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2017年5月30日 (火)

摂動論のアノマリー(5)

摂動論のアノマリーの続きです。
 

前回は,軸性ベクトルのWard(-Takahashi)の恒等式(44): 

(p-p')μΓ5μ(,p')20Γ5(,p') 

+SF'-1(p)γ5+γ5F'-1(p')

,通常の場理論が厳密に正しいという前提で,証明した

ところで 終わりました。
 

§2.1 Ward-identity in Perturbation Theory 

(摂動論におけるWardの恒等式)
 

今から,(44)式に到るナイーブで形式的な操作が,

実際的な摂動論においても正しい操作かどうか?

を調べたい,と考えます。
 

まず,軸性頂点の頂点補正:Λ5μ,および,Λ5を次式で

定義します。 

すなわち,Γ5μ=γμγ5+Λ5μ,および,Γ5=γ5+Λ5.(45)

です。
 

そ うして,(44):

(p-p')μΓ5μ(,p')20Γ5(,p') 

+SF'-1(p)γ5+γ5F'-1(p'),たった今与えた

定義式(45),(7):F'(p)1/(-m0-Σ())

を代入すると,(44),次のように書き直せます。
 

(p-p')μΛ5μ(,p')20Λ5(,p') 

-Σ()γ5-γ5Σ(p') ..(46) です。
 

この式を,摂動論的に導くために,Λ5μ(,p')に寄与

しているdiagramsを2種類に分割します。
 

()軸性頂点:γμγ5,外線4運動量:p'に始まり,

外線4運動量pで終わるFermi粒子線上に接している

diagrams, 

および,
 

() 軸性頂点:γμγ5,1つの閉じた内線ループ上に

接しているdiagrams


  の2種類
です。
 

(5-1)「軸性ベクトル頂点が1個だけあって,残りの

頂点 が全てベクトル頂点のループでは,ベクトル頂点の

個数が奇数の場合,ループの寄与はゼロである。」という

Furryの定理」の一般化を証明します。
 

(証明)閉じたループには時計回りのもの:(ⅰ)とそれ

に対応する反時計回りのもの;(ⅱ)とが存在するため,

寄与は次の1,とF2の和で与えられます。
 

すなわち,

1=Tr[{1/(2k-m+iε)}γ5{1/(2k-1-m+iε)} 

2k-1...2{1/(2k-1-m+iε)}1] ,

  
および,
 

2=Tr[1{1/(1-m+iε)}2{1/(2-m+iε)}

3..2k{1/(2k-1-m+iε)}γ5{1/(2k-m+iε)}]
 

です。
 

1の両辺に荷電共役変換(Charge conjugation)の演算子: 

^iγ2γ0(^=C^-1)によるユニタリ変換を行うと, 

^1^-

1=Tr[^{1/(2k-m+iε)}γ5{1/(2k-1-m+iε)} 

2k-1...2{1/(2k-1-m+iε)}1^-1] 

ですが,trace(トレース:対角和),の性質から,

1の式の右辺

=Tr[^-1^{1/(2k-m+iε)}γ5

{1/(2k-1-m+iε)}2k-1...2{1/(2k-1-m+iε)}1]

=F1 です。

  
よって,^1^-1=F1であり,1は荷電共役不変です。
 

他方,1=C^1^-1=Tr[^{1/(2k-m+iε)}

^-1^γ5^-1^{1/(2k-1-m+iε)}

^-1^2k-1^-1.^2^-1^{1/(2k-1-m+iε)}

^-1^1^-1] よ書けます。
 

^iγ2γ0に対しては,^γμ^-1=-γμ, 

また,^γ5^-1=γ5です。

(※Tは転置行列:transpose matrix)

よって,^^-1=-.^^-1=-etc. 

かつ,^(γ5)^-1=-γ5(γ5)T  です。
 

以上から,1=C^1^-1 

(1)2-1r[{1/(2k T-m+iε)}(γ5) T  

×{1/(2k-1 T-m+iε)}2k-1 T...2 T

{1/(2k-1 T-m+iε)}1 T]

(1) 2-1r[1{1/(1-m+iε)}2

{1/(2-m+iε)}3..2k{1/(2k-1-m+iε)}

γ5{1/(2k-m+iε)}] =-F2 

を得ます。
 

したがって,1+F20 です。(照明終わり)
 

(5-1終わり※)
 

()図の型の典型的な寄与は, 

Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(){1/(k-m0)}γμγ5{1/('+k-m0)}] 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]×γ(2) (・・・)}

.(47です。
 

ここで,注意をγμγ5の接する内線に集中し,diagrams 

の残りの部分の因子(=図のblob),(・・・)で記述 

しました。
 

これに,(p-p')μを掛けて, 

 {1/(k-m0)}(')γ5{1/('+k-m0)} 

{1/(k-m0)}(20γ5){1/('+k-m0)} 

{1/(k-m0)}γ5+γ5{1/('+k-m0)}..(48) 

なる公式を用います。
 

(5-2): 上の公式の証明です。

  
(48)の左辺
{1/(k-m0)}

 (k-m0'-pk+m0)γ5{1/('+k-m0)}] 

=γ5{1/(k-m0)}{1/(k-m0)}γ5 

('k-m020){1/(k-m0)}

=γ5{1/('+k-m0)}{1/(k-m0)}γ5 

{1/(k-m0)}(20γ5){1/('+k-m0)}
 

(5-2終わり※)
 

そこで,頂点:Λ5μへのグラフ型()の寄与(47), 

Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(k){1/(k-m0)}γμγ5{1/('+k-m0)}] 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2) (・・・)} 
 

ですが,これに(p-p')μを掛け,代数的に順序を

変えつつ,公式(48)を適用すると,
 

Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(){1/(k-m0)}(2μ0γ5){1/('+k-m0)}] 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2) (・・・)}
 

(・・・)Πj=12n-1[γ(j){1/(j-m0)}]γ(2n)γ5 

-γ5Πj=12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2n) (・・・)

.(49) が得られます。
 

(5-3):因子:γ(k){1/(k-m0)}γμγ5{1/('+k-m0)} 

(p-p')μを掛けると,

γ(k){1/(k-m0)}(')γ5{1/(k-m0) 

=γ(k){1/(k-m0)}(20γ5){1/('+k-m0)} 

+γ(k)[{1/(k-m0)}γ5+γ5{1/('+k-m0)}]

です。
 

よって,この第1項から,

Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(){1/(k-m0)}(2μ0γ5){1/('+k-m0)}] 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2) (・・・)} 

が得られるのは明らかです。
 

他方,Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(k){1/(k-m0)}γ5+γ(k)γ5{1/('+k-m0)}] 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/(j-m0)}]γ(2) (・・・)}

=Σk=12n-1{Πj=1k[γ(j){1/(j-m0)}γ5 

×Πj=k+12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2n) (・・・)} 

-Σk=12n-1{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)} 

×γ5Πj=k2n-1[γ(j){1/(j-m0)}]γ(2n) (・・・)} 

=Πj=12n-1[γ(j){1/(j-m0)}γ5γ(2n) (・・・) 

-γ5Πj=12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2n) (・・・)
 

=-(・・・)Πj=12n-1[γ(j){1/(j-m0)}]γ(2n)γ5 

-γ5Πj=12n-1[γ(j){1/('+j-m0)}]γ(2n) (・・・) 

です。
 

(5-3終わり※)

(49)の第1項は,20Λ5(.p')への,()のブラフの寄与,

一方,第2.3項は,同じグラフの,{-Σ()γ5-γ5Σ(p')}

への 寄与に等しいことがわかります。
 

あらゆる()のタイプのグラフの総和のΛ5μ(.p') 

および,Λ5(.p')への寄与分を,それぞれ,

Λ5μ()(.p'),および,Λ5()(.p')とすると,
 

(49)の成立,(p-p')μΛ5μ()(.p') 

20Λ5()(.p') -Σ()γ5-γ5Σ(p').(50) 

を意味します。

(↑ ※ 内線の個数が頂点の個数より必ず1つ少ない数 

なので,(i)Σ()の係数:(i),全てのi,(i) 

因子を相殺で除いたときに,相殺されて消えます。)
 

次に,()のタイプのΛ5μ(.p')への寄与に移ります。
 

典型的な項は,Furryの定理による係数:2やループ因子

(1)など,Λ5μ(.p')とΛ5(.p')の両方に共通な

係数を除けば,
 

∫d4rTr(Σk=12n{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(k){1/(k-m0)}(γμγ5){1/(k'--m0)}] 

×Πj=k+12n[γ(j){1/(j'--m0)}]})×(・・・)..(51) 

です。
 

(p-p')μを掛けて,公式(48)を適用すると, 

∫d4rTr(Σk=12n{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(k){1/(k-m0)}(20γ5){1/(k'--m0)}] 

×Πj=k+12n[γ(j){1/(j'--m0)}]})×(・・・)
 

+∫d4rTr(Σk=12n{Πj=1k[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ5Πj=k+12n[γ(j){1/(j'--m0)}]}) 

.-Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ5Πj=k2n[γ(j){1/(j'--m0)}]}) 

×(・・・)
 

=∫d4rTr(Σk=12n{Πj=1k-1[γ(j){1/(j-m0)}] 

×[γ(k){1/(k-m0)}(20γ5){1/(k'--m0)}] 

×Πj=k+12n[γ(j){1/(j'--m0)}]})×(・・・)
 

-∫d4rTr({γ5Πj=12n[γ(j){1/(j-m0)}] 

-γ5Πj=12n[γ(j){1/(j-m0)}]})×(・・・) (52)


 
となります。
 

この(52)の第1項は,Λ5μ(.p')への()のグラフに

対応する20Λ5(.p')への寄与です。
 

前の(a)と同様,Λ5μ(.p'),および,Λ5(.p')への 

()のタイプのグラフの寄与の総和を,それぞれ, 

Λ5μ()(.p'),および,Λ5()(.p')と書きます。
 

一方,(42)の第2項と第3項は,第2項の積分変数を

rから(+p-p')変えるという操作が正しいなら,

完全に相殺して消えます。
 

以上から.

(p-p')μΛ5μ()(.p')20Λ5()(.p').(53) 

を得ます。
 

最後に,(50)(53)を辺々加え合わせると,軸性カレント 

Wardの恒等式(46):(p-p')μΛ5μ(.p') 

20Λ5(.p') -Σ()γ5-γ5Σ(p') 

が得られます。
 

しかしながら,上述の導出においては,単純な代数的な

配置換えではないような唯一の操作として,(52)

第2,3項において.積分変数の置換を行ないました。

  これが,正しい操作ではない可能性があります。
 

これが,正しい操作で有り得るのは,積分が悪くても

対数発散するときです。

この条件は,4つ以上の光子頂点を持つループ,つまり

n≧2なるループに対しては明らかに満足されています。
 

ところが,ループが,ただ2つの出入りする光子を持つ

ような三角グラフ(Triangle graph)のときは,n=1

なので(52)積分は,2次発散すると見えます。
 

実際には,r{γ5γ(1)γ(2)}0 なので,n=1

のとき,積分は表面上は1次的に発散します。
 

(5-4):実際の三角グラフの寄与を与える,∫d4

が掛かる被積分関数は,係数を除いて, 

 r{γ5γ(1){1/(1-m0)}γ(2) {1/(2-m0)}} 

{(r+p1)2-m02)(r+p2)2-m02)}-1 

×Tr{γ5γ(1)(1+m0)}γ(2)(2+m0)}}

です。
 

これにおいて,r{γ5γ(1)γ(2)} 

4iεαβγδα(1) βγ(1)δ0 を用いると,
 

r{γ5γ(1)(1+m0)}γ(2)(2+m0)}} 

=Tr{γ5γ(1)(1)γ(2) 2)+γ5γ(1)1(2)} 

となり,

積分の発散時数はD=4141となります。
 

(5-4終わり※)
 

そして,1次発散するFeynman積分の平行移動(積分変数

の原点のずらし)によって積分値は不変ということを

利用する操作は,必ずしも正しい操作,ではないことは

良く知られています。(※これは,例えば有名な,

Jauch-RoelichThe Theory of Photons and Electrons

を参照)
 

(5-5);対数発散なら,,Bが有限な定数で

A≠Bのとき, 

dk/(k+A)-∫dk/(k+B) 

=∫dk(B-A)/{(k+A)/(k+B)}

[ln(k+A)/(k+B)] なので,

積分領域境界のk→∞の紫外領域で,

ln(k+A)/(k+B)0 が成立するため,

繰り込みでの切断による正則化が正当化される

のです。
 

しかし,1次発散では∫Adk-∫Bdk

[(A-B)] →±∞ですから,一般に有限値

が得られません。。  (5-5終わり※)
 

それ故,(53): (p-p')μΛ5μ(.p') 

20Λ5(.p')-Σ()γ5-γ5Σ(p')

,上述の三角グラフでは破れている可能性が

あります。
 

そうして,これが現実に破れていることを見るために

Rosenbergによって計算された三角グラフの陽な表現

を使用します。
 

 上に図示したグラフと,その2光子を入れ替えた

グラフの和は,Furryの定理では,どちらも同じ寄与

なので,因子2が掛かるだけですが,
,
 

i02(2π)-4σρμ 

2∫d4(2π)-4(1)r[{i/(1-m0)}(i0γσ) 

{i/(-m0)}(i0γρ){i/(2-m0)}(γμγ5)]

..(54) です。
 

この表現は,確かに1次発散します。

しかし,光子の自己エネルギー部分:Πμν()の評価のとき

のように,カレントの保存の要請から,光子の場の強さの

テンソル:(2ξε2ρ-k2ρε2ξ),(1ηε2σ-k2σε1η)

を通してcouple(相互作用)することを考慮すると

   
運動量の2つのベキが,その因子に費やされること

がわかるので,有効発散次数は,Deff=-1となって

収束積分が残ります。 

(※収束はしてもゼロではないので,軸性カレントのWard

恒等式には確かに破れが存在して,これがアノマリーです。)
 

(5-6):つまり,ε1σε2ρσρμ 

(2ξε2η-k2ηε2ξ)(1αε2β-k2βε1α) 

αβξημ(1,2)という場の強さに比例する形 

であるなら,

  εi→εi+ki(i=1,2)に対して,(iαεiβ-kiβεiα) 

(iαεiβ-kiβεiα)(iαiβ-kiβiα) 

(iαεiβ-kiβεiα)となるため、ゲージ不変性が 

保証されます。

  (5-6終わり※)
 

以下,長くなるので,今日はここで一旦終わります。~
 

(参照文献):Lectures on Elementary Particles 

 and Quantum Field Theory 

(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

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