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2016年7月 4日 (月)

クライン・ゴルドン方程式(5)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。

 今回は,科学記事のアップが,ずいぶん,久しぶりとなりましたが,

実はこの間,別の計算に明け暮れていました。

 それは「弱い相互作用の旧理論」に基づいて,自由
中性子n

崩壊率,または平均寿命の予測値の精密な値を求めるという

課題です。
 

 思えば,「弱い相互作用の旧理論」は,ここまで記事を重ねて

いながら,μ粒子や荷電π中間子の崩壊率,寿命については実験

観測値とほぼ適合する予測計算値を得ていながら,肝心の中性子

nのβ崩壊による崩壊率や寿命については,具体的な計算を実行

していなかったことに気付きました。

 
しかし,前回の「弱い相互作用の旧理論(15)]」で,CVC

の仮説から,π→ π0+e+ν~ なるπの崩壊が存在し.その

崩壊率のオ-ダーが 10-8 程度である,という参考テキストに

あった値を天下り的に記述してアップした後,これは如何なる

計算で評価されたるのか?という根拠が気になりました。
 

 結局,Fermi粒子とBose粒子の違いはありますが,これは

中性子β崩壊:n→ p+e+ν~と同じ3体崩壊なので,

nとpの質量,質量差と,πnとπ0のそれらを比較すれば,

nのβ崩壊での評価値との比較で納得できる回答が得られる

のでは?と考えるに至りました。

  そこで,これまでの関連記事を全て
チェックしたところ,

ここまで肝心の中性子nのβ崩壊の具体的計算を怠っていたこと

に気付いたわけdす。

  既にμ崩壊の詳細計算などは実施ししているので,同様に

やれば簡単に計算評価できると思っていたのに,なかなか数値

として合理的と思われる評価が得られず,

  中途
挫折しているうちに.つなぎにでも,

「クラインゴルドン方程式」の続きの新記事をアップしよう

と思ったわけです。
 

さて,前回の記事「クラインゴルドン方程式(4)」の最後では, 

電荷が+ZeのCoulombポテンシャルによるπ中間子の 

ポテンシャル散乱の微分断面積(角分布) ,微細構造定数: 

α=e2/(4πε0) 1/137の最低次, 

dσ/dΩ=Z2α224//{4β22sin4(θ/2)}で与えられ,
 

 これは,2014年の過去記事:

 「散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)で求めた,同じ

 Coulombポテンシャルによる電子の散乱微分断面積: 

 dσ/dΩ=Z2α2{1-β2sin2(θ/2)}/{4β22sin4(θ/2)}

 とは.電子スピンの1/2と関わる,スピノルについてのトレース

 に起因する因子:{1-β2sin2(θ/2)}のみが異なるという,

 合理的で当然な結果が得られた。

 というところで終わりました。
 

 さて,今日はその続きですが,これと似た結果はπ中間子の

 Coulomb散乱 に対しても得られます。


 上の図9.4のように,散乱前に運動量piμを持った
π中間子

表わすpi(-)()が,散乱後に,終状態で出現する

φ()=fpf(-)()運動量pfμを持つπ中間子へと遷移する

S行列要素は,この前に求めた下図9.3に対応する同じ運動量

遷移q=pf-piのπ中間子S行列要素:

 
pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ()
 

から,

pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

に変わるだけです。
 

これらは,πとπの電荷の符号の変化に対応して符号だけ

が異なるため,πとπ,Coulomb散乱の最低次近似では,

同一の微分断面積を持つことがわかります。
 

 中心電荷Zeは,π中間子には斥力,π中間子には引力を

及ぼすという明確な違いがあるにも関わらす,散乱微分断面積

は同一という計算結果ですが,これは以前の電子散乱と陽電子

散乱のケースに述べたのと同じく最低次の計算で一致すると

いうだけで,高次の計算をまでを考慮すれば,その差異が現わ

れます。
 

そして,こうした計算から学び取れることは,荷電π中間子の

頂点には,電子の頂点に対するeγμの代わりに,因子:

(f+pi)μが結び付くということです。
 

波動関数の規格化因子は,1/(2ω)1/2.これは電子に対する

(/)1/2にとって代わるものであり,もちろんスピノル因子:

(),()などの因子も存在しません。
 

電磁場;μ()がある場合のπ中間子のスカラー波動関数

φに対する方程式:(□+μ2)φ()=-V^()φ(); 

^()i(μμ()+Aμ()μ)-e2μ()μ() 

から,

  
pfpi=δ3(fi)i∫d4yfpf()()^()φ() 

,φ()=fpi()()とおくことによりπ+中間子S行列

要素の座標表示の最低次近似の計算式得ました。
 

そして,これから行列要素の運動量表示最低次の

f≠pfにおける表式:

Spfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

を得たのでした。
 

この際には,^()i(μμ()+Aμ()μ)

と見なし,eの2次の項である -e2μ()μ()

無視したため,^頂点に対する因子;(f+pi)μ

得られたわけです。
 

 したがって,最低次では不要な-e2μ()μ()

対するFeynmanのルールは不明でしたが,これを得るために

荷電中間子のCompton散乱を考察します。
 

Coulomb 散乱では,μ()は単に外場のポテンシャル:であり, 

特に静電Coulombポテンシャル: 

μ()=gμ0{Ze/(4πε0)}/|| 

=∫d4(2π)-4μ()exp(iqx); 

μ(){Ze/(ε0||2)}2πδ(ωf-ωi)μ0

でしたが,
 

Compton散乱では中間子と光子が衝突するため,μ

 μ()=Σλ=±∫d3ε0-1{(2π)320}-1/2 

[^(,λ)εμ(,λ)exp(ikx)

+a^(,λ)εμ(,λ)exp(ikx)] 

ただし,0|| で与えられる光子を示す電磁場

とします。
 

このAμ(),本質的には第2量子化された電磁場

の演算子であり,それ故,係数:^(,λ), ^(k',λ')

も演算子で,交換関係:[^(,λ), ^(k',λ')]

=δ3(')δλλ'を満たす,それぞれ,光子1個の

消滅演算子,生成演算子です。
 

kは光子の運動量,λは横波の2つの独立な偏光(偏極)

を示し,εμ(,λ).を進行方向とする座標系では

ε(,λ)0で直交する横波光子の3次元単位でクトル

となる大きさが14元偏光ベクトルを意味します。
 

(※つまり,εμ(,λ)εμ(,λ)=0-ε(,λ)2=-1です。)
 

ただし,ここではまだ量子電磁力学や場の量子論でなく,

相対論的量子力学としてやや現象論的な扱いをします。
 

したがって,ここで重要なのは,規格化された平面波

ベクトル波動関数:{(2π)320}-1/2εμ(,λ)exp(ikx)

を持つ運動量の光子,^(,λ)に従って,1個だけ消滅

=吸収され,他方,{(2π)320}-1/2εμ(,λ)exp(ikx)

で表わされる波は,^(,λ)に従って,同じ運動量

光子1個が生成=放出されるプロセスに対応する,という

ことです。

 

それ故,上の9.5に示される運動量piで入射してpfで出ていく 

π中間子の運動量遷移がq=pf-piの相互作用:V^による散乱

のS行列要素が,


   相互作用がV^の波動関数の摂動近似,

 φi()=φin()+∫d4yΔF(x-y)^()φin(), 

 φ2()=φin()+∫d4yΔF(x-y)^()φ1()

 つまり,

 φ1()=fpi()()+∫d4yΔF(x-y)^()pi()()

 より,pfpi(1)≡<fpf()φ

 ≡limt→∞∫d3pf()()i0φ1() 

 =δ3(fi)(i)∫d4yfpf()()^()pi()(),
 

 φ2()=fpi()()+∫d4yΔF(x-y)^()pi()() 

 +∫d4zd4yΔF(x-y)^()ΔF(y-z)pi()(), 

 より,Spfpi(2)≡<fpf()φ2>-Spfpi(1) 

 =(i)2∫d4yd4xfpf()()^()ΔF(x-y)

 V^()pf()()と掛けるため。


   Compton 散乱では,

 V^i(μμ+Aμμ) -e2μμのうち, 

 i(μμ+Aμμ}については,f≠piのとき, 

 Spfpi(2)(i)2∫d4yd4[pf()()

 {i(yμμ()+Aμ()yμ} 

 ×iΔF(y-z){i(zμμ()+Aμ()μ)}pi()()]

 が寄与し,
 

 また,-e2μμについては, 

 Spfpi(1)(i)∫d4[pf()()

 {-e2μ(yx)μ()}pi()())} 

 とした寄与があるので,これらの和を取ったものが

 S行列要素のeの最低次(eの2:2)のオーダー

 の近似になります。
 

 運 動量表示では, 

 Aμ()=Σλ=±∫d3{(2π)320}-1/2ε0-1 

 [^(,λ)εμ(,λ)exp(ikx)

 +a^(,λ)εμ(,λ)exp(ikx)] 

 から,


  Feynman
ル-ルとして,(,λ)の光子を吸収する場合は,
 

{(2π)320}-1/21/2ε0-1εμexp(ikx),(',λ')の光子

を放出する場合は,{(2π)320}-1/2ε0-1εμexp(ik'x)

を付与します。
 

吸収と放出の交差項のみ,Compton 散乱のグラフに寄与して. 

pfpi(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

×(i)2(i2ε0-2)[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1

{ε'(2f+k')}{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1

{ε(2f-k)}]+(i){-e2ε0-22(εε’)}] 

が得られます。


  最後の,-e2μμの項に
ついては2の因子が掛かること

に注意が必要です。
 

(5-1):元々,摂動展開では元々,展開の1次項に対して,

2次項には,(1/2!)という因子が掛かっていますから,相対的

に2次近似は1次近似の2倍の寄与をするといえます。
 

あるいは,より直感的に1頂点でつの光子が結合するFeynman

で光子の吸収と放出を交換する2重の寄与がカウントされる

からです。 (5-1終わり)
 

上記のπ中間子のCompton散乱のS行列要素の式のチェックに, 

20107/30の過去記事:「散乱の伝播関数の理論(18)(応用4)」における 

電子のCompton散乱のS行列要素の式:散乱断面積を与える式で

ある有名な「クラインー仁科(Klein-Nishina)の公式」に至るS行列要素を

用いることができます。
 

これは,fiComp(2/ε022)(2π)4δ4(f+k-pi-k) 

(40k' 0)-1/2{2/(fi)}1/2 

~(f,f)[(iε'){i/(i-m)}(iε) 

(iε){i/(i'-m)}(iε')](i,i)

でした。
 

ここで,ε=εμγμであり,Vは(2π)3と読み換えることが

できます。
 

この時の散乱振幅に対して適用したようにゲージ不変性

のテストを適用することができます。
 

すなわち,吸収光子でのεμ→εμ+Λkμ,および,放出光子

でのε'μ→ε'μ+Λ'k'μなる変換に対して,fiが不変

であることをチェックすることで,散乱振幅の式の妥当性を

ある程度,チェックできます。
 

実際,pfpi(i2ε0-2)(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

×[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2(εε')] ですが,
   
これは,これらの変換に対して不変:
ゲージ不変なる

ことを示すことができます。
 

(5-2):上記Spfpiの右辺において,εμ,ε'μには

無関係な因子を除いたものは, 

[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2(εε')] で与えられます。
 

後者の変換:ε'μ→ε'μ+Λ'k'μに対する不変性の証明 

も前者:εμ→εμ+Λkμに対するそれと,ほぼ同じです

から,ここでは,εμ→εμ+Λkμに対する不変性のみを

証明することにします。
 

これは上記の[ ]で囲んだ式で,εμをkμに置き換えると, 

これがゼロとなることを示せば十分です。
 

[ ]の中{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2(εε') です。
 

したがって,[ ]ε→k 

{(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{(2f-k)} 

(2kε')

(2i)(2i)-1{(2fε')+(k'ε')} 

{(2iε')ー(k'ε')}(2ik')-1(2f))+(2kε') 

2fε')+(k'ε')(2iε')(k'ε')(2kε') 

2(f+k'-pi-k)ε'=0 が得られます。
 

ここで,2=k'20,および,保存則:f+k'=pi+k

,これにより(2ik')(2f) etc.を用いました。
 

(注;52終わり)
 

以上から,pfpi(i2ε0-2)(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

×[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2(εε')]

は確かにゲージ不変であることが示されました。
 

そして,運動量kμ(0,)で進む光子は横波であり, 

偏光:εμ(0,ε)は,εk=-εk0 を満たします
 

これは,場のゲージ条件としては,μμ=∇A=0

意味します。


  量子論では,こうした
Lorentz不変性が満たされたり,便利

であるゲージ選択が矛盾に導く可能性もあって,状態の方

物理的とかの付加条件を追加したりしますが,本質的には,

光子が∂μμ0,またはεk=0を満たすとする条件を採用

して計算しても問題は無いです。

'
  それ故,εk=ε'k'=0 が満たされると考えます

 

そして,また,πが最初静止していたと見える座標系では

間軸の取り方は任意なので,このπと衝突する入射光の

偏光ベクトルがεμ(0,ε)(0,0,0,1)のとき,このε

z軸の向きになるようにπの実験室系(Laboratory-ystem):

iμ(μ,0)の座標系のz軸の向きに一致するように軸を

とることができます。
 

そうすれば,自動的にεpi0です。
 

同様に終状態のπが静止している:つまり,散乱された

πと共に運動する,またはπに固定された慣性座標系:

fμ(μ,0)で散乱された光子の偏光の向きε'

z軸に採用すれば,ε'μ(0,ε')(0,0,0,1)

なので,ε'p0 となります。
 

すると,εk=ε'k'=εpi=ε'p0ですから,結局, 

{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε7(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2(εε')=-2(εε') となります。
 

それ故,pfpi(i2ε0-2)(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k)2(εε') です。
 

これから,

実験室系での荷電πのCompton散乱の微分断面先の式:

(dσ/dΩ)lab(α2/μ2)(εε')2/{1(/μ)(1cosθ)}2 

を得ます。
 

(5-3): ,Tをそれぞれ,散乱の相互作用の体積,反応時間

とすると,(始状態)から,πと光子が存在するf(終状態)への

上記S行列要素:fiの絶対値の平方に,終状態のπ中間子の密度

(2π)-3Vd3,終光子の密度:(2π)-3Vd3'を掛けると,

その微小領域への遷移確率は,|fi|2(2π)-623f3'

で与えられます。
 

これを,体積Vと時間Tの積:VTで割った単位体積当りの 

遷移速度は,{|fi|2/(VT)}(2π)-623f3'です。
 

これを,さらに始状態の静止πに対する光子の入射流束(1/)

とπの密度:(1/)で割ったものが,π中間子1個と光子1個当

たりの単位時間当たりのd3f3'への散乱確率:dσを

与えると考えられます。
 

ただし,こうした現象では,V=∞(全空間)として

V=(2π)3δ3(0),T=∞=(-∞,)の全時間として,

T=(2π)δ(0)とし,VT=(2π)4δ4(0)と同定します。
 

また,粒子がVの中に1個だけあるという波動関数

の規格化でなく,全空間でのデルタ関数式規格化では,

最後にV=(2π)3とします。
 

そこで,dσ={|fi|2/(VT)}2(2π)-623f3' 

(2π)6(2π)-12(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

(16ωiωf0k'0)-144ε0-2(εε')23f3'

iμ­(ωi,i)(μ,0)でωiμ, 

3f /(2ωf)=4f θ(ωf)δ(f2-μ2)より,
 

右辺で∫3f /(2ωf)を実行すれば,δ4(f+k'-pi-k)

は消えて,dσ=(2π)-24ε0-2(2μk0k'0)-1θ(μ+k0-k'0)

δ(f2-μ2)(εε')23' です。


  そして,(0)-1
3'=k'dk’dΩと書けば,
 

dσ/dΩ=(2α2/μ)0μ+k0(εε')2δ(f2-μ2)k'dk' 

です。(※ここで24πε0αを代入しました。)
 

dk'積分を実行して,δ(f2-μ2)因子を消去すると, 

0=pf2-μ2(i+k-k')2-μ2 

2(i)2(ik')2(kk') 

2μ(0-k'0)2(0k'0)(1cosθ) 

2μk02μk'0{1(0/μ)(1cosθ)} 

ですから,

  
k'0=k0/{1(0/μ)(1cosθ)} を得ます

 

ここで,0||を単にk,また k'0|'|

単にk'と表記し直すと,k'=k/{1(/μ)(1cosθ)}

であり,


  また,
f2-μ2(i+k-k')2-μ2 

2μk-2μk'{1(/μ)(1cosθ)} なので, 

∫dk'f(k')δ(f2-μ2)

=f(k')/[2μ{1(/μ)(1cosθ)}]

ただし,k'=k/{1(/μ)(1cosθ)} 
 

以上から,始状態のπの実験室系で, 

dσ/dΩ={2α2/(μk0)}

0μ+k0(εε')2δ(f2-μ2)k'dk' 

(2α2/μ2)(εε')2/(2μ)/{1(/μ)(1cosθ)}2

 dσ/dΩ=(α2/μ2)(εε')2/{1(/μ)(1cosθ)}2 

が得られました。  (5-3終わり)
 

これは,低光子エネルギーの極限で,古典Thomson散乱の極限 

に帰するものです。
 

結果を光子の終偏極ε'について総和し,始状態の入射光子

偏極εについて平均すれば,π中間子の非偏極光子による

散乱の微分断面積として,[(dσ/dΩ)lab] 

=α2(1cos2θ)/[2μ2{1(/μ)(1cosθ)}2]

を得ます。


  
(※何故なら,既に電子のCompton散乱の項で計算したように, 

(1/2)Σε,ε'(εε')2/(1cos2θ)/2となるからです。)
 

 今日はここで終わります。

 
次回は,より高次の計算について述べる予定です。
 
 

 (参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

 "Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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