場の量子論第Ⅱ部の続きです。
前回は,Dirac場:ψ^とと光子場(電磁場):A^が共存して
相互作用する系を考えたとき.それらの場を正準定式化した理論
が.座標系のLorentz変換に対して不変という,対称性を持つこと,
の証明を試みました。
まず,一般の粒子場:{φr^}r=1,.Nから成る系で.理論がLorentz
変換対称性を持つには、Noether保存量として角運動量演算子:
Mμν^が存在して,
i[Mμν^,φr^(x,t)]-=(xμ∂ν-xν∂μ)φr^(x,t)
+Ξμνrsφs^(x,t) なる交換関係を満たすことが必要である
ことがわかりました。
(※ただし,前回記事同様,添字:μ,νだけでなくr,sについても,
総和記号:Σを省略する記法を用いました。)
粒子場:{φr^}r=1,.Nが,
具体的なDirac場:ψ^=[ψα^]α=1,2,3,4と光子場(電磁場):
A^=[Ak] k=1,2,3 であり,Lagrabgian密度:L^が.
L^=ψ~^{iγμ∂μ-e0γμAμ^-m0}ψ^
-(1/4)Fμν^Fμν^ で与えられる電磁相互作用系では,
相対論的不変性のために満たされるべき,上記交換関係は,
i[Mμν^,ψ^(x)]=xμ∂νψ^-xν∂μψ^
+(1/4)[γμ,γν]ψ^(x), および,
i[Mμν^,Ar^(x)]=xμ∂νAr^-xν∂μAr^
+(gμrgνs-gνrgμs)As^(x)
なる条件式を意味します。.
そして,結局,演算子:Mμν^は,
Mμν^=∫d3yM 0μν^(y),
M 0μν^(x)=xμT0ν-xνT0μ+(i/4)ψ+^[γμ,γν]-ψ^
+(gμrgνs-gνrgμs)Ard^As^
と表わされるため,
すぐ前に,成立することを確認した平行移動対称性に関する
関係式:i[Pμ^,ψ^(x)]-=i∫d3y[T0μ^(y),ψ^(x)]-
=∂μψ^ ,および,
i[Pμ^,A^(x)]-=i∫d3y[T0μ(y),A^ (x)]-=∂μA^
を用いると,チェックすべき角運動量の交換関係については,
再び詳細な具体的で冗長な計算をすること無しに,ほぼ自動的
に成立することがわかる. と述べました。
しかし,実はこれには落とし穴がありました。
それは光子場(電磁場)A^のゲージ条件に関わる問題です。
特に,ここで理論定式化のためにに採用したCoulombゲージ:
∇A^=0 は,明らかにLorentz変換に対して不変ではなく,
座標変換すると,この場が横波であるべき.という条件は満た
されなくなります。
この問題には,自由光子場の項でも遭遇したことを
思い出しました。というところで、前記事は終わりました。
さて,今回,その続きですが,ψについては,先述の論議手順は
問題無しで,また,電磁場の空間ベクトル成分:A^ or Ar^
(r=1,2.3)についても,もしもLorentz変換を3次元の空間回転
に限定するなら,∇A^=0 は空間回転不変な性質なので問題無い
はずです。
しかし,そもそも独立なAr^(r=1,2.3)だけでなく,A0^=Φ^も
含めて4元ベクトルをなすことが,相対性理論と上記の交換関係
にとって必要ですから,光子場については修正を余儀なくされます。
ここで,まず,以前,自由光子場で,この同じ問題に遭遇したとき,
どのように処理したかを見るため, 2012年11/26と12/05にアップ
した場の量子論第Ⅰ部の過去記事:
「相対論的場の量子論(正準定式化)」(34),(34-2)の必要部分
を以下に再掲載したいと思います。
※余談ですが,これらの記事をアップしたのは,丁度,
帝京大学病院に右眼の手術のため入院した前後でした。
2011年春,東北大地震の後に,帝京大学病院で左眼の
糖尿性網膜症(眼底出血),兼,白内障の手術を受けたのに
続いて.翌2012年春,福島会津若松にボランティアに行った直後
今度は右眼も同じ手術を受けました。
それにも関わらず,秋になって再び,右眼の眼底出血を起こして,
11月末に同じ帝京大学病院眼科に入院することになったのでした。
しかし,眼科は手術が終われば,すぐに退院なので,12月初めには
もう退院していました。この頃は,足ではなく眼の疾患で入院を
繰り返していましたね。
その後,インスリン投与のため,高血糖で眼底出血するより,低血糖
での脳からの血液の網膜の酸素欠乏で,一時的に眼が見えなくなる
方が多くなり,最近では眼の外科治療は受けていません。
今は,足と心臓の治療で,もっぱらお茶の水の順天堂大学付属医院
でお世話になっています。※
さて,光子の場:A^がDirac場:ψ^と共存して,電磁相互作用する
場合,電磁場単独の自由光子場の論議との唯一の違いは,
∇E^=-∇2Φ^=0 ではなく,∇E^=-∇2Φ^=ρ^
=e0ψ+^ψ^≠0 なので,A0^=Φ^=0 とすることはできない
ことです。
Coulombゲージ:∇A^=0 は,そのままですが.
Φ^(x,t)={e0/(4π)}∫d3y
[ψ+^(y,t)ψ^(y,t)/|y-x|]であり, ∇A^=0 ,
かつ,A0^=Φ^=0,の輻射ゲージではなくなるのが,
大きな違いです。
しかしながら,A0^=Φ^は相変わらず,光子場:A^
とは常に交換するため,光子場の観点から見ると,単なる
c-数と見なせて,やはり,,[Mμν^,A0^(x)]-=0 が
成立します。
その他には,当然;□Aμ^=jμ=eψ^γμψ^とか,
運動方程式が場のそれ:;□Aμ^=0 とは異なるのは,
もちろんですが,過去の記事でかなり詳細に論じられている
ので,まず,それを見て,こうした違いの部分だけを注意して
修正すれば,いいと思ったわけです。
(※ ↓ 以下は,再掲載記事です。)
「相対論的場の量子論(正準定式化)(34)」(2012年11/26)
※ まず,前回,(33)の最後の部分を補足しながら再掲します。
Aμ^(x)が4元ベクトルの変換性を持つと仮定したとき,
相対的に運動している2つの慣性座標系間の変換の生成子:
M0k^=-M0k^は, M0k^
=∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^+Ξ0krsπr^As^+xkL^:
=∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^+(δr0δsk-δrkδs0)πr^As
^+xkL^:で与えられます。
※※(注34-1):場のLorentz変換の生成子:Mμν^は,
Mμν^=∫d3xM 0μν^ ;
M 0μν^=∑r{πr^(xμ∂ν-xν∂μ)φr^}
-(xμη0ν-xνη0μ)L^+∑r,s Ξμνrsπr^φs^ なる表式で
与えられます。
このφr^(x)が電磁場Aμ^(x)で,これが4元ベクトルとして
変換する場合には,上式でφr^をAλ^に変えると,
M 0μν^=πλ^(xμ∂ν-xν∂μ)Aλ^+Ξμνλρπλ^Aρ^
-(xμη0ν-xνη0μ)L^ と書けます。
(※ただし,ημνは,空間が平坦なMinkowski空間の場合の
Riemann計量テンソル成分:gμνを意味します。)
この場合,Ξμνλσ=δλμδσν-δλνδσμ
なので,
Mμν^=∫d3x[πλ^(xμ∂ν-xν∂μ)Aλ^+Ξμνλρπλ^Aρ^]
-∫d3x{(xμη0ν-xνη0μ)L^} となります。
これに,今の輻射ゲージ:∇A=0,A0^=π0^=A0^≡0
も成立すると仮定して正規順序を取れば,上記表現:
M0k^
=∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^+Ξ0krsπr^As^+xkL^:
=∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^+(δr0δsk-δrkδs0)πr^As^
+xkL^: が確かに得られます。
※添字の上げ下げが気になるかもしれませんが,相対論では時空
座標をxμ=(x0,x1,x2,x3)=(t,x)としたとき,共変(covariant)
ベクトルとは,座標系の変換に対して,その成分が時空座標による
微分係数:∂μ=(∂0,∂1,∂2,∂3,)≡(∂/∂x0,∂/∂x1,∂/∂x2, ∂/∂x0,)=(∂/∂t,∇) の成分と同じように変換されるベクトル
のことです。
これに対して元の時空座標と同じ変換性のベクトルを反変ベクトル
と呼びます。
反変ベクトルは上添字,共変ベクトルは下添字で表わし,
ギリシャ文字μ,ν,λ、・・は4元ベクトル添字の0,1,2,3,;
ラテン文字ijklm,;;p,q,r,sは,空間ベクトル添字
の1,2,3を表わすのが慣例です。
そこで,πλ^≡∂L^/∂(∂Aλ^/∂t)のように,スカラーを
反変ベクトルで微分したものは共変ベクトルとなって,添字
が上下逆転します。
今の場合は,空間成分は,単にπr^=-πr^(r=1,2,3)
なので,M0k^
=-∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^+Ξ0krsπr^As^+xkL^:
=-∫d3x:πr^(x0∂k-xk∂0)Ar^
+(δr0δsk-δrkδs0)πr^As^-xkL^:と書けます。
この表現なら角運動量として違和感はないでしょう。
さらに余談を続けると.同じ量;Aの反変ベクトルとしての
成分:Aμと共変ベクトルとしての成分Aμは,Riemannの
metric tensor(計量テンソル):gμνによって,
Aμ=gμνAνなる関係式で結び付けられています。
座標変換の不変量=スカラーを与えるベクトルの内積は見掛け
の上で反変ベクトルと共変ベクトルの積の形:(A,B)≡AμBμ
=gμνAμBμで定義されます。
そして,特に行列(gμν)の逆行列:(gμν)-1の(μ,ν)成分を
gμνと書きます。すると,Aμ=gμνAνで(A,B)=AμBμ
=gμνAμBν とも書けます。
しかし,特殊相対論の慣性系の間の座標変換であるLorentz変換
を問題とするケースでは,時空は曲がったRiemann空間ではなく,
計量は平坦なMinkowski-metricであってgμν=ημνなので,
反変,共変の区別や添字の上げ下げは煩雑なだけで,添字の上下
も符号が変わるだけで,さほど重要な意味はありません。
事実,Landauや西島などは,謂わゆるPauliのmetric:つまり
反変,共変を区別せず,時空座標はxμ=(x1,x2,x3,x4)
=(x,it)であるとして時間変数のみを純虚数とし,一般の
4元ベクトルでも第4変数は純虚数として,
内積も普通に(A,B)≡AμBμと定義して,Euclid空間
のような扱いをしています。
しかし,基礎物理学や光速cが効くようなスケール,または
時空の性質がオ-ダー的に影響し得る分野の多くのテキスト
では,理論が,いずれは特殊相対論から一般相対論の定式化へ
と発展するであろうという認識から共変と反変を区別し,添字
の上げ下げが用いられているようです。
(注34-1終わり※※)
さて,自由電磁場のLagrangian密度の陽な形は.
L^=-(1/4):Fμν^Fμν^:=(1/2):E^2-B^2:
ですが,
π^=E^=-∂A^/∂t=-Ad^.or πr^=-πr^=Ard^,
B^=∇×A^を代入すれば, ^=(1/2){Ad^2+(∇×A^^)2}
=(1/2){π^2+(∇×A^^)2} と書けます。
したがって,Lorentz回転の生成子:M0k^=-M0k^は
M0k^=∫d3x:x0Ar d^∂kAr^-xkAd^2
+(1/2)xk{Ad^2-(∇×A^)2}:
=∫d3x:x0Ar d^∂kAr^-(1/2)xk{Ad^2+(∇×A^^)2}
=-∫d3x:x0πr ^∂kAr^+(1/2)xk{π^2+(∇×A^)2}:
とも表現されます。
しかし,現実には,Lorentz変換の下で,Aμ^は単純に4元ベクトル
としては変換せず,追加のゲージ変換をも受けるとして,
新座標系でも輻射ゲージが保持されるように補償されなければ,
新しく変換された座標系で同じ電磁場の量子論を展開すること
ができません。
実際,A0^(x,t)は輻射ゲージでは恒等的にゼロなので,
明らかに恒等的に,i[M0k^,A0^(x,t)]=0 ですが,上記の
4元ベクトルを仮定した定義から,
Mμν^が生成子なら,
i[Mμν^,Aλ^(x)]=(xμ∂ν-xν∂μ)Aλ^(x)
+Ξij λρAρ^(x)となるべきですから,
特にi[M0k^,A0^(x,t)]=(x0∂k-xk∂0)A0^(x,t)
+(δ00δsk-δ0kδs0)As^(x,t)=Ak^(x,t)
となるべきです。
しかしながら,i[M0k^,A0^(x,t)]=0 ,かつ,
i[M0k^,A0^(x,t)=
Ak^(x,t) ≠0 となることはない
ので,これは,既に矛盾です。
前回(33)の最後はここまででした。※
既に上では,前回の補足のため,(注)を1つ入れましたが,今日
の記事は,さらに上記の最後の式を裏付けるための次の(注)
から入ります。
※※(注34-2):まず,A0^(x,t)=0ですから,明らかに
i[M0k^,A0^(x,t)]=0 というのは問題ないです。
一方,場:φr^(x)に対するLorentz変換の生成子:Mμν^が
満たすべき式は,
i[Mμν^,φr^(x)]-=xμ(∂φr^/∂xν)
-xν(∂φr^/∂xμ)+Ξμν rsφs^(x) です。
よって,仮に,Aμ^(x,t)が4元ベクトルとして変換される
なら,それから構成される生成子 Mμν^のBoost部分 M0k^
とA0^(x,t)の交換関係は,
i[M0k^,A0^(x,t)]=(x0∂k-xν∂0)A0^(x,t)
+(δ00δrk-δ0kδr0)Ar^(x,t)
を満たすはずです。
そして,(δ00δrk-δ0kδr0)(x,t)As^(x,t)=Ak^(x,t)
ですから,上記の満たすべき交換関係式の右辺に,
A0^(x,t)=0 を代入すると,これは,
i[M0k,A0^(x,t)]=Ak^(x,t) となります。
(注34-2終わり※※)
また,同じく,M0k^=∫d3x:x0Ar d^∂kAr^-xkAd^2
+(1/2)xk{Ad^2-(∇×A^)2}:
=-∫d3x:x0πr ^∂kAr^+(1/2)xk{π^2+(∇×A^)2}:
を実際に,Aj^(x,t)との交換関係:i[M0k^,Aj^(x,t)]
に代入すれば,
[πr
^(y,t),Aj^(x,t)]=iδtrrj(y-x)により,
i[M0k^,Aj^(x,t)]=(x0∂k-xk∂0)Aj^(x,t)
+∫d3y∫d3q(2π)-3[{A d^(y,t)qqr/q2}
×ykexp{iq(y-x)}] となります。
※※(注34-3):何故なら,
まず,交換関係:i[M0k^,Aj^(x,t)]に,
M0k^=∫d3y:y0Ar d^(y,t)∂ykAr^(y,t)
-(1/2)xk{Ad^2(y,t)+(∇y×A^(y,t))2}
=-∫d3y:y0πr ^(y,t)∂ykAr^(y,t)
+(1/2)yk[π^2(y,t)+{∇y×A^(y,t)}2]
を代入します。
これについて,唯一ゼロでない修正された正準交換関係
[πr
^(y,t),Aj^(x,t)]=iδtrrj(y-x)を考慮します。
ただし,δtrrj(y-x)≡∫d3q^(2π)-3
{δrj-(qrqj/q2)} exp{iq(y-x)}
=δ3(y-x)-∫d3q^(2π)-3(qrqj/q2) exp{iq(y-x)}
です。
故に,同時刻:y0=x0=tを想定して,
i[M0k^,Aj^(x,t)]
=∫d3y[y0δtrrj(y-x)∂ykAr^(y,t)
+ykδtrrj(y-x)πr^(y,t)
=x0∂kAj^(x,t)+xkπj^(x,t)
-t∫d3y∫d3q^(2π)-3{∂ykA^(y,t)qqj/q2}}
exp{iq(y-x)}
-∫d3y∫d3q^(2π)-3{ykπ^(y,t)qqj/q2}
exp{iq(y-x)} となります。
ところが,前に見たように,A^(y,t)が∇yA^(y,t)=0
を満たすなら
∫d3y∫d3q(2π)-3[∂y,kA^(y,t)qqj exp{iq(y-x)}/q2]
=0 ですから,π^=∂0A^=-∂A^/∂t=Ad^を考慮すると,
i[M0k^,Aj^(x,t)]=(x0∂k-xk∂0)Aj^(x,t)
+∫d3y∫d3q^(2π)-3{ykAd^(y,t)qqj/q2}
exp{iq(y-x)} が得られます。
(注34-3終わり※※)
さて,「相対論的量子論(正準量子化)(9)」で見たように,
座標変換:x~=ax+b or x~μ=aμνxν+bμ;
に対して,古典的には,場が,φ~r(x~)=Srs(a)φs(x)
と変換される場合,
量子論では,ユニタリ演算子:U^(a,b)が存在して,
U^(a,b)φr^(x)U^(a,b)-1=S-1rs(a)φs^(x~)
となります。
無限小Lorents変換:x~μ=xμ+εμνxν; ενμ=-εμν
では,U^(1+ε,0)を,U^(ε)=U^(εμν)
=1-(i/2)εμν(Mμν^ (Mμν^はHermite演算子)と書き,
Mμν^をLie代数とか,変換の生成子(generator)と呼びます。
すると,φr^(x)がベクトル:Aλ^(x)のときには,
Aμ^(x~)=Aμ^(x)+εμνAν^(x),なので,
S-1rs(1+ε)φs^(x~)は,Aμ^(x~)-εμνAν^(x),
or Aμ^(x~)-εμνAν^(x) となります。
故に, φr^(x) →
Aλ^(x),
U^(1+ε,0) → U^(εμν) =1-(i/2)εμνMμν^について,
U^(1+ε,0)φr^(x)U^(1+ε,0)-1=S-1rs(1+ε)φs^(x~)
は,U^(ε)Aμ^(x)U^-1(ε)
=Aμ^(x)-(i/2)εμν[Mμν^,Aλ^(x)]
=Aμ^(x~)-εμρAρ^(x~) を意味します。
特に,ε0k=-εk0のみゼロでない回転を伴わな慣性系間
のBoost変換でのA0^(x)の変換では,
U^(ε)A0^(x)U^-1(ε)
=A0^(x)-(i/2)ε0k[M0k^,A0^(x)]
-(i/2)ε0k[Mk0^,A0^(x)]
=A0^(x)-iε0k[M0k^,A0^(x)]=
A0^(x~)-ε0kAk^(x~) のはずです。
しかし,A0^(x)=0 の輻射ゲ^ジを変換後も保持する
には,U^(ε)A0^(x~)U^-1(ε)=A0^(x)=0であるべき
なので,実際の変換性は,
U^(ε)A0^(x~)U^-1(ε)=A0^(x)
={A0^(x~)-ε0kAk^(x~)}+ε0kAk^(x~)
となります。,
また,同じBoost変換に対してAj^(x)の変換は
U^(ε)Aj^(x~)U^-1(ε)
=Aj^(x)-(i/2)ε0k[M0k^,Aj^(x)]
-(i/2)εk0[M0k0^,Aj^(x)]
=Aj^(x)-iε0k[M0k^,Aj^(x)]
=Aj^(x~)-εj0A0^(x~)=Aj^(x~)
のはずです。
しかし,実際は,
i[M0k^,Aj^(x,t)]=-i[Mk0^,Aj^(x,t)]
=(x0∂k-xk∂0)Aj^(x,t)
+∫d3y∫d3q^(2π)-3{ykAd^(y,t)qqj/q2}
exp{iq(y-x)} なので,
U^(ε)Aj^(x~)U^-1(ε)=Aj^(x)-iε0k[M0k^,Aj^(x)]
=Aj^(x)+ε0k(x0∂k-xk∂0)Aj^(x,t)
-ε0k∫d3y∫d3q^(2π)-3{ykAd^(y,t)qqj/q2}
exp{iq(y-x)}
=Aj^(x~) -ε0k∫d3y∫d3q^(2π)-3
{ykAd^(y,t)qqj/q2}exp{iq(y-x)} です。
ここで, 1/(4π|y-x|)
=∫d3q^(2π)-3(1/q2)exp{iq(y-x)} なる公式から,
ykAd^(y,t)/(4π|y-x|)
=∫d3q(2π)-3{ykAd^(y,t)/q2}exp{iq(y-x)}
です。
しかし,Coulombゲージ条件:∇A^=0 から,
0=∫d3y∇y{ykAd^(y,t)/(4π|y-x|)}
=∫d3y∫d3q(2π)-3{iykAd^(y,t)q/q2}exp{iq(y-x)}
+ejδjk∫d3y∫d3q(2π)-3{Ad^(y,t)/q2}exp{iq(y-x)}
+∫d3y∫d3q{∇yAd^(y,t)/q2}exp{iq(y-x)} なので,
i∫d3y∫d3q(2π)-3{ykAd^(y,t)q/q2}exp{iq(y-x)}
+∫d3y∫d3q(2π)-3{Ak d^(y,t)/q2}exp{iq(y-x)}
=0 であり,
故に,∫d3y∫d3q(2π)-3
{ykAd^(y,t)qqj/q2}exp{iq(y-x)}
=-i(∂/∂xj)∫d3y∫d3q(2π)-3
{ykAd^(y,t)qqj/q2}exp{iq(y-x)}
=(∂/∂xj)∫d3y∫d3q(2π)-3
{Ak d^(y,t)/q2}exp{iq(y-x)}
=-(∂/∂xj)∫d3y{Ak d^(y,t)/(4π|y-x|)}
です。
よって,U^(ε)Aj^(x~)U^-1(ε)
=Aj^(x~)-εj0A0^(x~)}
-εk0∂j[∫d3y{Ak d^(y,t)/(4π|y-x|)}]
が得られます。
一方,Gaussの積分定理から,
Ak^(x,t)=-∫d3y{∇y2Ak^(y,t) }/(4π|y-x|))
であり,□Ak^=(∇2-∂2/∂t2)Ak^=0 より,
∇2Ak^=∂2Ak^/∂t2なので,
Ak^(x,t)
=-(∂/∂t)∫d3y{∇y2Ak d^(y,t) }/(4π|y-x|))
です。
よって,U^(ε)A0^(x~)U^-1(ε)
={A0^(x~)-ε0kAk^(x~)}+ε0kAk^(x~)
={A0^(x~)-ε0kAk^(x~)}
-ε0k∂0[∫d3y{∇y2Ak d^(y,t) }/(4π|y-x|)]]
を得ます。
以上から,
Λ^(x,ε)=∫d3y{∇y2Ak d^(y,t) }/(4π|y-x|))
とおけば,U^(ε)Aλ^(x)U^-1(ε)
=Aλ^(x)-(i/2)εμν[Mμν^,Aλ^(x,t)]
=Aλ^(x~)-ελρAρ^(x)-ελρ∂ρΛ^ (x,ε)
が得られます。
ただし,ελρが空間回転:εijのみの場合,Λ(x,ε)はゼロ.
または定数であり,∂ρΛ^ (x,ε)=0 です。
したがって,このΛ^(x,ε)が,この変換に伴うゲージ変換の
ゲージ関数を与えることがわかります。
入院のための準備もあるので,ここで終わります。
(参考文献):J.D.Bjorken
S.D.Drell
Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)
2012年11月26日アップの記事の再掲載はここで終わり,
ここからは,次の記事である,
「相対論的場の量子論(正準量子化)(34-2)(34の補遺)」
に続くのですが,
長くなるので,ここで一旦切って2つ に分けることにします
(つづく)
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