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2015年11月 8日 (日)

散乱問題の復習(12)(電子-電子散乱(メラー散乱2)

 散乱問題の復習=再掲載記事の続きです。

 前回,電子-電子散乱で終わってます。今回電子-陽電子散乱です。

Möller(メラー)の公式から,これの断面積を得るために代入則

に訴えます。

 

前の2010年8/27の記事「散乱の伝播関数の理論(19)(応用5)

では次のような代入を実行しました。

 

すなわち,(ε,k)⇔(ε1,-k1),(ε',k')⇔(ε2,+k2),

かつ(pi,si)⇔(p,s),(pf,sf)⇔(-p,s)なる

交換 or 代入です。

 

これによってCompton散乱の振幅:SfiCompと対消滅の振幅:SfiPair

が互いに変換し合うことを見ました。

 

電子-陽電子散乱の過程はBhaBha散乱と呼ばれていますが,

これのFeynman-diagramは以下の図7.15に示されるものです。

先述の電子-電子散乱の振幅:

fiM=(e2202)(E121'E2')-1/2

[{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{u~(p2')(-iγμ)u(p2)}

(-i){(p1-p1')2+iε}-1-{u~(p1')(-iγμ)u(p2)}

{u~(p2')(-iγμ)u(p1)}(-i){(p1-p2')2+iε}-1]

(2π)4δ4(p1'+p2'-p1-p2) において,

 

前例に習ってp1⇔p1,p1'⇔p1',p2⇔-q1',p2'⇔-q1

なる交換(代入)を行ないます。

 

さらに,以前の規則:

S=1-iεf∫d4yψf~(y)A(y)ψi(y)に従って全体に

かかる符号のチェンジを行ないます。

 

すると,BhaBha散乱振幅として

fiB=(e2202)(Ep1p1'qiq1')-1/2

[{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{v~(q1')(-iγμ)v(q1)}

(-i){(p1-p1')2+iε}-1

-{u~(p1')(-iγμ)v(q1')}{v~(q1)(-iγμ)u(p1)}

(-i){(p1+q1)2+iε}-1](2π)4δ4(p1'+q1'-p1-q1)

が得られます。

 

上式の右辺第1項はSfiMの右辺第1項に類似した電子-陽電子

の直接散乱を表わし,"第2項=消滅・生成項"は交換散乱に

対応しています。

 

これら2つの間の相対的(-)符号はSfiMへの代入に起因します。

 

fiMの式における終状態での電子の交換反対称性は,SfiB

の式では入射正エネルギー電子(p1)と(時間に逆行する)"

入射"負エネルギー電子(-q1'),または散乱電子p1'と

(-q1)の反対称性になります。

 

この反対称性を空孔理論の言葉で理解するため,相互作用前

の時刻の初期状態が正エネルギー電子p1を含み負エネルギー

の海が負エネルギー状態(-q1)の空孔以外には全て満たされ

ていることに着目します。

 

特に,負エネルギー電子は状態(-q1')にあり,そこで Fermi

統計によって初期状態はp1と(-q1')の交換の下で反対称です。

 

同様なことは終状態にもいえます。

 

電子陽電子の質量中心系(重心系)での散乱断面積を得るため,

代入:p1⇔p1,p1'⇔p1',p2⇔-q1',p2'⇔-q1 を,

以下の電子-電子散乱の式に適用します。

 

すなわち,電子-電子散乱では,

dσ~M=ε0-244/{E4(2β)}∫d31'd32'

(2π)-2δ4(p1'+p2'-p1-p2)(1/4)(16m4)-1

[{1/(p1'-p1)2}2{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}

{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

-(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2×

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν}

+(p1'⇔p2'の交換項)] 

です。

 

電子-陽電子散乱では,

dσ~B=ε0-244/{E4(2β)}∫d31'd31'

(2π)-2δ4(p1'+q1'-p1-q1)(1/4)(16m4)-1

[{1/(p1'-p1)2}2{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}

{Tr(m-1μ(m-1')γν}

-(p1'-p1)-2(p1+q1)-2×

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(m-1μ(m-1')γν}

+(p1'⇔-q1の交換項)]

です。

 

Möller散乱,つまりE>>mとしてトレ-ス計算を実行すれば

(dσ~/dΩ)B

={α2/(8E2)}[{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)

-2cos4(θ/2)/sin4(θ/2)+(1+cos2θ)/2]

得ます。

 

※(注):

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(m-1μ(m-1')γν}

=-32(p11')(p11'+2m2) です。

 

これの最右辺は明らかにp1'⇔-q1に対して変化しません。

 

よって,

{Tr(m-1μ(1+m)γν}{Tr(1'+m)γμ(m-1')γν}

=-32(p11')(p11'+2m2) です。

  

また,

Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(m-1μ(m-1')γν

=-32{(p12)2-2m2(p12)-m4+m4}

=-32(p11')(p11'+2m2)

です。

 

これも,p1'⇔-q1に対して変化しません。

 

そして,E>>mの相対論的極限での質量中心系:

11,1'=1'では,

(p1'-p1)2=2m2-2p1'p1~2(m2+E22cosθ)

2(1-cosθ) ~ -4E2sin4(θ/2)  です。

 

また,(p11)2=2m2+2p11~2(m2+E22)

~ 4E2,そしてp11'~E22cosθ~2E2cos2(θ/2)

です。

 

したがって,

(dσ~/dΩ)B

={α2/(2E2)}{1/(16E4)}

[4E4{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)-8E4cos4(θ/2)/sin4(θ/2)

+4E4{cos4(θ/2)+sin4(θ/2)}]

です。

 

故に(dσ~/dΩ)B

={α2/(8E2)}[{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)

-2cos4(θ/2)/sin4(θ/2)+(1+cos2θ)/2]

です。(注終わり)※

 

このシリーズ「散乱の伝播関数の理論」はこれで終わります。

続いて題名を変更して輻射補正(繰り込み)の最低次の計算に

移る予定です。 

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

 前記事の2010年9/6からPCトラブルなどいろいろあって,

この記事は東北大地震後の2011年3/31にアップした過去記事:

「散乱の伝播関数の理論(22)」からの再掲載です。

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