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2016年3月30日 (水)

弱い相互作用の旧理論(13)(Fermi理論)

「弱い相互作用の旧理論(12)」からの続き:π中間子 

の崩壊の続きです

 最近は時間が残り少ないこともあり,つい一遍に長い記事を

アップしようとしてしまいます。


 以前は,WordでA4の6頁くらいの記事までにしていました。

それ以上になるとココログフリーが受け付けず,エラーに

っていたからです。


  どうしても原稿が大きいときは,仕方なく分割して

 いましたが,最近は10頁超えても大丈夫になったよう

 です。

 まあ,時代の流れでしょうか?ドメインも昔より大きいサイズ

 普通になったのかも知れません。

 この記事もつい11ページくらいになりました。

 時間が少ないというのは私の残りの寿命のことですが,

決闘前夜の天才ガロアでもあるまいに。。凡人のくせに。。


 さて,前回最後では,π崩壊の崩壊率ωが
 

ω=1/τ={2||2/(8π)}μ3(/μ)2(1-m2/μ2)2 

,与えられることを見ました。(τは崩壊の寿命)


 これはm=meを代入すれば,
π-→e-+ν~の崩壊率:

ωe=1/τeを,m=mμを代入すれば,π-→μ-+ν'~

の崩壊率:ωμ=1/τμを与えます。
 

一方,これらの現象で観測されているπの寿命は, 

τ=(2.55±0.03)×108secです。
 

ωμ>>ωeであり,τμ<<τですから,πの寿命の観測値 

は崩壊:π→μ+ν’~によるそれ=τμを反映したもの

と考えられます。
 

そこで,ωμの予測値: 

ωμ1/τμ{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

を観測値のω=1/τ ~ 1/{(2.55±0.03)×108sec}に等しい 

と置くことから,||の値を決めることができます。
 

計算を実行した結果,|| 0.93μと評価されました。
 

(13-1):上記のように,τμ(2.55±0.03)×108sec 

から|| 0.93μの評価値を得る計算内容を示します。
 

まず,1/τμ{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

の両辺の単位が合致するように単位(次元)を調節します。
 

1/τμの右辺は,c=c=1(c=h/2π;hはPlanck定数) 

とする自然単位の評価式であり,この表現ではhcもcも単に 

1に過ぎないので両辺にこれらhcやcをいくつ掛けても式 

としての意味は同じです。
 

それら,右辺に(crs)を乗じた無数の同値な式を, 

1/τμ(cs)}{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

と書きます。
 

これらの中から,右辺を通常の単位に換算して単位が左辺 

 の(1/τμ)の単位(=T-1)に一致する場合が通常の単位での 

正しい等式であり,それを探すのを次元解析と呼ぶのでした。
 

そこで,単位のみを問題とする次元解析の等式は, 

-1[Ga]23[cs]と書けます。


 (※[A]は物理量Aの単位です。)


 この次元解析の等式を
解析する際には,[c]=ML2-1,

[]=LT-1,および,{Ga}を代入する必要があります

,今のところ,単位:[Ga]が全く不明です。
 

この不明な単位を,崩壊振幅の因子の運動量表示での形から 

求めます。
 

π崩壊の運動量表示の頂点での相互作用の振幅は,

(Ga/√2)[Pμμ~(p)γμ(1-γ5)vν'(pν'~)] 

で与えられることを見ましたが,

  
これは,座標表示
 では,Hamiltonian密度をとするとき,

係数を除き,=(Ga/√2)∂μφπΨμμ(1-γ5ν~

であることを意味します。
 

単位の等式では,単位のない係数は無関係であり, 

[]=[Ga][∂μφπ][Ψμμ(1-γ5ν~]

ですが,単位が既知のものについては具体的な単位

代入します。


  
まず,左辺のはエネルギー密度なので,

[][エネルギー]-3  です。

ただし,[エネルギー]=M[加速度]L=ML2-2 です。
 

次に,スピノル Ψについては,Ψ~ΨがFermi粒子の確率密度 

を与えるため,[Ψ~Ψ]L-3ですが,Ψμ~γμ(1-γ5)Ψν'

Ψ~Ψと同じ単位と考えられるので,[Ψμ~γμ(1-γ5)Ψν']

L-3 です。
 

また,c=c=1の単位では,φπのような質量mのスカラー 

粒子の状態関数φについて,相互作用のないLagrangian密度

は.φ=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ2) ですが,

左辺のφの単位は,と同じで,[φ]=[エネルギー]-3

なので,[μφπ][エネルギー]1/2-3/2 であることが

わかります。
 

故に, [][Ga][μφπ][Ψμ~γμ(1-γ5)Ψν']は,

[エネルギー] L-3=[Ga][エネルギー]1/2-3/2-3

となるため,Gaの単位として,

[Ga][エネルギー]1/23/2 が得られます。

 [エネルギー]=ML2-2 を用いるなら,

 [Ga]1/2LT-1 です

したがって,-1[Ga]23[cs]=ML5-2[c]

より.[c]-4-5T を得ます。
 

これと,[c]=ML2-1,[]=LT-1 より, 

 -4=r,52r+s,1=-r-s ですから,

 結局,r=-4,s=3 を得ます。
 

つまり,通常の単位なら, 

1/τμc-43{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2×(1-mμ2/μ2)2 

というのが正しい等式です。
 

ここで,πの質量μを単位として,||≡αμと置くと, 

自然単位では,1/τμ{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

から,1/τμ{2α2/(8π)}μ5(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2であり
 

通常単位では, 

1/τμc-43{2α2/(8π)}μ5(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

です。
 

τμ{(8π)/(2α2)}(c4/c3)μ-5(μ/μ)2{μ2/(μ2-mμ2)}2 

2α2(1/τμ)(8πc47)(μc2) -5(μ/μ)2{μ2/(μ2-mμ2)}2 

です。
 

右辺に,τμ2.55×108sec,μc2 140Me,μ2106MeV,

そして,c3×1010cm/sec,c6.6×1016eVsec, MeV106eV

を代入して計算する,結局,


   G2α2 7.135×10-19cm7sec-4eV-1


   を得ます。

 

 よって,Gα 8.447×10-9(cm7sec-4eV-1)1/2

 です。
 

 ところで,以前のμ粒子の崩壊寿命を計算した際の考察では

  [G]=ML5-2であり,G ~ 8.88×10-38 (eVcm3)でした。

 

 Gα 8.447×10-9(cm7sec-4eV-1)1/2を上のGで割って 

 α  ~ 9.503×1027(cm1/2sec-2eV-3/2) が得られます。

 これによると,[α]=L1/2-2(ML2-2)-3/2=M-3/2-5/2

であり,[Gα]=M1/25/2-1 です。


 実はこのαにも(c)の因子が陰伏していて,真のα

は, 無次元(単位なし)のただの数であって,Gαの単位は

Gと同じであるとすると,

c6.6×1016(eVsec),c3×1010(cm/sec)により,

α  ~ 9.503×1027(cm1/2sec-2eV-3/2)c3/2-1/2 です。

計算して,0.93に近い値のα ~ 0.927 が得られました。


 この単位選択では,|a|=αμ ~ 0.927μ
,(μ~140MeV)

あり,aはμ,またはμc2と同じく,質量M,または

エネルギーの単位です。
 

つまり,端的に言えば,最初から||0.927μとして, 

1/τμ=(c){0.92722/(8π)}μ5(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2 

と書いて,右辺の単位がT-1となるようにp,qを決めれば 

τμ  2.55×108sec が得られるわけです。 


  (13.1終わり)

 

さて,あらゆるレプトンを含む崩壊においては,普遍的,

V-A結合:[u~(p)γμ(1-γ5)v(k~)]が寄与する

いう仮定によって,π中間子の崩壊からμ粒子の偏極が

決まります。
 

これは,崩壊の連鎖:π-→ μ-+ν'~→ e-+ν~+ν'~

おけるμのスピン方向と崩壊電子のスピン方向を

互いに関連付ける,μ崩壊スペクトルにおける非対称(ひずみ)

パラメータのユニークな予測に導きます。
 

 これを見るため,まず,与えられた立体角要素に出現する

μ粒子の偏極を計算し,それから,これらのμ粒子からの崩壊

電子のスペクトルを計算します。
 

 π崩壊におけるμ粒子の偏極を計算するために,S行列要素: 

fi(π)(-i)(2π)-9/2{μ/(4k~)}1/2(Ga/2)

μu~(p)γμ(1-γ5)v(k~)] (2π)4δ4(P-p-k~) 

に戻り,与えられたμのスピン偏極sの状態への微分崩壊率 

を計算します。
 

終状態のν'~のスピンs~では総和し.始状態のπのスピン 

Sでは相和して平均しますが,終状態のμのスピンsは固定

なので.崩壊率を求める際には, (1/2)ΣS,sk~|fi(π)|2に,

状態密度や,位相体積V,そして反応時間Tを掛けます。
 

すなわち,

dω=(1/2)ΣS,sk~|Sfi(π)|223~3(VT)-1

です。

  これに,(VT)1V=[(2π)4δ4(0)]1,V=(2π)3

を代入すると,

dω=(1/2){(2π)3/(2π)5}(2)-1(2||2/2) 

3~3{μ/(2k~)}δ4(P-p-k~) 

ΣS,sk~|μ~(,)γμ(1-γ5)(~,k~)|2 

 ={1/(4π2)}(2
)-1(2||2μ/2)
 

3~(2k~)-13(2) -1δ4(P-p-k~) 

ΣS,sk~|μ~(,)γμ(1-γ5)(~,k~)|2 

です。

  スピン射影演算子:Σ()(1+γ5)/2 は,
 

 Σ()(,)=u(,),Σ()(,-s)0

 を満たす演算子です。これを用います。 

 
   μΣS,s~|μ~(,)γμ(1-γ5)(~,k~)|2

μ(Pμν)ΣS,sk~[{u~(,)γμ(1-γ5)(~,k~)}

×{~(k~,sk~)γν(1-γ5)u(p,)}]

(μν)(mμ/2)

ΣS,sk~[{u~(,)(1+γ5)γμ(1-γ5)(~,k~)}

×{~(k~,sk~)γν(1-γ5)u(p,)}]

(1/4)(μν)

Tr[(μ)(1+γ5μ(1-γ5)ν(1-γ5)]

(1/2)(μν)

×Tr[(μ)(1+γ5μ(1-γ5)ν]

=(1/2)Tr[(μ)(1+γ5)(1-γ5)~]

です。

したがって,

dω={1/(8π2)}(2)-1(2||2/2) 

3~(2k~)-13(2) -1δ(P-p-k~)

×Tr[(μ)(1+γ5)(1-γ5)~] 

となります。
 

 故に,dω={G2||2/(8π2)}(μ/)μ3(μ/μ)2 

∫d3(2) -1δ((P-p)2)

×[(1/2)(1-μ2/μ2)μ(sp)/μ2] を得ます。
 

(13-2): 3~(2k~)-1δ(P-p-k~) 

=∫d4~θ(k~~)δ(~2)δ(P-p-k~) 

=θ(P-Ep)δ((P-p)2) です。

 そして,Tr[(μ)(1+γ5)(1-γ5)~] 

 Tr[(μ)(1-γ5)~]

Tr[γ5(μ)(1-γ5)~]  

4{2(pP)(~)(kp)2} 

μ{Tr(~])-Tr5~)} 

4{2(pP)(~)(kp)2}

-mμ{2(s)(~)(sk~)2} (k~=P-p-k)
}

4[μ2{(pP)μ2}2(pP)2

μ2(sP)2(sP)(pP)}] ですが,
 

(P-p)2=k~20より,22(pP)+p20, 

そして,2=μ2,2=mμ2 なので,

(pP)(μ2+mμ2)/2 です。
 

  故に,μ2{(pP)μ2}2(pP)2(μ2μ2-mμ4)/2 

μ2μ2(1-mμ2/μ2)/2 であり,

-mμ{μ2(sP)2(sP)(pP)}

=-μ(sP){μ22(pP)} 

 =μ3(sP)です。


 以上から.Tr[(μ)(1+γ5)(1-γ5)~] 

4μ2μ2{(1/2)(1-mμ2/μ2)+mμ(sP)/μ2} 
 です。    


 (
13-2終わり)

 

この崩壊率:dω=|G2||2/(2)}(μ/)μ3(μ/μ)2 

∫d3(2) -1δ((P-p)2)

×{(1/2)(1-mμ2/μ2)+mμ(sP)/μ2}

,μ粒子の正のhelicity(右巻き:s=s)で最大です。

このとき,sP=sP={(1/2)(μ2/mμ)(1-mμ2/μ2)

です。
 

(13-3) sP=s0PsPですが,一方,既に以前の

記事.4元運動量pを持つDirac粒子のスピン4元ベクトル

μ満たすべき条件を与えました。


 それによると,sp=s0psp=0 なので,

0sp/Epsβμであり,2(0)2-s2=-1なので

μ粒子の場合,||=(1-βμ2)1/2=Ep/mμです。

 

 ただし,c=1の自然単位では,βμμ/c=μで,

βμ||/p です。

 故に,sP=(βμ)と書けますが,この

(sP)は,初期の崩壊前のπの運動量:が決まっている

とき,明らかに,放出されたμのスピンsの向きが,その

μ自身の運動量βμの向きに一致するとき,最大

なります。
 

 πの静止系では,0で,E=μなので, 

sP=(βμ)sβμμですから,

の向きがβμの向きに一致するとき,このとき

sはhelicityが+1のs=sを意味しますが,

sP=sP=βμμ=|||βμ|μ 

(p/μ)(||/p)μ=||μ/μ 

を得ます。
 

前記事の最後で記述したように,|||~|=E~

=μ-Ep,かつ,p(2+mμ2)1/2より,

||(μ2-mμ2)/(2μ)なので. 

P=||μ/μ(μ2-mμ2)/(2μ)

 {(1/2)(μ2/mμ)(1-mμ2/μ2)と変形できます。

(注13-3終わり)※
 

次に,与えられたスピンsを持つμ粒子が,μ- →e-+ν~+ν'~ 

 と崩壊する崩壊率を得るために.「弱い相互作用の旧理論(10) 

のμ粒子の崩壊の項を参照すると,
 

μ,,ν',ν~の4元運動量:μ,,ν',ν~

をP,p,k,k~に, それに伴なってμ,,ν',Eμ~

を,P,,k,k~と書き,さらにμとeの規格化定数: 

(mμ/EP)1/2,(me/Ep)1/2をそれぞれ,{1/(2EP)}1/2,  

{1/(2Ep)}1/2に置換して整理したμ崩壊のS行列要素は,
 

fi(-i)(2π)-6[1/{(2EP)(2Ep)(2E)(2Ek~)}]1/2  

×(2π)4δ4(P-p-k-k~)~;および,
 

~(~/2)(4mμe)1/2[uν'~(k)γμ(1-λγ5)uμ(P)] 

×[ue~(p)γμ(1-γ5)vν~(k~)] で与えられるのでした。


  このS行列要素から,粒子が非偏極のとき,μの崩壊率は,
 

dω=(1/2)(2π)-5{1/(2P)}∫d3(2p) -1

3(2k) -13~(2p) -1δ4(P-p-k-k~)Σspins|~|2, 


 および,
 Σspins|~|2

=(|G~|2/2)(4mμe) 

Σspins |[uν'~(k)γμ(1-λγ5)uμ(P)] 

×[ue~(p)γμ(1-γ5)vν~(k~)]|2

 =(|G~|
2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)] 

 ×Tr[(+me)γμ(1-γ5)ν(1-γ5)]
  
 で与えられます。


  これに,μ崩壊の測定結果から得られた値:λ=+1

を代入します。
 

 π崩壊での終状態のμが偏極していて,そのスピンs

持って継続してμが崩壊する際の始状態の μのスピンを

に固定するため,スピ射影演算子:Σ(s)=(1+γ5)/2を挿入して,

Σspins|~|2=(|G~|2/2)

(1/2)Tr[γμ(1-γ5)(1+γ5)(+mμ)γν(1γ5)] 

 ×Tr[(+me)γμ(1-γ5)ν(1-γ5)](|G~|2/2)

としたもの を計算する必要があります。


 以前の非偏極のケースのトレース計算では,

(|G~|2/2)Tr[γμ(1-λγ5)(+mμ)γν(1-λγ5)] 

 ×Tr[(+me)γμ(1-γ5)ν(1-γ5)]

=32|G~|2{|1-λ|2(kk~)(Pp)+|1+λ|2(kp)(k~P)}

でした。

 これに,λ=+1を代入すると,

(|G~|2/2)Tr[γμ(1-γ5)(+mμ)γν(1-γ5)] 

×Tr[(+me)γμ(1-γ5)ν(1-γ5)]

=128(|G~|2(kp)(k~P) です。

 
  一方,今回の計算は,

Σspins|~|2=(|G~|2/4)

Tr[γμ(1-γ5)(1+γ5)(+mμ)γν(1γ5)] 

 ×Tr[(+me)γμ(1-γ5)ν(1-γ5)] ですが,

これの,Tr[γμ(1-γ5)(1+γ5)(+mμ)γν(1γ5)]

因子のsを含む項としてはμを含むものだけが寄与します。


 結局,複雑な計算プロセスを省略して結果だけ書くと,

この後者の偏極時のトレース計算では,

Σspins|~|2=64|G~|2(kp){k~(P-μs)}

となります。

 ただし,ここでのΣspinsは,射影演算子::Σ(
s)=(1+γ5)/2

を挟んだ総和なので実質的にはμのスピンsは固定して総和

から除外した和を意味します。

  これを前者(=非偏極)の不変振幅:~での総和式:

 Σspins|~|2=128|G~|2(kp)(k~P)と比較すると,

 非偏極式に(1/2)を掛けてP → P-mμとすることで

μのスピンがsに偏極した場合の結果となることがわかります。

  しかし,遷移率dωの評価では非偏極の場合はΣspins|~|2をμ

のスピンsで平均するために(1/2)を掛けるのですが,s固定

の場合は逆に(1/2)を掛ける必要はありませんから,(1/2)は

不要で,P→(P-mμs)なる操作のみ意味を持ちます。

そして,dωは

dω=(1/2)(2π)-5{1/(2P)}∫d3(2p) -1

3(2Ek) -13~(2k~) -1δ4(P-p-k-k~)  

×64|G~|2(kp){k~(P-mμs)} です。


    「弱い相互作用の旧理論(11)」で記述した非偏極

 のμ崩壊率:

 dω=(1/2)(2π)-5{1/(2P)}∫d3(2p) -1

3(2k) -13~(2k~) -1δ4(P-p-k-k~)  

×128|G~|2(kp)(k~P) の

  k,k~による積分の実行では,

Iαβ(Q)≡∫3(2k) -13~(2k~) -1αβ

δ4(Q-k-k~)ただし,Q≡P-pと置き,これが,

Iαβ(Q)=(π/24)(gαβ2+2Qαβ)となるいう公式

を求めて使用しました。

   これを用いると,偏極の崩壊率は,

dω=(2π)-5{1/(2P)}∫d3(2p) -1

3(2k) -13~(2k~) -1δ4(P-p-k-k~) 

×64|G~|2(kp){k~(P-ms))

(2π)-5{1/(2P)}3(2p) -1|G~|2

(64π/24)(gαβ2+2Qαβ)pα(P-mμs)β

となります。

  sP=0 なので,)(gαβ2+2Qαβ)pα(P-mμs)β

={p(P-mμs)}Q+2(pQ){(P-mμs)Q}

(pP){mμ2+me2-2(pP)} 

-mμ(sp){μ2+m22(pP)} 

+{2(pP)-2me2}{μ2+-(pP)+mμ(s)} 

=-4(pP)2+3(pP)(mμ2+m2)-2mμ22

-mμ(sp){μ2+3m2-4(pP)}  です。

   
μの静止系では,Ep=mμであり,

 上式右辺=-4(pP)2+3(pP)(mμ2+m2)-2mμ22

-mμ(sp){μ2+3m2-4(pP)} 

-4mμ2p2+3mμp(mμ2+m2)-2mμ22

-mμ(sp){μ2+3m2-4(mμp)} です。


    ここで,微小なm
2を無視すると,

 右辺 ~ -4mμ3p{3-(Ep/mμ)}-mμ3{(sp)/Ep}

{4(Ep/mμ)-1} となります。

    
3(2Ep)-1=(1/2)||EpdEpdΩpであり,

|| ~ Epなのでdω ~  |G~|2μ2/(48π4)p2dEpdΩp

×[{3-4(Ep/mμ)}-{(sp)/Ep}{4(Ep/mμ)-1}]

が得られます。

 

  既に見たように,π崩壊では角運動量保存則から

 μ粒子は正のhelicityで生成され放出されます。


   そこで,μのスピンsと電子の運動量について                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

  <(sp)/Ep>=-^^=-cosθ です。

 θは,μ粒子のスピンと,その崩壊で放出された電子e

の進行方向:^のなす角です。

(※何故なら,μの静止系では||=1より,^です。

また,me ~ 0 から,/Ep ^です。

2015年11/12の過去記事:散乱電子の偏極について」を参照

してください。※)

  これから,<dω> ~ |~|2μ2/(24π3)dEpd(cosθ)

 {3-4(Ep/mμ)}(1-αhcosθ) を得ます。


   ここに,α
h≡(4Ep-mμ)/(3mμ-4Ep)は非対称パラメータと

呼ばれる量です。


   他方,先に計算した偏極していない自由μ粒子
の崩壊の

エネルギー分布は,

,(dω /dE)~ |~|2μ2/(12π3){3-4(Ep/mμ)} 

でした。

電子の放出角での積分は∫d(cosθ)=2,∫d(cosθ)(1-αh)

=2αhですから,自由μ粒子でなく,π崩壊から正のhelicityに

偏極して放出されたμ粒子では,,崩壊のエネルギー分布が

(dω /dE)~ |~|2μ2/(12π3){3-4(Ep/mμ)}(1-αh/2)


   となる
ことが観測されるはずです。


   今日も長くなり過ぎたので,ここで終わります。

 

 (参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell  

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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