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2015年11月

2015年11月27日 (金)

弱い相互作用の旧理論(6)(Fermi理論)

弱い相互作用の旧理論の続きです。

前回記事の最後の部分では次のように述べました。(※)

今のところ,
 

M = ()[{~()(1+γ5)ν(ν) 

+C{~()(1+γ5) γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}] 

には,S,,,Tの4種類の項全てが現われるとしていて, 

これらのどれを否定するか?の根拠はありません。

そこで,
崩壊率を示す量の一般形:

|fi|2/(VT) (/+B+Cβ^ν~)

×(2π)4δ4(+pν~+P-P)

における係数Cを測定する実験を行ない,それによってC,,

,のより多くの情報を得ること、(電子-反ニュートリノの

角相関関係を見ること)など考える必要があります。
 

例えば,SとVの寄与のみを含む純粋Fermi遷移を考察します。
 

電子と反ニュートリノのスピン変数にわたって和を取ると電子

に相対的に出現する反ニュートリノの角分布として次式を得ます。
 

Fermi(θ) Tr[(+m)(1+γ5)

(+γ0)ν~+γ0)(1-γ5)] 

=8Eν~||2(1-β(cosθ)+||2(1+β(cosθ)


ただし,θは電子と反ニュートリノのなす角です。


と書きました。
(※)

今日は,この式が得られる理由を述べる私の注から始めます。

(6-1):SとVの寄与のみを含み,AとTが無い場合

のβ崩壊の不変振幅 ,次のように書けます。
 

M ()[{~()(1+γ5)ν(ν)}

+CV{~()(1+γ5) γ0ν(ν)}] 

()[~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)]

です。

 そして,
電子に相対的に出現する反ニュートリノの角分布:

Fermi(θ)は,上式の絶対値を平方して,電子と反ニュートリノ

のスピンについて総和したものに比例します。


 ところが,

|~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)|2 

[~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)] 

×[ν(ν)(+Cγ0)(1+γ5) γ0()] 


=[u~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)]

×[ν~~(ν)(+Cγ0)(1-γ5)()]


です。

 

故に,Σse,sν~ |~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)|2 

=Tr[(+m) (1+γ5)(+Cγ0)ν~

(+Cγ0)(1-γ5)] ですが,

 既に見たようにS→VやV→Sの遷移は寄与しないことに対応

してやCの項は実際に消えてゼロになることが

わかります。

一方,||2=Cの係数は, 

r[(+m)(1+γ5)ν~(1-γ5)]

2r[(+m)(1+γ5)ν~] 

2r(ν~)8ν~8(ν=ν)


8ν~(1-βcosθ) 
です。
 

また,||2=Cの係数は, 

r[(+m)(1+γ5)γ0ν~γ0 (1-γ5)]

2r[(+m)(1+γ5)γ0νγ0] 

2[r(γ0νγ0~)-Tr(γ5γ0νγ0) 

8(0ν~0+p0ν~0-pν)

8iεαβγδα0βν~γ0δ 

8[2ν~(ν~)8(ν=ν)
8ν~(1+βcosθ) 

です。
 

以上から, 

Fermi(θ) ∝ Σse,sν~ 

|~()(1+γ5)(+Cγ0)ν(ν)|2 

8ν~[||2(1-βcosθ)||2(1+βcosθ)] 

を得ました。   (6-1終わり)
 

 さて,if=-Sfiなので,逆β崩壊でも同じ角分布が見出される

はずです。
 

この分布を決める実験は,35におけるほとんど純粋なFermi遷移

では逆βでの陽電子(Positron)と反跳核の方向を測ることで実行

され,近似的に(1+βcosθ)に比例する結果が得られました。
 

つまり,Fermi遷移では,実際に起きるのはV(ベクトル)のみである
ことが示され
たわけです。

一方,AとTのみの純粋なGamow-Teller遷移について同様な角分布

を計算すると,これは,

GT(θ) ∝ Eν~×[|C|2{1-(1/3)βcosθ}

+4|C|2{1+(1/3)βcosθ}] となります、
 

(6-2):純粋なGamow-Teller遷移:つまり,とTの寄与のみ

を含み,SとVが無いβ崩壊の不変振幅,


4×4行列のベクトルΣ=(Σ1,Σ2,Σ2)の定義:

Σ=(1/2)Σijεkijσij=(i/4)Σijεkij]

を用いると,

M (σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}] 

=Σk=13(σk) 

×[~()(1+γ5){2(i/4)Σijεkij[γi,γj]

+Cγk}ν(ν)] と書けます。
 

電子に相対的に出現する反ニュートリノの角分布:

GT(θ)は上式の絶対値を平方して,電子と反ニュートリノ

のスピンについて総和したものに比例します。

すなわち,GT(θ) ∝(1/2)ΣSp,SnΣse,sν~||2 です 


ここで,GT(1/2)ΣSp,Sn(σ)と置くと,

 

GT(θ)∝(1/2)ΣSp,SnΣk=13 [(MGTGT(GT*k) 

×Σsesν~|~()(1+γ5){2(i/4)Σijεkij[γi,γj]

+Cγk}ν(ν)|2 


=Σsesν~Σk,l (MGT kGT*l)
 

×([~()(1+γ5){2(i/4)Σijεkij[γi,γj]

+γk}ν(ν)] 

×[ν~(ν~)γ0{2(i/4)Σmnεlmn[γm,γn]

+γγk}(1-γ5)()]} です。
 

そして,A → TやT → Aの遷移は寄与しないことに対応して

やC項はゼロになることがわかります。
 

一方,||2=Cの係数は,因子(GT kGTl)を

除けば,次のトレース項になります。


すなわち,{1/2m)}Tr
 [(+m) (1+γ5) γkν~γl(1-γ5)]

(1/)r[(+m) (1+γ5) γkν~γl] です。

これは,

(1/){r(γkν~γl)-Tr(γ5γkν~γl)} 

(4/)(kν~l+plνk-gklν~

-iεαβγδαkβν~γlδ) 

(4/)(kν~l+plνk+δklν~

-iεαkγlαν~γ) 

となります。
 

よって,||2=Cの係数は,

[(GT)(GTν~)+|GT|2(ν~)

-iεαkγlανγGTGT*i] 
に比例することがわかります。

 

そして,

GTkGTl(1/4){ΣSp,Sn(σk)} 

×|ΣSp,Sn(σk)} 

(1/2){ΣSp,Sn(~γ5γk)(~γ5γl)} {1/(82)} [r{(+M) γ5γk(+M)γ5γl}] 

{1/(82)}{r(γk~γl)-M2r(γkγl)} 

{4/(82)}{kl+Plk-gkl(+M2))

です。
 

 これを中性子nの静止系:~(,0)で計算すると. 

kl+Plk­0, =M なので、 

GT kGTl{1/(22)}(+M2)δkl

(1/2)}(1+E/)δklす。
 

故に, GT kGTl,GT kGTl(1/3)GT|2δkl 

となって,これはδklに比例する形をしています。
 

このδkl因子を考慮すれば,εαkγl0 より,

||2の係数は,Σsesν~Σk,l=13 (MGT kGTl) 

×{1/(2)}r[(+m)(1+γ5)γkν~γl(1-γ5)]} 


=Σsesν~Σk,l=13 GT kGTl
 

×(4/)(kν~l+plνk+δklν~

-iεαkγlαν~γ) 

(1/3) sesν~Σk,l=13|GT|2δkl 

×(4/)(kν~l+plνk+δklν~-iεαkγlαν~γ) 

(1/3)Σsesν~|GT|2

×(4/){2ν~3(ν~ν~)} 

(4/)Σsesν~|GT|2ν~{1(1/3)βcosθ} 


なる結果を得ます。

 

また,|C|2の係数は,GT kGTlを除けば, 

次のトレース項になります。
 

(1/4){1/(2m)}Σijmnr{(+m)(1+γ5)εkijεlmn

[γi,γj]ν~[γm,γn](1-γ5)}
 

GT kGTl,GT kGTl(1/3)|GT|2δklを掛けて

総和:Σklを取ると,
 

これは,{1/(12)}Σijimn(δiδin-δinδjm) 

×Tr[(+m) (1+γ5)[γi,γj]ν~[γm,γn](1-γ5)]
 

{1/(6)}Σij r[(+m) (1+γ5)

[γi,γj]ν~[γi,γj](1-γ5)]
 

です。
 

Σijr[(+m) (1+γ5)[γi,γj]ν~[γi,γj](1-γ5)] 

=Σijr([γi,γj]ν~[γi,γj])

-Σijr(γ5[γi,γj]ν~[γi,γj]) 

ですが,辺第2項のΣijr(γ5[γi,γj]ν~[γi,γj])

ゼロとなることがすぐにわかります。
 

一方, 第1項はΣijr([γi,γj]ν~[γi,γj]) 

2Σij [r(γiγjν~γiγj) -Tr(γjγiν~γjγ)] 

96ν~|1(1/3)β~cosθ} です。(詳細計算は省略)


したがって,|C|2の係数は,
これに

{1/(6)}Σise,sν~|GT|2を掛けて得られるので,

(16/)Σise,sν~|GT|2ν~|1(1/3)βcosθ}

です。

よって,,Tの寄与は,(4/)Σsesν~|GT|2ν~

,×[|C|2|1(1/3)βcosθ}+4,|C|2|1(1/3)βcosθ}]

です。  (注6-2終わり)※

GT(θ) ∝ Eν~,×[|C|2|1(1/3)βcosθ}

+4,|C|2|1(1/3)βGTcosθ}]なる分布式に基づいて

23のβ崩壊のような純粋Gamow-Teller遷移での測定や,

Fermi遷移とGamow-Teller遷移の混合において観測された
他のデータ
は,|C/C|<<1を示しています。

この結果からC/C=0 と考えると,結局,

 

(){~()γ0(1-γ5)ν(ν)}]

(σ){~()γ(1-γ5)ν(ν)} 


が得られます。

 

かくして,β崩壊に関わる弱い相互作用は,VとAのみで構成

されると結論されます。

そして,β崩壊からは,右巻きの反ニュートリノ

(左巻きニュートリノ)のみが放出されることが示されています。
 

後は,単にCとCの大きさと相対的位相のみが決定さるべき

ものとして残っているのみです。
 

大きさは中性子nの崩壊率とO14の崩壊における純粋なFermi遷移

の測定から見出されます。


 位相はV-Aの混合に敏感な偏極中性子のβ崩壊中の中性子

スピン軸に相対的な電子の角分布の測定から決まります。

 

これらによる最終結果は次の通りです。

2(1.015±0.03)×10-5×(1/2)=G 

(1.21±0.03)=αCV 

です。

このGの定義と数値の結果を

(){~()γ0(1-γ5)ν(ν)}]

(σ){~()γ(1-γ5)ν~(ν)} 

に代入し,相対論的表記を復活させると,β崩壊の不変振幅

として次式を得ます。


 すなわち,
 

(/2)[uμ(1-αγ5)u][~γμ(1-γ5)ν~]


 です。


 さて,今や,この不変振幅:を弱い相互作用の摂動の1次の

効果と見て,これ自身を相互作用摂動項と見なしてより高次の

Feynmanグラフの計算を試みようと考えるのは当然です。
 

 しかしながら,この相互作用頂点を単なるδ-関数に置き換える

局所相互作用の近似では,こうした高次のグラフの計算は明確には

できません。
 

何故なら,

既に,電磁相互作用の輻射補正の項で見たように閉ループグラフ

の計算などでは,無限大に発散する量が出現し,それを繰り込み

定数というものに分離して切り離すという手法を用いました。

 しかし,の弱い相互作用
の計算では,そうした操作は不可能で

あるような無限大量が生み出されるからです。
 

すなわち,今の弱い相互作用での局所相互作用近似は,高運動量

での収束を生み出すべき,核子やレプトン(軽粒子)の間で交換

されるBose粒子の運動量表示の伝播関数:F ∝ [1/(q2-μ2)]

(q → ∞ではF → 0)を単なる定数(=座標表示ではδ関数)

置換えることに同等ですから,例えば閉ループでの全ての運動

にわたる積分では正しい結果に導くことはないと予想される

わけです。
 

今までの理論展開では.弱い相互作用理論は確かに非常に微小な

結合定数で扱っていますが,こうした高次での発散を処理する

には有効ではありません。

(↑※これは今の言葉で言うなら,繰り込み不可能という意味です。

繰り込み可能な理論とするには,,4重頂点はF=定数ではなく,

2点間に質量μの弱ボゾンを交換するF ∝ [1/(2-μ2)])を割り

当てる必要があります。※)
 

例えばν~+p→n+eのような散乱過程における断面積

は,エネルギーの2乗と共に増加します。
 

そして,2c.m 2 {c.m/(300)}4/c.m2)ですから,重心系

のエネルギーEc.m が,c.m  300300BeV に達するまで

,弱い相互作用は強い相互作用と同程度になり非局所性や高次

の作用の効果が非常に重要になると予測されます。
 

今日はここで終わります。

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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2015年11月26日 (木)

訃報!!原節子さん。。

 永遠の処女といわれた大女優原節子さんが今年9月に死去されていたことがわかりました。享年95歳。。。

NHKニュース → 日本映画界の伝説的女優  原節子さん。死 

          

 

42歳で引退されたということですが,その今から53年前の1962年には私は12歳の小学6年生。。その前年にわが家にテレビが来たばかりの頃です。

 映画だけの時代のスターで,テレビ時代にはもう完全に引退されていたので,私には名前を親世代から聞かされ顔写真を知っている程度で印象は薄いです。,

  ご冥福を祈ります。。合掌!!

 

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2015年11月25日 (水)

訃報!!川崎敬三さん。。

俳優,ワイドショー司会などをやられていたタレントの川崎敬三さんが今年7月に死去されていたことがわかりました。82歳でした。

 ※ 日刊スポーツ  →  ワイドショー司会,俳優の川崎敬三さん死去,82歳

   

 

 お昼のワイドショーで一世風靡した時代がありました。

 私は丁度,学生から社会人になっていったころでしょうか。。。

 やっと自力でテレビが買える身分になって,現在のテレビっこジジイになるきっかけとなった頃ですね。なつかしいです。

 まだ生きておられらのかというのが正直な感想うです。俳優としての川崎さんは,ほとんど見ていないか?忘れて記憶にありませんが。。。

ワイドショーでは山本耕一さんや,漫才ブームに乗った「ぼんち」とか,流行語で盛り上がっていましたね。。。

 ご冥福を祈ります。合掌!!

PS:私事です。

 昨日お茶の水の順天大病院の形成外科外来に行ってきましたが。。,

 待つこと3時間半,プラス診察2時間余り,さらに薬もらうのに20分。。。

 ,14時半の予約だったので自宅を昼過ぎに出て13時半ごろ病院に到着。。帰宅したのは夜の9時前でした。軽く食事後,疲れて夜中まで爆睡。。。

 そして朝4時頃には起床してそのままです。

 またまた近々入院するかも。。という話になり.来週も12/1の火曜午後に同じ先生の診察を受けに行くことになりました。ついでに予約無しで循環器に相談。。。

 でもオカシイなあ。。先週来たときはお休みで代診で,」「また来週来てほしい」と言われたとき,「毎週来るのはシンドイから来週でなくさ来週にしてくれ」と私が言うと,「さ来週はまたいないから。」と聞いたので来たのにね。。。。

 今回入院することになれば,それは病気のために入院というより.も,もう1年くらい自然治癒しない右足かかとの傷穴が治りやすくなる措置のためです。

 循環器内科で右足の動脈にカテーテルを通して必要ならステントを入れて足首までの動脈血流を確保するための施術をするためです。

 2013年5月に同じことやったのに.また塞がったからということですが。。。 左足は今年5月にやったばかりです。

 ナラ,2年ごとに片足ずつヤルの??イヤその前に足も命も無いかも。。

 足のつけねのカテーテル入口の局所麻酔だけで2時間くらい我慢する。 内科治療だし手術じゃないというけれど逆にツライという記憶があります。。

 日帰りは無理でしょうから入院するという程度でしょうが。。。

 入院手術慣れしているとはいっても面倒くさいコトです。。。

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2015年11月22日 (日)

弱い相互作用の旧理論(5)(Fermi理論)

弱い相互作用の旧理論の続きです。

 

前回の最後ではβ崩壊において,核子の反跳が小さいときの

不変振幅の近似式:

M  ()[{~()(1+αγ5)ν(ν)} 

 +C{~()(1+αγ5)γ0ν(ν)}] 

 +(σ)[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

 +C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}] 

においてγ5係数 αiの値が全て+1に決まり,
 

 ()[{~()(1γ5)ν(ν)}  

  +C{~()(1+γ5) γ0ν(ν)}] 

  +(σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

  +C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}] 
 

のように簡単になるとわかったところからの続きです。
 

今日は,残る係数C,,,を決定する作業に向かいます。

 再び,β崩壊の行列要素S
fi(e-)
を書き下すところから始めます。
 

 Sfi(-)(2π)-6{/(2ν~)}1/2 

 ×(2π)δ(+pν~+P-P)M  です。
 

崩壊の微分断面積を与える遷移率は,これから得られる

|fi(-)|2/(VT)比例しますから,の絶対値を平方して

終状態粒子のスピンについて総和を取り,始状態粒子非偏極

のときはそのスピンについて平均する必要があります。
 

このとき,非偏極の核子p,nに対してはFermi遷移(,)と,

Gamow-Teller遷移(,)の間に干渉項はないことがわかります。
 

※(5-1)Fermi遷移とGamow-Teller遷移の間の干渉項が無い

ことを証明します。
 

まず,上に与えたの式のFermi項の()の係数を, 

 F=[{~()(1+γ5)ν(ν)}

 +C{~()(1+γ5)γ0ν(ν)}],
 

 Gamow-Teller項の(σ)の係数を,

 G[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

 +C{~()(1+γ55γν(ν)}]


と置けば,
()F+(σ)G です。

そこで,
|
)|2 ∝ ΣSp,Sn|(u)F+(uσ)|2
 

=ΣSp,Sn[|(u)| 2||2|(uσ)|2||2 

+()(σ)(σ)()] 

と書けます。

この右辺の第3,4項がFとGの干渉項です。

β崩壊する前の始状態の中性子nが非偏極で,これのスピン平均を取るだけでなく,終状態のp,e,ν~のスピンについても総和すれば,

|)|2 ∝ ΣSp,SnΣse,sν~|(u)F+(uσ)|2 

ですが,FとGの干渉項は,

ΣSp,Sn(u)(σse,sν

+ΣSp,Sn(σ)()Σse,sν* 

です。

この干渉項第3項,および,第4項のFの係数:

()(σ),および,の係数:

(σ)()の双方において,

()≠0となるのは,核子の反跳が無視できる非相対論的

極限の核子の2成分スピノルでは,=Sのときのみです。


しかし,実は後で気づいたのですが,このこととは
関係なく,

中性子nの静止系でのスピン部分は,spin-upのu[1.0]

でも,spin-downのu[0,1]でもPauliのスピン行列の表示

では,σ1=σ2=0 です。
 

 また, spin-up[1.0],なら,σ3=+u,より,

(σ3)()であり,spin-downの[0,1]

なら3=-u,より,(σ3)=-()

です。
 

これらは干渉項のF,の係数がゼロであることを

意味するので,結局,Fermi項とGamow-Teller項の干渉は無

いことが示されました。

(5-1終わり)※
 

さらに,同じ

()[{~()(1+γ5)ν(ν)} 

+C{~()(1+γ5) γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

 +C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}] において,
 

SとV,あるいはAとTの間にも干渉項はありません。

 何故なら,
これらは異なる反ニュートリノの状態へと

導くからです。

 すなわち,因子(1+γ5)を順序を交換させて最も
右の

反ニュートリノ波動関数(負エネルギーニュートリノ

波動関数):ν(ν)のすぐ左まで移動させたとき,
 

SとTでは(1+γ5)のままなので,この遷移は左巻きの

反ニュートリノ(=右巻きの負エネルギーニュートリノ) 

νLH(ν)|(1+γ5)/2}νLH(ν) へと導きます。
 

 これに対して,VとAでは(1+γ5)から(1-γ5)に変わる

ため,遷移は右巻きの反ニュートリノへと導くわけです。
 

 こうして,SとVの間にもAとTの間にも干渉が無いことは,

先に弱い相互作用の旧理論(3)」で実験からもそれが無いこと

が確認されているFielz項というものが無いことを意味します。
 

(52)「弱い相互作用の旧理論(3)」では,β崩壊の

S行列要素が,次のように与えられると仮定しました。,

 Sfi(-)=-iΣαβγδ=1 4∫d41..44
 

Ψα()(1)Ψβ() (2)Ψγ()(3)Ψα(ν) (4)

×Fαβγδ(1,..,.4)
 

  そして,始状態の中性子が非偏極の場合の遷移率,または

 微分断面積に比例する量:|fi|2/(VT),

 始状態のn,終状態のp,,ν~ のスピンについて総和を取る

 とき,波動関数部分は次のようにトレース因子に帰着します。

 すなわち,|fi|2/(VT) (2π)4δ4(+pν~+P-P) 

(4ν)-1 Σ,r(+m)Γν~ΓB  

 なる式を得ます。
 

 この式のトレース因子:Σ,r(+m)Γν~Γ

 計算すると,

 Σ,r(+m)Γν~Γ

 =AEν~+BEν~+CEν~β^ν~ 

 なる一般形を持つことがわかります。

 ただし,,,Cは定数です。

 (※何故なら,Σ,r(+me)Γν~Γ 

=Σ,rΓν~Γ+mΣ,rΓν~Γ

において, 


 
右辺第2項:meΣ,rΓν~Γは明らかに

ν~に比例しますが,ν~0=Eν~,より特にνに平行な方向

をz軸(3軸)に採用すればν~=Eν~(γ-γ3)ですから,

一般にこれはEν~に比例します。
 

一方,右辺の第1項:Σ,rΓν~Γはpν~

スカラー積やμν~νμνのような係数がつく形なので.

ν~に比例する項 ν~に比例する項に分割される

からです。 ※)
 

 そこで,始状態:|i>から終状態:|f>への遷移率として, 

 |fi|2/(VT) (/+B+Cβ^ν~)

 ×(2π)4δ4(+pν~+P-P) 

 なる表式を得ました。
 

これに基づき, 終状態:|f>=|,ν,>に対する

位相空間因子:, ν~,を掛けて陽子と

ニュートリノの運動量ν~にわたって積分すると,

中性子nのβ崩壊における電子eのスペクトル分布 

 を見出すことができます。
 

特に,ニュートリノの運動量にわたる積分では,

ν~|ν~|2|ν~|dΩν~=Eν~2dEν~dΩν

であり,^ν~を含む項は奇関数なので積分の結果ゼロです。
 

 それ故,電子eのスペクトル分布は, 

dω∝ p(-M-E)2(/e~+B)dEe なる

形になります。
 

実験によると,自由中性子だけでなく,許される遷移として

知られている広いクラスの原子核のβ崩壊についても電子

スペクトルはこの依存性を持ち,さらにA=0となることが

実験において観測されました。
 

この(/~+B)依存性のうち消えるA/項は,Fierz

の干渉項と呼ばれるものの1つです。

(52終わり)
 

 と「弱い相互作用の旧理論(3)」で書きました。


 この内容から,Fielz項:A/Eは,トレース因子のうちの,

 meΣ,rΓν~Γなる項によるAEν~に起因している

 ことがわかります。
 

rΓν~Γ.Γ,ν,Γに合計で奇数個のγ行列因子

が含まれていればゼロですから,

(,)の組ではΓがS(スカラー)でΓがV(ベクトル),

またはその逆, 

(,)の組では,Γ(1)がA(軸性ベクトル)でΓ

(テンソル),またはこの逆 

のケース以外はこのトレースにゼロでない寄与をしません。
 

 したがって,SとVの間にも,AとTの間にも干渉が無いことは

 A=0を意味するわけです。


 
もしもニュートリノが100%より小さい偏極で放出される

 なら,Fielz項が無いことはSかVのどちらか一方,および,

 AとTのどちらか一方の項のみが含まれる相互作用の形が

 要求されます。
 

つまり,完全に左回りと決まらないときは(1+γ5)(1-γ5)0

が効かないので,SとV,AとTの項は消えるとは限らないので

A=0となるためには,SかV,AかTのそれぞれ,どちらかの

寄与がゼロと考える他にはありません。


※(注5-3):すぐ前に述べたように,

A/EのFielz項はrΓν~Γに起因し.(,)の組では

ΓがSでΓがV,またはその逆,(,)の組では,ΓがAで

ΓがT,またはこの逆のみがこれに寄与します。

ただし,ΓがSでΓがVとはΓ(1γ5)1,Γ(1γ5)γλ

を意味するので.Γν~Γ2(1γ5)γλν~,となります。
 

また,ΓがAでΓがTとはΓ(1γ5)γ5γλ,Γ(1γ5)σρτ

を意味するのでΓν~Γ2(1γ5)γλσρτν~となります。
 

 ところが,ニュートリノの波動関数~が完全に左巻きなら,それ

に由来するνは左巻き反ニュートリノなので.これは

ν(1γ5)ν/2を満たします。
 

 この場合,2(1γ5)γλν~2(1γ5)γλ(1γ5)ν~/2 

 =(1γ5)(1γ5)γλν~0 で,かつ,

 2(1γ5)γλσρτν~2(1γ5)γλσρτ(1γ5)ν~/2

 (1γ5)(1γ5) γλσρτν~,0 となり,

そもそも||2に寄与するFielz項は存在しません。

 

それ故,ニュートリノが完全に左巻きではないのにA=0になる

のは,(,)の組ではS,Vのどちらかがゼロ,(,)の組では

,Tのどちらかがゼロである場合しかありません。

 

(5-3終わり)

 

しかし,今のところ, 

M = ()[{~()(1+γ5)ν(ν)} 

 +C{~()(1+γ5) γ0ν(ν)}] 

 +(σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

 +C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}]
 

にはS,,,Tの4種類の項全てが現われるとしていて,

これらのどれを否定するか?の根拠はありません。
 

そこで, |fi|2/(VT) (/+B+Cβ^ν~) 

(2π)4δ4(+pν~+P-P)における係数Cを測定する

実験を行ない,それによってC,,,のより多くの情報

得ること(=電子-反ニュートリノの角創刊関係を見ること)

考える必要があります。
 

例えば,SとVの寄与のみを含む純粋Fermi遷移を考察します。

電子と反ニュートリノのスピン変数にわたって和を取ると電子

に相対的に出現する反ニュートリノの角分布として次式を得ます。
 

Fermi(θ) Tr[(+m)(1+γ5)(+γ0)ν~

(+γ0)(1-γ5)]

=8Eν~[|C|2(1-βcosθ)+|C|2(1+βcosθ)]

ただし,θは電子と反ニュートリノのなす角です。
 

この式の導出の詳細は次回にまわして,今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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訃報!!北の湖理事長

 大相撲の元横綱で現在理事長の北の湖さんが20日急死されました。直腸ガンで多臓器不全が死因らしいです。享年62歳。。まだ若い。。

日刊スポーツ → 北の湖さん死去,,62歳,,直腸ガン。命削り九州場所

 

 テレビではいつも苦虫を噛みつぶしたような表情で笑った顔を見た記憶がありません。

 

 ある意味で高倉健さんもそういう印象でしたから,とても男らしい勝負師そのものの日本男児だったのでしょう。

 

 花の昭和28年(ニッパチ)組です。。若三杉→若の花もいますが。。 

 

 強すぎて憎たらしいほどでした. 。

 

 

大鵬さんも強すぎたけれど憎たらしくなくむしろ親しまれていましたから,見かけで損ししていたのかな。。

 

 ご冥福を祈ります。合掌!!

 

PS:昨日21日(土)は未明に左足が痛くて眠れず3時頃から起きてました。

 

 出勤予定をキャンセルして自宅で寝ていましたが急に寒くなったせいか,夜8時ころ熱をはかると38.1度でその語37度前後の微熱になりました。

 

 これを書いている最中の10時ころに訪問看護師が来て30分余りいたので,それから誤字脱字を直しました。

 

 

 

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2015年11月19日 (木)

パリの事件に思う。。ヨーロッパの人種差別

 ,金曜の夜にスポーツ観戦や観劇などをする余裕がある,謂わゆる有閑階層で,かつ飽食階級からの呼び名である「テロ」を肯定するつもりはないけれど,かつて米国の貿易センタービルへの旅客機突撃事件の際も「本土爆撃万歳」とか述べて多くの顰蹙コメントをもらった自分が,またまた,恐らく「先進国」の巷の大勢の人々とは異なる見方の感想を持ったと思います。

 そもそも,EUやイギリス,特にフランスは日本人も含め,有色人種(カラード)への人種差別は激しく,旅行者にはわからなくても住んでみると凄いらしいです。

 特にアラブ系の人への差別は日常茶飯事らしいです。

 また,日本人のプロサッカー選手でも滞在中に差別的イジメにあって逃げ帰った人がいると聞いたことあります。

 以下,別のホームページでのニュースから転載します。最初は参照のURLだけにしておこうと思いましたが,ブログ記事にする都合上.無断転載ですが参照元を明示した後に写真以外は丸写しコピーです。

→ MADAME RIRI より 

[フランスの人種差別事情]他民族が乗る"パリの地下鉄"で毎日思うこと

(※以下,記事の全文コピーです。※)

 フランスで地下鉄に乗車しようとした黒人の男性が、人種差別主義者を自称するサッカーファンから繰り返し乗車を妨害されるという事件があり、波紋を呼んでいる。「俺らは人種差別主義者。それの何が悪いんだ!」と繰り返し叫ぶチェルシーサポーターの動画を見て、悲しい気持ちになったのは筆者だけではないだろう。

 今回の騒ぎを起こしたのはイギリス人たちであり、フランス人からすれば”いい迷惑”な事件であるが、フランス人に人種差別意識がないかといえば嘘になる。

白人、黒人、アラブ人、インド人、アジア人など、他民族が暮らすパリ。パリの地下鉄のなかは当然、毎日様々な人種や宗教の人たちが一緒に乗る”他民族コンテナ”と化する。

 そんなパリで暮らす日本人在住者は、「フランス人は人種差別的な人が多い」と言う。

フランスで人種差別を一番受けるのは、アラブ人たち。先月のシャルリーエブド事件の影響もあって、特にイスラム教徒のアラブ人に対する偏見や差別意識は強い。筆者の周りのフランス人も、声を大きくしては言わないが、ムスリムへの風当たりが厳しい。知り合いのフランス人女性はシャルリーエブド事件について、このようなことを言っていた。

「アメリカでの9.11以降、パリでもブルカやベールをしている人が増えたわよね。私はずっと前から彼らが何か計画しているんじゃないかと思っていたのよ。ムスリムはみんな信用できない。」

筆者の感覚からするとゾッとするような思想を、さも真実かのように語る人がいる。ムスリ ムがフランスを乗っ取ろうとしていると信じている人が現実にいる。人間の恐怖心や憎しみは、ユダヤ人を迫害したヒットラーのように、冷静さを欠いたゾッとする思想をつくりあげてしまうのかもしれない。

そして、多民族都市パリでは、日本人がこのような偏見の被害者になることもある。筆者の知り合いの日本人女性は、交差点で信号待ちをしている時、急に背後から突き飛ばされた。背後にいたのは黒人男性で、「何するんですか!」という問いに、「俺はアジア人が大っ嫌いなんだ!」と答え、尚も突き飛ばしてきたそうだ。

この黒人がアジア人にどんな因縁があるのかは知らないが、突き飛ばされた女性には全く持って関係ないことだ。アジア人全てを一括りにして、同じものとして接することに問題がある。

また、パリで暮らす日本人の中には”フランス人に対して”の偏見が強かったり、差別的な発言をする人もいる。こういう日本人もまた、フランス人全てを”だらしがなく、高慢で、信用できない人”を決めつけ、真面目な日本人とは差別して扱うのだ。

これら人種差別的な言動をする人に共通しているのは、「ある民族や宗教グループを全て同じもの」として見る点である。白人はみんないっしょ、黒人はみんな同じ、アジア人もみんな同じという見方が人種差別の根源にある。その人本人がどういう人なのかを知ろうとせず、「○○人はこういう人」という決めつけ、凝り固まった偏見から抜け出さない。

”つきあってみたら意外に話が合ういいヤツ”かもしれないのに、つきあってみるという最初の一歩を踏み出さず、人間関係を遮断してしまう。これは非常にもったいないことだと思う。「お寿司は食べたことないけど、嫌いなんです」という外国人のようだ。

とはいえ、フランス人と外国人、外国人同士、フランス人同士など、それぞれがそれぞれに偏見があるのがフランス社会。筆者も他国の人に偏見が全くないとは正直言い切れない。

ただ、パリという他民族社会で生活する以上、相手が日本人であれ、フランス人であれ、イスラム教徒であれ、”その人自身”をまっすぐ見つめることが大切だと思う。人種や民族の「枠」にとらわれず、相手のことを知る努力をすることが必須だ。逆にそれができないと、他民族社会のバランスが崩れ、”異”が“共生”することはできなくなってしまう。

今月、後藤さんが殺害されたことを受け、日本だけでなく世界中でイスラム過激派にどう対抗していくかという話がよく挙げられるようになった。「イスラム教徒=悪」というイメージがマスコミを通して知らぬ間に伝わってしまっているように思う。

筆者と同じフランス語教室に通うリビア人女性はイスラム教徒だ。先週、彼女はこのようなことを聞いてきた。

「みなさん、イスラム教徒は怖いですか?私は、イスラム教徒はみんな悪だと思われているように感じます。先日、友人とレストランに入ったら、入店を断られました。私がベールをしたイスラム教徒だからです。」

 

人種や民族の「枠」を取っ払うというのは、口で言うほど簡単なことではない。偏見も、差別もなくならない。世界も変えられない。

要するに問題は、「自分がどう動くか」。他民族と平和に暮らすために、自分がどんな人間になるべきか。パリの地下鉄の中で、人種、民族、宗教様々な人を目にしながら考える。

 以上,,転載でした。※

 「アラビアのロレンス」をはじめ,植民地政策時代のイギリスやヨーロッパ列強の所業が原因で,現在の中東戦争があることを思えば,明日の命もままならず命がけの生活の毎日に明け暮れる民が週末の遊興に興じている人々を恨めしく思うのは当然でしょう。

 

 9.11については戦争景気が大好きなサウジ資本や死の商人の陰謀説もありますが,,最初のアメリカでの犠牲者は二千人余りでした。

 

 ,数の問題ではないというけれど,その後,報復と称して米国を中心とした諸国がアフガンや中東に兵を送り込んだり爆撃したりで自国の兵士も含め,十万人以上の死者累々。。。日本も共犯です。。もちろん私も例外ではないです。

 

 自らが起ここしたことの後始末もしないで,鉄砲の弾が飛んでこないところでマネーゲームに興じているとやがて報いが来るでしょうね。。。

 罪が無いという言い方をしますが,それは神の冒涜だとも言われます。

 何もせず傍観していることも罪の一つです。。。

 

 

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2015年11月18日 (水)

訃報!!阿藤快さん。

 俳優の阿藤快さんが自宅で亡くなっているのが発見されました。11月15日までに病死されていたようで,死因は大動脈破裂ということです。

 享年69歳。。。まだまだ惜しい人です。

 

 デイリースポーツニュース→ 阿藤快さん。死去69歳。自宅で発見

 

         【訃報】俳優の阿藤快さんが東京都内の自宅で急死

 

 大動脈瘤があるという病気は,それが急に破裂して命取りになる病気で,脳梗塞やクモも膜下出血などと同じく.前兆があって,気分が悪くなったりして倒れたりした直後に,病院に運んで医者の手当を受けていれば助かったかもしれない。。ということらしいです。

 独居で事務所のスタッフが訪ねて行って発見したということですから,独居老人の悲劇ですかね。。。

 私の場合なら,いつでも死と隣り合わせであることを自覚しているので自力で救急車を呼ぶ心の用意は常にしていて,実際119番にコールしたこともすでに何度かありますが。。

 阿藤快さんというのは本名ではないので改名は自由でしょうが,,私がTVでよく見ていた当時は,名前の快は海でなかったかと記憶しています。

 悪役顔ですが独特の個性でインテリジェンスも感じていました。

 私[,本来インテリは生理的に受け付けないのですが,,彼は悪役顔があるためか,私の好きなキャラのお一人でした。残念です。。

 60代です。冥途に行くのはまだまだ早いです。

 ご冥福をお祈りします。合掌!!

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2015年11月17日 (火)

弱い相互作用の旧理論(4)(Fermi理論)

弱い相互作用の旧理論の続きです。
 

前回から回り道をしたためもあり,大分間が空いたので,

まず前回までの内容を要約しておきます。
 

まず,β崩壊のS行列要素fi(-)±1や±iなど大きさ1

の位相因子を除い次式で与えられるとします。
 

fi(-)(2π)-6{/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(+pν~+P-P)M です。 
 

は不変振幅と呼ばれますが,これはスピノルu(,),

(,)etc.スピンsへの依存性を無視して,(),

()etc.と書けば, 

=Σi=S,,VA,i [~()Γi()] 

[~()(1+αiγ5)Γiν(ν)]

です。
 

ここで,Γi{,γ5,γμ,γ5γμ,σμν}, 

Γi{,γ5,γμ,γ5γμ,σμν}  です。
 

これらの16種類のガンマ行列:

Γi{,γ5,γμ,γ5γμ,σμν},

それぞれをΨ~()とΨ ()で挟んだ双一次形式:

Ψ~()ΓiΨ()与えられるカレントが示す4次元空間

の上での変換性によって,

1はスカラー(),γ5は擬スカラー(),γμはベクトル(),

γ5γμは軸性ベクトル(), σμν(/2)[γμ, γν]

は2階テンソル()と分類されます。
 

また,逆β崩壊のS行列要素fi(+)も同一の形になります

,このときは反応と逆反応の,「詳細釣り合いの原理

(Principle of detailed-balance)」から,係数Ci,αiをその

複素共役に置き換える必要があります。
 

このとき,スピノルの積でのラベルも次のように変わります。 

~()Γi() → u~()Γi(), 

~()(1+αiγ5)Γiν(ν)]  

→ uν~~(ν~)(1+αiγ5)Γi()] 

です。
 

さらにαi は単に複素共役でなく,i=A,Vではαi →+αi, 

i=S,,Tではαi → -αi と変える必要があります。
 

核子のスピノルについては,あらゆる運動量依存性を無視し,

それによって注意を許容される遷移のみに限定すれば,

不変振幅,Pauli2成分スピノルを用いた簡単な表現

になります。
 

すなわち,

()[{~()(1+αγ5)ν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}]

です。
 

ただし,,uは4成分スピノルの上2成分(大成分)

で与えられる核子の2成分スピノルで,σ=(σ123)

Pauliの2×2スピン行列です。

Σ=(Σ123)は,2つのPauliの2×2行列σを対角

要素とする4×4細胞対角行列を意味します。
 

()に比例する項:S,VはFermi遷移と呼ばれ,これは 

核子n,pについて,スピンの変化がゼロ:|Δ|0です。
 

他方, (σ)に比例する項:A,TはGamow-Teller遷移

と呼ばれ, 核子n,pについて,|Δ|1です。
 

原子核内のβ崩壊の観測では,Fermi遷移が,Gamow-Teller遷移

から分離されて分類されます。
 

一方,核内遷移では都合よく定義された角運動量状態間で 

遷移が生じますが,他方,自由中性子nのβ崩壊ではFermi遷移

Gamow-Teller遷移の両方が同時に寄与しています。
 

また,   ()×[{~()(1+αγ5)ν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ0ν(ν)}] 

(σ)×[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}] 

における因子:(1+αiγ5)(i=S,,TA)のうち,
αiγ5
比例する項はパリティの保存則を破るため,

1956年のLeeYangによる仕事=パリティ非保存の予想(Wu

よる検証)の以前には,非本義Lorent変換の1つである空間反転

(パリティ変換)の下でのS行列要素:Sfiの不変性を破らない

よう全て廃棄されていました。

 

しかし,LeeYangに従う弱い相互作用でのパリティの破れの

実験的発見以後,今やキーとなるシリーズ実験により,あらゆる

i,αiの完全な決定へと導くことになりました。


 パリティを破る項での定数αiは電子の縦偏極を測定
すること

で決定されます。
 

 この偏極を決める1つの方法は,原子内の崩壊に伴う電子散乱

の左右対称性を測定することに依ります。
 

 すなわち,電子の偏極PをP=(-N)/(+N)

で定義します。
 

 ただし, 電子のスピンは(1/2)σと書けますが,をその

電子の運動量,^/||を運動の向きを示す単位ベクトル

とするとき,σp^=+1(右巻き(right-handed:正のhelicity)

の電子の個数:つまり,電子自身の運動の向きに偏極したスピン

を持つ電子数をN,
 

 σp^=-1(左巻き(left-handed:負のhelicity)の電子の個数: 

つまり運動と逆向きスピンを持つ電子数をNとしました。
 

自由中性子nの崩壊同様,核内でのFermi遷移とGamow-Teller

遷移の両方で電子の反跳が無いという極限では,ニュートリノ

の放出角全体にわたって積分した後,電子の偏極Pは良い精度

で次のように与えられます。
 

すなわち,P=-||/=-|β|です。 

そこで,相対論的極限の|β| 1(光速)の極限では左巻きの

電子のみが放出されることになります。
 

=N/(+N),=N/(+N)とおけば, 

これらはそれぞれを電子の右偏極率,を左偏極率であり 

+P1であり,P=P-Pです。
 

それ故,P=-|β| ~ -1 ,0, 1を意味します。
 

  Coulomb散乱で入射電子の偏極がp≦1の場合,散乱角をθとすると

その角度に散乱された電子の偏極Pは,

=p(122sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2))+m2sin2(θ/2)}) 

となることが知られています。
 

これは,つまり原子内でβ崩壊があった場合,崩壊によって放出

された電子が原子内で散乱された結果,中心の核の反跳が無視

できるならCoulomb散乱と見なすことができて,その際の散乱

電子の偏極をも示す式と考えられます。
 

そこで, =m/(1β2)1/2より相対論的極限|β| 1

では,/0 なのでP → pです。


   相対論的極限でβ崩壊で放出される電子
が左巻きのみなら

p=-1なので,この高エネルギーの極限では崩壊後に原子

散乱された後に観測される電子の偏極もP=-1

左巻きのみのはずです。
 

そうして,同じ極限で,左巻き電子に対するスピン射影演算子

(1-γ5)/2となりますから, 左巻き電子の波動関数ΨLH

はΨLH(1-γ5)Ψ/2で与えられることもわかります。
 

このとき,ΨLH~(1+γ5)Ψ~/2です。
 

したがって,相対論的極限において正しい結果が実現されるため

には,全てのγ5の係数αiは+1 に等しくなければならないと結論

されます。

 ここまで,要約と前回の「弱い相互作用の旧理論(3)」の最後の

 部分の再掲載でした。()

さて,ここからが今日の新しい内容ですが,いきなり,私自身の注

から入ります。
 

β崩壊で放出される電子の偏極Pが,βee/c=e/Eeに対し,

P=-βe=-|βe |で与えられること,従って,相対論的極限:

βe →1(ve → c)では,P→ -1と左巻き電子のみになること ,

 
それ故,次の不変振幅の表現式: 

 (u){~()(1+αγ5)ν(ν)}

+C{~()(1+αγ5) γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}] 

における全てのγ5の係数αiが符号()も含め,正確に+1でなければ

ならないことを実験結果からだけでなく,理論の側からも証明を与え

たいのです。
 

ただし,厳密で完全な証明は難しいので,下記の私の(※注)では,

αi=+1 が,P=-βe=-|βe |なることと無矛盾であり,少なく

ともこれが理論の辻褄が合うための十分条件であることを示します。
 

(4-1):まず,前提として,β崩壊のS行列要素:Sfi(-)

最低次の形が,今まで通り次式で与えられるとします。
 

fi(-)(2π)-6{/(2ν~)}1/2  

×(2π)δ(+pν~+P-P)M   

=Σi,j=S,,VA,i   

[~()Γi()][~()(1+αiγ5)Γjν(ν)]

す。
 

因子,さらに反跳が小さいという近似で   

()[{~()(1+αγ5)ν(ν)}  

+C{~()(1+αγ5)γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}]  

と簡単になります。
 
そこで,β崩壊で放出される電子の偏極Pは,係数Ciへの依存性

を除けば次の式で与えられます。

(※各項の寄与が共通値であることを示せば係数は無関係です。)

P=(-N)/(+N) 

[Σ,|r{(1+γ5)/2}(e+me)Γν~Γ}

-Tr|(1-γ5)/2}(e+me)Γν~Γ}]

/[Σ,r{(e+me)Γν~Γ}]


これは,P=[Σ,|r{γ5(e+me)Γν~Γ}

/[Σ,r{(e+me)Γν~Γ}] 

と書けます。
 

上式のΣ,,(,)(ij){,,,,}の総和Σi,j

とし,ΓはΓ=(1+αiγ5i,ΓはΓ=(1±αjγ5j

あるとします。
 
ただし.Γの式の右辺の(±)符号は,j=V,Aのとき()であり, 

j=S,,Tのとき()です。
 

こうすれば不変振幅の形を偏極に体現したことになります。
 

しかし,特に初めから全てのi,jについてαi=αi=+1

仮定します。

すると, Γ=(1γ5i,Γ=(1±γ5j です。
 

このとき,Γν~Γ,

Γν~Γ(1+γ5)Γiν~(1±γ5)Γjなる形になります。
 

そこでまず,iの分類ごとに,これを計算します。
 

(1) i=Sのとき,Γν~Γ(1+γ5)ν~(1±γ5)Γj  

(1+γ5){1(±γ5)}ν~Γj なので,
 

j=V,Aなら,Γν~Γ(1+γ5)(1-γ5) ν~Γj0

 であり,

j=S,,Tなら,Γν~Γ(1+γ5)2ν~Γj

2(1+γ5)ν~Γj です。
 

(2)i=Pのとき,Γν~Γ(1+γ5) γ5ν~(1±γ5)Γj 

(γ5 1)ν~(1±γ5)Γjなので,i=Sのときと同じです。
 

故に,j=V,Aなら,Γν~Γ0 であり, 

j=S,,Tなら,Γν~Γ2(1+γ5)ν~Γj です。
 

(3)i=Vのとき, Γν~Γ(1+γ5)γλν~(1±γ5)Γj 

(1+γ5)(±γ5)γλν~Γj なので,
 

j=V,AならΓν~Γ(1+γ5)2γλν~Γj 

2(1+γ5)γλν~Γj であり,j=S,,Tなら, 

Γν~Γ(1+γ5)(1-γ5) γλν~Γj 0 です。
 

(4)i=Aのとき,Γν~Γ(1+γ5)γ5γλν~(1±γ5)Γj 

(γ51)γλν~(1±γ5)Γjなので,i=Vのときと同じです。
 

すなわち,j=V,AならΓν~Γ2(1+γ5)γλν~Γj 

であり,j=S,,Tなら,Γν~Γ0 です。
 

(5)i=Tのとき, Γν~Γ(1+γ5)σλτν~(1±γ5)Γj 

(/2)(1+γ5)[γλ,γτ]ν~(1±γ5)Γj 

(/2)(1+γ5){(±γ5)}[γλ,γτ]ν~Γjなので,
 

j=V,Aのときは,Γν~Γ0 であり, 

j=S,,Tのとき,Γν~Γ2(1+γ5)0σλτν~Γj

です。
 

以上から,i=V,Aなら,j=S,,Tではゼロ, 

i=S,,Tならj=V,Aではゼロとなって,(,)の組

(,,)の組は独立であることがわかります.
 

そして,既にP(擬スカラー)Fermi項にもGamow^Teller項にも

出現しない許容されない遷移カレントであるとわかっているので

以下では考察からはずします。
 

次に, 

P=[Σ|r{γ5(e+me)Γν~Γ} 

/[ΣTr{(e+me)Γν~Γ}]
 

の分母,分子において,Σをはずした各項を評価します。
 

上述のようにP(擬スカラー)のケースは排除し,( ,)(,)

の独立性を考慮して考察します。
 

①i=S,j=Sなら 


分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]2r{(e+me)(1+γ5)ν}

8ν~ であり,

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

 2r{γ5(e+me)(1+γ5)ν}=-8eν~ 

です。
 

核子側の因子の同じS(スカラー)についてもトレースを求め,

反ニュートリノの放出される方向の立体角dΩν~についての積分

を実行すると,ν~の奇関数についての項はゼロとなって消える

ことを考慮すれば,

結局,分母=8ν~であり,分子=-8ms0ν~ です。
 

②i=S,j=Tなら,

分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]

2r{(e+me)(1+γ5)νσλτ} 

i(r{eν~[γλ,γτ]}+Tr{eν~γ5 [γλ,γτ]}) 

8i(τν~λ-pλν~τ)8εαβλταν~β,
 

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

2r{γ5(e+me)(1+γ5)νσλτ} 

i(-mer{ν~[γλ,γτ]}

+mer{γ5ν~[γλ,γτ]}) 

8ei(Rτν~λ-sRλν~τ)8eεαβλτRαν~β

です。
 

これらは,λ,τについて反対称ですから,同じく反対称なΓ

の核子カレントと積和し,かつdΩν~についての積分の結果,

α=β=0以外の寄与はゼロのため,分母=分子=0 で偏極P

には寄与しません。
 

③i=V,,j=Vなら,
 

分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]

2r{(e+me)(1+γ5)γλνγτ} 

2[r(eγλνγτ)+Tr(eγ5γλνγτ)] 

8(eλν~τ+pτν~λ-gλτν~)

8iεαβλταν~β,
 

­分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

2r{γ5(e+me)(1+γ5)γλνγτ} 

=-2er{ν~γλνγτ)2er{γ5γλνγτ)
 

=-8e(λν~τ+sRτν~λλτν~)

8eiεαβλτRαν~β,
 

故に,前のi=Sと同様,

分母=8eν~, 分子=--8e0ν~ です。
 

④i=V,,j=Aなら,
 

分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]

2r{(e+me)(1+γ5)γλνγ5γτ} 

2[r(eγλνγτ)+Tr(eγλνγ5γτ)]
 

8(eλν~τ+pτν~λ-gλτν~)

8iεαβλταν~β,
 

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

2r{γ5(e+me)(1+γ5)γλνγ5γτ} 

=-2er{ν~γλνγτ)2er{γλνγ5γτ)
 

=-8e(λν~τ+sRτν~λλτν~)

8eiεαβλτRαν~βです。
 

故に,やはり,分母=8eν~, 分子=--8e0ν~

です。
 

⑤i=T,j=S,のときは,
 

分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]

2r{(e+me)(1+γ5)σλτν} 

8i(eτν~λ-peλν~τ)8εαβλτeαν~β,
 

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

2r{γ5(e+me)(1+γ5) σλτν} 

i(-mer{ν~[γλ,γτ]}+mer{γ5ν~[γλ,γτ]}) 

8ei(τν~λ-sλν~τ)8eεαβλταν~β,
 

故に, 分母=8eν~, 分子=--8e0ν~

です。

最後に,⑥i=j=Tでも,
 

分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}]

2r{(e+me)(1+γ5)σλτνσρσ}
 

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ}

2r{γ5(e+me)(1+γ5) σλτνσρσ}


以下,同様な
詳細計算は省略しますが,


やはり
,分母=8eν~, 分子=--8e0ν~ 

です。
 

以上から,

P=[Σ|r{γ5(e+me)Γν~Γ}

/[ΣTr{(e+me)Γν~Γ}] 

=-me0ν~/(eν~)=-me0/e

が得られました。
 

ここで,||1/(1βe2)1/2=Ee/e より,

0|1||2)1/2=βe /(1βe2)1/2=βe e/e

です。
 

したがって,確かに,

P=-me0/e=-βe=-|βe | が得られました。
 

しかし,もしもαi=+1を仮定しないなら,どうなるか??

を簡単な例で見てみます。
 

電子の偏極Pの式:

P=(-N)/(+N) 

[ΣA,B|r{(1+γ5)/2}(e+me)Γν~Γ}

-Tr|(1-γ5)/2}(e+me)Γν~Γ}]

/[ΣA,Br{(e+me)Γν~Γ}]
 

[ΣA,B|r{γ5(e+me)Γν~Γ}

/[ΣA,Br{(e+me)Γν~Γ}]
 

上式のΣA,B(,)=(,){,,,,}で

Σi,jとし,,Γ=(1+αiγ5i,Γ=(1±αjγ5jとするところ

までは前と同じです。

 ここで,前はαiαj=+1とは仮定しましたが,これを仮定せず

このままで計算してみます。

 すると,Γν~Γ,
 

Γν~Γ(1+αiγ5)Γiν~(1±αjγ5)Γj 

となります。

 

 したがって,特にi=S(スカラー)のときは, 

 Γν~Γ(1+αiγ5)ν~(1±αjγ5)Γj  

 =(1+αiγ5){1(±αjγ5)}ν~Γj なので,


 さらに,j=V,Aなら,
Γν~Γ

 =(1+αγ5)(1-αγ5)ν~Γj 

 =(1-ααj)ν~Γj であり,
 

 他方,j=S,,Tなら、

 Γν~Γ(1αγ5)(1+αjγ5))ν~Γj 

 ={1+ααj+αj)γ5}ν~Γj 

 です。
 

 特に,簡単な場合として,i=S,j=Sとすると,

 

Pの分母=Tr{(e+me)Γν~Γ}] 

=Tr{(e+me){1|2+α)γ5}ν}

4(1|2)ν~,
 

分子=Tr{γ5(e+me)Γν~Γ} 

2r{γ5(e+me){1|2+α)γ5}ν} 

=-4e+α)ν~ です。
 

 前と同じく,反ニュートリノの放出される方向の立体角dΩν~

について積分すると,ν~の奇関数についての項はゼロとなって

消えることから,
 

 結局,分母=4(1|α|2)ν~であり,

 分子=-4e(αα)0ν~ です。
 

 それ故,もしも電子の偏極Pへの寄与がi=S,j=Sの項しか

ないとした場合には,
 

 P=(分子)/(分母)

 =-{(α+α)/{(1|2)}(e0/e)であり,

 結局,P=-{(α+α)/(1|2)}|βe |

 となります。
 

 この右辺の値が,正確に,P=-|βe |となるのは, 

 (α+α) /(1|2)1:つまり,

 α+α1αα,or |1α|21のときに限るため,

 α=+1は,先に示したように,(分子)/(分母)=-|βe |

 なるための十分条件であるだけでなく,
 

 恐らく,,j=S,,,Tの全てに共通に

 (分子)/(分母)=-|βe |となるための必要条件でもあるはず

 です。

 (※元々仮定したの形では,i=jのケース以外を考察

 する必要はなかったのに,ついやってしまいました。

 (4-1終わり)
 

 かくして,不変振幅: 

 M ~ (){~()(1+αγ5)ν(ν)}

 +C{~()(1+αγ5)γ0ν(ν)}] 

(σ)[2{~()(1+αγ5)Σν(ν)} 

+C{~()(1+αγ5)γ5γν(ν)}] は,
 

 M ~ (){~()(1+γ5)ν(ν)}

  +C{~()(1+γ5)γ0ν(ν)}] 

  +(σ)[2{~()(1+γ5)Σν(ν)} 

  +C{~()(1+γ5)γ5γν(ν)}]
 

 とやや簡単になり,後は,係数C,,,を決定する

作業が残っているのみとなりました。
 

 今日は,ほとんど式の説明を与える私自身の注釈だけで,

テキストなどでは,通常,きれいな見かけの計算結果だけを表示

して書かないような,舞台裏の内容である,だらだらと長くて

泥臭い計算の羅列でしたが, 一応,これで終わります。
 

 (参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic QantumMechanics" (McGrawHill)

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2015年11月12日 (木)

散乱電子の偏極について

 前記事までの「散乱問題の復習」シリーズは5年前の2010年6月

から最後は2011年3/31までの過去記事「散乱の伝播関数の理論」

シリーズの(11)以降の応用編を再掲載したもので,最後はこの

シリーズの一番最後「散乱の伝播関数の理論(21)」からで,

これは,Bjorken-Drellのテキスト第7章の§7.9を紹介した

記事でした。


 しかし,実は第7章は§7.9が最後ではなく,§7.10で

終わって,次の第8章の輻射補正(=繰り込み)へと続いて

います。

 この最後の§7.10の電子散乱における偏極という項目は,

2010年,2011年に「散乱の伝播関数の理論」のシリーズ記事

をアップした当時,それほど重要ではないと考えて,これを

省略してさっさと次に進む道を選んだのでした。


 しかし,
今,電磁相互作用で行なった話を弱い相互作用の理論の

説明で参照しようという段階では,寧ろこれこそ重要な論題である

思われるため,自分のノートから,この最後の節についても記事

してアップします。

したがって,この記事は再掲載ではないですが前の続きです。

「散乱の伝播関数の理論」シリーズとしては(22)に相当する

ので私の付加した注釈=※(注)では,※(注22-)という番号を

れました。

※さて,以下本題です。

§7.10 Polarization in Electron Scattering

(電子散乱における偏極)


「散乱の伝播関数の理論(10)」において展開したスピン射影演算子
の実用的な応用として,電子のCoulomb散乱でのMott散乱の断面積に

立帰ります。

 後に弱い相互作用の項で論じるように,μ中間子の崩壊における

電子はその運動の向きに反平行なスピンに偏っています。

 

 中心に-Ze>0の電荷が固定されている場合の,ii0

満たすスピンiと4元運動量piを持ち,電荷がe<0,質量が

mの入射電子のCoulomb散乱の微分断面積を,終状態でのスピン

±sで総和したものは次式で与えられます。

 すなわち,dσ/dΩ=(42α22/||4)

Σ±sf|~(f,f)γ0(i,i)|2

です。


  
この式を評価計算するには射影演算子を用いてトレースを

取るというテクニックを利用します。

Σ()(1+γ5)/2とすると, これは, 

Σ()(,)=u(,),Σ()(,-s)=u(,) 

を満たすスピン射影演算子です。
 

 微分断面積を与える式:dσ/dΩ

(42α22/||4)Σ±sf|~(f,f)γ0(i,i)|2 

,Σ(i)を挿入すれば,


 
dσ/dΩ=(42α22/||4) 

Σ±si,±sf{~(f,f)γ0Σ(i)(i,i)|

{~(i,i)γ0(f,f)|
 

(42α22/||4)(82)-1r[γ0(1+γ5)(i+m)(i+m)]
 

(22-1) 

 Σ±si,±sf{~(f,f)γ0Σ(i)(i,i)|

{~(i,i)γ0(f,f)| 

=Σ±si,±sfΣαβγδλ[~α(f,f)(γ0)αβ{

(1+γ5)/2}βγγ(i,i)] 

[~δ(1,i)(γ0)δλλ(i,i)]
 

=Σαβγδλ(γ0)αβ(1+γ5)βγ(+m)γα

(γ0)δλ(+m)λδ 

(82)-1r[γ0(1+γ5)(i+m)(i+m)]
 

何故なら,Σ±sα(,)~β(,)(+m)αβ/(2)

であるからです。(22-1終わり)
 

r[γ0(1+γ5)(i+m)(i+m)]の計算において, 

nが奇数なら,r1..n0 となること,

および,rγ50,r(γ5ab)0,

r(γ5abcd)4iεαβγδαβγδ

公式を用いると,

 結局,以前の式に追加されたスピンベクトルsを含むΣ(s)

(1+γ5)/2のうちの(γ5)に比例する項トレースは消え,

入射電子のスピンで平均した(1/2)の係数が掛かるのみの次の

単なる非偏極電子のCoulomb散乱Mottの公式が再現されます。
 

dσ/dΩ={2α2/{42β2sin4(θ/2)}{1β2sin2(θ/2)}
 

かくして,入射電子ビ-ムのスピンが偏極していても偏極して

いなくても,その散乱の微分断面積が同じであるという計算結果

を得ましたが,

  
この結果は
実は,最低次の摂動計算においてのみの特殊な結果

であり,一般には正しくないことがわかっています。


  
最低次の計算でも,スピン偏極の観測できる効果を描写する

ため,運動方向に沿って整列したスピンを持つ入射電子を考察

します。
 

 整列したスピンの偏極入射電子に対して散乱角の関数として

散乱電子の偏極を計算します。
 

 まず,運動する電子のスピン4元ベクトルsをμ(0,)

 とすると,これは次の条件を満足します。

 (※ただし,ここでの議論に限り相対論を意識して,c=1の

 自然単位でなく光速cを陽に書く通常の単位を用いることに

 します。)

 すなわち,同じ電子の4元運動量をpμ(E/c,)

 とするとき, 

 (1) 2=sμμ(0) 2 2=-1

 (2) sp=0,あるいは,0β  

 (※ここで,β=c/E=/c;は速度です。)


なる2つの条件を満たします。


これらの条件は,質量がmの電子の静止系:pμ=(m/c,0),

 では,スピンsがsμ=(0,),||=1であり,sp=-sp=0,

 s2=-2=-1ですが,これらの等式の両辺は慣性座標系

 依らない不変量(=Lorentzスカラー)であることに由来します。

 ただし,ここでの3次元スピン:は,大きさが1/2の電子の

 スピン角運動量そのものではなくて,通常はσ/2で定義

 される大きさが1のPauliのσに相当します。


そして,この2条件から,s2(β)22=-1 ですから,

||={1+(β)2}1/2です。あるいは,s2(1-β2cos2θ)=1

より,||=1/(1-β2cos2θ)1/2 です。

 4元スピンsが空間的(spacelike;s2<0)なので,

β=|β|=v/cと書くとき,β>0 なら||>1 となり,

電子の3次元スピンはその静止時よりも大になります。
 

特に,またはβiに沿って偏極したスピン偏極を右巻き電子

(right-handed electron)と呼び,そのスピンベクトルをs

で記述すると,β=β||なので,||1/(1-β2)1/2

=E/mc2であり,0=β/(1-β2)1/2です。
 

 同様に,βiに反平行に偏極したスピン偏極を左巻き電子

(left-handed electron)と呼び,そのスピンベクトルをs

で記述すると,β=-β||なので,右巻き電子の

スピン同様,||1/(1-β2)1/2=E/mc2であり,他方,

0=-β/(1-β2)1/2です。

 特に始状態の入射電子と終状態の散乱電子の運動量ベクトル 

iμ=(Ei/c,i),fμ=(Ef/c,f),のときのスピン 

ベクトル:i,sfについての記述は,単に,上記のpμ,sμを, 

それぞれ,始状態のiμ,iμ,終状態のfμ,fμに置き換 

えるだけで,そのまま成立します。

 右巻き,および,左巻きのスピンべクトル:s,および,,

=-sを満たし.特に,よく参照される電子の偏極を記述

する便利な基礎を形成します。

 スピノルu(p,s),v(p,s)のスピン射影演算子:

Σ()(1+γ5)/2 のs=±s=-(±s)に対応する

固有状態は正,または負のhelicity(ヘリシティー)固有状態

として知られています。

 散乱電子の偏極は,P=(―N)/(+N)なる量で

測られます。(偏極とはhelicityの期待値(平均値)です。)

 
ただし,は正のhelicity(右巻き)で出現する電子の個数,

は負のhelicity(左巻き)で出現する電子の個数です。

 N,,および,Pは散乱のエネルギーや散乱角の関数で

与えられます。

 さて,
右巻きに偏極した入射電子のCoulomb散乱による

散乱電子の偏極Pを求めてみます。

 これは,公式:
dσ/dΩ=(42α22/||4)

Σ±sf|~(f,f)γ0(i,i)|2 ,および,

定義:P=(―N)/(+N) によって,

次のように与えられます。

すなわち, 

P=[|~(f,f)γ0(i,f)|2

|~(f,f)γ0(i,i)|2] 

/[|~(f,f)γ0(i,i)|2

|~(f,fL)γ0(f,i)|2]

です。

したがって, 

P=[r{γ0(1+γ5i)(i+m)γ0(1+γ5f)(f+m)} 

-Tr{γ0(1+γ5i)(i+m)γ0(1+γ5f)(f+m)}] 

/[r{γ0(1+γ5i)(i+m)γ0(1+γ5f)(f+m)} 

+Tr{γ0(1+γ5i)(i+m)γ0(1+γ5f)(f+m)}]
 

=Tr{γ0γ5i(i+m)γ0γ5f(f+m)}

/r{γ0(i+m)γ0 (f+m)} です。

(※何故なら,γ5の後にi,f,fLを1次でしか含まないもの

のトレースは全て消えるからです。※)
 

結局,入射電子が完全に右巻きである場合の散乱電子

の偏極P=(―N)/(+N)=P,

摂動の最低次では,Pが, 

P=Tr{γ0γ5i(i+m)γ0γ5f(f+m)}

/r{γ0(i+m)γ0(f+m)} 

で与えられることがわかりました。

 これのγ5が含まれない分母=Tr{γ0(i+m)γ0(f+m)}

については,既に以前の例で計算済みで, 

分母=Tr{γ0(i+m)γ0(f+m)}

8if4if42 です。

Coulomb散乱は電子のエネルギーが保存される弾性散乱なので,

f=Ei=E,if=E22cosθ=m22β22sin2(θ/2)

を代入すると,分母=82{1β2sin2(θ/2)} です。

 
一方, 分子=Tr{γ0γ5i(i+m)γ0γ5f(f+m)} 

 =Tr(γ0γ5iiγ0γ5ff)

 +m2r(γ0γ5iγ0γ5f) です。

 これの右辺第1項=Tr(γ0γ5iiγ0γ5ff) 

 =4i0f0×2if4i0f 0×2if

 -4f0i 0×2if4f 0i 0×2if

 -4f i ×pif4if ×sfi ですが,
 

f i (2/2)(β2cosθ),

if(2β/)(1cosθ)=sfi etc.より,

結局,右辺第1項=(44/2)(1β2)2cosθを得ます。
 

同様にして,右辺第2項=m2r(γ0γ5iγ0γ5f)

42(β2cosθ) です。

それ故, 分子=82{1(β22)sin2(θ/2)} です。
 

以上から, P=(分子)/(分母)

{1(β22)sin2(θ/2)}/{1β2sin2(θ/2)} 

1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}

が得られます。
 

これから,相対論的極限(/) 0,or β → 1では,

P → 1見て取れますが,これはCoulomb散乱の高エネルギー

極限では,入射電子の偏りがこの散乱の影響を受けないこと

を示唆しています。
 

もしも入射電子の右巻きの偏極が完全ではなくて,運動方向

に沿って部分的に偏極した入射ビームの場合には,散乱された

電子の偏極Pは,入射電子が完全右巻きのときのPを,

0(1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}} 

 と書きなおすとき,

 P=pP0

 =p(1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}} 

 と修正されるはずです。
 

ただし,pは入射電子の偏極であり,,をそれぞれ,

入射電子ビームの正,helicityの電子の個数として,

p=(―N)/(+N)=P-P与えられます。


 ここで,=N/(+N)は右偏極率,

=N/(+N)1-Pは左偏極率です。

そこで,(1+γ5i)/2+P(1+γ5i)/2

(1+pγ5i)/2なる等式が成立しますが,これを用いれば,

直ちに,P=pP0

=p(1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}

なる式が得られます。
 

 したがって,特に初期の入射電子が偏極していない:p=0

のときは,Coulomb散乱による散乱電子もP=0の非偏極のまま

です。


 
ここで,これらの偏極の結果と関わる幾何学的描像として,

スピノル波動関数(,)を有する運動電子のスピンが

単位ベクトル:nμ(0.)に沿った任意方向となす角度α

を定義します。
 

 すなわち,cosα=<Σn

=u(,)Σ(,)/(,)(,) 

(1β2)1/2~(,)γ5(,)でもって,

(,)のスピンsがとなす角αを定義します。
 

 ただし,Σは対角線上にPauliσが2つ並んだ4×4行列

です。
 

(22-2):何故なら,

(,)(,)=E/m=1/(1β2)1/2であり, 

Σn=γ0γ5n です。※
 

再び,射影演算子を挿入すれば, 

cosα=(1β2)1/2~,)γ5(,) 

(1β2)1/2~α(,)(γ5)αβΣ()βγγ(,) 

(1β2)1/2(+m)γα(γ5)αβ(1+γ5 )βγ/(4) 

(1β2)1/2r[(+m)(γ5)(1+γ5 )]/(4) 

です。

 
さらに,r[(+m)(γ 5)(1+γ5 )]

 =mTr(γ 5γ5 )=-mTr(ns)=-4msn=4sn

です。


 
スピンの方向単位ベクトル^^/||で定義すると, 

| |1/{1(sβ)2}1/2によって{1(sβ)2}-1/2^

ですから,結局,cosα=(1β2)1/2sn

[(1-β2)/{1(sβ)2}]/2^ が得られました。
 

これによれば,βのときは,|cosα|(1β2)1/2であり,
 

それ故,cosα=<Σn

=u(,)Σ(,)/(,)(,) 

で定義されたcosαは,


 
スピンが運動方向に垂直な場合,電子
の速度が大きくなり

β → 1の相対論的極限に達すると消えます。

 
一方,スピンが運動速度ベクトルに沿っている謂わゆる

helicity状態では,cosα=^であり,任意方向の単位

ベクトルを,特にスピンに平行, or 反平行に取った場合

にはcosα=±1です。
 

この場合の角度αを特にδで表わすことにすれば,

cosδ=±1です。

 そして,散乱電子ビームに対してcosαの平均値は次式

与えられます。


すなわち,cosα>=Σ±sω(,)cosα です。

 
ただし, ω(,)は運動量pとスピンsを持つ与えられた

終状態への遷移確率です。
 

ここでの和:Σ±sは最も便利な選択としては正負のhelicity

状態にわたる和とすることができます。


 するとcosδ=±1より,

cosδ>=ω(,)-ω(,)=P と書けます。
 

こうして,散乱された電子のスピンの偏極Pがこの電子の

スピンと運動量のなす角度δの余弦を決めるという式

を得ました。
 

初期に偏極がp=1であった正helicityの偏極入射電子

Coulomb散乱では,E>>mの高エネルギーで散乱角

がθ<<1のとき,

<cosδ> ~ <1-δ2/2 

1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}} 

122(θ/2) 2/{2+m2(θ/2) 2}1-m2θ2/(22)

.なので,<δ> ~ (/)θ です。

 
つまり,散乱電子のスピンと運動量のなす角度δは散乱角θ

 の(/)となります。
 

偏極の相対論的極限の評価は,直接,(/) 0 (or β → 1)

に対して偏極射影演算子を縮約することで,最も簡単に計算を

実行することができます。

この極限では,に平行なを持つ縦方向に偏った電子に対

するスピンの射影演算子は,さらに簡単にできます。
 

 β → 1に対して,

μ=pμ/(mβ){(1β2)1/2/β}μ0 

より, β → 1に対して,μ → pμ/m です。

 

(223):何故なら,| |1/{1(sβ)2}1/2によって, 

||1/(1β2)1/2ですから,{1/(1β2)1/2}(/|1 

[1/(1β2)1/2}/{mβ/(1β2)1/2}/(mβ) です。
 

また,

0(12)1/2{11/(1β2)}1/2

=β/(1β2) 1/2=Eβ/

=E/(mβ)-E(1β2)/(mβ) 

=E/(mβ)(1β2)1/2/β 

を得ます。(223終わり)
 

そこで, β → 1の極限で

(1±γ5)(+m)(1±γ5)(+m) です。

断面積を計算する際には,スピンの射影演算子が常にエネルギー

の射影演算子の前に位置するので,


相対論的極限で,
(1±γ5) (1±γ5)なる簡単化が成立

するわけです。

(224):何故なら, β → 1の極限でs → p/mなので,  

(1±γ5)(+m) (1±γ5/)(+m)ですが, 

2=p2=m2より,(1±γ5/)(+m)

(+m±γ5 (2/m+)(1±γ5)(+m)

となるからです。(224終わり)
 

 Coulomb散乱された散乱電子が(/) 0でさらに偏る

ことはないというP=pP0

=p(1[22sin2(θ/2)/{2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}

 → p の結果は,

こうした極限操作:(1±γ5) (1±γ5)によって直接

見ることができます。
 

すなわち,相対論的右巻き電子:

(i,i){(1++γ5)/2}(i,i)

相対論的左巻き電子:

(f,f){(1-γ5)/2}(f,f)

 へと散乱される行列要素は,相互作用がγμに比例する

ときは,~(f,f)γμ(i,i)  

= u~(f,f){(1++γ5)/2}γμ(1+γ5)/2}(i,i) 

=-u~(f,f)γμ{(1-γ5)/2}(1+γ5)/2}(i,i)0 

となります。

 
したがって,Coulomb散乱での衝突電子が高エネルギーと

なった相対論的極限では,正のhelicityから負のhelicity

の脱偏極は決して起こり得ないことがわかります。
 

この項目はこれで終了なので,今日はここで終わります。


 参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell

Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)

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2015年11月 8日 (日)

散乱問題の復習(12)(電子-電子散乱(メラー散乱2)

 散乱問題の復習=再掲載記事の続きです。

 前回,電子-電子散乱で終わってます。今回電子-陽電子散乱です。

Möller(メラー)の公式から,これの断面積を得るために代入則

に訴えます。

 

前の2010年8/27の記事「散乱の伝播関数の理論(19)(応用5)

では次のような代入を実行しました。

 

すなわち,(ε,k)⇔(ε1,-k1),(ε',k')⇔(ε2,+k2),

かつ(pi,si)⇔(p,s),(pf,sf)⇔(-p,s)なる

交換 or 代入です。

 

これによってCompton散乱の振幅:SfiCompと対消滅の振幅:SfiPair

が互いに変換し合うことを見ました。

 

電子-陽電子散乱の過程はBhaBha散乱と呼ばれていますが,

これのFeynman-diagramは以下の図7.15に示されるものです。

先述の電子-電子散乱の振幅:

fiM=(e2202)(E121'E2')-1/2

[{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{u~(p2')(-iγμ)u(p2)}

(-i){(p1-p1')2+iε}-1-{u~(p1')(-iγμ)u(p2)}

{u~(p2')(-iγμ)u(p1)}(-i){(p1-p2')2+iε}-1]

(2π)4δ4(p1'+p2'-p1-p2) において,

 

前例に習ってp1⇔p1,p1'⇔p1',p2⇔-q1',p2'⇔-q1

なる交換(代入)を行ないます。

 

さらに,以前の規則:

S=1-iεf∫d4yψf~(y)A(y)ψi(y)に従って全体に

かかる符号のチェンジを行ないます。

 

すると,BhaBha散乱振幅として

fiB=(e2202)(Ep1p1'qiq1')-1/2

[{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{v~(q1')(-iγμ)v(q1)}

(-i){(p1-p1')2+iε}-1

-{u~(p1')(-iγμ)v(q1')}{v~(q1)(-iγμ)u(p1)}

(-i){(p1+q1)2+iε}-1](2π)4δ4(p1'+q1'-p1-q1)

が得られます。

 

上式の右辺第1項はSfiMの右辺第1項に類似した電子-陽電子

の直接散乱を表わし,"第2項=消滅・生成項"は交換散乱に

対応しています。

 

これら2つの間の相対的(-)符号はSfiMへの代入に起因します。

 

fiMの式における終状態での電子の交換反対称性は,SfiB

の式では入射正エネルギー電子(p1)と(時間に逆行する)"

入射"負エネルギー電子(-q1'),または散乱電子p1'と

(-q1)の反対称性になります。

 

この反対称性を空孔理論の言葉で理解するため,相互作用前

の時刻の初期状態が正エネルギー電子p1を含み負エネルギー

の海が負エネルギー状態(-q1)の空孔以外には全て満たされ

ていることに着目します。

 

特に,負エネルギー電子は状態(-q1')にあり,そこで Fermi

統計によって初期状態はp1と(-q1')の交換の下で反対称です。

 

同様なことは終状態にもいえます。

 

電子陽電子の質量中心系(重心系)での散乱断面積を得るため,

代入:p1⇔p1,p1'⇔p1',p2⇔-q1',p2'⇔-q1 を,

以下の電子-電子散乱の式に適用します。

 

すなわち,電子-電子散乱では,

dσ~M=ε0-244/{E4(2β)}∫d31'd32'

(2π)-2δ4(p1'+p2'-p1-p2)(1/4)(16m4)-1

[{1/(p1'-p1)2}2{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}

{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

-(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2×

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν}

+(p1'⇔p2'の交換項)] 

です。

 

電子-陽電子散乱では,

dσ~B=ε0-244/{E4(2β)}∫d31'd31'

(2π)-2δ4(p1'+q1'-p1-q1)(1/4)(16m4)-1

[{1/(p1'-p1)2}2{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}

{Tr(m-1μ(m-1')γν}

-(p1'-p1)-2(p1+q1)-2×

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(m-1μ(m-1')γν}

+(p1'⇔-q1の交換項)]

です。

 

Möller散乱,つまりE>>mとしてトレ-ス計算を実行すれば

(dσ~/dΩ)B

={α2/(8E2)}[{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)

-2cos4(θ/2)/sin4(θ/2)+(1+cos2θ)/2]

得ます。

 

※(注):

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(m-1μ(m-1')γν}

=-32(p11')(p11'+2m2) です。

 

これの最右辺は明らかにp1'⇔-q1に対して変化しません。

 

よって,

{Tr(m-1μ(1+m)γν}{Tr(1'+m)γμ(m-1')γν}

=-32(p11')(p11'+2m2) です。

  

また,

Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(m-1μ(m-1')γν

=-32{(p12)2-2m2(p12)-m4+m4}

=-32(p11')(p11'+2m2)

です。

 

これも,p1'⇔-q1に対して変化しません。

 

そして,E>>mの相対論的極限での質量中心系:

11,1'=1'では,

(p1'-p1)2=2m2-2p1'p1~2(m2+E22cosθ)

2(1-cosθ) ~ -4E2sin4(θ/2)  です。

 

また,(p11)2=2m2+2p11~2(m2+E22)

~ 4E2,そしてp11'~E22cosθ~2E2cos2(θ/2)

です。

 

したがって,

(dσ~/dΩ)B

={α2/(2E2)}{1/(16E4)}

[4E4{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)-8E4cos4(θ/2)/sin4(θ/2)

+4E4{cos4(θ/2)+sin4(θ/2)}]

です。

 

故に(dσ~/dΩ)B

={α2/(8E2)}[{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)

-2cos4(θ/2)/sin4(θ/2)+(1+cos2θ)/2]

です。(注終わり)※

 

このシリーズ「散乱の伝播関数の理論」はこれで終わります。

続いて題名を変更して輻射補正(繰り込み)の最低次の計算に

移る予定です。 

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

 前記事の2010年9/6からPCトラブルなどいろいろあって,

この記事は東北大地震後の2011年3/31にアップした過去記事:

「散乱の伝播関数の理論(22)」からの再掲載です。

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散乱問題の復習(11)(電子^電子散乱'(メラー散乱1)

 散乱問題の復習=再掲記事の続きです。 

 

 電磁相互作用を受けての粒子散乱の最後の応用例として,

 電子-電子散乱,および電子-陽電子散乱の摂動計算を

 実行します。

 (※実は,当面の弱い相互作用論議へのツナギとしてこの記事

 を参照することが一連の記事再掲載の主目的です。※)

 

§7.9 Electron-Electron and Electron-Positron Scattering

 (電子-電子散乱,および電子-陽電子散乱)

 

 電子-電子散乱は,かつての記事「散乱の伝播関数の理論(13),

 (14),(15)(応用2)」で述べた電子-陽子散乱とほとんど同じ方法

 で扱うことができます。

 

 しかし,電子-電子散乱では電子の同等性のために生じるもう1つ

 のgraphがあります。

 

 この過程に対する2つのgraphsを下図7.13に示します。

 これらのdiagramsは関連する運動学を定義します。

 

まず,かつての電子-陽子散乱の散乱振幅を再掲すると,

fi=(eep02){m2/(Eif)}1/2{M2/(Epipf)}1/2

{u~(pf,sf)(-iγμ)u(pi,si)}

{u~(Pf,Sf)(-iγμ)u(Pi,Si)}(-i){(pf-pi)2+iε}-1

(2π)4δ4(Pf-Pi+pf-pi) です。

 

ただし,エネルギー・運動量の保存から,pf-pi=Pi-Pf です。

 

 そこで,同じように電子-電子散乱の振幅SfiMを与えると,

 SfiM=(e2202)(E121'E2')-1/2

 [{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{u~(p2')(-iγμ)u(p2)}

 (-i){(p1-p1')2+iε}-1

 -{u~(p1')(-iγμ)u(p2)}{u~(p2')(-iγμ)u(p1)}(-i)

 {(p1-p2')2+iε}-1](2π)4δ4(p1'+p2'-p1-p2)

 と書けます。

 

ただし,便宜上スピン添字:si,sj'etc.は伏せました。

 

(注20^1):Feynman規則に忠実に,頂点(vertex)には因子:

 (-ieγμ)を,光子内線にはその伝播関数(-i)(q2+iε)-1

 を対応させました。

 

実はベクトル粒子である光子の伝播関数は,正しくは,

(-i)(gμν+縦波ゲージ項)/(q2+iε)のテンソル形なのですが,

頂点因子を含めると,(-ieγμ)gμν(-ieγν)

=(-ieγμ)(-ieγμ) となります。

 

そして,qμに比例する縦波項は,ゲージ不変性(=電荷の保存)を

反映して,光子の分極(偏光:spin)εの横波性:εq=0 により消

えて寄与はゼロなので,伝播関数を省略したスカラー形で書きま

した。(注20-1終わり)※

 

 右辺の[ ]の中の"第1項=直接項"と"第2項=交換項

 (exchange term)"の間の相対的な(-)符号は電子の従うFermi統計

 に由来します。

 

 つまり,散乱振幅が2つの終状態電子の交換に対して反対称である

 ことが要求されます。

 

 Fermi統計はまた,初期電子の交換に対する反対称性をも要求します。

 

同様な論旨から,2つのBose粒子を含む状態から,またはBose粒子

状態への散乱振幅はそれらの交換の下で対称です。

 

この後者の性質は前の図7.11に対する電子-陽電子の対消滅過程

の散乱振幅での終状態光子の交換に対して確認されています。

 

さて,電子-電子散乱振幅:

fiM=(e2202)(E121'E2')-1/2

[{u~(p1')(-iγμ)u(p1)}{u~(p2')(-iγμ)u(p2)}(-i)

{(p1-p1')2+iε}-1

-{u~(p1')(-iγμ)u(p2)}{u~(p2')(-iγμ)u(p1)}

(-i){(p1-p2')2+iε}-1](2π)4δ4(p1'+p2'-p1-p2)

には,交換項が入ったときの(1/√2)や1/2のような追加の規格化

因子は導入されていません。

 

これは,fiから微分断面積を作る法則が始状態,または終状態に

同種粒子が存在することによっては変わらないからです。

 

ただ,既に対消滅過程でも述べたように,終状態に同種粒子が存在

するとき,全断面積を得るための積分においては,

σ~=(1/2)∫(dσ~/dΩ)dΩのように1/2因子を含む必要がある

ことには注意を要します。

 

一方,始状態(初期状態)においては同種粒子に対して特別な因子は

現われません。

 

何故なら,入射流束(flux)は粒子が異種か,同種かを問わず不変で

あるからです。

 

電子-電子散乱はこの法則の明確で単純な例になっています。

 

なお,SfiMの右辺の"第2項=交換項"は,移行運動量 or 運動量遷移

(momentum-transfer):(p1'-p1)が小さい前方散乱近傍では無視

できます。

 

この極限では,散乱振幅は正確にCoulomb散乱の振幅に等しくなり

粒子の統計には依存しません。

 

さて,散乱振幅から今まで通りのやり方で偏りのない電子の散乱

に対する微分断面積が得られます。

 

すなわち,慣性中心系(重心系)では,

dσ~=e44/{E4(2β)}∫d31'd32'(2π)-2

δ4(p1'+p2'-p1-p2)(1/4)(16m4)-1[{1/(p1'-p1)2}2

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

-(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν}

+(p1'⇔p2'の交換項)] です。

 

Eは慣性中心系での各粒子のエネルギー,βはその速度です。

2つの初期電子の相対速度は2βです。

 

(注20-20):

 2体散乱の慣性中心系(重心系)では,121'+2'=0

 なので,|1|=|2|,|1'|=|2'|です。

 

そして,散乱(衝突)前後のエネルギー保存則より,

1+E2=E1'+E2'であって,しかも粒子は全て電子なので質量

も同じmですから粒子エネルギーは全て同じ値で,

1=E2=E1'=E2'です。

 

そこで,この全て同じのエネルギーをEと書くわけです。

 

また,重心系で全ての粒子に共通な速度の大きさを,

β=|1|=|1|/E1=|2|=|2|/E2とおくと,

12=0 より2=-1なので,|12|=2β

と書けます

 

また,(1/4)Σs1,s2,s1',s2'{u~α(p1')(γμ)αββ(p1)}

{u~γ(p2')(γμ)γδδ(p2)}{u~λ(p2)(γν)λσσ(p2')}

{u~ξ(p1)(γν)ξηη(p1')}

=(1/4)(16m4)-1{(1'+m)ηαμ)αβ(1+m)βξ}(γν)ξη}

{(2'+m)σγμ)γδ(2+m)δλν)λσ}

=(1/4)(16m4)-1{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}

{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν},  

 

(1/4)Σs1,s2,s1',s2'{u~α(p1')(γμ)αββ(p1)}

{u~γ(p2')(γμ)γδδ(p2)}{u~λ(p1)(γν)λσσ(p2')}

{u~ξ(p2)(γν)ξηη(p1')}

=(1/4)(16m4)-1{(1'+m)ηαμ)αβ(1+m)βλν)λσ

(2'+m)σγμ)γδ(2+m)δξν)ξη}

=(1/4)(16m4)-1

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν}

 

です。(注20-2終わり)※

 

 相対論的エネルギーでは,この2βは光速の2倍の値に近づきます

 が,特殊相対性理論と矛盾するものではありません。

 

 事実,1つの電子の速度を他の電子から見るなら決して光速は超え

 ません。

 

(※相対論では有り勝ちな光速度不変に対する誤解の1つですね。) 

 

そして,(p1'⇔p2'の交換項)は,dσ~における右辺最初の2項で

1'とp2'を交換して得られる2つの付加項の存在を示しています。

 

 直接散乱と交換散乱の双方において出現する干渉項は唯1つの長い

 トレース因子を含みます。

 

微分断面積に寄与する行列要素の平方(ノルムの2乗)を表示する

図形的方法は,2つのループと2つのトレース項因子を持つ直接項

と,1つのトレース因子のみ持つ干渉項の違いを明示します。

(図7.14:Pending)

 

これらのdiagramsは,添字μ,νの順序を保持しつつスピノ-ル因子

を直線的に求めるときには便利です。

 

ライン上の白丸は分母因子:(p2-m2)-1が現われないことを注意す

るものです。

 

以下,「散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)」で与えたγ行列に関

する定理を用いて具体的にトレース因子を評価します。

 

特に,干渉項の8個のγ行列の積のトレースの計算における縮約には

[性質6]:(ⅰ)γμγμ=4・1,(ⅱ)γμγμ=-2,

(ⅲ)γμabγμ=4ab,(ⅳ)γμabcγμ=-2cba,

(ⅴ)γμabcdγμ=2(dabccbad)

が非常に有用です。

 

r(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν

おいて,例えば相対論的エネルギーE>>mを想定してm2に比例

する項を無視すれば,奇数個のγ行列の積のトレースへの寄与は

ゼロなので,これはTr(1μ1γν2μ2γν)となります。

 

そして[性質6]の(ⅳ)から,γν2μ2γν=-22γμ2'

なので,Tr(1μ1γν2μ2γν)

=-2Tr(1μ12γμ2') です。

 

さらに,(ⅲ)よりγμ12γμ=4p12なので,結局,

Tr(1μ1γν2μ2γν)=-8p12Tr(1'2')

=-32(p12)(p1'p2') を得ます。

 

(注20-2):実際に正しくは,

 Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν

 =-32(p12)(p1'p2')+m2{Tr(γμγν2μ2γν)

 +Tr(γμ1γνγμ2γν)+Tr(γμ1γν2μγν)

 +Tr(1μγνγμ2γν)+Tr(1μγν2μγν)

 +Tr(1μ1γνγμγν)}+m4Tr(γμγνγμγν)

 です。

 

そして,Tr(γμγν2μ2γν)+Tr(γμ1γνγμ2γν)

+Tr(γμ1γν2μγν)+Tr(1μγνγμ2γν)

+Tr(1’γμγν2μγν)+Tr(1μ1γνγμγν)

=-2Tr(γμ2γμ2')+4p2μTr(γμ1)

+4p2'μTr(γμ1)+4p2μTr(1μ)+4p2'μTr(1μ)

-2Tr(1μ1γμ) です。

 

よって,これは16{(p22')+(p12)+(p12')+(p1'p2)

+(p1'p2')+(p1'p1)}

=16{(p12)+(p1'p2')+(p1+p2)(p1'+p2')}

です。

 

ところがp1+p2=p1'+p2',それ故p12=p1'p2'ですから,

さらに,16{2(p12)+(p1+p2)2}=32{2(p12)+m2}

に帰します。

 

 また,Tr(γμγνγμγν)=-2Tr(γνγν)=―32 です。

 

 以上から,

 Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν

 =-32{(p12)2-2m2(p12)-m4+m4}

 =-32(p12)(p12-2m2) を得ます。

 

 一方,[性質4]:Tr(1..n)

 =a12Tr(3..n)-a13Tr(24..n)+..

 +a1nTr(2..n-1),

 

 特にTr(1234)

 =4(a1234+a1423-a1324)より,

 Tr(1'+m)γμ(1+m)γν

 =4{p1'μ+p1'ν-gμν(p11'-m2)}

 です。

 

同様に,Tr(2'+m)γμ(2+m)γν

=4{p2'μ2ν+p2'ν2μ-gμν(p22'-m2)}ですから,

結局,

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

=16{p1'μ+p1'ν-gμν(p11'-m2)}

{p2'μ2ν+p2'ν2μ-gμν(p22'-m2)}

です。

 

したがって,

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

=16[(p1'p2')(p12)+ (p12)(p1'p2')+(p1'p2)(p12')

+(p12')(p1'p2)-(p11'-m2)

{(p22')+(p2'p2)}-(p22'-m2){(p11')+(p1'p1)}

+4(p11'-m2)(p22'-m2)] です。

 

ところが,保存則:p1+p2=p1'+p2'によって,

12=p1'p2',p12'=p1'p2,p11'=p22'ですから,

結局,

{Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

=32{(p12)2+(p12')2-2m2(p11'-m2)}

を得ます。

 

(注20-3終わり)※

 

(注20-4):以上から,

 dσ~=e44/{E4(2β)}∫d31'd32'(2π)-2

 δ4(p1'+p2'-p1-p2)(1/4)(16m4)-1[{1/(p1'-p1)2}2

 {Tr(1'+m)γμ(1+m)γν}{Tr(2'+m)γμ(2+m)γν}

 -(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2

 {Tr(1'+m)γμ(1+m)γν(2'+m)γμ(2+m)γν}

 +(p1'⇔p2'の交換項)]

 は次のように書けます。

 

dσ~=e44/{E4(2β)}(1/2)∫d31'd32'(2π)-2

δ4(p1'+p2'-p1-p2)[{1/(p1'-p1)2}2

{(p12)2+(p12')2-2m2(p11'-m2)}

+(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2(p12)(p12-2m2)

+{1/(p2'-p1)2}2{(p12)2+(p11')2-2m2(p12'-m2)}

+(p2'-p1)-2(p1'-p1)-2(p12)(p12-2m2)]

です。

 

 ここで,慣性中心系では,p12=E22,p11'

 =E22cosθ=p22',p12'=E21(-1')cosθ

 =E22cosθ=p1'p2,(p1'-p1)2=2m2-2p11'

 =2(m2-E22cosθ)=-22(1-cosθ),(p2'-p1)2

 =2m2-2p12'=2(m2-E22cosθ)=-22(1+cosθ)

 です。

 

 ただし,1=-2 です。

 

 故に,dσ~の右辺[ ]の中:

 {1/(p1'-p1)2}2{(p12)2+(p12')2-2m2(p11'-m2)}

 +(p1'-p1)-2(p2'-p1)-2(p12)(p12-2m2)

 +{1/(p2'-p1)2}2{(p12)2+(p11')2-2m2(p12'-m2)}

 +(p2'-p1)-2(p1'-p1)-2(p12)(p12-2m2)

 は次のように書けます。

 

[ ]=(1/4)p-4

[{(E2+p2)2+(E2+p2cosθ)2-2m22(1-cosθ)}/(1-cosθ)2

+{(E2+p2)2+(E2-p2cosθ)2-2m22(1+cosθ)}/(1+cosθ)2

+2(1-cosθ)-1(1+cosθ)-1(E2+p2)(E2+p2-2m2)/{(1-cosθ)

(1+cosθ)}]=..(中略)

 

=(1/2)p-4[4(E2+p2)2/sin4θ-3(E2+p2)2/sin2θ

+p4(1+4/sin4θ)] です。

 

ただし,p≡|| としました。

 

 p1'≡|1'|と置くと,β=p/E=p1'/E1'により,

 2p1'=2E1'β となります。

 

故に,∫{d31/(2p1')}{d32/(2E2')}δ4(p1'+p2'-p1-p2)

=(4E2β)-1∫d31/(2Eβ)}{d32/(2E)}

δ4(p1'+p2'-p1-p2)

=(dΩp1'/2)∫01'dp1'∫d424(p1'+p2'-p1-p2)

δ(p2'2-m2)θ(E2')

 

=(dΩp1'/2)∫01'dp1'δ((p1+p2-p1') 2-m2)

θ(E1+E2-E1')

=(dΩp1/2)∫02EE'dE'δ(4E 2-4EE')

=dΩp1'/8です。。

 

(注20-4終わり)※

 

したがって,微分断面積として,

(dσ~/dΩ)M={α2/(4E2)}{(E2+p2)/p2}2

[4/sin4θ-3/sin3θ+{p2/(E2+p2)}2(1+4/sin4θ)]

が得られました。

 

特に,E>>mでp~Eの高エネルギー極限では,

(dσ~/dΩ)M ~ {α2/(4E2)}(3+cos2θ)2/sin4θ

となります。

 

dσ~/dΩ

={α2/(8E2)}[{1+cos4(θ/2)}/sin4(θ/2)

+2/{sin2(θ/2)cos2(θ/2)}+{1+sin4(θ/2)}/cos4(θ/2)]

とも書けます。

 

これはm2が無視できるときのみ正しい式です。

 

これらはメラー(Möller)の公式と呼ばれています。(つづく)

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

 以上,2010年9/6の過去記事「散乱の伝播関数の理論(20)」

 の再掲載です。

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散乱問題の復習(10)(対消滅)

 散乱問題の復習=再掲記事の続きです。

  制動輻射からCompton散乱までの話が終了しましたが,これら

  のFeynmanグラフとの継続性から,

 今回はその双対グラフとして,
荷電粒子-反粒子対(電子-陽電子対)

 が光子(γ線)へと対消滅する振幅,断面積の評価計算に入ります。

 

 

§7.8 Pair Anihilation into Gamma Rays(γ線への対消滅)

 

 下に再掲のCompton散乱に対するFeynman diagram(図7.10)

を横に向けると,かなり物理的に興味深いプロセスに遭遇します。

すなわち,電子-陽電子対の2つの光子への消滅です。

 

そして,上図7.11に示す運動学に関連したS行列要素は,

運動量空間では次のように書けます。

 

fiPair=e2{m2/(4E12ε02)}1/2(2π)4

δ4(k1+k2-p-p)v~(p,s)

[(-iε2){i/(1-m)}(-iε1)

+(-iε1){i/(2-m)}(-iε2)]u(p,s)

です。

 

これは,Bose統計で要求されるように2つの光子の入れ換え

に対しては対称です。

 

これまでのFeynman伝播関数(propagator)に関する記述では,この

プロセスは過去に生成された正エネルギー:pの電子が負エネル

ギー状態:-pに散乱されて伝播し過去に帰る,という描像に対

応します。

 

そして経路に沿って2つの光子を生成します。

 

つまり,エネルギーを輻射場へと2回手放します。

 

こうした過程が起こり得るのは最低次でe2のオーダーです。

  

何故なら,エネルギー・運動量の保存により,運動学的に対消滅

から単一の光子に転化することは有り得ないからです。

 

さらに,SfiPairの2つの光子の入れ換え対称性が保証されるため

には両方のグラフが含まれる必要があります。

 

ところで,すぐ前に考察したCompton散乱振幅を見返すと,

  

fiComp={e2/(ε02)}(2π)4δ4(pf+k'-pi-k)

(4k0k' 0)-1/2{m2/(Efi)}1/2

u~(pf,sf)[(-iε'){i/(i-m)}(-iε)

+(-iε){i/(i'-m)}(-iε')]u(pi,si)

です。

 

これと,今の対消滅の振幅: 

fiPair=e2{m2/(4E12ε02)}1/2(2π)4

δ4(k1+k2-p-p)v~(p,s)

[(-iε2){i/(1-m)}(-iε1)

+(-iε1){i/(2-m)}(-iε2)]u(p,s)

を比較して見ると,

 

非常に強い類似性に気が付くはずです。

 

実際,(ε,k)⇔(ε1,-k1),(ε',k')⇔(ε2,+k2),

かつ,(pi,si)⇔(p,s),(pf,sf)⇔(-p,s) 

なる交換(代入)によって,振幅SfiCompとSfiPairは互いに変換

し合うことが見て取れます。

 

 これは,任意の順序に対して正しく,タイプ:A+B → C+D

 の反応を,例えばA+C~ → B~+Dなるプロセスに関連付ける

 "一般的な代入法則=詳細釣り合いの原理

 (principles of detailed Valance)" の1例になっています。

 

 この代入規則の別の例は下の再掲:図7:8 

 に対応する制動輻射(Bremsstrahlung)の振幅:

 

 SfiBrem=e2∫d4xd4yψ~f(x)[-i(x;k)iSF(x-y)

 (-iγ0)A0Coul(y)+(-iγ0)A0Coul(x)iSF(x-y)

 {-i(y;k)}]ψi(y);

  

 A0Coul(x)≡-Ze/(4πε0||)(e<0 は電子の電荷),

 

 および,下図7.12に示す対創生(対生成:pair production)の振幅

 です。

 

 さて,対消滅に戻って,

 fiPair=e2{m2/(4E12ε02)}1/2(2π)4

 δ4(k1+k2-p-p)v~(p,s)

 [(-iε2){i/(1-m)}(-iε1)

 +(-iε1){i/(2-m)}(-iε2)]u(p,s)

 から,

 

 もう,お馴染みのステップで微分断面積の構成に進みます。

 

 偏りのない入射陽電子-電子(電子が静止の実験室系)を仮定

 した結果は,

 

 dσ~={e4/(2πε0)2}∫{m/(Eβ)}(―1)(1/4)(4m2)-1

 Tr(m-){ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p2)}

 (+m){ε11ε2/(2p1)+ε22ε1/(2p2)}

 {d31/(2k1)}{d32/(2k2)}δ4(k1+k2-p-p)

  です。

 

ただし≡p/E(p≡||)は入射陽電子の速さです。

 

また,右辺の因子1/4は電子と陽電子の初期spin状態の平均に由来し,

マイナス符号は陽電子スピノールの規格化に由来します。

 

(※標的電子が静止の実験室系では,E=m,つまりm/E=1

であり標的に向かう速さは||=β=||/Eです。)

 

 行列要素の単純化された形は,実験室系での横波ゲージの選択:

 ε1=0,ε2=0,および,Compton散乱で適用したのと同じ

 交換則(代入則)のためです。

 

 (※実験室系では,初期電子の4元運動量はp=(m,0)で,光子の

 4元spin(偏り)はそれぞれ,ε1=(0,ε1),ε2=(0,ε2)です。)

 

(注19-1):上記dσ~の具体形を説明するため,まず,

 A≡v~(p,s)[ε2(1+m)ε1/(-2p1)

 +ε1(2+m)ε2/(-2p1)]u(p,s)

 とおきます。

 

 すると,(+m)εiu(p,s)

 =-εi(-m)u(p,s)=0 なので,

 A=v~(p,s)[ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p1)]

 u(p,s) と簡単化されます。

 

そして,電子spinによる総和の寄与は,

Σ±s-β(p,s)u~λ(p,s)=(p+m)βλ/(2m)

です。

 

同様に,陽電子spinによる総和の寄与は,

-Σ±s+δ(p,s)v~α(p,s)

=Σr=34εrδr(p)w~αr(p)

=Σr=14εrδr(p)w~αr(p)(m-)δα/(2m)

=(m-)δα/(2m)

です。

 

故に,Σ±s-,±s+|A|2

=Σ±s-,±s+{v~α(p,s)

[ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p1)]αββ(p,s)}

{u~λ(p,s)[ε11ε2/(2p1)+ε22ε1/(2p1)]λδ

δ(p,s)}

 

=(4m2)-1(m-)δα

[ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p1)]αβ

(p+m)βλ[ε11ε2/(2p1)+ε22ε1/(2p1)]λδ

と書けます。

 

すなわち,Σ±s-,±s+|A|2=(4m2)-1

Tr(m-){ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p2)}

(+m){ε11ε2/(2p1)+ε22ε1/(2p2)}

なる式を得ます。(注19-1終わり)※

 

さて,トレース因子の具体的計算に入ります。

まず,Tr(m-)ε21ε1(+m)ε22ε1

=Trε12ε2(+m)ε11ε2(m-)

=Tr(m-)ε12ε2(+m)ε11ε2より,

 

dσ~の右辺トレース因子のうち分母が4(p1)(p2)の2つの

項は等しいことがわかります。

 

一方,T1≡Tr(m-)ε21ε1(+m)ε11ε2とおくと,

前のCompton散乱におけるトレース計算と同じく

ε12=-1,k12=0 によって,m,m2を因子に持つ項の寄与は

ゼロです。

 

そこで,T1=-Trε21ε1ε11ε2

=-8k1{k1+2(k1ε2)(pε2)} です。

 

ところが,保存則:k1+k2=p+pよりp-k1=k2-p

ですからk1=k2です。

 

また,pε2-k1ε2=k2ε2-pε2=0より,

ε2=k1ε2 です。

 

そこで,結局,T1=-8k1{k2+2(k1ε2)2} です。

 

同様に,T2≡Tr(m-)ε12ε2(+m)ε22ε1

=-Trε12ε2ε22ε1

=-8k2{k2+2(k2ε1)(pε1)} より,

 

2=-8k2{k1+2(k2ε1)2} を得ます。

 

最後に,T3≡Tr(m-)ε21ε1(+m)ε22ε1

=Tr(m-)ε12ε2(+m)ε11ε2とおけば,

=-p+(k1+k2) より,

 

3=Tr(+m)ε21ε1(+m)ε22ε1

-Tr(12)ε21ε1(+m)ε22ε1

=8(k1)(k2){2(ε1ε2)2-1}

+8(k2)(k1ε2)2+8(k1)(k2ε1)2 です。

 

したがって,

Tr[(m-){ε21ε1/(2p1)+ε12ε2/(2p2)}

(+m){ε11ε2/(2p1)+ε22ε1/(2p2)}]

=(1/4)[T1/(k1)2+T2/(k2)2

 +2T3/{(k1)(k2)}]

=2{-k2/k1-k1/k2+4(ε1ε2)2-2}(ki≡|i|)

を得ました。

 

 これから,dσ~={e4/(2πε0)2}{m/(Eβ)}

 ∫{d31/(2k1)}{d32/(2k2)}δ4(k1+k2-p-p)

 (-2/4)(4m2)-1{-k2/k1-k1/k2+4(ε1ε2)2-2}

 なる表式を得ます。

 

最後に残る唯一の仕事は実験室運動系でのδ関数の評価です。

 

dσ~の右辺のδ関数因子に対して積分d32,および,d31

うち立体角を除く変数1≡|1|による積分dk1を実行します。

 

すると,∫{d31/(2k1)}{d32/(2k2)}

δ4(k1+k2-p-p)

=(1/2)∫01dk1dΩk1δ((p+p-k1)2)

θ(E+E-k1)

=(1/2)∫01dk1dΩk1δ((p+p)2-2k1(p+p))

θ(E+E-k1)

と書けます。

 

すなわち,(dΩk1/2)∫0E++m1dk1

δ(2m2+2mE-2k1(m+E-pcosθ))

=(1/4)m(m+E)/(m+E-pcosθ)2dΩk1 

(p≡||) です。

 

そこで,β=||/E=p/E)より,

 

dσ~/dΩk1

={e4/(2πε0)2}(m/p)(-2/4)(4m2)-1

{-k2/k1-k1/k2+4(ε1ε2)2-2}

(1/4)m(m+E)/(m+E-pcosθ)2;

(p≡||) を得ます。

 

ただし,k1=|1|=m(m+E)/(m+E-pcosθ)

です。

 

これを整理すると, 

dσ~/dΩk1=α2(m+E)/[8p(m+E-pcosθ)2]

{-k2/k1-k1/k2+4(ε1ε2)2-2} です。

 

ただし,αは微細構造定数(structure constant)で,

c=hc=1の自然単位ではα≡e2/(4πε0)です。

(hc≡h/(2π);hはPlanck定数)

 

そして,エネルギー・運動量の保存則により, 

2=|2|=m+E-k1

=(m+E)(E-pcosθ)/(m+E-pcosθ)

=k1(E-pcosθ)/m ですから,

 

2/k1=(E-pcosθ)/m,k1/k2

=m/(E-pcosθ)/m です。

 

結局,入射電子と陽電子のspinに特定の偏りを考慮しない対消滅

の微分断面積が,

dσ~/dΩk1=α2(m+E)/[8p(m+E-pcosθ)2]

{(E-pcosθ)/m+m/(E-pcosθ)+2-4(ε1ε2)2}

で与えられることがわかります。

 

さらに,終光子のspin(偏光)についても偏りのない対消滅の

総断面積σ~を求めるため,終光子のspinと立体角dΩk1

わたって上記のdσ~/dΩk1を総和し積分します。

 

ただし,dΩk1積分については注意が必要です。

 

というのは終状態は2つの同種粒子を含むからです。

 

上のdσ~/dΩk1の式は光子の1つがdΩk1の中に現われる事象

をカウントしたものですが,光子の区別不可能性の故,検知される

1光子が2つの光子のうちのどちらか一方であることしかわかり

ません。

 

dσ~/dΩk1は,微分断面積としてはこのままでいいのですが,

全立体角にわたって積分する場合には,各状態を正確に2回

カウント(double-count)することになります。

 

そこで,正しくはσ~=(1/2)∫(dσ~/dΩk1)dΩk1

=(1/2)∫0dφk1-11d(cosθk1)(dσ~/dΩk1)

です。

 

 (※積分を模式的に総和の記号Σで表わせば,Σk1,k2dΩk1dΩk2

 ですが,これはk1,k2が同種粒子のときには,明らかにk1<k2

 k2<k1を二重にカウントするので1/2を掛けるのは当然です。)

 

積分を実行して任意のエネルギーレベルでの全断面積σ~を計算

するのは容易ではありませんが,低エネルギーと高エネルギーの

近似式は容易に得られます。

 

まず,低エネルギー極限(β<<1)では,→ 0,1→-2

であり,光子の偏りの平均は(1/2)Σε1,ε21ε2)2=1/2

ですから,σ~={α2π/(β2)}{1+O(β2)} です。

 

一方,高エネルギーの超相対論的極限では,

σ~={α2π/(mE)}

{ln(2E/m)-1+O((m/E)ln(E/m))+..} です。

 

高エネルギー極限では,先に示した微分断面積: 

dσ~/dΩk1=α2(m+E)/[8p(m+E-pcosθ)2]

{(E-pcosθ)/m+m/(E-pcosθ)+2-4(ε1ε2)2}

 

における因子の[ ]内の最初の2項は,等しく対消滅の主オーダー

に寄与しますが,最後の2項は(m/E)だけ小さい寄与をします。

こうした結果は,最初1930年にDiracによって得られました。

 

(注19-2):まず,低エネルギー極限では,

120,1=-2 なので,θ=π

1/2)Σε1,ε2(ε1ε2)2=(1+cos2θ)/2=1,

故にΣε1,ε21ε2)2=Σε1,ε2(ε1ε2)2=2 です。

 

(12のなす角がθのときΣε1,ε2(ε1ε2)2=1+cos2θとなる

理由については,Compton散乱の断面積について書いた記事

散乱の伝播関数(17)(応用4)」の最後の部分を参照して下さい。)

 

そこで,低エネルギーでは,

σ~={πε02α2(m+E)/(2p)}

-11dz[(E-pz)/{m(m+E-pz)2}

+m/{(m+E-pz)2(E-pz)} 

~{πα2(m+E)/(2p)}

-11dz[(E-pz){1+pz/(mE)}2/{m(m+E)2

m{1+pz/(mE)}2(1+pz/E)/{(m+E)2}}

です。

 

故に,σ~={πα2(m2+E2)/(2mp(m+E)}

-11{1+pz/(mE)}2dz

+(p/E)(m2-E2)∫-11z{1+pz/(mE)}2dz

={πα2/(2mp(m+E)}

[(m2+E2)/{2+(2/3)p2/(m+E)2}

+(4/3)(p2/E)(m-E)] す。

 

ここで,E=m,β=p/E=p/mより,

=mβとおけば,結局,

σ~={α2π/(β2)}{1+O(β2)} を得ます。

 

一方,高エネルギー極限のp→ ∞ではθは固定されないので,

Σε1,ε21ε2)2=1+cos2θです。

 

そこで,σ~={πα2(m+E)/(2p)}

-11dz[(E-pz)/{m(m+E-pz)2}

+m/{(m+E-pz)2(E-pz)}

+(1-z2)/(m+E-pz)2] です。

 

これは,σ~={πα2(m+E)/(2p)}

-11dz[1/{m(E-pz)}-2/(m+E-pz)2}

+(1-z2)/(m+E-pz)2] と書けます。

 

積分項

=[{-1/(mp)}ln|E-pz|

-(2/p){1/(m+E-pz)}

-(1/p){1/(m+E-pz)}

-(1/p3){pz-(m+E)2/(pz-m-E)

+2(m+E)ln|m+E-pz|}]-11

 

={2/(mp)}ln(|p+E|/m)

-{2(m+E)/p3}ln{2m(m+E)/(m+E+p)2

-[1/{m(m+E)}{1+(m+E)2/p2}-2/p2} です。

 

※何と,先に,種元のテキストに結果が明示されていないこと

から予想して"計算は容易ではない"と書いたことに反して,

低エネルギー,高エネルギーを問わない一般的ケースでも

初等的に積分を実行できました。※

 

σ~={α2π(m+E)/(2p)}[{2/(mp)}ln(|p+E|/m)

-{2(m+E)/p3}ln{2m(m+E)/(m+E+p)2

-1/{m(m+E)}+(m+E)/(mp2)-2/p2]

なる一般式を得ました。

 

これは,高エネルギー極限:p→ ∞では,p~ E,

m+E~ Eなので,

σ~~ {α2π/(mE)}[ln(2E/m)-1+(m/E)ln(2E/m)

-m/E] と近似されます。

 

すなわち,

σ~={α2π/(mE)}{ln(2E/m)-1

+O((m/E)ln(E/m))+..}

なる近似式を得ました。  (注19-2終わり)※

 

PS:電磁単位の扱いにおける混乱から,散乱の伝播関数の理論(応用)

シリーズの散乱断面積に不要な真空誘電率ε0が含まれている間違

いを発見したのでそれら一連の式の誤まった係数を修正しておき

ました。(2010年8月30日(月)夕方)

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

 

 以上,2010年8/27の過去記事「散乱の伝播関数の理論(19)」

 の再掲載記事でした。

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散乱問題の復習(9)(Compton散乱補遺)

 

 これは,すぐ前の記事「散乱問題の復習(9)」の

 Compton散乱断面積の計算の補足です。

 

 前回の記事でCompton散乱に対するKlein-Nishina

 (クライン・仁科の公式):

 dσAve/dΩ

 ={α2/(4m2)}(k'/k)2{k'/k+k/k'+4(εε')2-2}

 を導く際に,"途中計算を省略して,

 

 Tr[(f+m){ε'εk/(2kpi)+εε''/(2k'pi)}(i+m)]

 {kεε'/(2kpi)+'ε'ε/(2k'pi)}]

 =2{k'/k+k/k'+4(εε')2-2} です。

  

と書きました。

 

しかし,"私独自に行間を埋めた部分=計算の詳細"を省略しては,

本記事が単に参考テキストの垂れ流しに過ぎず,画龍天晴を欠く

と感じたので,計算結果の証明として詳細内容を書くことにしま

した。

 

以下,式の証明です。

 

(証明):まず,T1≡Tr(f+m)ε'εk(i+m)kεε'と置けば,

 右辺のトレースにおいて,因子としてmを1個含む項は奇数個の

 γ行列の積なのでその寄与はゼロです。

 

 また,m2に比例する項はkk=k2=0 を因子に持つので消えます。

 

 結局,T1=Trfε'εkpikεε' を得ます。

 

 (何故なら,ab=2ab-baよりaa=2a2aaなので,

 aa=a2です。)