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2016年1月

2016年1月31日 (日)

Dirac方程式の解

Dirac方程式の導出の続きとして,その自由粒子の平面波の解

の導出過程を2010年の過去記事「散乱の伝播関数の理論(8)」,

および,「散乱の伝播関数の理論(9)」から抜粋して再掲しよう

と思います。要するに得意の手抜き記事のiつですが。。

 ただし,以下では素粒子理論などでは普通のc=hc=1の

自然単位 を用います。(hはPlank定数;hc=h/(2π))

 ※↓以下,過去記事の再掲載です。

 自由粒子のDirac方程式:

(μμ-m)Ψ(x)=0 の一般解Ψ(x)の導出過程を

記述します。

 

2行2列のPauliのスピン行列をσ=(σ123)とします。

また,同じく2×2行列ですが単位行列を2とします。

 です。

 

 Pauli行列の主要な性質としては,交換関係:

 [σij]=σiσj-σjσi=2iεijkσk,および,

 反交換関係:{σij}={σij}=σiσj+σjσi=2δij

 が成立する。ということがあります。

 

 ただし,[A,B]≡AB-BA,{A,B}≡{A,B}≡AB+BA

 です。

 

 4行4列の行列:βを2つの2×2対角細胞が2,-2

 非対角細胞が02の対角細胞型行列とします。

 

また,4行4列の行列ベクトル:α=(α123)を対角成分

02で,2つの非対角成分が共にσ=(σ123)である行列

とします。

 

容易にわかるように,{αij}=αiαj+αjαi=2δij,

i,β}=αiβ+βαi=0,β2=1です。

 

そこで,γ0≡β,γ≡βα,or (γ123)≡(βα1,βα2,βα3)

なる表示を採用すると,これらの{γμ}μ=0,1,2,3は確かにDirac行列

が満たすべき条件:{γμν}=2gμνを満足します。

  

 

ただし,Minkowski計量(metric)としては,g00=1,g0i=0,

ij=-δijを採用しています。

 

Dirac方程式(μμ-m)Ψ(x)=0 の解である波動関数

(Dirac-spinor):Ψ(x)は4行1列の縦ベクトルです。

 

(※ 余談ですが,世界がd次元のMinkowski時空なら,その時空で

Dirac-spinor(スピノール)は,2成分-spinorの(d/2)個の直積

(=tensot:テンソル)で与えられるため,その次数は,2d/2 です。)

 

このDirac方程式の変数分離解をΨ(x)=w()exp(-ipx)と

書けば,w()も4元spinorで,方程式:(γμμ-m)w()=0

を満足します。

 

粒子の4元運動量は自然単位でpμ=(E,)ですが,特に粒子と

共に運動していて,粒子が静止している(=0)と見える"運動座

標系=静止系"S0では,pμ=(E,)=p0μ≡(±m,0)です。

 

(↑ ※0μ=(±m,0)として,負の静止エネルギー:E=-mの解

も捨てず,率直に独立解として採用するのがミソです。)

 

このS0系での変数分離解は,p0μ=(±m,0)の±に応じて,

Ψ0(x)=(0)exp(-imt),または,Ψ0(x)=(0)exp(imt)

です。

 

そこで,(μμ-m)Ψ(x)=0;Ψ(x)=w()exp(-ipx)

による(γμμ-m)w()=0 は,p00=mならγ0w(0)=w(0),

00=-mならγ0w(0)=-w(0) です。

 

したがって,静止系での変数分離解Ψ0(x)は,γ0±(0)=±w±(0)

(複号同順)を満たすγ0の2つの独立な固有ベクトルw±(0)を用いて

 

Ψ0(x)=w+(0)exp(-imt),および,

Ψ0(x)=w(0)exp(imt) と表わされます。

 

γ0の固有ベクトルw±(0)のうち,固有値+1の固有ベクトル:

+(0)は,(1,0,0,0)T,(0,1,0,0)Tの1次結合で与えられます。

 

また,固有値が-1の固有ベクトルw(-)(0)は,(0,0,1,0)T,

(0,0,0,1)Tの1次結合です。

 

そこで,独立な4つを改めて,w(1)(0)≡(1,0,0,0)T,

(2)(0)≡(0,1,0,0)T,w(3)(0)≡(0,0,1,0)T,

(4)(0)≡(0,0,1,0)T と定義します。

(↑ ※ 右上添字Tは行列の転置(transport)を示します。

そこで,行(横)ベクトルの右肩添字Tは列(縦)ベクトルを

意味します。※)

 すると,静止系での4つの独立解は,

ψ0(r)(x)=w(r)(0)exp(-iεrmt)(r=1,2,3,4)

で与えられることになります。

 

ただし,符号関数εrは,εr≡1 (r=1,2),εr≡-1 (r=3,4)

で定義されます。

 

したがって,静止系での自由粒子の一般解Ψ0(x)は,Ψ0(r)(x)の

1次結合で表わせます。

 

一方,Lorentz変換(4次元回転):x'μ=aμνν,

または略記法でx'=axに伴なう波動関数のLorentz回転:

 

Ψ'α(x')=Ψ'α(ax)≡Sαβ(a)Ψβ(x) (成分表記)

 

または,Ψ'(x')=Ψ'(ax)=S(a)Ψ(x) (行列表記)

 

を考えます

 

x'=ax より,その逆変換:-1対しx=a-1x'ですから,

Ψ'(x')=S(a)Ψ(a-1x'),つまり,

Ψ'(x)=S(a)Ψ(a-1x)です。

 

他方,Ψ(x)=S(a-1)Ψ'(ax),Ψ(x)=S-1(a)Ψ'(ax)より,

S(a-1)=S-1(a)なる関係が成立することがわかります。

 

また,∂/∂xμ(∂x'ν/∂xμ)(∂/∂x'ν)ですから,

x'ν=aνμμより.∂μνμ∂'νです。

 

そこで,Dirac方程式:(μμ-m)Ψ(x)=0 にx=a-1x',

および,Ψ(x)=S-1(a)Ψ'(x')を代入して,左からS(a)を

掛けると,[iS(a)γμ-1(a)νμ∂'ν-m]Ψ'(x')=0

を得ます。

 

それ故,νμS(a)γμ-1(a)=γν,つまり,

νμγμ=S-1(a)γνS(a)であれば,

上式は(ν∂'ν-m)Ψ'(x')=0 となって,

方程式が相対論的に共変(covariant)になります。

 

特に,μνμν+Δωμν;Δωνμ=-Δωμνと書けて,

Δωμν微小の場合の微小Lorents変換を考えます。

 

これに対する4×4変換行列S(a)をΔωμνの1次まで展開して

1次係数行列を,-(i/4)σμνと表現すれば,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν+O(Δω2) です。

 

今のところ,σμνは未知の4次行列ですが,以下でそれを具体的に

決定します。

 

(Δω2)が無視できる無限小変換では,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν,

-1(a)=1+(i/4)σμνΔωμνより,

 

μνγν=S-1(a)γμS(a)は,

Δωμνγν=-(i/4)Δωαβμσαβ-σαβγμ)

となります。

 

ここで,Δωμνγν=gμαΔωανγν

=gμαΔωαββνγν=gμαΔωαβγβ

=gμβΔωβαγαにより,

 

Δωμνγν=(1/2)(gμαΔωαβγβ+gμβΔωβαγα)

=(1/2)Δωαβ(gμαΔγβ-gμβγα) を得ます。

 

故に,(1/2)Δωαβ(gμαΔγβ-gμβγα)

=-(i/4)Δωαβμσαβ-σαβγμ)ですから,

2i(gμαΔγβ-gμβγα)=[γμαβ] です。

 

結局,無限小変換では,S(a)=1-(i/4)σμνΔωμν;

σμν=(i/2)[γμν]であることがわかります。

 

さて,無限小ではなく一般の有限なLorentz変換を上記の無限小

変換を継続的に無限回反復した結果として評価するため,Δωμν

をΔωμν≡Δω(In)μνと表現します。

 

ただし,Δωは軸:のまわりの無限小Lorentz回転の回転角を表わす

無限小パラメータとし,Inはこの軸についての単位Lorentz回転を

示す4×4行列とします。

 

(注):3次元空間の回転なら,例えばz軸の回りのxy平面上の

 角度φの回転なら,

 x'=xcosφ-ysinφ,y'=xsinφ+ycosφ,z'=z

 です。

 

これはφが無限小回転角:Δφなら,

x'=x-yΔφ,y'=xΔφ+y,z'=zですから,

 

行列形では,t(x',y',z')=t(x,y,z)+Δφt(―y,x,0)

={1+Δφ(Iz)}t(x,y,z) と書けます。

 

これによって,3次元の場合の対応する3×3行列Izを定義します。

 

ただし,t(x,y,z)は行ベクトル(x,y,z)の転置(transport)

である縦ベクトルを意味します。

 

同様に,x軸,y軸のまわりの回転に対する3×3行列Ix,Iy

定義できます。(注終わり)※

 

さて,Δωμν=Δω(In)μν,Δω≡ω/Nとして,

Δω回転のN回の反復でωになる変換を考えます。

 

刻みNが無限大の極限では,

μν=lim N→∞ Πn=1N{1+(ω/N)In}μν

={exp(ωIn)}μν,またはxμ=aμνν

={exp(ωIn)}μνν

が得られます。

 

そして,これに伴なうspinorの変換は,

S(a)αβ={1-(i/4)Δω(σμνnμν)}αβより,

Δωが一般の有限の角度ωなら,

 

S(a)αβ=exp{-(i/4)ω(σμνnμν)}αβ

= exp{-(1/8)ω[γμν]Inμν}αβ  です。

 

特に,x軸に沿って無限小の速度Δv=Δβ=Δωで運動する

座標系への無限小変換は,

x'0=x0-Δβx1,x'1=x1-Δβx0

です。

 

そこで,Lorentz変換:μνμν+Δωμν;Δωνμ=-Δωμν

では,Δω01=Δω10=-Δβ以外の全てのΔωμνはゼロです。

 

この場合,有限変換ではx'μ={exp(ωIn)}μννであり,

x'0=x0coshω-x1sinhω,x'1=x1coshω-x0sinhω,

x'2=x2,x'3=x3 と書けます。

 

これに対応するLorentz変換は相対速度がv=β=tanhωの変換

です。

 

このとき,coshω=1/(1-β2)1/2,sinhω=β/(1-β2)1/2です。

 

よって,確かに無限小変換ではΔβ=Δωを満たしています。

 

さて,spinorの無限小変換はΔω01=-Δω10=Δω=Δβなので,

S(a)=1-(i/4)σμνΔωμνは,S(a)=1-(iΔω/2)σ01で,

σ01=(i/2)[γ01]=iγ0γ1=-iγ0γ1=-iβ2α1=-iα1

です。

 

それ故,S(a)=1-Δωα1/2です。

 

有限変換では,(α1)2=1ですからS(a)=exp(-ωα1/2)

=cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2)です。

 

そして,系Sで粒子が速度βで運動することは,粒子に対して

静止しているS0系に対し系Sが相対速度-=-βで運動する

ことに同等です

 

したがって,静止系S0でpμ(m,0)の正エネルギー粒子がS0

対して相対速度-=-βで運動するS系では,

 

x'0=x0coshω-x1sinhω,x'1=x1coshω-x0sinhω,

x'2=x2,x'3=x3 に対応して,

 

μ=(E,)なる表示で,E=mcoshω,p1=-msinhω,

2=p3=0 なので,β=-tanhω=p/Eです。

 

ただし,p=||=p1です。

 

故に,tanhω=-p/Eにより,tanh(ω/2)=-p/(E+m),

cosh(ω/2)={(E+m)/(2m)}1/2を得ます。

 

一方,静止系S0でpμ(-m,0)の負エネルギー粒子がS0に対し

相対速度-βで運動するS系では,

 

μ=(-E,-)(E>0)なるエネルギー表示で,

tanh(ω/2)=p/(-E+m)=-p/(E-m),

cosh(ω/2)={(E-m)/(2m)}1/2 です。

 

以上から,自由粒子波動関数の4つの独立な解は,

Ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx),

(r)()=S(a)w(r)(0)

={cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2)}w(r)(0)

であり,

 

(1)(0)≡(1,0,0,0)T,w(2)(0)≡(0,1,0,0)T,

(3)(0)≡(0,0,1,0)T,w(4)(0)≡(0,0,1,0)T

 

であることがわかりました。

 さて,座標のLorentz変換:μ→aμννに対応する運動量の

 Lorentz変換:μ→aμννから,

 E=p0=mcoshω=m/(1-β2)1/2,

 p=p1=-msinhω=mβ/(1-β2)1/2 

 を得ます

 

 そこで,-tanh(ω/2)=-tanhω/{1+(1-tanh2ω)1/2}

 =β/{1+(1-β2)1/2}=p/(E+m)であり,

 cosh(ω/2)={1-tanh2(ω/2)}-1/2={(E+m)/(2m)}1/2

 であること,がわかります。

 

 故に,-sinh(ω/2)=-tanh(ω/2)cosh(ω/2)

 ={p/(E+m)}{(E+m)/(2m)}1/2=p/{2m(E+m)}1/2

 を得ます。

 

 そして,S(a)=(w(1)(),w(2)(),w(3)(),w(4)())

 =cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2) です。

 

 これから,

 w(1)()={(E+m)/(2m)}1/2(1,0,0,p/(E+m))T,

 w(2)()={(E+m)/(2m)}1/2(0,1,p/(E+m),0)T,

 w(3)()={(E+m)/(2m)}1/2(0,p/(E+m),1,0)T,

 w(4)()={(E+m)/(2m)}1/2(p/(E+m),0,0,1)T

 と書けます。

 

 一般の速度:β123)を持つ粒子のw(r)()

 =S(a)w(r)(0)を得るには,

 

 S(a)αβ=exp{-(i/4)ω(σμνnμν)}αβ

 = exp{-(1/8)ω[γμν]Inμν}αβの右辺の生成行列:

 Inμνを速度βの空間軸回転の3×3直交行列:Tを考慮した形

 にします。

 

 pμ=(E,)は,E=m/(1-β2)1/2,=mβ/(1-β2)1/2

 ですが,特に±≡p1±ip2=m(β1±iβ2)/(1-β2)1/2

 定義します。

 

 計算結果だけ書くと,

 w(1)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (1,0,p3/(E+m),p/(E+m))T,

 w(2)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (0,1,p/(E+m),-p3/(E+m))T,

 

 w(3)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (p3/(E+m),p/(E+m),1,0)T,

 w(4)()={(E+m)/(2m)}1/2

 (p/(E+m),-p3/(E+m),0,1)T

 です。

 

 特に,ここだけ単位を復活させ光速cを陽に書くと,

 まず,β/c,pμ=(E/c,)で,

 E=mc2/(1-β2)1/2,=m/(1-β2)1/2,

 p±=p1±ip2=m(v1±i2)/(1-β2)1/2です。

 

 w(1)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (1,0,p3c/(E+mc2),pc/(E+mc2))T,

 w(2)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (0,1,pc/(E+mc2),-p3c/(E+mc2))T,

 

 w(3)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (p3/(E+mc2),pc/(E+mc2),1,0)T,

 w(4)()={(E+m2)/(2m2)}1/2

 (pc/(E+mc2),-p3c/(E+mc2),0,1)T

 です。

 

 さて,波動関数:ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx)は,

 もちろん, Dirac方程式:(γμp^μ-m)ψ(r)(x)=0

 を満足します。

 

 そして,p^μ=(p^0,-^)=(i(∂/∂t),-i∇)=i∂μより,

 γμp^μψ(r)(x)=iγμμ(r)()exp(-iεrpx)

 =εrγμμ(r)()exp(-iεrpx)ですから,

 

 (εrγμμ-m)w(r)()=0 が成立します。 

 これは,(γμμ-εrm)w(r)()=0 とも書けます。

 

 これらの式の両辺のHermite共役を取ると,

 w(r)+()(γμ+μ-εrm)=0 です。

 

 そして,γ0+=γ0,γ=-γですから,γμ+γ0=γ0γμより,

 等式の両辺の右からγ0を乗じた後,4行1列の行ベクトル:

 w(r)~()≡w(r)+(0を用いると,

 

 w(r)~()(γμμ-εrm)=0  を得ます。

 

 また,ψ(ax)=S(a)ψ(x)より,ψ(ax)=ψ+(x)S+(a)

 ですから,ψ~(ax)=ψ(ax)γ0=ψ(x)S(a)γ0

 =ψ~(x)γ0(a)γ0です。

 

 容易にわかるように,γ0(a)γ0=S-1(a)なので,

 ψ~(ax)ψ~(x)S-1(a)です。

 

 故に,ψ~(ax)ψ(ax)=ψ~(x)ψ(x)となり,ψ~(x)ψ(x)は

 Lorentz-scalarですから,

 

 w(r)~()exp(iεrpx)w(r')()exp(-iεr'px)

 =w(r)~()w(r')()exp{i(εr-εr')px}はスカラー

 (Lorents不変量)です。

 

 そしてr,pxもスカラーですから,

 w(r)~()w(r')()exp{i(εr-εr')px}は,

 w(r)~(0)w(r')(0)=εrδrr'に一致します。

 

 故に,w(r)~()w(r')()=εrδrr'なる関係式を得ました。

 

 また,証明は省略しますが,

 Σr=14εr(r)α()w(r)~β()=δαβなる式も成立します。

 

 ψ~(x)ψ(x)がLorentz-scalarなので,確率密度:

 ψ+(x)ψ(x)=ψ~(x)γ0ψ(x)はLorentz不変では

 ありません。

 

 これは,jμ(x)≡(ρ(x),(x))=ψ~(x)γμψ(x)の第0成分

 として変換します。

 

 また,簡単な計算からw(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr'

 を得ます。

 

 E/m=(1-β2)1/2ですから,β=0 での3次元体積を

 ΔV0すると,

 w(r)+r)w(r')r')ΔV

 =(r)+r)w(r')r')ΔV0(1-β2)1/2

 =δrr' 

 となります。

 

 よって,この規格化では確率密度でなく確率がLorentz不変です。

 

 ψ(r)(x)=w(r)()exp(-iεrpx)から,

 上記のw(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr'なる表式は,

 

 運動量がの正エネルギーのsスピノル:

 w(r)()exp(-iEt+ipr)(r=1,2)は,

 逆符号の運動量-を持つスピノル:

 w(r')(-)exp(iEt+ipr)(r'=3,4)

 のHermite共役と直交するという描像です。

 

 そこで,同じ空間運動量を持ち反対符号のエネルギーを持つ

 平面波解ψ(r)(x),ψ(r')(x)は,r=1,2;r'=3,4,または

 r=3,4;r'=1,2ならψ(r)+(x)ψ(r')(x)=0 になるという意味

 で直交します。

 

 さて,u(p,s)で運動量:pμ=(E,)とスピン:

 sμ=(s0,)を持つDirac方程式の正エネルギー解を記述します。

  

 すなわち,(γμμ-m)u(p,s)=0 です。

 

 ただし,sμは静止系p0μ=(m,0)での偏極ベクトル0により

 s0μ=(0,0)で定義される4元ベクトルです。

 

 したがって,任意の慣性座標系でsμμ=s0μ0μ=-02

 =-1,μμ=p0μ0μ=0 です。

 

 そして,u(p,s)がスピン:sを持つという意味を,

 静止系p0μ=(m,0)ではu(p0,s0)がσs0u(p0,s0)

 =u(p0,s0)を満たすことと定義します。

 

 ただし,σs0=σi0iでσi≡εijkσjk=iεijkγjγkです。

 

 行列σi=iεijkγjγkは,Pauliの2×2スピン行列

 σi=iεijkσjσkの4×4行列版です。

 

 (※下図では区別する便宜のため,4×4行列の方をσ(4)k,と

 表記しました。※)

     

 静止系では,i∂ψ/∂t=βmψ,=βmですが,

  β=γ0ですから,[,σs0]=m[γ0i0i]
   =ms0i0i]=imεijk0i0jγk]=0 です。
 それ故,σs0は静止系での保存量であってとの同時固有状態
   が存在可能です。よって,σs0はp0と同時対角化可能です。

 

  よって,(γμμ-m)u(p,s)=0,σs0u(p0,s0)

  =u(p0,s0)によりu(p,s)の定義が可能です。

 

  同様に,(γμμ+m)v(p,s)=0 を満たす解で,静止系で

  -0のスピンを持つという条件:σs0v(p0,s0)=-v(p0,s0)

  によってv(p,s)を定義します。

 

  この結果,w(1)()=u(p,uz),w(2)()=u(p,-uz),

  w(3)()=v(p,-uz),w(4)()=v(p,uz) です。

 

  ただし,uz(z0,z)は,静止系では,z0μ=(0,z0)

  =(0,0,0,1)という形になる4元ベクトルです。

 

  そして,z0=(0,0,1)はz方向の spin-upを意味します。

 

  さて,天下り的ですがr(p)≡(εrγμμ+m)/(2m)

  (r=1,2,3,4),またはΛ±(p)≡(±γμμ+m)/(2m)

  とおけば,

 

  Λr(p)Λr'(p)=(1+εrεr'r(p)/2 が成立するので,

  Λ2(p)=Λ(p),Λ2(p)=Λ(p),

  Λ(p)Λ(p)=0,Λ(p)+Λ(p)=1 です。

 

  Λr(p)w(r')()=(εrγμμ+m)w(r')()/(2m)

  ={εrμμ-εr'm)/(2m)+(1+εrεr')/2}w(r)()

  ={(1+εrεr')/2}w(r)()です。

 

  故に,r=1,2,かつr'=1,2,または,r=3,4,かつr'=3,4

  なら,Λr(p)w(r')()=w(r')() です。

 

  r=1,2,かつr'=3,4,または,r=3,4,かつr'=1,2

  なら,Λr(p)w(r')()=0 です。

 

  そして,また,Σ(s)≡(1+γ5γμμ)/2と置きます。

  すると,Σ(uz)=(1+γ5γμzμ)/2です。

 

  ただし,γ5=γ5≡iγ0γ1γ2γ3です。

 

  明らかに,Σ(uz)u(p,uz)=u(p,uz),

  Σ(uz)v(p,uz)=v(p,uz)で,

  Σ(-uz)u(p,uz)=Σ(-uz)v(p,uz)=0 です。

 

  Σ(uz)は共変形なので,Σ(s)u(p,s)=u(p,s),

  Σ(s)v(p,s)=v(p,s)で,

  Σ(-s)u(p,s)=Σ(-s)v(p,s)=0

  が成立します。

 

  以上から,P1()≡Λ()Σ(s),P2()≡Λ()Σ(-s),

  P3()≡Λ()Σ(-s),P4()≡Λ()Σ(s)とおけば,

 

  これらはPr()w(r')()=δrr'(r')(),または,

  Pr()Pr'()=δrr'を満たす正負のエネルギー固有関数

  の射影演算子となります。

 

  Σr=14εr(r)α()w(r)~β()=δαβ  or

  Σr=14εr(r)()w(r)~()=1ですから,

 

  Λ(p)Σr=14εr(r)()w(r)~()

  =Σr=12(r)()w(r)~()

  =Λ(p),

 

  Λ(p)Σr=14εr(r)()w(r)~()

  =-Σr=34(r)()w(r)~()

  =Λ(p) です。

 

  故に,規格化された波動関数を,

  ψp(r)(x)≡(2π)-3/2(m/E)1/2(r)()exp{-iεrp(x-x0)}

  とおくと,

 

  (2π)-3(m/E)Λ(p)exp{-ip(x-x0)}

  =Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0),

  -(2π)-3(m/E)Λ(p)exp{-ip(x-x0)}

  =Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0) となります。


  (※↓ここからは,この過去記事の表題であった

 「散乱の伝播関数の理論」の主要な内容であるところの

 (iγμμ-m)SF(x-x0)=δ4(x-x0) を満たす

 Feynman伝播関数:SF(x-x0)の理論の項目に一足飛びに

 脱線しています。

 
  それ故,非相対論極限の「Foldy-Woutheusen変換」や,
 

 負エネルギー解を解釈する「空孔理論」の項目などを

 飛び越えて,やや飛躍した話になっています。※)

  以上から,自由Dirac粒子のFeynman伝播関数は,

 SF(x-x0)

 =-iθ(t-t0)∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 +iθ(t0-t)∫d3Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0) 
  と書けます。

 

 そこで,任意の正エネルギー解を,

 ψ(+)(x)≡∫d3Σr=12r(p(r)(x),

 任意の負エネルギー解を,

 ψ(-)(x)≡∫d3Σr=34r(p(r)(x)と置きます。

 

 すると,w(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr' or

 w(r)+()w(r')()=(E/m)δrr'によって,

 ψp(r)+(x)ψp(r')(x)=(2π)-3δrr' です。

 

 また,∫d30(2π)-3exp{-iεr(p'-p)x0}

 =δ('-)exp{-iεr(p0'-p0)t0}ですから,

 

 ∫d30∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x00ψ(+)(x0)

 =Σr,r'=12∫d33'Cr'(')ψp(r)(x)∫d30(2π)-3

 (m2/EE')1/2(r)+()w(r')(')exp{-iεr(p'-p)x0}

 

 =Σr,r'=12∫d3(m/E)Cr'(p(r)(x)w(r)+()w(r')()

 =Σr=12∫d3r(p(r)(x)=ψ(+)(x)

 

 を得ます。

 

 したがって,θ(t-t0(+)(x)

 =i∫d30F(x-x00ψ(+)(x0)が成立します。

 

 同様にして,θ(t0-t)ψ(-)(x)

 =-i∫d30F(x-x00ψ(-)(x0) も成立します。

 

 これらは,SF(x-x0)が正エネルギー解ψ(+)(x0)を時間

 の前方(=未来)へ,負エネルギー解ψ(-)(x0)を時間の後方

(=過去)へ運ぶことを明示しています。

 

F(x-x0)は自由電子のFeyman-propagater(伝播関数)として

知られています。

 

これは,最初1942年に,Stükelbergによって陽電子理論に導入され

ました。

 

そして,1948年には,Feynmanによっても独立に導入されました。

 

Feynmanはそれを広範囲にわたって実際の計算に適用しました。

 

自由伝播関数SF(x-x0)から,正確で完全なGreen関数,そして,

S行列要素,つまり相互作用の力場が存在する場合の電子や陽電子

の種々の散乱過程に対する振幅を作ることができます。

 

このことを遂行するため,前の非相対論的扱いを書き直します。

 

まず,電磁相互作用のみ存在する場合の正確なFeyman-propagater

(伝播関数)SF'(x;x0)は,

[iγμ(∂/∂xμ)-eγμμ(x)-m]SF'(x;x0)

=δ4(x-x0) を満たします。

 

これと,前に求めた式:{i(∂/∂t)-0(x)}G(x;x0)

=∫d41δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)],

および,G(x;x0)

=∫d410(x;x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]

=G0(x;x1)+∫d410(x;x1)V(x1)G(x1;x0)

を利用します。

 

つまり,上の表現で{i(∂/∂t)-(x)}γ0,V(x10を,

それぞれ,(iγμμ-m),-eγμμ(x)に置き換え,

0(x;x0),G(x;x0)を,それぞれ,

F(x-x0),SF'(x;x0) に置換します。

 

 すると,{i(∂/∂t)-0(x)}G(x;x0)

 =∫d41δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]は,

 

 (iγμμ-m)SF'(x;x0)

 =∫d4yδ4(x-y)[δ4(y-x0)+eγμμ(y)SF'(y;x0)

 となります。

 

 これとδ4(x-y)=(iγμμ-m)SF(x-y)より,

 (iγμμ-m)SF'(x;x0)

 =(iγμμ-m)[SF(x-x0)

 +e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)]

 が成立します。

 

 すなわち,SF'(x;x0)=SF(x-x0)

 +e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)

 が成立します。

 

また,Dirac方程式;(iγμμ-m)Ψ(x)=eγμμ(x)Ψ(x)

の正確な解で,Feynmanの境界条件を満たすΨ(x)を考えます。

 

 先述したように,相互作用のない自由伝播関数は,

 SF(x-x0)

 =-iθ(t-t0)∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 +iθ(t0-t)∫d3Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

 で与えられます。

 

 そこで,ψ(x0)が正負の両振動数成分を含む場合でも,

 t>t0ではψ(x)は自由電子の正振動数成分のみの重ね合わせ

 としてψ(x)=i∫d30F(x-x00ψ(x0)と表わされます。

 

 一方,Ψ(y)=lim t0→-∞ i∫d30F'(y;x00ψ(x0)

 です。

 

 そこで,SF'(x;x0)

 =SF(x-x0)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)SF'(y;x0)

 により,

 

 Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

 です。

 

 他方,t<t0ではψ(x)は自由電子の負振動数成分のみの

 重ね合わせとして,ψ(x)=-i∫d30F(x-x00ψ(x0)

 と表現され,

 

 Ψ(y)=lim t0→ ∞ (-i)∫d30F'(y;x00ψ(x0)

 です。

 

よって,いずれの場合も、

Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

なる同じ表現が得られます。

 

そして,Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμμ(y)Ψ(y)

は,未来t>t0では正振動数成分のみ,過去t<t0では負振動数

成分のみを含みます。

 

すなわち,t→ ∞ では,

Ψ(x)-ψ(x)=∫d3Σr=12ψp(r)(x)[-ie∫d4yψp(r)~(y)

γμμ(y)Ψ(y)],

 

および,t→-∞ では,

Ψ(x)-ψ(x)=∫d3Σr=34ψp(r)(x)[+ie∫d4yψp(r)~(y)

γμμ(y)Ψ(y)] です。

 

[ ]の中は,いずれもp,rに依存するc-数です。

 

こうして,電磁場Aμ(y)による散乱では,"散乱後(未来)t→ ∞

には電子は決して負エネルギーの海に落ちないという空孔理論

の要請"に従う散乱定式化が得られました。

 

まだ,満たされてない正エネルギー状態のみを取ることができる

のです。

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGraw-Hill)

※ 以上,全て過去記事の再掲載でした。※

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Dirac方程式の導出(補遺)

前回,Dirac方程式の導出の項目については終了と書きました。

しかし,Dirac方程式の形は,先に得られた, 

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨより, 

ic[γ0(∂Ψ/∂x0)+Σj=13γ(∂Ψ/∂x)]-mcΨ=0,または, 

(icγμμ-m)ψ()0 の形の方が後々便利なので第2章まで 

入って,この形の方程式の導出までをさらに補足しておきます。
 

第2章 Dirac方程式のLorentz共変性 

§2.1 Dirac方程式のLorentz共変形
 

 物理的な解釈が存在するようなDirac方程式やそれから構成される

確率の保存を意味する連続の方程式はLorentz変換の下で共変である

こと(方程式,理論が慣性座標系の変換の下でそ形を変えないこと)

必要です。
 

まず、Lorentz変換とはどういう意味か?を復習します。
 

 2つの異なる準拠系(基準となる異なる時空座標系(慣性系))

,同一の物理現象を記述する2人の観測者を,それぞれ,,

'とします。
 

 観測者があらゆる現象を記述する時空座標(事象):μ,

観測者'が同一の現象を記述する時空座標(事象):x'μに関係

付ける規則は,2つの座標系の間の次のLorentz変換と呼ばれる

変換によって与えられます。
 

この変換は,x'μ=Σν=03μνν≡aμννなる線形変換で

表わされます。
 

(↑※最後の等式は定義式で,重複する同じ添字があれば,それ

ついては,0から3まで和を取るという約束を設けて,すぐ前の

総和記号:Σν=03を省略するという規約です。
 

 これを添字の縮約といいます。
 そして,これはEinstein
規約として知られています。

以下では必要に応じてこの規約を使用します。※)
 

この変換は斉一次(同次)変換(linear homogeneous transformation)

であり,係数μν,観測者と同じ,'でラベル付けされる2つの

準拠系の相対速度と空間座標軸の向きにのみ依存します。
 

Lorentz変換の基本的不変量(スカラー)は固有時間区間(世界間隔

4次元距離):dσ2≡gμνdxμdxν=dxμdxμ です。
 

(※ ただし,μνは計量テンソルで,特殊相対論のMinkowski

計量(metric)として001,0i0,ij=-δijなる表示を採用

しています。※)
 

これは,「真空中の光速はあらゆるLorentz座標系において同一

不変である。」という,物理的観測から導かれた特殊相対性原理

からの帰結です。

 

そして,x'μ=aμνν,および,dσ2=gμνdxμdxν

=dxμdxμ の座標変換不変性から,変換係数の満たす次の関係

が得られます。すなわち,μνμσ=δνσです。

 

(4): x'μ=gμνx'νμννλλ=aμλλ

 =aμλλσσμσσ,つまり,x'μμνν です。

 

ただし,μν(-1)μν , or μλλν=δμν,μν

=gμλλσσν です。

故に,dx'μμνdxν,です。他方,d'μ=aμνdxν

より,dσ2=dx'μdx'μμνμλdxνdxλ

dxν(μνμλdxλ)dσ2dxνdxν です。

 

この式は任意のdxμ,dxμに対して成立する恒等式

なので常に,dxνμνμλdxλとなることが必要

す。
 

したがって, μνμλ=δνσと結論されます。
 

これは,例えばdxμ(1,0,0,0), dxμ(1,0,0,0)なら, 

μ0μ01,dxμ(0,1,0,0), dxμ(0,1,0,0)なら,

μ1μ11,さらに,dxμ(1,1,0,0),dxμ(1,1,0,0) 

なら,μ0μ0+aμ0μ1,1.μ1μ0-+aμ1μ11より, 

μ0μ1=aμ1μ00 を得るなどで証明されます。 

 (4終わり)
 

さて,x'μμνν,μνμσ=δνσは,properLorentz

変換と,improperLorentz変換の両方の関係を定義する式です。
 

μν=gμλλσσνですから,成分がμνの行列の行列式を 

det(μν)と書けば, det(μν)det(μν)です。

 

それ故,μνμσ=δνσ,{det(μν)}21を意味します

から,一般にはdet(μν)=±1です。

 

このうち,properな変換とは, det(μν)=+1の変換のこと

です。これは,元の座標系から無限小のproper Lorentz変換

の連続により 到達可能なので連続変換とも呼ばれ3次元空間

回転も含みます。
 

他方,det(μν)=-1の変換をimproperな変換といいます。

 

これは,例えば鏡映,空間反転,時間反転などがあり,元の系

から連続的には到達できないので不連続とか離散的変換と

呼ばれます。
 

さて,当面の課題は,各準拠系にある観測者とO'によって

 

なされるDirac粒子の観測の与えられた集合を関係付ける

対応を構成すること。。言い換えると,観測者.および.

'のそれぞれによって用いられる波動関数Ψ(),および,

Ψ'(x')を関係付ける法則を求めることです。
 

この変換則とは,の用いるΨ()が与えられれば,'が

用いるΨ’(x')を計算することができるような規則のこと

です。
 

Loretz共変性の要請に従って,この変換則から,系におい

てもO系と同じ形のDirac方程式の解としての波動関数が得

られます。

  
こうしたDirac方程式の形の不変性は.その基礎となる

Einsteinエネルギー・運動量の関係:p2=pμμ

=E2/22=m22 Lorentz不変性を体現して

います。

 

1章のDirac方程式の導出は,この関係に基づいていました。

 

共変性を論じる際には,0=ctとxj(j=1.2,3)の対称性を

保持する4元表記でもってDirac方程式を表現することが望

ましいと考えられます。

   
この目的のために,先に求めた形のDirac方程式:

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨ

 の両辺にβ/cを掛けて次のようなnotationを導入します。 

  すなわち,γ0=β,γ=βαk(k=1.2,3) とします。

(※上に行列β,αの表示の1例を示します。これに対しては

ガンマ行列の表示は次の図のようになります。
 

(※本ブログ記事では特に断らない限り,一貫して,この Bjorken-Drell

テキストの表示を採用します。※)

すると,

ic[γ0(∂Ψ/∂x0)+Σj=13γ(∂Ψ/∂x)]-mcΨ=0

が得られます。
 

 よりコンパクトには,これは(icγμμ-m)ψ()0 

 と書けます。
 

このときαj,βの反交換関係の性質:

{αi,αj}=αiαj+αjαi2δij,

{α,β}=αβ+βαij0,β21,

γ0=β,γ=βαj(j=1.2,3)なる4元表記:

γμ(γ0,γ1,γ2,γ3)では,{γμ,γν}2μνなる 

反交換関係に帰着します。
 

{γμ,γν}2μνなる条件を満たすγμ(γ0,γ1,γ2,γ3)

Dirac行列(Diracのガンマ行列)と呼びます。

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.DrellRelativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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2016年1月23日 (土)

訃報!!中村梅之助さん

 テレビ時代劇,「遠山の金さん」などで有名な歌舞伎俳優でもある中村梅之助さんが去る1月18日に肺炎のため死去されました。享年85歳でした。   

→ 朝日新聞デジタル 中村梅之助さん死去 「遠山の金さん捕物帳」など

 

      中村梅之助

 私が知ってるだけでもテレビ時代劇の主役は遠山の金さん捕物帳の他に,全部捕物帳,ですが.伝七,達磨大助,.そば屋梅吉がありました。

 最近は時代劇専門チャンネルで毎日のように元気なお姿を拝見していました。歴代遠山金さんの中では初代でしょうが,最高に好きでした。

 多士済々でしたね。

 

ご冥福を祈ります。合掌!!

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2016年1月20日 (水)

Dirac方程式の導出(4)

※余談です。

イヤー昨日19日は,15日の退院後の第1回目の順天堂での形成外科外来への診察でしたが,これは右足の動脈カテーテル手術後の血流測定もあったのですが,いろいろときつかったです。

行きは冷たい風で寒い上に道にはところどころまだ溶けない滑りやすい雪があって,自宅から巣鴨駅まで800mくらいで健康な足なら10分以内で到着するのですが,杖をついた不自由な足では,普通の日でも20分以上かかるのに,退院後歩いていなかったこともあり,また転ぶのを避けて気を付けながら歩いたので,30分くらいもかかりました。

帰りも病院から都バスと都営地下鉄で巣鴨駅に着いたのは18時ころで,それから駅近くの西友で買い物をしてお店を出たのが19時丁度だったのに帰宅したらもう19時45分でした。

帰路は寒かったし荷物も重く足も痛かったし,診察に行って肺炎にでもなったらシャレになりません。

次回の診察予約は2週間後の66歳誕生日の翌日です。
 

外来の診察は14時の予約でしたが,私が受付を済ませたのは14時半ころで,しかし,いつもより早く15時半ころには呼ばれました。

知っている医師5人(うち女医4人)と知らない年配の男性医師の6人に

さらに足の装具業者も来て1時間余りも診察を受けたのは有難かったのですが,半分は私が医師の指示を聞かないとか,真面目に治る気があるか?とかの説教で閉口しました。

病気やケガなどについては専門家である医師たちに従いたいですが,それ以外は.心配されるのは有難いけれど,生き方とか人生についても説教される覚えはないという感想です。

 
恐らく,仕事抜きで心配してもらえるのは有難いですが,私は素直な性格ではなく,棺桶に片足以上も入ってるクソジジイですからネ。。

(余談終わり)※

 
さて,本題のDirac方程式の導出の続きです。
 

前回の記事では,主として古典論での電磁場の極小相互作用の意味

付けの自己注釈を中心に記述しました。
 

さて,量子論のDirac定式化では,質量mの自由質点のHamiltonian

0.0=cαp+βmc2であり,極小相互作用変換:

-e.0 -eΦによって,電磁場がある場合

の質点のHamiltonian ,H=α(p-eA)+βmc2+eΦ

で与えられ,これを0','=-ecαAeΦと表現

できます。

そこで,'古典=-evAeΦと比較して.確かにcαが速度

演算子表現:op に対応しています。
 

 さらに念を押すと,位置座標の時間発展は,古典論でのHamilton

の正準方程式:/dt=[,]P.B  ([,]P.B Poisson括弧)

の演算子としての対応であるHeisenbergの方程式が,

/dt=(i/c)[,](i/c)[α(p-eA)+eΦ,] 

(i/c)α[,]=cα ですから,

速度:v=/dtが.確かにcα対応していることがわかります。
 

そして,π=p-eAと置くと,がtに陽に依存するのでπに

対するHeisenbergの方程式は,

π/dt=(i/c)[,π]-e∂/∂t です。
 

そして,右辺=(i/c)[,π] +e∂/∂t

(i/c)[,-e]+e∂/∂t 

(i/c)[α(p-)+eΦ,-e]-e∂/∂t 

(i/c){[eΦ,][ceαA,]}e∂/∂t 

です。
 

i. ところが, (i/c)[eΦ,]-e∂/∂t  

=-e∇Φ-e∂/∂t=-eであり, 

(i/c)[cαp,-e]+[-ceαA,]

(-ec)](α∇)-∇(αA)]=e(α×)

ですから,

π/dt=e(op×),(π-e,op=cα

を得ます。これが点電荷eに対する演算子の時間発展の方程式です。

(3):何故なら, 

(α×)i[α×(∇×)]i=ΣjkεijkαjΣlmεklmlm 

=Σjαj(ij-∂ji)より,

α×=∇(αA)ー(α∇) です。(注3わり)
 

ic(∂Ψ/∂t)[α(-e)+βmc+eΦ]Ψ

のような電磁相互作用を含む一般的な波動方程式は特殊な双極子

や多重極子の項へと導くはずです。
 

以下では,これの非相対論的極限を考察したいと考えますが,

それに際しては,4成分列ベクトルの波動関数Ψを2成分のφ

とχに分けて表現するのが便利です。

 すなわち,Ψ={φ~,χ~}T2成分ずつに分解します。

 

 すると,4次の行列α,今採用している表示ではPauli2次の

 スピン行列:σを反対角成分とする細胞反対角行列であり,

 βは対角成分を,-とする細胞対角行列なので.
 

 波動方程式:ic(∂Ψ/∂t)[απ+βmc+eΦ]Ψ

 は,ic(∂φ~/∂t)[σπχ~(mc+eΦ)φ~,

および,ic(∂χ~/∂t)[cσπφ(mc+eΦ)χ~

に分解されます。

 
非相対論的極限では,質点粒子のエネルギーは莫大な静止エネルギー

mcほぼ等しく,それ以外の付加的エネルギーは微小なので,

Ψ=[φ~,χ~}T静止エネルギーに依存する因子と非相対論的波動関数

因子との積に分解して,改めてΨ= exp(imc2/c)[φ,χ}T

と書きます。
 

すると,

ic(∂φ~/∂t)exp(imc2/c)[mcφ+ic(∂φ/∂t)], 

ic(∂χ~/∂t)exp(imc2/c)[mcχ+ic(∂χ/∂t)] 

ですから,
 

ic(∂φ~/∂t)[σπχ~(mc+eΦ)φ~ , 

 ic(∂φ/∂t)=cσπχ+eΦφ に, 

ic(∂χ~/∂t)[σπφ(mc+eΦ)χ~ , 

ic(∂χ/∂t)=cσπφ(2mc+eΦ)χ 

になります。
 

前の式:ic(∂φ/∂t)=cσπφ(2mc+eΦ)χに, 

後の式で左辺を無視してゼロと置いて得られる

χ=σπφ/(2mc)を代入すると,

ic(∂φ/∂t)[(σπ)2/(2)+eΦ]φ です。
 

ところが,一般にベクトル演算子,について,これらの成分

が可換:[i,j]0なら,(σa)(σb)abですが,

それらが必ずしも交換しない一般の場合には,

(σa)(σb)Σi,j3σiiσj

ab(i/2)Σi,j3εijkσi

=abiσ(×) が成立します。
 

故に, σπ)の内積についても,(σπ)2 π2iσ(π×π)です。
 

そして,π-eですが,-ic∇とについては明らかに 

××0なので,

(π×π)φ{(-e)×(-e)}φ 

=-e(××)φ(iehc)(×∇+∇×)φ 

(iehc)(∇×)φiehcφ です。
 

それ故,ic(∂φ/∂t)[(σπ)2/(2)+eΦ]φから, 

非相対論的極限の波動方程式として, 

,ic(∂φ/∂t)

[(-e)2/(2)+eΦ-ehcσB/(2)]φ 

を得ます。
 

 これには謂わゆるPauli:-ehcσB/(2)が出現していて,

この方程式は,相対論を考慮する以前の基本的波動方程式で,

Pauli方程式としてよく知られているものです。
 

このことは,ここまで定式化してきたDirac方程式を,相対論的電子

の量子論を構成するに当たっての出発点として受け入れることに

おいて,正しい筋道を通っているという確信を与えてくれます。
 

 そして,波動関数φの2成分はスピン1/2の電子の2つの自由度を

許容するのに丁度間に合うもので,電子の正しいスピン磁気モーメント

が磁気回転比がg=2に対応した形で自動的に出現しています。

 これを明確に見るために,

 (-e)2/(2)+eΦ-ehcσB/(2)をさらに変形して,

 相互作用の1次の項のみをkeepして,磁場が空間的には一様

 (には依存しないベクトル),=∇×;A=(×)/2

 表わせる場合を考察します。
 

 この場合,(-e)2/(2) 

=p2/(2) -eAp/(2)-epA/(2)+e22/(2)

ですが,eの2次以上の項を無視すると, 

 (-e)2/(2)

 =p2/(2)iehc/m+iehc/(2) 

 =p2/(2)iehc{(×)}/(2)

 iehc(×)/(4) です。
 

 そして,(B×x)∇φ/(2)

 {iehc/(2)}(×)∇φ  

 =iehcΣijkεijkkiφiehc(x×∇)Bφ

 =-e(×)φ=-eLBφ/(2)

 です。
 

ただし,×,これは軌道角運動量です。
 

 一方.スピンが1/2の電子のスピン角運動量,Pauliのスピン

行列σ定義から.=hcσ/2であり,Pauli項をこのsで表現

すると,-ehcσBφ/(2)=-esBφ/m です。
 

これを軌道角運動量による磁気モーメントの項:-eLBφ/(2)

に加えると,

-eLBφ/(2)-esBφ/m=-e(2)φ/(2) 

となります。
 

また,iehc{(×)}φ/(4)

iehcΣijkεijkδkiφ/(4)0 です。
 
 

 そこで,電磁相互作用が比較的弱くて2次以上の項を無視する近似

では Pauli波動方程式:

ic(∂φ/∂t)[(-e)2/(2)+eΦ-ehcσB/(2)]φ 

,ic(∂φ/∂t)[2/(2)+eΦ(2)/(2)]φ

となり,磁気モーメントについて,スピン角運動量.磁気回転比

がg=1の軌道角運動量2倍の寄与をする:


 
つまり磁気回転比がg=2の寄与をすることが明確に示され
ました。
 

 こうしたDirac方程式からの満足できる非相対論的極限での

 帰着は,Dirac理論を強固に推す一因となります。
 

次の章では,さらにDirac理論を強固にするLorentz不変性を確認

することに進みます。
 

 しかし,本ブログでのDirac方程式導出のテーマについては, 

ここで終わることにします。
 

 なお,ここで示したDdiracの相対論的電子論からPauli項が出現

するということの考察については,

 既に2006年9/8の過去記事「パウリのスピンと相対性理論

で記述しています。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.DrellRelativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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2016年1月19日 (火)

Dirac方程式の導出(3)

Dirac方程式の導出の続きです。


§1.4 非相対論との対応(Nonrelativisticcorrespondence)

  Dirac方程式のLorentz不変性を確立するという問題を論じる前に,

,方程式が物理的意味をなすことを見ることの方が,

恐らくより切実な課題です。
 

 単一の自由電子を想定し,静止した1つの電子に対応する独立な解

の個数をカウントすることから始めます。


 4元運動量がpμ(/,1,2,3)(/.)の自由粒子の
 

波動関数をΨとすると,このΨは,ic(∂Ψ/∂t)=EΨ, 

ic(∂Ψ/∂xk)=-ic(∂Ψ/∂xk)=pkΨ (k=1,2,3)

を満たす,4元運動量の同時固有状態です。


 
静止した粒子の4元運動量は,μ(/,)(mc,0)ですから, 

この場合はΨはic(∂Ψ/∂t)=mc2Ψ, ic(∂Ψ/∂xk)0  

(k=1,2,3)を満たすはずです。
 

したがって,この場合はDirac方程式: 

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨは 

単にic(∂Ψ/∂t)=βmcΨ となります。
 

βの固有値は2個が+1で2個がー1ですが,先に与えたβを対角成分

1,4×4対角行列とする特別な標示では,βの+1に属する

固有ベクトルは係数を除いて.(1)[1,0,0,0]T,および,

(2)[0,1,0,0]T です。
 

また,固有値-1に属する固有ベクトルはw(3)[0,0,1,0]T, 

および,(4)[0,0,1,0]Tです。
 

そこで, ic(∂Ψ/∂t)=βmcΨの独立な解は, 

Ψ(1)exp(-imc/)(1),Ψ(2)exp(-imc/)(2), 

Ψ()exp(imc/c)(3),,Ψ(4)exp(imc/c)(4) 

のように具体的な形で表わすことができます。
 

最初の2つΨ(1),Ψ(2)ic(∂Ψ()/∂t)=mc2Ψ(),(k=1,2)

を満たし,正エネルギー+mc2に対応しますが,後の2つΨ(3),Ψ(4)

,ic(∂Ψ()/∂t)=-mc2Ψ(),(k=3,4)を満たし

負エネルギー(負質量)E=-mc2に対応します。
 

2次形式:=p22+m24をそのまま量子論の波動方程式に

定式化したために,異質な負エネルギー解という非常な困難を

導きましたが,これの解決.反粒子の形成理論において重要な役目

を果たすことに導きます。

 

しかし,こうしたことは第5章の空孔理論において到達することで,

今のところは受け入れ可能な正エネルギーの解のみに限定して考察

します。
 

特にそれらは非相対論的極限でPauliの2成分スピン理論に帰着

することを示します。
 

この目的のために4元ポテンシャル:μ(Φ/,)で記述される

電磁場との相互作用を導入します。
 

ただし,ここでの電磁場=電磁ポテンシャルAμ,電機場を

光子(電磁波)の集まりとして量子化(第2量子化=場の量子化)

した場=演算子ではなく,取りあえず.対象の電子とは独立に外部

から与えられた外場=c数の古典場とします。
 

この外電磁場と元の自由電子とが相互作用する合成系の記述は,

古典相対論力学での点電荷の電磁場との相互作用の記述において

実施され,謂わゆる極小相互作用(minimal coupling)として知られて

いるゲージ不変な置換:μ → pμ-eAμによって導入されます。
 

今の量子論のケース「では,μはpμ ic(/∂xμ)と量子化

されて4元運動量演算子となっているので,極小作用の電磁相互作用

ic(/∂xμ)  ic(/∂xμ)-eAμなるっ置換で実現

されます。
 

これは,演算子としては,

ic(/∂t) -eΦ=ic(/∂t)-eΦ 

=-ic -e=-ic∇-e 

を意味します。
 

それ故, 自由粒子のDirac方程式: 

ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨ

において4次の係数行列の組:(α1,α2,α3),3次元ベクトルと

見なしてα表現した方程式:

Ψ=ic(∂Ψ/∂t)=-cα(ic∇Ψ)+βmcΨ 

に相互作用を導入すると,
 

ic(∂Ψ/∂t)[α(-e)+βmc+eΦ]Ψ 

となります。(e<0は電子の電荷です。)
 

この方程式が,Dirac粒子に対して極小相互作用を導入した式です。
 

Dirac粒子は点電荷であることが想定されていて周りに電磁場を

纏っています。
 

非相対論的量子論で扱った摂動論との比較を強調するなら, 

系のHamiltonian0'としては自由粒子単独の 

Hamiltonian:0=cαp+βmcに相互作用の

摂動Hamiltonian:=-ecαA+eΦが加わったという形

になります。
 

このとき,行列cα,電荷がeの点電荷の相互作用の古典表現

での速度を演算子に書き換えたものとして出現しています。
 

すなわち,古典論でのこうした系の摂動'に対応する」Hamilton

関数,classical=-evA+eΦで与えられるからです。
 

この演算子としての対応:op=cα, ここでの流速ベクトル

の表現:=cΨαkΨ,or=Ψ(α)Ψが,古典的には

=ρに対応することを見ても明らかです。
 

これはまた,Ehrenfestの方程式の相対論的拡張を行なえば直接

導かれます。
 

(1):空間座標に対するHeisenbergの運動方程式は, 

/dt=(i/c)[,](i/c) [0-ecαA+eΦ,] 

(i/c)α[,]=cαです。

 

何故ならdxj/dt

(i/c)α[,j](i/c)Σ=13αk[,j] 

であって,の交換関係が,[,j]=―iδkjであるから

です。


 
最左辺のd/dtは位置座標の時間微分なので速度に他なり

ません。

したがって,最右辺のcαは速度表示での演算子:opという意味 

を持ちます。(注1終わり)※
 

(2):ここで古典物理学での電磁場の中の点電荷の運動の力学を

復習します。
 

一般に,系のLagrangianLagrange関数を

(,,);d≡d/dtとすると,この系の

Lagrangianはその時間tによる積分:dtが作用 

与えるとき,粒子の実際の軌道がこのSを最小とするように

与えられます。
 

軌道の両端を固定したときSが最少になる条件は変分原理:

δS=δ∫dt=0から決まり、これは

(/dt)(/)-∂L/x=0なる微分方程式に帰着 

します。この方程式をEuler-Lagrange方程式といいます。
 

 質量がmの自由粒子(質点)Lagrangian:=0,古典的には

非相対論では0=m2/2ですが相対論を考慮した場合は

0=-mc2(1β2)1/2;β/cです。

解析力学では,系の共役運動量量:,=∂/で定義

します。
 

単一の粒子の他に影響されるものが何もない自由粒子1個のみ

の系の場合は,Lagrangian0とおいて.この場合の共役

運動量:p=0/,非相対論の場合の0=m2/2

では=∂0/=mであり,

相対論の場合の0=-mc2(1-β2)1/2なら

=∂0/=m(1-β2)-1/2ですが.いずれも普通の力学で

意味する質点の運動量に一致します。
 

通常の力だけに依存する位置エネルギーによって,-

で与えられる保存力の場(∇×0)の場合,運動エネルギーをT

とすると,=∂/,-=-∂/であり,

には無関係,には無関係なので,とおけば,

0より0でこの場合も=∂/=∂0/

となって,


Euler-Lagrange
方程式:
/dt)(/)-∂L/x=0

古典力学の質点の運動方程式:/dt=-に一致します。
 

一方,質量mの自由粒子が電荷eを持つ点電荷で,周りに電場,

磁場があるとき,電磁気学によるとスカラーポテンシャルをΦ,

ベクトルポテンシャルをとして,=-∇Φ-∂/∂t,

=∇×と表現できます。
 

そして,電荷がeの点電荷が電場,磁場から受ける力

=e(×)と書けます。
 

ところが,(×)i(×∇×)i=ΣjkΣlmεijkjεklmlm 

=Σjlmδ(δilδjm-δiδjl)jlm=vjij-vjji

=∂i(vA)()jですから, 

×=-∇Φ-∂/∂t+∇(vA)()A 

です。
 

故に, =e(×)

=e{-∇Φ-∂/∂t+∇(vA)()}

と書けます。
 

しかし,さらにd/dt=∂/∂t+()と変形できます

から,結局,=-e∇Φ+e∇(vA)-ed/dtと書けます。
 

仮に,=-∇Φ,0の静電気のみの場合なら,

F=E=-e∇Φですから,0,=eΦとすれば

通常のの形を採用して,

(/dt)(/)-∂/x=0 ,相対論,非相対論

共通の運動方程式:dp/dt=-∇Vに一致するのは

明らかで,このときは保存力場の方法が当てはまります。
 

しかし,今のも存在してゼロではなく,受ける電磁的力

=e(×)=-e∇Φ-ed/dt+e∇(vA)

与えられるときには,
 

(/dt){(vA)/)-∂(vA)/

/dt-∇(vA)ですから,
 

0-eΦだけでなく,0-eΦ+evA

すれば,共役運動量は=∂/=∂0/∂vですが,

これは自由な質点粒子の運動量:0/∂v(=mv(非相対論),

=m(1-β2)-1/2(相対論))とそれに付随する電磁場の運動量:

の和です。
 

Euler-Lagrange方程式:(/dt)(/)-∂L/x=0 

,/dt/x=,=∂0/+eより, 

(/dt)(0/∂v)+ed/dt=-e∇Φ+e∇(vA) 

となって,

運動方程式:(/dt)(0/∂v)=e(×)

を得ます。
 

これは非相対論ならd(mv)/dt=e(×),

相対論なら, 

{(1-β2)-1/2}/dt=e(×)ですから正しい

運動方程式に一致します。
 

このとき,Hamiltonian,=pで与えられるため. 

これを電磁場のない自由点電荷のそれ0=pv0と比較すれば, 

pv0+eΦ-evA=H0+eΦ-evAです。
 

しかし,上の手順では,,0の関数ですから,

表わす操作が抜けていて,結果は信頼性に欠けます。
 

具体的に書いてみると,非相対論では自由質点ではL0=m 2/2

ですが/mなので0pv0pv-m 2/22/(2),

電磁場のある場合は0-eΦ+evA,(-e)/

ですから,pvpv-m 2/2+eΦ-evA 

(-e)/m-(-e)2+eΦ-e(-e)/ 

(-e)2/(2)+eΦ です。
 

それ故,0'と書けば,p=m+e 

'=-/m+e22/(2)+eΦより,確かに 

'=-evAeΦが得られます。
 

2/(2)(-e)2/(2)+eΦ の比較から, 


2/(2)に
おいて-e,-eΦなる変換

を行なうと正しい関係式:-eΦ=(-e)2/(2)を得る

ことがわかります。


これが極小相互作用変換の意味でした。
 

一方,相対論では0=-mc2(1β2)1/2,=m(1β2)-1/2,

0pv0=mc2β2(1β2)-1/2+mc2(1β2)1/2 

=mc2(1β2)-/2より,0(22+m24)1/2です。
 

これは,相対論的関係式2=c22+m24から0=Eを意味

しています。
 

非相対論と同じ手順,(22+m24)1/2-e)

置き換えてeΦを加えればになることもわかります。

{2(-e)2+m24)}1/2+eΦ です。
 

故に,,{2(p-qA)2+m24)}1/2eΦ-(22+m24)1/2 

です。
 

なお,電磁場の単位は有理単位,ヘビサイド,SI,MKSAなどと 

色々あるので係数を明確には書きませんが,ここまでの論議は 

∫d3(22)=∫d3[(∇Φ+∂/∂t)2(∇×)2] 

に比例した電磁場自身のエネルギーなどの存在を度外視して

います。
 

部分的には,系の運動量.電荷の運動量mvの他に電磁場

運動量eが加わり,また,エネルギーとしてもeΦが加えられ

ていて点電荷の運動に直接影響する部分だけは取り入れられて

います。 (2終わり)
 

さて,長くなったのでひとまず終わります。

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.DrellRelativistic QuantumMechanics"(MacGrawHill)

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2016年1月17日 (日)

再掲載記事:解析力学の初歩

 今日は思うところあって2007年11/5の過去記事「解析力学の初歩」をそのまま再掲載します。

 このところ「Dirac方程式の導出(3)」の草稿を入院前,入院中もずっと書いていたのですが,。。。 

 この課題の最後の主題が電磁相互作用がある場合に,非相対論極限でDirac方程式から自動的に非相対論のPauliのスピン相互作用を含む方程式が再現されることの説明であり,それには電磁場がある場合の古典的な解析力学の定式化を復習する必要があったからです。

 まあ手抜きの一つではありますが。。^^;;

 ※以下,再掲載記事です。

今日は,最初はBerryの位相とAharanov-Bohm効果(AB効果)の関係などを論じることを計画していたのですが。。

 その前に,必要な「断熱定理」と関連してHamiltonianが時間tに陽に依存する場合の解析力学の定式化が私は気になりました。

 

 それを考えているうちに,我ながら解析力学の基本的なことの理解が完全ではないことに気付いて,復習してみようという気になったので記事=日記にします。

 

 イヤ,ここで記事に書いていることのほとんどは,私は既に何度も勉強したり考えたりしたことがあることばかりなんですよ。

 

 でも,そうした論題が出てくるたびに,もちろん,文章や数式の一言一句まで内容を全部記憶しているわけじゃないし,新たな疑問や過去にはヒョットして勘違いしていたのじゃないか?という疑いが出てきます。

 

 特に物理学や数学に限らず,モノを知るのには必要な知見を全部記憶する必要はなく(そもそもコンピュータでも不可能でしょう),

 

 どういうときに,どこのどういうモノを調べればいいか?ということがわかり,そういう参考文献を探して読んだときに,小時間のうちに疑問を解決できる能力を体得するのが,過去に学校で学んだ意味だと思っています。

 

 ですから,気になったらその都度調べたり考えたりするだけです。

 

 以下は,主として自分のためのおさらいなので,ここで論じている定式化の手順は,必ずしも標準的な教科書の順番ではなく私の思い付きの順になっています。

 通常のNoether(ネーター)の定理で時間の一様性によって,"エネルギー=Hamiltonian"Hが保存されるという描像は,r(r=1,2,...,N)を自由度がNの一般化座標,pr(r=1,2,...,N)を一般化運動量とするとき,

 

 系のHamiltonian:H(p,q,t)がtを陽に含まないこと:

 H(p,q,t)=H(p,q)と書けることと同定されます。

 しかし,一般的な力学系においては力学的エネルギーが保存しない場合が存在することも事実です。

 

 これは,純粋な力学的エネルギーをHとするとき,その他に熱エネルギーとか,電気的エネルギーなどが存在して摩擦などの散逸により力学的エネルギーの一部が熱に転化して消散していく場合などが,それに相当します。

 もっとも素粒子のレベルまでの微視的な見方では,もはやエネルギーを力学的云々とか,種類ごとに分類する必要もなく,時間の一様性は常に確実に成立していて,Hamiltonian:Hは確かに時間tを陽に含むこともないので,全体としても微視的過程でもエネルギーの保存は常に正確に成立します。

一般に保存力場の場合には,一般化速度をqdr≡dqr/dtで定義すると,系のLagrangianL(,d,t)はL=T-Uで与えられます。

 

Tは運動エネルギーでT=(1/2)Σr,s=1Nrs()qdrdsなる2次形式で与えられ,Uは保存力場のポテンシャルで位置座標=(q1,q2,...,qN)の関数U=U()です。

そして,pr≡∂L/∂qdrであり,Hamiltonianは,

H=Σr=1Nrdr-L=Σr,s=1Nrs(q) qdrds(T-U)

=2T-(T-U)=T+Uとなります。

 

この場合にはHは系全体のエネルギーと一致します。

そして,Hがtを陽に含まないなら,∂H/∂t=0 ですから,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr

です。

 

pとqの微小変分に対するHの変分δHは,

δH=δ(Σr=1Nrdr-L)

=Σr=1N{δprdr +prδqdr}-δL 

です。

 

Lの変分δLは,

δL=Σr=1N{(∂L/∂qr)pδqr(∂L/∂pr)qδpr}

=Σr=1N{(∂L/∂qr)δqr(∂L/∂qdr)}δqdr

=Σr=1N(pdrδqr+prδqdr)で与えられます。

ただし,この式の導出仮定で,Euler-Lagrange方程式:

(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr0 ,つまり,

∂L/∂qr=dpr/dt=pdrを用いました。 

したがって,δH=

Σr=1N[{δprdr +prδqdr}-{(∂L/∂qr)pδqr

(∂L/∂pr)qδpr}=Σr=1N(qdr δpr-pdrδqr)

となります。

 

それ故,これから直ちに,∂H/∂pr=qdr,∂H/∂qr=-pdr

というHamiltonの正準方程式が得られます。

以上から,∂H/∂t=0 のときには,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr0 ,

つまり"エネルギー=Hamiltonian"Hが時間tに依らない保存量であるというよく知られた性質が導かれるわけです。

ところが,運動方程式がEuler-Lagrange方程式:

(d/dt){∂L/∂(dqr/dt)}-∂L/∂qr0 で与えられるのは,

必ずしもLがL=T-U,U=U()と書ける場合に限定する必要は

ありません。

 

LagrangianLを一般のtを陽に含むL=T-V,V=V(,d,t)

なる形であると考えてもよく,この場合,Hamiltonian:

H=Σr=1Nrdr-L,r≡∂L/∂qdrもtを陽に含みます。 

例えば,電荷がeの荷電粒子1個の自由運動のHamiltonianを

0(,)とすると,それが電磁場の中にあるときには,

極小相互作用変換により

 

HamiltonianはH(,,t)=H0(-e,)+eφとなること

が知られています。

 

一般に電磁場は静的な場ではないので,電磁場のスカラーポテンシャルをφ,ベクトルポテンシャルをとすると,これらφ,は時間tを陽に含んでいます。

 

L=(d/dt)-H=(d/dt)-(-e)2/(2m)-eφ

となります。

 

これと=∂L/∂(d/dt)を用いると,

=m+e,≡d/dt,かつ

L=m2/2-eφ+eAvとなるはずです。

 

ここに,(,t),φ=φ(,t)であり,どちらもtを陽に含んでいると想定します。

これから導かれる荷電粒子の運動方程式は,と書き直した

Euler-Lagrange方程式:(d/dt)(∂L/∂)-∂L/∂=0

です。

 

これは,

d(m)/dt+ed/dt+e∇φ-e∇()=0

いう形になります。

 

ここで,

/dt=(∂/∂t)+(∇),=-∇φ-∂/∂t,

=∇Xであり,

××(∇X)=∇()-(∇)ですから,

結局,これはd(m)/dt=e+e(×)

です。

 

したがって,確かに通常の1荷電粒子が従うべき非相対論的なNewtonの運動方程式が得られました。

しかし,HからLを逆算するのは本末転倒で,運動方程式からLagrangian:Lを求め,然る後にH=(d/dt)-LによってHamiltonian:Hを導くというのが当然の道筋ですね。

 

実は,単に私自身が電磁場の中での荷電粒子の運動に対する

LagrangianLの形を忘れていたので,上のプロセスは,これを安易

に求める道を取ったに過ぎません。

とにかく,古典的電磁場の中では,

L=m2/2-eφ+eAv=T-eφ(,t)+e(,t)

となり,L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)

となることがわかります。

 

そして,Hamiltonian:Hがtに陽に依存するので,このHは保存量

ではないことがわかります。

 

これは,今考えているHamiltonian:Hでは,

"全体系=粒子+電磁場"の中で,単に荷電粒子のエネルギーだけに

着目して,相互作用部分を除いては電磁場のエネルギーを全く考慮

していないためです。

実際,Hを系全体のHamiltonianとするには,電磁場のエネルギー

を表わす(1/2)∫(ε2+μ-12)dという項も含む必要が

あります。

 

ただ,=m+e,≡d/dtなる表式には,既に系の

運動量が粒子の運動量mと電磁場の運動量eの代数和で

与えられることを示してはいます。

さて,より基本的な定式化を行なうために,改めて一般のn個

の質点系から成る物理系に対するNewtonの運動方程式から

始めます。

Newtonの運動方程式はi番目の粒子の質量をmi,位置ベクトル

i,その質点iに働く力=(外力+内力)をiとすると,

 

i(d2i /dt2)=i (i=1,2,...n)なる式系で表現

されます。

 

そして,一般的な状況を考え,これが

fj(1,2,...,n)=0 (j=1,2,...,m)なる形で与えられる

m個の拘束(束縛)条件を満たすべきケースを想定します。

静力学では各作用点での力の釣り合い:i0 に対しては

仮想仕事の原理が成立します。

 

これは,釣り合いを保つためには,Σi=1niδi0 を満たす変位

のみが許される,という原理です。

 

これを直接に動力学に拡張すると,いわゆるD'Alembertの

原理としてΣi=1n{i-mi(d2i /dt2)}δi=0 なる式

が得られます。

 

さらに,ある時刻tにおけるm個の拘束条件:

fj(1,2,...,n,t)=0 (j=1,2,...,m)を,微小変位δi

に対してΣi=1n(∂fj/∂ii=0 が成立するという式で置き

換えてよい場合,

 

Lagrangeの未定係数法を利用すると,未定係数をλjとして,

上記,D'Alembertの原理は,

Σi=1n{i-mi(d2i /dt2)+Σj=1miλj(∂fj/∂i)}δi=0

なる形に帰着します。

 

すなわち,

 

Σi=1n{iΣj=1mλj(∂fj/∂i)-(d/dt)(∂T/∂i)}δi=0

 

と書けるわけです。

 

そして,i(x3i-2,x3i-1,x3i)と成分表示すると,

上式はδi=(δx3i-2,δx3i-1,δx3i)なる変分:

δxk(k=1,2,...,3n),の各々に対して独立に成立します。

 

m個のパラメータλjは,最後のm個のkであるk=3n-m+1,

3n-m+2,..,3nに対するm個の連立方程式:

kΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)=0

の解として得られるとします。

 

こうして,N=3n-mとして,Nを対象の力学系の"自由度"

と呼べば,自由度の数Nだけの個数の独立な方程式:

Σk=1N{FkΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)}δxk=0

が得られます。

ここで,改めて独立なN個の座標:qr(r=1,2,...,N)を用いて,

δqrを各時刻tのqrの変分としたときの,時間tに陽には依存しない

iの変分をδiΣr=1N(∂i/∂qr)δqrと表現すれば,

 

上の変分方程式は,

Σr=1N(rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)-(d/dt)(∂T/∂qdr)

+∂T/∂qr)δqr=0 と変形されます。

 

ここに,rΣi=1ni(∂i/∂qr)で定義されるN個の量:r

一般化力と呼びます。

そして先に決定されたパラメータλjに対して,

rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)を拘束力と呼び,いわゆる滑らかな

拘束:Σr=1Nrδqr=0 つまり,拘束力は仕事をしないと

考えると,

Σr=1N(r(d/dt)(∂T/∂qdr)+∂T/∂qr)δqr=0

と書けます。

 

この等式では,N個のδqrは全て独立なので,

(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrなる

Lagrangeの方程式の系が得られます。 

ここで,特にrΣi=1ni(∂i/∂qr)=(d/dt)(∂V/∂qdr)

-∂V/∂qrとなるようなV=V(q,qd,t)が存在する場合なら,

 

L=T-Vとおけば,(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrは,

Euler-Lagrangeの方程式(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr=0

に一致します。

 

先の,電磁場の中での荷電粒子の運動についての考察から得られた

L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)では,

 

電磁力:=e+e(×)が,上述のVに対する条件式:

=(d/dt)(∂V/∂)-∂V/∂を確かに満足しています。

 

今日は,取り合えず,私的には納得できたのでこれで終わります。

※以上,再掲載終了です。


 

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2016年1月16日 (土)

訃報!!デビッド・ボウイさん。。。

自身の入院準備中だったので遅れましたが。。

 イギリスのデビッド・ボウイさんが去る1月10日に死去されました。前々日の8日に69歳の誕生日を迎えたばかりでした。。。死因はガンでした。

 → TBSニュース  ロック界のレジェンド デビッド。ボウイさん 死去

一時代の終わりを感じます。

 「戦場のメリークリスマス」での坂本龍一やビートたけしとの存在感あふれる演技など。。。

 ミュージシャンとして登場した頃から私もいろいろと影響を受けました。

 ご冥福を祈ります。合掌!!

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2016年1月15日 (金)

退院しました。

 表題の通りです。

 去る1月12日に御茶ノ水の順天堂大付属病院(医院)の循環器内科に先月からの予定通り入院しました。

 翌日13日のカテーテル検査,兼手術の後は最低でも1月一杯は入院を覚悟して準備していきました。

 しかし,循環器の医者の話ではカテーテル治療は順天の循環器では通常二泊三日程度で退院が普通とのこと。ただし私の場合は形成外科と相談して決めると言われました。

 私は同じ病棟の多くの患者の受ける心臓のカテーテルとは違って.右足首の傷の治療のため右足の動脈の血流改善が主目的であり,心臓付近ではなく右足の動脈のカテーテル治療ですから。。

 その後も継続で形成外科の足の治療もあると勝手に考えていたので,これまで通り長期入院と思っていましたが,今回は形成の治療は外科手術もなく外来通院でいいということで,退院時期は循環器次第ということになりました。

 いつもは,足の傷にはMRSA感染が付きもので,.そのため免疫を低下させるというMRSAの症状が元々免疫力が低下していると思われる同室の入院患者たちに院内感染するのを防ぐため。。

 病院側の都合で個室や2人部屋に入れられましたが,久しぶりに差額ベッド代が無料の4人部屋だったので,あれ,オカシイな?との違和感があったのですが,三泊四日程度の入院なら納得です。

ともあれ予定より早い退院は嬉しいものです。

週末は休養して来週の中頃に復帰予定です。

とりあえず報告まで。。。

PS:ここのところ入院は長期だったのでいつもなら荷物はダンボール箱で退院前日か当日朝に宅配便で自宅に送り身一つで帰る習慣でした。

 しかし,三泊四日で二千円程度のタクシー代の他にダンボール代も含め同程度のコストがかかる宅配便はゼイタクと思い,長期の入院を覚悟してノートPCも含めパンパンに膨れたカートとリュックの荷物2つをを持って一人で帰ろうとしたところでした。

 看護師詰所であいさつをした後に,とても親切な女性の看護師か助手さんが,1階まで,そしてATMでタクシー代等のためのお金ををおろすところまでカートを持って付き添っていただき,さらにタクシー乗り場で乗り終わるまでついていてくださいました。この方,,可愛い顔の人でしたが.私としたことが,つい名前を聞きそびれました。

 その上タクシー運転手さんがまた,,とてもいい人で,自宅についてから2階の自室まで外階段を上って荷物を全部運んでくれて,真っ暗な部屋の入口のブレーカーまで上げてくださいました。

 個人じゃなく,どこの会社かわからないけど若林さんという男の方でした。。。

( ※追伸:レシートを見たら「日の丸交通足立」とありました。。。)

 どうもありがとうございました。

 他人の無償の親切がとても身にしみるこのごろです。

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2016年1月 2日 (土)

Dirac方程式の導出(2)

 Dirac方程式の導出の続きです。

 具体的な方程式導出に向かいます。 

§1.3 Dirac方程式 

1928年にDiracによって,なされた歴史的経緯に従って,Ψから

正定置の確率密度を持った量を構成可能な,

ic(∂Ψ/∂t)Ψの形の相対論的に共変な方程式を求めます。

 
こうした方程式は時間微分について1次なので,

Hamiltonian を空間微分についても同様に1次であるような

線形微分方程式として構成しようと試みるのが自然です。
 

それ故,この方程式を,ic(∂Ψ/∂t) 

 =(ichc){α(∂Ψ/∂x)+α2(∂Ψ/∂x2)+α3(∂Ψ/∂x3)

 +βmcΨΨ と書いてみます。
 

このとき,もしも係数α(j=1,2,3)が単なる定数なら,

これはLorentz変換:x'μ=Σν=03μννだけでなく,

t=x0は変換されず単に空間回転である場合でも不変

(スカラー)ではありません。


既知の知見から,

α(/∂x)+α2(/∂x2)+α3(/∂x3) 

(α,α2,α3)∇ がx'μ=Σν=03μννの時間

t=x0含まない変換である空間回転で不変なスカラー

であるためには,(α,α2,α3)も空間のベクトルとして

変換される必要があるといえます。
 

しかし, (α,α2,α3)が単に3個の定数を成分とする3次元

ベクトルであっても,これは座標xには依存しませんからこの

座標変換で変化しません。
 

時間tを巻き込まない空間回転では,

左辺のic(∂Ψ/∂t)は空間座標'に変換しても不変

ですから,方程式が不変であるためには,(α,α2,α3)Ψおよび,

βmcΨが共にこの変換で不変であるべきと考えられます。
 

空間回転に対しては,(α,α2,α3)やβmcは不変で∇のみ

が∇'に変化するので,これは,Ψ=Ψ(,)が単に空間回転で

不変なスカラーではなく何らかの成分を持った列ベクトルで表現

さるべきものとする必要性を示唆しています。
 

すなわち,非相対論のケースと同じく粒子の確率密度がρ=ΨΨ

与えられるとして,固定時刻tにおいて,その全空間にわたる積分

が不変であるとするなら,この密度は保存される4元カレントの

時間成分でなければなりません。
 

方程式:ic(∂Ψ/∂t) 

(ichc){α(∂Ψ/∂x)+α2(∂Ψ/∂x2)+α3(∂Ψ/∂x3)}

+βmcΨΨ を.

こうした制約条件から解放するために,Dirac,これを1つの行列

方程式と考えることを仮定しました。
 

波動関数Ψ=Ψ(,)は非相対論的量子力学での2成分スピン

波動関数のアナロジーから,N個の成分を持った列ベクトルで,

Ψ=[ψ,..,ψN]Tと表わされ,定係数α,α2,α3,および,β

はN×Nの正方行列であるとするわけです。
 

事実上,方程式はN元連立1次方程式:

ic(∂ψσ/∂t)(ichc

 [Στ=1N{α(/∂x)+α2(/∂x2)+α3(/∂x3)}στψτ]

 +Στ=1Nβστmcψτ (σ=1,..,) 

 になります。
 

以下では,行列の形の方程式を採用して煩雑な総和Σを落とす

ことにします。
 

時間tについて1次であろうと2次であろうと,方程式が

理論の出発点としての用を足すものであるなら,まず第一に

正確なエネルギー・運動量の関係式E222+m24

矛盾しない必要があります。
 

第二に,連続の方程式の成立を許し,波動関数Ψに対して

確率解釈を許す理論構成ができる必要があります。


さらに,第三には,両辺がLorentz共変(つまり
方程式が不変)

でなければなりません。
 

今から,このうちの最初の2つの要請について論じます。
 

正確なエネルギー・運動量の関係式E222+m24

が上述の1次方程式から出現するためには,Ψの各成分が

Klein^Gordon方程式を満たす.つまり, 

 -hc2(2ψσ/∂t2)(-hc222+m24)ψσ

(σ=1,..,N)を満足する必要があります。
 

これは行列方程式で.

-hc2(2Ψ/∂t2)(-hc222+m24)Ψが成立すれば

満足されます。
 

ところで,方程式:ic(∂Ψ/∂t)

=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨ 

を反復する,つまりこの両辺をtで偏微分してic

掛けると, 

-hc2(2ψσ/∂t2) 

=Σj=13α{Σk=13(-hc22)αk (2Ψ/∂xj∂xk)

ichcβmc(∂Ψ/∂x)}

+βmc[Σk=13αk(∂Ψ/∂xk)+βmcΨ} 

(-hc22)Σ,=13[(1/2)(ααk +αkα)(2Ψ/∂xj∂xk) 

+Σ=13[(ichc)(αβ+βα)(2Ψ/∂xk)]+β224Ψ 


を得ます。

 

そこで,もしも4つの行列α,α2,α3,および,βが代数 

ααk +αkα2δjk.,αβ+βα0,α2=β21 

(,k=1,2,3)を満足すれば,これは確かに, 

-hc2(2Ψ/∂t2)(-hc222+m24)Ψ

に帰着します。
 

そこで,こうした4つの行列:α,α2,α3,βに上記の代数の

他に如何なる性質を要求するか?また,これらを陽につくる

ことができるのか?を考えます。
 

まず. Hamiltonian Hが§1.1の仮定に従って,Hermite演算子

であるためには.これら4つの行列のそれぞれがHermite行列

(成分の複素共役を取った後,行と列を交換した複素転置行列

Hermite共役行列が元の行列に一致する)

でなければなりません。
 

そして,α2=β21(k=1,2,3)なので,α,α2,α3,βの

固有値は全て±1のみです。
 

そして,またj≠kのとき,αj α+αkαk.0.

αβ+βα0 となる反交換性から,それらの行列の

トレース(対角成分の和)はゼロという性質が導かれます。
 

すなわち,任意の行列PのトレースをTrPと書けば,2つの行列

,Bと任意の数c,dについてトレースの線形性:

r(cA+dB=cTrA+dTr,
 

 および,循環性:r(AB)=Tr(BA)が成立します。
 

それ故,αβ=-βα,β21よりα=-βαβなので, 

rα=-Tr(βαβ)=-Tr(β2α)=-Trαですから, 

rα0(k=1,2.3)を得ます。
 

同様に,β=-αβα, α21より

rβ=-Tr(αβαk)=-TrβですからTrβ=0 です。
 

行列は相似変換によって全ての固有値が対角成分となるように

変形できて行列の固有値は相似変換では変化しませんから,

固有値の総和はトレースと一致します。


そこで,行列:α,α2,α3,βのそれぞれにおいて,

正の固有値+1の数と負の固有値-1の数は等しいと結論

されます。
 

そこで,これらN×N正方行列の次数Nは偶数でなければ

なりません。
 

しかしながら.最小偶数のN=2は除外されます。

何故なら,それは成分が4つだけなので,全ての行列は,独立な

3つのPauli行列:σ123と単位行列1の線形和として表

わすことができるため,=2では反交換する行列は,せいぜい

3つであり,4つの独立な反交換する行列:α,α2,α3,βを

つくることは不可能だからです。
 

そこで,ここまでの条件を満たすα,α2,α3,βを構成できる

最小次数NはN=4です。


そして,これ以上複雑になることを避けるため.以下,N=4

仮定します。
 

特に,σ1233つの反交換する2×2 Pauli行列,1

2×2単位行列として.考え得る具体的な形として,

βを対角成分が1,4×4対角行列,α(k=1,2,3)を対角

成分がゼロで反対角成分がσkの3つの4×4行列とすれば,

少なくともこれらの反交換する4つのα,α2,α3,β

1組を与えることができるとわかります。
 これによって,こうした行列を陽につくることができるのか? 

という先の疑問に肯定的な解答を与えられることがわかりました。


しかも,これらは確かにHermite行列です。

次に,確率カレント保存の微分法則(連続方程式)をつくるため
,

列ベクトルの波動関数 Ψ=[ψ,ψ,ψ3,ψ4]T Hermite共役 

な波動関数=行ベクトルΨ[ψ,ψ2,ψ3,ψ4]

方程式:ic(∂Ψ/∂t)=Σk=13(ichc)αk(∂Ψ/∂xk) 

+βmcΨに左から掛けます。

すると, 

icΨ(∂Ψ/∂t)= Σk=13(ichc)Ψαk(∂Ψ/∂xk) 

+mc2ΨβΨ 

です。
 

他方,Hemite共役方程式 

ic(∂Ψ/∂t){Σk=13(ichc)(∂Ψ/∂xk)αk 

+mcΨβに右からΨを掛けると, 

ic(∂Ψ/∂t)Ψ=Σk=13(ichc)(∂Ψ/∂xk)αk 

+mcΨβΨ です。

得られた
前の方程式から後の方程式を引くと,
 

ic(/∂t)(ΨΨ)

=Σk=13{(ichc)(/∂x)(ΨαkΨ)} です。
 

これは,ρ=ΨΨ=Σσ=14ΨσΨσ,=cΨαkΨ, 

=(1、j2,3)とおけば,∂ρ/∂t+divj=0 を 

意味します。

そこでρ=ΨΨ=Σσ=14ΨσΨσ,を確率密度と解釈し, 

α(α,α2,α3 ).;=cΨαΨを確率流のカレントと 

解釈することが示唆されます。

 もしも,,実際に空間のベクトル量であれば,便宜的に
 

difergenceの形でdivj=∇jと書いたものが,実際に

発散量という空間のスカラーとして意味を持ち,

 そして,よく知られたGaussの法則によって,Vを積分

すべき3次元領域,SをそのVを囲む閉曲面とすれば 

3x(div)=∫(j・n)が成立します。
 

ただし,はS上の外向き法線ベクトルです。
 
そこで,Vを全空間,Sを無限遠に境界を持つ閉曲面とし
 

確率流jは無限遠では速やかにかに減衰してゼロになる 

としてよいので,∫d3x(div)0 です。
 

 したがって,jが確かにベクトルならρ=ΨΨ, 

および,∂ρ/∂t=-divによって, 

/dt{∫d3x(ΨΨ)}=d/dt(∫ρd3x ) 

=∫d3x(∂ρ/∂t)0 が成立することになります。

この保存性を示す式は,その形から元々正定置である
 

ρ=ΨΨが確率密度であるとの解釈を後押しします。
 

そして,また,=cΨαkΨ,=(1、j2,3)

が実際3次元空間回転において確率流ベクトルとして変換する

の推測に確信を与えます。
 

しかし,連続の方程式と確率解釈が相対論的に共変であること

 

を保証するためには,解釈された密度ρとカレント,実際 

Lorentz変換の下での4元ベクトルを形成する必要があります。

 

,導出したばかりの行列形式の1次微分方程式はDirac方程式 

と呼ばれますが,こDirac方程式が満足できる合理的なもの 

と見なされる前に,これもLorentz共変であることが明確に 

示されねばなりません。

 

 長くなったので,今日はひとまずここで終わります。
 

(参考文献): J.D.Bjorken & S.D.Drell

Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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Dirac方程式の導出(1)

 昨年の11月末頃,弱い相互作用の旧理論を展開しているうち,実際の

最近の実験結果はともかく,スピンが1/2のフェルミオンのレプトンの

1つである電子ニュートリノの質量がゼロという旧来の理論では,

通常のDirac方程式において質量mに関わる項の自由度がないため,

必ずしもその波動関数を示すスピノルΨは4成分である必要はなく,

2成分のみのスピノルでの表現が可能であるという理論の説明を試

みて記事の草稿を準備していた際に,デスクトップマシンがお亡く

なりになりました。
 

そういえば,基本的なDirac方程式とその解の性質については過去

記事の「散乱の伝播関数の理論」シリーズの(8)(9)で議論の必要

に応じて書いたものをアップした記憶がありますが,

 
より基本的な
Ψの記述には4成分が必要であるというようなDirac

方程式の導出過程の関連記事についてはアップしたことがなかった

と思い,40以上も前にBjorken -Drellや西嶋さんのテキストで初

めて導出過程を勉強したときのことを思い出し,学生時代に主として

テキストにしていたBjorken-DrellMechanicsの方の勉強ノート

を引っ張ぱり出しました。
 

そこで.今年は新しく購入た中古マシンで,私にとっても温故知新

となるような記事から科学記事を再開します。
 

第1章Dirac方程式 

§1.1相対論的量子論の基礎 

 今日では特殊相対性原理が一般に受け入れられているので,正確な

 量子論は相対性の要求を満足しなければなりません。
 

すなわち,1つの慣性系で正しい運動の法則は,全ての慣性系でも

正しいという要求が満たされる必要があります。

 数学的に述べるなら,相対論的量子論はLorentz共変な形に定式化

されなければならないといえます。
 

しかし,非相対論的量子力学から相対論的量子力学へと移行する

には,少なくとも非相対論的量子力学を裏付けている原理を保持

したままでいるよう努める必要があります。
 

 まず,そうした量子力学の基礎となる原理について復習します。
 

1.与えられた物理系に対して,我々が知り得る全てのことを要約

する1つの状態関数が存在する。

 我々の初期の相対論的1粒子理論の展開においては.通常,状態

関数の座標表現である波動関数:Ψ(,,)を直接取り扱って

いる。

 
このΨ(,,),全ての古典的自由度(独立な一般化座標

の系):(1,...n)と時刻t,ぞして,その他の例えばスピン

(1,...n)で代表される内部量子力学量の複素関数である。


 波動関数Ψそのものは,如何なる古典的対象物もなく直接的な

物理的解釈を持たないが,その絶対値の2乗:|Ψ(,,)|2(0 )

.(粒子)時刻tに(1,...n),および,(1,...n)

を取る確率(または確率密度)に比例する量と解釈される。
 

明らかに,この確率解釈は.時刻tにおける(1,...n),

および,(1,...n)のあらゆる値に対する非負値:|Ψ|2

の総和があらゆる受け入れ可能な波動関数Ψに対して有限なる

ことを要求する。
 

2.あらゆる物理的観測量(physical observable),Hermite

線形演算子で表示される。特に,粒子の正準座標(演算子)

(1,2,3)の正準共役運動量の演算子:(1,2,3)

については座標qへの対応が,→ -ic(/∂qj) 

で与えられる。


ただし,c=h/(2π)(hはPlank定数)である。


 3.線形演算子(observable)Ωに対して.物理系の状態 Ψ=Ψn

ΩΨ=ωnΨを満たすなら,状態Ψ=Ψn,演算子Ωのn番目

の固有値ωnに属するΩの固有状態にある.といわれる。
 

座標表現においては,固有値方程式ΩΨ=ωnΨ, 

Ω(,,)Ψn(qst)=ωnΨn(,,)である。
 

4.次のように述べられる展開仮定が成立する。

対象とする物理系の任意の波動関数(状態関数)は共立する演算子

の完全な集合(交換する=独立な最大個数の演算子群)の同時固有

状態:Ψnの完全正規直交系の線形結合として展開できる。


このとき,この展開をΨ=ΣnnΨnと書く。」

 
 正規直交系{Ψn}とは,その座標表現波動関数が 

Σs∫dΨm(,,)Ψn(,,)=δmnを満たすこと

を意味する。

 このとき,Σs∫dΨn(,,)Ψ(,,)=anであり

1=Σs∫dΨ(,,)Ψ(,,)

=Σs∫dq(ΣmmΨm)(ΣnnΨn)=Σn|n{2なので,

|n{2は系がn番目の固有状態に存在する確率を示すと解釈

される。


5.
物理量の測定結果は必ずその固有値のうちのどれか1つである。


 特に,物理系が物理量ΩΩΨn=ωnΨnを満たす固有状態の集合

{Ψn}の線形和としてΨ=ΣnnΨnなる状態(波動関数)で示される

とき,物理量Ωの測定は|n{2の確率で固有値ωnという値を取る。


 
同じ波動関数Ψを持つ同等に準備された系の上での物理量Ω

多くの測定の平均値(期待値)を<ΩΨと書くと,これは,

ΩΨ=Σs∫Ψ(,,)ΩΨ(,,)

=Σn|n{2ωn 

で与えられる。 

 

6.物理系の時間発展はSchroedinger方程式:

ic(∂Ψ/∂t)=HΨで表わされる。


 ただし,は系のHamiltoniam(ハミルトン関数の演算子)

であり,これはHermiteな線形演算子である。

また,Hは閉じた物理系では陽な時間依存性を持たない。

つまり,/∂t=0 であり,こうした場合には,その固有

状態はこの物理系の可能な定常状態である。

そして,系のHamiltoniam:の線形性からは

重ね合わせの原理が導かれ,Hermite性からは総確率

の保存則が導かれる。
 

すなわち,物理系の状態=状態関数(波動関数)Ψ(,,)

は運動方程式 ihc(∂Ψ/∂t)Ψの解として与えられる

,演算子Hが線形なので,この方程式は全体として線形微分

方程式であり,それ故,これの解は全て重ね合わせの原理(

任意の解の線形結合もまた解となる)を満たします。

また,Hermite性とは,任意の状態Ψについて,

{(HΨ)Ψ}=∫{Ψ(HΨ)}の成立を保証

するが,


系の確率の総和は,Σ|Ψ|2=Σ∫ΨΨdで表わされ,

,これの時間微分は,(/dt)[Σ∫ΨΨd]

=Σ[(∂Ψ/∂t)Ψ+Ψ(∂Ψ/∂t)]

(i/c)Σ[(HΨ)Ψ+Ψ(HΨ)]

与えられる。


 上記の
Hermite性から,この最右辺はゼロである。

そこで,確率の総和は時間的に一定であり,これは総確率

が保存されることを意味する。

 

Ψがc(∂Ψ/∂t)Ψの解であれば,Ψの複素数倍αΨ

も同じ方程式の解であり,HΨ=EΨならH(αΨ)=E(αΨ)

である。

 

この後者の性質は線形演算子がHamiltonian ではなく

.これを任意の物理量を表わす線形演算子Ωで置き換えても

同様に成立する。

そこで,ΨとαΨは数学的には異なる関数であり異なる解

であるが,物理的には同じ状態を意味するものと解釈できる。

そこで.Σ|Ψ|2が有限であれば,

Σ|αΨ|2q=|α|2Σ|Ψ|2dqも有限値なので.

αを適切に選択するとΣ|Ψ|2が=1となるように

設定できる。この操作を波動関数Ψの規格化という。

これを行なうと,上記の総確率の保存則によって時間が

経過しても常に確率の総和1のままであり,確率の定義

に矛盾しない。

§1.2 初期の試み(Early Attempt)

最も簡単な物理系は単一の孤立した自由粒子のそれであり,

そうした粒子に対しては,非相対論的Hamiltonian,粒子

質量をmとして2/(2)です。

 そして,古典力学から量子力学への移行は,

  ic(/∂t),→ -ic∇ とする

 ことでなされます。

 

 これは,非相対論的には量子力学の方程式として

 ic{∂Ψ(,)/∂t}=-{c2/(2)}2Ψ(,)

 に導きます。

しかし,これらは相対論的には共変な形ではないので,相対論

も考慮した理論では不満足な定式化です。


 すなわち,この方程式の両辺はLorentz変換の下では
異なった形

に変換されます。

特殊相対性理論によれば,粒子の総エネルギーEと運動量

p=(x,y,z),共変な4元ベクトルの成分のような変換

をすることがわかっています。

 

すなわち,μ(0,1.2,3)(/, x,y,z)

なる対応でもって,相対論的4元ベクトルの4元運動量と解釈さ

,これは不変長さ(4元スカラー)として

2=Σμ=03μμ=E2/22=m22なる性質を持ちます。

ただし,ここでのmは粒子の静止質量であり,cは真空中の光速です。 

 

この等式においては,量子化を意味する書き換え:

=H ic(/∂t),→ -ic∇を行ったものは

相対論的に共変であることにのみ着目してみます。

これがLorentz共変である理由は,古典論での2つの反変ベクトル

μ(0,1.2,3)(/, x,y,z)

μ(0,1.2,3)(ct,,,)の間で,上記の量子化

への移行手続きが,μ ic(/∂xμ)という相対論的に共変

な対応であるからです。

このことから相対論的に共変なHamiltonianとして.

2/22=m22から.(22+m24)1/2として,

方程式をic(∂Ψ/∂t)(-hc222+m24)1/2Ψと書く

のは非相対論的方程式の自然な拡張と思われます。

しかし,直ちに,右辺の演算子の平方根=ルートをどのように

解釈すればよいか?という問題に直面します。

もしも,このルート演算子に演算子のベキ級数展開(=二項展開)

を適用すれば.これは座標による微分演算子の全てのベキを含む

ことになり,結果的に非局所的理論となります。

 

そこで.こうした困難の処理を一時的に後回しにして,

取りあえず単純であるという理由で平方根を払って

222+m24と書き,これに直接

操作: ic(/∂t),→ -ic∇を反復適用

します。


演算子,について[,]0なら,Ψ=Ψから

2Ψ=2Ψの成立が導かれるという事実から,

-hc2(2Ψ/∂t2)(-hc222+m24)Ψ

が得られます。

 

これは,D'Alembert演算子:□を,□=(1/2)(2/∂t2)-∇2

=∂2/∂xμ∂xμ=∂μμで定義すれば,

{□+(mc/c)2}Ψ=0 と書けます。

この方程式の構造や妥当性を論じる前に,これは.

(22+m24)1/2の他に自由粒子系にとっては

無関係と思われる負エネルギーに相当する平方根

=-(22+m24)1/2をも含む定式化になっている

ことに気付きます。

単純さを重視した方程式の採用は.自由粒子のエネルギ-は

正であるべきという条件を犠牲にして,余分な負エネルギー解

の存在という困難を導き入れました。

しかし,この困難は結局は克服されます。(5章空孔理論)

そして,負エネエルギー解も物理的に解釈できることが証明

されます。

 

 特に,それらは(正エネルギーの)反粒子と関わっていること

がわかります。そうして自然界に実際に反粒子が存在すると

いう事実は,逆にこの方法の強い実験的な支えとなっています。

そこで,少しの間,222+m24から推測された方程式

{□+mc/c)2}Ψ=0 を考察します。
 

これについての最初の課題は波動関数から局所確率の保存を示す

連続の方程式を与える保存カレントを見出すことです。

何故なら,{□+(mc/c)2}Ψ=0 は2階の波動方程式

(双曲型)であり,非相対論での確率解釈の元になっている

放物型のSchroedinger方程式とは異なるからです。

 保存カレントの導出はSchroedinger方程式における際の

アナロジーとして行ないます。

 すなわち,方程式{□+(mc/c)2}Ψ=0 の両辺に左から

Ψを掛けたものから.同じ方程式の複素共役の両辺に左から

Ψを掛けたものを引きます。
 

すると,Ψ*□Ψ-Ψ□Ψ*0, つまり,

Ψ*μμΨ-Ψ∂μμΨ0 得ますが,

これは,μ(ΨμΨ-Ψ∂μΨ)0,

 

あるいは,

/∂t[ic/(2mc2){Ψ(∂Ψ/∂t)-Ψ(∂Ψ/∂t)}] 

div[(ic/(2)(Ψ∇Ψ-Ψ∇Ψ)]0 

を意味します。
 

流体力学において,質量の保存を示す連続の方程式は

流体密度をρ,そのカレント(流束)ベクトルを,流速をとして

∂ρ/∂t+div0,=ρで与えられます。

 

これのアナロジーで,

ic/(2mc2){Ψ(∂Ψ/∂t)-Ψ(∂Ψ/∂t)} 

を系の確率密度ρと解釈したいところです。

 

ただし,係数ic/(2mc2),単位を確率密度のそれ

に合わせるためのものです。
 

しかし,実際にはこの解釈は不可能であることがわかります。

 

何故なら,これは確率密度なら当然あるべき正定置な表現では

ないからです。(非相対論での確率解釈:|Ψ|2=ΨΨは

明らかに正定置でしたが。。。)
 

というわけで歴史的な経緯に従って,再び,一時的に,

自由粒子の方程式として{□+(mc/c)2}Ψ=0 を捨て

Schroedinger方程式のケースのように簡単に確率解釈が

できるような,時間tについて1次の方程式を見出すことに

望みを託します。

しかし,後の方では,また,方程式 {□+(mc/c)2}Ψ=0

にも帰るつもりです。
 

確かに,以下で時間について1次の方程式を見出すことに成功

しますが,結局,それでも単一粒子に対しては正定置の確率密度

を維持することが不可能であることがわかり,

同時に負エネルギーを示す平方根の物理的解釈も明らかになる 

からです。
 

そこで, 方程式 {□+(mc/c)2}Ψ=0 ,Klein-Gordon

方程式と呼ばれて,これから導出する予定のDirac方程式と共に

,相対論的量子力学の基本方程式の強い候補であることには違い

ありません。

 

長いので小休止です。
 

,参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell

Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)

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2016年1月 1日 (金)

新年明けましておめでとうございます。

 あけおめ。。ことよろ。。。

 

って,数年前にはやってたけど。。もう死語なんでしょうね。

 月日の経つのは早いものです。 本年はサル年ですね。 

 93歳で亡くなった私の母がサル年でしたから,生きていれば年女で誕生日で96歳になるところでしたね。 

「正月は冥途の旅の一里塚。。めでたくもありめでたくもなし。。」 

 来月2月1日には私は66歳になります。

 最近は誕生日には入院中というのが多いです。今年も1月12日に入院予定ですから,そうかもしれません。。 

 去る12月5日に突然私のメインコンピュータであるデスクトップPCが,ご臨終となり.,当初は12月15日に入院する予定だったので,新しく買うのは退院してから後のことと思っていたのですが,。。 

 急遽,入院は1月中旬に延期となったので,,翌16日にはAMAZONでoffice2010プレインストールの富士通の2009年製中古デスクトップ:16600円+送料400円なりを15日支給の年金を使って注文し17日夜には自宅に届きました。

 それから,前と同じ環境に復活するのに約1週間,。。気が付けばクリスマスで,スグ正月でした。

 前のマシンが壊れる前は,日本人ノーベル賞の影響などもあって,モチベ^ーョンが高くなってかなりブログをセッセと書く習慣がついていましたが,クラッシュ後は,office2007のライセンス切れもあって,予備のノートPCではワードの更新ができず。。

 ワード抜きで直接ここに書くのも億劫になって今日の新年のあいさつが久しぶりのブログアップになりました。 

 またペースを取り戻す予定ですが。。。しかし,まずはまた入院です。

 

 

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