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2016年4月 4日 (月)

弱い相互作用の旧理論(14)(Fermi理論)

「弱い相互作用の旧理論」の続きです。
 

今日は,ニュートリノには2種類あるという話題です。
 

§10.15 2つのニュートリノ(Two Newtrinos) 


 
ここまで論じてきたレプトンを伴なう相互作用では,S行列要素 

のレプトン部分因子が,[~()γμ(1-γ5)(~)]なる形で 

与えられるような同一のV-A構造に導くことを見てきました。

すなわち,こうした弱い相互作用ではμとeのスピノルは, 

2成分スピノルでも表現できる左巻きニュートリノに変換する 

という遷移振幅の構造を持ちます。

 しかし,ニュートリノの余分な自由度を除く方法で見たように,

パリティ非保存を与えることでは,それほど節約的であったのに 

自然は2つの物質粒子であるνとν'を与えることにおいては.

不可解なほど自由度の増加に対して寛容です。
 

このνとν'は,ほとんど同一ですが,しかし非常に異なる 

ものです。

  Feynmanダイアグラムの電子線と1つの頂点で
結ばれる

νは常に左巻きで,ゼロ(または非常に小さい)質量を持ち

ますが,これは丁度μ粒子と1頂点で結ばれるν'でも同じ

です。
 

しかしながら,それらνとν'が異なるであろうと考えられる 

第一の理由は,μ→e+γというμの輻射崩壊率の信頼には

欠けるが理論的に評価されているものと,観測分岐比: 

(μ→e+γ)/(μ→e+ν~+ν’) 10-7 

を示した実験との対比に由来します。
 

こうしたμ→e+γのようなプロセスは,特に相互作用 

を仲介する中間状態としての荷電ベクトルメソンの存在の 

仮定に訴えないなら,如何なる既知のメカニズムによっても 

弱い相互作用の1次のオーダーでは生じない反応です。
 

ベクトルメソンの仮説(vector-meson dominance), 

10-20に示されたグラフに沿う形でなされます。



  
こうしたグラフの計算から得られる答は発散し,あまり 

真面目には考慮されませんが,上述の分岐比のように 

,10-4 10-5 よりも小さい比になることを主張するのは,

かなり困難なことです。

※(注14-1):このグラフは運動量表示で質量ゼロのFermi粒子

νの伝播関数:i/(+iε)}と質量がmVのベクトルメソンの

伝播関数:(igμν)/{(p-k)2-mV2+iε}の積の因子のkに

よる積分:∫d4kを含むため,kについてはk→∞で対数発散

するはずです。まあ,繰り込めば有限になる可能性はあります

から分岐比の評価はできるかもしれません。  


(注14-1終わり)※


 
しかしながら,μと関わるν'が,eと関わるνと異なるなら,

そもそも,これらのグラフは,他のあらゆるグラフと同様に消え

ます。(※ つまり,μにもeにも同時に連結するνまたはν'

の線があるようなグラフは存在しません。)
 


  
2つの異なるニュートリノがあることの証拠となる.より信頼

できるテストは,PonrecorroSchwartzによって提案されたもの

,π崩壊による高エネルギーのν'-ビームによって,逆β崩壊

反応の初期状態とすることを意図した実験を行なうものです。
 

特に引き続く逆β反応によって生成される高エネルギー 

の電子,または,高エネルギーのμ粒子を探せばいいです。
 

この結果,μの生成は確実に観測され,一方,eの生成は 

観測されなかったので,今や,2つのニュートリノの存在 

に賛成する明確な証拠を得たことになります。
 

μとeの間には,静止質量の他に何の差異があるのか? 

そして自然は何故2つの荷電レプトンを生み出したのか? 

という難しい問いに加えて,今や,何故,自然は2つのニュートリノ 

という難問を与えるのか?ということが付け加えられます。
 

(14-2):この記事の参考テキストが出版された時代には, 

まだ,荷電レプトンはμとeの2つだけでした。
 

 その後,μよりもさらに質量が重いだけの違いしかない 

τ粒子の存在が確認され,現在ではそれらに伴なってニュートリノ 

もν,νμ,ντの3種類が存在することがわかっています。
 

これらを(,νe)T,(μ,νμ)T,(τ,ντ)Tとペアにして. 

それぞれ,ハドロンクォークの3世代:(,)T,(,)T,(,)T 

に対応させます。

(※d,u,s,c,b,tはdown,up,strange,charm,bottom,topの 

頭文字で,これらの量子数をフレイバー(Flavour:香り)

自由度といいます。)
 

ハドロンの基本粒子クォーク(Quark)がフレイバーごとの3世代, 

6個あってそれぞれ3個のカラー自由度があるる理由も,

レプトン (Lepton)のDirac粒子が上記のように3世代6個ある理由と

同じくらい不可解ですが,取りあえず,対応は付きます。

 例えば,私が学生当時に専門としていたカイラル三角グラフ

量子アノマリー(量子異常:Triangle-Anomaly)は,荷電粒子の電荷

比例する形で出現しますが,全てのクォークの電荷の和をカラー

を考慮して3倍したものと,レプトンの電荷を全て総和したもの

相殺してゼロとなり,総体としては消えます。

 したがって,3世代の対応があれば可能な全てのカイラル

三角グラフを総和すると,アノマリーフリーとなります。

 これは,t'Hooft(トフフト)により指摘されたことです。

もっとも,アノマリーも必要なもので,もしもこれが無いなら

南部-Goldstonボソンの1つであるπメソンの,π0 → 2γ崩壊

の崩壊率の計算値はゼロ,または観測値よりはるかに小さい値

なりますが,アノマリーの存在を考慮して計算すると,観測値

に合致する結果を得る,ことがわかっています。

(注14-2終わり)※
 

今日はつなぎで,とても短かいですが,一区切りなのでここで 

終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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