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2016年5月

2016年5月30日 (月)

クライン・ゴルドン方程式(3)

Klein-Gordon eq.の続きです。


 次の,荷電スピンゼロ粒子が電磁場と相互作用する場合

の項目に移ります。
 

§9.3 電磁ポテンシャルの導入 

(Introduction of Electromagnetic Potentials)
 

アイソスピンがゼロでスピンもゼロの中間子の電磁場との

相互作用は,これまでと同じく,極小相互作用変換:

^μ→p^μ-eAμ() (^μiμ)によって導入されます。
 

ただし,電磁場Aμ(),今対象としているスピンゼロの粒子 

が相互作用する電磁波の量子=光子を示す場の演算子では 

なくて,今のところは,謂わゆる外場のポテンシャル:c数 

であるとします。

 そして,eは対象粒子の電荷,μ(),普通の実数値

の場です。
 

自由粒子のKlein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0, 

[(iμ)(iμ)+μ2]φ()0と書けば,極小変換で 

電磁場Aμ()と相互作用する場合の粒子が満たす

基本方程式は, 

,[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)+μ2]φ()0 

となります。
 

この両辺の複素共役を取れば.φ()に対する方程式: 

[(iμ+eAμ)(iμ+eAμ)+μ2]φ()0

を得ます。
 

 電磁カレントは,μがないいときの

 jμ=φiμφ-φiμφ* の代わりに機械的に, 

 jμ[φ(iμ-eAμ)φ-φ(iμ+eAμ)φ]

 とすると,これは確かに,保存則∂μμ0を満たします。
 

 そこで,()≡∫d3ρ(,)=∫d30() 

 =i∫d3(φ(0φ)2eA0)φと置けば,

 dQ/dt=0です。
 

(31):実際,iμμ

iμ[φ(iμ-eAμ)φ-φ(iμ+eAμ)φ] 

=-eAμφiμφ-eAμφiμφ 

+φ{(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2}φ 

-φ(iμ+eAμ)(iμ+eAμ)-μ2}φ 

+φeAμ(iμ-eAμ)φ

+φeAμ(iμ+eAμ)φ0 です。  


   (3-1終わり)

 

  散乱において入射する荷電中間子を示す平面波:φin,

 このポテンシャル:μで散乱されて,

  [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ()0

 の解:φで与えられる振幅(波動関数)となります。
 

 正振動数の波だけが時間的未来に散乱され,負振動数

 の波は過去に散乱されるという境界条件を採用して, 

 [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)―μ2]φ()0,

 Feynman伝播関数(Propagator):ΔFを用いて積分します。
 

 すなわち,

 [(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ()0. 

(□+μ2)φ=-i(μμ+Aμμ)φ+e2μμφ

意味するため,
 

^()i(μμ()+Aμ()μ)-e2μ()μ() 

と定義すると,方程式は(□+μ2)φ()=-V^()φ()

書けるので,

 
これの形式的な解(※単に積分方程式形)として,
 

φ()=φin()+∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

を得ます。
 

(32):何故なら,(□+μ2)φin()0であり,

かつ,(□+μ2)ΔF(x-y)=-δ4(x-y)なので, 

(□+μ2)∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

=-∫d4yδ4(x-y)^()φ()

=-V^()φ() より, 

(□+μ2)φ()=-V^()φ()

が成立します。
 
 

さらに, 別の観点で考察します。

[□+μ2+V^()]φ()0 Feynman伝播関数: 

ΔF~,[□+μ2+V^()]ΔF~(x-y)=-δ4(x-y) 

を満たし,然るべき境界条件を有するGreen関数と定義すると,
 

(□+μ2)ΔF~(x-x0)

=-δ4(x-x0)-V^()]ΔF~(x-x0) 

=∫d4yδ4(x-y)[-δ4(y-x0)-V^(]ΔF~(y-x0) 

(□+μ2)[ΔF(x-x0)

+∫d4yΔF(x-y)^(]ΔF~(y-x0) 

が成立します。

これは結局,
 

ΔF~(x-x0)

=ΔF(x-x0)++∫d4yΔF(x-y)^()ΔF~(y-x0) 

の成立を意味します。
 

自由粒子の平面波の解:φin()=φin()+φin() 

については,t>t0 

φin(,)i∫d30Δ(xーx0)i(0)0φin(0,0)

t<t0 

 φin(,)i∫d30Δ(xーx0)i(0)0φin(0,0) 

と表現できました。
 

電磁場Aμがあるときにも,仮に自由粒子の平面波の集まり

と同じく,正振動数の波φと負振動数の波φというもの

が定義可能で,φ()=φ()+φ()とそれらの和に

分割できるなら,
 

t>t0 

φ(,)i∫d30Δ~(xーx0)i(0)0φ(0,0) 

t<t0 

φ(,)=-i∫d30Δ~(xーx0)i(0)0φ(0,0) 

と書けと予想されます。

 しかし,むしろ,これらの右辺で与えられるものを,それぞれ,

 φ(),φ()と定義します。
 

 すると,ΔF~(x-x0)=ΔF(x-x0)

+∫d4yΔF(x-y)^()ΔF~(y-x0)によって,

 φ()=φ()+φ(),

 φ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

 と表わされるわけです。 

 (32終わり)
 

 このφ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

 は,Dirac粒子における 

 Ψ()=ψ()+e∫d4ySF(x-y)γμμ()Ψ() 

のアナロジーであり, 

  解の物理的解釈は,その際に電子に対して与えられたものと

酷似しています。
 

散乱後の未来において,正エネルギー粒子を表わす正振動数

の波のみが出現することを保証するため,  

φ() =φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

Feynman伝播関数を伴なった形に積分しました。

 これは,Φ(,t)=φin()

i∫d3p()()∫d4yθ(t-y0)p()()

^()φ()i∫d3p()()∫d4

θ(0-t)p()()^()φ()と

書けます。
 

この式はまた,負振動数の波として過去に伝播するはもの

を含んでいます。
 

 しかし,自分の装置で注視している観測者の見地で

見ると電荷がeの負エネルギー粒子の過去におけう吸収

,電荷が-eの正エネルギー粒子のその時点での放出

に等価です。
 

 その意味で自然界の各粒子には,反対に荷電した反粒子

が存在する,という基本的な,そして実験的に証明すること

のできる予言へと誘導されます。
 

しかし,ある粒子は電荷を持たないかも知れません。

そのケースには,それ自身の反粒子を持たないかも

知れません。

 そうした1つの例は中性でスピンがゼロのπ中間子:π0です。
 

これは荷電π中間子とほぼ同じ質量μを持つけれど,

電磁相互作用μが関わる方程式:

[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)+μ2]φ()0 

を満たさない,というより,e=0の場合の方程式を

満たします。

 

自由π0中間子に対する伝播関数は前節で導入した荷電π

中間子の場合と完全に同様にろんじることができます。

  荷電π中間子に対して定義したカレントの第ゼロ成分の

空間積分Qはπ0中間子では消えるためこの粒子は自由な

Klein-Gordon方方程式のφ=φを満たす実解:φによって

表現されます。
 

 そして,その正振動数解は未来へ負振動数解は過去へ

と伝播するというFeynmanの解釈に従います。

 (※π0の反粒子はπ0自身です。)
 

 いつもよりかなり短かいですが今日は,ここで

終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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2016年5月25日 (水)

クライン・ゴルドン方程式(2)

Klein-Gordon eq.の続きです。

 
この項目の前回記事は,ほとんどがブログを書くモチベーションなどの

余談と,§9.1序文の,主として1度は捨てたKlein-Gordon方程式

の復活の意味,その解釈の論議に集中して,本題はわずかな

モノだったので,

 
もう1度
§9.2の最初から再掲載して,続けたいと思います。
 

§9.2 Klein-Gordon粒子に対する伝播関数 

(The Propagator for Klein-Gordon Particles)
 

 Klein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0 の解φ(), 

ずっと前に誘導されたように,連続の方程式を満たします。
 

すなわち,カレント:μi(φμφ-φ∂μφ)

μ≡∂/∂xμ,に対して,μμ0 ((∂ρ/∂t)+∇0)

が成立します。
 

(※何故なら, μμiμ(φμφ-φ∂μφ) 

iφ(□+μ2)φ-iφ(□+μ2)φ0 となる

からです。※)
 

()≡∫d3ρ(,)=∫d30()

i∫d3(φ0φ) 

(※ただし,a∂0b≡a(∂b/∂t)(∂a/∂t)b ※) 

とすれば,μμ0Gaussの定理から,Qは保存します。
 

そこで,()は,tをはずして単にQと書いてもいいです。
 

(※何故なら,dQ/dt=∫V3(∂ρ/∂t)

=-∫V3()=-∫Sn0です。

ただし,VはQがゼロでない全空間領域,Sはその閉じた

境界面領域(半径:)です。
 

R→∞の極限において,S上のの外向き法線成分:n,

(1/4πR2)よりも急激にゼロに収束するとき,Sn0

です。※)
 

正負両符号の振動数を持つKlein-Gordon方程式の平面波解

は体積Vの箱の中に粒子が丁度1個存在する,という規格化

では, 

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx),

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx) です。 


   ただし,μ(0,),ωp=p0(2+μ2)1/20
です。

μはこの粒子の質量で,それ故,2=pμμ

(0)22=μ2 が満たされています。
 

(2-1): 平面波の波動関数は,1粒子が箱に閉じ込められて 

いる場合には.箱の境界で.exp(±ipx)0となるような離散的

な運動量のみが許容されます。
 

 このとき,

pp'(±)i3[p(±)()0p'(±)()] 

(複号同順)とおけば, pp' (±)=±(2)-1(0p'0)-1/2

(p'0+p0)(20p'0)exp{(±)i(0-p'0)} 

×∫3exp{±i(')} (複号同順)

となります。
 

これは,p≠p'のときには,exp{±i(')}が箱の境界

ではゼロなので,pp' (±)0です。
 

一方,'のときにはp'0=p0,

3exp{±i(')}=Vなので,,

pp(±)i3[p(±)()0p(±)()]=±1 

(複号同順)です。
 

つまり,カレント密度:ρ(±)()ip(±)()0p(±)()

の積分が,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 (複号同順)

なるようにfp(±)()が規格化されています。
 

一般には,pp'(±)=±δpp'(複号同順)です。
 

また,すぐわかるように,負振動数(負エネルギー):-p0=-ωp

の解,と正振動数(エネルギー):p'0=ωp'の解,逆に正振動数:

p'0=ωp',負振動数:-p0=-ωpでの)解の内積を与える積分

はゼロです。
 

すなわち,i3[p()()0p'()()] 

i3[p()()0p'()()]0 です。
 

(注2-1終わり)
 

有限な体積Vの箱の中に1粒子という規格化ではなく,

V→∞の極限の全空間に1粒子があって,平面波の一定運動量

pが箱の境界で消えるとか,周期的境界条件を満たすとかの

離散的量子化条件の必要がなく,が如何なる連続的値をも

取り得るとした場合,


 Klein-Gordon
方程式の平面波基本解
,

p()()(2π)-3/2(2ωp)-1/2exp(ipx), 

p()()(2π)-3/2 (2ωp)-1/2exp(ipx)

で与えられます。
 

このとき,pp'(±)≡∫V=∞3[p(±)()i0p'(±)()] 

について,pp'(±)=±δ3(') (複号同順)になるという

デルタ関数式規格化を満たします。
 

また,iV=∞3[p()()0p'()()] 

iV=∞3[p()()0p'()()]0

です。
 

特に,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 ではなく, 

pp(±)=∫V=∞ρ(±)(,)3x=±∞であり,密度の総和

が有限ではないですから,正エネルギーのみ採用するとしても

直接,粒子の確率密度として扱えるものではありません。
 

したがって,これら完全な平面波fp(±)()自身は運動量

完全に特定されているため,Heisenbergの不確定性原理の意味

で逆に位置は完全に不確定で目の前から無限に離れた宇宙

の果てまで,V=∞の全空間に一様に拡がっていて,全く対等

な確率で(※実は1点の体積はゼロで,有限な確率密度で表現

される点での確率は体積に比例するため,確率ゼロで)どこに

でも存在しているという非現実的な粒子像にしか対応しません。
 

理想的な,まわ孤立していて一切力を受けない質点は常に一定

速度(一定運動量)で運動を続ける,というNewtonの「運動の

第一法則(慣性の法則)」に従う古典的な自由粒子像,


 
つまり我々にとって常識的な特定軌道で運動する局在化
 

した粒子を平面波で表現することはできません。
 

そこで,量子力学的には現実の空間に局在する自由粒子は運動量

が完全に一定に特定されているわけではなく,何らかのゆらぎ

:Δでもって,わずかに拡がった謂わゆる重ね合わせ波束

(wave-Packet)の形で存在するとします。
 

正振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()≡∫Δ[()p()()]3で表現します。
 

こうすれば,iV=∞3[φ()0φ()] 

=∫Δ3|()|2と書けます。

  
は正定置(有限な正の数)ですから,

=∫Δ3|()|2=+1となるように係数:

()を規格化しておけば,

φ()=∫Δ[()p()()]3,運動量

平面波を運動量確率密度:|()|2で重ね合わせらた波で

あると解釈することが可能です。
 

しかしながら,同様に負振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()=∫Δ[()p()()]3で定義し, 

iV=∞3[φ()0φ()]とすれば, 

=-∫Δ3|()|2となって,0ですから,

単純な確率解釈は困難となります。
 

ここに,Klein=Gordon方程式の解に対する確率解釈にとっての困難

が凝縮されています。
 

何故なら,Dirac方程式の解のときにも見たように,通常の粒子

を示す波動関数=波動方程式の解φ():今の場合なら,

Klein-Gordon方程式の一般解φ(),正振動数の平面波だけ

ではなく負振動数の平面波と混合した重ね合わせで与えられ,

その粒子の全空間での存在確率(=+1)と解釈したい量: 

Q=iV=∞3[φ()0φ()]は正にも負にも成り

得るからです。
 

直感的解釈の是非は後回しにして,Klein-Gordon方程式

Feynman伝播関数(Feynman^ropagator):Δ(x-y)

を見つけたいと思います。
 

(※前回の再掲記事終了)
 

さて,Klein-Gordon方程式のFeynman伝播関数をΔ()

書くと,これは,(□+μ2)Δ(x―y)=-δ4(x―y)

を満たす,Green関数:Δ(x)のうちで遅延Green関数,

先進Green関数という伝播関数の境界条件を満たすもの 

です。
 

Δ(x)=∫d4(2π)-4Δ^()exp(ipx),Fourier積分表示

をすると,(□+μ2)Δ(x)=-δ4(),

(-p2+μ2)Δ^()=-1を意味します。
 

したがって,2≠μ2ならΔ^()1/(2-μ2)です。
 

ここで,前に,

Dirac方程式:[iγμμ)]F(x-y)=δ4(x-y)

を満たす,質量m,スピン1/2Dirac粒子の伝播関数:

(), 

()=∫d4(2π)-4exp(ipx)/(-m+iε),

(γμμ)で与えられたのと同じく,
 

Δ()=∫d4(2π)-4exp(ipx)/(2-μ2iε)

としてみます。
 

すると,分母に付加された微小な純虚数iε(ε=+0)のため,

正振動数(正エネルギー)の波のみが時間の順方向(未来)へと

進み,負振動数(負エネルギー)の波は時間の逆方向(過去)

伝播するという,まさに望ましい境界条件を満たすことが

保証されます。
 

BjorkenDrellのテキストのMechanicsの第6章 伝播関数

の理論;本ブログでは,20105/24の記事

「散乱の伝播関数の理論(7)でも論じたように,iεの

おかげで分母をゼロとする極を避ける外周上の積分

同一視された結果,上記性質を持つような伝播関数と

できる他の適切なやり方は存在しません。
 

(22):上記のことの説明です。 

Δ(x―x0) 

=∫d4(2π)-4[[exp{i(x―x0)}/(2-μ2iε) 

=∫-dE[exp{-iE(t-t0)}

∫d3[exp{i(0)}]

/[{E-(ωpiε)}{E-(-ωpiε)}]

ωp(2+μ2)1/2 と書けます。
 

E=p0を複素数とする複素E平面で,t>t0のときは

-dEの積分路を実軸:(-∞,)に半径∞の下半円を

時計周りに進む経路を加えた閉じた外周C上の積分と

見なします。
 

下半円上では,E=Rexp(iθ)=R(cosθ+isinθ)

(θ:π→2π)より,

exp{-iE(t-t0)}exp{icosθ(t-t0)}

exp{sinθ(t-t0)} です。
 

π≦θ≦2πで,t>t0のときは,θ=π,θ=2πで

sinθ(t-t0)0 となる他は常にsinθ(t-t0)0

なので,R→∞でexp{sinθ(t-t0)}は急激にゼロとなる

ため.非積分関数や積分路の長さπRが掛かっても積分への

寄与はゼロです。


  実質上,積分路が実軸
のみの場合と積分の結果は一致する

と考えられるため,この積分路の変更が有効なわけです。
 

分母の2つの極:E=ωpiεとE=-ωpiεのうち,この閉路

の中にあるのは,E=ωpiεのみです。


 

 留数定理から。 

CdE[exp{-iE(t-t0)}

/[{E-(ωpiε)}{E-(-ωpiε)}]

=-(2πi)exp{-iωp(t-t0)/(2ωp) です。
 

(※Cをまわる経路の向きが時計回りで,負の向きなので

符号()が付加されます。)
 

故に,t>t0なら, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3(2π)-3

[exp{-iωp(t-t0)i(0)}]/(2ωp) 

;ωp(2+μ2)1/2と書けます。
 

同様に,t<t0なら,実軸に反時計周り(正の向き)の上半円を 

加えた外周Cを与えて,E=-ωpiεを留数として,

C-dEから,(2πi)exp{-iωp(t-t0)/(2ωp)であり, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3(2π)-3

[exp{iωp(t-t0)i(0)}]/(2ωp) 

を得ます。

いずれにしろ, Δ(x―x0)

=-i∫d3(2π)-3[exp{―ip(x―x0)}]/(2ωp) 

なる形であって,

t>t0ならp0=ωp(2+μ2)1/2(正エネルギー)で,未来

への伝播の遅延波,

t<t0なら

0=-ωp=-(2+μ2)1/2(負エネルギー)で過去へ伝播の先進波

という違いがあるだけです。
 

(20-2終わり)
 

Δ(xーx0)

=∫d4(2π)-4[exp{i(x-x0)}/(2-μ2iε) 

が正しいFeynman伝播関数:ΔFを与えることがわかりました。
 

これは,Δ(x―x0)

=-i∫d3{p()()p()(0)}θ(t-t0) 

i∫d3{p()()p()(0)}θ(t-t0) 

あるいは, 

Δ(x―x0) 

=-i∫d3{θ(t-t0)p()()p()(0) 

{θ(t-t0)p()()p()(0)}  

と表現されます。

  
前に正振動数の波束を, φ()=∫[()p()()]3,

負振動数の波束を.φ()=∫[()p()()]3

書きましたが一般のスピンゼロ粒子の波動関数φ(),これらの和, 

φ()=φ()+φ()で与えられます。
 

Δ(xーx0)は時刻:t=t0,0にある波:φ(0)=φ(0,0) 

の正振動数部分のみを時間の順方向(未来:t>t0)へと伝播させて, 

iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0) を成立させ,
 

他方,負振動数部分のみを時間の逆方向(:t<t0)へと伝播

させて,iθ(t-t0)φ(,) 

=―∫d30Δ(x―x0)i(0)0φ(0,0) を成立

させます。
 

これらは直接計算によって確かめることができます。
 

これは,7:本ブログでは「散乱の伝播関数の理論(9)」

で見たように,Dirac方程式に従うスピン1/2粒子の伝播関数:

F(x-x0). 

θ(t-t0)ψ(,)i∫d30F(x-x0)γ0ψ(0,0) 

θ(0-t)ψ(,)=-i∫d30F(x-x0)γ0ψ(0,0) 

なる式を満たしたのとは僅かに形が違いますが,伝播関数として

同義であることが,すぐわかります。
 

※(20-3):直接計算です。

∫d3[p(±)()i0p'(±)()]=±δ3(')

(複号同順)から, 

∫d30∫d3p(±)()p(±)(0)i0φ±(0)  

∫d3∫d3'p'(±)()±(')

∫d30p(±)(0)i(0)0 (±)(0) 

=∫d3∫d3p(±)() ±('){±δ3(')} 

=±∫d3p(±)()±()=φ±() (複号同順)
 

また,∫d30∫d3p()()p()(0)

i0φ(0)∫d30∫d3p()()p()(0)

i0φ(0)0 が成立するのは明らかです。

よって,iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0),かつ, 

iθ(t-t0)φ(,) 

=―∫d30Δ(x―x0)i(0)0φ(0,0) 

の成立は証明されました。
 

さらに,Klein-Gordon演算子:□+μ2を形式的に, 

□+μ2=∂2/∂t2―∇2+μ2=-[{i(/∂t)}2{(-i)2+μ2}] 

=-[{i(/∂t)}20()2] と書くと,
 

□+μ2=-[i(/∂t)0()][i(/∂t)0()]より, 

(□+μ2)ΔF(x-x0) 

=-[i(/∂t)0()][i(/∂t)0()]

ΔF(x-x0) =-δ4(x-x0) です。
 

そこで,(x-x0)[i(/∂t)0()]ΔF(x-x0)

と置けば,[i(/∂t)0()](x-x0)=δ4(x-x0)

です。
 

直感的な伝播関数=遅延Green関数の理論で波動関数自由粒子

の波動関数Φが,Schroebinger方程式:i(∂φ/∂t)0φ満たす

系の伝播関数を,[i(/∂t)0()](x-x0)=δ4(x-x0)

を満たすGreen関数:(x-x0)とするとき, 

 θ(t-t0)φ()i∫d30(xーx0)φ(0)

なる式を得ましたが,

 
これのアナロジーで,iθ(t-t0)φ() 

=∫d30[i(/∂t)0()]ΔF(x-x0)φ(0)

と書けるはずです。
 
 

 実際:右辺=∫d30[i(/∂t)ΔF(x-x0)]φ(0) 

+∫d30∫d3[ωpp()()p()(0)

∫d3'p'()(0)(')] ですが,
 

右辺第2項=∫d3∫d3'[(1/2)(ωp/ωp')1/2

p()()exp{i(ωp'-ωp)0}δ3(')(')]

(1/2)∫d3()p()()=φ()/2 です。
 

右辺第1項=∫d30[i(/∂t)ΔF(x-x0)]φ(0) 

=∫d30[i(/∂t0)ΔF(x-x0)]φ(0) 

=∫d30[ΔF(x-x0)]i{∂φ(0)/∂t0)} 

∫d30∫d3p()()p()(0) 

∫d3'[ωpp'()(0)(')]
 

これは結局, φ()/2=右辺第2項に一致します。
 

したがって,iθ(t-t0)φ(,) 

=∫d30Δ(xーx0)i(0)0φ(0,0)

なる表現が,かつて直感的論議から出発して得られた, 

θ(t-t0)φ()i∫d30(xーx0)φ(0) 

なる表現に同値と考えられます。
 

(20-3終わり)
 

ブログの特徴ではありますが,冗長な注釈が続いて長くなり過ぎたので 

ここで一旦切ります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年5月22日 (日)

強い相互作用(湯川相互作用)(20)

「強い相互作用(湯川相互作用)」の続きです。 

「弱い相互作用の旧理論」で必要だったため,この項目を蒸し返して

スキップしていた部分を追加していますが,これで終わる予定です。
 

前回記事の最後では,
 

最終的な核子電磁カレントの形状因子としては,

eu~(p')Γμ(p',)() 

=eu~(p')[γμ1(2){iσμνν/(2)}κF2(2)]() 

なる形になることがわかります。
 

eは物理的素電荷であり,陽子pについては,1(0)=F2(0)=1, 

κ=κp1.79,,中性子nについてはF1(0)0,2(0)=1. 

κ=κn=-1.91 と規格化します。
 

と書いたところで終わりました。
 

今日は,まず,上記の核子カレントの電磁形状因子の式を陽子

と中性子に分けて次のように書きます。


 後の議論で,電子の運動量を小文字のp,p'で表わす必要性

から,区別するため,核子の運動量を大文字のP,Pに書き換え

ます。
 

()μ(P',P)=eu~(P')Γ()μ(P',P)(P) 

=eu~(P')[γμ1()(2){iσμνν/(2)}κ2()(2)]

(P),および,

()μ(P',P)=eu~(P')Γ()(P',P)(P) 

=eu~(P')[γμ1()(2){iσμνν/(2)}κ2()(2)]

(P) です。
 

これらから,さらにアイソスピン定式化を用いて,陽子pや中性子

nの電磁カレントを,アイソスカラー部分とアイソベクトル部分

の和として,次のように書きます。
 

つまり,χ[(S)μ(P',P)+τ3(V)μ(P',P)]}χ 

= χ~(P')[γμ{1(S)(2)+τ31(V)(2)} 

|iσμνν/(2)}{2(S)(2)+τ32(V)(2)}](P)χ 

です。
 

添字のSはアイソスカラ-部分,Vはアイソネクトル部分

を指します。
 

ただし,1(S)(2)(1/2){1()(2)+F1()(2)}

 ⇒ F1(S)(0)1/2, 

1(V)(2)(1/2){1()(2)-F1()(2)} ⇒ F1(V)(0)1/2,
 

2(S)(2)(1/2){κ2()(2)+κ2()(2)}

⇒ F2(S)(0)0.06, 

2(V)(2)(1/2){κ2()(2)-κ2()(2)}

⇒ F2(V)(0)1.85 としました。
 

アイススピン部分の(χτ3χ),陽子pのとき+1,中性子n

のとき-1ですから,これで元の表現式に一致しています。
 

ところで,2010年6/20の記事:

「散乱の伝播関数の理論(14)(応用22),または,

2015年11/7同じ記事を再掲載した,

「散乱問題の復習(4)(陽子による電子の散乱2)によれば,

電子の陽子による散乱の最低次=Born近似の散乱微分断面積は, 

dσ/dΩ=(α2[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]) 

/[42sin4(θ/2){1(2/)sin2(θ/2)}] 

で与えられます。
 

この,同じ散乱のS行列において電磁相互作用結合eの2次:2

を無次元化した微細構造定数αについては.上と同じBorn近似

(=αの1)の精度ですが,

  
強い相互作用の効果については,全てのオーダーの寄与:

つまり核子電磁カレントに形状因子を含めた物理的な陽子,

中性子を標的と考えた散乱微分断面積は,次のように修正

されます。
 

すなわち,

dσ/dΩ=(α2[{12-{q2/(42)}κ2222}cos2(θ/2) 

{2/(22)}(1+κF2)2sin2(θ/2)]) 

/[42sin4(θ/2){1(2/)sin2(θ/2)}] 

です。
 

(20-1):今日の記事のほとんどは上の修正式が得られる

根拠を示すために,
 

まず,過去に,修正前の素朴な電子の陽子による散乱断面積

である,

dσ/dΩ=(α2[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]) 

/[42sin4(θ/2){1(2/)sin2(θ/2)}]

なる式を得た経緯をたどってみます。 
 

この計算の元になる散乱の最低次のS行列要素は, 

fi(i)ε0-1∫d4xd4{eψf~()γμΨi()

}F(x-y)μ()で与えられます。

 ただし,ψi(),ψ(),それぞれ,始状態の
入射電子, 

終状態の散乱電子の波動関数(スピノル)であり,μ()

はポテンシャル源となる陽子の電磁カレントです。
 

(Coulomb散乱は,標的陽子が固定されているとする

模型で,今の場合は標的が自由陽子てす。)
 

この陽子の散乱の断面積の評価では,電磁カレントを,

Jμ()=epψpf~()γμψpi()なる遷移カレントの形

に選択しました。すなわち,Ψi(),Ψ(),それぞれ

陽子の始状態,終状態の波動関数としました。



  その計算結果は最低次近似ですが,正しく実験結果を

評価していると考えられます。
 

この座標表示のBorn近似のS行列要素を運動量表示に

直すと,fi(i)(1/2)(2π)4δ4(f-Pi+pf-pi)

{2/(if)}1/2{2/(pipf)}1/2fi となります。
 

 Mfiは不変振幅であり, 

fi(2/ε0)[~(f,f)γμ(i,i)](2iε)-1 

[~(f,f)γμ(i,i)] です。

 ただし,q=pf-pi=Pi-Pf です。
 

単位体積当たりの遷移率(単位時間当たりの遷移確率):wfi

,相互作用体積V,時間Tを,VT=(2π)4δ4(0),V→(2π)3

として,

fi|fi|2/VT=(2π)4δ4(f-Pi+pf-pi) 

(2π)-12{22/(ifpipf)}|fi|2 

で与えられます。
 

 次に,このwfiを入射流束:|inc|,および単位体積当たりの

標的粒子数(1/)で割って,標的陽子1個当たり,単位面積

を通過する入射ビームの1電子当たりの確率速度とします。 

(V=(2π)3を掛けます。)
 

最後に,物理的な断面積を得るため,物理過程を観測するため

の実験室の状況に対応する電子と陽子の終状態の運動量区間:

ff+dfff+dfの間の要素:3f,3f

に入ってくる終状態の個数をカウントすると.散乱断面積

という単位が面積の量になります。
 

終状態の個数は,電子と陽子の積で,{Vd3f/(2π)3}

×{Vd3f/(2π)3}ですが,最終計算結果は,V=(2π)3なる

規格化で評価するため,結果,単にd3f3fでを乗じる操作

となります。
 

結局,この終運動量区間の終状態への遷移に対応する

遷移断面積,dσ=d3f3f(2π)3|inc|-1fi 

=d3f3f{22/(fipfpi)}(2π)-12(2π)3|inc|-1 

×|fi|2(2π)4δ4(f-Pi+pf-pi) と書けます。
 

入射電子の流束は,|inc||ii|/

|i/ii/Pi|/Vですから,

iPi|inc||iPiii|ですが,入射粒子と

標的粒子は同一直線上で衝突するため,(ii)2i2i2

です。
 

 故に,iPi|inc|

 [(iPiii)2(i2i2)(Pi2i2)]1/2 

 =[(ii)2-m22]1/2 です。
 

よって,(iPi)-1|inc|-1[(ii)2-m22]-1/2 です。
 

それ故,dσ=d3f3f{22/(fpf)} 

(2π)-2δ4(f-Pi+pf-pi)[(ii)2-m22]-1/2|fi|2 

を得ます。

 この式は任意の慣性系(実験室系or重心系)で成立する式
です。
 

次に,標的の終状態にわたる総和積分d3fを実行します。
 

公式:∫d3f/(2pf)=∫d4fθ(f0)δ(f2-M2)より, 

∫d3fδ4(f-Pi+pf-pi)/pf 

2[θ(i-Ef+Ei)δ(f2-M2)]f=Pi-pf+pi です。
 

これは,散乱電子のエネルギーf,0f≦Ei+Eiの範囲

限られること,また,終状態の陽子質量もMのままであること: 

f2(i-p+pi)2=M2 を意味します。
 

特に,衝突前,標的が静止していたと見る実験室系で考えると, 

iμ(Pi,i)(,0)なので,散乱電子のエネルギー:f

範囲は,0f≦Ei+Mです。
 

また,0=f2-M2(i-p+pi)2-M2 

=-2(-Ei)2i222fi 

=-2(-Ei)2i222|f||i|cosθ 

ですから,
 

δ(f2-M2)

=δ(2(M+Ei)2MEi222|f||i|cosθ) 

であり,∫dEfδ(f2-M2) 

(1/2)/[(M+Ei)(|f|/dE)|i|cosθ]です。
 

同時に,f2=M2から,-M(-Ei)=m2―Eifi 

さらに,[(ii)2-m22]-1/2|=M-1(i2-m2)-1/2

1/(|i|) です。
 

3f/f|f|dEfdΩfの右辺のうちで,0i+MdEf

のみを実行します。
 

すると,散乱断面積の角分布:dσ/dΩf 

=∫0i+MdEfδ(f2-M2)[2|f|/|i|](2π)-2|fi|2 

(2|f|/|i|)(4π2)-1|fi|2 

/[(M+Ei)(|f|/dE)|i|cosθ]  

が得られます。
 

散乱は偏極した粒子によるものでなく,偏極不明の非偏極粒子 

によるとして,上記のスピン固定の断面積を,終状態粒子の

スピン状態について総和したものを非偏極の断面積として

初期スピンについて平均を取ります。
 

これは,不変振幅による因子:|fi|2の中に反映させすること

できます。
 

すなわち, |fi|2,|fi|2(4/ε02)|2|-2(1/4)

ΣSi,Sf|[~(f,f)γμ(i,i)]|2 

×Σsi,sf|[~(f,f)γμ(i,i)]|2  

に置換すれば得られます。
 

これは,|fi|2[4/{64ε0222(2)2}

r[(f+m)γμ(i+m)γν]r(f+M)γμ(i+M)γν]

と書けます。
 

そして,r[(f+m)γμ(i+m)γν] 

4[fμiν+pνiμ-gμν(i-m2)],かつ 

r(f+M)γμ(i+M)γν] 

4[fμiν+Pfνiμ-gμν(i-M2)] です。
 

故に,

r[(f+m)γμ(i+m)γν]r(f+M)γμ(i+M)γν] 

16[2(f)(ii)2(i)(i)

2(fi)(i-m2)2(i)(i-M2)

4(i-m2)(i-M2)] 

32[(f)(ii)(i)(i)-m2(fi) 

-M2(i)222] です。
 

よって,|fi|2[4/{64ε0222(2)2} 

r[(f+m)γμ(i+m)γν]r(f+M)γμ(i+M)γν] 

[4/{2ε0222(2)2}[(f)(ii)(i)(i) 

-m2(fi)-M2(i)222] です。
 

無次元の微細構造定数:α=e2/(4πε0) 1/137により, 

24πε0αを代入すると, 

|fi|2[8π2α2/{22(2)2}][(f)(ii)

(i)(i)-m2(fi)-M2(i)222]

です。
 

そして,エネルギー・運動量の保存則:=Pi-pf+pi

より,(f)(ii)(i)(i)-m2(fi)

-M2(i)222

2(i)(ii) (if){(ii)(if)-M2}

22({(i)(ii)}-+m22 です。
 

これは,実験室系:i(,0)では, 

右辺=22fi+M2(fii)(i-Ef1)

22(f-Ei)+m22

=M2(fii)-M2(fii)(f-Ei)

+m2(f-Ei)+m22 となります。
 

=Pi-pf+pi,かつ,f2=M2から,

(-Ei)=m2―Eifiであり,また,

2(-pi)2222(fii)なので, 

(-Ei)=q2/2 です。
 

さらに,2を無視する近似では,|| ~Ef,|i| ~Ei

なので,

fii ~ Efi(1cosθ)2fisin2(θ/2) 

fii ~ Efi(1cosθ)2ficos2(θ/2)  


 そして,(-Ei)=m2―Eifi

~-Efii= -2fisin2(θ/2)から,

f ~ Ei/{1(2i/)sin2(θ/2)} です。
 

したがって, 

(f)(ii)(i)(i)-m2(fi)

-M2(i)222 

22fi[cos2(θ/2){2/(2)}sin2(θ/2)]

 であり,また,逆に,

2(-pi)2222(fii) 

 ~ -2(fii)= -4fisin2(θ/2) 

ですから.

 
|fi|2(π2α2[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]) 

/[22fisin4(θ/2)]

です。
 

一方,dσ/dΩf 

=∫0i+MdEfδ(f2-M2)[2|f|/|i|](2π)-2|fi|2 

(2|f|/|i|)(4π2)-1|fi|2 

/[(M+Ei)(|f|/dE)|i|cosθ]  ですが,
 

|i|~Ei,|f|~Efの近似では,|f|/|i|~Ef/i

であり, [(M+Ei)(|f|/dE)|i|cosθ]

~ M{1(2i//)sin2(θ/2)}ですから,

dσ/dΩf (2f/4π2i)|fi|2

/{1(2i//)sin2(θ/2)} です。

これに,|fi|2(π2α2[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)])
 

/[22fisin4(θ/2)] を代入すると,
 

dσ/dΩf (α2[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]) 

/[4i2sin4(θ/2){1(2i//)sin2(θ/2)}] を得ます。 

(20-1終わり)
 

(20-2):ここからは復習でなく,本題です。
 

電子の陽子による散乱で求めた最終的な,

i>>m.f>>mの高エネルギー電子に対する散乱断面積

Born近似の近似式: 

dσ/dΩf(2f/4π2i)|fi|2/{1(2i//)sin2(θ/2)} 

,

不変振幅:fiを,標的粒子が強結合による電磁構造を持つ

振幅修正するだけで,このまま,実験室系での散乱断面積

評価の出発点とすることができます。
 

すなわち,不変振幅因子|fi|2,元の,

|fi|2[π2α2/{4222(2)2}

r[(f+m)γμ(i+m)γν]

×Tr(f+M)γμ(i+M)γν] から,
 

|fi|2[π2α2/{422(2)2}

r[(f+m)γμ(i+m)γν]

×Tr(f+M)Γμ(f,i)(i+M)Γ~ν(f,i)]

に修正します。

ただし,Γ~ν(f,i)≡γ0Γν(f,i)γ0 です。


 

 図9.3の左の電子線部分はそのままで,右側の陽子の太線は

 上図10-13の(a)だけだったのに,(b)(c)など全ての効果を含む

 ようにするわけです。

ここまでの考察から,この陽子の修正頂点:

γμΓμ(f,i),Γμ(f,i)

=γμ1(2){iσμνν)/(2)}κF2(2)  

σμν­(i/2)[γμ,γν] なる形になることがわかって

います。
 

素朴なケースのトレース計算を再提示すると, 

r[(f+m)γμ(i+m)γν] 

4[fμiν+pνiμ-gμν(i-m2)],かつ 

r(f+M)γμ(i+M)γν] 

4[fμiν+Pfνiμ-gμν(i-M2)] です。
 

これらの積に,[4/{64ε0222(2)2}[π2α2/{422(2)2} 

実験室系での近似では,[π2α2/{6422f2f 2sib4(θ/2)}

を乗じたものは.丁度,|fi|2の修正式のF12の係数になって

います。
 

そして,前に与えた通り, 

r[(f+m)γμ(i+m)γν]

×r(f+M)γμ(i+M)γν] 

32[(f)(ii)(i)(i)-m2(fi) 

-M2(i)222] です。
 

実験室系で,かつ,2を無視する近似では,結局,12の係数

,係数:[π2α2/{6422f2f 2sin4(θ/2)}×32を除いて, 

42fi[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]) 

です。
 

以下,ノートでは全部でA45ページにわたる計算があり,

普通はブログ記事でも一切省略せず,むしろ,検算して追加する

ほどの主義なのですが,特別に今回は詳細計算を省略します。

(※まあ計算結果が正しいのはわかってるし,冗長な導出過程は

ただシコシコと算するだけで個人的な興味でのみ重要に過ぎ

ないので。。。)
 

結果だけ述べると,まず,κF12の係数は,

~ -42fisin2(θ/2) です。
 

次に,κ222の係数は,

~ -q2f[cos2(θ/2)2sin2(θ/2)]です。
 

そして,全ての項を加えると, 

42fi[cos2(θ/2){2/(22)}sin2(θ/2)]12 

42fisin2(θ/2)κF12 

-q2f[cos2(θ/2)2sin2(θ/2)]κ222
 

42fi([12{2/(42)}κ222]cos2(θ/2) 

{2/(22)}(1+κF2)2sin2(θ/2))です。
 

[π2α2/{222f2f2sin4(θ/2)}を乗じて, 

|fi|2(π2α2[12{2/(42)}κ222]cos2(θ/2) 

{2/(22)}(1+κF2)2sin2(θ/2))

/{22ffsin4(θ/2)} を得ます。
 

出発点の近似式:dσ/dΩf(2f/4π2i)|fi|2 

/{1(2i//)sin2(θ/2)} に代入すると,結局,
 

dσ/dΩf(α2[12{2/(42)}κ222]cos2(θ/2) 

{2/(22)}(1+κF2)2sin2(θ/2)) 

/[4i2{1(2i//)sin2(θ/2)}sin4(θ/2)] 

が得られます。   (20-2終わり)

 

1(2)とF2(2)を独立に決定するのは,相異なる散乱角θ

とエネルギーE=Ei,2を等しくした測定の断面積を比較

することでなされます。
 

同じq2での,2つ以上の(dσ/dΩ)の観測は,固定したq2

対して,2{1(2//)sin2(θ/2)}sin4(θ/2)(dσ/dΩ)

,cos2(θ/2)ごとにプロットしたとき,それらの点が上記no

近似式を満たしていれば, 全てがほぼ同一直線上にあること

から,F1(2)とF2(2)を評価することが可能です。
 

こうした直線から如何なる偏差があったとしても,それは,

もはや強結合を無視したとか.形状因子が計算不可能であった

とかに原因を問うことはできず,むしろ,計算の電磁力学的

部分の誤差に帰するべきです。
 

恐らく,αのべき級数での第1項のみをキープしたBorn

近似故の誤差,ここでの考察より,さらに深い何らかの理由

に帰すべきと考えられます。
 

計算を大幅に省略しましたが,とにかく,これでスキップした

強い相互作用の最終部分である核子の電磁形状因子の項目は

終了です。
 

 そして,「強い相互作用(湯川相互作用)」シリーズを

 終わります。
 

 (参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

 "Relativistic QantumMechanics" (McGrawHill)

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2016年5月18日 (水)

30年以上昔のこと

 ジャネットジャクソンが50歳で妊娠したらしいというニュース。。。

 つい31年前のことを思い出しました。

 35歳(1985年)のとき,,家賃を払うのが面倒臭くなったというのが主な理由で,木場に3DKの分譲マンションを買い,,それまで8年間,ただ飲んで帰って寝るだけのためにあったような新高円寺駅近くの6畳一間風呂無し,,共同トイレの安アパート生活が少し変化しました。

 何もないliリビングに通販で買ったソファベッドとストーブだけというのが寂しかったので,最初はサンスイのミニコンポとPanasonuicの29インチテレビを置きました。そこから,オーディオの趣味は,どんどんエスカレートして,大きなスピーカーや単品の比較的高価なコンポたち,,アンプもセパレートになり.大画面の洋画もモニターがPioneerとかLDとかドルビーサラウンドとかetcと,マニア的に凝っていきましたね。

 もともと病的に強迫観念に取りつかれる..というより実際,強迫観念症も含んだ仮面ウツ病のような病気で長年トランキライザーに頼ってました。

(※キヨハラくんのことをとやかくは言えない。。人間,精神が宙ブラリンになって頼るモノがないと意外に弱いモノです。。※)

,40歳のころにはさらにパソコン、ゲーム三昧,そして,モデムでパソコン通信と飲酒以外は,非現実的,バーチャルな方向に向かっていきました。,

 入れ物ができたのだから嫁を貰って暖かい家族をつくる。。という,ような生き物の本来の子孫を残すという「神の摂理」にしたがった生活はどんどん遠のいていきました。

誰にも邪魔されずにオタク趣味を追及。。自分さえ満足ならいい。。

 この電車男め!!。。。。。

 そんな私が最初の頃1985~1986年頃に買ってよくきいてたのがJanet-Jacksonの「control」でした。なつかしい。。今5,0歳ということは,このころはまだ10代か20歳だったのかな?もちろん当時は映像なしの音だけでしたが。。

 私の持っていたCDはBookオフ行きで今はHDDの中にバックアップがあるのみですが。。。

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2016年5月17日 (火)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)(1)

今日は,全くの余談から始めます。
 

私が,学生時代の昔から今まで,何らかの好奇心を覚えて詳細

知りたいと思ったコトについて(主に自然科学的事柄ですが),

それがヒョッとしたら,いくら努力しても能力的に自分には到底

無理と思われるような高い山であろうと,とにかく諦めずに一番

下からでもコツコツと積み上げてきた履歴の覚え書きのノート

,この世からいなくなる前に日記のようにホームページで

残しておこう。。というのが,現在の本ブログの科学記事

アップする主たる意図になっています。
 

そういう意味では,少なくとも,素粒子論や量子論で,初期の学生

時代の勉強のテキストであり,後の40歳代からは,学生当時には

主に時間が足りなかったために挫折していた部分を,改めてヒマ

なときの趣味として読み返して読了した,

Bjorken-Drell著の「Relativistic QuantumMechanics」と,Relativistic-QuantumFields」の2冊についての覚え書き

くらいは,全てを記事として残しておきたいと思います。
 

これらのテキストは,関連題目の記事では,記事の最後に参考

文献として書いてありますが,実は,ブログ内容=覚書きノート

,このテキストに限らず,参考と書いた文献の全内容を丸写し

どころではなくて,


 もしも私が理解できないなら.
最初からブログ記事に上げる

こともないのですが。。。
 

私なりに読んで理解できたものなら.何度か咀嚼,反芻して,

プラスアルファとして行間を自己流注釈で埋めて,私自身が種元

のテキスト無しで読み返しても,そのまま,大して再考の必要なく

スラスラ読めることを旨とした回顧録的自己満足的記事です。
 

逆に,反芻も注釈も必要なく,初めからスラスラ理解できた場合

の記事は,テキストの丸写し的なモノになってるかもしれません。
 

特に断らない限り,科学記事のほとんどには,私個人のオリジナル

な発想などほ無く,私が誤解釈していれば記事は単なるゴミです

,さもなければ過去や現在の多くの他の方々の知見の寄せ集め

を解説しているに過ぎません。
 

そこで,本ブログでは,Bjorken-Drell

Relativistic Quantum-Mechanicsの第9章

Klein-Gordonequation)クライン・ゴルドン方程式)をスキップ

して,10章の非電磁相互作用(強い相互作用・弱い相互作用)

について記事を進めていたことに,先日気付いたため,


 今回はこの第9章の覚え書きノートからの記事
も書いておこう

と思ったわけです。
 

前置きが長くなりましたが,第9章についての覚え書きノート

の最初の日付1994年3/13となってるので,ここは44歳のとき

に復習したようです。
 

 ちなみに,8章の「S行列の高次補正」=本ブログでは,

「量子電磁力学の輻射補正」の開始ページの日付は,1994

/ですから,その頃はまだ真面目にせっせと続けて読書に

励んでいたようです。
 

(※ イヤ,普通に男女交際とか,酒食,ギャンブルなどの趣味

に走っていれば,もっと,人生幸せでヨカッタでしょうにネ。

困ったモンダ ※)
 

さて,第9章の§9.1 序文(Introduction)から本文に入ります。
 

π中間子のようなスピンがゼロの粒子を含むプロセスにも

伝播関数定式化を用いることができて,これまでの計算の

テクニックを発展させることができます。
 

こうした,スピンゼロの粒子を,単一の成分を持つスカラー

波動関数φ()で記述しようと試みます。
 

その結果,一旦は相対論的波動方程式としては捨てられた,

自由粒子Klein-Gordon(クライン・ゴルドン)方程式:

(□+m2)φ()0 に戻る方向に導かれます。
 

この方程式は,2次の微分方程式てもあり,また,保存する

正定置な確率を定義できないという理由で,結局,相対論的

波動方程式としては行列を含む形ですがSchoredinger方程式

と同じく1次の方程式のDirac方程式を採用し,その当時は

こちらの方は捨てられたのでした。
 

しかし,これを排除すべきという直接の動機は,ここまでの

Dirac方程式によるFermi粒子の空孔理論や反粒子の存在などの

理論を通じて消えたと考えられ,改めて,時間の逆向きに伝播

する負エネルギー粒子というFeynmanの解釈などを考慮して,

この方程式を再考したいと思います。
 

,電子と同じく,スピンゼロの粒子にも当てはまることがやがて

わかるであろう上記のFeynmanの解釈には,粒子のスピンがどう

であるかは,厳密には関係しません。
 

電子のケースにおけるように再び,こうした描像に導かれる

予定です。
 

例えば.時間の逆向きに伝播する負エネルギーのπ中間子である

その反粒子のπ中間子の存在などが確認されます。
 

しばらくの間,こうした粒子に対してはKlein-Gordon方程式

を使うのが適切かどうかを考察します。
 

スピン1/2の電子や核子ほどに安定なスピンゼロ粒子の素粒子

の存在は今のところ知られていません。
 

しかしながら,π中間子やK中間子はほとんど安定なスピンゼロ

粒子の候補です。
 

それらは同時に多量に豊富に生成されたり,崩壊したりする粒子

であることが実験的にわかっています。
 

例えば,次に列挙する反応があります。 

p+p → p+π+π,p+p → p+p+π0, 

p+p → p+Λ0+K, 

π+p → Λ0+K0,+p → Λ0+π0,

+p → π+π, etc.です。
 

そこで,こうしたスピンゼロ粒子(中間子)に対する波動方程式

としては,こうした可能な生成・消滅反応を考慮する必要が

あります。
 

こうしたスピンゼロの1つの粒子が,光子と相互作用する電子

の世界線の議論において可能であった散乱過程を通過する粒子

の世界線に従うことは不可能です。
 

こうしたことは,荷電π中間子やK中間子が光子との相互作用

する際にも真です。

 
何故なら,次の9.1のようなグラフが寄与するからです。



 

 実験,観測においても確認されていますが,単一の

スピンゼロ粒子が生成・消滅することが可能である,という

ことは,それらの相互作用理論が本質的に,粒子の生成消滅

を伴ない粒子数が変動することも可能な多粒子理論(多体問題)

なければなたないこと,を要求します。
 

そこで,場の量子論形式がこうした問題に最適なのですが,

ここでは,再び,電子と光子に関わる論議のように,波動方程式

(□+m2)φ()0 の右辺にソース項(=湧出し,吸込み)

付加して,結合した中間子について,直感的な伝播関数アプローチ

を拡張する方法を採用します。
 

これによって多大のことが理解できるようになるはずです。
 

もしも,弱い相互作用まで含めた議論をするなら,スピンゼロ粒子

もまた次のような形の反応で崩壊します。
 

π→μ+ν,→π+π+π,

→π0+μ+ν です。
 

こうした弱い崩壊相互作用の非常に小さい振幅の故に,荷電

のπ中間子やK中間子は,τ ~ 10-8sec程度の非常に長い

半減期を有します。


 
これは,c=h/(2π)とc,および,それらの質量m

で形成される自然な時間単位:c/(mc2)10-23sec

大きく超えています。
 

それ故,先に列挙したような強い相互作用反応を論じる際

には,弱い相互作用による崩壊や,それによる有限な寿命

10-8sec,無視することができます。
 

この弱い崩壊を無視する近似では,荷電のπ中間子やK中間子

は安定な粒子と見なされ,その初期状態や終期状態の波動関数

を自由な1粒子波動関数として表示し,通常の量子論によって

扱うことができると思われます。
 

ただし,中性のπ0中間子,0中間子もまた,こうした安定な粒子

と見なす議論に含めるのが望ましいのですが,これらには独特

な支配的崩壊モードがあって,これらの半減期はより短かい

ものです。

主要な崩壊反応は,π0 → γ+γ;τπ0 10-16 sec,および, 

 0 →π+π;τ0 10-10 sec です。
 

しかしながら,これらの崩壊寿命もなお,強い相互作用の反応時間 

を特徴付けると思われる特性時間:10-23secと比較してはるかに

長いです。
 

そこで,それらの崩壊の原因となる相互作用は最低次の計算

にのみ,含む必要があるかもしれない程度です。
 

それ故,中性のπ0中間子,0中間子もまた強い相互作用を論じる

には安定な粒子と見なして扱うことにします。
 

先に列挙した強い相互作用反応,弱い相互作用反応に加えて荷電の 

π中間子やK中間子は,光子や外電磁場と相互作用します。
 

ここまでの章では,スピンが1/2Dirac粒子である電子や陽子に

ついて光子を含む電磁場との相互作用による散乱現象のみを論

じてきました。
 

そこで,それらの粒子とスピンゼロ粒子との類似性や異なる性質

を見るため,本章の議論は,荷電のスピンゼロ粒子の電磁力学的

相互作用に限定します。
 

伝播関数による理論展開は,電子に関する理論で与えられた

方向性に従って行ないます。
 

また,例えば,π中間子の原子内での束縛状態のように,

外電磁場内での低エネルギー中間子の性質を論じるため

Klein-Gordon方程式を伝統的な非相対論的方程式に変形

したり,解釈したりすることも行ないます。
 

より一般的な強い核結合や弱い崩壊については,次章で論じる

予定です。
 

§9.2 Klein-Gordon粒子に対する伝播関数 

(The Propagator for Klein-Gordon Particles)
 

 Klein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0 の解φ(), 

ずっと以前に誘導されたように,連続の方程式を満たします。
 

すなわち,カレント:

μi(φμφ-φ∂μφ);∂μ≡∂/∂xμ,に対して,

μμ0 ((∂ρ/∂t)+∇0) が成立します。
 

(※何故なら, μμiμ(φμφ-φ∂μφ) 

iφ(□+μ2)φ-iφ(□+μ2)φ*=0です。※)
 

()≡∫d3ρ(,)=∫d30()

i∫d3(φ0φ) 

(※a∂0b≡a(∂b/∂t)(∂a/∂t)b ※) 

とすれば,μμ0Gaussの定理からQは保存します。
 

そこで,()は,tを含まず,単にQと書いてもいいです。
 

※(注1-1):何故なら,dQ/dt=∫V3(∂ρ/∂t)

=-∫V3()=-∫Sn0です。


 ただし,VはQがゼロでない全空間領域,
Sはその閉じた境界面

の領域(半径:)です。

 
R→∞の極限において,S上のの外向き法線成分:n

(1/4πR2)よりも急激にゼロに収束するとき,

Sn0 です。     (注1-1終わり)※
 

正負両符号の振動数を持つKlein-Gordon方程式の平面波解

は体積Vの箱の中に粒子が丁度1個存在する,という規格化

では,p()()(2ωp)-1/2exp(ipx),

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx) です。
 

ただし,μ(0,),ωp=p0(2+μ2)1/20 です。
 

μはこの粒子の質量で,それ故,2=pμμ(0)22

=μ2 です。
 

(1-2): 平面波の波動関数は,1粒子が箱に閉じ込められて

いる場合には.箱の境界で.exp(±ipx)0となるような離散的

な運動量のみが許容されます。
 

このとき,pp'(±)i3[p(±)()0p(±)()] 

 (複号同順)とおけば,pp'(±)

=±(2)-1(0p'0)-1/2(p'0+p0)(20p'0)

exp{(±)i(0-p'0)}3exp{±i(')}

(複号同順)となります。
 

これは,p≠p'のときには,exp{±i(')}が箱の境界

ではゼロなので,pp' (±)0です。
 

一方,'のときにはp'0=p0,

3exp{±i(')}=Vなので,

pp(±)i3[p(±)()0p(±)()]=±1

(複号同順)です。
 

つまり,カレント密度:ρ(±)()ip(±)()0p(±)()

の積分:pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 (複号同順)

となるようにfp(±)()が規格化されています。
 

一般には,pp'(±)=±δpp'(複号同順)です。
 

また,すぐわかるように,負振動数(負エネルギー):

-p0=-ωpの解,と正振動数(エネルギー):p'0=ωp'の解,

逆に正振動数:p'0=ωp',負振動数:-p0=-ωpの解の内積

を与える積分はゼロです。
 

すなわち,i3[p()()0p'()()] 

i3[p()()0p'()()]0 です。
 

(1-2終わり)
 

有限な体積Vの箱の中に1粒子という規格化ではなく,

V→∞の極限の全空間に1粒子があって,平面波の一定運動量

が箱の境界で消えるとか,周期的境界条件を満たすとかの

離散的量子化条件の必要がなく,


 p
が如何
なる連続的値をも取り得るとした場合,Klein-Gordon

方程式の平面波基本解は, 

p()()(2π)-3/2(2ωp)-1/2exp(ipx), および,

p()()(2π)-3/2 (2ωp)-1/2exp(ipx)

で与えられます。
 

このとき,pp'(±)iV=∞3[p(±)()0p'(±)()] 

について,pp'(±)=±δ3(') (複号同順)になるという

デルタ関数式規格化を満たします。
 

また,iV=∞3[p()()0p'()()] 

iV=∞3[p()()0p'()()]0 です。
 

※(注1-3):特に,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 ではなく, 

pp(±)=∫V=∞ρ(±)(,)3x=±∞であり,密度

の総和が有限ではないですから,正エネルギーのみ採用する

としても直接,粒子の確率密度として扱えるものでは

ありません。
 

したがって,これら完全な平面波fp(±)()自身は運動量

が完全に特定されているため,Heisenbergの不確定性原理

の意味で逆に位置は完全に不確定です。


 
目の前から無限に離れた宇宙の果てまで,V=∞の全空間に

一様に拡がっていて,全く対等な確率で(実は1点の体積はゼロ

,有限な確率密度で表現される点での確率は体積に比例する

ため,確率ゼロで)どこにでも存在しているという非現実的な

粒子像にしか対応しません。
 

理想的な,まわりからは孤立していて一切力を受けない質点は

常に一定速度(一定運動量)で運動を続ける,というNewton

運動の第一法則(慣性の法則)」に従う古典的な自由粒子像

 つまり,我々にとって常識的な特定軌道で運動する局在化 

した粒子を平面波で表現することはできません。
 

 そこで,量子力学的には現実の空間に局在する自由粒子

運動量が完全に一定に特定されているわけではなく,

何らかのゆらぎ幅:Δでもって,わずかに拡がった,

謂わゆる重ね合わせ波束(wave-Packet)の形で存在する

とします。

 (注1-3終わり)※
 

正振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()≡∫Δ[()p()()]3で表現します。
 

こうすれば,iV=∞3[φ()0φ()] 

=∫Δ3|()|2 と書けます。
 

は正定置(有限な正の数)ですから,

=∫Δ3|()|2=+1となるように係数:

()を規格化しておけば,

φ()=∫Δ[()p()()]3,運動量

の平面波を運動量確率密度:|()|2で重ね合わせらた

波であると解釈することが可能です。
 

しかしながら,同様に負振動数の波のみからなる粒子(波束)

, φ()≡Δ[()p()()]3で定義し, 

 QiV=∞3[φ()0φ()]とすれば,
 

 Q=-∫Δ3|()|2となって,0ですから,

 単純な確率解釈は困難となります。
 

 ここに,Klein=Gordon方程式の解に対する確率解釈にとって

の困難が凝縮されていました。
 

何故なら,Dirac方程式の解のときにも見たように,通常の粒子

を示す波動関数=波動方程式の解φ():今の場合なら,

Klein-Gordon方程式の一般解φ(),正振動数の平面波だけ

ではなく負振動数の平面波と混合した重ね合わせで与えられ,

その粒子の全空間での存在確率(=+1)と解釈したい量: 

Q=iV=∞3[φ()0φ()]は正にも負にも成り

得るからです。
 

上記のような直感的解釈の是非は後回しにして, Klein-Gordon

方程式Feynman伝播関数(Feynman^ropagator):Δ(x―y)

を見つけたいと思います。
 

※(1-4):結局は,Dirac方程式の空孔理論と同じく,

正エネルギー波の存在を粒子の存在,負エネルギー波の非存在

を正エネルギーの反粒子の存在と解釈するわけですが,


 スピンゼロのBose粒子は,Fermi統計に従うFermi粒子
とは異なり

Pauliの排他原理は成立しないので,

「真空は全ての負エネルギー状態の準位が既に粒子に占められて

いて,もはや入れないDiracの海である。」

というような真空の解釈はできません。
 
 

しかし,「正エネルギ-粒子は時間の順向きに過去から未来へ

と進行し,時間の逆向きに未来から過去へ逆行する負エネルギー

粒子を,普通に過去から未来へと順行する正エネルギーの反粒子

と見なす。」というFeymanの伝播関数理論についてはDirac粒子

の場合と同様であると考えます。
 

Fermi粒子であろうと,Bose粒子であろうと,真空と粒子,反粒子

の関係とはそういうものであると定義し,理論の創世期には

反粒子などの仮説の根拠を説明するため必要であった,

真空を負エネルギーのDiracの海である,とかの真空の

さらなるモデル化を追及することはしない,

のが現在主流の立場であろうと思います。

 (注1-4終わり※)
 

余談が多く長くなったので,今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年5月15日 (日)

中性子の磁気モーメント(再掲載記事)

  閑話休題で,今から9年前の2007年7/25にアップした過去記事::

「中性子の磁気モーメント」を再掲載します。


  本ブ
ログは,2006年3/20に開始しましたが,,その年末に急に

心臓病になり2,007年4月には順天堂大で心臓バイパス手術を

受けて,そのため職も失なって,静養中の,ヒマばかりはあった頃

です。

,

 この頃は,せせと毎日のように張り切ってブログを書き,記事のネタ

にもいろいろと苦労していた磁気で,唐突に,学生時代を思い出して,

素粒子論のカラークォーク模型に基づいて,陽子と中性子の磁気

モーメントの評価をするというテーマの記事を書いたのでした。

  これは,丁度,今化学記事として進行中の「強い相互作用(湯川相互作用)」

の強い相互作用による核子の電磁構造の変化というテーマにピッタリの

話題のこの磁気を思い出したのでで,全文を再掲載しておきます。

 まあ,一種の手抜きですネ。

(※↓以下は,過去記事の丸写しです。)

 今日は昔の学生時代を思い出して少し素粒子論を復習してみよう

と思います。

 
現在ではハドロン(Hadron)を構成するクォーク(Quark)の

フレーバー(Flavor)の自由度は,2種類ずつ3世代あって,

アップ(up),ダウン(down);チャーム(charm),ストレンジ

(strange);ボトム(bottom),トップ(top)の6種類があると

されていますが,

 "核子=陽子p or 中性子n"を構成するだけなら,

"アップ=u"と"ダウン=d"の2種類だけで十分です。

 

 核子と,その核力を媒介する主要な粒子であるπ中間子を

uとd,あるいはこれらの反粒子の複合粒子として記述する

には,2次元特殊ユニタリ群:SU(2),すなわち,アイソスピン

(Isotopic spin;荷電スピン)の群の表現を考えるだけで

十分です。


 
"核子=陽子p or 中性子n"は,uとdの3体で構成される

バリオン(Baryon;(重粒子)であり,スピンが1/2のFermi粒子

(Fermion)です。

 
そして素電荷eを電荷の単位とすると,陽子pは電荷が1

であり,中性子nは,電荷がゼロである,ということによって

特徴付けられています。

 そして電荷をQ,アイソスピンベクトルを,バリオン数をBと

すると,Q=I3+B/2という等式が成立します。

 核子はそのアイソスピンがI=1/2で,陽子はI31/2,中性子

はI3=-1/2の固有状態です。

 
ただし,ストレンジネス(Strangeness):Sまで考慮に入れると,

Q=I3+Y/2;Y≡S+Bとなります。

 Yはハイパーチャージ(Hyperchage)といわれる量です。

 私くらいの世代の学生時代なら,丁度卒業の頃くらいにチャーム

(Charm)を与える(J/ψ)粒子が発見されたわけですから,わかって

いたのはこの程度までです。

 
ちなみにスピンがゼロの擬スカラー粒子であるπ中間子に

 ついては,B=0,I=1であり,π±0は,それぞれ,

 I3=±1,0 の固有状態です。

 一般に各素粒子はユニタリ群の既約表現の1つ1つに対応

 していて,超選択則(Superselection rule)により,崩壊現象

 を除けば異なる既約表現間の遷移は禁止されていると考え

 ます。

 一方,クォークu,dのスピンは1/2で,それらの電荷Qは,

 eを単位として,それぞれ,2/3,-1/3です。

 ということは,B=1/3なので,Q=I3+B/2からu,d

 のアイソスピンはI=1/2で,それぞれはI3がI31/2,

 -1/2の固有状態であるとしてよいことがわかります。

 
SU(2)群の2次元基本表現を表わすクォーク3体で構成される

 複合粒子=核子について,3体が合成された直積表現の既約表現へ

 の分解は, 2×2×2=2+2+4 となります。

(因みにストレンジネス:Sまで含めたSU(3)だと,

3×3×3=1+8+8+10 になります。)

 

さて,まず,2体での既約分解が,2×2=1+3となるのは

自明です。

 

つまり,Tij=T[i,j]+T{i,j};T[i,j]1/2(ij-Tji)(反対称=1)

{i,j}1/2(ij+Tji)(対称=3) ですね。

 
そして,2×2=1+3 から,さらに3体では,

2×2×2=(1+3)×2=2+(2+4)という既約分解

を得ます。

 
まず,右辺の最初の2はアイソスピン 0 と 1/2を合成して

アイソスピン 1/2を作ることに相当します。


 次の2はアイソスピン1と1/2を合成してアイソスピン1/2を

つくることです。

 

右辺の最後の4はアイソスピン 1と1/2を合成してアイソスピン

3/2をつくることに相当します。

 
アイソスピン3/2はTijkを完全対称にすることで得られますから

[i,j,k]です。

 このテンソルの成分の数はi,j,k=1,2の全ての組み合わせ

の数,つまり,2個から重複を許して3個を選ぶ組み合わせ

なので確かに4個あります。

 
これは核子ではなくて,π-pあるいはπ-n共鳴であり,

質量が,およそ,1230MeVのΔ粒子(デルタ)を表わしています。 

一方,2×2×2=2+(2+4)の右辺の最初の2はT[I,j]k,

すなわち,(1/2)(121-T211)と(1/2)(122-T212)を表わして

います。

よって右辺の残りの2はT{I,j}K[I,j,k]で与えられます。

これらのゼロでない独立な成分は,(1/3)(2112-T121-T211)

(1/3)(2221-T212-T122)の2つです。

そして,陽子pと中性子nは,この最後に示した方のI31/2,

-1/2の既約表現に対応するとされています。

 
これらはu,dという記号をそのままu,dを示す状態の波動関数

として表現すれば,規格化も含めて,

p=(1/6)1/2(2uud-udu-duu),

n=(1/6)1/2(2ddu-dud-udd)

となります。

 
ところで,こうした理論によるとアイソスピンとスピンが共に3/2

Δ++ 粒子において,スピン成分がsz=+3/2の状態は,

Δ++=u↑ となります。

 

これはフレーバー自由度,スピン自由度について共に

完全対称です。

 
ハドロンのクォークによる複合粒子としての表現が"軌道角運動量

がゼロの基底状態=S状態"で与えられるという仮定によれば,

Δ++はクォークの交換に対して位置座標の交換を含めて完全対称

な状態関数で表現されることになります。

 
しかし,これはFermi統計,つまり多粒子系の状態はFermi粒子の

交換に対して反対称であるべきである,という要請に矛盾します。 

そこで,実際の理論では,もう1つ別の自由度であるカラー(Color)

というものを導入し,カラー自由度については1重項(無色:Singlet)

であること,つまりクォークの交換についてカラー自由度について

完全反対称の状態にあるとして,この矛盾を解消しています。

そこで,今問題としている陽子:

p=(1/6)1/2(2uud-udu-duu)と,

中性子:n=(1/6)1/2(2ddu-dud-udd)

について考えると,これらは1番目と2番目のクォークの交換

について対称です。

 
しかし,カラー自由度については完全反対称ですから,スピン

の自由度についても1番目と2番目のクォークの交換について

対称であることが要求されます。

そこでスピン1/2に対する回転群SU(2)の既約表現についても

同じ変換性を持つ表現で,

|↑>=(1/6)1/2(2↑↑↓-↑↓↑-↓↑↑)と,

|↓>=(1/6)1/2(2↓↓↑-↓↑↓-↑↓↓)

を採用します。

陽子のスピンアップ状態としては,

(1/6)(2uud-udu-duu)(2↑↑↓-↑↓↑-↓↑↑)

と表現すればいいのでは?と推測されます。

そこで,結局アイソスピンとスピンの両方を考慮したとき,

クォークの交換に対して完全対称でなければならないこと

から,

|p>=(1/18)1/2[uud(2↑↑↓-↑↓↑-↓↑↑)+cyclic]

=(1/18)1/2[2u-u-u)+cyclic]

と表現さるべきであることが結論されます。

 
同様に,

|n>=(1/18)1/2[ddu(2↑↑↓-↑↓↑-↓↑↑)+cyclic]

=(1/18)1/2[2d-d-d)+cyclic]

です。

 
これらはかつて流行したことのあるフレーバー・スピン対称性;

SU(6)の対称な,56重項既約表現に対応するものです。

 余談ですが,このSU(6)というのは,対称性の帰結として

角運動量保存則が従う現実世界が等方的であるという性質,

つまり現実の空間での回転群:SU(2)~SO(3)というスピン

角運動量に関わる対称性と,フレーバーという内部空間,

アイソスピンならアイソ空間(荷電空間)での回転対称性

を含むSU(3)のフレーバー対称性を合成したものです。

 こうした現実空間と仮想内部空間を混合した対称性

というのは,非相対論で成り立つ近似的なものです。

 
こうした混合対称性は相対論まで含めた4次元時空という

実空間に対しては厳密には成立し得ないことが定理として

証明されています。

,

ただし,例外があって超対称性は,この限りではありません。
(※ワインバーグの「場の量子論」邦訳第5巻参照※)

 クォークは電子などのレプトン(Lepton;軽粒子)と同じく,

構造を持たないスピンが1/2の素粒子なので,その磁気回転比

gは,g=2で近似することができます。

そこで,クォークで構成された複合粒子の磁気モーメント

(磁気能率)をμとし,電荷を持つ構成粒子によって,これを

評価すると,μのz成分は,

 μzΣi{eic/(2Mi)}(liz+giz)

なる式で与えられると考えられます。

 

ここで,ei,Mi,i,iは,それぞれi番目の構成粒子の電荷,

質量.軌道角運動量,スピンです。

 また,h
c≡h/(2π)で,hはPlanck定数,cは光速です。

iz=σi3/2と書き,dの質量とuの質量は等しい:M~ Mu

とすると,

μz|p>=ehc/(2Mu)(1/18)1/2

[{(10/3)u(1/3)u(1/3)u}

+{(10/3)u(1/3)u(1/3)u}

+..] となります。

したがって,普通に,状態の期待値として陽子pの磁気モーメント:

μpz=<pz|p>を計算すれば,
 μ
pz{ehc/(2Mu)}×3×(1/18)×[(5/3)×4+(-1/3)+(-1/3)]

=ehc/(2Mu) が得られます。

 

同様に,中性子nでは,

μnz=<nz|n>={ehc/(2Mu)}×3×(1/18)

×[(-4/3)×4+(2/3)+(2/3)]=(-2/3){ehc/(2Mu)}

が得られます。
 

したがって,理論的には,中性子と陽子の磁気モーメントの

として,μn(-2/3)という結果を得ます。

 実験によると,Bohr磁子μB=ehc/(2mp)を単位として,

核子の磁気モーメントは,陽子pがおよそ2.79で,中性子nが

-1.91であることが古くからわかっています。

 
つまり,μp 2.79μBn ~ -1.91μB です。

 
実測値でも,中性子と陽子の磁気モーメントの比は,

μnp ~ -1.91/2.79 ~ (-2/3)で与えられること

になります。

それ故,先の理論的考察は実験事実を正しく評価しています。


 
普通,電荷を持たない物体では角運動量があっても,電流がない

ので磁気モーメントはゼロですから,これは中性子が総体として

の電荷はゼロでも,内部に電荷密度の分布を持つ構造がある証拠

を与えると考えられます。

さらに,μp がBohr磁子μB2.79倍であることが,陽子の質量:

pがクォークの質量:Mu  ~ udの~2.79倍程度であることを

示唆していると考えるなら,up,downクォークの質量が,

u ~ Md 330MeV程度であろうというクォーク質量の推定値

も得られます。

 参考となる書籍が,徒歩では行けないちょっと離れたトランク

ルームにあり,おまけに風邪で外出もままならないので,

ほとんど記憶に頼って計算したため,合理的な結果を得るまで,

かなり計算間違いを繰り返して苦労しました。

参考文献:S.Weinberg著(青山秀明他共訳)「場の量子論5」

(超対称性;構成と超対称標準模型)(吉岡書店)

(※以上,再掲載記事でした。)

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強い相互作用(湯川相互作用)(19)

「強い相互作用(湯川相互作用)」の続きです。
 

前回記事の最後では,実π中間子が運動量遷移qμで電磁場(光子)

によって散乱される場合の,電磁カレントが,

(p'μ+pμ) → e(p'μ+pμ)π(2)

なる形に修正されることを見ました。

 ここで,π(2),πの電磁形状因子

(Electromagnetic Form-factor)と呼ばれる,不変運動量遷移:

2のスカラー関数です。
 

そして,これはq20の実光子では,π(0)1となるよう規格化

されます。

 
つまり,実光子=光子外線では,観測電荷eが裸のそれ:e0から,

既にe=Z31/20なる形でくり込まれ,光子のπ頂点でも実光子

20では.正確にe(p'μ+pμ)が成立し,物理的電荷eの中

に真空偏極などの輻射補正がくり込まれていると解釈するわけ

です。
 

実際,q20には,赤外光子,つまりp'=pで,0,実質的に

πは光子と相互作用をせず,自由粒子として素通りするケースも

含まれます。その場合はFπ(0)1は明らかですから,その他の

20の任意の実光子でも連続性からFπ(2)1とするわけ

です。
 

π(2)の構造をさらに追及するには,摂動論よりも強力な

アイデアと計算テクニックが必要です。


(※ そもそも,摂動法は,相互作用が小さいという仮定で,それを

微小な摂動として,その1次の項,2次の項,..と加えていって近似

できるという仮定が骨子ですが,相互作用が大きい強い相互作用

にもそれが有効である,という保証はありません。※)
 

既に,(p'μ+pμ) → e(p'μ+pμ)π(2),π中間子

の電磁場による散乱に対する微分断面積の形を限定している,

という意味で1つの強力な結果を構成しています。

 
例えば,微細構造定数αの最低次までは,2を固定している

ことを除いて,異なるエネルギーと散乱角での断面積比は,

π(2)には依存せず,強い相互作用を無視するなら,第9章

「クライン・ゴルドm方程式」で計算しに断面積比のままです。

(※↑実は第9章の内容は一切ブログ記事にしてないことに,

今気付きました。この記事も準備してアップする予定です。)
 

同様な電磁形状因子が存在するという結果は,核子(陽子,中性子)

ハイペロン(hyperon=奇妙さを持つ粒子:strange-particles)

の電磁カレントを論じる上でも得られます。

核子の場合はスピンゼロのπ中間子とは異なり,2つのスピン

自由度を有するので,2つの独立なスカラー関数が形状因子を構成

する可能性があります。

 
例えば,陽子pについては,10.13に示されるようなオーダーg02

のグラフに遭遇します。

 

Feynmanグラフについてのルールによれば,これに対応する陽子

カレントの対応する修正は,次のようになります。

~(p')eγμ() → u~(p')eγμ() 

(i02)2∫d4(2π)-4~(p')iγ5i(-M)-1

iγ5()i(2-μ2)-1(2μ+qμ)i{(k-q)2-μ2}-1
 

(i0)2∫d4(2π)-4~(’)iγ5i('-M)-1

eγμi(-M)-1iγ5()i(2-μ2)-1 

≡u~()eΓμ(p',)()  です。
 

(19-1):頂点のアイソスピン部分は,座標表示では,

(i0)(γ5τα)∫d4であり,陽子pの外線因子はχp,χp

です。


 また,π中間子内線はiΔF(x-y)δαβ,た
だしδαβ,は3次の

単位行列成分で,中間子に結合した頂点のτα,τβに結び付きます。
 

故に,アイソスピン部分は,

Σα,βχpταδαβτβχp=Σα[χp(τα)2χp]=3 

ですが,πの内線がπ0のみの場合は。[χp(τ3)2χp]1

です。

 
πの内線がπのみの場合は,

[χp(2τ)(2τ)2χp]2です。 (191終わり)
 

さて,π中間子のカレントのケースでもそうであったように,

陽子のカレントも4元ベクトルとして変換します。
 

運動量による積分:∫d4,∫d4lの実行後には,陽子スピノル: 

~(p')とu()に挟まれた後でも,消えずに残るベクトル量は

共変形ではμ,p'μ,γμのみです。

 そして,他の任意のガンマ行列は,,',または
γ5の因子の形

でなければなりません。しかし,γ5は除去できます。


 というのは,Feynmanグラフでのπ-N頂点は偶数個
なので,γ5

因子も偶数個となって,ペアごとにγ51により,全体として

消えるからです。
 

さらに,陽子運動量による=γμμ,=γμp'μ,

μ≠νのγμ,γνが反交換するため,符号を変えて左端か

右端に移動させることができて,Dirac方程式:

(-M)()0,~(p')('-M)0 により, 

'も核子質量Mに置き換えることができます。
 

こうした論旨から, 

~()eΓμ(p',)()=u~(p')eγμ() 

(i02)2∫d4(2π)-4~(’)iγ5i(-M)-1

iγ5()i(2-μ2)-1(2μ+qμ)i{(k-q)2-μ2}-1 

(i0)2∫d4(2π)-4~(p')iγ5i(-M)-1

eγμi(-M)-1iγ5()i(2-μ2)-1 

で与えられる,

Γμ(p',)の一般構造は,次の形になると結論されます。
 

すなわち,~(p')eΓμ(p',)() 

=eu~(p')[μΓ1(2)+p'μΓ2(2)+γμΓ3(2)]()
 

ただし,Γk(2)(k=1,2,3)は,q2のスカラー関数です。
 

この形が,核子の電磁カレントの一般形であると考えることが

できます。
 

そして,前記事でπ中間子の電磁カレントに対する保存の要請

,その補正カレントIμ(p',)について,μμ(p',)0

なる形で満たされることを見たのと同じく,


 
核子の電磁カレントの保存として,

μ~(p')Γμ(p',)()0 が成立することが

わかります。
 

なお,補正前のΓμ(p',)=γμの素朴なカレント:

~(p')γμ()については,Dirac方程式から, 

μ~(p')γμ()=u~(p')[('―M)(p-M)]()

0 となることは自明です。
 

(19-2):前回の記事では,π中間子の電磁カレントの修正: 

μ=e(f+pi)μ → e(f+pi)μ+Iμ(f.i)

を与えるウラフにおいて,

実π中間子の電磁場による散乱に対する,グラフの評価式で,

積分変数をk→k+qとずらしても(積分結果が有限なら),

散乱振幅が不変に留まるという論旨から,

μμ(’,)0 が成立すると結論されました。

 そして,これはqに対するFourier
成分ではなく,位置座標x

による表示で見ると,∂μμ()0 ,つまり,電磁カレント

の保存を意味すること,を見ました。


(19-2終わり)
 

さて,核子の電磁カレントも保存するという式:

μ~(p')Γμ(p',)()0 により, 

~(p')[p'μΓμ(p',)-pμΓμ(p',)­]()0

です。
 

故に,

~(p')[(p',p)Γ1(2)+M2Γ2(2)'Γ3(2)]() 

=u~(p')[2Γ1(2)(pp')Γ2(2)Γ3(2)]()

なので,~(p')[{(pp')-M2}{Γ1(2)-Γ2(2)}]()

0 です。
 

一般に、{(pp')-M2}≠0ですから,上式が恒等式なら,

Γ1(2)=Γ2(2)を得ます。
 

それ故,電磁カレントの最も一般的形式としては,

eu~(p')Γμ(p',)() 

=eu~(p')[(μ+p'μ)Γ1(2)+γμΓ3(2)]() 

と書けるはずです。
 

しかし,核子の電磁構造を論じる際には,Gordon変形を用いて

ベクトル因子:(μ+p'μ)を除去した形にするのが慣例です。
 

すなわち, (μ+pμ)2Mγμiσμννとして,代入し,

ベクトル形の因子をスピン行列テンソルの因子に変換します。 

ただし,σμν(i/2)[γμ,γν]です。
 

すると,eu~(p')Γμ(p',)() 

=eu~(p')[(2Mγμiσμνν)Γ1(2)+γμΓ3(2)]()

ですから,
 

最終的な核子の電磁形状因子としては,

eu~(p')Γμ(p',)() 

=eu~(p')[γμ1(2){iσμνν/(2)}κF2(2)]() 

なる形になることがわかります。
 

eは物理的素電荷であり,陽子pについては,1(0)=F2(0)=1, 

κ=κp1.79,,中性子nについてはF1(0)0,2(0)=1. 

κ=κn=-1.91と規格化します。
 

(19-3):Gordon変形(Gordon-reduction)とは,質量がMの

自由粒子のDirac方程式:(iγμμ-M)ψ=(γμ^μ-M)ψ=0

2つの解をψ=ψ1,ψ2とするとき,  

2Mψ2~γμψ1[ψ2~^μψ1(^μψ2~)ψ1]

 i^ν(ψ2~σμνψ1) なる式が成立することをいいます。

ただし,σμν(i/2)[γμ,γν]です。
 

まず,一般に,任意の2つの4元ベクトルaμ,μに対して,

=aμγμ,

=bνγνとすると,

ab=aμγμνγν=aμν[(1/2)(γμγν+γνγμ)

(1/2)(γμγν-γνγμ)]=aμμiμνσμν 

なる公式が成立します。
 

特に,μ,μの一方:bμが演算子:^μの場合は, 

 ap^=aμγμ^νγν=aμ^μiμ^νσμν,

かつ,^=p^μγμνγν=p^μ^μi^μνσμν

です。
 

自由 Dirac方程式の解:ψ1,ψ2,γμ(^μψ1)-Mψ10 ,

および,(^μψ2~)γμ-Mψ2~0 を満たします。
 

それ故,まず, [(^μψ2~)γμ-Mψ2~]ψ10 より, 

-a^μ(^μψ2~)ψ1iνσμν(^μψ2~)ψ1-Mψ2~ψ1

0 です。ま,ψ2~[γμ(^μψ1)-Mψ1]0 より, 

μ(ψ2~^μψ1iμσμν(ψ2~^νψ1)-Mψ2~ψ10 

です。
 

これらを,辺々加え合わせると,

2Maμψ2~γμψ1=aμ[ψ2~^μψ1(^μψ2~)ψ1]

iμ^ν(ψ2~σμνψ1) ですが,これが,任意のaμに対して

成立する恒等式なので,結局,Gordon: 

2Mψ2~γμψ1[ψ2~^μψ1(^μψ2~)ψ1]

i^ν(ψ2~σμνψ1) が得られます。
 

この式を,運動量表示でψ1(),ψ2()のそれぞれに対応する

Fourier成分をu(),(p')とすると, 

2Mu~(p')γμ() 

=u~(p')[(μ+p'μ)iσμν(p'ν-pν)]()

です。
 

そこで両側を,~(p')とu~()で挟むという前提では, 

2Mγμ(μ+p'μ)iσμν(p'ν-pν)

(μ+'μ)iσμνν

つまり,(μ+p'μ)2Mγμiσμνν です。
 

(193終わり)
 

今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics" (McGrawHill)

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2016年5月13日 (金)

訃報!!蜷川幸雄さん。

 元俳優で,演出家の蜷川幸雄さんが,5月12日に亡くなられていたことがわかりました。 昨年末ごろから体調不良で最後は多臓器不全でした。。

 享年,80歳でした。

 

 Yahooニュース →  演出家の蜷川幸雄さん死去。。80歳   

 

 蜷川さんがどういった演劇を演出したのか?については寡聞にして私はよく知りませんが,,熱血のあまり,,椅子が飛んだ。。とか,鬼のような熱列な演劇指導ぶりについては,よく聞いていました。

 俳優でかつ,演出家というと私の知る限りでは,,劇団民芸の宇野重吉や滝沢修などを知っています。

 蜷川氏は,一般の高齢者を俳優として募集した,。。というニュースなどを見て,異色な方だと着目はしていました。

  ご冥福を祈ります。合掌!!

 

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2016年5月 4日 (水)

祝!!レスター優勝

イングランドプレミアリーグ。。弱小といわれていたレスターが優勝した。

以前は,魂のストラーカー。。。技術よりも執念でという感覚と風貌もゴン中山に似ていて,なんとなく中山2世と思っていました。1世を超えたかな。。

 とにかく走る走る。。献身的。。FWではないがインテルの長友もそうだ。海外で活躍する日本人選手の1つの特徴かな。。

  おめでとう!!レスター。。そして岡崎慎司

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2016年5月 2日 (月)

強い相互作用(湯川相互作用)(18)

「強い相互作用(湯川相互作用)」の続きです。

 前回最後の約束通り電磁形状因子の話です。
 

§10.9 中間子と核子の電磁構造 

(Electromagneic Structure of Mesons and Nuclrons)
 

中間子πと核子Nの相互作用は,既述した通り,それらの強い

相互作用に影響されます。
 

陽子pの磁気モーメントは,電荷eの粒子に対するDirac方程式

から 予測される値:1.0μBに比べて異常に大きい値:2.79μB

持つことが,かなり昔から知られています。
 

ここで,μB,μB≡ehc/(2p)であり,これは核子のBohr

磁子(Bohr Magneton)です。(hc=h/(2π),hはPlank定数)

(※自然単位ではμB=e/(2p)ですが特にここだけ単位を

入れてみました。※)
 

 ただし,「量子電磁力学の輻射補正」の項目で2次のくり込み

として求めたSchwingerの異常磁気能率項:{α/(2π)}μB などの

補正については,今は無視しています。
 

同様に,中性子nは-1.91μBの磁気モーメントを持ちます。

しかし,Dirac方程式は電荷ゼロの中性粒子については.

磁気モーメントはゼロであることを予測します。
 

Dirac方程式:(iγμμ-M)Ψ()0,電磁相互作用を

導入するには,通常は極小電磁結合(minimalcoupling):

iγμμ → γμ(iμ-eAμ)なる置き換えを行いますが,

これからは,1.0μBの磁気モーメントが得られるだけです。
 

したがって,この極小置換の代わりに,さらに磁気相互作用

をも加えて,

iγμμ → γμ(iμ-eAμ)(κNμB/2)σμνμν

としてみます。

ここに,κ1.79,κ=-1.91です。
 

ただし,σμνは,σμν(i/2)[γμ,γν] で定義されています。 

したがって,σνμ=-σμνであり,μ=νならゼロです。 

また,μν=∂νμ-∂μνです。
 

(18-1):{γμ(iμ-eAμ)-M}ΨN()0 の非相対論的極限 

では,ΨH [ψ,0]とすると,[(μBσB)ψ,0]という項が出ます。
 

何故なら,σij=σij(,j=1,2,3)は.細胞対角成分がPauli行列;σk

の細胞対角行列です。ただし,(,)(1.2)ならσ12iγ1γ2,

なのでk=3,同様に,(,)(2.3)ならk=1,(,)(3.1)

ならk=2です。
 

その他の(,)成分は,反対称性:σji=-σijから決まります。
 

また,ij=∂ji-∂ijより,(23,31,12)=∇×

です。故に,Σij13σijij[(2σB,0]T です。
 

他方,(10,20,30)=∂/∂t-∇φ==-(01,02,03)

であり,σk0iγkγ0=ですが,これは細胞対角成分がゼロの細胞

反対角行列なのでΣk=13(σk00+σ0k0k)も細胞反対角行列の

ため,ψN ,0]に作用させると大成分(上成分には寄与

しません。
 

故に,非相対論的極限では,この-(κNμB/2)σμνμνの項を

加えることで2成分スピノルψに対して,これが陽子波動関数

なら-{(1+κB)μBσB)}ψ,中性子波動関数なら,

-κBμB(σBという磁気モーメントによるPauli 

を得ます。
 

相対論的には, 付加項はLorentzスカラーであるべきなので,

μ,νの一方が 0 場合も含めて,(κNμB/2)σμνμν

加えると正しいHamiltonian密度が得られると予想されます。 
 

(何故なら,磁場の中に磁気モーメントμの磁石(磁気双極子)

ある場合の磁気エネルギーは,μBです。)  (8-1終わり)
 

しかし,より有効なアプローチは,このような新しいパラメータ

を含む項を導入するような試みは避けて,通常の極小結合変換:

iγμμ → γμ(iμ-eAμ)忠実に議論を進める方法です。
 

このアプローチは,上述の異常磁気モーメントも含む

[γμ(iμ-eAμ)]からの全ての偏差を,強い相互作用の影響

に帰せしめるものです。
 

強い相互作用と電磁相互作用の違いはありますが,この同じ

精神のアプローチ20114/4から7/3までの過去記事:

「量子電磁力学の輻射補正」の(1)(14)では,原子のエネルギー

準位におけるLambシフトや電子の異常磁気モーメントが光子

(電磁波)と電子の電磁相互作用の効果を考慮することにより, 

現在の実験的精度の限界まで説明できることを見ました。
 

 このときは最低次のくり込みに頼った詳細な計算を行って

定量的評価を得きましたが,

 
強い相互作用には電磁相互作用ほど
理論的基盤が無いため,

今回は,詳細な計算に頼ることなく,不変性(対称性)の要請のみ

にに頼ることで,強い相互作用で生成される[γμ(iμ-eAμ)]

からの修正の一般形式を確立することを試みます。
 

今のπとNの相互作用の例では,Lorentz不変性と電磁カレント

の保存の要請が1粒子の電磁頂点(Vertex)を厳しく限定します。
 

最初に,10.12()の電磁相互作用の光子のπ中間子頂点へ

(強い相互作用)による)”輻射補正を与える図10.12()

のグラフを考察します。

 π-Nの強い相互作用でのFeynman-ruleによれば,  

10.12()の頂点への図10.12()による電磁カレント

の補正は,

(μ+p'μ) → e(μ+p'μ)

(i02)2()∫d4(2π)-4

×Tr[(-M) -1(eγμ)(-M) -1

(iγ5)(-M)-1(iγ5)]≡e(μ+p'μ)+Iμ(p',)

です。
 

(18-2):電磁相互作用する光子に電荷がeのFermi粒子

が2本接続する電磁相互作用頂点では,その質量m,電荷eの

Dirac粒子の波動関数(スピノル)ψが従うDirac方程式は,

(iγμμ-m=eγμμψであり,これに基づく

Feynman-ruleでは,1つの頂点の寄与は,(ieγμ),

これに光子の波動関数:μ,またはその伝播関数が接続する

のでした。
 

10.12()のように,同じ光子の電磁相互作用頂点で

Dirac粒子でなく質量μ,電荷eのBose粒子である荷電π

中間子が2本接続するときは,


 
自由中間子の従うKlein-Gordon方程式:

(□+μ2)φ=(μμ+μ2)φ=0,極小変換:

iμ (iμ-eAμ)により,光子の電磁相互作用

あるときは,粒子が従う方程式は,

[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ=0 となります。
 

これに,ゲ-ジ条件を物理的状態の付帯条件:

(μμ())|phys>=0で与えて,実質上の方程式は,

(□+μ2)φ=(iμφ)(eAμ)(2μμ)φ 

となるため,

 運動
量qで入ってくる光子が,運動量が
p'のπと運動量

が-pのπの対に偏極(対生成)する(未来から負エネルギー

の運動量pのπが入ってきて過去に進み,運動量qの光子

を吸収し,そこからは正エネルギーのp'=p+qのπ

なって,また未来へと出ていく)ときの単純な頂点のeの

1次摂動の因子は,(i)×e(μ+p'μ)です。
 

しかし,π中間子に核子が2本接続する強い相互作用頂点

の場合は,πが擬スカラー粒子でもあり,核子の波動関数

Ψ=[ψp,ψn]Tが従うDirac方程式,

(iγμμ-M)Ψ=g0iγ5(τφ)Ψ なので,これに基づく

Feynman-ruleでは,このπ中間子の強い相互作用の1頂点の 

寄与は(i0)(iγ5τ)であり,これにπ中間子の波動関数

φ(Φ1,φ2,φ3)または,その伝播関数が接続します。
 

上述のことは,20128/1にアップした本ブログの過去記事: 

強い相互作用(湯川相互作用)(6)アイソスピン1)」における 

 アイソスピン定式化の項目を参照したものです。
 

それによれば,核子の波動関数Ψ=[ψp,ψn]Tが従う

Dirac方程式は,(iγμμ-M)Ψ=g0iγ5(τφ)Ψであり,

一方,π中間子の波動関数φ(Φ1,φ2,φ3)は,

Klein-Gordon方程式(□+μ2)φ=-g0Ψ~iγ5τΨ

に従います。
 

10.12()のグラフは運動量qで入ってくる光子が,

運動量(p'+k)の陽子と(-p-k)の反陽子との対

(ただし,q=p'-p)に偏極(対生成)して,時間の正の向き

には運動量(p'+k)の陽子から,強い相互作用の1頂点で

運動量p'のπ中間子を放出します。
 

その後には,運動量kの中性子が進み,次の頂点では,時間

の逆向きに運動量pのπが吸収されて(=運動量-pの

負エネルギ-のπが時間の正の向きに放出されて),運動量

(p+k)の負エネルギーの陽子となって進み全体として核子

線ループを作っています。
 

 これの寄与を求めるには,まず,核子NのFeyman伝播関数:

 iF(x-y)i∫d4(2π) -4[exp(iPx)(-M+iε)-1

の運動量表示のi(-M+iε)-1のPに,それぞれ,P=p'+k,

P=k,P=p+kを代入して,その間に頂点因子:(ieγμ),

(i0)(iγ5)を挟んで積を取ります。
 

 これは,アイソスピンのτと関わる因子を除いたもので.

 これば,(i0)i('-M) -1(ieγμ

 i(-M) -1(i0) (iγ5)i(-M)-1((i0)(iγ5)]

で与えられ,さらにFermionループなので,頂点因子 の寄与

 としてはトレースを取り,積分:()∫d4(2π)-4

 を実行します。
 

ここで考慮をはずしたアイソスピン因子を含む計算では,

ループ上の核子Feyman伝播関数は,iFだけではなく,

アイソスピンの2×2Pauli行列:τ(τ1,τ2,τ3)にも

作用するよう,を2×2単位行列として, 伝播関数,

iFであると解釈します。
 

 その1のα行β成分はδαβですから.ループの寄与を陽に

書くと,iFδαβ(iγ5τ)iFδαβ(iγ5τ) です。

 

一方の頂点で,|π+>=φ|p'>=(1/2)[1,I,0]φp'

を放出し,もう一方の頂点からは,|π>=φ|p>

(1/2)[1,i,0]φpをも放出するとき,

 頂点因子のうちのアイソスピンに関わる因子のみの寄与は, 

 δαβ(τφ)βγδγρ(τφ)ρα=Tr[(τφ)(τφ) 

 =Tr(2τ)(2τ](2)2 です。
 

ここで,τ(1/2)(τ1-τ2),τ(1/2)(τ1+τ2)より,

ττ1を用いました。
 

結果として,全ての寄与は,(i02)2()∫d4(2π)-4 

×Tr[i('-M) -1(ieγμ)i(-M) -1(iγ5)

i(-M)-1(iγ5)] となります。
 

摂動論の次数ごとにかかる(i)因子を考慮し,2次補正項

の因数を最低次のe(μ+p'μ)のそれに合わせ,伝播関数

iを除去すると,付加すべき項Iμ(p',)の正しい計算式

として,

(i02)2()∫d4(2π)-4 

 ×Tr[('-M) -1(eγμ)i(-M) -1

 (iγ5)(-M)-1(iγ5)] が得られます。 


  (18-2終わり)

 

しかしながら,上記のIμ(p',)の具体的な積分表現式

には,それほど興味は感じられません。何故なら,これは

02の発散する級数展開の第1項に過ぎず,しかもこの項

自身も明らかに発散するからです。
 

この強い相互作用では,電磁相互作用の補正でやったような

くり込み処方を適用することができそうにありません。
 

しかし,これがLorentz変換の下でのπの電磁カレント

への加えられた寄与の形であるとして,もしも有限なら

如何に変換するか?を見るのは興味深いことです。
 

こうした変換性は全ての高次のオーダーでも真であると

考えられます。
 

μ(p',)(i02)2()∫d4(2π)-4 

×Tr[('-M) -1(eγμ)i(-M) -1

(iγ5)(-M)-1(iγ5)] においてトレースを取り,

4k積分を実行したものが有限なら,右辺がLorentz

4元共変ベkトルとして変換するのは明らかです。
 

ここで,関係する独立で使用可能な4元共変ベkトルはpμ

とp'μだけですから,このIμ(p',)は次のように書ける

はずです。 

すなわち,μ(p',)=pμ1(2,p'2,(p-p')2) 

+p'μ2(2,p'2,(p-p')2) です。
 

係数:1,2は形状因子(form factor)と呼ばれ,

3つの独立なスカラー:2,p'2,(p-p()2のスカラー

関数です。
 

もしも,時間の正の向きを図の下から上に取り, 

電磁ポテンシャルによる実中間子の散乱のグラフと限定 

するなら,2=p'2=μ2ですから.形状因子:1,2, 

不変運動量遷移:2(p'-p)2のみの関数となります。
 

 そして,さらなる制限はカレント保存の要請から得られます。 

 例えば,実中間子の電磁カレントの運動量qμ成分に対しては,

 μμ(p',p)=pμμ(p',)-p'μμ(p',)=0

 です。

 
この結果は,積分表現式: 

μ(p',)(i02)2()∫d4(2π)-4  

×Tr[('-M) -1(eγμ)i(-M) -1 

(iγ5)(-M)-1(iγ5)]において,
 

積分変数をk → k+qのようにシフトしても,積分が

有限なら結果が変わらない。。という2011年4/8の

過去記事: 量子電磁力学の輻射補正(2)(真空偏極1)

の光子の真空偏極についての結果に同様な方法で証明

できます。

  そして,実際には積分は有限でないので,
有限化する手続き 

が必要なため,同様なあいまいさもあります。
 

※(注18-3):念のため「量子電磁力学の輻射補正(2)(真空偏極1)」

より,ほんの一部の図を転載です。


  下図8.5に
描写したように,電子loopはAμ(q)が相互作用

するブラックボックス(?=頂点)を流れるcurrentに対して

 e2補正を与えます。

 (※この図の実線=電子をπ中間子に変更す
れば図10.12に

 なります。※) 

   

(18-3終わり)


 
(18-4):πの散乱と見ると,10.12()で,一部係数を
 

除いてS行列要素は, 

fi(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ()ですが,


 これに 10.12()を加えた寄与は,  

fi(2π)-3(4ωfωi)-1/2[(f+pi)μ+Iμ(f.i)]μ()  

に修正されます。
 

そして,補正後のS行列要素Sfi,電磁場のゲージ変換:

μ()→Aμ()+qμΛ(q)に対して不変であるなら,

Λ()は任意なので,それは,μμ(f.i)0

意味します。

 つまり,上記のカレントの保存の条件はゲージ不変の条件と

同値です。
 

実際,元々のS行列要素は,電磁カレント=電流密度:

μ=eψ~γμψによる相互作用項(摂動項):μμ

=eψ~γμAμψに起因する散乱現象の振幅です。

 そして,
この電磁相互作用項のFourier 成分:

μ()μ()任意のΛ()についての ゲージ変換:

μ() → Aμ()+qμΛ(q)に対して,不変である

という条件が課せられると,電磁カレントjμ()

に対してμμ()0 が成立します。
 

これをqによるFourier成分でなく座標xによる表現で

見ると.μμ()0 :つまり電磁カレントの保存

意味します。  (18-4終わり)
 

μμ(p',)=p'μμ(p',)-pμμ(p',0

より,(p'p)1+p'22=p21(pp')2 です。
 

 この等式は,p2=p'2=μ2での実中間子散乱グラフでも成立

 し,このとき,[(pp')-μ2][1(2)-f2(2)]0

 なので,1(2)=f2(2) と結論されます。
 

 したがって,実π中間子の電磁ポテンシャル:μ

よる散乱でのπの電磁相互作用カレントは,

 e(p'μ+pμ) → e(p'μ+pμ)π(2)という形で

修正されます。
 

ただし,π(2)1+f1(2)1+f2(2),πの

電磁形状因子と呼ばれる,不変運動量遷移:q2のみの

スカラー関数です。
 

長くなったので,今日は,ここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年5月 1日 (日)

5月1日の日記

 無償の慈愛。。エロスではなくアガペーの愛。

 人知れず。。,何の打算もなく。。見返りも求めず。

 ,不遜にも神のごとく思い上がって,自分よりさらに弱きものを救おうと欲しても,ただの一人として迷える子羊を救うことはかなわず。無力感のみ残る。。。

 何を血迷ってるのだ??。。。自分を救うこともできぬ愚か者が。。

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