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2015年12月 1日 (火)

弱い相互作用の旧理論(7)(Fermi理論)

弱い相互作用の旧理論の続きです。
 

前回記事の最後では,


(※)例えばν~+p → n+e
のような散乱過程における

断面積は,エネルギーの2乗と共に増加します。

そして,2c.m 2 {c.m/(300)}4/c.m2)ですから,

重心系のエネルギーEc.m c.m  300300BeV

に達するまでに,弱い相互作用は強い相互作用と同程度

なり非局所性や高次の作用の効果が非常に重要になると

予測されます。()


と書きました。

 

今日は具体的にν~+p → n+eの散乱断面積を求めて上記

の言明が成立することを確かめる私の注釈のみをアップします。
 

(7-1)=m=Mとすると,陽子pの反ニュートリノ

による散乱(逆β崩壊):ν~+p → n+eS行列要素は,
 

fi(-i)(2π)-6{2/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(+p-P-pν~)M と書けます。
 

そして,前回確立されたように不変振幅は,
 

(/2)[~()γ μ(1-αγ5)()] 

×[~()γ μ (1-γ5)ν(ν=)} 

です。
 

散乱の微分断面積dσは,,Tをそれぞれ散乱相互作用

の体積,時間とすると,
 

(始状態)からf(終状態)への遷移率に,終状態のnの密度:

(2π)-3Vd3,および,eの密度:(2π)-3Vd3,さらに標的粒子p

の密度:(1/)を掛けた遷移率密度:

{|fi|2/(VT)(2π)-6333を入射流束:

(|ν~|/)で割ったもので与えられます。
 

ただし,散乱現象では。V=(2π)3δ3(0),T=(2π)δ(0), 

VT=(2π)δ(0)と同定されるので, 

|fi|2/(VT)(2π)-6{2/(2ν~) 

×(2π)δ(+p-P-pν~)||2

 
であり,
 また,δ関数式規格化ではV=(2π)3です。
 

それ故,微分断面積は, 

dσ={(2π)3/(|ν~|)(2π)-12

{2/(2ν~)}(2π)-633

×(2π)δ(+p-P-pν~)||2

です。
 

ところが,慣性中心系(.M系;CM重心系)では

ν~0 ,or =-ν~,=-

です。
 

故に,|ν~|=c=1=Eν~であり,ν~ν~/ν~,

/より,


|
ν~||(ν~/ν~)(/)|

|ν~|{(1/ν~)(1/)|(ν~+E)/(ν~)

(ν~+E)/p です。
 

ここでまず, 3を実行すると

δ4(+p-P-pν~)からδ3(ν~)

が消えて,δ(+E-E-Eν~)だけが残ります。


さらに,d3=E||dEdΩです。

 

よって,

dσ=(2π)-2{2/(2ν~) /(ν~+E)  

×δ(+E-E-Eν~)||2||dEdΩ

です。
 

右辺の||2については,全ての粒子が各々特定に偏極している

仮定した場合の不変振幅の絶対値の2乗である 

||2(2/2)|u~(μ(1-αγ5)u()|2

  ×|v~(μ(1-γ5)vν(ν~)|2 

   


 の代わりに,非偏極と考えて,不変振幅の絶対値の2乗

を核子p.nのスピンと,反ニュートリノ,電子のスピン

で総和を取って,中性子nのスピンで平均したもので置

き換えます。すなわち,次式で置き換えます。

 
つまり,SpSne,sν~||2

(2/2)(1/2)SpSn|u~(μ(1-αγ5)u()|2

 ×e,sν~|v~(μ(1-γ5)vν(ν~)|2

  (2/4){1/(42)}

μνr[(+Mμ(1-αγ5)(+Mν(1-αγ5)] 

×{1/(2)}r[νγμ(1-γ5)(+mν(1-γ5)] 


 を不変振幅による確率密度の因子とするわけです。

 

そして,核子部分のトレースは,
 

r[(+Mμ(1-αγ5)(+Mν(1-αγ5)] 

=Tr[(+Mμ(1+α2-2αγ5)γν

(1ーα2)r[(+Mμγν] 

=(1+α2)r(γμγν)2αTr(γ5γμγν) 

+M2(1+-α2)r(γμγν)
 

=4(1+α2)(nμpν+Pnνpμ-gμν)

+4M2((1ーα2)μν 

8iα∑αβγδ εαβγδnαμβpγνδ) です。
 

一方,レプトン部分のトレースは,
 

r[γ ν(1-γ5)νγμ(1-γ5)(+m)] 

2r[γν(1-γ5)ν~γ μ(+m)]
 

2r(γνν~γ μ)2r(γ5γνν~γ μ) 

8(ν~νμ+pν~μν+-gνμν~) 

8iρστηερστην~ρνστμη) です。
 

核子のトレースとレプトンのトレースの積を取り,

総和∑μνを取ると,μ,νについて対称な項と反対称な項

の積は消えます。
 

反対称項同同士の積は, 

=-64α∑μναγρτ [εαβμγνερντμnαpγν~ρτ]

ですが,
 

μνεαμγδερντμ 2(δαρδγτ-δατδγρ)

なので,これは, 

128α∑αγρτ(δαρδγτ-δατδγρ)nαpγν~ρτ 

=-128α[(ν~)()()(ν~)]

となります。
 

また,対称項同同士の積は, 

32(1+α2)(ν~)()()(ν~)

-322(1-α2)( ν~) です。
 

それ故,

SpSne,sν~||2={G2/(2)} 

×[(1+α)2()(ν~)(1ーα)2(ν~)()

2((1ーα2)(ν~)] です。
 

そして,()(ν~)

(2)(ν~+Eν~2) ,かつ,

(ν~)()

(ν^ν~)(ν~),
 

そして, ν~=Eν~ν~です。 

22β2,ν~=Eν^βcosθC.M
 

故に, 

(1+α)2()(ν~)(1-α)2(ν~)()

2((1ーα2)(ν~)] 

(1+α)2(+E2β22)(ν~+Eν~2) 

(1-α)2(ν^+Eν^βcosθC.M)

(+Eν^βcosθC.M)

2((1ーα2)(ν~-Eν^βcosθC.M) 

(ν~)[(1+α)2(1+Eν~/){1(/)β2} 

(1-α)2{1(/)βcosθC.M}{1(ν~/)βcosθC.M}

(1-α2){2/()(1-βcosθC.M)}
 

dΩCM.の積分を実行するとcosθC.M}の1次の項は消えます。 

また,-11cos2θd(cosθ)2/3より

-cos2θdΩ=1/3です。
 

故に,(1/2)SpSne,sν~|M |2dΩCM.

{4πG2/(2))(ν~) 

×[(1+α)2(1+Eν~/){1(/)β2}

(1-α)2{1(~/3)β2}(1-α2)2/()}

です。
 

そこで,

dσ=(2π)-2{2/(2ν~)[/(ν~+E)]  

×δ(+E-E-Eν~)|M |2||dEdΩ

||2dΩの因子を,

すぐ上のスピン和と平均を立体角:dΩC.Mで積分済みの式:

dΩC.M(1/2)SpSne,sν~|M |2dΩC.M

で置き換えて,最後に残るdE積分を実行すれば,

断面積σとして,
 

σ­{2/(2π)}β2{(1+α)2[{1(/)β2}

(1-α)2{[/(ν~+E){1(~/3)β2}

-{(1-α2)MN2/((ν~+E))} |Ee=Ep+Eν~-En


 が得られます。

 

慣性中心系(.M系)のE,ν~,および, ,ν~は初期条件

として与えられます。
 

そして,終状態では,0 により,=-ですから,

エネルギーの保存則:

(2+M2)1/2(2+m2)1/2=Eν~+Eによって

||決まります。
 

さらに,この||からE,および,β|β|||/

も求まります。
 

高エネルギー(ν → 大)ではE,,,ν~

やmよりはるかに大きく,これら全てが,

||,β|β|1に等しく同じオーダー

 になります。
 

したがって,σ­∝G22が得られました。(7-1終わり)※
 

(注)だけという内容で短かいですが,今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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