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2016年2月

2016年2月29日 (月)

弱い相互作用の旧理論(11)(Fermi理論)

「弱い相互作用の旧理論」μ粒子の崩壊の続きです。
 

前回最後で示したように,
 

μ-の崩壊で全ての粒子が非偏極の場合の崩壊率の分布は. 

dω=(1/2)(2π)-5(2P)-1

3(2Ep)-13(2Ek)-13~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)

×(|~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)] 

×Tr[(+meμ(1-γ5)ν(1-γ5)] ですが,

これの,

3(2Ep)-13(2Ek)-13~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)

より右の因子を計算すると,

(|~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)] 

×Tr[(+meμ(1-γ5)ν(1-γ5)] 

=32|~|2(1+|λ|2)[(Pk~)(kp)+(kk~)(Pp)]

+|G~|2(λ+λ)Tr(γμγνγ5)Tr(γμνγ5) 


     となります。


  今日は,まず,この式を証明する私の(注釈)から始めます。


 
※(注11.1):上の最後の式で,(|~|2/2)を除く上記トレースは,

r[γ μ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)]

r(γμγν)+|λ|2r(γμγ5γνγ5)

-λTr(γμγ5γν)-λr(γμγνγ5)

(1|λ|2)r(γμγν)+(λ+λ)

×r(γμγνγ5) です。


  そして,
r(γμγν)

 =4{Pμν+Pνμ-gμν(Pk)} です。


  一方,Tr[(+me)γ
μ(1-γ5)(ν(1-γ5)]

2r(γμν)+2r(γμνγ5)であり, 

r(γμν)=4{pμk~ν+pνk~μ-gμν(pk~)}

です。


  故に,r[γ μ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)]

×Tr[(+me)γμ(1-γ5)(ν(1-γ5)]

=32(1+|λ|2){2(Pp)(k~)+2(Pk~)(kp)}

+2(λ+λ)r(γ μγνγ5)r(γμνγ5)

=64(1+|λ|2){(Pp)(kk~)+(Pk~)(kp)}

+2(λ+λ)r(γ μγνγ5)r(γμνγ5) 

 それ故,

(|G~|2/2)r[γμ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)]

×Tr[(+meμ(1-γ5)ν(1-γ5)] 

=32|G~|2(1+|λ|2){(Pp)(kk~)+(Pk~)(kp)}

+|G~|2(λ+λ)r(γ μγνγ5)

×r(γμνγ5)
 が得られます。


 
(注11.1終わり)※


  次に,まだ手を付けてないトレース項:

r(γμγνγ5)r(γμ~γνγ 5)を評価します。

まず,これはkとP,およびk~とpについて,それぞれ,

交換反対称です。

  そして,4元運動量P,p,k,k~のどれについても線型で

γ5因子偶数個含み,μ,νについて縮約するのでLorentz

スカラーです。

  4元運動量:,,,~から構成可能な,こうしたどれに

ついても線型なLorentzスカラーの一般形を書き下すと,

(kk~)(Pp)+b(kP)(~)+c(kp)(~)

です。
 

 これが,さらにkとP,および,~とpについて,それぞれ

交換反対称という条件は, 

(Pk~)(kp)+b(PP)(~)+c(Pp)(~) 

=-a(kk~)(Pp)-b(kP)(~)-c(kp)(Pk~) 

=a(kp)(Pk~)+b(kP)(~~)+c(kk~)(Pp) 

です。

  これが恒等式であるという条件より,b=0,c=-a

を得ます。
 

したがって,

r(γμγνγ5)r(γμ~γνγ 5) 

=a{(kk~)(Pp)(kp)(Pk~)} 

と書けるはずです。
 

係数aを求めるために,具体的にPμ=pμ(1,0,0,0)T, 

μ=k~μ(0,1,0,0)を代入すると.まず右辺=-aです。
 

一方,r(γμγνγ5)=Tr(γ1γμγ0γνγ5), 

かつ,r(γμ~γνγ 5)=Tr(γ0γμγ1γνγ5)ですが, 

この積でμ,νについて和を取ると,μ=2,ν=3 

μ=3,ν=2以外はゼロで寄与しません。
 

そして,γ5iγ0γ1γ2γ3=-iγ0γ1γ2γ3より, 

μ=2,ν=3のγ0γ2γ1γ3γ5=-i(γ5)2=-i,
 γ1γ2γ0γ3γ5i(γ5)2i です。


  また,
μ=3,ν=2
γ0γ3γ1γ2γ5i(γ5)2=-i,

γ1γ3γ0γ2γ5i(γ5)2iです。
 

故に,r(γ1γ2γ0γ3γ5)=-Tr(γ0γ2γ1γ3γ5)4i. 

r(γ1γ3γ0γ2γ5)=-Tr(γ0γ3γ1γ2γ5)4iです。
 

結局,r(γμ~γνγ 5)r(γ0γμγ1γνγ5)

32=-aなので,a=-32 を得ます。
 

つまり,Tr(γμγνγ5)r(γμ~γνγ5) 

32{(kp)(Pk~)-(kk~)(Pp)} です。


  故に,
(|~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)] 

×Tr[(+meμ(1-γ5)ν(1-γ5)]  

=32|G~|2(1+|λ|2){kp)(Pk~)+(kk~)(Pp)}

+32|G~|2(λ+λ){kp)(Pk~)-(kk~)(Pp)} 

=32|G~|2{|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)} 

です。

 よって,崩壊率の式は,
  dω=(1/2)(2π)-5(2P)-1

3(2Ep)-13(2Ek)-13~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)

×32|G~|2{|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)} 


  
となります。

  さらに進むためには,一般には観測にかからない

ニュートリノの変数kとk~にわた積分:∫d33~

実行する必要があります。


    {|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)}はkとk~

について線型ですから,次の形の積分Iαβ()を計算できれば

積分:∫d33の実行結果が評価できるはずです。

すなわち,Iαβ(Q)

≡:∫d3(2Ek)-13~(2Ek~)-1αk~βδ4(Q-k-k~),

;ただし,Q=P-pです。

 そして,このIαβ(Q)は2階のLorentzテンソルとして

変換します。


 ※(注11.2):何故なら,それぞれの積分の寄与はスカラーです。
  
 すなわち,
3(2Ek)-1=∫d3~∫0dk0δ(kμkμ) 

=∫d4kθ(0)δ(2)です。
 

同様に,∫d3~(2~)-1=∫d4~θ(~0)δ(~2) 

ですから, ∫d3(2)-13~(2k~)-1は確かに

Lorentzスカラー です。  (注11.2)終わり)※
 

この積分:Iαβ(),2つのニュートリノの慣性中心系:

~=0,つまり,0 の系で最も良く評価

できます。
 

このとき,Qは純粋に時間的(time-like)です。 

つまり,2=Q022=Q020 です。
 

そこで,ニュートリノの慣性中心系では,簡単な計算の後に

次式を得ます。
 

すなわち,この系でのIαβ()をI(0)αβ()と書けば,

(0)αβ()=(π/24)Q02(gαβ+2gα0β0)です。

 (11.3):(0)αβ()

 =(1/4)∫d33~(kk~)-1αk~βδ4(Q-k-k~)~=-

 =(1/4)∫dEkdΩk(k/Ek~)-1αk~βδ(Q0k-Ek~)~=-

 =(1/4)∫dEkdΩk(k/Ek~)-1αk~βδ(Q02)です。
 

これは,α=i,β=j(i,j=1,2,3)なら,(0)αβ()

(0)ij()=(1/4)∫dEkdΩk(k/Ek~)-1ik~j

δ4(Q02) ですが,i≠jなら被積分関数はki,

またはkの奇関数なので∫dΩによって,(0)ij()

は消えます。


 これは,α=0,β=j,α=I,β=0 のケースでもそうです。


 他方,α=i,β=jで,かつi=kなら質量ゼロのニュートリ

では,E22であり,

-E(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)なので,

((0)11(),(0)22(),(0)33())

=(1/4)∫∫dEkdΩk(k/Ek~)-1((1)2,(2)2,(3)2)

δ(Q02)


 =(1/2)(
0/2)2-11(cosθ)02πdφ
(sin2θcos2φ,sin2θsin2φ,cos2θ)=(1/2)(0/2)2

(4π/3,4π/3,4π/3)ですから,
 

(0)αβ()=I(0)ii()

=(-1/4)∫dEkdΩkijδ(Q02)

=-(π/24)02です。


  一方,α=β=0 ならkαβ=E
2
より

∫dEk2δ(Q02)(1/2)(0/2)2ですが,

∫dΩk=4πより(0)αβ()=I(0)00()

=(1/4)∫dEkdΩk2δ(Q02) 

(π/8)02 を得ます。
 

したがって,(0)αβ()(π/24)02(αβ2α0β0)

が成立しています。(注11.3終わり)※
 

そして,αβ()2階のLorentzテンソルであることが

わかっているので,ニュートリノの慣性中心系でなく任意

Lorentz系では,αβ()(π/24)(αβ22αβ) 

となります。
 

'(11.4):以下,上式の証明です。
 

 ニュートリノの慣性中心系でQ=Q(0)を与える時空座標系 

をx-座標系,一般のQを与える任意座標系をx~系として, 

この座標系の変換をx~μ=aμννとするとき,


  
これが
Lorentz変換であるための条件は,

恒等的に,gμν~μ~ν=gμνμλνσλσ 

=gλσλσ,が成立すること: つまり,

μνμλνσ=gλσ が成立することです。
 

それ故,添字の上げ下げ(共変⇔反変)の規則から, 

λμσνμν=gλσが成立します。
 

そして,μ=aμν(0)νであり,(0)μ(0,0.0.0)

=gμ00 ですから,μ=aμ00です。


 また,2=Qμμ=Q02です。

 

したがって,2階テンソルの変換性から, 

αβ()=aαμβν(0)μν 

(π/24)αμβν02(μν2μ0ν0) 

(π/24)02(αμβμ2α0β0) 

(π/24)(αβ22αβ)を得ます。 (11.4終わり)

 

さて,

αβ()≡d3(2Ek)-13~(2Ek~)-1αβ

δ4(P-p-k-k~)=(π/24))(gαβ22αβ)

;Q=P-p ですから,

  
dω=(1/2)(2π)-5(2E)-1

3(2Ep)-13(2Ek)-13~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)

×{6|1-λ|2(Pp)2|1+λ|2{(Pp)22(PQ)(Qp)} 

ですが,


  ま
,2(P-p)2=mμ2+m22(Pp) です。
 

 また,PQ=P(P-p)=mμ2(Pp),

 Qp=p(P-p)(Pp)-me2,なので,

 (PQ)(Qp){μ2(Pp)}{(Pp)-me2} 

 =(μ2+me2)(Pp)-mμ2e2(Pp)2です。
 

 Ep22+m2,より, pdEp||||であり,

 d3p=||2d||dΩp||ppdΩpです。

したがって,dω={|G~|/(192π4)||dEpdΩp 

(6|1-λ|2(Pp)|{1+(mμ/me)2-2(Pp)}

 |1+λ|2[3{(mμ2+me2)(Pp)-2mμ2e2-4(Pp)2}|)

です。

 ところが,p=(p,)なのでμ粒子の静止系:P=(μ,0)

 を考えると,Pp=EPpPp=mμpです。


  そこで,dω={|G~|2μp/(192π3P)}||dEpdΩp
 

 =(6|1-λ|2{1+(mμ/me)2-2(p/mμ)} 

 +|1+λ|2[{3+3(mμ/me)2-2me2-4(Ep/mμ)|

 ですが,P=mμであり,


  
また.e<<mμなので
e2に比例する項を無視する近似

をすると,||~Epであり,電子の立体角での積分:∫dΩp

を実行すれば,


  dω/dp~{|G~|2μ2p2/(48π3)}
 

[6|1-λ|2{1-2(p/mμ)}|1+λ|2[{3-4(Ep/mμ)|]
  を得ます。

この段階で,このエネルギー分布予測を観測と比較すると,

観測は良い精度でλ=+1を支持しています。
 

これはν'で表わされるニュートリノも左巻きであること

を示すものです。(※これは言いかえると,ν'の質量も

ゼロであることを意味します。※)

そこで,λ=+1であるとして,これを代入すると,

dω/dp~{|G~|2μ2p2/(12π3)}{3-4(Ep/mμ)}

ですから,

0≦E≦mμの」範囲で∫dEを実行すると.

結局,μ粒子の崩壊率として,ω=|~|2μ5/(192π3)

が得られます。

μの平均寿命をτμとするとω-1/τμですから

τμ=192π3/(|~|2μ5)です。


 
(11.5):μ粒子静止系でのエネルギー・運動量保存則: 

P=mμ=Ep+E+Ek~,0~より,

(k~)=2, すなわち,2+Ek~2+2k~cosθ 

=Ep2-me2です。


  これに,Ep=mμ-Ek-Ek~を代入してEp
を消去します。 

k2+Ek~22kk~cosθ=(μ-Ek-Ek~)2-me2, 

 つまり,mμ22μ(k+Ek~)

 2kk~(cosθ-1)+me2 を得ます。
 
 

 ところが,既にdωの評価の際,e<<mμゆえ,e2

 比例する項を無視する近似を実施しましたが,ここでも,

 e2 0という近似を行なうと,右辺=2kk~(cosθ-1)0

 です。
 

 これは,μ{μ2(k+Ek~)}0 より,

 (k+Ek~)≦mμ/2を意味するので,

 p=mμ(+Ek~)≦mμ/2 です。
 

 そこで∫dEpの積分範囲は0≦Ep≦mμ/2であり, 

 ω=0mμ/2(dω/dEp)dEp 

  =|~|2μ2/(12π3)0mμ/2dEp [Ep2(3-4Ep/mμ)] 

  =|~|2μ2/(12π3){(mμ/2)3-(mμ/2)4/mμ}


   結局,ω=|~|2μ5/(192π3) が得られます。
 


   (注11.5終わり)※

 

 さて.μの崩壊の平均寿命の信頼できる観測値は, 

 τμ(2.21±0.003)×10-6secです。
 

 これを,上に求めた表式:ω=1μ|~|2μ5/(192π3)

と比較対照して,|~|はCを中性子nのβ崩壊のベクトル

結合定数としてG=√2とした中性子のβ崩壊の結合定数

2%以内の誤差で等しいことがわかります。
 

 こうしたことからFermi粒子の弱いβ崩壊結合における

普遍性が強く示唆されるため,ここでμ崩壊に対して仮定

した相互作用の形の妥当性へのさらなる支持が得られたと

考えられます。
 

(11.6):まず,中性子nのβ崩壊における弱い相互作用

のHamiltonian密度をとし,単位の無い係数を除いて,

=GΨpnΨeν,G=√2と書き,両辺の 

単位(次元)を等置します。(次元解析です。)
 

物理量Aの次元を[]と書くことにすれば,[]

エネルギー密度の次元なので,[]=ML2-2×L-3

=ML-1-2です。
 

また,ΨP~,Ψn,Ψ~,Ψνは全て2乗すると単位がL-3の確率

密度を示すため,各々の次元はL-3/2です。
 

故に,[ΨP~ΨnΨ~Ψν]=L-6ですから,

=GΨP~ΨnΨ~Ψνは,ML-1-2=[G]6を意味します。
 

故に,Gの単位は,[]=ML5-2です。
 

以前の記事:「弱い相互作用の旧理論(6)」において中性子n

のβ崩壊の観測から崩壊反応は,VとAのみのFermi遷移であり,

結合定数Gは,G=2(1.015±0.03)×10-5×(1/2), 

および,C(1.21±0.03)=αCV で与えられるという

結果を得ることを見ました。
 

今までの議論はPlanck定数をh,c=h/(2π),cを光速と

して,c=c=1とする自然単位での話としてきました。
 

[G]=ML5-2,[hc]=ML2-1,c~3.0×108(m/sec)より,

[]=LT-1ですから,Gの評価式: 

G=(1.015±0.03)×10-5×(1/2)において,この中

の陽子の質量pをエネルギーの単位:ML2-2を持つ

p2  940MeVで置換えて.通常の単位での

G=(1.015±0.03)×10-5×(2)-2cαβに換算

する ことを考えます。
 
 

次元解析(両辺の単位を等置する)を行なうと, 

ML5-2(ML2-2)-2(ML2-1)α(LT-1)βから 

1=-2+α,5=-4+2α-β,-2=4-2α-βより,

α=β=3です。
 

それ故,G=(1.015±0.03)×10-5×(940MeV)-2c33です。
 

一方,μの崩壊率は,ω=1μ|~|2μ5/(192π3)ですが 

~は実数で,|~|=G~であるとすると, 

ω=1μ~2μ5/(192π3)です。

 

ここで,さらにμ崩壊の結合定数G~も上のβ崩壊の

結合定数Gに等しいと仮定すると,  ω=1μ2μ5/(192π3)です。


  自然単位でなく通常の単位では,

ω=G2(μ2)5cρσ/(192π3)であると仮定し,

[ω]=T-1,[G]=ML5-2,[hc]=ML2-1,

[c]=LT-1,[mμ2]=ML2-2を用いて次元解析

行なうと,

 
-1(ML5-2)2(ML2-2)5(ML2-1)ρ(LT-1)σ

なので,0=2+5+ρ,0=10+10+2ρ+σ,

-1=-4-10-ρ-σより,ρ=-7,σ=-6

を得ます。
 

故に,ω=G2(μ2)5c-7-6/(192π3)が得られます。
 

G=(1.015±0.03)×10-5×(940MeV)-2c33 

から誤差:±0.03を省いて

21.0152×10-10×(940MeV)-4c66 

および,μ2106MeVを代入すれば,
 

ω=1.0152×10-10×(940MeV)-4(106MeV)5c-1/(192π3) 

2.97×10-16MeV/c となります。
 

 ところが,MeV単位ではhc=6.6×10-22(MeVsec)

なので,結局,μ粒子の崩壊率は,

ω=(2.97×10-16/6.6)sec-1で,μの平均寿命は.

τμ=1/ω=2.22×10-6secであるという予測

計算値が得られました。
 

他方,μの平均寿命の観測値は,

τμ(2.21±0.003)×10-6secですから,上記の予測値と

ほぼ一致しています。


  これで,G~=Gの仮定が非常に良い精度で成立すると

結論されます。 (11.6終わり)
 

今日はここで終わります。 

次回はπ中間子の崩壊を論じる予定です。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年2月23日 (火)

弱い相互作用の旧理論(10)(Fermi理論)

弱い相互作用の旧理論」の続きです。
 

 前回最後に余裕があればやる,と書きましたが.

理論を継続するために是非必要な手順の1つであると再認識

したので,これまでの中性子のβ崩壊の議論に続いて,余裕が

あるなしに関係なくμ中間子の崩壊の記述に移ります。
 

(10.1):μ粒子はその発見当時は,π中間子の他にも新粒子

が存在するはずであるという「坂田・谷川の2中間子論」の予測を

裏付ける粒子であったため,歴史的には中間子(meson)という呼称を

与えられていました。

(※※自慢ですが,私は,上記の(故)谷川先生の定年退官前の最後の

弟子の一人でした。とても不肖の弟子ではありますが。。※※)
 

しかし,近年の素粒子の分類では,()粒子にはハドロンとレプトン 

(軽粒子)があって,中間子はハドロンの一種であり,一方,μ粒子は 

電子やニュートリノと同じくレプトンの仲間なので中間子という 

呼称はふさわしくないと思われますから,以下ではμ中間子でなく 

単にμ,または,μ粒子(Muon)と呼ぶことにします。
 

なお,レプトンは,他に基本粒子があってそれから成る複合粒子 

ではなく,内部構造を持たない真の素粒子ですが,ハドロンには,

さらにクォークと呼ばれるより基本的な素粒子があって,それら

から形成される複合粒子であるとされています。
 

ハドロンには,スピンが半奇数のフェルミ粒子(Fermion )である 

バリオン(重粒子)とスピンがゼロ(スカラー),(ベクトル), 

(テンソル)etc.のような整数スピンのボーズ粒子(Boson) 

があり,メソン(中間子)はそのボーズ粒子群に属します。
 

そして,核子(陽子p,中性子n),Λ粒子,Ω粒子,etc.とその反粒子 

などから成るパリオンは,基本粒子であるスピン1/2のクォ-ク3,

または,反クォーク3個から成る複合粒子であり,

一方,メソンはクォークと反クォークのペアから成る複合粒子である

とされています。 (10.1終わり)
 

§10.13 μ粒子の崩壊(Mu-meson Decay) 

μ粒子の崩壊(μ崩壊):μ → e+ν'+ν~,4つのFermi粒子

巻き込み,1組の(,ν~)を含んでいます。
 

この崩壊には,中性子nのβ崩壊: → p+e+ν~ との類似 

が見られるため,これにβ崩壊と同じ形のS行列を適用することが 

示唆されます。
 

そこで,逆β崩壊:  → n+e+νと同様,逆μ崩壊のμ崩壊: 

μ → e++ν+ν'~がありますが,その振幅はμ崩壊の振幅から 

「詳細釣合いの原理」で導くことができるはずです。
 

ここまでで論じたように中性子nのβ崩壊: → p+e+ν~ 

のS行列要素は,
 
fi(-i)(2π)-6{2/(2ν~)}1/2
 

×(2π)4δ4(-P-p-pν~) ;
 
 

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)u()]

×[u~(μ(1-γ5)vν~(ν~)] で与えられます。
 

それ故,μ粒子の崩壊:μ → e+ν'+ν~のS行列要素

における不変振幅~においてもβ崩壊における上記の不変振幅: 

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[u~(μ(1-γ5)vν~(ν~)]

のうちのレプトンペア:(,ν~)の寄与する因子部分:

[u~(μ(1-γ5)vν~(ν~)]は,全く同一不変である

と仮定します。


 これは
,μ粒子の崩壊でも,100%右巻き反ニュートリノと大部分が

左巻きの電子という偏極率で,このペアが放出されて出現すること

を示しています。
 

(10.2):(1-γ5)γ μ(1-γ5)0,であり,一方,

 (1+γ5)γμ(1-γ5)2γμ(1-γ5) なので,
 

 因子:[u~(μ(1-γ5)vν~(ν~)] において,

~()の~()=u~(){(1+γ5)/2}

~(){(1-γ5)/2} なる分解のうち,

完全な右偏極電子成分:~()[(1-γ5)/2}(=完全

右偏極スピノル:{(1+γ5)/2}() の共役スピノル)

はこの因子には全く寄与しません。)

しかし,実際は質量がある電子の右偏極は完全ではなく,

{(1+γ5)/2}であり,質量ゼロに相当する相対論極限

では→1により完全になります。


(※上記の1={(1+γ5)/2}
{(1-γ5)/2}なる分解ではなく,

1={(1+γ5)/2}{(1+γ5)/2}なる分解を考える

べきでしょうか?※)


 そこで,比較的軽く小質量の電子の右巻き成分の寄与はゼロ

ではないですが小さいため,放出電子の大部分は左巻き電子

です。100%右巻き反ニュートリノと相互作用しながら共存

できる電子の偏極期待値は完全左偏極のPe=-1ではなく

e=-βe=-ve/cであることがわかっています。


 (注10.2終わり)※

μ崩壊の実験では,上記因子から予測される反ニュートリノの

偏極は観測不可能でしたが,電子の左偏極優位性は観測されて

います。
 

それ故,μ,,ν',ν~の4元運動量:μ,,ν',ν~

を,それぞれ,P,p,k,k~と略記し,それに伴ない,

μ,E,ν',ν~も,それぞれ,EP,Ep,,k~と書くと,

μ崩壊のS行列要素は,
 

fi(-i)(2π)-6[μ/{Pp(2k)(2~)}]1/2 

×(2π)4δ4(P-p-k-k~)~;
 

および, ~(~/2)[uν'(μ(1-λγ5)uμ()]

×[ue'(pμ(1-γ5)vν~(k~)]  

で与えられる,と考えられます。
 

※この,運動量を付記した運動学を示すμ崩壊のグラフを

下図10.17示します。その下に,対応する中性子nのβ崩壊

の図10.14も示しておきます。※)


 

   

パラメータ-λは,ν'の左偏極率を示すものですが,これはμ崩壊

の実験において観測される崩壊率(遷移率)やスペクトル分布から 

決定さるべき結合定数G~やμ粒子の性質と共に,これらの関わり 

から決まるはずです。
 

そこで,非偏極粒子に対するμ崩壊の遷移率を得るために,

S行列要素の絶対値の2乗:|fi|2を取り,終状態の位相因子

(=状態数)333~を掛けます。
 

そして,終状態のスピンにわたる和を取り,始状態でのμのスピン

平均するため,始状態,終状態両方のスピンにわたる和を取った

,全体を2で割ります。
 

この操作は,これまで通り|fi|2の中のスピノル因子の積をその

射影演算子に置き換えて得られるトレース計算を利用します。
 

最後に相互作用領域の体積Vと相互作用時間Tの積: 

VT=(2π)4δ4(0)で割って単位体積当たりの遷移率

とし,さらにμ粒子1個当たりのそれとするためにμ粒子

の密度:/V=1/(2π)3で割ります。
 

これらのステップを実行すると,遷移率の計算式として次式 

を得ます。
 

すなわち,dω=(1/2)(2π)-5(μ/P)

3(m/p)3(2Ek)-13~(2Ek~)-1

δ4(P-p-k-k~)×Σspins |~|2 です。
 

そして, Σspins |~|2 

(|~|2/2)Σspins|[uν'~(μ(1-λγ5)uμ()] 

×[u~(μ(1γ5)ν~(~)]|2 

(4μ)-1r[γμ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)] 

×Tr[γμ(1-γ5)(+m)γν(1γ5)~] 

です。
 

(10.3):何故なら,

1μ(,)≡uν'~(k,sν'μ(1-λγ5)μ(P,S),

2μ(,~)≡u~(p,sμ(1-γ5)vν~(~,s~)

と置けば,
 

Σspins|[uν'~(k,sν'μ(1-λγ5)μ(P,S)]

×[u~(p,sμ(1-γ5)vν~(k~,s~)]|2  

Σspins|1μ(,)2μ(,~)|2 

Σspins[1μ(,)2μ(,~)][1ν(,)2ν(,~)] 

Σspins[1μ(,)1ν(,)][2μ(,~)2ν(,~)] 

±sν',±S{1μ(,P)J1ν(,)}] 

×[Σ±s,±sν~{2μ(,~)J2ν(,~)}]

です。
 

そして,Σ±sν',±S[1μ(,P)J1ν(,)] 

=Σ±sν',±SΣα,βΣλ,σ

[ν'~α(k,ν'){γμ(1-λγ5)}αβμβ(P,S)]

[μ~λ(,)ν(1-λγ5)}λσν'σ(,ν')]

 

です。
 

 一般に,ガンマ行列の積:Γに対してΓ~をΓ~≡γ0Γ+γ0で定義

すると,|~()Γu()|2[~()Γu()][~()Γ~()]

です。
 

そして,特にγμ~≡γ0γμ+γ0=γμ,(iγ5)~iγ5,

(γμγ5)~=γμγ5 です。

(γ5γ5,γ5=γ5≡iγ0γ1γ2γ3で定義されています。)
 

そこで,Σ±sν',±S[J1μ(,)J1ν(,) *] 

=Σ±sν',±SΣα,βΣλ,σ 

[ν'~α(,ν'){γμ(1-λγ5)}αββ(,)] 

×[μ~λ(,){γν(1-λγ5)}~λσσ(,ν')] 

であり,かつ,{γν(1-λγ5)}~γν(1-λγ5) です。
 

ところで,(,),(,)をw(r)()で表現すると, 

Σ±sβ(,)~λ(,)=Σr=12εr(r)β()(r)~λ(), 

Σ±sβ(,)~λ(,)=Σr=34εr(r)β()(r)~λ() 

です。
 

そして,m>0ならr=1,2に対して, 

(+m)(r)()/(2)=w(r)(),(+m)(r)()/(2)0, 

r=3,4に対して,  

(+m)(r)()/(2)=w(r)(),(+m)(r)()0

です。
 

それ故,また,r=1,2では

(r)~()(+m)/(2)=w(r)~(), 

(r)~()(+m)/(2)0 (r=1,2),


 および,r=3,4では,
 

(r)~()(+m)/(2)=w(r)~(),

(r)~()(+m)/(2)0 です。
 

そこで, εr1,(r=1.2) εr=-1(r=3,4)として, 

規格化条件:Σr=14εr(r)α()(r)~β()=δαβ を用いると, 

Σ±sβ(,)~λ(,)=Σr=12εr(r)β()(r)~λ() 

=Σr=14Σσ=14εr(r)β()(r)~σ()(+m)σλ/(2) 

=Σσ=14δβσ(+m)σλ/(2),
 

および,Σ±sβ(,)~λ(,)

=-Σr=34εr(r)β()(r)~λ() 

=-Σr=14Σσ=14εr(r)β()(r)~σ()(+m)σλ/(2) 

=Σσ=14δβσ(-m)σλ/(2) を得ます。
 

結局,Σ±sβ(,)~λ(,)(+m)βλ/(2) ,

Σ±sβ(,)~λ(,)(-m)βλ/(2) です。
 

m=0なら,Σ±sβ(,)~λ(,)βλ ,  

かつ,Σ±sβ(,)~λ(,)βλ です。
 

したがって,Σ±sν',±SΣα,βΣλ,σ 

ν'~α(,ν'){γμ(1-λγ5)}αβμβ(,)] 

×[uμ~λ(,){γν(1-λγ5)}λσσ(,ν')] 

μ(1-λγ5)}αβ(+mμ)βλν(1-λγ5)}λσσα 

ですから,
 

Σ±sν',±S[J1μ(,P)J1ν(,)] 

=Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)] 

を得るわけです。
 

同様に,Σ±s,±sν~[J2μ(,~)J2ν(,~)] 

Σ±s,±sν~|~(,eμ(1-γ5)vν~(~,ν~)| 

×[ν~~(~,ν~ν(1-γ5)(,)] 

r[γμ(1-γ5)(+meν(1-γ5)~] 

を得ます。 (10.3終わり)
 

さて,遷移率の計算式: 

dω=(1/2)(2π)-5(μ/P)

3(m/p)3(2Ek)-13~(2Ek~)-1

δ4(P-p-k-k~)×Σspins |~|2

および, 

Σspins |~|2 

(|~|2/2)(4μ)-1Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)]

r[γμ(1-γ5)(+meν(1-γ5)~]

において,dωの表式の右辺の(μ/P),(/),

Σspins |~|2の右辺の因子(4μ)-1と相殺されて,それぞれ

(2P)-1,(2p)-1に置き換えられて,
 

dω=(1/2)(2π)-5(2P)-1

 ∫3(2p)-13(2Ek)-13~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)

  (|~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)]

r[γμ(1-γ5)(+meν(1-γ5)~] 


 と書けます。

 

そして全ての積分∫d33~を実行後の遷移率で(2P)-1 

より右の全ての量はLorentz不変です。
 

そこで,遷移率の逆数はμ粒子のエネルギー:Pに反比例する

ことがわかります。μ粒子の静止系では,遷移率の逆数は平均寿命

でありEPμの質量:μです。

 さらに,,(|~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμν(1-λγ5)]

r[γμ(1-γ5)(+meν(1-γ5)~]

=32|~|2(1+|λ|2){(k~P)(p)(kk~)(pP)}

|~|2(λ+λ)r[γμγνγ5]r[γμ~γνγ5] 

です。
 

途中ですが,長くなったので今日はここで終わります。

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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2016年2月13日 (土)

弱い相互作用の旧理論(9)(Fermi理論)(PS:重力波)

「弱い相互作用の旧理論」2成分スピノルのニュートリノ理論

の続きです。
 

中途半端なので,前回最後の部分を再掲載するところから始めます。

自然界で観測される正エルギーのニュートリノは 

{σp|/||}(,)=-u(,)を満たすu(,)

=u(,)[0,1]T 100%左巻きのニュートリノですから,これは

方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψの係数行列αασでなく

α=-σと選択すべきことを意味します。
 

このα=-σとした方程式i(∂Ψ/∂t)iσ∇Ψの

正エネルギー解では,Ψ(){(2) (2π)3}-1/2(,)

exp{i(Et-px)}のu(,)は,運動量表示の方程式:

Eu(,)=-σp(,)を満たします。
 

の向きを3軸の向きとするこれの2成分解においては.

確かに,(,)=u(,)[0,1]T です。※

 

ここまでが前回最後の部分の再掲です。
 

さて,こうした2成分の解と今までなじみ深い4成分スピノル

との関係をより良く理解するため,一旦質量mの項がある一般

Dirac方程式に戻ります。
 

ただし,係数行列α,βとしては前と異なり,次のような表示を

選択採用します。

 

すなわち,α(k=1,2,3),2×2の2つの細胞対角成分が

Pauli行列σkとその(1)倍の-σkであるような4×4の

細胞対角行列であり,一方,βは,1を2×2単位行列として.

細胞反対角成分が共に 1であり,細胞対角成分はゼロの

×4細胞反対角行列とします。

この表示でも,Pauli行列の性質:{σi,σj}2δij(,j=1,2,3) 

によって,β21,{β,αk}0,{αi,αj}2δij(,,k=1,2,3) 

なる条件が満たされることは容易に確かめることができます。
 

そして,上のα,βの表示は,これまでの.2つの細胞対角成分

ゼロで2つの細胞反対角成分がPauli行列σkであるような

α(k=1,2,3)と細胞対角成分が1と-1であるβの表示:

とは,(1+γ5γ0)/21/2によるユニタリ変換だけ異なって

います。
 

すなわち,(1+γ5γ0)/21/2と置けばU=U1であり,

元々の上述の表示のα,βを改めてα~,β~と書けば,Uの

定義におけるガンマ行列は,この元の表示でのガンマ行列

であるγ0=β~,γ=γ0α~β~α~です。(下図参照)

そして,Uによってα=Uα~,β=Uβ~が成立します。
 

(9-1):γ5=γ0γ1γ2γ3=であり, 

ですから,確かにα=Uα~,β=Uβ~が成立して

います。  (9-1終わり)
 

さて,新しいα,βの表示では,4成分のΨを2成分のφ,χに

分割してΨ=[φ,χ]Tと書くと,


 
Dirac方程式:
i(∂Ψ/∂t)iα∇Ψ-βmΨ=0 , 

i(∂φ/∂t)iσ∇φ+mχ=0 ,および, 

i(∂χ/∂t)iσ∇χ+mφ=0 

の連立方程式になります。
 

これによると,mがゼロでばいときには,これらの方程式は共に 

φとχが混合された形ですが,m=0なら,それぞれが未知関数 

について独立した方程式の形になります。
 

すなわち,m=0 ならi(∂φ/∂t)=-iσ∇φ ,および, 

i(∂χ/∂t)iσ∇χ です。
 

そこで,これらは,m=0 Dirac方程式:

i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψ 

でΨを2成分スピノル,α2×2行列と考えたときの.

それぞれ,ασ,および,α=-σに対応する方程式と

なっています。
 

そうして,これらの自由平面波解は,係数を省略すると, 

Φ() ∝ uφ()exp{i(Et-px), 

χ() ∝ uχ()exp{i(Et-px) であり,


 
=}|ですから,
方程式をFourie変換すると,それぞれ, 

Euφσpφ, or {σp/||}φφ,

および, Euχ=-σpχ, or {σp/||}χ=-χ  

となります。
 

したがって,φはhelicityが+1の右巻き粒子,χはhelicity

が-1の左巻き粒子に対応するため,m=0 のときのφをu,

χをuと表記することにします。

 

粒子の運動方向のの向きを3軸とすると,

 

{σp/||}φφ から uφ [1.0]T, 

{σp/||}χ=-χから uχ [0,1]T

と表わされます。
 

以上から,細胞対角成分がゼロで細胞反対角成分がσである 

表示のαでの4成分スピノルΨのm=0 のときの平面波解は 

Ψ=[u,]T と書けることになります。
 

そして,Ψ()=[u,0]T,Ψ()=[0,]Tと書けば,

Ψ()右巻きニュートリノ,Ψ()は左巻きニュートリノ

の4成分の(しかし自由度は2の)解を意味します。

(※4成分の射影演算子の意味では,(m=0では)右巻きは,

{(1+γ5)/2}Ψ()=Ψ() であり,左巻きは,

{(1-γ5)/2}Ψ()=Ψ() です。※)
 

質量がゼロのDirac粒子を2成分の方程式で記述できる可能性

1929Weylによって初めて論じられましたが,当時,それは

真面目には取り上げられませんでした。
 

その理由は,空間反転でDirac方程式不変(理論が不変)である 

条件を与えるΨ'(,)=PΨ()のパリティ(Parity)操作

の行列:exp(iδ)γ0なる形のそれだけですが,この行列

の因子β=γ0,2成分では意味を失なうためパリティ保存則が

成立しなくなるからでした。

(9-2):パリティ変換については2011年12//20過去記事 

Diracの空孔理論(2)(荷電共役)」の中の()で記述しました。
 

すなわち,これを再掲載すると以下の通りです。
 

():既に通常のLorentz変換:x→x'=ax に伴なう波動関数

Ψの変換:Ψ→ Ψ',Dirac方程式が形を変えないための次の条件: 

μνγν=S-1()γμ()を満たす4×4行列S()によって 


 Ψ'(x')=Ψ'(ax)=S()Ψ(),

またはΨ'()=S()Ψ(-1)

と書けることを見ました。
 

そして,特殊なLorentz変換の1つである空間反転:

'=-,t’=tにおいても特にS()=Pとおいて

Ψ'(x')=Ψ'(,)Ψ()でパリティ変換を定義する

と,先の条件aμνγν=S-1()γμ()は,

μνγν-1γμとなります。
 

この条件は,δをある実数としてP≡exp(iδ)γ0とすれば満足

されます。
 

位相因子には物理的意味がないと考えても不都合はないですが, 

波動関数(spinor)自身にも何らかの物理的意味があると考える

立場なら,2回の反転で波動関数が元に戻ること:21を要求する

ことでP=±γ0と位相因子が限定されます。
 

さらに回転群ならspinor2価表現であることを知っています

から,実は,4回の反転で元に戻ること:41を要求すれば

=±γ0,または,=±iγ0です。
 

(一般にはP≡exp(iδ)γ0で十分ですが。。)(注終わり)
 

以上,過去記事からの再掲載です。  (9-2終わり)
 

しかし,1956年にパリティ保存則が壊れることが示された後

には,2成分のWeilの方程式が,Landau,Lee,Yang,および,Salam

によって復活させられました。
 

彼らは荷電共役(Chage-conjigation)対称性でもΨCγ0Ψ

を与える行列:1γ2γ0が2成分では失われるため荷電共役

も壊れるが,CPの結合変換の下での対称性:つまり,空間反転

と荷電共役の結合での不変性は残ることを観測しました。
 

 荷電共役対称性というのは電磁場:μがある場合の電荷eの

 電子の波動関数Ψに対するDirac方程式:

 {(iμ-eAμ)γμーm}Ψ=0 から, 

 (Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=-γμなる関係を満たす正則行列

 Cγ0を見出せれば,Ψc≡Cγ0Ψ=CtΨ~とおくことで

 Ψcが満たす方程式:{(iμ+eAμ)γμ-m}Ψc0を得る

 ことから,

 Ψcを電荷が-eの電子の反粒子である陽電子の波動関数と

 見なすことができるという内容でした。。
 
 

 そして,実際にC=iγ2γ0とすれば,(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1

 =-γμ なる関係が満たされるのでした。
 

 この,新しい表示では細胞対角成分がiσ2と-iσ2

 細胞対角行列となりますが,2成分のニュートリノ理論では,

 因子の4×4行列:β=γ0の存在は,2成分では意味が

 不明,もはやCは対称操作では有り得ないことになります。 
 

 しかしながら,CP対称性は残ることを示せます。
 

 すなわち,Ψ=[,]T=Ψ()+Ψ()と書くと, 

 Ψcp(,)=Cγ0Ψp(,)=CΨ(-x,)であり, 

 Ψcp[iσ2,iσ2]T=-iσ2Ψ()iσ2Ψ() 

 です。
 

質量がゼロのニュートリノの波動関数に対する自由Dirac 

方程式は,i{i(/∂t)iα}Ψ=0 ですが, 

成分では,α=±σであり,このαに対しては,

ασ2=-σ2α* が成立します。
 

(※ 何故なら,具体的なPauliの表示で計算すれば  

σ1σ2=-σ2σ1=-σ2σ1,σ2σ2=-σ2σ2, 

σ3σ2=-σ2σ3=-σ2σ3となるからです。※)
 

そこで,まず,{i(/∂t)iα}Ψ(,)0 の両辺の

複素共役をとれば{i(/∂t)iα}Ψ(,)0

 
さらに空間反転:'=-の変数変換を行なうと,x'=-∇ 

なので,{i(/∂t)iα}Ψ(,)0

を得ます。
 

α=±σの2成分方程式と考えて両辺にC=±iσ2を乗じ,

σ2α=-ασ2を考慮すると,

±iσ2{i(/∂t)iαx'}Ψ(,)=0 

より,{i(/∂t)iαx'}{CΨ(,)}0
 

すなわち, {i(/∂t)iα}Ψcp(,)0 を得ます。 


 (
※↑α=-σの左巻き方程式の解なら.CP変換後はασ

右巻き方程式の解に変わります。※)
 

反粒子は粒子にCPを変換を程子板ものとして,反ニュートリノ

の波動関数を作るには,電子と陽電子の関係の場合と同じく,

負エネルギーのニュートリノの解から,複素共役をとり,

左からiσ2掛けます。
 

α=-σの方程式{i(/∂t)iσ}Ψ()0の解である 

左巻きの負エネルギーニュートリノ解:はE=||0とすれば 

Ψ(){2(2π)3}1/2(,)exp{i(Et+px)} です。
 

(,)は-Ev(,)=-σp(,)を満たします。 

そこで,この2成分表示ではv(,)[1,0]T です。
 

そして,iσ2(,)iσ2[1,0]T=-i[0,1]Tですから

反ニュートリノ波動関数は,観測にはかからない位相因子(i)

を除いて,Ψcp(',){2(2π)3}1/2[0,1]T(,)

exp{i(Et-px')} となります。(ただし,'=-です。)
 

これも明らかに,左巻きWeyl方程式の解です。 

事実,上記の Ψcpでは,{σp/||}[0,1]T=-[0,1]Tであり,これは

helicity が-の左巻き粒子の波動関数であることを意味します。
 

しかし,これはパリティが反射された系:'=-での話です。 

丁度,右向きの人が鏡の中では左向きに見えるように, 

このプライム系での左巻き反ニュートリノは,非プライム系

の我々にとっては右巻きです。
 

(※また,は反ニュートリノ(または負エネルギーニュートリノ) 

の運動量を表わしていると同時にニュートリノの運動量を表わして 

いて,CP変換に対してのまま符号を変えません。※)
 

さて,以上で中性子nのβ崩壊に関わる理論は終わります。 


 余裕があれば,次にはμ中間子(レプトン(軽粒子)のμ)の崩壊
 

の話題に移ろうと思います。

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic Quantum Mechanics"(McGrawHill)

 PS:重力波が発見されたというニュースがありました。 

 ヒッグス(Higgs)粒子とか重力波とか,いずれ確実に見つかる

だろうと考えられていたものが,次々と発見できる観測レベルに

到達したようです。


   
ただし,こうしたもの見つかって検証できたとしても,例えば, 

青色ダイオードの発見のように直ちに我々にとって何かが 

大きく変わったり影響されるようなものではないと

思われますが。。。

  私もかつてブログを]開始した直後の2006年の6/22に「重力波」という

題名で記事を書いたのを思い出しました。

 

 これは短かい記事なので,そのまま再掲載してみます。

※水素原子には,古典的には"1個の原子核=陽子の周りを1つの 

電子が回っている。"というラザフォード模型の描像があります。
 
   
しかし,実は電荷が加速度運動をすると電磁波を放射して

エネルギーを損失するため,こうした模型では電子は運動エネルギー

を失ってほとんど瞬時に原子核と一体化してしまい,原子は安定には

存在できないことになります。

 

  そこで,水素原子として安定に存在できるためには,電子が

原子核からある距離,つまり電子軌道の半径がボーア半径と呼ば

れる値:B にあれば,もはや"電磁波=光"を放射しない,という

ような"特別な条件=量子条件"を設けることなどが必要と

なりました。


  
これによって,前期量子論の時代が始まったのでした。


  
そして,この模型で原子核の質量をM,電子の質量をmとすると,

M>>mなので電子が半径 r にあるときの引力ポテンシャル

=位置エネルギーは,陽子の電荷をe>0 (電子のそれは-e)

とし,静電場のクーロンの法則における比例係数kを

k=1/(4πε0)とすれば,U=-ke2/r となります。


  
そこで,相対論を考慮すると水素原子の質量は M+m+U/ c2

なると思いがちですが,実はラザフォード模型では遠心力と

引力が釣り合っており,そのときの電子の運動エネルギーが

ちょうど,| U |/2 =-U/2 になる(ビリアル定理)ので,これ

も加えて,水素原子の質量はM+m+(1/2)U/c2

となります。


  
まあ,正確には2体問題の質量は換算質量を用いる必要があり

電子の回転も陽子=原子核が中心ではなく,そのごく近くの重心

の周りの回転になるというのが本当ですが,M が m の1840倍

程度もありますから気にする必要はないでしょう。


  
そして,U<0 すから,実際水素原子の質量は M+mよりも

小さくなります。

  こ
れと同じことが,地球と月や人工衛星のときの万有引力(重力)

にも起こると想像されます。


  万有引力定数をG,地球の質量をM,月や人工衛星の質量をm

すると,やはり M>>mであり,月または人工衛星が地球中心

から半径Rのところにあり,引力が遠心力と釣り合って回転

しているというのは実は常に自由落下しているわけです。

  
ですから,みかけ上は無重力なのですが,そのときの引力の

位置エネルギーは U=-GMm/R で"地球+月",または

"地球+人工衛星"の総質量はやはり M+m+(1/2)U/c2

となります。


  
重力の量子論はまだできていませんが,古典論では水素原子なら

電子が電荷を持って加速度運動するために電磁波を放出して

原子核に落ちる,という制動輻射のアナロジーから,


  
質量を持って加速度運動している月や人工衛星は重力波を放出

して地球に落下するだろうと想像されます。

  
しかも,水素原子の系とは異なり,地球と衛星との系の規模は量子論

を無視して古典論で評価できる程度に大きいので,量子条件を用いて

安定性を保証することはできません。

   
ところで,古典論で電子が原子核に落ち込むまでの時間τを計算

するとτ=(1/4)mc2B3/(ke2)2 ~10-11秒程度です。

   
この式から類推すると,重力の場合の月や人工衛星が地球に

落ち込むまでの時間はτ=(1/4)(mc23/(GMm)2程度で

あろうと推測されます。

   
電気力と重力の大きさの比率は大体,重力のほうが40桁も小さい

ということがわかっています。

   
これは大体ke2とGMmを比較したもので,上の式によるとτの

比率は,その逆数の2乗に比例すると思われるので,これだけの

効果を考えても重力の場合は電気力の場合と比べて,落下までに

80桁も長い時間がかかるだろうと予想されます。

  
しかも,R3はaB3よりはるかに大きいので月や衛星が重力波のため

に地球に1cmでも落下して接近するには,1060秒以上,つまり1050

以上もかかることになります。

  
これは宇宙の年齢100億年 ~ 200億年よりはるかに大きくて,

事実上全く落下しないのと同じですから,全く問題になりませんね。

 
 まあ,電気力と重力では,これ以外にも"電磁波=光"は電荷を

持っていませんから,その波自身が光源となってそれからさら

に2次の電磁波を発生することはないけれど,重力波はそれ

自身がエネルギーεを持っているので,それはε/c2に相当する

質量を持ち重力波源になるという違いがありますね。

   
重力波が重力波源となって2次の重力波を放射し,さらにそれ

からまた3次の重力波を放射することになって,重力に関わる現象

非線形で扱いにくい,というのは大きな違いです。


   
その他,小石が地面に落下しているときの位置エネルギーや運動

エネルギーは小石と,地球,または空間=重力場のどこに属する

のかを考察するのも面白いですね。


   
また,万有引力の位置エネルギーは2つの質点が一致したとたん

-∞ になるので,合体すると質量が-∞ になるのでしょうか?

それとも,その-∞ 分の位置エネルギーが全て+∞ の運動

エネルギーに転化されて,熱に変わった結果,相殺されるので

問題ない のでしょうか?


  
あるいは電子の自己エネルギーと同じく,重力の場合も

自己エネルギーをくりこんだのだと考えればよいのか?,とかの

問題について論じるのも興味深いですが,

これらはまたの機会にしましょう。 ※


 以上,10年近く前に書いた記事の回顧的な再掲載でした。

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2016年2月 8日 (月)

弱い相互作用の旧理論(8)(Fermi理論)

2015年の121日に弱い相互作用の旧理論(7)」をアップした後, 

1215日に入院予定となりました。
 
 結局,入院は2016年1月12日に延期となり予想外で1月15日には

退院しました。この間,昨年125日に私がメインに使用してた

デスクトップPCが壊れ,代替のノートPCではワードの更新

ができず,結局,1217に購入した中古デスクトップPCで,

プリインストールされていた MS-office 2010ワードを用い

ブログ記事の草稿書きを再開しましたが。。。

でも,「弱い相互作用の旧理論」続きをアップするのでなく,

Dirac方程式の導出というトピックに脱線しました。


 しかし,
この脱線には理由があります。
 

そもそも,この「弱い相互作用の旧理論」ではニュートリノの質量

はゼロあるとしています。

 

カミオカンデで,ニュートリノには質量があることの証拠とされた

ニュートリノ振動」の観測ですが,これについて私が完全に理解

しているわけではないので,若干の誤解があるかもしれないとは思

のですが。。

 これは,"3世代のニュートリノである電子() ニュートリノ:

νe,μ-ニュートリノ:νμ,τ-ニュートリノ:ντの間に質量差

 あること"を検証したものである。と理解しています。
 

そこで,例えば,今参照中のテキストの中性子nのβ崩壊に関わる 

 電子()ニュートリノ:νについては,質量がゼロであるという

 旧理論もまだ存在価値があるのでは?と思っています。
 

 そして,「中性子のβ崩壊に関わるニュートリノの質量がゼロ

であるなら,Dirac方程式でのニュートリノの波動関数を与える

スピノルΨが質量mを係数とする項を持たないため.Ψは4成分

である必要はなく,Pauliの2成分スピノルで十分記述できる。

という話に移行するところを記述中,私の悪いクセで,またまた,

詳細が気になったので蒸し返しです。

 あえて,Dirac方程式で波動関数を何故4成分にしたのか?

いうことなどをも含む導出過程を復習しよう。と考えたため

でした。
 

 そして,一応,Dirac方程式関連の個人的な疑問も解消,準備

が終わったので,また,「弱い相互作用の旧理論」の続き,に

戻ろうと思います。
 

しかしながら,前の記事からずい分間も空いたし,いろいろと

情報が錯綜してきたので,まず,ここまでのストーリ-の連続性

を確認し要約しておくことから始めます。
 

まず, 中性子nのβ崩壊:n → p+e+ν~の最低次の

S行列要素は,

  
 fi(-0)=-iΣαβγδ=1 4∫d41..44 

 Ψα()(1)Ψβ()(2)Ψγ()(3)Ψα(ν) (4)

 ×Fαβγδ(1,,,4) 

 
 で与えられるとします。

 

そして,4個の粒子の相互作用頂点の因子:

αβγδ(1,,,4)は局所相互作用であると仮定します。
 

すなわち,αβγδ(1,,,4)  

αβγδ・δ(1-x2)δ(1-x3) δ(1-x4) 

なる形であるとします。

このαβγδ(1,,,4)を運動量空間にFourier変換

すれば,αβγδ(1,,,4) =∫d41..44 

×exp{i(11+p,+p+p44)}

αβγδ(1,,,4)

(2π)δ(1+p+p+p4)αβγδ  

なる形式になります。
 

n → p+e+ν~のn ,,,ν~のそれぞれの4元運動量 

1,2,3,4は全て頂点に向かう向きを正として取ったもの 

ですが,これらを改めて頂点に向かう向きを正,頂点から出る向き 

を負として, それぞれ,1=-P,2=P,3=-p, 

4=―pν~とします。
 

すると,αβγδ(-P,,-p,-pν~) 

(2π)δ(-P-p-pν~)αβγδです。
 

4粒子のスピノルとして,核子n,pの質量をM,電子の質量をm, 

ニュートリノの質量をゼロとして規格化された定運動量,定スピンの 

次の平面波スピノルを代入します。
 

Ψ()(1)(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i1 

Ψ()(2)(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i2 

Ψ()(3)=(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(-i3 

Ψ(ν)(4)(2π)-3/2|1/(2ν~)}1/2ν(ν~,ν~)

×exp(-iν~4)です。
 

すると,座標表示のS行列要素: 

fi(-)(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(11Ψβ()(2)Ψγ()(3)Ψα(ν) (4) 

×Fαβγδ(1,2,3,4) は,

運動量空間にFourier変換して, 

fi(-i)(2π)-6{2/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(-P-p-pν~)  

と書けます。
 

ただし,不変振幅:, 

M =Σαβγδ=1 4αβγδα()β()

×γ()νδ(ν) で定義されます。

これを,(スカラー:),(擬スカラー:γ5),(ベクトル:γμ), 

(軸性ベクトル:γ5γμ),(テンソル:σμν(i/2[γμ,γν])) 

による双一次形式(カレント)の縮約積の線形結合に展開して,
 

M =Σi=S,,VA,i[~()Γi()] 

×[~()(1+αiγ5)Γiν(ν)] 

と書き直すと,
 

逆反応の対称性(詳細釣り合いの原理)や実験データとの対照から 

結局,弱い相互作用はVとAのみが関与するという結論に到達し
 

M  (/2)[~()γ μ(1-αγ5)()] 

×[~(~)γ μ (1-γ5)ν(ν~)}
 

なる形になることがわかります。
 

一方,逆β崩壊: p+e+ν~→nも同じ形のS行列要素で記述

されます。
 

fi(e+)=-iΣαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(1)Ψβ() (2)Ψγ(ν)(3)Ψδ() (4) 

×F~αβγδ(1,,,4) 

です。
 

ここで,散乱,崩壊現象で成立することを仮定している 

「詳細釣り合いの原理」は次のことを意味します。
 

すなわち,(始状態)からf(終状態)へのS行列要素:fi 

について,

fi1ifi,fiif=δfi より,fi=-Tif, 

i≠fならSfi=-Sif*  です。
 

つまり,fi(e+)(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

Ψα()(1)Ψβ() (2)Ψγ(ν)(3)Ψδ() (4) 

×F~αβγδ(1,,,4)
 

=-Sif(-) 

(i)Σαβγδ=1 4∫d41..44 

[Ψβ()(2)Ψα() (1)Ψδ()(4)Ψγ(ν) (3)]  

×Fβαδγ(2,1,4,3)
 

ですから,これは,

~αβγδ(1,,,4)=Fβαδγ(2,1,4,3) 

であるべきことを意味します。
 

そこで,運動量空間での表現式を. 

fie+)(-i)(2π)-6{/2/(2ν~)}1/2 

×(2π)δ(+p~+pν~-P)M と書くと,
 

M =Σαβγδ=1 4βαδγβ()pα()

νδ(ν~)eγ()

 
M =Σi=S,,VA,~i [~()Γi()] 

×[ν~(ν~)(1+αiγ5)Γi()] 

=Σi=S,,VA,i [~()Γi()]  

×[~()(1+αiγ5)Γiν~(ν~)]
 

この原理は結局, 

(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()]  

×[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)} 

(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[vν~(ν~μ(1-γ5)ue(e)} 

という意味であるとされます。
  
 
今,想定の反応は,p+e-+ν~→nですが,同じく逆β崩壊

呼ばれる同等な反応:p→ n+e+νでもこれと同じ

行列要素です。

 
ただし,p→ n+e+νでは正エネルギ-の陽電子の放出

(=負エネルギーの電子の吸収),および, 正エネルギ- 

のニュートリノの放出に変わるので,レプトン部分: 

[vν~(ν~μ(1-γ5)ue()}は,少し異なる形の 

 [uν~(νμ(1-γ5)ve(pe+)}になります。
 

 さて,ここまでの準備の下でニュートリノのスピノルは,

その質量がゼロのため特別に扱えるという話をします。
 

 §10.12 2成分ニュートリノの理論 

 (Two-component newtrino Theory)
 

β崩壊:n → p+e+ν~ では右巻きの反ニュートリノ

のみが放出されることを既に見ました。
 

対応して逆過程:p → n+e+νでは左巻きのニュートリノ 

のみが放出されることもわかっています。
 

先に述べたS行列要素: 

fi(-i)(2π)-6{/2/(2ν~)}1/2  

×(2π)δ(-P-p-pν~) 

におけるβ崩壊,および,逆β崩壊のそれぞれの不変振幅: 

M =Σαβγδ=1 4αβγδα()β() 

γ()νδ(ν)

および,  

M =Σαβγδ=1 4βαδγβ()pα() 

νδ(ν~)eγ() において, 


「詳細釣り合いの原理」から,
 

αβγδ(1,2,3,4)=Fβαδγ(2,1,4,3)

が成立し,それ故,結果的に確立された表現では,

β崩壊 については 

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

××[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)}であって,


 レプトン部分の因子:
[u~(eμ(1-γ5)vν(ν~)} 

における,(1-γ5)vν(ν~)がn → p+e+ν~ では, 

左巻きの負エネルギーニュートリノのみの吸収 

(=右巻きの反ニュートリノのみの放出)を示しています。

一方,逆β崩壊:p+e+ν~→nでは,

=(/2)[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[vν~(ν~μ(1-γ5)u()} なので
,

レプトン部分因子は[vν~(ν~μ(1-γ5)u()}  

[vν~(ν~)(1+γ5μ()}であり,右辺における  

ν~(e)(1+γ5)が左巻きの負エネルギーニュートリノ

の放出(=右巻きの正エネルギー反ニュートリノの

吸収)を示します。

 同じ逆β崩壊
の別バージョンp→n+e+νでの

=(G/√2))[u~(μ(1-αγ5)u()] 

×[uν~(νμ(1-γ5)v()}における
 レプトン[部分:[uν~(νμ(1-γ5)v()}
 

[uν~(ν)(1+γ5μ()}のν~(ν)(1+γ5)  

が,p→n+e+νでは,左巻きの正エネルギーニュートリノ  

のみが放出されることを示しています。

 こうして,現実に観測される正エネルギー粒子としては
 

左巻きニュートリノと右巻き反ニュートリノのみであり, 

右巻きニュートリノや左巻き反ニュートリノは。こうした 

β崩壊プロセスや,他のあらゆる弱い相互作用過程に欠如 

していることがわかります。
 

 それ故,それらはニュートリノのような質量が無いDirac 

粒子対するDirac方程式において,不要で余分な自由度が 

あること表わしていると考えられ,今からそうした自由度 

を除去することを試みます。

 

 さて,質量がmの自由粒子の波動関数Ψ()に対する

Dirac方程式,相対論的共変な形では,(iγμμ-m) Ψ=0

ですが,β=γ0, α=βγとして,

i(∂Ψ/∂t)iα∇Ψ-βmΨ=0 とも書けます。

 (※「Dirac方程式の導出」の項では後者を先に求め前者
に書き

えたのでした。


  なお,Dirac方程式の導出項目では.通常のhcやcを陽に書く

単位を使用しましたが,ここでは素粒子論で慣例のhc=c=1

とする自然単位に戻しました。以下,自然単位を使用します。)
 

そして,ガンマ行列の反交換関係:{γμ,γν}2μν

(μ,ν=0,1,2,3).αとβの表現では,β21,{β,αk}0,

{αi,αj}2δij(,,k=1,2,3)となります。
 

しかし,質量mがゼロのニュートリノの波動関数(スピノル):

Ψν()に対する自由Dirac方程式は,

i(∂Ψν/∂t)=-iα∇Ψν  です。
 

そこで,m=0の方程式の左辺には,-βmΨという項が消え

係数行列としてのβを全く含まないので,

 {αi,αj}2δij(,j=1,2,3)を満たす3個の行列:

 α(α1,α2,α3)のみあれば十分です。

  このα(α1,α2,α3)の満たすべき反交換関係は,既に

2×2のPauli行列σ(σ1,σ2,σ3)によって満たされること

がわかっていました。

 
つまり{σi,σj}2δij(,j=1,2,3) です。
 

 そこでαj=σj,(j=1,2,3)と置けば,

 {αi,αj}2δij(,j=1,2,3)なる条件は満たされます。


 
Dirac方程式を導出する過程で係数が4×4行列で

 あること(=スピノルが4成分であること)を強いたの

 は,α(α1,α2,α3)とは独立な第4の係数行列β

 得る必要性があり,そのためには2×2行列では自由度

 が不足するからでした。
 

ところで,i(∂Ψν/∂t)=-iα∇Ψνの正エネルギ-の

自由平面波解はΨν(){(2) (2π)3}-1/2(,)

×exp{i(Et-px)}です。ただし,E=||です。
 

方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψの運動量表示は

EΨ=αpΨであり,4成分スピノル:u(,)

Eu(,)αp(,)を満たします。
 

 しかし,Ψを2成分スピノルと考えると,

 方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψ

 i(∂Ψ/∂t)=-iσ∇Ψとなり.自由平面波解: 

 Ψν(){(2) (2π)3}-1/2(,)exp{i(Et-px)}

 の今の場合,2成分のスピノルu(,)は,

 Eu(,)σp(,)を満たすことになります。
 

そこで,運動方向のpの向きをスピンのz軸(3)の正の向きに

取ると,||=Eにより,σp=Eσ3ですから,

Eu(,)σp(,)は,

σ3(,)=u(,)を意味します。
 

 通常のPauliの表示でこの固有値+1の固有値方程式を満たす 

 規格化された2成分スピノルの解はu(,)[1.0]Tです。
 

 の向きがスピンの3軸の向きのときは,σ3σp/||ですから, 

 この(,)=u(,)[1.0]Tが満たす

 σ3(,)=u(,),

 {σp/||}(,)=+u(,)の,helicityが+1

 右巻きのニュートリノを意味します。
 

 しかし,自然界で観測される正エルギーのニュートリノは 

 σp/||(,)=-u(,)を満たす

 (,)=u(,)[0,1]T 100%左巻きのニュートリノ 

ですから,


 
これは,方程式:i(∂Ψ/∂t)=-iα∇Ψの係数行列α
 

ασではなくα=-σと選択すべきことを意味します。
 

このα=-σとした方程式i(∂Ψ/∂t)iσ∇Ψの正エネルギー 

の解では

Ψν(){(2) (2π)3}-1/2(,)exp{i(Et-px)} 

のu(,)は運動量表示の方程式:Eu(,)=-σp(,) 

を満たします。
 

そこで,pの向きを3軸の向きとする2成分解においては,確かに

(,)は(,)=u(,)[0,1]T で与えられます。
 

長くなったので,ここで一旦終わって続きは次回にします。

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell”Relativistic Qantum Mechanics"

 (McGrawHill)

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2016年2月 1日 (月)

今日は私の誕生日(66歳)

 今日2月1日は私の誕生日です。

 私は昭和25年(1950年)2月1日生まれなので満66歳。。

 正月と同じく,「冥途の旅の一里塚,めでたくもありめでたくもなし」です。

 病気入院を繰り返しながらも,また1年生き延びました。

 昨年の誕生日頃の予想では,この誕生日には,既にこのブログは100万アクセス超えていると思いましたが,ここまで99万4000程度。。来月ですかね。。

 芸能人など有名人のブログでは1日で100万を超えていそうなものもあるし,アダルト関係の記事や画像,動画でも載せていれば,アクセスなんていくらでも増えるでしょうが,それは私の日記ではなくなってしまいます。まあ,商売してるのじゃないので有志だけ来訪してくれればいいですが。。。 

  私はトラ年,五黄ので星座はみずがめ座,血液型はOです。

  初対面の人にはあなたの血液型はB型でしょう?と言われることが多いですが,まだ岡山県の故郷にいて祖母まで健在だった子供の頃,家族7人全員がO型でしたね。。。

 まあ血液型と性格の関係をつづった本も多々あります。一応,ABO型の血液型も遺伝子のタイプの1つですから,丸っきし当てずっぽうというワケではないかもしれないけれど。。。当たるも八卦の占いのようなものでしょう。。

 干支のほうも2月1日というのは微妙で旧暦の立春,節分,旧正月より前なので旧暦だと寅(トラ)ではなく丑(ウシ)年です。。

 私は勝手にエトは丑寅(ウシトラ)であり,,ときには鬼(オニ)年であると称しています。(昔からトラ皮パンツにウシの角でウシトラは鬼,ウシトラの方角(北東)は鬼門(キモン)と言われ,ウシの時からトラの時に変わる直前のウシミツどき(丑満ツ時)は,丁度真夜中で,.鬼や魔物,化ケモノでも出そうな,昔の月の出ていないときは闇夜の不気味な時刻でした。。。)

こんな干支のヤツなんてロクなもんじゃないネ。。

 そういえば,私のまわりには,お面をカブらなくても節分の鬼がやれるような人もイッパイいますが。。。。

(※↓下図はYahoo知恵袋の「干支で表わす時刻・方角、恵方の決め方など」のホームページから無断借用しました。※)

     季節・時刻・干支・方角の対応

 毎年書いてるけど,,取りあえず,誕生日恒例の,

 誰も歌ってくれないので「Happy Birthday To Me!!」 を歌って自己満足で誕生祝いでもしますか。。。。

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