散乱電子の偏極について
前記事までの「散乱問題の復習」シリーズは5年前の2010年6月
から最後は2011年3/31までの過去記事「散乱の伝播関数の理論」
シリーズの(11)以降の応用編を再掲載したもので,最後はこの
シリーズの一番最後の「散乱の伝播関数の理論(21)」からで,
これは,Bjorken-Drellのテキストの第7章の§7.9を紹介した
記事でした。
しかし,実は第7章は§7.9が最後ではなく,§7.10で
終わって,次の第8章の輻射補正(=繰り込み)へと続いて
います。
この最後の§7.10の電子散乱における偏極という項目は,
2010年,2011年に「散乱の伝播関数の理論」のシリーズ記事
をアップした当時は,それほど重要ではないと考えて,これを
省略してさっさと次に進む道を選んだのでした。
しかし,今,電磁相互作用で行なった話を弱い相互作用の理論の
説明で参照しようという段階では,寧ろこれこそ重要な論題である
と思われるため,自分のノートから,この最後の節についても記事
にしてアップします。
したがって,この記事は再掲載ではないですが前の続きです。
「散乱の伝播関数の理論」シリーズとしては(22)に相当する
ので私の付加した注釈=※(注)では,※(注22-)という番号を
入れました。
※さて,以下本題です。
§7.10 Polarization in Electron Scattering
(電子散乱における偏極)
「散乱の伝播関数の理論(10)」において展開したスピン射影演算子
の実用的な応用として,電子のCoulomb散乱でのMott散乱の断面積に
立帰ります。
後に弱い相互作用の項で論じるように,μ中間子の崩壊における
電子はその運動の向きに反平行なスピンに偏っています。
中心に-Ze>0の電荷が固定されている場合の,sipi=0
を満たすスピンsiと4元運動量piを持ち,電荷がe<0,質量が
mの入射電子のCoulomb散乱の微分断面積を,終状態でのスピン
±sfで総和したものは次式で与えられます。
すなわち,dσ/dΩ=(4Z2α2m2/|q|4)
Σ±sf|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
です。
この式を評価計算するには射影演算子を用いてトレースを
取るというテクニックを利用します。
Σ(s)=(1+γ5s)/2とすると, これは,
Σ(s)u(p,s)=u(p,s),Σ(s)u(p,-s)=u(p,s)
を満たすスピン射影演算子です。
微分断面積を与える式:dσ/dΩ
=(4Z2α2m2/|q|4)Σ±sf|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
に,Σ(si)を挿入すれば,
dσ/dΩ=(4Z2α2m2/|q|4)
Σ±si,±sf{u~(pf,sf)γ0Σ(si)u(pi,si)|
{u~(pi,si)γ0u(pf,sf)|
=(4Z2α2m2/|q|4)(8m2)-1Tr[γ0(1+γ5s)(pi+m)(pi+m)]
※(注22-1):
Σ±si,±sf{u~(pf,sf)γ0Σ(si)u(pi,si)|
{u~(pi,si)γ0u(pf,sf)|
=Σ±si,±sfΣαβγδλ[u~α(pf,sf)(γ0)αβ{
(1+γ5s)/2}βγuγ(pi,si)]
[u~δ(p1,si)(γ0)δλuλ(pi,si)]
=Σαβγδλ(γ0)αβ(1+γ5s)βγ(p+m)γα
(γ0)δλ(p+m)λδ
=(8m2)-1Tr[γ0(1+γ5s)(pi+m)(pi+m)]
何故なら,Σ±suα(p,s)u~β(p,s)=(p+m)αβ/(2m)
であるからです。(注22-1終わり)※
Tr[γ0(1+γ5s)(pi+m)(pi+m)]の計算において,
nが奇数なら,Tra1..an=0 となること,
および,Trγ5=0,Tr(γ5ab)=0,
Tr(γ5abcd)=4iεαβγδaαbβcγdδ の
公式を用いると,
結局,以前の式に追加されたスピンベクトルsを含むΣ(s)
=(1+γ5s)/2のうちの(γ5s)に比例する項のトレースは消え,
入射電子のスピンで平均した(1/2)の係数が掛かるのみの次の
単なる非偏極電子のCoulomb散乱のMottの公式が再現されます。
dσ/dΩ={Z2α2/{4p2β2sin4(θ/2)}{1-β2sin2(θ/2)}
かくして,入射電子ビ-ムのスピンが偏極していても偏極して
いなくても,その散乱の微分断面積が同じであるという計算結果
を得ましたが,
この結果は実は,最低次の摂動計算においてのみの特殊な結果
であり,一般には正しくないことがわかっています。
最低次の計算でも,スピン偏極の観測できる効果を描写する
ため,運動方向に沿って整列したスピンを持つ入射電子を考察
します。
整列したスピンの偏極入射電子に対して散乱角の関数として
散乱電子の偏極を計算します。
まず,運動する電子のスピン4元ベクトルsをsμ=(s0,s)
とすると,これは次の条件を満足します。
(※ただし,ここでの議論に限り相対論を意識して,c=1の
自然単位でなく光速cを陽に書く通常の単位を用いることに
します。)
すなわち,同じ電子の4元運動量をpμ=(E/c,p)
とするとき,
(1) s2=sμsμ=(s0) 2-s 2=-1
(2) sp=0,あるいは,s0=sβ
(※ここで,β=cp/E=v/c;vは速度です。)
なる2つの条件を満たします。
これらの条件は,質量がmの電子の静止系:pμ=(m/c,0),
では,スピンsがsμ=(0,s),|s|=1であり,sp=-sp=0,
s2=-s2=-1ですが,これらの等式の両辺は慣性座標系に
依らない不変量(=Lorentzスカラー)であることに由来します。
ただし,ここでの3次元スピン:sは,大きさが1/2の電子の
スピン角運動量そのものではなくて,通常はs=σ/2で定義
される大きさが1のPauliのσに相当します。
そして,この2条件から,s2=(sβ)2-s2=-1 ですから,
|s|={1+(sβ)2}1/2です。あるいは,s2(1-β2cos2θ)=1
より,|s|=1/(1-β2cos2θ)1/2 です。
4元スピンsが空間的(spacelike;s2<0)なので,
β=|β|=v/cと書くとき,β>0 なら|s|>1 となり,
電子の3次元スピンはその静止時よりも大になります。
特にv,またはβiに沿って偏極したスピン偏極を右巻き電子
(right-handed electron)と呼び,そのスピンベクトルをsR
で記述すると,sRβ=β|sR|なので,|sR|=1/(1-β2)1/2
=E/mc2であり,sR0=β/(1-β2)1/2です。
同様に,βiに反平行に偏極したスピン偏極を左巻き電子
(left-handed electron)と呼び,そのスピンベクトルをsL
で記述すると,sLβ=-β|sL|なので,右巻き電子の
スピン同様,|sL|=1/(1-β2)1/2=E/mc2であり,他方,
sL0=-β/(1-β2)1/2です。
特に始状態の入射電子と終状態の散乱電子の運動量ベクトル
がpiμ=(Ei/c,pi),pfμ=(Ef/c,pf),のときのスピン
ベクトル:si,sfについての記述は,単に,上記のpμ,sμを,
それぞれ,始状態のpiμ,siμ,終状態のpfμ,sfμに置き換
えるだけで,そのまま成立します。
右巻き,および,左巻きのスピンべクトル:sR,および,sLは,
sL=-sRを満たし.特に,よく参照される電子の偏極を記述
する便利な基礎を形成します。
スピノルu(p,s),v(p,s)のスピン射影演算子:
Σ(s)=(1+γ5s)/2 のs=±sR=-(±sL)に対応する
固有状態は正,または負のhelicity(ヘリシティー)固有状態
として知られています。
散乱電子の偏極は,P=(NR―NL)/(NR+NL)なる量で
測られます。(偏極とはhelicityの期待値(平均値)です。)
ただし,NRは正のhelicity(右巻き)で出現する電子の個数,
NLは負のhelicity(左巻き)で出現する電子の個数です。
NR,NL,および,Pは散乱のエネルギーや散乱角の関数で
与えられます。
さて,右巻きに偏極した入射電子のCoulomb散乱による
散乱電子の偏極Pを求めてみます。
これは,公式:dσ/dΩ=(4Z2α2m2/|q|4)
Σ±sf|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2 ,および,
定義:P=(NR―NL)/(NR+NL) によって,
次のように与えられます。
すなわち,
P=[|u~(pf,sfR)γ0u(pi,sfR)|2
-|u~(pf,sfL)γ0u(pi,siR)|2]
/[|u~(pf,sfR)γ0u(pi,siR)|2
+|u~(pf,sfL)γ0u(pf,siR)|2]
です。
したがって,
P=[Tr{γ0(1+γ5siR)(pi+m)γ0(1+γ5sfR)(pf+m)}
-Tr{γ0(1+γ5siR)(pi+m)γ0(1+γ5sfL)(pf+m)}]
/[Tr{γ0(1+γ5siR)(pi+m)γ0(1+γ5sfR)(pf+m)}
+Tr{γ0(1+γ5siR)(pi+m)γ0(1+γ5sfL)(pf+m)}]
=Tr{γ0γ5siR(pi+m)γ0γ5sfR(pf+m)}
/Tr{γ0(pi+m)γ0 (pf+m)} です。
(※何故なら,γ5の後にsiR,sfR,sfLを1次でしか含まないもの
のトレースは全て消えるからです。※)
結局,入射電子が完全に右巻きである場合の散乱電子
の偏極P=(NR―NL)/(NR+NL)=PRは,
摂動の最低次では,Pが,
P=Tr{γ0γ5siR(pi+m)γ0γ5sfR(pf+m)}
/Tr{γ0(pi+m)γ0(pf+m)}
で与えられることがわかりました。
これのγ5が含まれない分母=Tr{γ0(pi+m)γ0(pf+m)}
については,既に以前の例で計算済みで,
分母=Tr{γ0(pi+m)γ0(pf+m)}
=8EiEf-4pipf+4m2 です。
Coulomb散乱は電子のエネルギーが保存される弾性散乱なので,
Ef=Ei=E,pipf=E2-p2cosθ=m2+2β2E2sin2(θ/2)
を代入すると,分母=8E2{1+β2sin2(θ/2)} です。
一方, 分子=Tr{γ0γ5siR(pi+m)γ0γ5sfR(pf+m)}
=Tr(γ0γ5siRpiγ0γ5sfRpf)
+m2Tr(γ0γ5siRγ0γ5sfR) です。
これの右辺第1項=Tr(γ0γ5siRpiγ0γ5sfRpf)
=4siR 0sfR 0×2pipf-4siR0pf 0×2pisfR
-4sfR 0pi 0×2siRpf+4pf 0pi 0×2siRsfR
-4sf Rsi R×pipf+4siRpf ×sfRpi ですが,
sf Rsi R=(E2/m2)(β2-cosθ),
siRpf=(E2β/m)(1-cosθ)=sfRpi etc.より,
結局,右辺第1項=(4E4/m2)(1-β2)2cosθを得ます。
同様にして,右辺第2項=m2Tr(γ0γ5siRγ0γ5sfR)
=4E2(β2+cosθ) です。
それ故, 分子=8E2{1+(β2-2)sin2(θ/2)} です。
以上から, P=(分子)/(分母)
={1+(β2-2)sin2(θ/2)}/{1+β2sin2(θ/2)}
=1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
が得られます。
これから,相対論的極限(m/E) → 0,or β → 1では,
P → 1を見て取れますが,これはCoulomb散乱の高エネルギー
極限では,入射電子の偏りがこの散乱の影響を受けないこと
を示唆しています。
もしも入射電子の右巻きの偏極が完全ではなくて,運動方向
に沿って部分的に偏極した入射ビームの場合には,散乱された
電子の偏極Pは,入射電子が完全右巻きのときのPを,
P0≡(1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
と書きなおすとき,
P=pP0
=p(1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
と修正されるはずです。
ただし,pは入射電子の偏極であり,NR,NLをそれぞれ,
入射電子ビームの正,負helicityの電子の個数として,
p=(NR―NL)/(NR+NL)=PR-PL で与えられます。
ここで,PR=NR/(NR+NL)は右偏極率,
PL=NL/(NR+NL)=1-PRは左偏極率です。
そこで,PR(1+γ5siR)/2+PL(1+γ5siL)/2
=(1+pγ5siR)/2なる等式が成立しますが,これを用いれば,
直ちに,P=pP0
=p(1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
なる式が得られます。
したがって,特に初期の入射電子が偏極していない:p=0
のときは,Coulomb散乱による散乱電子もP=0の非偏極のまま
です。
ここで,これらの偏極の結果と関わる幾何学的描像として,
スピノル波動関数u(p,s)を有する運動電子のスピンが
単位ベクトル:nμ=(0.n)に沿った任意方向となす角度α
を定義します。
すなわち,cosα=<Σn>
=u+(p,s)Σu(p,s)/u+(p,s)u(p,s)
=(1-β2)1/2u~(p,s)γ5nu(p,s)でもって,
u(p,s)のスピンsがnとなす角αを定義します。
ただし,Σは対角線上にPauliのσが2つ並んだ4×4行列
です。
※(注22-2):何故なら,
u+(p,s)u(p,s)=E/m=1/(1-β2)1/2であり,
Σn=γ0γ5n です。※
再び,射影演算子を挿入すれば,
cosα=(1-β2)1/2u~p,s)γ5nu(p,s)
=(1-β2)1/2u~α(p,s)(γ5n)αβΣ(s)βγuγ(p,s)
=(1-β2)1/2(p+m)γα(γ5n)αβ(1+γ5 s)βγ/(4m)
=(1-β2)1/2Tr[(p+m)(γ5n)(1+γ5 s)]/(4m)
です。
さらに,Tr[(p+m)(γ 5n)(1+γ5 s)]
=mTr(γ 5nγ5 s)=-mTr(ns)=-4msn=4msn
です。
スピンsの方向単位ベクトルs^をs^=s/|s|で定義すると,
|s |=1/{1-(sβ)2}1/2によってs={1-(sβ)2}-1/2s^
ですから,結局,cosα=(1-β2)1/2sn
=[(1-β2)/{1-(sβ)2}]/2s^n が得られました。
これによれば,s⊥βのときは,|cosα|≦(1-β2)1/2であり,
それ故,cosα=<Σn>
=u+(p,s)Σu(p,s)/u+(p,s)u(p,s)
で定義されたcosαは,
スピンが運動方向に垂直な場合,電子の速度が大きくなり
β
→ 1の相対論的極限に達すると消えます。
一方,スピンが運動速度ベクトルに沿っている謂わゆる
helicity状態では,cosα=s^n であり,任意方向の単位
ベクトルnを,特にスピンsに平行, or 反平行に取った場合
にはcosα=±1です。
この場合の角度αを特にδで表わすことにすれば,
cosδ=±1です。
そして,散乱電子ビームに対してcosαの平均値は次式
で与えられます。
すなわち,<cosα>=Σ±sω(s,p)cosα です。
ただし, ω(s,p)は運動量pとスピンsを持つ与えられた
終状態への遷移確率です。
ここでの和:Σ±sは最も便利な選択としては正負のhelicity
状態にわたる和とすることができます。
するとcosδ=±1より,
<cosδ>=ω(sR,p)-ω(sL,p)=P と書けます。
こうして,散乱された電子のスピンの偏極Pがこの電子の
スピンsと運動量pのなす角度δの余弦を決めるという式
を得ました。
初期に偏極がp=1であった正helicityの偏極入射電子
のCoulomb散乱では,E>>mの高エネルギーで散乱角
がθ<<1のとき,
<cosδ> ~ <1-δ2/2>
=1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
~ 1-2m2(θ/2) 2/{E2+m2(θ/2) 2}1-m2θ2/(2E2)
.なので,<δ>
~ (m/E)θ です。
つまり,散乱電子のスピンと運動量のなす角度δは散乱角θ
の(m/E)倍となります。
偏極の相対論的極限の評価は,直接,(m/E) → 0 (or β → 1)
に対して偏極射影演算子を縮約することで,最も簡単に計算を
実行することができます。
この極限では,pに平行なsを持つ縦方向に偏った電子に対
するスピンの射影演算子は,さらに簡単にできます。
β → 1に対して,
sμ=pμ/(mβ)-{(1-β2)1/2/β}gμ0
より, β → 1に対して,sμ → pμ/m です。
※(注22-3):何故なら,|s |=1/{1-(sβ)2}1/2によって,
|sR|=1/(1-β2)1/2ですから,sR={1/(1-β2)1/2}(p/|p1
=[1/(1-β2)1/2}p/{mβ/(1-β2)1/2}=p/(mβ) です。
また,
sR0=(1-sR2)1/2={1-1/(1-β2)}1/2
=β/(1-β2) 1/2=Eβ/m
=E/(mβ)-E(1-β2)/(mβ)
=E/(mβ)-(1-β2)1/2/β
を得ます。(注22-3終わり)※
そこで, β → 1の極限で
(1±γ5sR)(p+m)→ (1±γ5)(p+m) です。
断面積を計算する際には,スピンの射影演算子が常にエネルギー
の射影演算子の前に位置するので,
相対論的極限で,(1±γ5sR) → (1±γ5)なる簡単化が成立
するわけです。
※(注22-4):何故なら, β → 1の極限でs → p/mなので,
(1±γ5sR)(p+m) → (1±γ5p/m)(p+m)ですが,
p2=p2=m2より,(1±γ5p/m)(p+m)
=(p+m±γ5 (p2/m+p)=(1±γ5sR)(p+m)
となるからです。(注22-4終わり)※
Coulomb散乱された散乱電子が(m/E) → 0でさらに偏る
ことはないというP=pP0
=p(1-[2m2sin2(θ/2)/{E2cos2(θ/2)+m2sin2(θ/2)}}
→ p の結果は,
こうした極限操作:(1±γ5sR) → (1±γ5)によって直接
見ることができます。
すなわち,相対論的右巻き電子:
u(pi,si)={(1++γ5)/2}u(pi,si) が
相対論的左巻き電子:
u(pf,sf)={(1-γ5)/2}u(pf,sf)
へと散乱される行列要素は,相互作用がγμに比例する
ときは,u~(pf,sf)γμu(pi,si)
= u~(pf,sf){(1++γ5)/2}γμ(1+γ5)/2}u(pi,si)
=-u~(pf,sf)γμ{(1-γ5)/2}(1+γ5)/2}u(pi,si)=0
となります。
したがって,Coulomb散乱での衝突電子が高エネルギーと
なった相対論的極限では,正のhelicityから負のhelicityへ
の脱偏極は決して起こり得ないことがわかります。
この項目はこれで終了なので,今日はここで終わります。
参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell
“Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)
| 固定リンク
「115. 素粒子論」カテゴリの記事
- くりこみ理論(第2部)(2)(2020.12.30)
- 物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)(2020.11.03)
- 物理学の哲学(14)(アノマリー)(2020.10.28)
- 物理学の哲学(13)(アノマリー)(2020.10.10)
- 物理学の哲学(12)(アノマリー)(2020.10.08)
「111. 量子論」カテゴリの記事
- クライン・ゴルドン方程式(8)(2016.09.01)
- クライン・ゴルドン方程式(7)(2016.08.23)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(2)(2016.08.14)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(1)(2016.08.10)
- クライン・ゴルドン方程式(6)(2016.07.27)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント