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2016年2月 8日 (月)

弱い相互作用の旧理論(8)(Fermi理論)

2015年の121日に弱い相互作用の旧理論(7)」をアップした後, 

1215日に入院予定となりました。
 
 結局,入院は2016年1月12日に延期となり予想外で1月15日には

退院しました。この間,昨年125日に私がメインに使用してた

デスクトップPCが壊れ,代替のノートPCではワードの更新

ができず,結局,1217に購入した中古デスクトップPCで,

プリインストールされていた MS-office 2010ワードを用い

ブログ記事の草稿書きを再開しましたが。。。

でも,「弱い相互作用の旧理論」続きをアップするのでなく,

Dirac方程式の導出というトピックに脱線しました。


 しかし,
この脱線には理由があります。
 

そもそも,この「弱い相互作用の旧理論」ではニュートリノの質量

はゼロあるとしています。

 

カミオカンデで,ニュートリノには質量があることの証拠とされた

ニュートリノ振動」の観測ですが,これについて私が完全に理解

しているわけではないので,若干の誤解があるかもしれないとは思

のですが。。

 これは,"3世代のニュートリノである電子() ニュートリノ:

νe,μ-ニュートリノ:νμ,τ-ニュートリノ:ντの間に質量差

 あること"を検証したものである。と理解しています。
 

そこで,例えば,今参照中のテキストの中性子nのβ崩壊に関わる 

 電子()ニュートリノ:νについては,質量がゼロであるという

 旧理論もまだ存在価値があるのでは?と思っています。
 

 そして,「中性子のβ崩壊に関わるニュートリノの質量がゼロ

であるなら,Dirac方程式でのニュートリノの波動関数を与える

スピノルΨが質量mを係数とする項を持たないため.Ψは4成分

である必要はなく,Pauliの2成分スピノルで十分記述できる。

という話に移行するところを記述中,私の悪いクセで,またまた,

詳細が気になったので蒸し返しです。

 あえて,Dirac方程式で波動関数を何故4成分にしたのか?

いうことなどをも含む導出過程を復習しよう。と考えたため

でした。
 

 そして,一応,Dirac方程式関連の個人的な疑問も解消,準備

が終わったので,また,「弱い相互作用の旧理論」の続き,に

戻ろうと思います。
 

しかしながら,前の記事からずい分間も空いたし,いろいろと

情報が錯綜してきたので,まず,ここまでのストーリ-の連続性

を確認し要約しておくことから始めます。
 

まず, 中性子nのβ崩壊:n → p+e+ν~の最低次の

S行列要素は,

  
 fi(-0)=-iΣαβγδ=1 4∫d41..44 

 Ψα()(1)Ψβ()(2)Ψγ()(3)Ψα(ν) (4)

 ×Fαβγδ(1,,,4) 

 
 で与えられるとします。

 

そして,4個の粒子の相互作用頂点の因子:

αβγδ(1,,,4)は局所相互作用であると仮定します。
 

すなわち,αβγδ(1,,,4)  

αβγδ・δ(1-x2)δ(1-x3) δ(1-x4) 

なる形であるとします。

このαβγδ(1,,,4)を運動量空間にFourier変換

すれば,αβγδ(1,,,4) =∫d41..44 

×exp{i(11+p,+p+p44)}

αβγδ(1,,,4)

(2π)δ(1+p+p+p4)αβγδ  

なる形式になります。
 

n → p+e+ν~のn ,,,ν~のそれぞれの4元運動量 

1,2,3,4は全て頂点に向かう向きを正として取ったもの 

ですが,これらを改めて頂点に向かう向きを正,頂点から出る向き 

を負として, それぞれ,1=-P,2=P,3=-p, 

4=―pν~とします。
 

すると,αβγδ(-P,,-p,-pν~) 

(2π)δ(-P-p-pν~)αβγδです。
 

4粒子のスピノルとして,核子n,pの質量をM,電子の質量をm, 

ニュートリノの質量をゼロとして規格化された定運動量,定スピンの 

次の平面波スピノルを代入します。
 

Ψ()(1)(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i1 

Ψ()(2)(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i2 

Ψ()(3)=(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i3 

Ψ(ν)(4)(2π)-3/2|1/(2ν~)}1/2ν(ν~,ν~)

×exp(-iν~4)です。
 

すると,座標表示のS行列要素: 

fi(-)(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(11Ψβ()(2)Ψγ()(3)Ψα(ν) (4) 

×Fαβγδ(1,2,3,4) は,

運動量空間にFourier変換して, 

fi(-i)(2π)-6{2/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(-P-p-pν~)  

と書けます。
 

ただし,不変振幅:, 

M =Σαβγδ=1 4αβγδα()β()

×γ()νδ(ν) で定義されます。

これを,(スカラー:),(擬スカラー:γ5),(ベクトル:γμ), 

(軸性ベクトル:γ5γμ),(テンソル:σμν(i/2[γμ,γν])) 

による双一次形式(カレント)の縮約積の線形結合に展開して,
 

M =Σi=S,,VA,i[~()Γi()] 

×[~()(1+αiγ5)Γiν(ν)] 

と書き直すと,
 

逆反応の対称性(詳細釣り合いの原理)や実験データとの対照から 

結局,弱い相互作用はVとAのみが関与するという結論に到達し
 

M  (/2)[~()γ μ(1-αγ5)()] 

×[~(~)γ μ (1-γ5)ν(ν~)}
 

なる形になることがわかります。
 

一方,逆β崩壊: p+e+ν~→nも同じ形のS行列要素で記述

されます。
 

fi(e+)=-iΣαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(1)Ψβ() (2)Ψγ(ν)(3)Ψδ() (4) 

×F~αβγδ(1,,,4) 

です。
 

ここで,散乱,崩壊現象で成立することを仮定している 

「詳細釣り合いの原理」は次のことを意味します。
 

すなわち,(始状態)からf(終状態)へのS行列要素:fi 

について,

fi1ifi,fiif=δfi より,fi=-Tif, 

i≠fならSfi=-Sif*  です。
 

つまり,fi(e+)(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(1)Ψβ() (2)Ψγ(ν)(3)Ψδ() (4) 

×F~αβγδ(1,,,4)
 

=-Sif(-) 

(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

[Ψβ()(2)Ψα() (1)Ψδ()(4)Ψγ(ν) (3)]  

×Fβαδγ(2,1,4,3)
 

ですから,これは,

~αβγδ(1,,,4)=Fβαδγ(2,1,4,3) 

であるべきことを意味します。
 

そこで,運動量空間での表現式を. 

fie+)(-i)(2π)-6{/2/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(+p~+pν~-P)M と書くと,
 

M =Σαβγδ=1 4βαδγβ()pα()

νδ(ν~)eγ()

 
M =Σi=S,,VA,~i [~()Γi()] 

×[ν~(ν~)(1+αiγ5)Γi()] 

=Σi=S,,VA,i [~()Γi()]  

×[~()(1+αiγ5)Γiν~(ν~)]
 

この原理は結局, 

(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()]  

×[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)} 

(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[vν~(ν~μ(1-γ5)ue(e)} 

という意味であるとされます。
  
 
今,想定の反応は,p+e-+ν~→nですが,同じく逆β崩壊

呼ばれる同等な反応:p→ n+e+νでもこれと同じ

行列要素です。

 
ただし,p→ n+e+νでは正エネルギ-の陽電子の放出

(=負エネルギーの電子の吸収),および, 正エネルギ- 

のニュートリノの放出に変わるので,レプトン部分: 

[vν~(ν~μ(1-γ5)ue()}は,少し異なる形の 

 [uν~(νμ(1-γ5)ve(pe+)}になります。
 

 さて,ここまでの準備の下でニュートリノのスピノルは,

その質量がゼロのため特別に扱えるという話をします。
 

 §10.12 2成分ニュートリノの理論 

 (Two-component newtrino Theory)
 

β崩壊:n → p+e+ν~ では右巻きの反ニュートリノ

のみが放出されることを既に見ました。
 

対応して逆過程:p → n+e+νでは左巻きのニュートリノ 

のみが放出されることもわかっています。
 

先に述べたS行列要素: 

fi(-i)(2π)-6{/2/(2ν~)}1/2  

×(2π)δ(-P-p-pν~) 

におけるβ崩壊,および,逆β崩壊のそれぞれの不変振幅: 

M =Σαβγδ=1 4αβγδα()β() 

γ()νδ(ν)

および,  

M =Σαβγδ=1 4βαδγβ()pα() 

νδ(ν~)eγ() において, 


「詳細釣り合いの原理」から,
 

αβγδ(1,2,3,4)=Fβαδγ(2,1,4,3)

が成立し,それ故,結果的に確立された表現では,

β崩壊 については 

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

××[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)}であって,


 レプトン部分の因子:
[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)} 

における,(1-γ5)vν(ν~)がn → p+e+ν~ では, 

左巻きの負エネルギーニュートリノのみの吸収 

(=右巻きの反ニュートリノのみの放出)を示しています。

一方,逆β崩壊:p+e+ν~→nでは,

=(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[vν~(ν~μ(1-γ5)u()} なので
,

レプトン部分因子は[vν~(ν~μ(1-γ5)u()}  

[vν~(ν~)(1+γ5μ()}であり,右辺における  

ν~(e)(1+γ5)が左巻きの負エネルギーニュートリノ

の放出(=右巻きの正エネルギー反ニュートリノの

吸収)を示します。

 同じ逆β崩壊
の別バージョンp→n+e+νでの

=(G/√2))[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[uν~(νμ(1-γ5)v()}における
 レプトン[部分:[uν~(νμ(1-γ5)v()}
 

[uν~(ν)(1+γ5μ()}のν~(ν)(1+γ5)  

が,p→n+e+νでは,左巻きの正エネルギーニュートリノ  

のみが放出されることを示しています。

 こうして,現実に観測される正エネルギー粒子としては
 

左巻きニュートリノと右巻き反ニュートリノのみであり, 

右巻きニュートリノや左巻き反ニュートリノは。こうした 

β崩壊プロセスや,他のあらゆる弱い相互作用過程に欠如 

していることがわかります。
 

 それ故,それらはニュートリノのような質量が無いDirac 

粒子対するDirac方程式において,不要で余分な自由度が 

あること表わしていると考えられ,今からそうした自由度 

を除去することを試みます。

 

 さて,質量がmの自由粒子の波動関数Ψ()に対する

Dirac方程式,相対論的共変な形では,(iγμμ-m) Ψ=0

ですが,β=γ0, α=βγとして,

i(∂Ψ/∂t)iα∇Ψ-βmΨ=0 とも書けます。

 (※「Dirac方程式の導出」の項では後者を先に求め前者
に書き

えたのでした。


  なお,Dirac方程式の導出項目では.通常のhcやcを陽に書く

単位を使用しましたが,ここでは素粒子論で慣例のhc=c=1

とする自然単位に戻しました。以下,自然単位を使用します。)
 

そして,ガンマ行列の反交換関係:{γμ,γν}2μν

(μ,ν=0,1,2,3).αとβの表現では,β21,{β,αk}0,

{αi,αj}2δij(,,k=1,2,3)となります。
 

しかし,質量mがゼロのニュートリノの波動関数(スピノル):

Ψν()に対する自由Dirac方程式は,

i(∂Ψν/∂t)=-iα∇Ψν  です。
 

そこで,m=0の方程式の左辺には,-βmΨという項が消え

係数行列としてのβを全く含まないので,

 {αi,αj}2δij(,j=1,2,3)を満たす3個の行列:

 α(α1,α2,α3)のみあれば十分です。

  このα(α1,α2,α3)の満たすべき反交換関係は,既に

2×2のPauli行列σ(σ1,σ2,σ3)によって満たされること

がわかっていました。

 
つまり{σi,σj}2δij(,j=1,2,3) です。
 

 そこでαj=σj,(j=1,2,3)と置けば,

 {αi,αj}2δij(,j=1,2,3)なる条件は満たされます。


 
Dirac方程式を導出する過程で係数が4×4行列で

 あること(=スピノルが4成分であること)を強いたの

 は,α(α1,α2,α3)とは独立な第4の係数行列β

 得る必要性があり,そのためには2×2行列では自由度

 が不足するからでした。
 

ところで,i(∂Ψν/∂t)=-iα∇Ψνの正エネルギ-の

自由平面波解はΨν(){(2) (2π)3}-1/2(,)

×exp{i(Et-px)}です。ただし,E=||です。
 

方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψの運動量表示は

EΨ=αpΨであり,4成分スピノル:u(,)

Eu(,)αp(,)を満たします。
 

 しかし,Ψを2成分スピノルと考えると,

 方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψ

 i(∂Ψ/∂t)=-iσ∇Ψとなり.自由平面波解: 

 Ψν(){(2) (2π)3}-1/2(,)exp{i(Et-px)}

 の今の場合,2成分のスピノルu(,)は,

 Eu(,)σp(,)を満たすことになります。
 

そこで,運動方向のpの向きをスピンのz軸(3)の正の向きに

取ると,||=Eにより,σp=Eσ3ですから,

Eu(,)σp(,)は,

σ3(,)=u(,)を意味します。
 

 通常のPauliの表示でこの固有値+1の固有値方程式を満たす 

 規格化された2成分スピノルの解はu(,)[1.0]Tです。
 

 の向きがスピンの3軸の向きのときは,σ3σp/||ですから, 

 この(,)=u(,)[1.0]Tが満たす

 σ3(,)=u(,),

 {σp/||}(,)=+u(,)の,helicityが+1

 右巻きのニュートリノを意味します。
 

 しかし,自然界で観測される正エルギーのニュートリノは 

 σp/||(,)=-u(,)を満たす

 (,)=u(,)[0,1]T 100%左巻きのニュートリノ 

ですから,


 
これは,方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψの係数行列α
 

ασではなくα=-σと選択すべきことを意味します。
 

このα=-σとした方程式i(∂Ψ/∂t)iσ∇Ψの正エネルギー 

の解では

Ψν(){(2) (2π)3}-1/2(,)exp{i(Et-px)} 

のu(,)は運動量表示の方程式:Eu(,)=-σp(,) 

を満たします。
 

そこで,pの向きを3軸の向きとする2成分解においては,確かに

(,)は(,)=u(,)[0,1]T で与えられます。
 

長くなったので,ここで一旦終わって続きは次回にします。

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic Qantum Mechanics"

 (McGrawHill)

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