« 摂動論のアノマリー(11) | トップページ | 摂動論のアノマリー(13) »

2017年7月12日 (水)

摂動論のアノマリー(12)

摂動論のアノマリーの続きです。
 

※余談ですが,私の現在の満身創痍状態は,70近い高齢に

加え30年前から持病の糖尿病で今は血管がボロボロに

なってるせいだと思います。
 

最近,健康番組を見ていると,糖尿病は身体にとっては諸悪

根源で,認知症の引き金になりやすく,また,高齢とともに

海馬が委縮して,記憶もまばらになっていくといわれますが,

 なぜか
私は幸か不幸か,脳だけは以前に増してよく働いて

くれてるようです。

 線香花火が落ちて消える直前の輝き
なのか?,はたまた

狂い咲きなのか?三振前の大当たりなのか? という

ところでしょうが。。。

 
ただし,残念なことに身体は動きませんし,さびしい

ことに五欲,煩悩は弱いです。※)
 

§3.3 Connection between γ5 -Invaliance and a Conserved 

Axialvectot current in massless Electrodynamics 

(γ5 不変性と質量ゼロの電磁力学における軸性ベクトル 

カレントの保存の間の関係)
 

さて,質量がゼロのスピノル電磁力学,すなわち,Lagrangian密度

,()=ψ~()(iγ∇―m0)ψ()(1//4μν()μν() 

-e0μ()...(1) で与えられる標準的なQED,

 荷電Fermion の質量がゼロ;00と仮定したケースにおいて,

軸性ベクトルの摂動三角グラフの効果を考察します。
 

この考察では,三角グラフがLagrangianの対称性と

保存カレ)ントの間の通常の理論的関係を破るという結論

に導く,ことが見出されます。
 

以前の議論におけるように,特異な現象がないとき成立する 

標準理論から始めます。
 

{Φ()}{Φ1(),φ2(),..}と∂λΦ},それぞれ,

正準場,その時空座標による微分係数とし,場の理論

次のLagrangian密度で記述されるとします。
 

すなわち,()({Φ},{λΦ}) .(88) です。
 

の不変性と保存カレントの関係を確立するために,

場に対して,次の無限小局所ゲージ変換を施します。
 

パラメータ:v(x)をv(x)~ 0(無限小)として,

Φj() → Φj()+v()j({Φ()})..(89)です。
 

これに対応するカレント:αをjα=-δL/δ(α) (90) 

で定義します。
 

このとき,場の運動を記述するEuler-Lagrange方程式 

を用いることによって.このカレントの4次元発散が, 

αα=-δL/δv ..(91) で与えられることが 

容易にわかります。
 

(12-1): (91)式を証明します。 

まず,Φj'=Φj+v()j({Φ})と置いて, 

Φjの変分をδΦj=Φj'-Φj=v()j({Φ}) 

と書きます。
 

すると,λΦj'=∂λΦj+∂λV・Gj+V・∂λj 

より,δ(λΦj)=∂λ(δΦj)=∂λV・Gj+V・∂λj 

です。
 

それ故,Φjの変分に対するの変分は, 

δ=({Φ’},{λΦ’})({Φ},{λΦ}) 

(/∂Φj)δΦj{/(λΦ)}δ(λΦj) 

(/∂Φj)v・Gj({Φ}) 

{/(λΦ)}(λv・Gj+v・∂λj) 

で与えられます。
 

一方,δ/δV={(v+δv)()}/δv 

(/∂Φj)j{/(λΦj)}(λj) 

です。
 

そして,カレントの定義により, 

α=-δ/δ(α)=-{/(αΦ)}jですから, 

αα=-∂α {/(αΦ)}j{/(αΦ)}αj 

です。
 

ここで.Euler-Lagrange方程式: 

α{/(αΦj)}(/∂Φj)0 を用いると, 

αα=-(/∂Φ)j{/(αΦj)}αj 

を得ます。
 

この最右辺は,確かに,上記の(-δ/δv)に一致

していることがわかります。 (12-1終わり※)
 

特に(89):Φj() → Φj()+v()j({Φ()}) 

のゲージ変換でv()=v(一定)であるとき∂αv=0 

,これは局所ゲージ変換(local gauge transformation) 

ではなく大域ゲージ変換(global transformation)です。
 

特に,大域ゲージ変換に対してが不変で,δ/δv=0 

のとき,カレントは,α=-{/(αΦ)}jで与えられ 

αα0 が成立します。(Noetherの定理)
 

そこで,Lagrangiian:を不変に保つ任意の連続変換に, 

1つの保存カレントが対応します。
 

そして,容易に証明できるように,カレントjαと関わる 

チャージをQ()=∫d30(,)とすると,

これは次の性質を持ちます。
 

すなわち,dQ()/dt=0。。(92a),および, 

[,Φj()]iGj()..(92) です。 

チャージ:Qは運動の恒量(constant)です。
 

(12-2) αα0 は,3次元空間のベクトル解析表現 

では,謂わゆる連続の方程式;∂j0/∂t+div0 を意味 

します。

  
故に,dQ/dt=(/dt)∫d30(,) 

=-∫d3(div)=-∫S=∞0 が

得られます。

  
次に,0=-{/(0Φj)}jですが, 

正準理論では,πj=∂/(0Φ)jはΦj

正準共役運動量(Canonical conjugate momentum) 

であり,正準量子化は,これらが同時刻正準交換関係: 

[πj(,),Φk(,)]=-iδjkδ3()

を満たすという,量子条件を課すことでなされます。
 

そこで,0()=-πj()j()ですから, 

[0(,),Φj(,)]ij(,)δ3()

です。

  
したがって,

[,Φj(,)]=∫d3[0(,),Φj(,)] 

i(,), つまり ,[,Φj()]i()

が成立します。 (12-2終わり※)
 

(12-3):変換の無限小パラメータ:vが一定の大域

ゲージ変換は第1種ゲージ変換,vが時空点xの関数である

v=v()ときの局所ゲージ変換は第2種ゲージ変換と

呼ばれる,ことがあります。

  
普通に,^―ジ変換に対して不変というと第2種ゲージ変換

対する不変性を指すことが多く,この変換に対して

不変なとき,系はゲージ対称性を持つといいます。

  
しかし,Noether定理が成立してカレントの保存則を得る

には,1種ゲージ変換に対してLが不変であれば十分です。
 

もっとも,2種ゲージ変換に対してLが不変であれば, 

特別な場合として,1種ゲージ変換に対してLが不変な 

ことは明らかですから,2種ゲージ変換に対してLが不変 

なら,同じカレント:jについて保存則が成立し運動の恒量 

としてチャージ:Qが存在します。
 

しかし,逆は成立しません。第1種ゲージ変換に対して系が

不変(が不変)であるとしても,2種ゲージ変換に対して

系が不変であるとは限りません。
 

例えば,大域的な座標原点の平行移動(時空点の平行移動)

に対して系が不変(が不変)な場合,保存チャージとして

場の4元運動量;μ=(0,)を得ます。
 

しかし,一般に,局所的平行移動については,この系は不変性

保てないではない,ことが多いです。
 

通常は,一様な平行移動不変性=空間の一様性(=座標原点

位置の取り方の自由)から運動の恒量として運動量;μ

,回転(ブースト)対称性=空間の等方性(座標軸の向き

の取り方の自由)から角運動量:μνが得られます。
 

しかし,余談ですが,巨大個数の気体分子が容器の中に密閉

されていて.内部で衝突を繰り返して熱平衡にあるような

熱力学,統計力学の対象となるような系では,空間の一様性

も等方性も満たされず,ただ.時間の一様性のみ存在して,

運動の恒量としては,系のエネルギ-:E=P0だけが存在

します。

  
そこで,統計力学を規定するのには,系の運動量Pも角運動量

も寄与せず,関係するのはEのみです。 

  (12-3終わり※)

 

さて,本文の最後の式;[,Φj()]i()..(92)

はQが,v=一定のゲ-ジ変換の生成子(generator)をなす

ことを示しています。

(12-4):任意の状態ベクトル:|α>に対して,ゲ-ジ変換 

を与えるユニタリ変換をパラメータ:vの関数としてU() 

とすると,この変換は,状態空間では,|α> → U()|α>

なることを意味します。
 

任意の|α>,|β>に対して,場Φjの行列要素は 

<α|Φj()|β> → <α|()Φj()()|β> 

と変換されます。
 

これが,古典物理との対応原理を満たします。
 

すなわち,vが無限小のとき,

<α|Φj()|β> → <α|()Φj()()|β> 

=<α|Φj()+vGj({Φ()})|β> です。
 

|α>,|β>は任意なので,

()Φj()()=Φj()+vGj({Φ()})ですが,

[,Φj()]i()を代入すると, 

Φj()i[,Φj()](1ivQ)Φj()(1ivQ)

です。

  
したがって,v~ 0では,()1ivQ ~ exp(ivQ)

です。vが無限小でないときは,()exp(ivQ),

このQを数学では,Lie群の元であるユニタリ変換:()

Lie代数といい,物理学では,ゲージ変換の生成子

(generator)といいます。
 

()がユニタリ(Unitary)演算子:, 

つまり,()exp(ivQ)=U-1()exp(ivQ) 

なので,Q=Qとなり,Qはエルミート(Hermite)演算子です。
 

これはQの期待値が実数であることを意味します。
 

(12-4終わり※)

  
次に,質量ゼロの電磁力学のケースに特殊化し,
  
変換;(89):Φj() → Φj()+v()j({Φ()}) 

 が,スピノル場:ψ()に対するゲージ変換;

 ψ() {1iγ5()}ψ()>..(93)である場合

 を考えます。

  
この変換はQEDLagrangian(1):

 ()=ψ~()(iγ∇―m0)ψ()(1//4μν()μν() 

 -e0μ(),00としたものを,vが定数のとき不変に

 保ちます。

  
そこでカレントを計算すると,α=-δ/δ(α)

 =-{/(αψ)}γ5ψ=ψ~γαγ5ψ..(94)です。

  
これは,既に論じてきた軸性ベクトルカレント:5α

 一致するので,:(68):μ5μ()2i05()

 {α0/(4π)}ξσ()τρ()εξστρ に従えば,
 
 

αα{α0/(4π)}ξσ()τρ()εξστρ..(95) 

を満たすはずです。
 

それ故,正準定式化と運動方程式を用いて得られた式(91): 

αα=-δL/δv が,この場合には破れています。
 

つまり,軸性ベクトルの三角グラフの存在のために,たとえ

質量ゼロの電磁力学のLagrangian(そして摂動論のあらゆる

次数)不変であろうと,γ5-変換(=Chiral変換)と関わる

軸性ベクトルカレントは保存しないことがわかります。
 

しかしながら,γ5-変換に対応するNoetherの保存カレント

が存在しないときでさえ,なお,(92):dQ/dt=0,

[,Φj()]i()の性質を持つ,変換の生成子:

Q=Q~5が存在する,ことがわかります。

これは興味深いことです。
 

このことを見るために,修正カレント:~5μを次のように 

定義します。

  
すなわち,

~5μ()=j5μ()(α0/π)ξ(ρτ)εξμτρ.(96)

です。

  
これは,

(95):μ5μ{α0/(4π)}ξσ()τρ()εξστρ 

を用いると,保存条件:μ~5μ()0..(97) 

を満足することがわかります。

  この
~5μ()は保存しますが,これは明らかに電磁場

のゲージの取り方に依存するため,観測可能なカレント

演算子ではありません。
  (※電場,磁場など,電磁力学で
実際に観測される量は

ゲージ不変であることが必要です。※)

 
(12-5)

~5μ()=j5μ()(α0/π)ξ(ρτ)εξμτρ 

なので,ゲージ変換:

ξ() → A'ξ()=Aξ()+∂ξΛ, 

かつ,ψ() → ψ'()exp{i0Λ()}ψ()

を考えると,

  ま
,ψ~() → ψ'~()=ψ~()exp{i0Λ()}

です。

  
それ故,ψ~γμγ5ψ → ψ'~γμγ5ψ'= ψ~γμγ5ψ, 

つまり,5μ ← j'5μ=j5μですから,5μはゲージ不変 

です。また,よく知られているように,場の強さは, 

τρ → F'τρ=Fτρを満たします。
 

しかし,ξ(ρτ)εξμτρ(1/2)ξτρεξμτρですが 

ξτρ → A'ξτρ≠Aξτρであり,これはゲージ不変 

ではありません。  (12-5終わり※)
 

それでも,~5μに関連するチャージを,

~5=∫d3~50()とすると,これは,

~5=∫d3{ψγ5ψ+(α0/π)(∇×)} 

と書けて,ゲージ不変であり,それ故観測可能量(observable)

です。
 

(12-6):~50=ψγ5ψ-(α0/π)ξ(ρτ)εξ0τρ 

=ψγ5ψ+(α0/π)εijki(k) 

=ψγ5ψ+(α0/π)(∇×) です。
 

そして,=∇×は磁場であり明らかにゲージ不変です。
 

また,+∇Λに対して,(∇×)AB  

(+∇Λ)AB(∇Λ)AB+∇(Λ)-∇ 

ですが,0,かつ,∫d3(Λ)0 より 

∫d3xA(∇×)はゲージ不変です。 

 (12-6終わり※)

 

Q~5については,(97):μ~5μ()0.により

dQ~5/dt=0 が成立し,また,生成子の条件:[

~5,ψ()]=-γ5ψ() が満たされます。
 

これは,スピノル場の同時刻正準反交換関係: 

{ψα(,),ψβ(,)}=δαβδ3()

を用いて容易にチェックできます。
 

切りがいいし,今日はここで終わります。
 

次回は,3章の最終節である,§3.4 Low Energy Theorem  

for 2i05()(低エネルギー定理)に入ります。
 

(参考文献):Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory

(1970 Brandeis University SummerInstitute in

Theoretical Physics) Volume

|

« 摂動論のアノマリー(11) | トップページ | 摂動論のアノマリー(13) »

114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 摂動論のアノマリー(12):

« 摂動論のアノマリー(11) | トップページ | 摂動論のアノマリー(13) »