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2016年3月 4日 (金)

ニュ-トリノの質量とヘリシティ(弱い相互作用補遺)

  最近アップしている科学記事は,「弱い相互作用の旧理論」 

というシリーズで,素粒子論の比較的専門的なトピックを 

具体的な計算式を入れて記述するという.ある意味

堅苦しい文の羅列ですが,

今日は,閑話休題(コーヒー・ブレイク)として,私的には 

比較的軽い常識的話の記述でお茶を濁したいと思います。
 

テーマは,ニュートリノ質量とその左巻き,右巻きの性質

(ヘリシティ)の関係ですから,テーマとしては決して軽く

はないですが。。。。
 

相対性理論によれば,質量がmの自由粒子の速度ベクトル

とすると,そのエネルギーEは,光速をcとして

E=mc2/|1(/)2}1/2であり,運動量,

=m/|1(/)2}1/2で与えられます。
 

そこで,1(/)20という条件が満たされなければ,

Eや与える式の分母:|1(/)2}1/2が実数であると

いう意味が無くなるので,22,つまり,自由粒子の速度

の大きさv≡||最大でも光速cである必要があります。
 

すなわち,相対性理論がそれ以前の理論と異なるのは,観測

される粒子の速度には大きさとして限界の速度があって,

それが光速cであるという理論です。
 

(※ただし,現実的ではないゴーストのような虚数質量の粒子

タキオンの存在を仮定すれば,vが光速cを超えるという想定

での理論展開も可能ではありますが。。。※)
 

そして,vが光速に等しい:v=cのときには,

1(/)20 となるため,E=mc2/|1(/)2}1/2,

=m/|1(/)2}1/2なる式の右辺の分母が共にゼロ

,これらは意味を失ないます。
 

 しかし,分子のmc2やmもまたゼロであれば,何らか

 別の意味の矛盾しない規約を追加して,その場合のEや

 を定めることができるはずです。
 

まず.E=mc2/|1(/)2}1/2,=m/|1(/)2}1/2

から.=c2/Eであり,他方,Einsteinの関係式:

2=c2(2+m2c2)が成立することがわかります。
 

質量mがゼロであるかどうか?を考慮せずにエネルギーE

や運動量の式を与えましたが,上記の=c2/Eの方は

m≠0でなければ得られない関係式です。
 

一方,2=c2(2+m2c2),m=0ではE2=c22であり,

自由粒子のエネルギーは運動エネルギーのみで,あり通常

エネルギー原点がゼロという規定なら,それは負になる

ことはないため,E=c||です。
 

このm=0の極限でも,=c2/Eが成立するとすれば, 

E=c|| と合わせて=c/||となるため, 

v=||=cです。
 

一方,m≠0ならE>c||なので,常にv<cです。
 

そこで,m → +0においての理論式の連続性を考慮して粒子

の質量mがゼロであることと自由粒子の速度の大きさが限界

である光速cに等しいことは同値であると規約します。
 

実際,例えば光=光子の質量はゼロであって,その速度の大きさ

は,もちろん光速cです。
 

そして,上記のことは古典論でも量子論でも,これまでの

あらゆる実験観測結果と矛盾しない事実であることが確認

されています。
 

そこで,ニュートリノνの質量も光と同じく完全にゼロで

あればその運動速度は光速cです。
 

ニュートリノが光子と異なるのは,それのスピンsが半奇数

Fermi粒子.特にスピンがs=1/2Dirac粒子であること

です。
 

量子論によれば,Dirac粒子のスピンベクトルを

(1,2,3)とし,3軸成分s3の値を測定すると

常に,3=+1/2,またはs3=-1/2,の,いずれか一方

のみが観測されます。
 

ここでPauliσを導入すると,σ/2であり

3=+1/2,または3=-1/2,それぞれσ3=+1,

またはσ3=-1に対応します。
 

特に粒子の進行方向の単位ベクトル:/||の第3軸の 

正の向きを示すものとするときは,σ3σp/||ですが, 

これをhelicityと呼び,σ3=+1helicity:1の状態

右巻き(右偏極),σ3=-1helicity:1の状態を左巻き 

(左偏極)と称するのでした。
 

そこで,中性子nのβ崩壊やμ粒子の崩壊の際,観測される

電子eと反ニュートリノν~のペアにおいては100%右巻き

の反ニュートリノと大部分は左巻きの電子が観測される

といことが真実なら,それはそのニュートリノνの質量

がゼロであること,を意味すると考えられます。
 

ところで,スピン1/2の粒子の速度の大きさvが光速cより

も小であれば,観測者が静止状態でそれを見る準拠系として

の慣性系(=観測者は例えば座標原点に固定されていて,

座標系と全く同じ速度で運動するような系)の選択によって

,その粒子は静止した粒子と観測されることもあります。
 

つまり,粒子の速度をと見る準拠系において粒子と

全く同じ速度で慣性運動している座標系に固定された

観測者にとってはその粒子は確かに静止しています。
 

もしも,粒子の速度をと見る同じ準拠系で,それを測定

する慣性系の速度がvを超えるなら,その新しい慣性系を

準拠系として観測者が見る粒子の運動の向きは,元の向き

とは反対になります。
 

そして,elicityが+1というのは,古典的には運動する

粒子の後方から見て右巻きに螺旋運動して進行する右ネジ

のような意味ですし,他方helicityが-1というのは,その

逆の左ネジの意味です。
 

しかし,もしも,慣性系を乗り換えることで粒子の進行の向き

逆転することが可能な場合なら,後方から見て右巻きのもの

は前方から見ると左巻きですから,helicityは逆転します。
 

ところが,ある慣性系で粒子の速度の大きさが光速cに

等しいなら如何なる慣性系に乗り換えてもその粒子は相変

わらず光速で進行していて,ましてや静止したり進行方向

が逆転することは無,というのが相対性理論の骨子の1

です。
 

それ故,例えばニュートリノの質量が真にゼロで.その結果

光速cで運動しているなら,一旦左巻きと観測されれば,常に

そうであり100%左巻きのままです。

この場合は前に回りこむことは不可能です。
 

「弱い相互作用の旧理論(10)」では, 

(※以下再掲);中性子nのβ崩壊n → p+e+ν~  

S行列要素は,

 fi(-i)(2π)-6{2/(2ν~)}1/2 

×(2π)4δ4(-P-p-pν~) ; 

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)un()] 

×[ue~(~μ(1-γ5)vν~(ν~)]で与えられます。
 

それ故,μ粒子の崩壊:μ → e+ν'+ν~のS行列要素 

も,上記の不変振幅因子:

M (/2)[u~(μ(1-αγ5)un()] 

×[ue~(~μ(1-γ5)vν~(ν~)]のうちレプトンの 

ペア:(e,ν~)が寄与する部分の因子: 

[ue~(~μ(1-γ5)vν~(ν~)]は全く同一である

と仮定します。
 

これはμ粒子の崩壊でも,100%右巻き反ニュートリノと

大部分が左巻きの電子という偏極率で,このペア,出現

することを示しています。
 

したがって,μ,,ν’,ν~の4元運動量:

μ,,ν’,ν~をそれぞれ,P,p,k,k~と略記すると,

μ崩壊のS行列要素は, 

fi(-i)(2π)-6[μ/{μ(2ν)(2ν~)}]1/2 

×(2π)δ(P-p-k-k~)~

M~(G~/2)[uν'~(kμ(1-λγ5)uμ()] 

×[ue~(μ(1-γ5)vν~(k~)]

で与えられる,と考えられます。
 

このとき,λはν'の左巻き率を示すパラメーターである。etc.

(再掲載終了※)と書きました。
 

 そして,不変振幅~の(e,ν~)のペア因子:

[ue~(μ(1-γ5)vν~(k~)]は,反ニュートリノν~

右巻き率が100%であることを意味しているわけです。
 

一方,中性子nのβ崩壊での(,)ペアの因子 :

[u~(μ(1-αγ5)un()] におけるパラメータ

αの 1からのずれは,中性子nの右巻きからの偏り

(右偏極率),または,陽子pの左巻きからの偏り(左偏極率)

を示しています。
 

 そして,「弱い相互作用の旧理論(6)」においては,観測

 との 比較から,

 2(1.015±0.03)×10-5×(1/2)=G 

(1.21±0.03)=αCV 

なる評価が得られていました。
 

このα~1.211という結果は,pもnも質量が約940MeV

ゼロではなく,そこで当然その運動速度vはcより小さい

ので理にかなった値でしょう。
 

他方,μ崩壊での(ν',μ)ペア因子:

[uν'~(kμ(1-λγ5)uμ()]におけるパラメータ

λはν'の左巻き率,または,μの右巻き率に対応します。


 「弱い相互作用の旧理論(10)」では,

(※以下再掲):μ崩壊率のエネルギー分布として,

( dω/dE) ~ {|G~|2μ2p2/(48π3)}

×[6|1-λ|2{1-2(Ep/mμ)}+|1+λ|2{3-4(Ep/mμ)}]

を得ます。
 

この段階で,このエネルギー分布予測を観測と比較すると, 

観測は良い精度でλ=+1を支持しています。etc.

(再掲載終了※) と書きました。
 

さらに,λ=+1としたときのμ崩壊率ωの評価から,その

結合定数G~ が中性子nのβ崩壊のGに2%以内の誤差で

等しいと結論されていました。
 

もしも,ν'が100%左巻きではないなら,λを実数値と

するとき,必ず.λ>1ですから,このG~とGの2%以内の誤差

をλ=+1の評価の方に負わせれば,正確にG~=Gである

一方,λ~ 1.02程度に+1からのズレがあると

推測されます。
 

 この記事の段階で,(,ν~)ペアでνと称している

ニュートリノνは電子ニュートリノ:νeであり,(ν',μ)ペア

でν'と称している粒子は,νeとは別のμ-ニュートリノ: νμ

であることが後に確認されました。
 

もしも,正確にλ=+1なら,νeと同じくνμ100%左巻き

であり,これはνμの運動速度も光速cに等しく質量がゼロ

であることを示唆していると考えられます。
 

しかしながら,νeとνμ,さらにはそれら両方と異なるτ粒子

の崩壊に伴なうτ-ニュートリノ:ντも存在して,それらの間

に質量差がある証拠とされるニュートリノ振動の存在が,岐阜

カミオカンデで観測されたことから,ν'=νμの質量は正確

にはゼロではないと考えられ,その反映がλ~ 1.02程度の

λ=+1からのズレに現われるのではないか?と推量される

わけです。
 

軽い話題と前置きしたのにも関わらず,最後はやや専門的 

になりましたが,今日はこれで終わります。

 

今回の内容には,参考文献はなく単に常識的な知見を総合 

したありふれた感想に過ぎません。

PS:ここからは余談です。。。少し暖かくなってきました。

  既に頭の中は春ですが。。。

そういえば,ブログ開始が2006年3/20で,もうすぐ10年記念日

ですが,あとチョットでブログのカウンターが100万アクセス

に達しそうです。

 さて,近年の私の入院は,大体寒い冬の時期が最も多く,昨年

の5月1日のようにせいぜい春までです。


   
まあ,中途半端な気候の春の木の芽どきは,昔から精神不安定

になるので,暑い季節にでもなれば比較的体調がよくなるので

しょうか。。。



   もうすぐ両足棺桶で,睡眠不足が解消される永眠も近いのに,

ついテレビなどで才能豊かな方を見かけると素直に感心して

ればいいのに年甲斐もなく才能に嫉妬してケチをつけたくなる

のは性格がイジましいからでしょう。

(※最近では,歌手のさだまさしさん,ジャーナリストの池上

さん,行動力のある杉良太郎さんなどに嫉妬。。)


   死ぬ前に,神か悪魔に魂を売ってサバン症?のごとく
道を

聞いて夕べには死す,とかの道も。。


   イヤ,死ぬこと自体,生まれてきた以上だいたい100年
以内

に100%この世からいなくなることは,ものごころついた頃

からわかっていて避けられないのを覚悟していて.

  男の平均寿命から考えてあと10年も
命があるかないか?

というのでアセったりはしてないつもりです。ひょっとして

今日か明日にも道端でバッタリというのもありますからネ。

ただ,痛い熱い苦しいのはイヤだし,麻酔のない手術,介錯

のない切腹とかなら,あるいは認知症,植物状態,私なら

完全失明でも,残る人生の意味がほぼ無くなるので,でも

自殺の勇気もないので「さあ殺せ」という感じでしょうか。

でも部屋で火事にでもあったら,死ぬの怖くない,と言いながら

も本能的に真っ先にアセって逃げるでしょう。

私のような凡人は,体を切り刻まれていくような拷問を受けたら

最愛の人をも売ってしまうでしょう。


  イヤー,つい38年前の1977年暮れの東京で初めて就職した会社

の新人1年目の神楽坂での忘年会の2次会で当時直属の7歳上

の上司に.「オモテへ出ろー」とやって,翌日,辞職願を出し

のを思い出してしまいました。


   私.今でもそうですが,唐突に脈絡も関係もない自己主張を

するクセがあって,そのときも日頃のグータラ仕事ブリを説教

されてる最中に,上記の「人間(自分)は拷問には耐えられない

実体だ。」という一般論的持論を述べたのに,おそらく,

「仕事がきつくて拷問だ」という風に誤解されて口論になった

という記憶がよみがえりました。

  
40年近く経っても執念深いというか,何というか,イヤ進歩が無いと

いうべきか。。。まったくぅ。。。

PS2:歌手の徳永英明さん。。また,「もやもや病」再発という

ことらしいですが,私も2009年夏に友人の春日部の医院での脳の

MRI検査で,そう診断されたことがありました。。


   2009年9/10の過去記事「脳の病気?」を参照

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