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2017年3月21日 (火)

赤外発散の論文(1961)の詳解(6)

  赤外発散論文詳解の続きです。
 

去る2月4日のこのシリーズの(5)のアップ以来,付録Aに

脱線して本論については 余りにも間が空きすぎたので,

まず,これまでの結果を要約しておきます。
 

荷電粒子の衝突などの電磁相互作用に関わって吸収,または

放出される運動量k=h/λの光子が軟光子(soft photon)

の場合,

 
つまり,観測にはかからず,無視してよいとも考えられる

エネルギーがゼロの.k~ 0,orλ~∞の光子が無限個数ある

場合に生じる散乱振幅の計算上での発散の困難,kにおける

積分和:∫dk/lnk→ -∞(k→0)の対数発散の困難

を赤外発散(infrared Catastrophe)と呼びます。

 

これは,kだけでなく,荷電粒子の運動量pのエネルギーが

無限大,k~∞,or p~∞における積分和の散乱振幅の発散

を紫外発散(ultraviolet divergence)と呼ぶ呼称に対比

されるものです。
 

紫外発散の方は,Feynmann、朝永,Schwingerらによる壮大な

体系:「くり込みみ理論」(量子電磁力学の輻射補正)

renormi[alization Theory or

Radiativerrection of QuantumElectrodynamics)

によって,一応の解決を見ています。
 

一方,ここで問題としている赤外発散の方は,そうした壮大な 

くり込み理論に似た処理は必要なく,k~0 の仮想光子による

散乱振幅の微細構造定数:αによる摂動級数の最低次の寄与

の赤外因子をαB,k~0 の実光子によるそれをαB~とする

,摂動の全ての次数まで含めて,微分断面積:dσへの寄与

は,exp{2α(B+B~)}で与えられることがわかります。
 

そして,これら赤外い因子:,および,~はそれぞれ, 

B={i/(2π)3}∫d4/(2-λ2) 

×{(2μ-kμ)/(2k-k2)(2μ-kμ)/( 2pk-k2)}2 

.(2.23),および, 

~{1/(8π2)}∫d3/(2+λ2)1/2  

×{μ/(kp’)-pμ/(kp)}2..(2.24) 

で与えられることが示されました
 

これらの各々はk~0で赤外発散しますが,その和:

α(B+B~)では,無限大が相殺して有限になり,

2α(B+B~)=-(αA/2)ln(EE'2)

{α/(2π)}ln(2pp'/2)..(2.31),

αA=-{2α/(4π2)}∫dΩ{p'μ/(p'k)-pμ/(pk)} 

2α/π{ ln(2pp'/2)1}..(2.32)

となることを示しました。
 

前回の「赤外発散の論文(1961)の詳解(5)」では,上記

の式を明示した後,次に()非赤外仮想光子項の詳細

(Details of Noninfrared Virtual Photon Terms)

という項目に入るので,一旦終わります。


  と書いて終わりました。
 

しかし,仮想光子,実光子の赤外因子:,~の式(2.31),(2.32) 

の詳細な証明は本論文の付録A~Cに示されているため,その 

うちの付録Aの紹介に暫し,記事が脱線していたのでした。
 

過去ノートを参照しながらブログ記事原稿のために再読し

計算式を羅列して個々を考察し直して長期間のめり込んで

いると,自分でも.一体,今何の計算をしているのか?を

忘れてしまうことも多々あるので,自分のためにも.真面目

に読んでくれているだろう.僅かの読者の方々のためにも,

こうして,ときどきは経緯を反芻し,整理,要約することに

しています。
 

赤外発散の最低次の寄与のBとB~が無限大が相殺される

こと,現在では大抵の文献やテキストに掲載され.説明

されていますが,それが指数関数として全てのオーダー

まで相殺されることや,その結果,紫外発散における

「くり込み」と同じく無限大を除去し去った後にお釣り

として出現する輻射補正,今の場合は非赤外部分とも

呼ばれますが,これを詳細に評価した本論文のような本格的

に扱っている文献は少ないと思います。
 

さて,これで前回までの要約を終わって本論の続きに入ります。
 

()非赤外仮想光子項の詳細 

(Details of Noninfrared Virtual Photon Terms)
 

「赤外発散の論文(1961)の詳解(3)」で書いたように,運動量

で入射した荷電粒子が運動量p'で出ていく場合の一般の散乱 

プロセスの完全な散乱行列要素をM(,’)とすると,

これは次のように書けます。

(,p')=Σn=0n(,p')..(2.1) です。
 ここで,nはn個の仮想()光子を持つので,n次の赤外発散を 

持つと予想され.実際,これは赤外切断の対数のn次多項式となる 

ことが直感的に明らかです。

と書きました。
 

さらに,仮想光子についての行列要素Mnは次のような構造

を持つはずです。

 すなわち.
 0=m0 ..(2.2) 

1=m0αB+m1 ..(2.2) 

2=m0(αB)2/2!+m1αB+m2 ..(2.2) 

n=Σr=0n-r(αB)/! ..(2.2) 

です。
 

ただし,j(j≧1),赤外発散がない:0=m0に対して

α(αのj次)のオーダーの(nに独立な)関数であり,各因子

αBは1つの仮想光子当たりの赤外寄与を含む量です。
 

そして,(2.1) と(2.2)から直ちに,指数関数の中に赤外項

が現われる式:M=exp(αB)Σn=0n .(2.3

が導かれます。
 

(2.2)以下の式の成立を厳密に証明するため,先に, 

「n個の仮想光子を含む全てのダイアグラムに対応する

行列要素の寄与」という曖昧な表現で与えたMnの明確な定義

を与えます。
 

n(1/n!)..∫Πj=1n{4j/(2-λ2)}ρn(1,..,n)

(2.4)と定義します。ここで光子質量λを導入しました。
 

と書きました。
 

そして,Mが確かにこうした構造を持ち,Bが先に書いた式, 

(2.23):B={i/(2π)3}∫d4/(2-λ2) 

×{(2μ-kμ)/(2k-k2)(2μ-kμ)/( 2pk-k2)}2 

,
 
で与えられることなどを続く記事で示しました。

 さて.
(2.2):M1=m0αB+m1,および,(2.2): 

2=m0(αB)2/2!+m1αB+m2 から 

1=M1-αBM0..(2.35),および, 

2=M2-αBM0..(αB)2/2!(2.36).

(すが αBM0へのMとmのこうした分離は.一意的では

ありません。
 

11個の仮想光子を含む全行列要素で,他方,mはαの 

1次関数の形の寄与であり,また.因子αBは1つの仮想光子 

当たりの赤外寄与を示す量であると定義されています。
 

それ故,1=M1-αBM0,1つの仮想光子のみが寄与する 

行列要素:1=∫d4j/(2-λ2)}ρn()のうち,赤外発散 

には寄与しない部分,つまり非赤外寄与の部分を意味するわけ 

です。
 

例えば,1のうちの赤外寄与部分である

αB={α/(2π)3}∫d4/(2-λ2) 

×{(2p'μ-kμ)/(2p'k-k2)

(2μ-kμ)/( 2pk-k2)}2 を見ると,(2pk)-1

におけるk2ような反跳項はk~0赤外発散には影響

しません。
 

しかしながら,k~∞ のとき,積分が自然に収束するよう

これは無視せずに赤外寄与の中に残しておきます。
 

一方,(2μ-kμ)中のkμのような反跳項はk~0での赤外

発散には明らかに寄与せず,k~∞の紫外発散にも大きな

意味を持たないので非赤外のm1の方に移動し分離することも

できます。(※この意味で分離はユニクではないのです。)

では,Bをゲージ不変にするために,(2.23)に保持されてきた
 

けれど,そのうちで,非赤外のm1への重要な寄与となるのは

どういうモノでしょうか?
 

一般のm1での扱いは,非常に複雑に見えるので,ここでは

特に外ポテンシャルの最低次についてのみ.陽な論議を

考えることにします。
 

ここまで,1電子に対する下の図2()のグラフを完全には

評価していなかったので,これを観てみます。


2()の"入射"部分は,次のように表現できます。
 

{(i+m)εi}p/(i2pki) 

{(2p-ki)εi(1/2)[i.εi]}p/(i2pki)

(2.37) です。
 

右辺の{ }の中の第1項は(2.32)のBで用いられている

"伝達"カレントであり,第2項はスピンゼロの荷電粒子なら

生じないはずの"磁気"効果です。
 

高エネルギーでの磁気項についての直線的な計算はm1への

次の寄与を生じます。
 

すなわち,{ihM0/(2π)}n(2pp'/2)+O[αM0]..(2.38)

です。別種の寄与は,外ポテンシャルの真空偏極によって

与えられます。
 

例えば,もしポテンシャルが1個の電子に作用するとすれば,

真空偏極はmに次の寄与を加えます。 

{αM0/(4π)}n(2pp'/2)+O[αM0]..(2.39) です。

 

(2.31)の赤外因子:2α(B+B~).プラス(2.38)(2.39))

の2倍が,電子のポテンシャル散乱へオーダーαのSchwinger

を与えます。

(※↑何故2倍かというと,∝M0と干渉するからです。

この干渉は既に:2α(B+B~)の方には考慮されています。)

(注:6-1):Schwingetr項というのは,電子の異常磁気

モーメントを意味します。

つまり普通のスピン1/2Dirac電子の磁気回転比gは

理論的にはg=2なのですが,電子のまわりの光子の雲

による量子効果である真空偏極の輻射補正を考慮して,

「くり込み理論」による計算を行うと,摂動の最低次

近似である,αの1次のオーダーでは,g=2(12α/π)

補正されます。
 

この補正項を発見者の名を冠して,Schwingetr項と

呼んでいます。 (6-1終わり※)
 

外ポテンシャルが2回以上電子に作用すれば,計算

さらにアレンジされますが,これは次のように

なされます。
 

つまり,(2.38)の磁気項が寄与の1つとして現われます。
 

そして,また,(2.39),核子による高エネルギー電子

の散乱の真空偏極によるtotalの寄与の良い近似に

っていることが予測されます。
 

これは,このプロセスでは運動量遷移の大部分が単一

の相互作用で生じるからです。

この1回の大きな運動量遷移は(2.39)に寄与,他方,

低運動量遷移を伴う多くの追加の相互作用真空偏極

は無視することができます。
 

1への残りの寄与は容易には評価できません。

付録Aの手法の詳細,さらなる寄与がαM0ln2(/)

ではなく,恐らくαM0ln(/)のオーダーであること

を示唆しています。
 

この結果はSuura(文献8)の一般的論旨と一致しており,

Newton(文献7)とChre'tinem(文献7)による2次の

Coulomb散乱への輻射補正の陽な計算結果と同じです。
 

様々なプロセスの,いくつかの最近の計算(文献

6,9,11)では,単一の対数因子さえ見られません。
 

要約すると直接の計算は単一のポテンシャル相互作用

対して次式を生じます。 

{5αM0/(6π)}}n(2pp'/2)+O[αM0].(2.40)

です。
.
 

もしも,ポテンシャルが2回以上作用するなら,恐らく,

追加の単一の対数項が得られると考えられます。
 

本節の結果は,γ+P→e+e+Pに対して計算された

輻射補正と直接に関連して比較されます。

始電子.終電子に関する広角度での制動輻射の生成と関わる

広角度散乱の]評価は,広角度の対生成に対応します。
 

そして,αln(/)ln(/ε)とαln(/)のオーダーの

補正,この散乱のケースの対生成に対して計算され

(文献11の式(29)参照),我々が見出した主要オーダーの補正

(2.31)(2.40)正確に一致します。

 
もしも,その対のうち唯一1つの電子が検出されるなら,他の電子

入射光子に平行に出現します。このケースには電子の伝播関数

,ほとんど実数になり,付加単一対数項は電子の角度にわたる

積分から生じます。(文献11の式(17)(23)参照)
 

さて,次は,仮想光子でなく実光子の寄与の項目 :

()非赤外実光子項の詳細 

(Detailed non-infrares real photon terms) 

に入り,これ以上続けると長すぎるるので,今回は

ここで一旦終わります。

 PS
:アップした原稿編集の途中ですが本日2017

321(),これからお茶の水の順天堂医院

の外来に向かいます。

帰宅は夕方と予想れるので,図の追加なども

その後です。 


  PS2::連休後なのに.思ったほど混んでなく
16時ころ

無事帰宅しました。相変わらず雨オトコでしたが。。。

 

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問題は、現代のこれら個人力の大きな人々がごく少数しかいない。つまり、集中している、少数寡占の状態になっていることです。世界の個人力の総和が一定であるとすれば、そこで少数寡占状態となれば大多数の人々は個人力を奪われた状態にあることになります。 ...... [続きを読む]

受信: 2017年3月27日 (月) 20時55分

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