摂動論のアノマリー(9)
摂動論のアノマリーの続きです。
§2.4 Coordinate Space Calculation(座標空間の計算)
これまでは,専ら,運動量空間での扱いでした。
しかし,前回で述べた(68)式:∂μj5μ(x)=2im0j5(x)
+{α0/(4π)}Fξσ(x)Fτρ(x)εξστρ
によって,座標空間でもWard恒等式のアノマリーが
単純な形で表わされ得る,ことが示されました。
この事実は,座標空間でもアノマリーの導出と,その解釈
が可能であるべきことを,示唆しています。
座標空間での論議を進めるに当たって,光子については
量子化されていないc-数の電磁場:Aに話を限り,
軸性ベクトルカレント:j5μをspinor場:ψ~とψが離れた
時空点にある場の積とする近距離の"非局所カレント"
(bilocal current)の,局所極限とみなす,ことにします。
つまり,j5μ(x)=limε→0j5μ(x,ε).. (71a)
ただし,j5μ(x,ε)=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
×exp{-ie0∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)} ..(71b)
ここで,(71b)の∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)は.線積分:
∫x-ε/2x++/2dξλAλ(ξ)を意味します。
exp{-ie0∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)}は,ゲージ変換:
ψ(x)→ exp{-ie0Λ(x)}ψ(x),かつ,
Aμ(x)→Aμ(x)+∂μΛ(x) (72)
の下でのj5μの不変性を保証するために必要な因子です。
この指数関数因子を,微小な正の数εの1次のオーダー
まで展開し,さらに,運動方程式を用いてj5μの4次元発散
を計算します。
まず,j5μ(x,ε)=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
×{1-ie0ελAλ(x)}+(εの2次以上の微小項)となり,
∂μj5μ(x,ε)=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
[-ie0ελ∂μAλ(x)
-ie0{Aμ(x+ε/2)-Aμx-ε/2)}
+2im0j5(x,ε)+(εの2次以上の微小項)
すなわち,∂μj5μ(x,ε)
=j5μ(x,ε)ie0ελFμλ(x)
+2im0j5(x,ε)+(εの2次以上の微小項).(73)
を得ます。
※(注9-1):この結果は,電磁場Aμ(x)が線積分において,
経路依存であるから得られるのであって,しかも積分路が
直線分であることが本質的です。
以下に厳密に書き下します。
∂μj5μ(x,ε)={∂μψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
+ψ~(x+ε/2)γμγ5∂μψ(x-ε/2)}
×exp{-ie0∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)}
+ψ~(x+ε/2)γ5γμψ(x-ε/2)
∂μexp{-ie0∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)} です。
Dirac方程式:(iγμ∂μ-e0γμAμ-m0)ψ(x)=0 より,
γμ∂μψ(x)=-im0ψ(x)-ie0γμAμ(x)ψ(x)
∂μψ~(x)γμ=im0ψ~(x)+ie0ψ~(x)γμAμ(x)
故に, ∂μψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
=im0ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)
+ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)Aμ(x+ε/2),
かつ,ψ~(x+ε/2)γμγ5∂μψ(x-ε/2)
=im0ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)
-ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)Aμ(x-ε/2)
です。
そこでj5(x,ε)=ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)
×exp{-ie0∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)} と置けば,
∂μj5μ(x,ε)=2im0j5(x,ε)
+ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)
{Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)
-∂μ∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)} です。
ここで,もしも∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)が積分経路に
独立な関数なら,最後の{ }因子はゼロとなることを
示します。
何故なら,∂μ∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)
=limh→0{∫x+gλμh-ελ/2-ε/2x+gλμh+ελ/2
-∫x-ε/2x++/2}dξA(ξ)]/h
=Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2) です。
そこで,もし∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)が積分経路に
独立な関数なら.正確に,
∂μj5μ(x,ε)=2im0j5(x,ε) が成立します。
これは,ベクトル解析のStokesの定理によれば,
Aμの4次元rotation(回転::
rotν(Aμ)=∂νAμ-∂μAνが全てゼロの渦なし
ポテンシャル場(保存力場)で,スカラー場:φが存在
してAμ=-∂μφと表現できる場合です。
しかし,よく知られているように静電場でなければ,
ゼロでない,rotν(Aμ)=Fμνが存在して,それが
電場E,磁場Bを表わしています。
そこで,経路依存線積分の積分路を直線分:
lα={lα(τ){lα(τ)=lα(0)+εατ,
lα(0)=xα-εα/2,(0≦τ≦1)}と選択すると,
∫x-ε/2 x+ε/2dξA(ξ)=εν∫01dτAν(l(τ))
また,積分路を直線分:
Lα={Lα(τ)|Lα(τ)=Lα(0)+εατ,
Lα(0)=xα-δαμΔx+-εα/2,(0≦τ≦1)}
と選択すると.
∫x+Δx-ε/2x+Δx+ε/2dξA(ξ)
=εν∫01dτAν(L(τ)) です。
∂μ∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)
=limΔx→0(εν/Δx)
[∫01dτAν(L(τ))-∫01dτAν(l(τ))]
=limΔx→0(εν[∫01dτ[{Aν(L(τ))-Aν(l(τ))
/{L(τ)-l(τ)}]
=εν∂μAν+ενO(ε),
一方,Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)
=εν∂νAμ+O(ε),
故に, Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)
-∂μ∫x-ε/2x++/2dξA(ξ)
=εν{∂νAμ(x)-∂μAν(x)}+ενO(ε)
以上から,(73)式:
∂μj5μ(x,ε)=j5μ(x,ε)ie0ελFμλ(x)
+2im0j5(x,ε)+O(ε2)
を得ました。 (注9-1終わり※)
(73)の真空期待値をとると,単一の閉ループを通して,
軸性ベクトルカレントが,c-数の任意個の光子外場
とcoupleする相互作用を記述する生成汎関数の発散
方程式を得ます。
すなわち,∂μ<0|j5μ(x,ε)|0>
=ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2).. .(74)
です。
この右辺の第1項は,形式的にはεのオーダーであり,
前の「摂動論のアノマリー4」において,
∂μj5μ(x)=ψ~(x){im0+ie0γμAμ(x)}γ5ψ(x)
+ψ~(x)γ5{im0+ie0γμAμ(x)}ψ(x)
=2im0j5(x)...(41),
j5(x)≡ψ~(x)γ5ψ(x) ..(42)
として.素朴にWard恒等式を導出したときには無視される
べきものでした。
しかし,摂動グラフとしての注意深い計算によれば,
<0|j5μ(x,ε)|0>は,ε → +0 のとき,ε-1のオーダー
で発散し,それ故,実際には右辺の第1項の
<0|j5μ(x,ε)ελ|0>因子は,有限な寄与をします。
詳細計算を実行すると,
ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
={α0/(4π)}εμλξηFμλ(x) Fξτ(x)+O(ε)..(75)
となって,(68)の真空期待値に一致します。
こうしてアノマリーは運動方程式からのアプロ-チに
よっても得られることがわかります。
これは軸性ベクトルカレントに現われる特異な演算子積
を注意深く扱えばいえることです。
※(注9-2):j5μ(x,ε)は,外場との相互作用があるので
真空期待値はゼロではなく,<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)ελ|0>
×exp{-∫x-ε/2 x+ε/2dξA(ξ)} ですが,
これのεの2次以上のオーダーを無視します。
<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>
=(γμγ5)αβ<0|ψ~α(x+ε/2)ψβ(x-ε/2)|0>
=-(γμγ5)αβ<0|T[ψβ(x-ε/2)ψ~α(x+ε/2)|0>
=-Tr{γμγ5iSF'(-ε)}
Fermion伝播関数:SF'(x-y)を外場:Aμ(x)で展開
すると,自由Fermion伝播関数:SF(x-y)がベキで出現
します。
まず,φ(x)を,Klein-Gordon方程式(□+m02)φ(x)=0
を満たす自由複素スカラー場とすると,
その自由Feynman伝播関数ΔF(x)は,
iΔF(x)=<0|T{φ(x)φ*(0)}|0>
=<0|θ(x0)φ(x)φ*(0)+θ(-x0)φ*(0)φ(x)|0>
=θ(x0)∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(-ikx)
+θ(-x0)∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(ikx)
(ただし,ωk=(k2+m02)1/2) で与えられます。
そして,SF(x)は,ΔF(x)から
SF(x)=(iγμ∂μ+m0)ΔF(x)と表わすこともできます。
(※Green関数としては,(□+m02)ΔF(x)=-δ4(x)
ですから,(iγμ∂μ-m0)SF(x)=δ4(x)です。)
iΔ(+)(x)=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(-ikx)
と置くと,
iΔ(+)(x)=(2π)-2∫0∞dk[{k2(2ωk)-1exp(-iωkx0)}
×∫-11d(cosθ)exp(ikrcosθ)
=(2πi)-1(4πr)-1∫0∞dk[kexp(-iωkx0)
×{exp(ikr)-exp(-ikr)}/ωk]
=(2πi)-1(4πr)-1∫-∞∞dk[kexp{-i(ωkx0+kr)}/ωk]
=-(4πr)-1
(∂/∂r)[(2π)-1∫-∞∞dk[exp{-i(ωkx0+kr)}/ωk]
と書けます。
同様に,iΔ(-)(x)=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(ikx)
と置くと,
iΔ(-)(x)=-(4πr)-1(∂/∂r)
[(2π)-1∫-∞∞dk[exp{i(ωkx0+kr)}/ωk]
です。
ところで,f(x)=f(x0,r)
=(2π)-1∫-∞∞dk[exp{i(ωkx0+kr)}/ωk] とすると,
右辺=(2π)-1
∫-∞∞dk[exp{i(ωkx0+kr)}/(k2+m02)1/2]
であり,
k=m0sinhφと置けば,dk=m0coshφdφ
で,(k2+m02)1/2=m0coshφであり,k:-∞ → ∞
は,φ:-∞
→ ∞に対応するため,
f(x)=(2π)-1
∫-∞∞dφ exp{im0(x0coshφ+rsinhφ)
となります。
ここで,さらに,λ=x2=(x0)2-r2 と置きます。
(ⅰ) x0>0 かつ,x0>rのとき,
λ>0 なので,x0=λ1/2coshφ0,r=λ1/2sinhφ0と置くこと
ができて,
f(x)=(2π)-1∫-∞∞dφexp{im0λ1/2cosh(φ+φ0)}
=π-1∫0∞dφ exp(im0λ1/2coshφ) です。
故に. f(x)=(i/2)H0[m0λ1/2]
=(i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]} です。
(※ J0は0次Bessel関数,N0は0次HNeumann関数,
H0は0次Hankel関数です。)
(ⅱ) x0>0 かつ,x0<rのとき,
λ<0 なので,x0=(-λ)1/2sinhφ0,r=(-λ)1/2coshφ0
と置くことができて,
f(x)=(2π)-1∫-∞∞dφexp{im0(-λ)1/2sinh(φ+φ0)}
故に. f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]
=(i/2)H0[(m0(-λ)1/2]
=(i/2){J0([m0(-λ)1/2]+iN0[(m0(-λ)1/2]} です。
(※ K0は,0次の第2種変形Bessel関数です。)
(ⅲ) x0<0 かつ,|x0|>rのとき,
f(x)=(-i/2)H0[m0λ1/2]
=(-i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}
(ⅳ) x0<0 かつ,|x0|<rのとき,
f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2] です。
結局, λ=(x0)2-r2>0 なら
f(x)=(-1/2)N0[m0λ1/2]+(i/2)ε(x0)J0[m0λ1/2]
λ<0 なら,f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]
です。
したがってiΔ(+)(x)=-(4πr)-1(∂f/∂r)
=(2π)-1(∂f/∂λ)
={i/(4π)}ε(x0)δ(λ)+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}
{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
同様に,iΔ(-)(x)
={-i/(4π)}ε(x0)δ(λ)+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}
{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
故に,iΔF(x)=<0|T{φ(x)φ*(0)|0>
=θ(x0)iΔ(+)(x)+θ(-x0)iΔ(-)(x)なので,
iΔF(x)=={i/(4π)}δ(λ) +θ(λ){m0/(8πλ1/2)}
{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
を得ます。
数学公式によれば,J1[z]=z/2-1/2)(z/2)3+O(z5)
N1[z]=-1/(4πz)+{z/π-(1/π)(z/2)3}ln(z/2)
+(C/π){z-(z/2)3}+O(z5 lnz)+O(z5)
K1[z]={z+(1/2)(z/2)3}ln(z/2)+(C/2){z-(z/2)3}
+1/(4z)+O(z5)です。
これから,
iΔF(x)=={i/(4π)}δ(λ)-1/(4π2λ)
-{im02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)
+{m02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)+O(|λ|1/2ln|λ|)
よって,SF(x)=(iγμ∂μ+m0)ΔF(x)
=2iγμxμ[{1/(4π)}δ’(λ)+1/(4π2iλ2)
-{m02/(16π)}δ(λ)-{im02/(16π2λ)}
+O(|λ|-1/2ln|λ|)]
+m0{1/(4π)}δ(λ)-1/(4π2iλ)-{m02/(16π)}θ(λ)
+{m02C/(8π2)-{im02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)
+O(|λ|1/2ln|λ|) です。
以上から, SF(x)はxμ→ 0 のとき,
xμ(1/λ2)~ 1/x3のように挙動することが,
わかりました。
普通に光子の外場Aμ(x)とだけ相互作用する
iSF'(x)を,Aμ(x)とiSF(x)で摂動展開すると,
iSF'(x-ε/2,x+ε/2)=iSF'(-ε)
=iSF(―ε)
+(-ie0)∫d4y[iSF(x―ε/2―y)γαiSF(y-x―ε/2)
Aα(y)]+(-ie0)2∫d4yd4z[iSF(x―ε/2―y)γα
iSF(y-z)γβSF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]
+O(lnε)
上述のように,SF(x―ε/2,x+ε/2)=SF(―ε)
がεμ/{(-ε)2}2の陽に挙動することから,kを積分の
個数,fをFermion伝播関数の個数とするとき,次数勘定定理
に寄与する発散時数Dは,D=4k-3fとなります。
これは,D>0ならεμ→ 0 のとき収束し,D=0 ならlnε
のように発散し,D=-1,-2,-3.なら,それぞれ,ε-1,ε-2,
ε-3..と挙動するのを意味するのは明らかです。
ただし,<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>
=-Tr{γμγ5iSF'(-ε)} ですが,
左辺=<0|j5μ(x,ε)|0>
=(1/2)<0|[ψ~(x+ε/2),γμγ5ψ(x-ε/2)]|0>で
この右辺の真空:|0>で挟んだ場の交換子は,最低次
では,正規積(normal-producy)を取る定義となっていて
その寄与はゼロになり,
それ故,摂動展開の第1項のSF(-ε),すなわち,ε→0
でのtadpoleは,<0|j5μ(x,ε)|0>には寄与しません。
あるいは,実際に計算しても,
SF(-ε)=∫d4p(2π)-4 exp(ipε)/(p-m0)ですが
Tr{γμγ5/(p-m0)}=0より,
-Tr{γμγ5iSF(-ε)}=0 なので,明らかに,
-Tr{γμγ5iSF'(-ε)}には寄与しません。
また,O(lnε)も,<0|j5μ(x,ε)ελ|0>因子では,
ε→0で,ελO(lnε)→ 0 なので消えます。
さらに,第3項
=(-ie0)2∫d4yd4z[iSF(x―ε/2―y)γαiSF(y-z)
γβSF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]ですが,
<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)全体の荷電共役不変性から,
この項は寄与しないとわかります。
具体的にはj5μ(x,ε)は荷電共役変換C^に対して偶で,
一方,外電磁場:Aμ(x)は荷電共役に対して奇etc.ですが
ここでは,詳細を省略します。
残るのは,第2項=(-ie0)∫d4y
[iSF(x―ε/2―y)A(y)iSF(y-x―ε/2)Aα(y)]
=ie0 ∫d4pd4q(2π)-8 [exp(ipε)exp(iqx)
×{(p+q/2-m0)-1A(q)(p-q/2-m0) -1}]
です。
それ故,<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=-Tr{ελγμγ5iSF'(-ε)}
=(-ie0)Tr[ελγμγ5
∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)exp(iqx)
(p+q/2-m0)-1A(q)(p-q/2-m0) -1]
+O(εlnε)
=e0Tr[γμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)exp(iqx)
(∂/∂pλ){(p+q/2-m0)-1A(q)(p-q/2-m0) -1}]
+O(εlnε) です。
したがって,limε→0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=e0∫d4pd4q(2π)- 3exp(ipε)exp(iqx)
(∂/∂pλ)Tr[γμγ5(p+q/2+m0)A(q)(p-q/2+m0)
{(p+q/2)2-m02}-1{(p-q/2)2-m02}-1]
=4ie0 εαβγδgαμ∫d4q(2π)- 4exp(iqx)qδAγ(q)
∫d4p(2π)- 4(∂/∂pλ)
[pβ(p+q/2)2-m02}-1{(p-q/2)2-m02}-1]
が得られます。
ところで,∫d4p{∂f(p)/∂pλ}は,
もしもpμ=(p0,p1,p2,p3)を,p0=ip4として,
pμ=(p1,p2,p3,p4)と書いてEuclid化し,4次元
のGauss積分定理を適用すると,積分領域を半径Rの
4次元球の内部として,∫d4p{∂f(p)/∂pλ}
=(i2π2R2){pλ<f(p)>}|p|=Rを得ます。
ただし,|p|=Rは,Minkowski空間では,p2=-R2
を意味し,<f(p)>は半径Rの球面上のf(p)の
平均値を意味します。
故に,∫d4p(2π)- 4
(∂/∂pλ)[pβ{(p+q/2)2-m02}-1{(p-q/2)2-m02}-1]
=limR→∞[(i2π2R2)RλRβ(-R2-m02)-2](2π)- 4
=igλβ/(32π2) を得ます。
(※ ここで,対称性からlimR→∞(RμRν/R2)=(1/4)gμν
となることを用いました。 )
一方,∫d4q(2π)- 4exp(iqx)qδAγ(q)=i∂δAγ(x)
です。
したがって,limε→0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=-ie0εμλγδ{∂δAγ(x)}/(8π2)
=-ie0 εμλξηFξη/(16π2) と書けます。
以上から, limε→0<0|∂μj5μ(x,ε)|0>
=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>
+{e02/(16π2)}εμλξηFμλFξη
=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>
+{α0/(4π)}εμλξηFμλFξηとなり,
先の(74)式:∂μ<0|j5μ(x,ε)|0>
=ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2).
および,(75)式:ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
={α0/(4π)}εμλξηFμλ(x) Fξτ(x)+O(ε)
が確かに証明されました。 (注9-2終わり※)
今から,約40年前の1975~1976年当時のノートは,ここで
終わっています。
本当はこれからが本題で当時もノートをつくる時間は
なくても.結論まで読んで,内容の理解はしていたはずです。
長くなったし,切りがいいので,今日はここで終わります。
次からは,第3章で,1995年のノートに移ります。
(参考文献):Lectures on Elementary Particles
and Quantum Field Theory
(1970
Brandeis University SummerInstitute
in Theoretical Physics) VolumeⅠ
PS:他人事ではなく,いつ突然命が終わって,このブログも
最後の更新になるかもしれません。
できるだけ,心残りが無いようにということで,他人様に
見せようというより日記として.残せるだけの懐古的記録
を自己満足的につづる綴るのが惰性となっています。
昨年の6月に入院したとき,6/16日に右足の膝から下を切断
する手術をする。というのを断って10日ごろ退院してから
入院せずに,1年が経ちました。
医者は糖尿病で足を切断した人の平均余命は1年くらい
と言っていたので,切断しなければ,どのくらい?と
聞いたら私の場合は同じくらいでしょ。
と言っていたけど。。
もう1年経ったぞ。。まったくぅ。。。
そういえば明日は外来で病院に行く日だった。
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