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2017年1月11日 (水)

赤外発散の論文(1961)の詳解(3)

赤外発散論文詳解の続きです。
 

 前回のアップが12月15日で暮れから正月にかけて,頭もお休み

してましたが,ほぼ1カ月ぶりに思考力が回復しました。

§2.電子散乱への輻射補正 

(Radiative corrections to electron scattering)
 

本節では,電子ポテンシャル散乱への仮想光子,実光子補正を

扱います。
 

赤外寄与を陽に因子化して,Feynman-ダイアグラムの

well-defined(無矛盾)なセットとして確認し,これを詳細に

論じます。
 

最初,散乱中心はエネルギーを持たない運動量のみの存在で

あり,その結果,総エネルギーが丁度,その散乱中心に入射して

散乱されるまでの散乱される電子のエネルギー損失に等しい

ような検知されない実光子が生成され放出されるという

プロセスを仮定します。
 

そうして,この際の総運動量,0||≦εの領域に限定

されていると仮定します。
 

こうした仮定に従う電子散乱は実験として興味深く,論じる

には比較的簡単ですが,後節ではより複雑な問題へと一般化

する予定です。
 

()仮想光子輻射補正(Virtual photon-radiative corrections) 


   運動量がの状態から'の状態へと電子が散乱される間に,

いくつかの光子が生成される過程を考えます。

   終状態を固定したままで最低次の行列
要素への輻射補正を

考察します。

   
n(,')をn個の仮想光子を含む全てのダイアグラム

に対応する行列要素の寄与とします。
 

これは,(仮想光子の個数nがゼロの)ポテンシャル散乱は,

0 と表現され,n≧1の仮想光子を含む散乱は.

このポテンシャル散乱(n=0)とは区別されることを意味

します。ただし,実光子に関わる変数は省略しています。
 

すると,完全な散乱の行列要素:M(,')は次のように

書けます。


   
(,')=Σn=0n(,')..(2.1) です。

nは,n個の仮想()光子を持つのでn次の赤外発散を有する

と予想されます。

実際,これは赤外切断の対数のn次多項式となることは直感的

に明らかです。
 

ここでの我々の仮想光子の論議の目的は,nが次の構造を持つ

ことを示すことです。

すなわち,0=m0 ..(2.2) 

1=m0αB+m1 ..(2.2) 

2=m0(αB)2/2!+m1αB+m2 ..(2.2) 

n=Σr=0n-r(αB)/! ..(2.2) です。
 

ただし,j(j≧1),赤外発散がない(nn=0の)

行列要素:0=m0 に対して,αのオーダーの

(仮想光子数nに独立な)関数です。


    そして,因子αBの方は,
1つ の仮想光子当たりの

赤外寄与を含んだ量です。
 

2.1) と(2.2)から直ちに,指数関数の中に赤外項が

現われる式:M=exp(αB)Σn=0n ..(2.3

が導かれます。
 

(): 何故なら,

M=Σn=0n=Σn=0Σr=0{n-r(αB)/!} 

=m0{Σn=0αB)/!}+m1{Σn=1αB)-1/(-1)!} 

+m2{Σn=2αB)-2/(-2)!}.. exp(αB)Σn=0n 

となるからです。(注終わり※)
 

さて,(2.2)式の成立を厳密に証明するため,先に, 

「n個の仮想光子を含む全てのダイアグラムに対応する

行列要素の寄与」という曖昧な表現で与えたMnの明確な定義

を与えることから始めます。
 

n(1/n!)..∫Πj=1n{4j/(2-λ2)}

ρn(1,..,n)..(2.4)と定義します。

ここで光子質量としてλを導入しました。
 

この扱いが.光子運動量の最低限界値を与えるのと同等である

ことは後で示します。
 

※今のところ,n個の仮想光子:1,..,nによる内線の伝播関数

以外の寄与:ρn(1,..,n)の明確な定義が示されていないので

これは定義といっても,未知の量Mnを別の未知量:ρnへと転嫁

しただけです。※
 

係数:(1/n!),ρnがn個の仮想光子k1,..,nについて

対称化されたものであることを示すための因子です。

この対称化は(2.2)式を得るのに本質的な役割を果たすこと

がわかります。
 

さて,これらk1,..,nの関数としてのρnのグラフで考察

します。

図1.あらゆる可能なポテンシャル相互作用と実光子

セット,および,(nー1)個のk層光子を含む基本グラフ

のセットの表現 

上の図1は,最初の(n-1)個の仮想光子,および,

任意個数ポテンシャル相互作用と関わる基本の

Feymanグラフを表わしています。


 

図2.図1のグラフに1つの仮想光子を挿入する可能なやり方

また,次の図2は,種々の基本グラフにn番目の1光子が挿入

できる可能なやり方を表わしています。

    n番目の仮想光子の両端が荷電粒子外線
上につながるグラフ

(2(),(),())の寄与は,他のあらゆる光子の運動量が

ゼロでないなら,kn 0 のとき有限です。
 

一方,kn 0 とkj 0 (j<n)が同時的に生じるときにはkn

 とkjでの重複発散が生じます。
 

しかし.後の付録Aでゲージ不変でない項とゲージ不変な項

,独立にゲージ不変な表現と結合させると,こうした全ての

重複発散も相殺して)消えることが示されます。
 

故に.残る唯一の発散は,基本グラフでkn 0としたときの

図2(),(),()に対応するものです。
 

この論議は,ρを次のように分離形で書くことを許します。
 

ρn(1,..,n) 

=S(n)ρn-1(1,..,n-1)+βn(1)( 1,..,n-1;kn)

..(2.5) です。

 

ここで,(n)は図2からのknの赤外寄与を含む因子であり,

残りの項はknの赤外発散を含まない寄与部分です。
 

それ故,他のk1,..,n-1による赤外発散は,この分離の影響

を受けることはありません。
 

以下では,β項はknについて非赤外であるという言葉を

しばしば使用します。
 

漸化式(2.5)の反復から,まず,次のように書けます。
 

ρn(1,..,n) 

=S(n)(n-1)ρn-2(1,..,n-2)

+S(n)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn-1) 

+S(n-1)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn) 

{-S(n-1)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn)

+βn(1)( 1,..,n-1;kn)}..(2.6) 
 

この式でρnにおけるk1nとkn-1の対称性から左辺と,

右辺最初の3項はknとkn-1の交換に対して不変です

から,最後の{ }の中の量もnとkn-1の交換に対して

不変であるはずです。
 

しかも,この{ }の中の量:

-S(n-1)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn)

+βn(1)( 1,..,n-1;kn) は赤外因子:(n-1)がknに依存

しないため,nについては非赤外であると言えます。

これをβn(2)( 1,..,n-1;kn)と定義します。

    すなわち,
βn(2)( 1,..,n-1;kn) 

=-S(n-1)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn)

+βn(1)( 1,..,n-1;kn)..(2.7) です。
 

(2.6),(2.7)から,ρn(1,..,n) 

=S(n)(n-1)ρn-2(1,..,n-2)

+S(n)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn-1) 

+S(n-1)βn-1(1)( 1,..,n-2;kn)

+βn(2)( 1,..,n-1;kn)となり

nとkn-1の両方について赤外寄与因子と非赤外部分

を分離できます。
 

この形は,我々の長波長光子の議論から予期される特性を

示しています。
 

漸化式(2.5)の適用を繰り返し,ρnのkに関する対称性を

活用すれば,
 

ρn(1,..,n) 

=S(1)..(n)β0

+Σi=1n(1)..(i-1)(i+1)β1(i) 

..+Σi=1n(i)βn-1( 1,..,i-1,i+1,..n) 

+βn( 1,..,n)..(2.8) が得られます。
 

ただし,β1は単に上添字をはずしたβi(j)を意味します。
 

この(2.8)はkkのあらゆる置換(Permutation)の総和と

して表現できます。
 

すなわち,ρn(1,..,n) 

=ΣpermΣr=0n[1/{!(n―r)!}]Πi=1(i)

β-r(r+1,..n)..(2.9)です。

    そして,β-rは全て非赤外です。
 
 

これを,n(1/n!)..∫Πj=1n{4j/(2-λ2)}

ρn(1,..,n)..(2.4) に代入すると,
 

n=Σr=0n[1/{!(n―r)!}]{∫d4kS()/(2-λ2)}r 

Πi=1n-r{∫d4iβ-r(1,..n-r)/i2}..(2.10) 

となります。
 

ここで赤外発散を避ける必要のない項では仮想質量λを

略しました。
 

最後に,定義: 

αB(,'(ε))≡∫d4kS()/(2-λ2)..(2.11),

および, r(,'(ε))

(1/!)Πi=1r{∫d4iβ-r(1,..r)/i2}..(2.12) 

を与えます。,
 

すると,(2.10):

n=Σr=0n[1/{!(n―r)!}]{∫d4kS()/(2-λ2)}r 

Πi=1n-r{∫d4iβ-r(1,..n-r)/i2}

,n=Σr=0n{(αB)r/!}n-rとなり,
 

結局,先の行列要素の(2.2)式の一般形:

n=Σr=0n-r(αB)/! ..(2.2)と完全に一致し

当面の目的は達成されました。
 

ここで,Bとmrはエネルギー保存の関係:E'=E-εを

通して,遷移エネルギーεに依存することに注意してこの項目: 

()仮想光子輻射補正(Virtual photon-radiative corrections) 

を終わります。
 

次回は,()実光子輻射補正(Real photon-radiative corrections)

に入ることを予定して,いつもよりやや短かいですが終わります。

PS:今日も寒いので気分が暖かくなりそうな春の映像を送ります。

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