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2016年1月31日 (日)

Dirac方程式の導出(補遺)

前回,Dirac方程式の導出の項目については終了と書きました。

しかし,Dirac方程式の形は,先に得られた, 

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨより, 

ic[γ0(∂Ψ/∂x0)+Σj=13γ(∂Ψ/∂x)]-mcΨ=0,または, 

(icγμμ-m)ψ()0 の形の方が後々便利なので第2章まで 

入って,この形の方程式の導出までをさらに補足しておきます。
 

第2章 Dirac方程式のLorentz共変性 

§2.1 Dirac方程式のLorentz共変形
 

 物理的な解釈が存在するようなDirac方程式やそれから構成される

確率の保存を意味する連続の方程式はLorentz変換の下で共変である

こと(方程式,理論が慣性座標系の変換の下でそ形を変えないこと)

必要です。
 

まず、Lorentz変換とはどういう意味か?を復習します。
 

 2つの異なる準拠系(基準となる異なる時空座標系(慣性系))

,同一の物理現象を記述する2人の観測者を,それぞれ,,

'とします。
 

 観測者があらゆる現象を記述する時空座標(事象):μ,

観測者'が同一の現象を記述する時空座標(事象):x'μに関係

付ける規則は,2つの座標系の間の次のLorentz変換と呼ばれる

変換によって与えられます。
 

この変換は,x'μ=Σν=03μνν≡aμννなる線形変換で

表わされます。
 

(↑※最後の等式は定義式で,重複する同じ添字があれば,それ

ついては,0から3まで和を取るという約束を設けて,すぐ前の

総和記号:Σν=03を省略するという規約です。
 

 これを添字の縮約といいます。
 そして,これはEinstein
規約として知られています。

以下では必要に応じてこの規約を使用します。※)
 

この変換は斉一次(同次)変換(linear homogeneous transformation)

であり,係数μν,観測者と同じ,'でラベル付けされる2つの

準拠系の相対速度と空間座標軸の向きにのみ依存します。
 

Lorentz変換の基本的不変量(スカラー)は固有時間区間(世界間隔

4次元距離):dσ2≡gμνdxμdxν=dxμdxμ です。
 

(※ ただし,μνは計量テンソルで,特殊相対論のMinkowski

計量(metric)として001,0i0,ij=-δijなる表示を採用

しています。※)
 

これは,「真空中の光速はあらゆるLorentz座標系において同一

不変である。」という,物理的観測から導かれた特殊相対性原理

からの帰結です。

 

そして,x'μ=aμνν,および,dσ2=gμνdxμdxν

=dxμdxμ の座標変換不変性から,変換係数の満たす次の関係

が得られます。すなわち,μνμσ=δνσです。

 

(4): x'μ=gμνx'νμννλλ=aμλλ

 =aμλλσσμσσ,つまり,x'μμνν です。

 

ただし,μν(-1)μν , or μλλν=δμν,μν

=gμλλσσν です。

故に,dx'μμνdxν,です。他方,d'μ=aμνdxν

より,dσ2=dx'μdx'μμνμλdxνdxλ

dxν(μνμλdxλ)dσ2dxνdxν です。

 

この式は任意のdxμ,dxμに対して成立する恒等式

なので常に,dxνμνμλdxλとなることが必要

す。
 

したがって, μνμλ=δνσと結論されます。
 

これは,例えばdxμ(1,0,0,0), dxμ(1,0,0,0)なら, 

μ0μ01,dxμ(0,1,0,0), dxμ(0,1,0,0)なら,

μ1μ11,さらに,dxμ(1,1,0,0),dxμ(1,1,0,0) 

なら,μ0μ0+aμ0μ1,1.μ1μ0-+aμ1μ11より, 

μ0μ1=aμ1μ00 を得るなどで証明されます。 

 (4終わり)
 

さて,x'μμνν,μνμσ=δνσは,properLorentz

変換と,improperLorentz変換の両方の関係を定義する式です。
 

μν=gμλλσσνですから,成分がμνの行列の行列式を 

det(μν)と書けば, det(μν)det(μν)です。

 

それ故,μνμσ=δνσ,{det(μν)}21を意味します

から,一般にはdet(μν)=±1です。

 

このうち,properな変換とは, det(μν)=+1の変換のこと

です。これは,元の座標系から無限小のproper Lorentz変換

の連続により 到達可能なので連続変換とも呼ばれ3次元空間

回転も含みます。
 

他方,det(μν)=-1の変換をimproperな変換といいます。

 

これは,例えば鏡映,空間反転,時間反転などがあり,元の系

から連続的には到達できないので不連続とか離散的変換と

呼ばれます。
 

さて,当面の課題は,各準拠系にある観測者とO'によって

 

なされるDirac粒子の観測の与えられた集合を関係付ける

対応を構成すること。。言い換えると,観測者.および.

'のそれぞれによって用いられる波動関数Ψ(),および,

Ψ'(x')を関係付ける法則を求めることです。
 

この変換則とは,の用いるΨ()が与えられれば,'が

用いるΨ’(x')を計算することができるような規則のこと

です。
 

Loretz共変性の要請に従って,この変換則から,系におい

てもO系と同じ形のDirac方程式の解としての波動関数が得

られます。

  
こうしたDirac方程式の形の不変性は.その基礎となる

Einsteinエネルギー・運動量の関係:p2=pμμ

=E2/22=m22 Lorentz不変性を体現して

います。

 

1章のDirac方程式の導出は,この関係に基づいていました。

 

共変性を論じる際には,0=ctとxj(j=1.2,3)の対称性を

保持する4元表記でもってDirac方程式を表現することが望

ましいと考えられます。

   
この目的のために,先に求めた形のDirac方程式:

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨ

 の両辺にβ/cを掛けて次のようなnotationを導入します。 

  すなわち,γ0=β,γ=βαk(k=1.2,3) とします。

(※上に行列β,αの表示の1例を示します。これに対しては

ガンマ行列の表示は次の図のようになります。
 

(※本ブログ記事では特に断らない限り,一貫して,この Bjorken-Drell

テキストの表示を採用します。※)

すると,

ic[γ0(∂Ψ/∂x0)+Σj=13γ(∂Ψ/∂x)]-mcΨ=0

が得られます。
 

 よりコンパクトには,これは(icγμμ-m)ψ()0 

 と書けます。
 

このときαj,βの反交換関係の性質:

{αi,αj}=αiαj+αjαi2δij,

{α,β}=αβ+βαij0,β21,

γ0=β,γ=βαj(j=1.2,3)なる4元表記:

γμ(γ0,γ1,γ2,γ3)では,{γμ,γν}2μνなる 

反交換関係に帰着します。
 

{γμ,γν}2μνなる条件を満たすγμ(γ0,γ1,γ2,γ3)

Dirac行列(Diracのガンマ行列)と呼びます。

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.DrellRelativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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