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2017年2月 4日 (土)

赤外発散の論文(1961)の詳解(5)

 赤外発散論文詳解の続きです。
 

§2.電子散乱への輻射補正の具体的な散乱例についてB+B~

が実際に有限になることを示すという項目に入ります。

()赤外因子の詳細(Setails of Infrared factors) 

既に見たように,仮想光子によるBは図2の(),(),()

から生じ,実光子放出によるB~は図3の(),()

から生じます。

(図1).あらゆる可能なポテンシャル相互作用と実光子

セット,および,(nー1)個のk層光子を含む基本グラフ

のセットの表現 


 

(図2).図1のグラフに1つの仮想光子を挿入する

可能なやり方


    この図2は,種々の基本グラフ(図1)にn番目の1光子

挿入できる可能なやり方を表わしています.

(図3) 図1の基本グラフに1つの追加実光子を挿入する

可能な方法の表現

うしたグラフはB,またはB~に寄与する光子が荷電粒子

外線につながっていてグラフの内線の詳細には独立で

あるという特別な性質を有しています。
 

 付録Aに従って,BとB~はゲージ不変な表現によって

示すことできます。
 

B={i/(2π)3}∫d4/(2-λ2) 

×{(2p'μ-kμ)/(2p'k-k2)(2μ-kμ)/( 2pk-k2)}2 

.(2.23)であり,
 

~{1/(8π2)}∫d3/(2+λ2)1/2  

×{p'μ/(kp')-pμ/(kp)}2..(2.24) です。
 

上記の(2.24)においては,(2pk-λ2)を2pk,(2μ-kμ)

2μしました。何故なら,λ2やkμはλ→0 のとき,

消えるからです。
 

計算すると,Bにおける赤外寄与は次式における分母の極から

生じることが明らかになります。
 

すなわち,1/(2-λ2)iε)(1/(2-λ2)の主値積分の形

,これは iπδ(2-λ2).(2.25)です。

※(注5-1): 2009年7/4の過去記事「Cauchyの主値(主知積分」から,

 余談を除くほぼ全文を引用します。

  Cauchyの主値(主値積分)というのは,実数の区間

[a,b]定義された関数f(x)がa<c<bなるある点

で不連続なとき,主値の記号Pを,P∫af(x)dx

 ≡limε→+0[∫ac-εf(x)dx+∫c+εbf(x)dx]

 と定義し,これを主値(積分)(principal value)と呼ぶ

 ことをいいます。

 

 これは,区間[a,b]が無限区間(-∞,∞)で被積分関数が

 f(x)/x (f(x):連続関数)の場合には,

 P∫-∞{f(x)/x}dx

 =limε→+0[∫|x|≧ε{f(x)/x}dx]です。

 

 複素平面上の実軸を含む領域でf(z)が正則なとき,

 主値P∫-∞{f(x)/x}dxを,複素z平面上のある経路C

 における線積分∫C{f(z)/z}dzで近似することを考えます。

 

 Cとしては,実軸上の-∞から-εまで真っ直ぐ進み,原点Oを回避

 するために,Oを中心として半径εの小円で点-εから点εまで時計

 回り(負の向き)にπだけ回る半円経路を加え,さらにεから∞までの

 直線経路を考えたものとします。

 

つまり,小半円の経路をγ-とすると,全経路は,

C=(-∞,-ε)∪γ-∪(ε,∞)です。

すると,∫C{f(z)/z}dz

=P∫-∞{f(x)/x}dx+∫γ-{f(z)/z}dz

と書けます。

 

ところが,明らかに,

γ-{f(z)/z}dz=i∫π0f(εexp(iθ))dθ

=-iπf(0)です。

 

それ故,∫C{f(z)/z}dz

=P∫-∞{f(x)/x}dx-iπf(0)

なることがわかります。

被積分関数f(z)/zに対し,その特異点であるz=0 付近で

 上半平面方向に歪めた経路C=(-∞,-ε)∪γ-∪(ε,∞)

 を取る代わりに,

 

 通常の(-∞,∞)の経路のまま,被積分関数の方を

 f(z)/zからf(z)/(z+iε)に微修正して,特異点を

 z=0 から下半面の=-iεに移すのは,事実上,同等な

 操作であり,同じ積分値を与えるはずです。

 すなわち,∫-∞{f(x)/(x+iε)}dx

 =∫C{f(z)/z}dz

 =P∫-∞{f(x)/x}dx-iπf(0) です。

 

 同様な考察から∫-∞{f(x)/(x-iε)}dx

 =∫C{f(z)/z}dz

=P∫-∞{f(x)/x}dx+iπf(0) も得られます。

 

 これらの公式を,形式的に,

 1/(x+iε)=P(1/x)-iπδ(x), 1/(x-iε)

 =P(1/x)+iπδ(x) と書きます。

 

 主値積分については,Cauchyの積分定理を意識して,

 上半平面や下半平面で,半径が∞の半円周を加えた閉じた

 経路を積分経路Cとする説明をよく見かけますが,それは

 半径が∞の半円周上で積分がゼロになるような特別な

 被積分関数形を要求します。

 

 留数などを考慮する必要がある場合なら,その方がいい

 でしょうが,上の考察では,関数f(z)がz→ ∞でゼロに

 急減衰すべきであるとかの条件は全く必要ないのがミソ

 です。(※注5-1終わり)

 そこで,Bにおける仮想光子は,事実上(2=λ20)

 実光子と同じです。

  
Bにおけるこうした極の寄与は次のようになります。 

{1/(8π2)}∫d3/(2+λ2)1/2{(2p'μ-kμ)/(2p'k-λ2)

(2μ-kμ)/( 2pk-λ2)}2.(2.26) です。
 

(5-2): ((2.26)の証明) B={i/(8π3)}-dk0 

∫d3{{0(2+λ2)1/2iε}-1{0(2+λ2)1/2iε}-1 

{(2p'μ-kμ)/(2p'k-k2)(2μ-kμ)/(2pk-k2)}2
 

{i/(8π3)}(-2πi)-1∫d3{2(2+λ2)-1/2 

[{(2p'μ-kμ)/(2p'k-k2)(2μ-kμ)/(2pk-k2)}2]

0(2+λ2)1/2
 

{1/(8π2)}∫d3{(2+λ2)-1/2 

[{(2p'μ-kμ)/(2p'k-λ2)(2μ-kμ)/(2pk-λ2)}2]

0(2+λ2)1/2    

(証明終わり)    (5-2終わり※)
 

k→0 のとき,(2.26のBでの発散する被積分関数と
 

~{1/(8π2)}∫d3/(2+λ2)1/2 

×{μ/(kp’)-pμ/(kp)}2..(2.24)のB~

の被積分関数とは相殺します。
 

電子の伝播関数:(2pk-k2)-1(2k-k2)-1における極

からの寄与は今のケースではλ20 のとき有,限です。
 

(※しかし,§4()ではこうした寄与が発散するケースを論じる

予定です。)
 

p'~pのとき.加速されない粒子は全くエネルギーを輻射しない

という古典的結果に良く適合してB~は確かに消えます。
 

同様に,p'→pのときBが消えるのは波動関数の相殺と物理的

電荷の一意性を保証する電磁頂点のくりこみを反映しています。


    
我々のBの表現での積分では,また,2→∞で収束する

ようにもなっていて,それ故,Bは紫外発散の切断を要求

しません。


   
高エネルギーと微小なiεで,BとB~,次のような近似形

を取ります。 (付録C参照)
 

(λ){1/(2π)} 

[ln(2pp'/2){ln(λ2/2)(1/2)ln(pp'/2)1/2}

ln(λ2/2)]. (2.27)
 

~(λ){1/(2π)} 

[ln(2pp'/2){ln(λ2/2)

(1/2)ln(pp'/2)ln(EE'/2)}ln(λ2/2)

ln(EE'/2)]..(2.28)
 

もしも光子質量:λ2の代わりに,最小光子運動量:minを用いる

ならこれらは,


  B(min){1/(2π)}
 

[ln(2pp'/2){ln(EE'/min2)1/2}

ln(EE'/min2)].(2.29)

  
~(min){1/(2π)}{ln(2pp'/2)1}ln(2/min2)

..(2.30) です。
 

(※これらについては付録CにB~(min)計算があるので,後に

詳細計算も記述する予定です。※)
 

いずれにしろ, (λ),~(λ)と B(min) ,~(min)は同等

であり,


  
2α(B+B~)=-(αA/2)ln(EE'2)

{α/(2π)}ln(2pp'/2)..(2.31)

αA=-{2α/(4π2)}∫dΩ{p'μ/(p'k)-pμ/(pk)} 

2α/π{ ln(2pp'/2)1}..(2.32) です。
 

(.(2.31)は不正確な表現:2α{(λ)+B~(min)}と同じに

見えますが,そうではないことは容易にわかります。)
 

 B+B~はまた,小運動量遷移の極限で次の簡単な形に

なります。

 
つまり,|2||(-p)2|<<m2.(2.33) のとき 

α(B+B~){2αq2/(3πm)2}ln(/ε)..(2.34)

です。εは??

(5-3):(2.32)  

αA=-{2α/(4π2)}∫dΩ{p'μ/(p'k)-pμ/(pk)}2 

~ 2α/π{ ln(2pp'/2)1}..の証明を与えます。
 

A=-{2/(4π2)}∫dΩ{p'μ/(p'k)-pμ/(pk)}2 

=-{2/(4π2)}∫dΩ 

[p'2/(p'k)2+p2/(pk)22p'p/{(pk)(p'k)}]

です。
 

付録(-1)より, 

~ij=∫013(2+λ2)-1/2{(pk)(p'k)}-1 

=∫012dk(2+λ2)-1/2∫dΩ{(pk)(p'k)}-1 

2π∫-11dx∫012dk(2+λ2)-1/2(ω2E-k2x2)-1
 

ここで,2x(1+x)p'+(1-x)pです。
 

※※これは,次のFeynman積分の公式: 

1/(12..n)

(n-1)!0dz1dz2..dznδ(1-Σii)/(Σjjj)n 

をn=2に適用して,
 

1/(ab)=∫0dz1dz2δ(1-z1-z2)/(az+bz2)2 

つまり,1/(ab)=∫01dz/{az+b(1-z)}2 

ですが,

 
これからさらにx=(2z-1)と変数置換すると
 

dz=dx/2より
 

1/(ab)2-11dx/{(1+x)+b(1-x)}2

とも書けます。
 

今の場合のa=pk,b=p'kなら 

(1+x)+b(1-x){(1+x)(1-x)}

です。
 

そこで,2(1+x)p'+(1-x)pとおけば,  

(1+x)+b(1-x)2kp2(ωExkp) なので 

1/(ab)=∫-11dx/{(1+x)+b(1-x)}2,
 

1/{(pk)(p'k)}(1/2)-11dx/(ωExkp)2 

∫dΩ/(ωExkp)2 

2π∫-11cosθ/(ωEx-kpcosθ)2

4π/(ω2x222)  です。
 

それ故,012dk(2+λ2)-1/2∫dΩ{(pk)()}-1 

2π∫-11dx∫012dk(2+λ2)-1/2(ω2E-k2x2)-1 

と書けます。これが付録の式:(-1)です。※※
 

そして,ω=(2+λ2)1/2ですからλ→0 ならω2=k2です。 

故に,このときは, 2∫dΩ/(pk)(p'k)} 

2π2-11dx/(ω2E-k2x2)

2π-11dx/(E-px2) 2π-11dx/2 です。
 

そこで, 2∫dΩ/(pk)2==2π-11dx/2 

,かつ,2∫dΩ/(p'k)22π-11dx/p'2
 

したがって, A=-{2/(4π2)}∫dΩ 

[p'2/(pk)2+p2/(pk)22p'p/{(pk)(p'k)}] 

=-2/π+(pp'/π)-11dx/2
 

一方,付録:(-22)から, -11dx/2

 {2/(pp')}ln(2pp'/2) です。
 

以上から,αA~(2α/π){ln(2pp’/2)1}を得ます。

(5-3終わり※)
 

付録A,および,ここまでお論議はまた,荷電粒子が電子の

ようなFermi粒子の散乱過程だけでなく,荷電Bose粒子の

ポテンシャル散乱にも当てはまりますが,これは別に驚く

べきことではありません。
 

というのは,赤外因子はFermo粒子とBose粒子の区別のない

古典的な因子でもあるからです。

  B,およびB~に対する陽な式(2.23),および,(2.24)
 

は容易に荷電カレントの効果の表現と考えられ,それは散乱粒子

のスピンには依らないからです。

  
それ故,こうした式から,(2.25)(2.34)と同様なことが

Bose粒子についても成立します。

  
最後に,因子ln(2pp'/2)の存在のために,exp|2α(B+B~)}

の輻射補正効果は,現在の実験エネルギーレベルでは.重い粒子

よりも電子のような軽粒子にとってより重要な効果を与えます。
 

さて,次は,()非赤外仮想光子項の詳細 

(Details of Noninfrared Virtual Photon Terms)という

項目に入るので,いつもより短かいですが,ここで一旦

終わります。
 

その代わりに,ここで証明せずスルーした式を得る

具体的計算を与える付録A~Cのうち,BとB~を評価する

,付録Aの部分,このすぐ後に続けてアップします。
 

実は,この間,これらの草稿も並行して作っていたので

アップが遅れたのでした。

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