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2016年5月25日 (水)

クライン・ゴルドン方程式(2)

Klein-Gordon eq.の続きです。

 
この項目の前回記事は,ほとんどがブログを書くモチベーションなどの

余談と,§9.1序文の,主として1度は捨てたKlein-Gordon方程式

の復活の意味,その解釈の論議に集中して,本題はわずかな

モノだったので,

 
もう1度
§9.2の最初から再掲載して,続けたいと思います。
 

§9.2 Klein-Gordon粒子に対する伝播関数 

(The Propagator for Klein-Gordon Particles)
 

 Klein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0 の解φ(), 

ずっと前に誘導されたように,連続の方程式を満たします。
 

すなわち,カレント:μi(φμφ-φ∂μφ)

μ≡∂/∂xμ,に対して,μμ0 ((∂ρ/∂t)+∇0)

が成立します。
 

(※何故なら, μμiμ(φμφ-φ∂μφ) 

iφ(□+μ2)φ-iφ(□+μ2)φ0 となる

からです。※)
 

()≡∫d3ρ(,)=∫d30()

i∫d3(φ0φ) 

(※ただし,a∂0b≡a(∂b/∂t)(∂a/∂t)b ※) 

とすれば,μμ0Gaussの定理から,Qは保存します。
 

そこで,()は,tをはずして単にQと書いてもいいです。
 

(※何故なら,dQ/dt=∫V3(∂ρ/∂t)

=-∫V3()=-∫Sn0です。

ただし,VはQがゼロでない全空間領域,Sはその閉じた

境界面領域(半径:)です。
 

R→∞の極限において,S上のの外向き法線成分:n,

(1/4πR2)よりも急激にゼロに収束するとき,Sn0

です。※)
 

正負両符号の振動数を持つKlein-Gordon方程式の平面波解

は体積Vの箱の中に粒子が丁度1個存在する,という規格化

では, 

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx),

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx) です。 


   ただし,μ(0,),ωp=p0(2+μ2)1/20
です。

μはこの粒子の質量で,それ故,2=pμμ

(0)22=μ2 が満たされています。
 

(2-1): 平面波の波動関数は,1粒子が箱に閉じ込められて 

いる場合には.箱の境界で.exp(±ipx)0となるような離散的

な運動量のみが許容されます。
 

 このとき,

pp'(±)i3[p(±)()0p'(±)()] 

(複号同順)とおけば, pp' (±)=±(2)-1(0p'0)-1/2

(p'0+p0)(20p'0)exp{(±)i(0-p'0)} 

×∫3exp{±i(')} (複号同順)

となります。
 

これは,p≠p'のときには,exp{±i(')}が箱の境界

ではゼロなので,pp' (±)0です。
 

一方,'のときにはp'0=p0,

3exp{±i(')}=Vなので,,

pp(±)i3[p(±)()0p(±)()]=±1 

(複号同順)です。
 

つまり,カレント密度:ρ(±)()ip(±)()0p(±)()

の積分が,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 (複号同順)

なるようにfp(±)()が規格化されています。
 

一般には,pp'(±)=±δpp'(複号同順)です。
 

また,すぐわかるように,負振動数(負エネルギー):-p0=-ωp

の解,と正振動数(エネルギー):p'0=ωp'の解,逆に正振動数:

p'0=ωp',負振動数:-p0=-ωpでの)解の内積を与える積分

はゼロです。
 

すなわち,i3[p()()0p'()()] 

i3[p()()0p'()()]0 です。
 

(注2-1終わり)
 

有限な体積Vの箱の中に1粒子という規格化ではなく,

V→∞の極限の全空間に1粒子があって,平面波の一定運動量

pが箱の境界で消えるとか,周期的境界条件を満たすとかの

離散的量子化条件の必要がなく,が如何なる連続的値をも

取り得るとした場合,


 Klein-Gordon
方程式の平面波基本解
,

p()()(2π)-3/2(2ωp)-1/2exp(ipx), 

p()()(2π)-3/2 (2ωp)-1/2exp(ipx)

で与えられます。
 

このとき,pp'(±)≡∫V=∞3[p(±)()i0p'(±)()] 

について,pp'(±)=±δ3(') (複号同順)になるという

デルタ関数式規格化を満たします。
 

また,iV=∞3[p()()0p'()()] 

iV=∞3[p()()0p'()()]0

です。
 

特に,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 ではなく, 

pp(±)=∫V=∞ρ(±)(,)3x=±∞であり,密度の総和

が有限ではないですから,正エネルギーのみ採用するとしても

直接,粒子の確率密度として扱えるものではありません。
 

したがって,これら完全な平面波fp(±)()自身は運動量

完全に特定されているため,Heisenbergの不確定性原理の意味

で逆に位置は完全に不確定で目の前から無限に離れた宇宙

の果てまで,V=∞の全空間に一様に拡がっていて,全く対等

な確率で(※実は1点の体積はゼロで,有限な確率密度で表現

される点での確率は体積に比例するため,確率ゼロで)どこに

でも存在しているという非現実的な粒子像にしか対応しません。
 

理想的な,まわ孤立していて一切力を受けない質点は常に一定

速度(一定運動量)で運動を続ける,というNewtonの「運動の

第一法則(慣性の法則)」に従う古典的な自由粒子像,


 
つまり我々にとって常識的な特定軌道で運動する局在化
 

した粒子を平面波で表現することはできません。
 

そこで,量子力学的には現実の空間に局在する自由粒子は運動量

が完全に一定に特定されているわけではなく,何らかのゆらぎ

:Δでもって,わずかに拡がった謂わゆる重ね合わせ波束

(wave-Packet)の形で存在するとします。
 

正振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()≡∫Δ[()p()()]3で表現します。
 

こうすれば,iV=∞3[φ()0φ()] 

=∫Δ3|()|2と書けます。

  
は正定置(有限な正の数)ですから,

=∫Δ3|()|2=+1となるように係数:

()を規格化しておけば,

φ()=∫Δ[()p()()]3,運動量

平面波を運動量確率密度:|()|2で重ね合わせらた波で

あると解釈することが可能です。
 

しかしながら,同様に負振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()=∫Δ[()p()()]3で定義し, 

iV=∞3[φ()0φ()]とすれば, 

=-∫Δ3|()|2となって,0ですから,

単純な確率解釈は困難となります。
 

ここに,Klein=Gordon方程式の解に対する確率解釈にとっての困難

が凝縮されています。
 

何故なら,Dirac方程式の解のときにも見たように,通常の粒子

を示す波動関数=波動方程式の解φ():今の場合なら,

Klein-Gordon方程式の一般解φ(),正振動数の平面波だけ

ではなく負振動数の平面波と混合した重ね合わせで与えられ,

その粒子の全空間での存在確率(=+1)と解釈したい量: 

Q=iV=∞3[φ()0φ()]は正にも負にも成り

得るからです。
 

直感的解釈の是非は後回しにして,Klein-Gordon方程式

Feynman伝播関数(Feynman^ropagator):Δ(x-y)

を見つけたいと思います。
 

(※前回の再掲記事終了)
 

さて,Klein-Gordon方程式のFeynman伝播関数をΔ()

書くと,これは,(□+μ2)Δ(x―y)=-δ4(x―y)

を満たす,Green関数:Δ(x)のうちで遅延Green関数,

先進Green関数という伝播関数の境界条件を満たすもの 

です。
 

Δ(x)=∫d4(2π)-4Δ^()exp(ipx),Fourier積分表示

をすると,(□+μ2)Δ(x)=-δ4(),

(-p2+μ2)Δ^()=-1を意味します。
 

したがって,2≠μ2ならΔ^()1/(2-μ2)です。
 

ここで,前に,

Dirac方程式:[iγμμ)]F(x-y)=δ4(x-y)

を満たす,質量m,スピン1/2Dirac粒子の伝播関数:

(), 

()=∫d4(2π)-4exp(ipx)/(-m+iε),

(γμμ)で与えられたのと同じく,
 

Δ()=∫d4(2π)-4exp(ipx)/(2-μ2iε)

としてみます。
 

すると,分母に付加された微小な純虚数iε(ε=+0)のため,

正振動数(正エネルギー)の波のみが時間の順方向(未来)へと

進み,負振動数(負エネルギー)の波は時間の逆方向(過去)

伝播するという,まさに望ましい境界条件を満たすことが

保証されます。
 

BjorkenDrellのテキストのMechanicsの第6章 伝播関数

の理論;本ブログでは,20105/24の記事

「散乱の伝播関数の理論(7)でも論じたように,iεの

おかげで分母をゼロとする極を避ける外周上の積分

同一視された結果,上記性質を持つような伝播関数と

できる他の適切なやり方は存在しません。
 

(22):上記のことの説明です。 

Δ(x―x0) 

=∫d4(2π)-4[[exp{i(x―x0)}/(2-μ2iε) 

=∫-dE[exp{-iE(t-t0)}

∫d3[exp{i(0)}]

/[{E-(ωpiε)}{E-(-ωpiε)}]

ωp(2+μ2)1/2 と書けます。
 

E=p0を複素数とする複素E平面で,t>t0のときは

-dEの積分路を実軸:(-∞,)に半径∞の下半円を

時計周りに進む経路を加えた閉じた外周C上の積分と

見なします。
 

下半円上では,E=Rexp(iθ)=R(cosθ+isinθ)

(θ:π→2π)より,

exp{-iE(t-t0)}exp{icosθ(t-t0)}

exp{sinθ(t-t0)} です。
 

π≦θ≦2πで,t>t0のときは,θ=π,θ=2πで

sinθ(t-t0)0 となる他は常にsinθ(t-t0)0

なので,R→∞でexp{sinθ(t-t0)}は急激にゼロとなる

ため.非積分関数や積分路の長さπRが掛かっても積分への

寄与はゼロです。


  実質上,積分路が実軸
のみの場合と積分の結果は一致する

と考えられるため,この積分路の変更が有効なわけです。
 

分母の2つの極:E=ωpiεとE=-ωpiεのうち,この閉路

の中にあるのは,E=ωpiεのみです。


 

 留数定理から。 

CdE[exp{-iE(t-t0)}

/[{E-(ωpiε)}{E-(-ωpiε)}]

=-(2πi)exp{-iωp(t-t0)/(2ωp) です。
 

(※Cをまわる経路の向きが時計回りで,負の向きなので

符号()が付加されます。)
 

故に,t>t0なら, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3(2π)-3

[exp{-iωp(t-t0)i(0)}]/(2ωp) 

;ωp(2+μ2)1/2と書けます。
 

同様に,t<t0なら,実軸に反時計周り(正の向き)の上半円を 

加えた外周Cを与えて,E=-ωpiεを留数として,

C-dEから,(2πi)exp{-iωp(t-t0)/(2ωp)であり, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3(2π)-3

[exp{iωp(t-t0)i(0)}]/(2ωp) 

を得ます。

いずれにしろ, Δ(x―x0)

=-i∫d3(2π)-3[exp{―ip(x―x0)}]/(2ωp) 

なる形であって,

t>t0ならp0=ωp(2+μ2)1/2(正エネルギー)で,未来

への伝播の遅延波,

t<t0なら

0=-ωp=-(2+μ2)1/2(負エネルギー)で過去へ伝播の先進波

という違いがあるだけです。
 

(20-2終わり)
 

Δ(xーx0)

=∫d4(2π)-4[exp{i(x-x0)}/(2-μ2iε) 

が正しいFeynman伝播関数:ΔFを与えることがわかりました。
 

これは,Δ(x―x0)

=-i∫d3{p()()p()(0)}θ(t-t0) 

i∫d3{p()()p()(0)}θ(t-t0) 

あるいは, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3{θ(t-t0)p()()p()(0) 

{θ(t-t0)p()()p()(0)}  

と表現されます。

  
前に正振動数の波束を, φ()=∫[()p()()]3,

負振動数の波束を.φ()=∫[()p()()]3

書きましたが一般のスピンゼロ粒子の波動関数φ(),これらの和, 

φ()=φ()+φ()で与えられます。
 

Δ(xーx0)は時刻:t=t0,0にある波:φ(0)=φ(0,0) 

の正振動数部分のみを時間の順方向(未来:t>t0)へと伝播させて, 

iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0) を成立させ,
 

他方,負振動数部分のみを時間の逆方向(:t<t0)へと伝播

させて,iθ(t-t0)φ(,) 

=―∫d30Δ(x―x0)i(0)0φ(0,0) を成立

させます。
 

これらは直接計算によって確かめることができます。
 

これは,7:本ブログでは「散乱の伝播関数の理論(9)」

で見たように,Dirac方程式に従うスピン1/2粒子の伝播関数:

F(x-x0). 

θ(t-t0)ψ(,)i∫d30F(x-x0)γ0ψ(0,0) 

θ(0-t)ψ(,)=-i∫d30F(x-x0)γ0ψ(0,0) 

なる式を満たしたのとは僅かに形が違いますが,伝播関数として

同義であることが,すぐわかります。
 

※(20-3):直接計算です。

∫d3[p(±)()i0p'(±)()]=±δ3(')

(複号同順)から, 

∫d30∫d3p(±)()p(±)(0)i0φ±(0)  

∫d3∫d3'p'(±)()±(')

∫d30p(±)(0)i(0)0 (±)(0) 

=∫d3∫d3p(±)() ±('){±δ3(')} 

=±∫d3p(±)()±()=φ±() (複号同順)
 

また,∫d30∫d3p()()p()(0)

i0φ(0)∫d30∫d3p()()p()(0)

i0φ(0)0 が成立するのは明らかです。

よって,iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0),かつ, 

iθ(t-t0)φ(,) 

=―∫d30Δ(x―x0)i(0)0φ(0,0) 

の成立は証明されました。
 

さらに,Klein-Gordon演算子:□+μ2を形式的に, 

□+μ2=∂2/∂t2―∇2+μ2=-[{i(/∂t)}2{(-i)2+μ2}] 

=-[{i(/∂t)}20()2] と書くと,
 

□+μ2=-[i(/∂t)0()][i(/∂t)0()]より, 

(□+μ2)ΔF(x-x0) 

=-[i(/∂t)0()][i(/∂t)0()]

ΔF(x-x0) =-δ4(x-x0) です。
 

そこで,(x-x0)[i(/∂t)0()]ΔF(x-x0)

と置けば,[i(/∂t)0()](x-x0)=δ4(x-x0)

です。
 

直感的な伝播関数=遅延Green関数の理論で波動関数自由粒子

の波動関数Φが,Schroebinger方程式:i(∂φ/∂t)0φ満たす

系の伝播関数を,[i(/∂t)0()](x-x0)=δ4(x-x0)

を満たすGreen関数:(x-x0)とするとき, 

 θ(t-t0)φ()i∫d30(xーx0)φ(0)

なる式を得ましたが,

 
これのアナロジーで,iθ(t-t0)φ() 

=∫d30[i(/∂t)0()]ΔF(x-x0)φ(0)

と書けるはずです。
 
 

 実際:右辺=∫d30[i(/∂t)ΔF(x-x0)]φ(0) 

+∫d30∫d3[ωpp()()p()(0)

∫d3'p'()(0)(')] ですが,
 

右辺第2項=∫d3∫d3'[(1/2)(ωp/ωp')1/2

p()()exp{i(ωp'-ωp)0}δ3(')(')]

(1/2)∫d3()p()()=φ()/2 です。
 

右辺第1項=∫d30[i(/∂t)ΔF(x-x0)]φ(0) 

=∫d30[i(/∂t0)ΔF(x-x0)]φ(0) 

=∫d30[ΔF(x-x0)]i{∂φ(0)/∂t0)} 

∫d30∫d3p()()p()(0) 

∫d3'[ωpp'()(0)(')]
 

これは結局, φ()/2=右辺第2項に一致します。
 

したがって,iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0)

なる表現が,かつて直感的論議から出発して得られた, 

θ(t-t0)φ()i∫d30(xーx0)φ(0) 

なる表現に同値と考えられます。
 

(20-3終わり)
 

ブログの特徴ではありますが,冗長な注釈が続いて長くなり過ぎたので 

ここで一旦切ります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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コメント

ネットサーフィングしていて発見しました。自分と同類、いや失礼、世の中には似たような人生を歩んでいる人がいるんですね。

頑張ってシブトク生き抜いて欲しいと思います。

私は61才で貧乏ですが万物理論に限りなく近づいていると思って思索に専念しています。

例外型リー群と多胞体の関係を研究してます。

時々参照しますので頑張ってください。

投稿: nemo | 2016年5月25日 (水) 19時48分

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