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2016年12月 5日 (月)

赤外発散の論文(1961)の詳解(2)

赤外発散論文詳解の続きです。


   
赤外発散問題の完全な量子力学的扱いは,古典的扱いよりも

いくらか難しいです。

   
実光子と仮想光子のαの低次での赤外発散の相殺は,特殊な

プロセス(Coulomb散乱とか聖堂輻射など)について多くの計算で

証明されてきています。

   
文献におけるいくつかの例は次のようなプロセスへの輻射

補正です。

  
すなわち,ポテンシャル中の低次のCoulomb散乱(5),

Compton散乱(6),ポテンシャル中での2次のCoulomb散乱(7,8),

電子―電子散乱(9,10),広角対生成(11),

および,制動輻射  (Bremsstrahlung)(12,13)です。


  摂動の全ての次数までの相殺の一般的証明はJauch

Roelich(2)よって与えられました。

   
本論文は,ある意味で彼らの仕事の精密化です。
 

このタイプの発散相殺の証明の主な要素を以下,手短に述べて

おきます。

   
まず,赤外発散は,荷電粒子外線から放出,吸収される実,

または仮想の軟光子に関連することを示します。

これは物理的に,もっともらしいことです。
 

何故なら,長波長光子は荷電カレント(電流)の分布の大規模

な特徴のみを感知するのに対して,粒子内線からの放出は,

空間の小領域でのカレントからの小規模な放出に対応する

からです。 

(↑※エネルギーゼロの長波長の軟光子は有限個では寄与せず

無限個数の寄与の総体が発散るので元々大規模なのです。)
 

それ故,軟光子の放出に対する行列要素は,単に古典表現

(1.1) ,基本過程を記述する行列要素に掛けたもので

与えられる,ということは,驚くべきことではありません。

(※再掲(1.1):{(εp'/kp')(εp/kp)} )
 

そこで,実軟光子放出の断面積は,基本過程の行列に(1.2)

を掛けたもので与えられます。
 

(※再掲(1.2)(1.1)の平方: 

()3k ~{α/(2π)3}{(εp'/kp')(εp/kp)}2 

×dΩdk/k )
 

同様に仮想軟光子放出と再吸収に対する行列要素は,近似的

,基本行列要素に外線にのみ依存する簡単な因子を掛けた

もので与えられます。
 

これが軟光子の寄与の完全な扱いを許す赤外発散の抜粋で

あり,特に赤外発散の完全な相殺を明らかにすることを許す

ものです。

    
最後の相殺を示す前には,ある種の赤外切断を用いる必要

がありますが,これは慣習的には微小な光子質量か?

最小エネルギーを仮定するかのいずれかです。


     本論文では光子質量の方を採用しています。
 

今回のアプローチが参考文献(2)の改良,精密化になっていると

信ずる2つの事由があります。
 

第1の改良は,赤外発散因子の抜き出しについてのより良い論拠

です。そこでは重なり合う赤外発散も無視されません。 

この新論旨は,恐らく証明と考えられるほど十分強いもの

ではないですが,赤外発散の因子化についてのあらゆる理論的

疑念を除去すると期待されます。

   
この論旨は,より平明なことを除いて,以前にYennieSuura

より,文献(14)で与えられたものと同等です。
 

第2の改良は,実際に摂動展開の意味での非赤外寄与の系統的

扱いを与える文献(2)のそれの拡張です。


   そしてまた,なされる
個々の赤外因子分離が,実光子,仮想光子

の両方についてゲージ不変であることも注目さるべきです。
 

仮想光子については.その手法はまた(赤外切断に光子質量

採用するなら)(相対論的に)共変です。
 

さらに赤外因子は,残りの摂動展開のくり込みが通常の方法

で進むよう,完全にくり込まれています。
 

赤外発散の相殺の別の扱いは,Nakanishi(中西)の文献(5)

によって与えらえました。


   この扱いは今回の本論文の扱い
よりも厳密に見えます。

 しかし,それは全断面積のトピックに制限されていて,

エネルギー解像度を持つ微分断面積については言及されて

いません。
 

本論文での主要な目的は,たった今輪郭を与えた一般的

アプローチに従って現代的なQECの枠組みの中で,赤外発散現象

の完全な取扱いを与えることです。
 

最終的結果が,任意の過程について赤外因子が荷電粒子外線

の4元運動量のみを含むもので与えられ,詳細な内部構造を

含まないような計算方法の提供です。

   
この最終的結果には,もはや赤外切断も現われていない

はずです。他方,残りの摂動展開では赤外発散は全く生じず,

赤外切断が不要な積分で与えられます。
 

本論文で我々が強調するのは,手法の一般性と完全性について

ではありますが,実際的問題での具体的計算値という結果も

得られます。

   
多くの実際的問題においては,輻射補正の必要性はエネルギー

の分母が小さい領域に由来しています。

    
結局,全てのプロセスへの輻射補正の偏り全体を評価する

のに,我々が得た結果を用いることができます。
 

これらは,一般的に,αln(/)ln(ΔE/ε)とか,

α{ln(/)}2の基本断面積というような"二重対数項"の

因子を含みます。



       
こうした項の寄与は,実験配列にとても敏感で有り得ます。
 

実際の実験条件の非常に注意深い扱いが,とても重要です。
 

そうした計算の例が文献(10..11)に与えられています。

一方,実験状況を認識していないが故に,容易には実験に

適用できると思えない計算例が文献(6.9)に含まれています。
 

赤外寄与が,(紫外寄与の)高エネルギーでの輻射補正を

支配している,といえば,これは逆説的に聞こえるかも

しれません。

       
例えば,1つのポテンシャルによる高エネルギー荷電粒子

の散乱においてはLorentz収縮した粒子を囲む場は,非常

に短時間のうちに,粒子から大きな距離まで変化する必要

があります。


        しかし,全電磁場
,そうしたように急激には変化できない

ので,補償するための輻射場が生成されます。これらの場

の生成は実光子の放出に対応します。

光子放出のない散乱は不可能なので,仮想光子と関わる

負の輻射反応が必要です。


        これは始状態と終状態のLorentz収縮した粒子場の間
 

の適切な重なりの欠如によって生じます。


         かくして,実光子と仮想光子
の両方がk値のある領域に

ついて(dk/)なる形のスペクトルで支配されます。
 

このスペクトルは主要な屈折が生じるか(ka~1),粒子

の量子力学的性質が重要になるような領域(k~E)の長さ

を比較してできるほど波長が小さくなるとき,除去される

必要があります。

         
ただし,この領域の規模aはポテンシャルのレンジである

必要はないことが指摘さるべきです。
 

例えばCoulombポテンシャル(レンジは無限大)による

広角散乱では主要な屈折は非常に小さい距離で生じます。

(dk/)のスペクトルを保持した下での条件の量子力学

的議論に対して,Londonの論文(4)を参照してください。


     彼はk<<Eに対して,これが良い近似であるという

結論に到達しています。

     
オーダーαまでの完全ん亜輻射補正は,かくして近似的

にαAln(ΔE/)で与えられます。


     Aの方は,粒子場の強いLorentz収縮を反映して.

わたる角度積分の強いピークによる対数を含みます。
 

因子:ln(ΔE/),(dk/)の積分に由来しますが,

ΔEよりも小さいエネルギーの実光子と仮想光子の寄与

は互いに相殺すること,そしてまた,仮想光子のスペクトル

,とにかく.k>>Eについて切断されねばならないことを,

取り入れています。

     こうして,赤外項は,2つの対数項に寄与し,それ故,輻射

補正を支配します。高エネルギー極限での,赤外項のより

精密化された扱いを使用すると,輻射補正へのいくつかの

単一の対数因子の寄与もまた得られます。
 

ここでの評価では論じる予定にない,ある磁気項と相まって

これらは対数オーダーのあらゆる寄与を与えると思われます。
 

したがって,全てのプロセスにおいての輻射補正の良い評価

を与えます。

     
赤外因子を抜き出すことに関連する論旨は.付録

(Appendix)に含まれています。


     完全に厳密とされる試みは実行しませんが,二重の

赤外発散の正しい処理の重要性を強調しておきます。
 

そして,赤外因子が抜き出されると.残りの計算因子は

全く病的な性質を持たないということがもっともらしい

こと,が示されます。

     
§2では外部ポテンシャル中の電子散乱について,全て

の議論が与えられます。§3では,他のいくつかの例がより

手短なやり方で扱われます。§4は赤外問題の一般的取扱い

に入る種々の考察の議論を含みます。
 

赤外発散の一般的証明が与えられ,そして,いくつかの

さらなる例が簡単に論じられます。§5では,いくつかの

純粋に理論的な赤外発散現象の含意が論じられます。
 

ここでは,あらゆるオーダーでの赤外因子の知見が

高エネルギー極限での理論的問題へのいくつかの限られた

洞察を与えます。この極限では赤外因子は特に大きくなり,

そして他の全ての寄与よりも赤外因子についてのはるかに

詳細な情報を得ることになります。

     
最後に§6は議論の要約(まとめ)を与えます。
 

 専門用語についての少しの言葉が補助になるかも

しれません。


     
本論文では行列要素(または断面積)「赤外の」

というのは赤外依存が特殊なやり方で因子化される

ような部分を意味します。


    
そして,「非赤外の」というのは,その残りの依存性の

ことです。
 

「赤外光子」とは「軟光子」と同義語ではありません。 

赤外寄与が,その挙動に良い近似を与えるならその光子

を「軟らかい(soft)と定義します。
 

付録Aの最後での議論によれば,運動量がその過程の典型的

な遷移運動量と比べて小さいなら「軟らかい」といいます。


     そして,高エネルギーでの
広角電子散乱では,それは電子

のエネルギーの数パーセントを除去しても光子は「軟光子」

です。

    
しかし,小角散乱では,その運動量が遷移運動量;

(2sinθ/2∝pθ)比較できる大きさで「硬光子」

になります。

     
これでやっと文章が中心の序文が終わりました。 

序文はまとめと同じく本論の全内容を紹介するもので

すから,これだけでは,よくわからない部分もあります。
 

そうしたことの詳細は次回からの記述予定の§2から

の本論で具体的に理解できるはずです。

    今日はここで終わります。

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