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2017年5月12日 (金)

摂動論のアノマリー(Perturbation Theory Anomaly)(1)

科学記事の新しいテーマというか,実は,1975(25)頃の

懐かしい素粒子論研究室の学生時代のノートからです。
 

1976年の卒業(=修了)時に,拙い間に合わせの論文とは別に,

ヒョッとしたら自分の終生の専門課題になるカモと思って

いたモノ:

Lectures on Elementary Particles and Quantum Field Theory

(1970 Brandeis University SummerInstitute

 in Theoretical  Physics) 

素粒子論夏の学校の講義録:通称:Brandeis Lectures Vpl.1

StephanL.Adlerによる講義:

(標題)Perturbation Theory Anomaly(摂動論のアノマリー)

当時,何故か,個人的に興味を覚えて指導教官抜きで勉強

したものを記事としてアップします。
 

以前から,これは是非ブログにアップしたい。と思ってはいた

ものの,掲載すべき,複雑なFeynmanダイアグラムの図が多く,

私の原稿書きのスキルでは敷居が高い。と考えて敬遠して

いました。

 しかし,
まあ,ヒマなことだし何とかじっくりとトライして

 みます。温故知新です。。。

 
赤外発散論文の詳解記事と同じく,翻訳+解説というう

構図です。

 心臓,足,目と体は不自由で,いうこときかないのですが,

脳というか頭だけはますます元気で海馬も健康らしく

ウン十年前に勉強したコトなども,スラスラ思い出し,

経験のせいか当時より理解は深いようです。

申し訳けないのですが,何の役にも立たないクソジジイ

なのに,身体介護など他人の世話にもなり,精神的な

ストレス的にはフリーなので,できることだけ,好きなコト

をしています。
 

(標題)Perturbation Theory Anomaly(摂動論のアノマリー) 

1.Introduction and Revies of Perturbation Theory 

(序文と摂動論のレビュー)
 

この講義の目的は,「繰り込まれた摂動論」の最近の発展を研究

することです。

 「繰り込まれた摂動論(Renormalized Perturbation Teory)
 

という課題は,今では古いものですが,うまく発展してきて

います。
 

大部分のLagrangian場理論模型に対して,繰り込みの

手続き,全てのオーダーでの繰り込み可能性の証明は,

既に与えられています。
 

 ここで論じる予定の新しい方面は,カレント代数

(current algebra)において最近の仕事の焦点となってきた

ものであり,それは大いに,"Wardの恒等式"とカレントを含む

Bjorken極限を用いています。
 

その両方共,通常Lagrangian場理論において生じるタイプの

T積(時間順序積)に関する叙述です。 

こうした叙述のいくつかは,幾分ナイーブな高次発展量の

形式的扱い(書く換え)によって得られるため,こうした書き換え

が実際に正しいものかどうか? を問うのは,当然のことです。
 

 現在のところ.場の理論における計算に,何らかの一般的方法

が存在しないので,特殊なLagrangian場理論模型においてさえ,

この問いに答える一般的方法はありません。

 
しかし,「繰り込まれた摂動論」の枠組内で,この問いを検討

することは可能であるし,啓発的です。

  
この「繰り込まれた摂動論」には既に明確な計算法が存在し

具体的な答が得られることがわかっています。

こうした足跡は,ここ数年間に何人かの論文著者(研究者)

よって追跡されましたが,これについて,以下に詳細に記述

します。
 
 

そして,結論の示すところは,「摂動論では多くのケースで,通常

の単純な取扱いは破れている(破綻している),あるいは,修正を

必要とするか?または,アノマリー(Anomalies:量子異常項)

生じる。」 ということです。
 

こうしたアノマリーとその性質は,いくつかのカレント代数の

計算において重要な示唆を与えるだけでなく,それ自身興味深い

数理物理学の問題です。
 

§1.1.Review of Quantum Electrodynamics

 and Renomalization Theory

(量子電磁力学と繰り込み理論のレビュー)
 

我々は摂動論のアノマリーの研究を,

QED(Quantum Electrodynamics:量子電磁力学),なじみ深い

ケースで,通常の繰り込み理論の概観を与えることから始めます。
 

QEDは我々に興味深い多くのアノマリーを与えてくれます。 

そして「ベクトルグルオンの準力学

(Quasi- Mechanics of vector gluons)を持つクォーク模型や

σ-模型 のような,他の物理的に興味深いケースへの一般化は,

一般原理よりも,むしろ.詳細についての問題を含む,こと

発見しています。
 

さて,QEDLagrangian密度, 

()=ψ~()(iγ∇―m0)ψ()(1//4μν()μν() 

-e0μ()...(1) で与えられます。
 

ここで,ψ()は電子の場(spinor field:スピノル場)であり, 

μ()は光子の場(vector field):ベクトル場)です。
 

μν()=∂νμ-∂μν,電磁場の強

(電場E,および,磁場B)を示す2階テンソルです。
 

ただし,γ∇=γννであり,-e0,0はそれぞれ,電子の

裸の電荷,裸の質量です。(※ m00,00 です。 )
 

このLagrangianから,作用原理()変分原理)に基づく

Euler-Lagrange方程式として,次の場の運動方程式が

得られます。
 

(iγ∇―m0)ψ()=e0γμμ()ψ(). 

νμν()=e0μ()   ...(2)  

ただし,μ()=ψ~()γμψ() 

です。
 

μ()について,μμを計算し,この"同一時空点"における

2つの場の演算子積に対し,通常の微分の連鎖公式を適用しても

何ら微妙な困難などは生じない。と仮定すると, 

μμ=∂μψ~γμψ+ψ~γμμψ 

=ψ~(i0i0γμμ) ψ+ψ~(i0i0γμμ)ψ 

0 ..(3)  

を得ます。
 

これは通常のカレント保存の方程式(連続の方程式)です。
 

最後に,スピノル場の正準反交換関係(同時刻),次式です。 

{ψα(,),ψβ(,)}=δαβδ()..(4) 

α,βはスピノル[成分の添字です。
 

もしも,Feynmanゲージを用いるなら,光子場の正準交換関係は, 

[μ(,),∂Aν(,)/∂t]iμνδ()..(5) 

です。
 

(1)(5)QEDの基本方程式です。
 

こうした方程式を取り扱う通常の手法は.もちろん,運動量空間

を考えて0のべキで摂動級数に展開することです。
 

これから.よく知られた計算のFeynmanルールが導かれます。 

これを次に要約します。
 

()運動量pを持った電子の内線にi/(-m0iε),

各頂点(vertex)に因子(i0γμ)を対応させる。

(=γp=γμμ etc.です。) 

運動量qの各光子線の内線には(1μν)/(2iε)

を対応させる。
 

() Fermionループに対しては,因子(1)を付加し,

ループの運動量変数lにわたって内線積分として∫d4/(2π)4

が存在する。
 

()各光子の外線に因子:εμ√Z3を対応付ける。 

ここにεμは光子の偏光偏極4元ベクトルであり,3は光子

波動関数の繰り込み定数である。 

各電子外線にはグラフに入ってくるものに,√Z2(,)を,

それから出てゆくものに,√Z2~(,)を対応させる。
 

陽電子の外線にはuの代わりにvを用いるだけの違いである。
 

2は電子波動関数の繰り込み定数である。
 

被連結泡グラフの挿入や,外線の電子線や光子線への

自己エネルギーの挿入は除く。
 

こうしたルールを用いて,任意のプロセスに対し,摂動の任意

次数のFeynman振幅:をつくることができます。
 

よく知られているように,繰り込み(Renormalization)によって

除去すべき発散に遭遇します。

 この手続きを今から簡明にスケッチします。 

電子の伝播関数(propagator);F'(),光子伝播関数:

F'μν(), 頂点部分:Γμ(,')を次のように定義します。 

iF'(p)

=∫d4exp(ipx)0|[ψ()ψ~(0)]|0..(6) 

iF'μν()

=∫d4exp(iqx)0|[μ()ν(0)]|0;;(6) 

F'(p)Γμ(,')F'(p') 

=-∫d4xd4exp(ipx)exp(-i')

0|[ψ()μ(0)ψ~()]|0>...(6)

です。
 

これらは次のようなFeynman-diagramの表現を持ちます。
 

最後の頂点部分はproperなグラフである,としています。

 
まり,単一のラインを切断することでは,2つの互いに素な

部分グラフに分割することはできない,という意味です。

 次図は,それぞれ,電子と光子の自己エネルギー部分です。

(※ ,blob(陰影部)のみで両端の線は含みません。)

電子の伝播関数,光子の伝播関数は,diagram的には,

properな電子の自己エネルギー部分:-iΣ(p),proper

光子の自己エネルギー部分:ie02Πωγ(q)によって表現

されます。

電子伝播関数については,

 

あるいは,式で書けば,

iF' iFiF(iΣ)(iF)

iF (iΣ)(iF)(iΣ)(iF)..

です。
 

こうした総和によって,右辺を初項が iF()i/(-m0)

,公比が,{iΣ()}iF()=Σ()F()

=Σ()/(-m0)の「収束する」等比級数と見ることにより, 

無限等比級数の和として,

F'(p)1/{-m0-Σ()}..(7)

が得られます。
 

同様に光子伝播関数に対しては

式で書けば,

iF'μνiFμνiFμν(i02Πλσ)(iFσν)} 

iFμλ(i02Πλσ)(iFσω)(i02Πωγ)(iFγν).

です、
 

さらにDFμνを陽に書くと,  

iF'μν()

(iμν/2)(i02/2){iΠμν()}(i/2) 

(i02/2){iΠμλ()}(i/2){{iΠλν()}(i/2)

.. 

となります。
 

そこで,実際には寄与しない,スカラー光子や縦光子を無視すると, 

F'μν()(-gμν/2){(02/2)Πμλ()F'λν(),

または,

F'μν()(-gμν/2)(02/2)Πμλ()F'λν()

と書けます。
 

これから,{2μλ-e02Πμλ()}Fλν()=-gμν

です。
 

ここで,次の図のようなグラフ方程式が成立すると考えると, 

i02Πμν() 

(i02)(i)∫d4(2π)-4 

r[γμiF'()(k-p)νΓν(,k+q)iF'(k+q)] 

です。
 

これから,νΠμν() 

i∫d4(2π)-4 

r[γμiF'()[k-(k+q)]νΓν(,k+q)iF'(k+q)]
 

ここでW-T恒等式(Ward-Takahashi Identity): 

(k-p)νΓν(,)=SF'(k)-1-SF'(p)-1を用いると,
 

νΠμν() 

=-i∫d4(2π)-4 

r[γμνF'(k){F'(k)-1-SF'(k+q)-1}F'(k+q)] 

=-i∫d4(2π)-4r[γμF'(k+q)-SF'(k)]

です。
 

それ故,もしも-i∫d4(2π)-4r[γμF'()]が発散

せず有限値に留まるなら,積分変数kを,k → (k+q)とシフト

して変数置換しても,その値は同じはずですが,実際には紫外発散

します。

運動量空間の原点のシフトが結果を変えないように,繰り込み

処法の適切な切断による正則化がなされた,という仮定すると,

νΠμν()0 なる式に到達します。
 

添字μとνの交換対称性から,μΠμν()0も明らかです。
 

したがって,{2μλ-e02Πμλ()}Fλν()=-gμν

から,F'νμν() 

=-gμνF’()(縦光子部分=qμ,νに比例する項)

..(8)という形を仮定することができて,
 

Πμν()(-q2μν+qμν)Π(2) (8)
 

そして結局,DF'(q)1/[2{1+e0Π(2)}] (9)

が得られます。
 

伝播関数と頂点部分を定義した理由は,QEDのあらゆる

紫外発散量,こうした量の中に存在しているからです。
 

(1-1)Π(2),qのみに依存する2階のLorentz共変

テンソルですから,Πμν()gμνΠ2(2)+qμνΠ2(2)

という一般形を持つはずです。
 

そこで,μΠμν()0から,qについて,恒等的に, 

ν{Π(2)+q2Π(2)}0が成立することがわかります。
 

それ故, Π(2)=-q2Π2(2)ですから, Π2(2) 

単にΠ(2)と各ことにすれば,(8)式; 

Πμν()(-q2μν+qμν)Π(2) 

が得られます。
 

そこで,{2μλ-e02Πμλ()}F'λν()=-gμν 

,{2μλ(-q2μλ+qμλ)02Π(2)}F'λν()

=-gμν となります。
 

つまり,2{1+e0Π(2)} 'μν() 

=-gμν+qμλ0Π(2)F'λν()ですから, 

一般に q2{1+e0Π(2)}0として 

F'μν()=-gμν/[2{1+e0Π(2)}] 

+qμλ0Π(2)/[2{1+e0Π(2)}]F'λν()

です。
 

μλF'λν()=-qμλ/[2{1+e0Π(2)}] 

+qμλσ0Π(2)F'σν()/[2{1+e0Π(2)}]より, 

[1-e0Π(2)/{1+e0Π(2)}]×qμλF'λν() 

=-qμν/[2{1+e0Π(2)}] 

μλF'λν()=-qμν/[2{1+e0Π(2)}] 
 

以上から,  

F'μν()=―gμν/[2{1+e0Π(2)} 

-qμν02/[(2)2{1+e0Π(2)}] という一般形式

を得ました。  (1-1.終わり※)
 

 .私の1975年~1976年当時のノートは,ここで中途半端に終わり,

次に,いきなり第2章の,2.The VVA Traiangle Anomaly」へと

飛んでいます。

 
まあ,学生時代とは,そうしたもので,理解が不十分でも,1

は既に明らかになっているコトの確認に過ぎないし,それよりも

早く当時最先端の本題に入って,新しい発見への研究に取り掛か

らないと,いつまでも序文当たりに拘泥してマゴマゴしていては,

時代に乗り遅れる。というワケです。
 

しかし,私はわからないことを放置して取り敢えず先に進む

ということが平気な,"器用なこと"ができるタイプじゃなく,

 
結局,プロの研究者
にはなれず,普通の会社に就職して後,

世間も私自身もバブルが終わり,プータローになってから,

また,趣味で勉強を続けようとしたため,20年後の1995

頃から,この間を埋めるノートを作り,これに挟んでその頃

やっと読了したのでした。

 
私は,普通ではない変態的性格で,言わば執念のようなモノ

でしょうか?40年後の今も,また,蒸し返しています。
 

というわけで,ここで一旦終わり次回は,1995年(45歳)の

ノートの内容に続きます。
 

(参照文献):Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory (1970 Brandeis University Summer

Institute in Theoretical Physics) Volume

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