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2017年6月 4日 (日)

摂動論のアノマリー(6)

摂動論のアノマリーの続きです。
 

前回は,アノマリーの可能性を持つ三角グラフと,

その2光子入れ換えグラフの和が,次のRosenberg

の表現: (i02)(2π)-4σρμ 

2∫d4(2π)-4(1)r[{i/(1-m0)}(i0γσ) 

{i/(-m0)}(i0γρ){i/(2-m0)}(γμγ5)].

(54) で与えられること。
 

そして,これは,見かけ上1次発散しますが,

カレント保存の要請から,光子の場の強さ(電場,磁場)

のテンソル:(2ξε2ρ-k2ρε2ξ),(1ηε2σ-k2σε1η)

を通してcoupleすることを考慮すると,

  
運動量の2つのベキ
,その因子に費やされることが

わかるため,有効発散次数はDeff=-1なって収束積分

が残る。という内容のこと
 

を書いたところで終わりました。
 

さて,今回はその続きです。
 

実際問題として,カレントの保存を用いる最も簡単な

方法は まず,パリティとLorentz不変性の要請に矛盾

しないように軸性テンソル;σρμの最も一般的な形

を書き下す,ことです。
 

((6-1):σρμは、ε1σ,ε2ρ,および,ある

擬ベクトル(軸性ベクトル):εμcoupleしてLorentz

不変な振幅を構成するため,σρμ自体は3階の軸性

テンソル(axial-tensor)です。  

(6-1終わり※)
 

Lorentz不変なテンソルはスカラー:1とgμν

(および,μν,μν,μν)のみ, Lorentz不変な

軸性テンソルはεμνρσ(および,その成分の添字

を上下したもの)のみであることを考慮して,

  4
元ベクトル:
1とk2だけから作られ得る全ての

階共変テンソルを考えると.
 

σρμ(1,2) 

=A11τετσρμ+A22τετσρμ 

+A31ρ1ξ2τεξτσμ+A42ρ1ξ2τεξτσμ 

+A42ρ1ξ2τεξτσμ+A51σ1ξ2τεξτρμ 

+A62σ1ξ2τεξτρμ ..(55)


 と書けます。
 

ただし,j=Aj(1,2)(j=1,..6)はk1とk2 

Lorentzスカラー関数です。
 

※(62):軸性ベクトルであるためには,必ず,

ετσρμ,εξτσμなどの奇数個の積のk1とk2

による縮約が必要となりますが,

εμνρσεμνyτξ2στρξ2ρτσξとなる

ため,εを2つ以上掛けても,新しいモノを生み出さず,

また. 1ξ1τεξτσμ=k2ξ2τεξτσμ0 

なので,こうした項も含まれません。

  さらに,εの4つの添字を,
つ以上の同じk1かk2

縮約しても,同様に寄与はゼロです。
 

 共変不変擬テンソルεばかりの3つの積は既に 

階共変テンソルを作るため,12個の下添字のうち

9個 をk1,2の上添字で縮約しなければならず,

これてゼロでないモノを作る,のは不可能です。
 

したがって,考えられる軸性テンソルを与える式は 

不変擬テンソル:εを1つだけ含むモノ(εの1次式) 

だけです。,
 

しかも,kを3つ含む組み合わせは(55)の中の4種類 

だけでなくk1μ1ξ2τεξτρσのような項も考え

られますが,これは他の項の線型結合で表現できます。
 

つまり,1μ1ξ2τεξτρσ 

{()22τ(12)1τ}εξτρσ 

-k1ρ1ξ2τεξτσμ+k1σ1ξ2τεξτρμ 

です
 

これは,次のように陽な計算でわかります。
 

()ρ,σ,μが全て異なる場合,残る1つの添字

をηとすると, 

1μ1ξ2τεξτρσ+k1ρ1ξ2τεξτσμ

-k1σ1ξ2τεξτρμ 

(1μ1μ+k1ρ1ρ+k1σ1σ)2ηεμηρσ 

(1μ2μ+k1ρ2ρ+k1σ2σ)1ηεημρσ 

[{(1)2-k1η1η}2η

{(12)-k1η2η}1η]εμηρσ 

{(1)2(12)}2ηεμηρσ
 

※ただし.1行目だけ普通にξ,τで縮約和を取り,

行目からは,ρ,σ,μ,ηが全て異なるので,

これらが,それぞれ,0.1,2.3 のどれかに一致する 

として和を取りませんが,

  
そのときεμηρσは,+1かー1のいずれか
であり,

それ以外の項は全てゼロです。
 

()ρ,σ,μの少なくとも2つが同じ場合

右辺={()22τ(12)1τ}εξτρσ0

は自明であり,

左辺=k1μ1ξ2τεξτρσ+k1ρ1ξ2τεξτσμ

-k1σ1ξ2τεξτρμ もゼロです。
 

以上から,一般形は,(55)の形式であることがわかります。
 

(6-2終わり※)
 

そして,Bose対称性の要求から, 

σρμ(1,2)=Rσρμ(2,1)です。
 

故に,

1(1,2)=-A2(2,1),3(1,2)=-A6(2,1), 

4(1,2)=-A5(2,1) ..(56) です。
 

さらに,カレント保存の条件を課します。
 

σρμのμについては軸性ベクトルの添字で,00

なら,μ5μ0 ですが,σとρについては保存します。
 

すなわち,1σσρμ=k2ρσρμ0 です。
 

これからA1,2と残りのAjとの関係が得られます。
 

再掲載(55): σρμ(1,2) 

=A11τετσρμ+A22τετσρμ 

+A31ρ1ξ2τεξτσμ

+A42ρ1ξ2τεξτσμ 

+A42ρ1ξ2τεξτσμ+A51σ1ξ2τεξτρμ 

+A62σ1ξ2τεξτρμ 
  を参照すれば,
 

2ρσρμ0 ,

12ρ1τετσρμ+A32ρ1ρ1ξ2τεξτσμ 

+A42ρ2ρ1ξ2τεξτσμ0 を意味し,
 

1σσρμ0 ,21σ2τετσρμ

+A51σ1σ1ξ2τεξτρμ 

+A61σ2σ1ξ2τεξτρμ0  

を意味します。
 

それ故, 1(12)3(2)24,

2(1)25(12)6 (57) です。
 

ところで,(55)では,3,4,5,6,各々,

外線光子運動量の3つのベキが掛かった項

の係数です。

  そ
こで,これらは,有効発散次数:eff13=-2

で強く収束するFeynman積分と関係しています。
 

(6-3):(1.2)を任意のFeynman積分とする

とき,F(1,2)=f(0,0)+k1μ(∂f/∂k1μ)0

2μ(∂f/∂k2μ)0+k1μ1ν(2/∂k1μ∂k1ν)0

+・・・ とMaclaulin展開すると,
 

Feynman積分の発散次数がDなら,係数:(∂f/∂k1μ)0, 

(∂f/∂k2μ)0の発散次数は(D-1),

(2/∂k1μ∂k1ν)0のの発散次数は(D-2) etc.

となります。 (6-3終わり※)
 

一方,1,2,光子運動量の1次ベキのスカラー係数

なので,形式的にはDeff==1-10 であり,対数発散

するFeynman積分で表わされるはずです。
 

しかし,カレントの保存条件からその難を避けることが

できます。何故なら, 1,2,強収束する量:

3,4,5,6から(57)により,直接,計算で得られる

からです。
 

Feymanパラメーターを導入して,r積分を通常の方法

で実行すると,次式が得られます。
 

31,2)=-16π211(1,2),  

41,2)16π2{20(1,2)-I10(1,2)}58
 

ただし,st(1,2)}=∫01dx∫01-xdyxst 

/[(1-y)(1)2+x(1-x)( 2)22xy(12)-m02] 

59)です。
 

(6-4): (54)から余分な係数を両辺から計算で相殺すると 

σρμ2∫d4rTr[{1/(1-m0)}γσ 

{1/(-m0)}γρ{1/(2-m0)}(γμγ5)].. 

2∫d4

[r{(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γμγ5 

/[{(r+k1)2-m02}(2-m02){(r-k2)2-m02}]

です。
 

これに.Feynman積分の公式: 

1/(12..n)

(n-1)!0dz1dz2..dznδ(1-Σii)/(Σjjj)n 

をn=3 として適用します。
 

1/(abc)

2!0dx∫0dy∫0dzδ(1-x-y-z) 

/(ax+by+cz)3 ですから,

a=(r+k1)2-m02,b=2-m02,

c=(r-k2)2-m02として,
 

σρμ2×2! 01dx∫01dy∫01dz

∫d4δ(1-x-y-z) 

[r(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γμγ5 

/{(r+k1)2x+r2y+(r-k2)2z-m02(x+y+z)}3] 

です。
 

δ(1-x-y-z)により,dy積分∫を実行して 

y=1-x-zとし,yを消去すると,

   
分母の
{ }の中の計算値として, 

(r+k1)2x+r2y+(r-k2)2z-m02(x+y+z) 

(r+p)2+x(1-x)(1)2+z(1-z)(1)2 

2xz(12)-m02 を得ます。

ここでp=xk1-zk2 と置きました。
 

そこで,さらに,l=r+pでrを変数変換すれば, 

σρμ2×2!01dx∫01-xdz∫d4[r{・・・} 

/{2+x(1-x)(1)2+z(1-z)( 2)2

2xz(12)-m02}3} となります。
 

r{・・・},

r{(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γμγ5 

においてr=l-p=r-xk1+zk2を代入して

rを消去したものです。
 

この被積分関数の分子の)トレースを変数rのままで

書き下すと.

r{(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γμγ5 

=Tr{(1)γσγρ(2)γμγ5} 

+m02r{(1)γσγργμγ5+γσγρ(2)γμγ5}

です。
 

公式:r(γ5abcdef) 

4iεαβγδ{(ab)αβγδ(ac)αβγδ 

(bc)αβγδ(de)αβγδ 

(dc)αβγδ(db)αβγδ

(da)αβγδ(ea)αβγδ 

(eb)αβγδ(ec)αβγδ} 

を用いると,
 

r{(1)γσγρ(2)γμγ5} 

=Tr{γ5(1)γσγρ(2)γμ} 

4i{εασρμ{(-r2α-r2(1-k2)α 

(rk1)2α(rk2)1α(12)α}

+・・・ と長い式が続きます。
 

一方,

02r{(1)γσγργμγ5+γσγρ(2)γμγ5} 

4iεασρμ02{(r+k1)2-r2(r-k2)2} です。
 

これらに,r=l-p=r-xk1+zk2を代入すると, 

被積分関数の分母: {2+x(1-x)(1)2+z(1-z)( 2)2

2xz(12)-m02}3}はlの偶関数はので∫d4lの結果,

分子がlの奇数個の積となるものの寄与はゼロです。
 

そこで分子のトレース項からlの偶数個の積だけ残し, 

対称性から,lνλのような因子を(1/4)νλ2 

置き換えて整理します。
 

最終的に,σρμ(1,2) 

=A11τετσρμ+A22τετσρμ 

+A31ρ1ξ2τεξτσμ+A42ρ1ξ2τεξτσμ 

+A42ρ1ξ2τεξτσμ+A51σ1ξ2τεξτρμ 

+A62σ1ξ2τεξτρμ ..(55) 

の形の係数を比較すると,
 

3(1,2)32i01dz∫01-zdx 

∫d4[zx/φ(,1,2:,)].,

および,4(1,2)32i01dz∫01-zdx 

∫d4[(z-z2)/φ(,1,2:,)] 

を得ます。

  ただし,φ(,1,2:,)
 

{2+x(1-x)(1)2+z(1-z)(2)22zx(12)}3 

と置きました。
 

zをxに,xをyに変え,

公式:∫d4/(l-c+iε)3=π2/(2i)を適用すると,
 

3(1,2)}=-16π201dx∫01-xdy[xy

/{(1-y)(1)2+x(1-x)( 2)22xy(12)-m02}] 

=-16π211(1,2).
 

4(1,2)}16π201dx∫01-xdy[(2-x)t

/{(1-y)(1)2+x(1-x)( 2)22xy(12)-m02}] 

=16π2{20(1,2)-I10(1,2)}
 

となって確かに(58),(59)が得られます。 

(途中計算を相当省略しましたが自己チェックでは, 

どこも間違っていないはずです。)

 (6-4終わり※)

こうして,3(1,2),4(1,2)が求まれば, 

対称性から A5(1,2)=-A4(2,1), 

6(1,2)=-A3(2,1) を得ることができて,
 

(57)のA1(1,2)

(12)3(1,2)(2)24(1,2)により,

1(1,2) が得られます。
 

そしてA2(1,2)=-A1(2,1),または, 

2(1,2)(1)25(1,2)(12)6(1,2) 

から,A2(1,2)も得られ,σρμ(1,2),完全に

決まります。
 

軸性カレントのWard(-Takahashi)の恒等式の成立を 

チェックするためには,

(54)式:(i02)(2π)-4σρμ 

2∫d4(2π)-4(1)

r[{i/(1-m0)}(i0γσ){i/(-m0)}

(i0γρ){i/(2-m0)}(γμγ5)].

において,

  
右辺最後の(γμγ5)20γ5に置き換えた
 

同じ三角グラフに対する表現が必要です。
 

そこで,(i02)(2π)-420σρ 

2∫d4(2π)-4(1)r[{i/(1-m0)}

(i0γσ){i/(-m0)}(i0γρ)

{i/(2-m0)}(20γ5)]..(60)

,σρを定義します。
 

右辺を直接計算するとRσρ=k1ξ2τεξτσρ1,

を得ます。1,8π2000(1,2) ..(61)です。
 

(6-5): 以下,(61)を証明します。 

大筋はRσρμの計算過程と同様ですから,詳細は略します。
 

σρ401dx∫01dy∫01dz∫d4rδ(1-x-y-z) 

[r(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γ5 

/{(r+k1)2x+r2y+(r-k2)2z-m02(x+y+z)}3] 

401dx∫01-xdz∫d4[r{・・・} 

/{2+x(1-x)(1)2+z(1-z)( 2)2

2xz(12)-m02}3}
 

r{・・・}, 

=Tr{(1+m0)γσ(+m0)γρ(2+m0)γ5
  ただし,r=l-p=r-xk1+zk2  です。
 

r{・・・}4i01ξ2τεξτρσ

となることがわかります。
 

結局, σρ=-8π21ξ2τεξτρσ01dx∫01-xdy

/{(1-y)(1)2+x(1-x)( 2)22xy(12)-m02} 8π21ξ2τεξτσρ00(1,2)

を得ます。   (6-5終わり※)
 

これで,軸性クトルカレント:5μの4次元発散:μ5μ 

の三角グラフにおける寄与を評価できます。
 

μ5μ2i05に基づく軸性カレントWard恒等式 

(p-p')μΛ5μ(,p')20Λ5(,p')

-Σ()γ5-γ5Σ(p')ループグラフ(b)の寄与分:

(p-p')μΛ5μ()(,p')20Λ5()(,p')
 

が三角グラフにおいても正しいなら, 

(p-p’)μ=-(1+k2)μより, 

(1+k2)μσρμ20σρ..(62)

となるはずです。
 

ところが,実際に(55)(61)に求めた具体的計算を

代入すると(1+k2)μσρμ

20σρ8π21ξ2τεξτσρ ..63) 

を得ます。

  以上から,三角グラフの場合では,軸性カレントの
 

Wardの恒等式が成立しないことがわかりました。
 

この破れ(アノマリー)は,

「1次発散するFeynman積分では, ループを回る運動量

の原点を自由に平行移動しても不変という操作が不可能

である。という事実からの帰結です。

 ここから,
(63)式を示す訳注を追加するには記事が長く

なり過ぎるため,今回はここで終わり次回に回します。
 

(参照文献):Lectures on Elementary Particles 

 and Quantum Field Theory 

(1970) Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

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