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2016年5月30日 (月)

クライン・ゴルドン方程式(3)

Klein-Gordon eq.の続きです。


 次の,荷電スピンゼロ粒子が電磁場と相互作用する場合

の項目に移ります。
 

§9.3 電磁ポテンシャルの導入 

(Introduction of Electromagnetic Potentials)
 

アイソスピンがゼロでスピンもゼロの中間子の電磁場との

相互作用は,これまでと同じく,極小相互作用変換:

^μ→p^μ-eAμ() (^μiμ)によって導入されます。
 

ただし,電磁場Aμ(),今対象としているスピンゼロの粒子 

が相互作用する電磁波の量子=光子を示す場の演算子では 

なくて,今のところは,謂わゆる外場のポテンシャル:c数 

であるとします。

 そして,eは対象粒子の電荷,μ(),普通の実数値

の場です。
 

自由粒子のKlein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0, 

[(iμ)(iμ)+μ2]φ()0と書けば,極小変換で 

電磁場Aμ()と相互作用する場合の粒子が満たす

基本方程式は, 

,[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)+μ2]φ()0 

となります。
 

この両辺の複素共役を取れば.φ()に対する方程式: 

[(iμ+eAμ)(iμ+eAμ)+μ2]φ()0

を得ます。
 

 電磁カレントは,μがないいときの

 jμ=φiμφ-φiμφ* の代わりに機械的に, 

 jμ[φ(iμ-eAμ)φ-φ(iμ+eAμ)φ]

 とすると,これは確かに,保存則∂μμ0を満たします。
 

 そこで,()≡∫d3ρ(,)=∫d30() 

 =i∫d3(φ(0φ)2eA0)φと置けば,

 dQ/dt=0です。
 

(31):実際,iμμ

iμ[φ(iμ-eAμ)φ-φ(iμ+eAμ)φ] 

=-eAμφiμφ-eAμφiμφ 

+φ{(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2}φ 

-φ(iμ+eAμ)(iμ+eAμ)-μ2}φ 

+φeAμ(iμ-eAμ)φ

+φeAμ(iμ+eAμ)φ0 です。  


   (3-1終わり)

 

  散乱において入射する荷電中間子を示す平面波:φin,

 このポテンシャル:μで散乱されて,

  [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ()0

 の解:φで与えられる振幅(波動関数)となります。
 

 正振動数の波だけが時間的未来に散乱され,負振動数

 の波は過去に散乱されるという境界条件を採用して, 

 [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)―μ2]φ()0,

 Feynman伝播関数(Propagator):ΔFを用いて積分します。
 

 すなわち,

 [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ()0. 

(□+μ2)φ=-i(μμ+Aμμ)φ+e2μμφ

意味するため,
 

^()i(μμ()+Aμ()μ)-e2μ()μ() 

と定義すると,方程式は(□+μ2)φ()=-V^()φ()

書けるので,

 
これの形式的な解(※単に積分方程式形)として,
 

φ()=φin()+∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

を得ます。
 

(32):何故なら,(□+μ2)φin()0であり,

かつ,(□+μ2)ΔF(x-y)=-δ4(x-y)なので, 

(□+μ2)∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

=-∫d4yδ4(x-y)^()φ()

=-V^()φ() より, 

(□+μ2)φ()=-V^()φ()

が成立します。
 
 

さらに, 別の観点で考察します。

[□+μ2+V^()]φ()0 Feynman伝播関数: 

ΔF~,[□+μ2+V^()]ΔF~(x-y)=-δ4(x-y) 

を満たし,然るべき境界条件を有するGreen関数と定義すると,
 

(□+μ2)ΔF~(x-x0)

=-δ4(x-x0)-V^()]ΔF~(x-x0) 

=∫d4yδ4(x-y)[-δ4(y-x0)-V^(]ΔF~(y-x0) 

(□+μ2)[ΔF(x-x0)

+∫d4yΔF(x-y)^(]ΔF~(y-x0) 

が成立します。

これは結局,
 

ΔF~(x-x0)

=ΔF(x-x0)++∫d4yΔF(x-y)^()ΔF~(y-x0) 

の成立を意味します。
 

自由粒子の平面波の解:φin()=φin()+φin() 

については,t>t0 

φin(,)i∫d30Δ(xーx0)i(0)0φin(0,0)

t<t0 

 φin(,)i∫d30Δ(xーx0)i(0)0φin(0,0) 

と表現できました。
 

電磁場Aμがあるときにも,仮に自由粒子の平面波の集まり

と同じく,正振動数の波φと負振動数の波φというもの

が定義可能で,φ()=φ()+φ()とそれらの和に

分割できるなら,
 

t>t0 

φ(,)i∫d30Δ~(xーx0)i(0)0φ(0,0) 

t<t0 

φ(,)=-i∫d30Δ~(xーx0)i(0)0φ(0,0) 

と書けと予想されます。

 しかし,むしろ,これらの右辺で与えられるものを,それぞれ,

 φ(),φ()と定義します。
 

 すると,ΔF~(x-x0)=ΔF(x-x0)

+∫d4yΔF(x-y)^()ΔF~(y-x0)によって,

 φ()=φ()+φ(),

 φ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

 と表わされるわけです。 

 (32終わり)
 

 このφ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

 は,Dirac粒子における 

 Ψ()=ψ()+e∫d4ySF(x-y)γμμ()Ψ() 

のアナロジーであり, 

  解の物理的解釈は,その際に電子に対して与えられたものと

酷似しています。
 

散乱後の未来において,正エネルギー粒子を表わす正振動数

の波のみが出現することを保証するため,  

φ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

Feynman伝播関数を伴なった形に積分しました。

 これは,Φ(,t)=φin()

i∫d3p()()∫d4yθ(t-y0)p()()

^()φ()i∫d3p()()∫d4

θ(0-t)p()()^()φ()と

書けます。
 

この式はまた,負振動数の波として過去に伝播するはもの

を含んでいます。
 

 しかし,自分の装置で注視している観測者の見地で

見ると電荷がeの負エネルギー粒子の過去におけう吸収

,電荷が-eの正エネルギー粒子のその時点での放出

に等価です。
 

 その意味で自然界の各粒子には,反対に荷電した反粒子

が存在する,という基本的な,そして実験的に証明すること

のできる予言へと誘導されます。
 

しかし,ある粒子は電荷を持たないかも知れません。

そのケースには,それ自身の反粒子を持たないかも

知れません。

 そうした1つの例は中性でスピンがゼロのπ中間子:π0です。
 

これは荷電π中間子とほぼ同じ質量μを持つけれど,

電磁相互作用μが関わる方程式:

[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)+μ2]φ()0 

を満たさない,というより,e=0の場合の方程式を

満たします。

 

自由π0中間子に対する伝播関数は前節で導入した荷電π

中間子の場合と完全に同様にろんじることができます。

  荷電π中間子に対して定義したカレントの第ゼロ成分の

空間積分Qはπ0中間子では消えるためこの粒子は自由な

Klein-Gordon方方程式のφ=φを満たす実解:φによって

表現されます。
 

 そして,その正振動数解は未来へ負振動数解は過去へ

と伝播するというFeynmanの解釈に従います。

 (※π0の反粒子はπ0自身です。)
 

 いつもよりかなり短かいですが今日は,ここで

終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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