弱い相互作用の旧理論(11)(Fermi理論)
「弱い相互作用の旧理論」μ粒子の崩壊の続きです。
前回最後で示したように,
μ-の崩壊で全ての粒子が非偏極の場合の崩壊率の分布は.
dω=(1/2)(2π)-5(2EP)-1
∫d3p(2Ep)-1d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)
×(|G~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
×Tr[(p+me)γμ(1-γ5)k~γν(1-γ5)] ですが,
これの,
∫d3p(2Ep)-1d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)
より右の因子を計算すると,
(|G~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
×Tr[(p+me)γμ(1-γ5)k~γν(1-γ5)]
=32|G~|2(1+|λ|2)[(Pk~)(kp)+(kk~)(Pp)]
+|G~|2(λ+λ*)Tr(kγμPγνγ5)Tr(pγμk~γνγ5)
となります。
今日は,まず,この式を証明する私の(注釈)から始めます。
※(注11.1):上の最後の式で,(|G~|2/2)を除く上記トレースは,
Tr[γ μ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
=Tr(γμPγνk)+|λ|2Tr(γμγ5Pγνγ5k)
-λTr(γμγ5Pγνk)-λ*Tr(γμPγνγ5k)
=(1+|λ|2)Tr(γμPγνk)+(λ+λ*)
×Tr(kγμPγνγ5) です。
そして,Tr(γμPγνk)
=4{Pμkν+Pνkμ-gμν(Pk)} です。
一方,Tr[(p+me)γμ(1-γ5)(k~γν(1-γ5)]
=2Tr(pγμk~γν)+2Tr(pγμk~γνγ5)であり,
Tr(pγμk~γν)=4{pμk~ν+pνk~μ-gμν(pk~)}
です。
故に,Tr[γ μ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
×Tr[(p+me)γμ(1-γ5)(k~γν(1-γ5)]
=32(1+|λ|2){2(Pp)(kk~)+2(Pk~)(kp)}
+2(λ+λ*)Tr(kγ μPγνγ5k)Tr(pγμk~γνγ5)
=64(1+|λ|2){(Pp)(kk~)+(Pk~)(kp)}
+2(λ+λ*)Tr(kγ μPγνγ5k)Tr(pγμk~γνγ5)
それ故,
(|G~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
×Tr[(p+me)γμ(1-γ5)k~γν(1-γ5)]
=32|G~|2(1+|λ|2){(Pp)(kk~)+(Pk~)(kp)}
+|G~|2(λ+λ*)Tr(kγ μPγνγ5k)
×Tr(pγμk~γνγ5)
が得られます。
(注11.1終わり)※
次に,まだ手を付けてないトレース項:
Tr(kγμPγνγ5)Tr(pγμk~γνγ 5)を評価します。
まず,これはkとP,およびk~とpについて,それぞれ,
交換反対称です。
そして,4元運動量P,p,k,k~のどれについても線型で
γ5因子を偶数個含み,μ,νについて縮約するのでLorentz
スカラーです。
4元運動量:P,p,k,k~から構成可能な,こうしたどれに
ついても線型なLorentzスカラーの一般形を書き下すと,
a(kk~)(Pp)+b(kP)(k~p)+c(kp)(k~P)
です。
これが,さらにkとP,および,k~とpについて,それぞれ
交換反対称という条件は,
a(Pk~)(kp)+b(PP)(k~p)+c(Pp)(k~P)
=-a(kk~)(Pp)-b(kP)(k~p)-c(kp)(Pk~)
=a(kp)(Pk~)+b(kP)(k~k~)+c(kk~)(Pp)
です。
これが恒等式であるという条件より,b=0,c=-a
を得ます。
したがって,
Tr(kγμPγνγ5)Tr(pγμk~γνγ 5)
=a{(kk~)(Pp)-(kp)(Pk~)}
と書けるはずです。
係数aを求めるために,具体的にPμ=pμ=(1,0,0,0)T,
kμ=k~μ=(0,1,0,0)を代入すると.まず右辺=-aです。
一方,Tr(kγμPγνγ5)=Tr(γ1γμγ0γνγ5),
かつ,Tr(pγμk~γνγ 5)=Tr(γ0γμγ1γνγ5)ですが,
この積でμ,νについて和を取ると,μ=2,ν=3と
μ=3,ν=2以外はゼロで寄与しません。
そして,γ5=iγ0γ1γ2γ3=-iγ0γ1γ2γ3より,
μ=2,ν=3のγ0γ2γ1γ3γ5=-i(γ5)2=-i,
γ1γ2γ0γ3γ5=i(γ5)2=i です。
また,μ=3,ν=2のγ0γ3γ1γ2γ5=i(γ5)2=-i,
γ1γ3γ0γ2γ5=i(γ5)2=iです。
故に,Tr(γ1γ2γ0γ3γ5)=-Tr(γ0γ2γ1γ3γ5)=4i.
Tr(γ1γ3γ0γ2γ5)=-Tr(γ0γ3γ1γ2γ5)=4iです。
結局,Tr(pγμk~γνγ 5)Tr(γ0γμγ1γνγ5)
=32=-aなので,a=-32 を得ます。
つまり,Tr(kγμPγνγ5)Tr(pγμk~γνγ5)
=32{(kp)(Pk~)-(kk~)(Pp)} です。
故に,(|G~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(P+mμ)γν(1-λ*γ5)k]
×Tr[(p+me)γμ(1-γ5)k~γν(1-γ5)]
=32|G~|2(1+|λ|2){kp)(Pk~)+(kk~)(Pp)}
+32|G~|2(λ+λ*){kp)(Pk~)-(kk~)(Pp)}
=32|G~|2{|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)}
です。
よって,崩壊率の式は,
dω=(1/2)(2π)-5(2EP)-1
∫d3p(2Ep)-1d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)
×32|G~|2{|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)}
となります。
さらに進むためには,一般には観測にかからない
ニュートリノの変数kとk~にわた積分:∫d3kd3k~
を実行する必要があります。
{|1-λ|2(Pp)(kk~)+|1+λ|2(Pk~)(kp)}はkとk~
について線型ですから,次の形の積分Iαβ(Q)を計算できれば
積分:∫d3kd3kの実行結果が評価できるはずです。
すなわち,Iαβ(Q)
≡:∫d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1kαk~βδ4(Q-k-k~),
;ただし,Q=P-pです。
そして,このIαβ(Q)は2階のLorentzテンソルとして
変換します。
※(注11.2):何故なら,それぞれの積分の寄与はスカラーです。
すなわち,∫d3k(2Ek)-1=∫d3k~∫0∞dk0δ(kμkμ)
=∫d4kθ(k0)δ(k2)です。
同様に,∫d3k~(2Ek~)-1=∫d4k~θ(k~0)δ(k~2)
ですから, ∫d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1は確かに
Lorentzスカラー です。 (注11.2)終わり)※
この積分:Iαβ(Q)は,2つのニュートリノの慣性中心系:
k+k~=0,つまり,Q=P-p=0 の系で最も良く評価
できます。
このとき,Qは純粋に時間的(time-like)です。
つまり,Q2=Q02-Q2=Q02≧0
です。
そこで,ニュートリノの慣性中心系では,簡単な計算の後に
次式を得ます。
すなわち,この系でのIαβ(Q)をI(0)αβ(Q)と書けば,
I(0)αβ(Q)=(π/24)Q02(gαβ+2gα0gβ0)です。
※(注11.3):I(0)αβ(Q)
=(1/4)∫d3kd3k~(EkEk~)-1kαk~βδ4(Q-k-k~)k~=-k
=(1/4)∫dEkdΩk(Ek/Ek~)-1kαk~βδ(Q0-Ek-Ek~)k~=-k
=(1/4)∫dEkdΩk(Ek/Ek~)-1kαk~βδ(Q0-2Ek)です。
これは,α=i,β=j(i,j=1,2,3)なら,I(0)αβ(Q)
=I(0)ij(Q)=(1/4)∫dEkdΩk(Ek/Ek~)-1kik~j
δ4(Q0-2Ek) ですが,i≠jなら被積分関数はki,
またはkjの奇関数なので∫dΩkによって,I(0)ij(Q)
は消えます。
これは,α=0,β=j,α=I,β=0 のケースでもそうです。
他方,α=i,β=jで,かつi=kなら質量ゼロのニュートリ
では,Ek2=k2であり,
k-Ek(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ)なので,
(I(0)11(Q),I(0)22(Q),I(0)33(Q))
=(1/4)∫∫dEkdΩk(Ek/Ek~)-1((k1)2,(k2)2,(k3)2)
δ(Q0-2Ek)
=(1/2)(Q0/2)2∫-11d(cosθ)∫02πdφ(sin2θcos2φ,sin2θsin2φ,cos2θ)=(1/2)(Q0/2)2
(4π/3,4π/3,4π/3)ですから,
I(0)αβ(Q)=I(0)ii(Q)
=(-1/4)∫dEkdΩkkikjδ(Q0-2Ek)
=-(π/24)Q02です。
一方,α=β=0 ならkαkβ=Ek2より
∫dEkEk2δ(Q0-2Ek)=(1/2)(Q0/2)2ですが,
∫dΩk=4πよりI(0)αβ(Q)=I(0)00(Q)
=(1/4)∫dEkdΩkEk2δ(Q0-2Ek)
=(π/8)Q02 を得ます。
したがって,I(0)αβ(Q)=(π/24)Q02(gαβ+2gα0gβ0)
が成立しています。(注11.3終わり)※
そして,Iαβ(Q)は2階のLorentzテンソルであることが
わかっているので,ニュートリノの慣性中心系でなく任意
のLorentz系では,Iαβ(Q)=(π/24)(gαβQ2+2QαQβ)
となります。
※'(注11.4):以下,上式の証明です。
ニュートリノの慣性中心系でQ=Q(0)を与える時空座標系
をx-座標系,一般のQを与える任意座標系をx~系として,
この座標系の変換をx~μ=aμνxνとするとき,
これがLorentz変換であるための条件は,
恒等的に,gμνx~μx~ν=gμνaμλaνσxλxσ
=gλσxλxσ,が成立すること: つまり,
gμνaμλaνσ=gλσ が成立することです。
それ故,添字の上げ下げ(共変⇔反変)の規則から,
aλμaσνgμν=gλσが成立します。
そして,Qμ=aμνQ(0)νであり,Q(0)μ=(Q0,0.0.0)
=gμ0Q0 ですから,Qμ=aμ0Q0です。
また,Q2=QμQμ=Q02です。
したがって,2階テンソルの変換性から,
Iαβ(Q)=aαμaβνI(0)μν
=(π/24)aαμaβνQ02(gμν+2gμ0gν0)
=(π/24)Q02(aαμaβμ+2aα0aβ0)
=(π/24)(gαβQ2+2QαQβ)を得ます。 (注11.4終わり)※
さて,
Iαβ(Q)≡d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1kαkβ
δ4(P-p-k-k~)=(π/24))(gαβQ2+2QαQβ)
;Q=P-p ですから,
dω=(1/2)(2π)-5(2EP)-1
∫d3p(2Ep)-1d3k(2Ek)-1d3k~(2Ek~)-1δ4(P-p-k-k~)
×{6|1-λ|2(Pp)Q2+|1+λ|2{(Pp)Q2+2(PQ)(Qp)}
ですが,
まず,Q2=(P-p)2=mμ2+me2-2(Pp) です。
また,PQ=P(P-p)=mμ2-(Pp),
Qp=p(P-p)=(Pp)-me2,なので,
(PQ)(Qp)={mμ2-(Pp)}{(Pp)-me2}
=(mμ2+me2)(Pp)-mμ2me2-(Pp)2です。
Ep2=p2+me2,より, EpdEp=|p|d|p|であり,
d3p=|p|2d|p|dΩp=|p|EpdEpdΩpです。
したがって,dω={|G~|/(192π4)|p|dEpdΩp
(6|1-λ|2(Pp)|{1+(mμ/me)2-2(Pp)}
+|1+λ|2[3{(mμ2+me2)(Pp)-2mμ2me2-4(Pp)2}|)
です。
ところが,p=(Ep,p)なのでμ粒子の静止系:P=(mμ,0)
を考えると,Pp=EPEp-Pp=mμEpです。
そこで,dω={|G~|2mμEp/(192π3EP)}|p|dEpdΩp
=(6|1-λ|2{1+(mμ/me)2-2(Ep/mμ)}
+|1+λ|2[{3+3(mμ/me)2-2me2-4(Ep/mμ)|
ですが,EP=mμであり,
また.me<<mμなのでme2に比例する項を無視する近似
をすると,|p|~Epであり,電子の立体角での積分:∫dΩp
を実行すれば,
dω/dEp~{|G~|2mμ2Ep2/(48π3)}
[6|1-λ|2{1-2(Ep/mμ)}+|1+λ|2[{3-4(Ep/mμ)|]
を得ます。
この段階で,このエネルギー分布予測を観測と比較すると,
観測は良い精度でλ=+1を支持しています。
これはν'で表わされるニュートリノも左巻きであること
を示すものです。(※これは言いかえると,ν'の質量も
ゼロであることを意味します。※)
そこで,λ=+1であるとして,これを代入すると,
dω/dEp~{|G~|2mμ2Ep2/(12π3)}{3-4(Ep/mμ)}
ですから,
0≦Ep≦mμの」範囲で∫dEpを実行すると.
結局,μ粒子の崩壊率として,ω=|G~|2mμ5/(192π3)
が得られます。
μの平均寿命をτμとするとω-1/τμですから
τμ=192π3/(|G~|2mμ5)です。
※(注11.5):μ粒子静止系でのエネルギー・運動量保存則:
EP=mμ=Ep+Ek+Ek~,P=0=p+k+k~より,
(k+k~)=p2, すなわち,Ek2+Ek~2+2EkEk~cosθ
=Ep2-me2です。
これに,Ep=mμ-Ek-Ek~を代入してEpを消去します。
Ek2+Ek~2+2EkEk~cosθ=(mμ-Ek-Ek~)2-me2,
つまり,mμ2-2mμ(Ek+Ek~)
=2EkEk~(cosθ-1)+me2 を得ます。
ところが,既にdωの評価の際,me<<mμゆえ,me2に
比例する項を無視する近似を実施しましたが,ここでも,
me2 ~ 0という近似を行なうと,右辺=2EkEk~(cosθ-1)≦0
です。
これは,mμ{mμ-2(Ek+Ek~)}≦0 より,
(Ek+Ek~)≦mμ/2を意味するので,
Ep=mμ-(Ek+Ek~)≦mμ/2 です。
そこで∫dEpの積分範囲は0≦Ep≦mμ/2であり,
ω=∫0mμ/2(dω/dEp)dEp
=|G~|2mμ2/(12π3)∫0mμ/2dEp [Ep2(3-4Ep/mμ)]
=|G~|2mμ2/(12π3){(mμ/2)3-(mμ/2)4/mμ}
結局,ω=|G~|2mμ5/(192π3) が得られます。
(注11.5終わり)※
さて.μの崩壊の平均寿命の信頼できる観測値は,
τμ=(2.21±0.003)×10-6secです。
これを,上に求めた表式:ω=1/τμ=|G~|2mμ5/(192π3)
と比較対照して,|G~|はCVを中性子nのβ崩壊のベクトル
結合定数としてG=√2CVとした中性子のβ崩壊の結合定数
Gと2%以内の誤差で等しいことがわかります。
こうしたことからFermi粒子の弱いβ崩壊結合における
普遍性が強く示唆されるため,ここでμ崩壊に対して仮定
した相互作用の形の妥当性へのさらなる支持が得られたと
考えられます。
※(注11.6):まず,中性子nのβ崩壊における弱い相互作用
のHamiltonian密度をHとし,単位の無い係数を除いて,
H=GΨp~ΨnΨe~Ψν,G=√2CVと書き,両辺の
単位(次元)を等置します。(次元解析です。)
物理量Aの次元を[A]と書くことにすれば,[H]は
エネルギー密度の次元なので,[H]=ML2T-2×L-3
=ML-1T-2です。
また,ΨP~,Ψn,Ψe~,Ψνは全て2乗すると単位がL-3の確率
密度を示すため,各々の次元はL-3/2です。
故に,[ΨP~ΨnΨe~Ψν]=L-6ですから,
H=GΨP~ΨnΨe~Ψνは,ML-1T-2=[G]L6を意味します。
故に,Gの単位は,[G]=ML5T-2です。
以前の記事:「弱い相互作用の旧理論(6)」において中性子n
のβ崩壊の観測から崩壊反応は,VとAのみのFermi遷移であり,
結合定数Gは,G=√2CV=(1.015±0.03)×10-5×(1/Mp2),
および,CA=(1.21±0.03)CV=αCV で与えられるという
結果を得ることを見ました。
今までの議論はPlanck定数をh,hc=h/(2π),cを光速と
して,hc=c=1とする自然単位での話としてきました。
[G]=ML5T-2,[hc]=ML2T-1,c~3.0×108(m/sec)より,
[c]=LT-1ですから,Gの評価式:
G=(1.015±0.03)×10-5×(1/Mp2)において,この中
の陽子の質量Mpをエネルギーの単位:ML2T-2を持つ
Mpc2 ~ 940MeVで置換えて.通常の単位での
G=(1.015±0.03)×10-5×(Mpc2)-2hcαcβに換算
する ことを考えます。
次元解析(両辺の単位を等置する)を行なうと,
ML5T-2=(ML2T-2)-2(ML2T-1)α(LT-1)βから
1=-2+α,5=-4+2α-β,-2=4-2α-βより,
α=β=3です。
それ故,G=(1.015±0.03)×10-5×(940MeV)-2hc3c3です。
一方,μの崩壊率は,ω=1/τμ=|G~|2mμ5/(192π3)ですが
G~は実数で,|G~|=G~であるとすると,
ω=1/τμ=G~2mμ5/(192π3)です。
ここで,さらにμ崩壊の結合定数G~も上のβ崩壊の
結合定数Gに等しいと仮定すると, ω=1/τμ=G2mμ5/(192π3)です。
自然単位でなく通常の単位では,
ω=G2(mμc2)5hcρcσ/(192π3)であると仮定し,
[ω]=T-1,[G]=ML5T-2,[hc]=ML2T-1,
[c]=LT-1,[mμc2]=ML2T-2を用いて次元解析
を行なうと,
T-1=(ML5T-2)2(ML2T-2)5(ML2T-1)ρ(LT-1)σ
なので,0=2+5+ρ,0=10+10+2ρ+σ,
-1=-4-10-ρ-σより,ρ=-7,σ=-6
を得ます。
故に,ω=G2(mμc2)5hc-7c-6/(192π3)が得られます。
G=(1.015±0.03)×10-5×(940MeV)-2hc3c3
から誤差:±0.03を省いて
G2=1.0152×10-10×(940MeV)-4hc6c6
および,mμc2=106MeVを代入すれば,
ω=1.0152×10-10×(940MeV)-4(106MeV)5hc-1/(192π3)
=2.97×10-16MeV/hc となります。
ところが,MeV単位ではhc=6.6×10-22(MeV・sec)
なので,結局,μ粒子の崩壊率は,
ω=(2.97×10-16/6.6)sec-1で,μの平均寿命は.
τμ=1/ω=2.22×10-6secであるという予測
計算値が得られました。
他方,μの平均寿命の観測値は,
τμ=(2.21±0.003)×10-6secですから,上記の予測値と
ほぼ一致しています。
これで,G~=Gの仮定が非常に良い精度で成立すると
結論されます。 (注11.6終わり)※
今日はここで終わります。
次回はπ中間子の崩壊を論じる予定です。
(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell
"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)
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