摂動論のアノマリー(7)
摂動論のアノマリーの続きです。
前回は,軸性カレントのWardの恒等式(46);
(p-p')μΛ5μ(p,p')
=2m0Λ5(p,p')-Σ(p)γ5-γ5Σ(p')
が ,三角グラフにおいても成立するなら,
(62):-(k1+k2)μRσρμ=2m0Rσρとなる
べきなのに,
実際に,計算を実行すると,
(63):-(k1+k2)μRσρμ=2m0Rσρ+8π2k1ξk2τεξτσρ
となり,三角グラフの場合には,軸性カレントのWardの恒等式
は成立せず,破れ(アノマリー)が存在することがわかりました。
しかし,(63)式を示す訳注を追加するには長くなり過ぎるため,
ここで終わり次回に回します。
と書いて終わりました。
そこで,今回は(63)を証明する訳注(7-1)から始めます。
※(注7-1):Rσρμ(k1,k2)
=16π2 [{-(k1k2)I11+(k2)2(I20-I10)}k1τετσρμ
-{(k1k2)I11-(k1)2(I02-I01)}k2τετσρμ
-I11k1ρk1ξk2τεξτσμ+(I20-I10)k2ρk1ξk2τεξτσμ
-(I02-I01)}k1σk1ξk2τεξτρμ+I11k2σk1ξk2τεξτρμ]
故に,(k1+k2)μRσρμ(k1,k2)
=-16π2 [{-(k1k2)I11+(k2)2(I20-I10)}k1τk2μετσρμ
-{(k1k2)I11-(k1)2(I02-I01)}k1μk2τετσρμ
-{2(k1k2)I11-(k2)2(I20-I10)-(k1)2(I02-I01)}
×k1ξk2τεξτσρ です。
よって,-(k1+k2)μRσρμ(k1,k2)=16π2
{2(k1k2)I11-(k2)2(I20-I10)-(k1)2(I02-I01)}
×k1ξk2τεξτσρ です。
ところが,
2(k1k2)I11-(k2)2(I20-I10)-(k1)2(I02-I01)}
=∫01dx∫01-xdy
{y(1-y)(k1)2+x(1-x)(k2)2
+2xyk1k2)} /{y(1-y)(k1)2+x(1-x)( k2)2
+2xy(k1k2)-m02}]
=∫01dx∫01-xdy
[1+m02/{y(1-y)(k1)2+x(1-x)( k2)2
+2xy(k1k2)-m02}]=1/2+m02I00(k1k2)
です。
したがって,-(k1+k2)μRσρμ(k1,k2)
=8π2k1ξk2τεξτσρ+16π2m02I00(k1k2)k1ξk2τεξτσρ
が得られました。 (注7-1終わり※)
§2.2 Impossibility of Eliminating the Anomaly by subtraction
(引き算によってアノマリーを除去することが不可能なこと)
今度は,引き算(切断など)や,別の方法でRσρμを再定義して
(63)式のWard恒等式のアノマリーを削除したり、回避したり
することが可能か否か?という問いが直ちに生じます。
(※このアノマリーの存在は,本質的なのか?,それとも
見掛け上に過ぎないのか?という疑問が生じます。※)
もちろん,この方法を実行した際,新たなタイプのアノマラス
なモノ(異常項)を持ちこんでは意味がないことは,明らかです。
Rσρμのあるべき性質を保持するためには,引き算項は,
次の性質を持つ必要があります。,
(ⅰ)成分が3つの共変添字を持つ,軸性テンソルでなければ
ならない。
(ⅱ)光子変数:k1σ,k2ρの交換に対して対称でなければ
ならない。
(ⅲ)運動量変数:k1,k2の多項式でなければならない。
この要請は,一般化されたユニタリ性(質量殻の外でもS演算子
はユニタリであること)から導かれます。
それによると,Rσρμの外線変数に関する不連続性は
「Cutkoskyの法則」によって,中間状態に対する
Feynman振幅と関係付けられます。
(※ 中西襄 著(培風館)「n場の量子論」p236~237
によると,
「Cutkoskyの法則」とは,
「特異点のまわりの不連続性は,運動量示のFeynman
積分において,縮約図(reduced-graph)の内線に対応する
Feynman伝播関数を,それぞれそのまま,分母のデルタ関数
の(2πi)倍に置き変えた得られる積分によって与えられる。」
という規則です。
これは,外線変数が全て実数であるときは正しいことが,
homology論を用いて示されていますが.複素数の場合は
運動量積分をどう解釈するか?がまだ不明確です。※)
結局,(54)のfeynman積分は不連続性を除くと,収束するので
Rσρμの不連続性吸収部分虚数部分はアノマリーを持たない
ことがわかります。
※(注7-2):(54)のRσρμを示すFeynman積分式で,これを
複素数:q2の複素関数と考え,複素q2平面の実軸より上の
領域が物理的領域であるとした式を,
(-ie02)(2π)-4Rσρμ(q2+iε)
=2∫d4r(2π)-4(-1)Tr[{i/(r+k1-m0)}(-ie0γσ)
{i/(r-m0)}(-ie0γρ){i/(r-k2-m0)}(γμγ5)+iε]
と書きます。
よって,Rσρμ(q2+iε) =2∫d4r
(Tr{(r+k1+m0)γσ(r+m0)γρ(r-k2+m0)γμγ5}
/[{(r+k1)2-m02}(r2-m02){(r-k2)2-m02}+iε])
です。
この複素共役を取ると,
Rσρμ(q2-iε)=Rσρμ*(q2+iε)=2∫d4r
(Tr{(r+k1+m0) γσ(r+m0)γρ(r-k2+m0)γμγ5}*
/[{(r+k1)2-m02}(r2-m02){(r-k2)2-m02}-iε])
です。
(+iε)の付加は,外向き散乱状態(out-states)の境界条件
を持つ伝播関数である遅延(Retarded)Green関数に対応し,
(-iε)は,内向き散乱状態(in-states)の境界条件を持つ
伝播関数である先進(Advancsd)Green関数に対応します。
ところが, 前に見たように,,
Tr{(r+k1+m0)γσ(r+m0)}γρ(r-k2+m0)(γμγ5)}
は展開すると,4iεασρμを係数とするような純虚数なので
Tr{(r+k1+m0) γσ(r+m0)γρ(r-k2+m0)(γμγ5)}*
=-Tr{(r+k1+m0) γσ(r+m0)γρ(r-k2+m0)(γμγ5)}
です。
故に,Rσρμ(q2-iε)=Rσρμ*(q2+iε)
=-2∫d4r
(Tr{(r+k1+m0) γσ(r+m0)γρ(r-k2+m0)(γμγ5)}
/[{(r+k1)2-m02}(r2-m02){(r-k2)2-m02}-iε]
です。
したがって,
<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)out|j5μ(0)|0 >
=(2π)-3(4k10k20)-1/2(-ie02)(2π)-4ε1ρε2σ
Rσρμ(q2+iε) と書くと,
(2π)-3(4k10k20)-1/2(ie02)(2π)-4ε1ρε2σ
Rσρμ(q2-iε)
=-<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)in|j5μ(0)|0 >
となります。
これらを,辺々加えると,
(2π)-3(4k10k20)-1/2(-ie02)(2π)-4ερεσ
×{Rσρμ(q2+iε)-Rσρμ(q2-iε)}
=<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)out|j5μ(0)|0 >
-<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)in|j5μ(0)|0 >
一方, Rσρμ(q2+iε)=4∫01dx∫01-xdy∫d4l
[Tr(・・・)/{l2-x(1-x)(k1)2}+y(1-y)(k2)2
+2yx(k1k2)-m02+iε}3]
Rσρμ(q2-iε)
=- 4∫01dx∫01-xdy∫d4l[Tr(・・・)
/{l2-x(1-x)(k1)2}+y(1-y)(k2)2
+2yx(k1k2)-m02-iε}3]
Rσρμ(q2+iε)-Rσρμ(q2-iε)
=4Rσρμ(q2+iε)=2iIm[Rσρμ(q2+iε)]
=4∫01dx∫01-xdy∫d4lTr(・・・)
×[{l2-x(1-x)(k1)2}+y(1-y)(k2)2
+2yx(k1k2)-m02+iε}-3
+{l2-x(1-x)(k1)2}+y(1-y)(k2)2
+2yx(k1k2)-m02-iε}^-3]
不連続性は,対数発散する項(多価関数性)によるため,
そうした項の寄与を計算すると.
∫d4l[l2/{l2+f(x,y,k1,k2)+iε}3
+l2/{l2+f(x,y,k1,k2)-iε}3]
=∫d4l[1/{l2+f(x,y,k1,k2)+iε}2
+1/{l2+f(x,y,k1,k2)-iε}2]+(収束する項)
となります。
そして, ∫d4l[1/{l2+f(x,y,k1,k2)+iε}2
+1/{l2+f(x,y,k1,k2)-iε}2]
=-∫f(x,y,k1,k2)∞dc(∂/∂c)
∫d4l[{1/(l2+c+iε)2+1/(l2+c―iε)2}]
=2∫f(x,y,k1,k2)∞dc
∫d4l[{1/(l2+c+iε)3+1/(l2+c―iε)3}]
=-2∫f(x,y,k1,k2)∞dc
[π2/{2i(c+iε)}-π2/{2i(c-iε)}]
=2επ2∫f(x,y,k1,k2)∞dc{(1/(c2+ε2))(ε→
+0 )
これは明らかに収束します。つまり.Rσρμ(q2+iε)の
複素q2平面の実軸上の不連続性は有限値に収束します。
有限値に収束する積分においては,これに,-(k1+k2)μ
を掛けて∫d4r積分を実行する際,rの原点を有限値だけ,
ずらしても,結果は不変なはずです。
したがって, -(k1+k2)μIm[Rσρμ(q2+iε)]
=2m0Im[Rρσ(q2+iε)] が成立します。
すなわち,この有限な不連続性はアノマリーを持ちません。
このことから,適切な引き算項をSσρμ(q2+iε)と置くと,
-(k1+k2)μ[Rσρμ(q2+iε)-Sσρμ(q2+iε)]
=2m0Rρσ(q2+iε) ですから,
-(k1+k2)μIm[Sσρμ(q2+iε)]=0
が得られます。
また,Cutkoskiルールが信頼できるとすれば,
次図のグラフの内線でreducedグラフを作ると考えて,
1/{(r+k1)2-m02}
→ 2πiθ(-r0-k10)δ((r+k1)2-m02)
1/{(r-k2)2-m02}
→ 2πiθ(r0-k20)δ((r-k2)2-m02)
です。
この置き換えで不連続性は,
(2π)-3(4k10k20)-1/2(-ie02)(2π)-4ε1ρε2σ
×[Rσρμ(q2+iε)-Rσρμ(q2-iε)]
=(-ie02)(2π)-4×2∫d4r
[θ(r0+k10)δ((r+k1)2-m02)θ(-r0+k20)
δ((r-k2)2-m02)(2πi)2{1/(r2-m02)}
×Tr{(r+k1+m0) γσ(r+m0)γρ(r-k2―m0)(γμγ5)}]
=(-ie02)(2π)-4(-1)(2π)2×2∫d4p1d4p2
θ(p10)δ(p12-m02)θ(p20)δ(p22-m02)
δ4(p1+p2+k1+k1){(p1+k1)2-m02)}-1
×Tr{(p1+m0) γσ(p1-k1+m0)γρ(p2-m0)(γμγ5)}]
=(-ie02)(-2)∫d3p1d3p2{m02/(p10p20)}1/2(2π)-6
(2π)4δ4(p1+p2+k1+k1)(2m0)-2
Tr{(p1+m0)γσ(p1-k1+m0)-1γρ(p2-m0)(γμγ5)}]
です。
一方, Rσρμが,それ自身のみでユニタリ性を満たすとすれば,
ε1σε2ρ(-ie02)(2π)-4
[Rσρμ(q2+iε)-Rσρμ(q2-iε)]
=<γ(-.k1,ε1), γ(-.k2,ε2)out|j5μ(0)|0 >
-<γ(-.k1,ε1), γ(-.k2,ε2)in|j5μ(0)|0 >
=Σ±s1,±s2∫d4p1d4p2
{<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)out|e-(p1,s1)e+(p2,s2)out>
-<γ(-.k1,ε1),γ(-.k2,ε2)in|e-(p1,s1)e+(p2,s2)out>}
×<e-(p1,s1)e+(p2,s2)out|j5μ(0)|0 >
=-iΣ±s1,±s2∫d3p1d3p2(2π)4δ4(p1+p2+k1+k1)
<e-(p1,s1)e+(p2,s2)out|T^|γ(-.k1,ε1),
γ(-.k2,ε2)out>*
×<e-(p1,s1)e+(p2,s2)out|j5μ(0)|0 >
故に,
(-ie02)(2π)-4[Rσρμ(q2+iε)-Rσρμ(q2-iε)]
=(-ie02)(-2)∫d3p1d3p2{m02/(p10p20)}1/2(2π)-6
(2π)4δ4(p1+p2+k1+k1)Σ±s1,±s2
v~(p2,s2)iγσ(-i)(p1+k1-m0)γρu(p1,s1)
u~(p1,s1)γμγ5 v(p2,s2)
=(-ie02)(-2)∫d3p1d3p2{m02/(p10p20)}1/2(2π)-6
(2π)4δ4(p1+p2+k1+k1)(2m0)-2
×Tr{(p2-m0) γσ(p1+k1-m0)-1γρ(p1+m0)(γμγ5)}]
=(-ie02)(-2)∫d3p1d3p2{m02/(p10p20)}1/2(2π)-6
(2π)4δ4(p1+p2+k1+k1)(2m0)-2
×Tr{(p1+m0) γσ(p1+k1-m0)-1γρ(p2―m0)(γμγ5)}]
です。
こうして2つの方法で求めたRσρμの不連続性が完全に
一致しました。
そこで,RσρμはSσρμを差し引くことなく一般化された
ユニタリ性を満たします。これと,
-(k1+k2)μIm[Sσρμ(q2+iε)]=0 から,
Im[Sσρμ(q2+iε)]=0
と考えてよいと思われます。
以上から, Sσρμは複素q2平面,および,複素k12平面,
複素k22平面での整関数(entire function:複素平面上の任意
の点で正則な関数)であることがわかります。
したがって,無限遠点での真性特異性を除外すれば,
Sσρμは多項式となる必要があります。
(※zの多項式は無限遠点z=∞にのみ特異点(極)を持つ
整関数:収束半径が∞の無限ベキ展開可能な関数exp(az)
やsin(z)なども整関数ではありますが。。)
(注7-3終わり※)
条件(ⅳ):もし,U,V,Wは任意として
k1=ξU,k2=ξU+ξV+Wと置いて,ξ→∞とするとき,
引き算項:Sσρμは悪くても(lnξ)のベキ乗のξ倍で発散
しなければなりません。
この要求はWeinbergの定理から導かれます。
すなわち,Feynman-diagramの外線運動量が上述のような形で
∞に近づくとき,最大ベキは,ξDmaxでありDmaxは,そのdiagram
とその全ての部分diagramsの表面的発散が最大の次数です。
そして,この三角グラフでは,Dmax=1です。
Rσρμは,既にWeinbergの定理と無矛盾な漸近的挙動を持って
いるのでSσρμもまた,そうでなければなりません。
※(注7-4):Rσρμ(k1,k2)
=A1k1τετσρμ+A2k2τετσρμ
+A3k1ρk1ξk2τεξτσμ+A4k2ρk1ξk2τεξτσμ
+A4k2ρk1ξk2τεξτσμ+A5k1σk1ξk2τεξτρμ
+A6k2σk1ξk2τεξτρμであり,
A1(k1,k2)=-A2(k2,k1),A3(k1,k2)=-A6(k2,k1),
A4(k1,k2)=-A5(k2,k1),
A1=(k1k2)A3+(k2)2A4,A2=(k1)2A5+(k1k2)A6
そこでk1=ξU,k2=ξU+ξV+Wと置いて,
ξ→∞とするとき,
O(Rσρμ)=O(ξ3A3) or O(ξ3A4)であり.
A3=-16π2I11(k1,k2)
=-16π2∫01dx∫01-xdy
[xy/{y(1-y)(k1)2+x(1-x)( k2)2
+2xy(k1k2)-m02}3 なので.
O(A3)=O(ξ-2lnξ)です。
したがって,O(Rσρμ)=O(ξlnξ) (注7-4終わり※)
将来参照するため,V=0でk1+k2は有限,
ξ→∞のときの, Rσρμを評価すると,
Rσρμ(k1=ξU,k2=-ξU+(p-p'))
→ -8π2ξUτετσρμ+O(lnξ)..(64)
となることに着目しておきます。
※(注7-5): 何故なら,
-(k1+k2)μRσρμ=2m0Rσρ+8π2k1ηk2τεητσρ
W=k1+k2=(p-p’)で,
-WμRσρμ=8π2(ξU)η(-ξU+W)τεητσρ
+16π2m02ξU)η(-ξU+W)τεητσρI00(k1,k2)
-WμRσρμ=8π2UηWτξεητσρ+O(lnξ)
特に,Wμ=―gμλと置けば,
Rσρλ=-8π2Uηξεηλσρ+O(lnξ)
すなわち,Rσρμ=-8π2Uηξεημσρ+O(lnξ)
を得ます。 (注7-5終わり※)
(ⅴ)引き算項は,質量と同じ次元(単位)を持つ
必要があります。
(※k1,k2の次元が質量Mなので,[Rσρμ]=M3[I11]
=M3M-2=M です。)
(ⅵ)引き算項はベクトルカレントの保存を満足する
必要があります。
(※k1σRρμ=k2ρRρμ=0 → k1σSσρμ=k2ρSσρμ=0 )
しかし,実際に,これら6つの条件の全てを満足する引き算項
を見出すのは不可能であることがわかります。
これを見るのは容易です。
最初の5つの条件は,(k1-k2)τετσρμに比例する項
によってのみ満足されます。
しかしながら,この項は条件(ⅵ)を満足しません。
つまり,R'σρμ=Rσρμ+4π2(k1-k2)τετσρμ
と置けば,軸性カレントのアノマリー(異常項)のない
次のWardの恒等式を満たすもの:R'σρμを定義できます。
-(k1+k2)μR'σρμ=2m0Rσρ..(65)
しかし,これは,ベクトルカレントの保存を破ります。
k1σR'σρμ=-4π2k1σk2τετσρμ
k2ρR'σρμ=π2k2ρk1τετσρμ ..(66)
です。
Sσρμ=-4π2(k1-k2)τと置けば,カレントの保存
は破るが,アノマリーのないWardの恒等式をなすことに
成功した全ての理由は,,一方の発散アノマリー:
-k1μSσρμがもう1つのそれ,-k2μSσρμに置き換
わることです。
同様に,射影演算子を次のように導入して,
R"σρμ
=(gμν-qμqν/q2)Rνσρ+(qμ/q2)2m0Rσρ
(q=-(k1+k2)
R(3)σρμ
=(gσξ-k1σk1ξ/k12)(gρη-k2ρk2η/k22)Rξησρ
(67) と定義すれば
Rσρ=-8π2m0k1ξk2τI00 εττσρ より
qμR"σρμ=2m0Rσρ,
-(k1+k2) R(3)σρμ=2m0Rσρ が満たされ,
k1σR"σρμ=k2ρR"σρμ=0,
k1σR(3)σρμ=k2ρR(3)σρμ=0,も成立する
のですが,(1/q2)や,(1/k12)) (1/k22)の導入により,
疑似運動学的特異性が導かれ,(ⅲ)多項式性(整関数性)
が破れます。
結局,アノマリーは,式(63):-(k1+k2)μRσρμ
=2m0Rσρ+8π2k1ξk2τεξτσρ,それだけから,
存在するのではなく,上述の6つの要請の全てを同時的
に満足する再定義での三角グラフの寄与を見出すこと
が不可能であるという事実から,確かに存在するわけ
です。
アノマリーのカメレオン的性質を正しく評価する
ことに失敗すると,いくつかの文献におけるように,
アノマリーは除去できる.という誤った主張に帰着
します。
アノマリーは簡単に引き算で除去できるものでなく,
本質的存在であるという結論を得ました。
切りがいいので,今日はここで終わります。
(参照文献):Lectures on Elementary Particles
and Quantum Field Theory
(1970 Brandeis University SummerInstitute
in Theoretical Physics) VolumeⅠ
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