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2017年5月21日 (日)

摂動論のアノマリー(3)

摂動論のアノマリーの続きです。
 

さて,前回記事では,次のように書いて終わりました。
 

再計測(rescaling),本当に自己エネルギー部分と頂点部分

を有限にするということの証明は,数学的帰納法に基づいて

成されます。
 

eの(n-2)次のあらゆるグラフを.この手法で有限にする

と仮定し,それから,オーダー:nの再計測グラフの収束性を

示すわけです。

 
次回は,上記証明の簡単なスケッチから入る予定です。

と書きました。

 ここからは今回です。

簡単に頂点部分と電子の自己エネルギー部分のケースにおける証明 

をスケッチします。
 

というのは,ここに含まれる論理は,単純で,かつ,後でアノマリー

論じる際に,我々にとって有意義な概念を有しているからです。
 

光子の自己エネルギー部分:Πや伝播関数DF'についての証明は,

重複発散の問題によって,複雑になるため,省略します。

 まず,頂点部分の繰り込み可能性を証明をするため,
それが満足

すべき積分方程式の存在を示すことから始めます。
 

この方程式を表現するため,まず,電子-陽電子核(Kernel:積分核) 

(p',,)αβ,γδを定義します。
 

これは,次図の形のあらゆるdiagramを表現しています。
 

ただし,図から外線の足となる伝播関数は除去され,また,

非連結diagrams,次図の2つのケースのdiagramsは排除

されます。
 

Kの最低次の寄与は,次の形式です。 

(0)(p',,)αβ,γδ (i02/2)(γμ)αβ(γμ)γδ ..(20)
 

これは次図のdiagramに由来します。
:

この核:Kによって,次図のdiagram表現に従って, 

頂点部分の1つの積分方程式を書くことができます。


 

すなわち, 

Γμ(,’)δγ(γμ) δγ+∫d4(2π)-4 

{r[iF'(p+q)Γμ(p+q,'+q)iF'(p'+q)]}βα 

×K(p',,)αβ,γδ   ...21

です。
 

これを,引数,積分変数や添字を,はずした行列積という

省略形で書けば,

Γ=γ -∫ΓSF'F'.. 22) です。
 

今の繰り込み可能性の証明には,この表現の方が,簡単,かつ

便利なので,以下,特に明記の必要がない限り,これを使います。
 

再スケールした核:~,~=Z22...(23)で定義すると,

(22)は,Γ~μ=Z1γμ-∫Γ~μF'~F'~~...(24)

となります。
 

理論が,eの(n―2)次まで有限である。と仮定したとき,

(15)で定義した.繰り込み定数による再スケールが,n次の

Γ~をも有限にすることを示したい。と考えます。
 

(20)のKの最低次が,

(0)(p',,)αβ,γδ (i02/2)(γμ)αβ(γμ)γδ

であることから.~の最低次は,

(0) → K~ (0),02→e2のように繰り込まれた形に

書けるため,~はe2のオーダーで始まるので,(24):

Γ~μ=Z1γμ-∫Γ~μF'~F'~~.の右辺も. 

Γ~,F'~,F'~,~(n-2)次の寄与を代入すること 

により,左辺にΓ~のn次までの.寄与を得ます。

すなわち, 

Γ~(n)μ=Z1(n)γμ-∫Γ~(n-2)μF'~(n-2)F'~(n-2)~(n-2)...(25) 

です。
 

(3-1):(24)は摂動級数に展開すると 

Γ~(0)μ+Γ~(2)μ+Γ~(4)μ.. +Γ~(n-2)μ+Γ~(n)μ.. 

(1(0)+Z1(2)+Z1(4).. +Z1(n-2)+Z1(n)..)γμ 

-∫[(Γ~(0)μ+Γ~(2)μ+Γ~(4)μ.. +Γ~(n-2)μ+Γ~(n)μ..)

F'~SF'~ 

×(~(0)+K~(2)+K~(4).. +K~(n-2)+K(~n)..)]

であり,..
 

F'~=SF'~(0)+SF'~(2)+SF'~(4).. +SF'~(n-2)+SF'~(n)

..

ですから,両辺をeの同じオーダーで正しく等置すると, 

Γ~(n)μ=Z1(n)γμ-∫Γ~(n-2)F'~(0)F'~(0)~(0) 

-∫Γ~(n-4)F'~(2)F'~(0)~(0) 

-∫Γ~(n-4)F'~(0)F'(2)~(0) 

-∫Γ~(n-4)F'~(0)F'~(0)~(2) 

-∫Γ~(0)F'~(n-2)F'~(0)~(0) ;;

ですから,

 
実は
(25)式にはなりませんが,  

1(n)を除けば,今の正しく評価した式の右辺はeの(n-2)

までの有限と仮定したの有限和で表現されます。
 

ただし,Γ~とZ1のみ, 

Γ~=Γ~(0)μ+Γ~(2)μ+Γ~(4)μ.. +Γ~(n-2)μ+Γ~(n)μ.. 

1=Z1(0)+Z1(2)+Z1(4).. +Z1(n-2)+Z1(n).. 

という定義であり,
 

F'~(n-2),~(n^2),(n-2)次の単独項ではなく,

(n-2)までの項の総和という,別の定義であれば, 

(25)式は成立する。ので,

ここではそう解釈します。

 
(3-1終わり※)

 

すると,(15)(16)の再スケールの定義から, 

 Γ~(n)μ(,)|=m0 ..(26)です。
 

それ故, 

1(n)γμ=∫Γ~(n-2)μF'~(n-2)F'~(n-2)~(n-2)|’=..(27) 

です。

 こうして,有限な既知量の和の積分として,1(n)
 

決まります。
 

この(27)式の右辺は,何の仮定もなく, 

「右辺の積分値が電子の質量殻上でγμの定数倍である。」 

という命題を含むというのは,注目に値することです。
 

(27)式の右辺は,無次元量mのLorentzテソル関数であり,

それ故, , 'が共にmで置き換えられる問題における唯一

Lorentzテソルであるγμに比例すると考えられます。
 

(27)(25):

Γ~(n)μ=Z1(n)γμ-∫Γ~(n-2)μF'~(n-2)F'~(n-2)~(n-2)

に代入すると, 

Γ~(n)μ=∫Γ~(n-2)μF'~(n-2)F'~(n-2)~(n-2)|’=.. 

-∫Γ~(n-2)μF’~(n-2)F’~(n-2)~(n-2)., .(28) です。
 

ここまでくると,帰納法の仮定を用いて, 

(24);Γ~μ=Z1γμ-∫Γ~μ'~SF'~K~...に含まれる

全ての部分グラフに関わる積分が有限であること,を示す

のは容易なことです。
 

そこで,唯一の発散は,全ての内線を通る4元運動量が大きくなる 

とき.全ての積分に関連する対数発散です。
 

しかし,この全体としての発散は(28)のように単純な差を取れば, 

有限となるため, 結局,Γ~μ(n)は収束することがわかります。

したがって,頂点部分Γ~μは多重的に繰り込み可能であること, 

が確証されました。
 

我々の論旨において,着目すべき重要事は,全て(22)の積分方程式 

から話を進めたことです。
 

そして,これは,とにかく,頂点部分が,ベクトルカレントを意味する 

γμの形である,という特殊性には依存していないことです。

 

それ故,QEDにおける擬ベクトル(Axial-Vector)および,擬スカラー 

(Pseud-Scalar)による頂点でも22):Γμ=γμ -∫ΓμF'F'. 

と同様な積分方程式が満たされると考えられます。
 

すなわち,Γμ5=γμγ5-∫Γμ5F'F', 

Γ5=γ 5-∫Γ5F'F'.. 29) です。
 

そして,前と同様に,帰納的論議によって,こうした頂点でも

上の式に現われるものについて,次のように繰り込まれた関数

(チルダ関数)を定義して与えることにより,掛け算的繰り込み

が可能であることが,示せます。
 

すなわち,Γμ5(,')=Z-1Γ~μ5(,'), 

Γ5(,')=Z-1Γ~ 5(,') ..(30)  

,チルダ関数を定義します。
 

さて,次には,電子の伝播関数;F'(p)に向かいます。
 

このとき,重複発散の問題が存在しますが,

こうした問題は,伝播関数と頂点部分の間に,Ward-Takahashi

の恒等式として知られている重要な関係を用いて,うまく回避

することができます。
 

Ward-Takahashiの恒等式に,ついては,既に証明抜きで使用

しましたが,これは,

(p-p')μΓμ(,’)=SF'-1(p)-SF'-1(p')

で与えられる関係式です。
 

これを証明するために(6): 

F'(p)Γμ(,')F'(p') 

=-∫d4xd4exp(ipx)exp(i')

0|[ψ()μ(0)ψ~()]|0

から始めます。

の両辺に,(p-p')μを掛けると,, 

 まず,(p-p')μF'(p)Γμ(,')F'(p') 

=-,(p-p')μ∫d4xd4exp(ipx)exp(i') 

0|{ψ()μ(0)ψ~()}|0 

=-(p-p')μ∫d4xd4exp{i('-p))exp(i') 

0|{ψ(0)μ()ψ~()}|0> 

です。
 

(3-2): x→―x,y→y-(y-x)と積分変数を置換 

するとき,∫d4xd4yは変わらず,
 

 exp(ipx)exp(i')0|{ψ()μ(0)ψ~()}|0 

exp(ipx)exp{i'(y―x)} 

0|{ψ(-x)μ(0)ψ~(y―x)}|0> ですが,

 
T積については,
平行移動のユニタリ変換:

ψ(-x)=U(-)ψ(0)-1(-x), 

および,ψ~(y-x)=U(-x)ψ~()-1(-) により, 

0|{ψ(-x)μ(0)ψ~(y-x)}|0 

=<0|{ψ(0)μ()ψ~()}|0>です。

 そして,
 exp(ipx)exp{i'(y―x)} 

exp{i('-p))exp(i')です。

 (3-2終わり※)
 

さらに,

最右辺=∫d4xd4exp{i('-p)}exp(i') 

i(/∂xμ)0|{ψ(0)μ()ψ~()}|0 

i∫d4xd4exp{i('-p)}exp(i')0| 

×([ψ(0)μμ()ψ~()]

+δ(0){[0()ψ(0)]ψ~()}

+δ(0―y0){ψ(0)[0(),ψ~()]})|0

となります。
 

(3-3):何故なら,(/∂xμ)を∂μと書くと, 

微分可能な任意のxの関数:()に対し, 

μ[exp{i('-p)}()] 

i('-p)μexp{i('-p)}() 

exp{i('-p)}{μ()}] です。

 

一方,4次元Gaussのの積分定理によって,

4(μ)=∫FdS(Sは4次元体積Vの3次元

表面境界)です。ただし,()exp{i('-p)}()

とします。
 

Vが全時空を示すなら,その境界である3次元閉曲面S

は無限遠に存在して,そこでは全ての場の量は急減衰して

ゼロになるため,4(μ)0ですから,
 

最初に書いた連鎖微分の式により,部分積分から事実上, 

('-p)μexp{i(-p)}() 

iexp{i('-p)}×{μ()} が成立します。

 

また,T積の定義から,{ψ(0)μ()ψ~()}

=T{ψ(0)ψ~()μ()} 

=θ(-y0)θ(0-x0)ψ(0)ψ~()μ() 

-θ(0-x0)θ(0)ψ~()μ()ψ(0) 

+θ(-x0)θ(0-y0)ψ(0)μ()ψ~() 

+θ(0)θ(-y0)μ()ψ(0)ψ~() 

-θ(0-y0)θ(0)ψ(0)μ()ψ~() 

-θ(0)θ(-x0)ψ~()ψ(0)μ()

です。
 

故に,(/∂xμ){ψ(0) ψ~()μ() } 

=T{ψ(0) ψ~()μμ()} 

-θ(-y0)δ(0-y0)ψ(0)ψ~()0() 

+δ(0-y0)θ(0)ψ~()0()ψ(0) 

+θ(0-y0)δ(0)ψ~()0()ψ(0) 

-δ(0)θ(0-y0)ψ(0)0()ψ~() 

+θ(-x0)δ(0-y0)ψ(0)0()ψ~() 

-δ(0) θ(-y0)0()ψ(0)ψ~() 

+θ(-x0)δ(0-y0)ψ(0)μ()ψ~() 

-δ(0-y0)θ(0)μ()ψ~()ψ(0) 

+θ(0)δ(0)ψ~()ψ(0)μ()
 

つまり, 

(/∂xμ){ψ(0) ψ~()μ() } 

=T{ψ(0) ψ~()μμ()} 

+δ(0){θ(-y0)[0(),ψ(0)]ψ~()

-θ(0)ψ~() [0(),ψ(0)]} 

+δ(0-y0){θ(-y0)ψ(0)[0(),ψ~()] 

-θ(0)[0(),ψ~()]ψ(0)}
 

=T{ψ(0)μμ()ψ~() }

+δ(0){[0(),ψ(0)]ψ~()} 

+δ(0-y0) {ψ(0)[0(),ψ~()]}

を得ます。
 

(3-3終わり※)
 

最右辺の第1項は,カレントの保存:(3):μμ0,

用いるとゼロであり,残る2つの項を正準反交換関係

を用いて評価すると

(p-p')μF'(p)Γμ(,')F'(p') 

=SF'(p')-SF'(p)..(32) 

です。

 

この,両辺に,左からSF'-1(p),右からSF'-1(p')を掛けると 

(p-p')μΓμ(,'’)=SF'-1(p)-SF'-1(p') ..(33) 

を得ます。これがWard-Takahashiの恒等式です。
 

(3-4):[AB,]=ABC-CAB=A{,}{.}Bより 

まず,δ(0)が掛かっているためx00の同時刻で. 

[0()ψα(0)][ψβ()ψβ(),ψα(0)] 

=ψβ(){ψβ(),ψα(0)}{ψβ() ψα(0)}ψβ() 

=-δ3()ψα(0) です。

 

また,δ(00-y0)が掛かっているため,0=y0の同時刻で, 

[0(),ψ~α()] [ψβ()ψβ(),ψ~α()] 

=ψβ(){ψβ(),ψγ()}γ0γα

{ψβ() ψγ()}γ0γαψβ() 

=δ3(-y)ψ~α()  です。
 

したがって,(p-p')μF'(p)Γμ(,')F'(p') 

i∫d4xd4exp{i('-p)}exp(i')0| 

×([ψ(0)μμ()ψ~()]+δ(0){[0()ψ(0)]ψ~()} 

+δ(0―y0){ψ(0)[0(),ψ~()]})|0> 
 

i∫d4xd4[exp{i('-p)}exp(i') 

δ4()0|{ψ(0)ψ~()}|0 

+δ4(x-y)0|{ψ(0)ψ~()}|0] 

i∫d4exp(i')0|{ψ(0)ψ~()}|0 

i∫d4exp(ipy)0|{ψ(0)ψ~()}|0 

=SF'(p')-SF’() です。

(3-4終わり※)
 

Ward-Takahashiの恒等式(33: 

(p-p')μΓμ(,’)=SF'-1(p)-SF'-1(p') 

において,'=mとすると,F'-1(p')'-m=0 です。
 

それ故,

'-1(p)(p-p')μΓμ(,')|=m .(34) 

ですが,これによって,電子伝播関数SF'(p),頂点部分

Γμ(,')が決まれば,完全に決まることがわかります。
 

そして,頂点部分については,

Γ~μ(,')=Z1Γμ(,')から,Γ~μとZ1(n-2)

まで有限という帰納法の仮定から,それらはオーダーnまでも

有限になることを示して,繰り込み可能性を既に証明しました。
 

そこで,1-1F'(p)=Z2-1F'(p)=SF'~(p)も同じく, 

(n-2)次まで有限という仮定から,オーダーnまで有限で

あることが直ちに示されます。
 

ちなみに,(34)式は,さらに,=mの近傍で, 

2-1(p-m)~ SF'-1(p)|=m 

(p-p')μΓμ(,')|p=m ~Z1-1(p-m)..(35) 

なることを意味し,これからZ1=Z2が導かれますが, 

このことは,既に証明抜きで述べていたことで,それ以後は,

これを使用していました。
 

QEDの繰り込みを論じる際には,Ward-Takahashiの恒等式は 

有益で重要な役割を果たす,ことがわかります。

 

カレントの保存条件:(3):μμ0,および,(16)

繰り込み条件において, Ward-Takahashiの恒等式を導出

するに当たって,序文で言及した危険なタイプの操作を

一応無事に行ないました。
 

しかし,こうした操作は,正当化され, Ward-Takahashi

恒等式と頂点のカレント保存の他の帰結は,摂動論の

あらゆる次数で正しいことがわかります。
 

これは,言い換えると,頂点に関わるカレントが保存する

通常のQEDでは,幸い,Ward-Takahashiの恒等式のアノマリー

を生じないということです。
 

これで一応,やっと20年がかりで関わった第1章が終わり,

本題の「2.The VVA Triangle Anomaly」に入るわけです。
 

私のノートは,19951/5()に第1章を完了した後,2

20昔のノート「に戻る前に,19955月末までかかって

中西㐮 著(培風館)「場の量子論」から,

今は中西-Lautrap理論と呼ばれている「電磁場の共変的量子化」

に進み,最後には,Ward-Takahashiの恒等式,任意のゲ-ジで

成立することを示すところまで記述していました。

 

「電磁場の共変的量子化」については,本ブログの

過去記事で記述していたと記憶しているので,私自身

ちょっと調べてみます。


 (※PS:ありました。8年前で忘れてました。

 まずは,2009年6/5の過去記事:

電磁がの共変的量子(1)(中西ーLautrap理論」から回顧です。)
 

今日は,ここで終わります。

(参照文献):Lectures on Elementary Particles 

 and Quantum Field Theory 

(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

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