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2016年1月31日 (日)

Dirac方程式の解

Dirac方程式の導出の続きとして,その自由粒子の平面波の解

の導出過程を2010年の過去記事「散乱の伝播関数の理論(8)」,

および,「散乱の伝播関数の理論(9)」から抜粋して再掲しよう

と思います。要するに得意の手抜き記事のiつですが。。

 ただし,以下では素粒子理論などでは普通のc=hc=1の

自然単位 を用います。(hはPlank定数;hc=h/(2π))

 ※↓以下,過去記事の再掲載です。

 自由粒子のDirac方程式:

(μμ-m)Ψ(x)=0 の一般解Ψ(x)の導出過程を

記述します。

 

2行2列のPauliのスピン行列をσ=(σ123)とします。

また,同じく2×2行列ですが単位行列を2とします。

 です。

 

 Pauli行列の主要な性質としては,交換関係:

 [σij]=σiσj-σjσi=2iεijkσk,および,

 反交換関係:{σij}={σij}=σiσj+σjσi=2δij

 が成立する。ということがあります。

 

 ただし,[A,B]≡AB-BA,{A,B}≡{A,B}≡AB+BA

 です。

 

 4行4列の行列:βを2つの2×2対角細胞が2,-2

 非対角細胞が02の対角細胞型行列とします。

 

また,4行4列の行列ベクトル:α=(α123)を対角成分

02で,2つの非対角成分が共にσ=(σ123)である行列

とします。

 

容易にわかるように,{αij}=αiαj+αjαi=2δij,

i,β}=αiβ+βαi=0,β2=1です。

 

そこで,γ0≡β,γ≡βα,or (γ123)≡(βα1,βα2,βα3)

なる表示を採用すると,これらの{γμ}μ=0,1,2,3は確かにDirac行列

が満たすべき条件:{γμν}=2gμνを満足します。

  

 

ただし,Minkowski計量(metric)としては,g00=1,g0i=0,

ij=-δijを採用しています。

 

Dirac方程式(μμ-m)Ψ(x)=0 の解である波動関数

(Dirac-spinor):Ψ(x)は4行1列の縦ベクトルです。

 

(※ 余談ですが,世界がd次元のMinkowski時空なら,その時空で

Dirac-spinor(スピノール)は,2成分-spinorの(d/2)個の直積

(=tensot:テンソル)で与えられるため,その次数は,2d/2 です。)

 

このDirac方程式の変数分離解をΨ(x)=w()exp(-ipx)と

書けば,w()も4元spinorで,方程式:(γμμ-m)w()=0

を満足します。

 

粒子の4元運動量は自然単位でpμ=(E,)ですが,特に粒子と

共に運動していて,粒子が静止している(=0)と見える"運動座

標系=静止系"S0では,pμ=(E,)=p0μ≡(±m,0)です。

 

(↑ ※0μ=(±m,0)として,負の静止エネルギー:E=-mの解

も捨てず,率直に独立解として採用するのがミソです。)

 

このS0系での変数分離解は,p0μ=(±m,0)の±に応じて,

Ψ0(x)=(0)exp(-imt),または,Ψ0(x)=(0)exp(imt)

です。

 

そこで,(μμ-m)Ψ(x)=0;Ψ(x)=w()exp(-ipx)

による(γμμ-m)w()=0 は,p00=mならγ0w(0)=w(0),

00=-mならγ0w(0)=-w(0) です。

 

したがって,静止系での変数分離解Ψ0(x)は,γ0±(0)=±w±(0)

(複号同順)を満たすγ0の2つの独立な固有ベクトルw±(0)を用いて

 

Ψ0(x)=w+(0)exp(-imt),および,

Ψ0(x)=w(0)exp(imt) と表わされます。

 

γ0の固有ベクトルw±(0)のうち,固有値+1の固有ベクトル:

+(0)は,(1,0,0,0)T,(0,1,0,0)Tの1次結合で与えられます。

 

また,固有値が-1の固有ベクトルw(-)(0)は,(0,0,1,0)T,

(0,0,0,1)Tの1次結合です。

 

そこで,独立な4つを改めて,w(1)(0)≡(1,0,0,0)T,

(2)(0)≡(0,1,0,0)T,w(3)(0)≡(0,0,1,0)T,

(4)(0)≡(0,0,1,0)T と定義します。

(↑ ※ 右上添字Tは行列の転置(transport)を示します。

そこで,行(横)ベクトルの右肩添字Tは列(縦)ベクトルを

意味します。※)

 すると,静止系での4つの独立解は,

ψ0(r)(x)=w(r)(0)exp(-iεrmt)(r=1,2,3,4)

で与えられることになります。

 

ただし,符号関数εrは,εr≡1 (r=1,2),εr≡-1 (r=3,4)

で定義されます。

 

したがって,静止系での自由粒子の一般解Ψ0(x)は,Ψ0(r)(x)の

1次結合で表わせます。

 

一方,Lorentz変換(4次元回転):x'μ=aμνν,

または略記法でx'=axに伴なう波動関数のLorentz回転:

 

Ψ'α(x')=Ψ'α(ax)≡Sαβ(a)Ψβ(x) (成分表記)

 

または,Ψ'(x')=Ψ'(ax)=S(a)Ψ(x) (行列表記)

 

を考えます

 

x'=ax より,その逆変換:-1対しx=a-1x'ですから,

Ψ'(x')=S(a)Ψ(a-1x'),つまり,

Ψ'(x)=S(a)Ψ(a-1x)です。

 

他方,Ψ(x)=S(a-1)Ψ'(ax),Ψ(x)=S-1(a)Ψ'(ax)より,

S(a-1)=S-1(a)なる関係が成立することがわかります。

 

また,∂/∂xμ(∂x'ν/∂xμ)(∂/∂x'ν)ですから,

x'ν=aνμμより.∂μνμ∂'νです。

 

そこで,Dirac方程式:(μμ-m)Ψ(x)=0 にx=a-1x',

および,Ψ(x)=S-1(a)Ψ'(x')を代入して,左からS(a)を

掛けると,[iS(a)γμ-1(a)νμ∂'ν-m]Ψ'(x')=0

を得ます。

 

それ故,νμS(a)γμ-1(a)=γν,つまり,

νμγμ=S-1(a)γνS(a)であれば,

上式は(ν∂'ν-m)Ψ'(x')=0 となって,

方程式が相対論的に共変(covariant)になります。

 

特に,μνμν+Δωμν;Δωνμ=-Δωμνと書けて,

Δωμν微小の場合の微小Lorents変換を考えます。

 

これに対する4×4変換行列S(a)をΔωμνの1次まで展開して

1次係数行列を,-(i/4)σμνと表現すれば,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν+O(Δω2) です。

 

今のところ,σμνは未知の4次行列ですが,以下でそれを具体的に

決定します。

 

(Δω2)が無視できる無限小変換では,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν,

-1(a)=1+(i/4)σμνΔωμνより,

 

μνγν=S-1(a)γμS(a)は,

Δωμνγν=-(i/4)Δωαβμσαβ-σαβγμ)

となります。

 

ここで,Δωμνγν=gμαΔωανγν

=gμαΔωαββνγν=gμαΔωαβγβ

=gμβΔωβαγαにより,

 

Δωμνγν=(1/2)(gμαΔωαβγβ+gμβΔωβαγα)

=(1/2)Δωαβ(gμαΔγβ-gμβγα) を得ます。

 

故に,(1/2)Δωαβ(gμαΔγβ-gμβγα)

=-(i/4)Δωαβμσαβ-σαβγμ)ですから,

2i(gμαΔγβ-gμβγα)=[γμαβ] です。

 

結局,無限小変換では,S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν;

σμν=(i/2)[γμν]であることがわかります。

 

さて,無限小ではなく一般の有限なLorentz変換を上記の無限小

変換を継続的に無限回反復した結果として評価するため,Δωμν

をΔωμν≡Δω(In)μνと表現します。

 

ただし,Δωは軸:のまわりの無限小Lorentz回転の回転角を表わす

無限小パラメータとし,Inはこの軸についての単位Lorentz回転を

示す4×4行列とします。

 

(注):3次元空間の回転なら,例えばz軸の回りのxy平面上の

 角度φの回転なら,

 x'=xcosφ-ysinφ,y'=xsinφ+ycosφ,z'=z

 です。

 

これはφが無限小回転角:Δφなら,

x'=x-yΔφ,y'=xΔφ+y,z'=zですから,

 

行列形では,t(x',y',z')=t(x,y,z)+Δφt(―y,x,0)

={1+Δφ(Iz)}t(x,y,z) と書けます。

 

これによって,3次元の場合の対応する3×3行列Izを定義します。

 

ただし,t(x,y,z)は行ベクトル(x,y,z)の転置(transport)

である縦ベクトルを意味します。

 

同様に,x軸,y軸のまわりの回転に対する3×3行列Ix,Iy

定義できます。(注終わり)※

 

さて,Δωμν=Δω(In)μν,Δω≡ω/Nとして,

Δω回転のN回の反復でωになる変換を考えます。

 

刻みNが無限大の極限では,

μν=lim N→∞ Πn=1N{1+(ω/N)In}μν

={exp(ωIn)}μν,またはxμ=aμνν

={exp(ωIn)}μνν

が得られます。

 

そして,これに伴なうspinorの変換は,

S(a)αβ={1-(i/4)Δω(σμνnμν)}αβより,

Δωが一般の有限の角度ωなら,

 

S(a)αβ=exp{-(i/4)ω(σμνnμν)}αβ

= exp{-(1/8)ω[γμν]Inμν}αβ  です。

 

特に,x軸に沿って無限小の速度Δv=Δβ=Δωで運動する

座標系への無限小変換は,

x'0=x0-Δβx1,x'1=x1-Δβx0

です。

 

そこで,Lorentz変換:μνμν+Δωμν;Δωνμ=-Δωμν

では,Δω01=Δω10=-Δβ以外の全てのΔωμνはゼロです。

 

この場合,有限変換ではx'μ={exp(ωIn)}μννであり,

x'0=x0coshω-x1sinhω,x'1=x1coshω-x0sinhω,

x'2=x2,x'3=x3 と書けます。

 

これに対応するLorentz変換は相対速度がv=β=tanhωの変換

です。

 

このとき,coshω=1/(1-β2)1/2,sinhω=β/(1-β2)1/2です。

 

よって,確かに無限小変換ではΔβ=Δωを満たしています。

 

さて,spinorの無限小変換はΔω01=-Δω10=Δω=Δβなので,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμνは,S(a)=1-(iΔω/2)σ01で,

σ01=(i/2)[γ01]=iγ0γ1=-iγ0γ1=-iβ2α1=-iα1

です。

 

それ故,S(a)=1-Δωα1/2です。

 

有限変換では,(α1)2=1ですからS(a)=exp(-ωα1/2)

=cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2)です。

 

そして,系Sで粒子が速度βで運動することは,粒子に対して

静止しているS0系に対し系Sが相対速度-=-βで運動する

ことに同等です

 

したがって,静止系S0でpμ(m,0)の正エネルギー粒子がS0

対して相対速度-=-βで運動するS系では,

 

x'0=x0coshω-x1sinhω,x'1=x1coshω-x0sinhω,

x'2=x2,x'3=x3 に対応して,

 

μ=(E,)なる表示で,E=mcoshω,p1=-msinhω,

2=p3=0 なので,β=-tanhω=p/Eです。

 

ただし,p=||=p1です。

 

故に,tanhω=-p/Eにより,tanh(ω/2)=-p/(E+m),

cosh(ω/2)={(E+m)/(2m)}1/2を得ます。

 

一方,静止系S0でpμ(-m,0)の負エネルギー粒子がS0に対し

相対速度-βで運動するS系では,

 

μ=(-E,-)(E>0)なるエネルギー表示で,

tanh(ω/2)=p/(-E+m)=-p/(E-m),

cosh(ω/2)={(E-m)/(2m)}1/2 です。

 

以上から,自由粒子波動関数の4つの独立な解は,

Ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx),

(r)()=S(a)w(r)(0)

={cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2)}w(r)(0)

であり,

 

(1)(0)≡(1,0,0,0)T,w(2)(0)≡(0,1,0,0)T,

(3)(0)≡(0,0,1,0)T,w(4)(0)≡(0,0,1,0)T

 

であることがわかりました。

 さて,座標のLorentz変換:μ→aμννに対応する運動量の

 Lorentz変換:μ→aμννから,

 E=p0=mcoshω=m/(1-β2)1/2,

 p=p1=-msinhω=mβ/(1-β2)1/2 

 を得ます

 

 そこで,-tanh(ω/2)=-tanhω/{1+(1-tanh2ω)1/2}

 =β/{1+(1-β2)1/2}=p/(E+m)であり,

 cosh(ω/2)={1-tanh2(ω/2)}-1/2={(E+m)/(2m)}1/2

 であること,がわかります。

 

 故に,-sinh(ω/2)=-tanh(ω/2)cosh(ω/2)

 ={p/(E+m)}{(E+m)/(2m)}1/2=p/{2m(E+m)}1/2

 を得ます。

 

 そして,S(a)=(w(1)(),w(2)(),w(3)(),w(4)())

 =cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2) です。

 

 これから,

 w(1)()={(E+m)/(2m)}1/2(1,0,0,p/(E+m))T,

 w(2)()={(E+m)/(2m)}1/2(0,1,p/(E+m),0)T,

 w(3)()={(E+m)/(2m)}1/2(0,p/(E+m),1,0)T,

 w(4)()={(E+m)/(2m)}1/2(p/(E+m),0,0,1)T

 と書けます。

 

 一般の速度:β123)を持つ粒子のw(r)()

 =S(a)w(r)(0)を得るには,

 

 S(a)αβ=exp{-(i/4)ω(σμνnμν)}αβ

 = exp{-(1/8)ω[γμν]Inμν}αβの右辺の生成行列:

 Inμνを速度βの空間軸回転の3×3直交行列:Tを考慮した形

 にします。

 

 pμ=(E,)は,E=m/(1-β2)1/2,=mβ/(1-β2)1/2

 ですが,特に±≡p1±ip2=m(β1±iβ2)/(1-β2)1/2

 定義します。

 

 計算結果だけ書くと,

 w(1)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (1,0,p3/(E+m),p/(E+m))T,

 w(2)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (0,1,p/(E+m),-p3/(E+m))T,

 

 w(3)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (p3/(E+m),p/(E+m),1,0)T,

 w(4)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (p/(E+m),-p3/(E+m),0,1)T

 です。

 

 特に,ここだけ単位を復活させ光速cを陽に書くと,

 まず,β/c,pμ=(E/c,)で,

 E=mc2/(1-β2)1/2,=m/(1-β2)1/2,

 p±=p1±ip2=m(v1±i2)/(1-β2)1/2です。

 

 w(1)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (1,0,p3c/(E+mc2),pc/(E+mc2))T,

 w(2)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (0,1,pc/(E+mc2),-p3c/(E+mc2))T,

 

 w(3)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (p3/(E+mc2),pc/(E+mc2),1,0)T,

 w(4)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (pc/(E+mc2),-p3c/(E+mc2),0,1)T

 です。

 

 さて,波動関数:ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx)は,

 もちろん, Dirac方程式:(γμp^μ-m)ψ(r)(x)=0

 を満足します。

 

 そして,p^μ=(p^0,-^)=(i(∂/∂t),-i∇)=i∂μより,

 γμp^μψ(r)(x)=iγμμ(r)()exp(-iεrpx)

 =εrγμμ(r)()exp(-iεrpx)ですから,

 

 (εrγμμ-m)w(r)()=0 が成立します。 

 これは,(γμμ-εrm)w(r)()=0 とも書けます。

 

 これらの式の両辺のHermite共役を取ると,

 w(r)+()(γμ+μ-εrm)=0 です。

 

 そして,γ0+=γ0,γ=-γですから,γμ+γ0=γ0γμより,

 等式の両辺の右からγ0を乗じた後,4行1列の行ベクトル:

 w(r)~()≡w(r)+(0を用いると,

 

 w(r)~()(γμμ-εrm)=0  を得ます。

 

 また,ψ(ax)=S(a)ψ(x)より,ψ(ax)=ψ+(x)S+(a)

 ですから,ψ~(ax)=ψ(ax)γ0=ψ(x)S(a)γ0

 =ψ~(x)γ0(a)γ0です。

 

 容易にわかるように,γ0(a)γ0=S-1(a)なので,

 ψ~(ax)ψ~(x)S-1(a)です。

 

 故に,ψ~(ax)ψ(ax)=ψ~(x)ψ(x)となり,ψ~(x)ψ(x)は

 Lorentz-scalarですから,

 

 w(r)~()exp(iεrpx)w(r')()exp(-iεr'px)

 =w(r)~()w(r')()exp{i(εr-εr')px}はスカラー

 (Lorents不変量)です。

 

 そしてr,pxもスカラーですから,

 w(r)~()w(r')()exp{i(εr-εr')px}は,

 w(r)~(0)w(r')(0)=εrδrr'に一致します。

 

 故に,w(r)~()w(r')()=εrδrr'なる関係式を得ました。

 

 また,証明は省略しますが,

 Σr=14εr(r)α()w(r)~β()=δαβなる式も成立します。

 

 ψ~(x)ψ(x)がLorentz-scalarなので,確率密度:

 ψ+(x)ψ(x)=ψ~(x)γ0ψ(x)はLorentz不変では

 ありません。

 

 これは,jμ(x)≡(ρ(x),(x))=ψ~(x)γμψ(x)の第0成分

 として変換します。

 

 また,簡単な計算からw(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr'

 を得ます。

 

 E/m=(1-β2)1/2ですから,β=0 での3次元体積を

 ΔV0すると,

 w(r)+r)w(r')r')ΔV

 =(r)+r)w(r')r')ΔV0(1-β2)1/2

 =δrr' 

 となります。

 

 よって,この規格化では確率密度でなく確率がLorentz不変です。

 

 ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx)から,

 上記のw(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr'なる表式は,

 

 運動量がの正エネルギーのsスピノル:

 w(r)()exp(-iEt+ipr)(r=1,2)は,

 逆符号の運動量-を持つスピノル:

 w(r')(-)exp(iEt+ipr)(r'=3,4)

 のHermite共役と直交するという描像です。

 

 そこで,同じ空間運動量を持ち反対符号のエネルギーを持つ

 平面波解ψ(r)(x),ψ(r')(x)は,r=1,2;r'=3,4,または

 r=3,4;r'=1,2ならψ(r)+(x)ψ(r')(x)=0 になるという意味

 で直交します。

 

 さて,u(p,s)で運動量:pμ=(E,)とスピン:

 sμ=(s0,)を持つDirac方程式の正エネルギー解を記述します。

  

 すなわち,(γμμ-m)u(p,s)=0 です。

 

 ただし,sμは静止系p0μ=(m,0)での偏極ベクトル0により

 s0μ=(0,0)で定義される4元ベクトルです。

 

 したがって,任意の慣性座標系でsμμ=s0μ0μ=-02

 =-1,μμ=p0μ0μ=0 です。

 

 そして,u(p,s)がスピン:sを持つという意味を,

 静止系p0μ=(m,0)ではu(p0,s0)がσs0u(p0,s0)

 =u(p0,s0)を満たすことと定義します。

 

 ただし,σs0=σi0iでσi≡εijkσjk=iεijkγjγkです。

 

 行列σi=iεijkγjγkは,Pauliの2×2スピン行列

 σi=iεijkσjσkの4×4行列版です。

 

 (※下図では区別する便宜のため,4×4行列の方をσ(4)k,と

 表記しました。※)

     

 静止系では,i∂ψ/∂t=βmψ,=βmですが,

  β=γ0ですから,[,σs0]=m[γ0i0i]
   =ms0i0i]=imεijk0i0jγk]=0 です。
 それ故,σs0は静止系での保存量であってとの同時固有状態
   が存在可能です。よって,σs0はp0と同時対角化可能です。

 

  よって,(γμμ-m)u(p,s)=0,σs0u(p0,s0)

  =u(p0,s0)によりu(p,s)の定義が可能です。

 

  同様に,(γμμ+m)v(p,s)=0 を満たす解で,静止系で

  -0のスピンを持つという条件:σs0v(p0,s0)=-v(p0,s0)

  によってv(p,s)を定義します。

 

  この結果,w(1)()=u(p,uz),w(2)()=u(p,-uz),

  w(3)()=v(p,-uz),w(4)()=v(p,uz) です。

 

  ただし,uz(z0,z)は,静止系では,z0μ=(0,z0)

  =(0,0,0,1)という形になる4元ベクトルです。

 

  そして,z0=(0,0,1)はz方向の spin-upを意味します。

 

  さて,天下り的ですがr(p)≡(εrγμμ+m)/(2m)

  (r=1,2,3,4),またはΛ±(p)≡(±γμμ+m)/(2m)

  とおけば,

 

  Λr(p)Λr'(p)=(1+εrεr'r(p)/2 が成立するので,

  Λ2(p)=Λ(p),Λ2(p)=Λ(p),

  Λ(p)Λ(p)=0,Λ(p)+Λ(p)=1 です。

 

  Λr(p)w(r')()=(εrγμμ+m)w(r')()/(2m)

  ={εrμμ-εr'm)/(2m)+(1+εrεr')/2}w(r)()

  ={(1+εrεr')/2}w(r)()です。

 

  故に,r=1,2,かつr'=1,2,または,r=3,4,かつr'=3,4

  なら,Λr(p)w(r')()=w(r')() です。

 

  r=1,2,かつr'=3,4,または,r=3,4,かつr'=1,2

  なら,Λr(p)w(r')()=0 です。

 

  そして,また,Σ(s)≡(1+γ5γμμ)/2と置きます。

  すると,Σ(uz)=(1+γ5γμzμ)/2です。

 

  ただし,γ5=γ5≡iγ0γ1γ2γ3です。

 

  明らかに,Σ(uz)u(p,uz)=u(p,uz),

  Σ(uz)v(p,uz)=v(p,uz)で,

  Σ(-uz)u(p,uz)=Σ(-uz)v(p,uz)=0 です。

 

  Σ(uz)は共変形なので,Σ(s)u(p,s)=u(p,s),

  Σ(s)v(p,s)=v(p,s)で,

  Σ(-s)u(p,s)=Σ(-s)v(p,s)=0

  が成立します。

 

  以上から,P1()≡Λ()Σ(s),P2()≡Λ()Σ(-s),

  P3()≡Λ()Σ(-s),P4()≡Λ()Σ(s)とおけば,

 

  これらはPr()w(r')()=δrr'(r')(),または,

  Pr()Pr'()=δrr'を満たす正負のエネルギー固有関数

  の射影演算子となります。

 

  Σr=14εr(r)α()w(r)~β()=δαβ  or

  Σr=14εr(r)()w(r)~()=1ですから,

 

  Λ(p)Σr=14εr(r)()w(r)~()

  =Σr=12(r)()w(r)~()

  =Λ(p),

 

  Λ(p)Σr=14εr(r)()w(r)~()

  =-Σr=34(r)()w(r)~()

  =Λ(p) です。

 

  故に,規格化された波動関数を,

  ψp(r)(x)≡(2π)-3/2(m/E)1/2(r)()exp{-iεrp(x-x0)}

  とおくと,

 

  (2π)-3(m/E)Λ(p)exp{-ip(x-x0)}

  =Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0),

  -(2π)-3(m/E)Λ(p)exp{-ip(x-x0)}

  =Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0) となります。


  (※↓ここからは,この過去記事の表題であった

 「散乱の伝播関数の理論」の主要な内容であるところの

 (iγμμ-m)SF(x-x0)=δ4(x-x0) を満たす

 Feynman伝播関数:SF(x-x0)の理論の項目に一足飛びに

 脱線しています。

 
  それ故,非相対論極限の「Foldy-Woutheusen変換」や,
 

 負エネルギー解を解釈する「空孔理論」の項目などを

 飛び越えて,やや飛躍した話になっています。※)

  以上から,自由Dirac粒子のFeynman伝播関数は,

 SF(x-x0)

 =-iθ(t-t0)∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 +iθ(t0-t)∫d3Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0) 
  と書けます。

 

 そこで,任意の正エネルギー解を,

 ψ(+)(x)≡∫d3Σr=12r(p(r)(x),

 任意の負エネルギー解を,

 ψ(-)(x)≡∫d3Σr=34r(p(r)(x)と置きます。

 

 すると,w(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr' or

 w(r)+()w(r')()=(E/m)δrr'によって,

 ψp(r)+(x)ψp(r')(x)=(2π)-3δrr' です。

 

 また,∫d30(2π)-3exp{-iεr(p'-p)x0}

 =δ('-)exp{-iεr(p0'-p0)t0}ですから,

 

 ∫d30∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x00ψ(+)(x0)

 =Σr,r'=12∫d33'Cr'(')ψp(r)(x)∫d30(2π)-3

 (m2/EE')1/2(r)+()w(r')(')exp{-iεr(p'-p)x0}

 

 =Σr,r'=12∫d3(m/E)Cr'(p(r)(x)w(r)+()w(r')()

 =Σr=12∫d3r(p(r)(x)=ψ(+)(x)

 

 を得ます。

 

 したがって,θ(t-t0(+)(x)

 =i∫d30F(x-x00ψ(+)(x0)が成立します。

 

 同様にして,θ(t0-t)ψ(-)(x)

 =-i∫d30F(x-x00ψ(-)(x0) も成立します。

 

 これらは,SF(x-x0)が正エネルギー解ψ(+)(x0)を時間

 の前方(=未来)へ,負エネルギー解ψ(-)(x0)を時間の後方

(=過去)へ運ぶことを明示しています。

 

F(x-x0)は自由電子のFeyman-propagater(伝播関数)として

知られています。

 

これは,最初1942年に,Stükelbergによって陽電子理論に導入され

ました。

 

そして,1948年には,Feynmanによっても独立に導入されました。

 

Feynmanはそれを広範囲にわたって実際の計算に適用しました。

 

自由伝播関数SF(x-x0)から,正確で完全なGreen関数,そして,

S行列要素,つまり相互作用の力場が存在する場合の電子や陽電子

の種々の散乱過程に対する振幅を作ることができます。

 

このことを遂行するため,前の非相対論的扱いを書き直します。

 

まず,電磁相互作用のみ存在する場合の正確なFeyman-propagater

(伝播関数)SF'(x;x0)は,

[iγμ(∂/∂xμ)-eγμμ(x)-m]SF'(x;x0)

=δ4(x-x0) を満たします。

 

これと,前に求めた式:{i(∂/∂t)-0(x)}G(x;x0)

=∫d41δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)],

および,G(x;x0)

=∫d410(x;x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]

=G0(x;x1)+∫d410(x;x1)V(x1)G(x1;x0)

を利用します。

 

つまり,上の表現で{i(∂/∂t)-(x)}γ0,V(x10を,

それぞれ,(iγμμ-m),-eγμμ(x)に置き換え,

0(x;x0),G(x;x0)を,それぞれ,

F(x-x0),SF'(x;x0) に置換します。

 

 すると,{i(∂/∂t)-0(x)}G(x;x0)

 =∫d41δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]は,

 

 (iγμμ-m)SF'(x;x0)

 =∫d4yδ4(x-y)[δ4(y-x0)+eγμμ(y)SF'(y;x0)

 となります。

 

 これとδ4(x-y)=(iγμμ-m)SF(x-y)より,

 (iγμμ-m)SF'(x;x0)

 =(iγμμ-m)[SF(x-x0)

 +e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)]

 が成立します。

 

 すなわち,SF'(x;x0)=SF(x-x0)

 +e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)

 が成立します。

 

また,Dirac方程式;(iγμμ-m)Ψ(x)=eγμμ(x)Ψ(x)

の正確な解で,Feynmanの境界条件を満たすΨ(x)を考えます。

 

 先述したように,相互作用のない自由伝播関数は,

 SF(x-x0)

 =-iθ(t-t0)∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 +iθ(t0-t)∫d3Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 で与えられます。

 

 そこで,ψ(x0)が正負の両振動数成分を含む場合でも,

 t>t0ではψ(x)は自由電子の正振動数成分のみの重ね合わせ

 としてψ(x)=i∫d30F(x-x00ψ(x0)と表わされます。

 

 一方,Ψ(y)=lim t0→-∞ i∫d30F'(y;x00ψ(x0)

 です。

 

 そこで,SF'(x;x0)

 =SF(x-x0)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)

 により,

 

 Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

 です。

 

 他方,t<t0ではψ(x)は自由電子の負振動数成分のみの

 重ね合わせとして,ψ(x)=-i∫d30F(x-x00ψ(x0)

 と表現され,

 

 Ψ(y)=lim t0→ ∞ (-i)∫d30F'(y;x00ψ(x0)

 です。

 

よって,いずれの場合も、

Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

なる同じ表現が得られます。

 

そして,Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

は,未来t>t0では正振動数成分のみ,過去t<t0では負振動数

成分のみを含みます。

 

すなわち,t→ ∞ では,

Ψ(x)-ψ(x)=∫d3Σr=12ψp(r)(x)[-ie∫d4yψp(r)~(y)

γμμ(y)Ψ(y)],

 

および,t→-∞ では,

Ψ(x)-ψ(x)=∫d3Σr=34ψp(r)(x)[+ie∫d4yψp(r)~(y)

γμμ(y)Ψ(y)] です。

 

[ ]の中は,いずれもp,rに依存するc-数です。

 

こうして,電磁場Aμ(y)による散乱では,"散乱後(未来)t→ ∞

には電子は決して負エネルギーの海に落ちないという空孔理論

の要請"に従う散乱定式化が得られました。

 

まだ,満たされてない正エネルギー状態のみを取ることができる

のです。

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGraw-Hill)

※ 以上,全て過去記事の再掲載でした。※

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