}1/2をEeに対して
プロットします。これからも Mn-Mp-Ee)に比例した直線
を得ました。
|Sfi|2/(VT) ∝ (A/Ee+B+Cβep^ν~)
(2π)4δ4(pe+pν~+Pp-Pn)なる形で,
A/Eeの項が無いことは,β崩壊相互作用についての
ここで論議した詳細な性質と実験結果から導かれた帰結です。
この消えた項は,Fierzの干渉項と呼ばれるものの1つです。
これは中性子の速度に比例する豪列要素を有する禁止された
β崩壊の遷移をも含むあらゆる観測されたβ線スペクトル
には明白に依存しない項です。
しかし,このFierz項が無いことは,再び,β崩壊相互作用の
近似的な局所性を保証するものです。
A=0のときは電子戦のエネルギースペクトルが単純に
位相空間体積:(Eν~2peEedEe)に比例すること,
そしてエネルギースペクトルが一定のS行列要素:
Sfi ∝ (2π)4δ4(pe+pν~+Pp-Pn)から予測される
スペクトル形を持つことにに着目すれば,
これは興味深いことです。
長くなったのでここで終わります。
(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)
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