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2016年6月15日 (水)

クライン・ゴルドン方程式(4)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。


 

§9.4 散乱振幅(Scattering Amplitude)


 

上に示す図9.2におけるように,時間的には過去にも未来にも

世界線をあちこちに動かすことにより,中間子の散乱でも電子

のそれと同じく,直接の散乱振幅と共に粒子-反粒子対の生成

・消滅 の振幅等の評価も含めて定式化できます。
 

散乱振幅,または遷移振幅を計算するためには, 

φ(,)=φin(,)++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

で与えられるφに対する積分方程式を用います。
 

まず最初に右辺のφ(),φ()=φin()を代入して

得られるものを,φ1()=φ1(,)とします。
 

φ1()=φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φin() 

です。
 

次に.このφ1,また,積分方程式:

φ(,)=φin(,)++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

の右辺に,φ()=φi()として代入し,φ2()とします。
 

φ2(x)=φin()++∫d4yΔF(x-y)^()φ1()

です。
 

さらに,このφ2をφ()=φ2()として代入し,得られる

ものをφ3する,ということを反復して,

関数列:φ1,φ2,φ23..を作ると,φ()=φ(,)

求めたい精度まで,近似評価することができるはずです。

  摂動計算の基本とした積分方程式: 

φ(,)=φin(,)++∫d4yΔF(x-y)^()φ() 

の右辺の自由波:φin(,),散乱がないときの規格化された

自由粒子の波を表わしています。
 

与えられた4元運動量,例えばp'μの粒子状態への遷移振幅は, 

こうして相互作用V^によって出現する散乱波:φを規格化

された運動量:p'μの自由波の上に射影することによって見出

されます。
 

このとき,遷移確率は,この射影振幅の絶対値の平方,つまり

散乱波の射影の強さで与えられます。
 

9.2()に示す,通常の散乱に対しては, 

φ()

i∫d3p()()∫d4yθ(t-y0)p()()^()φ() 

i∫d3p()()∫d4yθ(0-t)p()()^()φ() 

の右辺第1項の正振動数部分の波を,運動量:p'μの粒子状態への射影

 として計算される散乱振幅を伴なって,

t→∞のときの散乱波の中に運動量p'μの波が出現します。
 

 すなわち,運動量:μ(0,)で入射して散乱体に衝突した後, 

運動量:p'μ(p'0,')で出現する波の散乱振幅=S行列要素は, 

p'plimt→∞∫d3p'()()i0φ() 

=δ3(')i∫d4yfp'()()^()φ() 

で与えられます。
 

以前の陽電子の理論の項目で論じた伝播関数形式との比較は,

ここで述べているS行列の法則が,以前のそれと同じ物理的解釈

を持つことを示しています。
 

電磁相互作用に対してのスピンゼロの中間子の遷移率の計算で

の実際的ルールは,以前のスピン1/2の電子に対してしたように,

幾つかの簡単な例を挙げて計算することで,帰納的に得ること

できます。
 

それの実際的手順を見るのが次の項目です。
 

§9.5 低次の散乱過程(Low-order Scattering Prosess)
 

最初の例として,最低次のπ+中間子のCoulomb散乱

を考察します。
 

電磁場Aμ()がある場合の方程式: 

(□+μ2)φ()=-V^()φ(); 

^()i(μμ()+Aμ()μ)

-e2μ()μ()における,

^()の最後の項:-e2μ()μ()については,

この最低次(eの1次)の計算への寄与は無いと考えるため,

この項は落としたものをV^と考えます。
 

下の図9.3のグラフに対する遷移振幅Spfpi, 

pfpi=δ3(fi)i∫d4yfpf()()^()φ()

において,φ()=fpi()()とした式から計算されます。

 一般に, fiなので,

pfpi=-i∫d4yfpf()()^()pi()() 

=-i∫d4yfpf()()

{i(yμμ()+Aμ()yμ}pi()() 

(i)(2π)-3∫d4(4ωfωi)-1/2exp(iqy)(f+pi)μμ()
(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ()です。
 

ただし,q=pf-piであり,

μ()=∫d4exp(iqy)μ(), 

あるいは,μ()=∫d4(2π)-4exp(iqy)μ()

です。

 このπ中間子の電磁カレントの,(f+pi)μの形は,電子

の電磁カレント:μ=eψ~γμψのGordon分解におけるスピン

に独立な項を思い起こさせます。
 

(4-1):ordon変形(Gordon-reduction)とは,質量がmの

自由粒子Dirac方程式:

(iγμμ-m)ψ=(γμ^μ-m)ψ=0の2つの解,

ψ=ψ1,ψ2とするとき,  

2mψ2~γμψ1[ψ2~^μψ1(^μψ2~)ψ1]

i^ν(ψ2~σμνψ1)なる式が成立することを意味します。


ただし, σμν(i/2)[γμ,γν] 
です。
 

この式の証明は,既に何度か過去記事で記述しているので

割愛します。
 

この式を,運動量表示でψ1(),ψ2()のそれぞれに対応する

Fourier成分を,u(),(p')とすると, 

2mu~(p')γμ() 

=u~(’)[(μ+p'μ)iσμν(p'ν-pν)]() 

と書けます。
 

そこで両側を,~(p')とu~()で挟むという前提では, 

2mγμ(μ+p'μ)iσμν(p'ν-pν) 

(μ+p'μ)iσμνν,
 

つまり,(μ+p'μ)2mγμiσμνν  です。
 

そして,2mγμ(μ+p'μ)iσμνν,の右辺の 

スピンに独立な乗は,(μ+p'μ)のみです。


(4-1終わり※)
 

さて,pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ()

,静電Coulombポテンシャル: 

μ(){Ze/(ε0||2)}2πδ(ωf-ωi)μ0を代入します。
 

すると,pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

(i)(2π)-2{Ze/(ε0||2)}δ(ωf-ωi) です。
 

(4-2):Coulombポテンシャルは,

0(){Ze/(4πε0)}/||,および,()0 です。


 故に()0であり,

0()=∫d4exp(iqy)0() 

{Ze/(4πε0)}∫d4exp(iqy)/|| 

{Ze/(4πε0)}∫dy0exp{i(ωf-ωi)0}

∫d3exp(iqy)/|| です。
 

ところが,∫d3exp(iqy)/|| 

2π∫-11(cosθ)0||{||exp(i||||cosθ)}, 

(4π/||)0drsin(||) 

=-(4π/||2)[cos(||)] 04π/||2 です。
 

(Fourier積分の結果なのでチェザロ(Cesaro)和として, 

limr→∞cos(||)0 です。)
 

したがって,{Ze/(4πε0)}∫d4exp(iqy)/|| 

{Ze/(ε0||2)}2πδ(ωf-ωi) です。


(4-2終わり※)
 

終状態fへの遷移確率の総和は,|fi|23fであり, 

これを反応時間:T=2πδ(0)で割ると,遷移速度 

(=単位時間当たりの遷移確率)になります。
 

さらにこれを入射流束の大きさ:|ρi||i|/(2π)3

で割り,3fの積分を保留すると,微分断面積dσが

得られて,
 

dσ={(2π)3/|i|}3f(2π)δ(ωf-ωi)

[Ze2/{(2π)3ε0||2}]2となり,そして,

dσ/dΩ=Z2α2/{4β22sin4(θ/2)} です。
 

(4-3):粒子が体積Vの箱に閉じ込められていて波動関数が

その中に,粒子がただ1個あるように規格化されている場合,

S行列要素は, 

fi=Spfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

(i){Ze/(ε0||2)}(2π)δ(ωf-ωi) です。
 

そして,運動量空間の微小領域:3fにある終状態の数:

3,3{/(2π)3}3f で与えられます。
 

それ故,この終状態fへの遷移確率は,|fi|2{/(2π)3}3f

であり,これを反応時間:T=2πδ(0)で割って,遷移速度

を求めます。
 

さらに,これを入射流束の大きさ:|ρi||i|/Vで割ると, 

微分断面積dσが得られて, 

dσ=(/|i|)|fi|2{/(2π)3}3f/ 

{(2/|i|)/(2π)3}3f(2π)δ(ωf-ωi){

Ze2/(ε0||2)}2 です。
 

しかし,Vを全空間とするデルタ関数式規格化ではVを(2π)3

置き換えることができて, 

dσ=[1/{(2π)3|i|}]3f(2π)δ(ωf-ωi)

{Ze2/(ε0||2)}2 と書けます。
 

|i||i|/ωi=β,

3f|f|2|f|dΩf|f|ωfdωfdΩf 

ですから,
 

dσ=[1/{(2π)3|i|}]3f(2π)δ(ωf-ωi)

{Ze2/(ε0||2)}2 

(2π)-2{|f|ωiωf/|i|}]dΩf{Ze2/(ε0||2)}2|ωf=ωi 

{(2π)-2ωi2}]dΩf{Ze/(ε0||2)}2|ωf=ωi
 

ωf=ωiでは|i||f|であり,p≡|i||f|と置けば, 

p=βωiです。

 それ故,||2(fi)2f2i22i||f|cosθ
 

22(1cosθ)42sin2(θ/2)です。
 

したがって,dσ/dΩ=Z24/{64π2ε02β22sin4(θ/2)} 

ですが,最後に,微細構造定数α=e2/(4πε0) 1/137

用いて,24πε0αを代入すれば,

dσ/dΩ=Z2α2/{4β22sin4(θ/2)}を得ます。

(4-3終わり※)
 

さて,得られたπ中間子の微分断面積の角度分布: 

dσ/dΩ=Z2α2/{4β22sin4(θ/2)},

参考テキストの第7章:本ブログでは,2010年8/14の過去記事

散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)」で求めた電子のそれ,


 dσ/dΩ=Z2α2{1-β2sin2(θ/2)}/{4β22sin4(θ/2)}
 

と比較して,因子:{1-β2sin2(θ/2)}のみが欠如しています。
 

この因子は電子のスピン1/2と関わる,スピノルについての

行列積のトレースに起因しています。
 

今日は,まだ退院したばかりなので,中途ですがここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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