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2016年5月17日 (火)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)(1)

今日は,全くの余談から始めます。
 

私が,学生時代の昔から今まで,何らかの好奇心を覚えて詳細

知りたいと思ったコトについて(主に自然科学的事柄ですが),

それがヒョッとしたら,いくら努力しても能力的に自分には到底

無理と思われるような高い山であろうと,とにかく諦めずに一番

下からでもコツコツと積み上げてきた履歴の覚え書きのノート

,この世からいなくなる前に日記のようにホームページで

残しておこう。。というのが,現在の本ブログの科学記事

アップする主たる意図になっています。
 

そういう意味では,少なくとも,素粒子論や量子論で,初期の学生

時代の勉強のテキストであり,後の40歳代からは,学生当時には

主に時間が足りなかったために挫折していた部分を,改めてヒマ

なときの趣味として読み返して読了した,

Bjorken-Drell著の「Relativistic QuantumMechanics」と,Relativistic-QuantumFields」の2冊についての覚え書き

くらいは,全てを記事として残しておきたいと思います。
 

これらのテキストは,関連題目の記事では,記事の最後に参考

文献として書いてありますが,実は,ブログ内容=覚書きノート

,このテキストに限らず,参考と書いた文献の全内容を丸写し

どころではなくて,


 もしも私が理解できないなら.
最初からブログ記事に上げる

こともないのですが。。。
 

私なりに読んで理解できたものなら.何度か咀嚼,反芻して,

プラスアルファとして行間を自己流注釈で埋めて,私自身が種元

のテキスト無しで読み返しても,そのまま,大して再考の必要なく

スラスラ読めることを旨とした回顧録的自己満足的記事です。
 

逆に,反芻も注釈も必要なく,初めからスラスラ理解できた場合

の記事は,テキストの丸写し的なモノになってるかもしれません。
 

特に断らない限り,科学記事のほとんどには,私個人のオリジナル

な発想などほ無く,私が誤解釈していれば記事は単なるゴミです

,さもなければ過去や現在の多くの他の方々の知見の寄せ集め

を解説しているに過ぎません。
 

そこで,本ブログでは,Bjorken-Drell

Relativistic Quantum-Mechanicsの第9章

Klein-Gordonequation)クライン・ゴルドン方程式)をスキップ

して,10章の非電磁相互作用(強い相互作用・弱い相互作用)

について記事を進めていたことに,先日気付いたため,


 今回はこの第9章の覚え書きノートからの記事
も書いておこう

と思ったわけです。
 

前置きが長くなりましたが,第9章についての覚え書きノート

の最初の日付1994年3/13となってるので,ここは44歳のとき

に復習したようです。
 

 ちなみに,8章の「S行列の高次補正」=本ブログでは,

「量子電磁力学の輻射補正」の開始ページの日付は,1994

/ですから,その頃はまだ真面目にせっせと続けて読書に

励んでいたようです。
 

(※ イヤ,普通に男女交際とか,酒食,ギャンブルなどの趣味

に走っていれば,もっと,人生幸せでヨカッタでしょうにネ。

困ったモンダ ※)
 

さて,第9章の§9.1 序文(Introduction)から本文に入ります。
 

π中間子のようなスピンがゼロの粒子を含むプロセスにも

伝播関数定式化を用いることができて,これまでの計算の

テクニックを発展させることができます。
 

こうした,スピンゼロの粒子を,単一の成分を持つスカラー

波動関数φ()で記述しようと試みます。
 

その結果,一旦は相対論的波動方程式としては捨てられた,

自由粒子Klein-Gordon(クライン・ゴルドン)方程式:

(□+m2)φ()0 に戻る方向に導かれます。
 

この方程式は,2次の微分方程式てもあり,また,保存する

正定置な確率を定義できないという理由で,結局,相対論的

波動方程式としては行列を含む形ですがSchoredinger方程式

と同じく1次の方程式のDirac方程式を採用し,その当時は

こちらの方は捨てられたのでした。
 

しかし,これを排除すべきという直接の動機は,ここまでの

Dirac方程式によるFermi粒子の空孔理論や反粒子の存在などの

理論を通じて消えたと考えられ,改めて,時間の逆向きに伝播

する負エネルギー粒子というFeynmanの解釈などを考慮して,

この方程式を再考したいと思います。
 

,電子と同じく,スピンゼロの粒子にも当てはまることがやがて

わかるであろう上記のFeynmanの解釈には,粒子のスピンがどう

であるかは,厳密には関係しません。
 

電子のケースにおけるように再び,こうした描像に導かれる

予定です。
 

例えば.時間の逆向きに伝播する負エネルギーのπ中間子である

その反粒子のπ中間子の存在などが確認されます。
 

しばらくの間,こうした粒子に対してはKlein-Gordon方程式

を使うのが適切かどうかを考察します。
 

スピン1/2の電子や核子ほどに安定なスピンゼロ粒子の素粒子

の存在は今のところ知られていません。
 

しかしながら,π中間子やK中間子はほとんど安定なスピンゼロ

粒子の候補です。
 

それらは同時に多量に豊富に生成されたり,崩壊したりする粒子

であることが実験的にわかっています。
 

例えば,次に列挙する反応があります。 

p+p → p+π+π,p+p → p+p+π0, 

p+p → p+Λ0+K, 

π+p → Λ0+K0,+p → Λ0+π0,

+p → π+π, etc.です。
 

そこで,こうしたスピンゼロ粒子(中間子)に対する波動方程式

としては,こうした可能な生成・消滅反応を考慮する必要が

あります。
 

こうしたスピンゼロの1つの粒子が,光子と相互作用する電子

の世界線の議論において可能であった散乱過程を通過する粒子

の世界線に従うことは不可能です。
 

こうしたことは,荷電π中間子やK中間子が光子との相互作用

する際にも真です。

 
何故なら,次の9.1のようなグラフが寄与するからです。



 

 実験,観測においても確認されていますが,単一の

スピンゼロ粒子が生成・消滅することが可能である,という

ことは,それらの相互作用理論が本質的に,粒子の生成消滅

を伴ない粒子数が変動することも可能な多粒子理論(多体問題)

なければなたないこと,を要求します。
 

そこで,場の量子論形式がこうした問題に最適なのですが,

ここでは,再び,電子と光子に関わる論議のように,波動方程式

(□+m2)φ()0 の右辺にソース項(=湧出し,吸込み)

付加して,結合した中間子について,直感的な伝播関数アプローチ

を拡張する方法を採用します。
 

これによって多大のことが理解できるようになるはずです。
 

もしも,弱い相互作用まで含めた議論をするなら,スピンゼロ粒子

もまた次のような形の反応で崩壊します。
 

π→μ+ν,→π+π+π,

→π0+μ+ν です。
 

こうした弱い崩壊相互作用の非常に小さい振幅の故に,荷電

のπ中間子やK中間子は,τ ~ 10-8sec程度の非常に長い

半減期を有します。


 
これは,c=h/(2π)とc,および,それらの質量m

で形成される自然な時間単位:c/(mc2)10-23sec

大きく超えています。
 

それ故,先に列挙したような強い相互作用反応を論じる際

には,弱い相互作用による崩壊や,それによる有限な寿命

10-8sec,無視することができます。
 

この弱い崩壊を無視する近似では,荷電のπ中間子やK中間子

は安定な粒子と見なされ,その初期状態や終期状態の波動関数

を自由な1粒子波動関数として表示し,通常の量子論によって

扱うことができると思われます。
 

ただし,中性のπ0中間子,0中間子もまた,こうした安定な粒子

と見なす議論に含めるのが望ましいのですが,これらには独特

な支配的崩壊モードがあって,これらの半減期はより短かい

ものです。

主要な崩壊反応は,π0 → γ+γ;τπ0 10-16 sec,および, 

 0 →π+π;τ0 10-10 sec です。
 

しかしながら,これらの崩壊寿命もなお,強い相互作用の反応時間 

を特徴付けると思われる特性時間:10-23secと比較してはるかに

長いです。
 

そこで,それらの崩壊の原因となる相互作用は最低次の計算

にのみ,含む必要があるかもしれない程度です。
 

それ故,中性のπ0中間子,0中間子もまた強い相互作用を論じる

には安定な粒子と見なして扱うことにします。
 

先に列挙した強い相互作用反応,弱い相互作用反応に加えて荷電の 

π中間子やK中間子は,光子や外電磁場と相互作用します。
 

ここまでの章では,スピンが1/2Dirac粒子である電子や陽子に

ついて光子を含む電磁場との相互作用による散乱現象のみを論

じてきました。
 

そこで,それらの粒子とスピンゼロ粒子との類似性や異なる性質

を見るため,本章の議論は,荷電のスピンゼロ粒子の電磁力学的

相互作用に限定します。
 

伝播関数による理論展開は,電子に関する理論で与えられた

方向性に従って行ないます。
 

また,例えば,π中間子の原子内での束縛状態のように,

外電磁場内での低エネルギー中間子の性質を論じるため

Klein-Gordon方程式を伝統的な非相対論的方程式に変形

したり,解釈したりすることも行ないます。
 

より一般的な強い核結合や弱い崩壊については,次章で論じる

予定です。
 

§9.2 Klein-Gordon粒子に対する伝播関数 

(The Propagator for Klein-Gordon Particles)
 

 Klein-Gordon方程式:(□+μ2)φ()0 の解φ(), 

ずっと以前に誘導されたように,連続の方程式を満たします。
 

すなわち,カレント:

μi(φμφ-φ∂μφ);∂μ≡∂/∂xμ,に対して,

μμ0 ((∂ρ/∂t)+∇0) が成立します。
 

(※何故なら, μμiμ(φμφ-φ∂μφ) 

iφ(□+μ2)φ-iφ(□+μ2)φ*=0です。※)
 

()≡∫d3ρ(,)=∫d30()

i∫d3(φ0φ) 

(※a∂0b≡a(∂b/∂t)(∂a/∂t)b ※) 

とすれば,μμ0Gaussの定理からQは保存します。
 

そこで,()は,tを含まず,単にQと書いてもいいです。
 

※(注1-1):何故なら,dQ/dt=∫V3(∂ρ/∂t)

=-∫V3()=-∫Sn0です。


 ただし,VはQがゼロでない全空間領域,
Sはその閉じた境界面

の領域(半径:)です。

 
R→∞の極限において,S上のの外向き法線成分:n

(1/4πR2)よりも急激にゼロに収束するとき,

Sn0 です。     (注1-1終わり)※
 

正負両符号の振動数を持つKlein-Gordon方程式の平面波解

は体積Vの箱の中に粒子が丁度1個存在する,という規格化

では,p()()(2ωp)-1/2exp(ipx),

p()()(2ωp)-1/2exp(ipx) です。
 

ただし,μ(0,),ωp=p0(2+μ2)1/20 です。
 

μはこの粒子の質量で,それ故,2=pμμ(0)22

=μ2 です。
 

(1-2): 平面波の波動関数は,1粒子が箱に閉じ込められて

いる場合には.箱の境界で.exp(±ipx)0となるような離散的

な運動量のみが許容されます。
 

このとき,pp'(±)i3[p(±)()0p(±)()] 

 (複号同順)とおけば,pp'(±)

=±(2)-1(0p'0)-1/2(p'0+p0)(20p'0)

exp{(±)i(0-p'0)}3exp{±i(')}

(複号同順)となります。
 

これは,p≠p'のときには,exp{±i(')}が箱の境界

ではゼロなので,pp' (±)0です。
 

一方,'のときにはp'0=p0,

3exp{±i(')}=Vなので,

pp(±)i3[p(±)()0p(±)()]=±1

(複号同順)です。
 

つまり,カレント密度:ρ(±)()ip(±)()0p(±)()

の積分:pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 (複号同順)

となるようにfp(±)()が規格化されています。
 

一般には,pp'(±)=±δpp'(複号同順)です。
 

また,すぐわかるように,負振動数(負エネルギー):

-p0=-ωpの解,と正振動数(エネルギー):p'0=ωp'の解,

逆に正振動数:p'0=ωp',負振動数:-p0=-ωpの解の内積

を与える積分はゼロです。
 

すなわち,i3[p()()0p'()()] 

i3[p()()0p'()()]0 です。
 

(1-2終わり)
 

有限な体積Vの箱の中に1粒子という規格化ではなく,

V→∞の極限の全空間に1粒子があって,平面波の一定運動量

が箱の境界で消えるとか,周期的境界条件を満たすとかの

離散的量子化条件の必要がなく,


 p
が如何
なる連続的値をも取り得るとした場合,Klein-Gordon

方程式の平面波基本解は, 

p()()(2π)-3/2(2ωp)-1/2exp(ipx), および,

p()()(2π)-3/2 (2ωp)-1/2exp(ipx)

で与えられます。
 

このとき,pp'(±)iV=∞3[p(±)()0p'(±)()] 

について,pp'(±)=±δ3(') (複号同順)になるという

デルタ関数式規格化を満たします。
 

また,iV=∞3[p()()0p'()()] 

iV=∞3[p()()0p'()()]0 です。
 

※(注1-3):特に,pp(±)=∫ρ(±)(,)3x=±1 ではなく, 

pp(±)=∫V=∞ρ(±)(,)3x=±∞であり,密度

の総和が有限ではないですから,正エネルギーのみ採用する

としても直接,粒子の確率密度として扱えるものでは

ありません。
 

したがって,これら完全な平面波fp(±)()自身は運動量

が完全に特定されているため,Heisenbergの不確定性原理

の意味で逆に位置は完全に不確定です。


 
目の前から無限に離れた宇宙の果てまで,V=∞の全空間に

一様に拡がっていて,全く対等な確率で(実は1点の体積はゼロ

,有限な確率密度で表現される点での確率は体積に比例する

ため,確率ゼロで)どこにでも存在しているという非現実的な

粒子像にしか対応しません。
 

理想的な,まわりからは孤立していて一切力を受けない質点は

常に一定速度(一定運動量)で運動を続ける,というNewton

運動の第一法則(慣性の法則)」に従う古典的な自由粒子像

 つまり,我々にとって常識的な特定軌道で運動する局在化 

した粒子を平面波で表現することはできません。
 

 そこで,量子力学的には現実の空間に局在する自由粒子

運動量が完全に一定に特定されているわけではなく,

何らかのゆらぎ幅:Δでもって,わずかに拡がった,

謂わゆる重ね合わせ波束(wave-Packet)の形で存在する

とします。

 (注1-3終わり)※
 

正振動数の波のみからなる粒子(波束), 

φ()≡∫Δ[()p()()]3で表現します。
 

こうすれば,iV=∞3[φ()0φ()] 

=∫Δ3|()|2 と書けます。
 

は正定置(有限な正の数)ですから,

=∫Δ3|()|2=+1となるように係数:

()を規格化しておけば,

φ()=∫Δ[()p()()]3,運動量

の平面波を運動量確率密度:|()|2で重ね合わせらた

波であると解釈することが可能です。
 

しかしながら,同様に負振動数の波のみからなる粒子(波束)

, φ()≡Δ[()p()()]3で定義し, 

 QiV=∞3[φ()0φ()]とすれば,
 

 Q=-∫Δ3|()|2となって,0ですから,

 単純な確率解釈は困難となります。
 

 ここに,Klein=Gordon方程式の解に対する確率解釈にとって

の困難が凝縮されていました。
 

何故なら,Dirac方程式の解のときにも見たように,通常の粒子

を示す波動関数=波動方程式の解φ():今の場合なら,

Klein-Gordon方程式の一般解φ(),正振動数の平面波だけ

ではなく負振動数の平面波と混合した重ね合わせで与えられ,

その粒子の全空間での存在確率(=+1)と解釈したい量: 

Q=iV=∞3[φ()0φ()]は正にも負にも成り

得るからです。
 

上記のような直感的解釈の是非は後回しにして, Klein-Gordon

方程式Feynman伝播関数(Feynman^ropagator):Δ(x―y)

を見つけたいと思います。
 

※(1-4):結局は,Dirac方程式の空孔理論と同じく,

正エネルギー波の存在を粒子の存在,負エネルギー波の非存在

を正エネルギーの反粒子の存在と解釈するわけですが,


 スピンゼロのBose粒子は,Fermi統計に従うFermi粒子
とは異なり

Pauliの排他原理は成立しないので,

「真空は全ての負エネルギー状態の準位が既に粒子に占められて

いて,もはや入れないDiracの海である。」

というような真空の解釈はできません。
 
 

しかし,「正エネルギ-粒子は時間の順向きに過去から未来へ

と進行し,時間の逆向きに未来から過去へ逆行する負エネルギー

粒子を,普通に過去から未来へと順行する正エネルギーの反粒子

と見なす。」というFeymanの伝播関数理論についてはDirac粒子

の場合と同様であると考えます。
 

Fermi粒子であろうと,Bose粒子であろうと,真空と粒子,反粒子

の関係とはそういうものであると定義し,理論の創世期には

反粒子などの仮説の根拠を説明するため必要であった,

真空を負エネルギーのDiracの海である,とかの真空の

さらなるモデル化を追及することはしない,

のが現在主流の立場であろうと思います。

 (注1-4終わり※)
 

余談が多く長くなったので,今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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