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2017年7月15日 (土)

摂動論のアノマリー(13)

摂動論のアノマリーの続きです。

 
§3.4 Low Energy Theorem for 2i05()

(2i05()に対する低エネルギー定理)

 本章の最後に,アノマリ-のある軸性ベクトル発散の式 

(68):μ5μ()2i05 

{α0/(4π)}ξσ()τρ()εξστρ , 

真空から2光子の,素朴な発散:2i05の行列要素に

対する興味深い「低エネルギー定理」に誘導すること

を示します。

 
まず,第1に,上の式(68)は輻射補正のない三角グラフを

想定し,下図に示すようなグラフの寄与を考慮せずに導出

されたこと,に着目します。


 次数を勘定すると,これらのグラフもまた外線の本数

は同じ,単純な最低次の三角グラフと同じく.運動量

の1発散します。
 (※ ↑ 部分グラフの自己エネルギー
部分をくりこんて,

0 → m,e0 → eなどとした後も全体の三角グラフ

の1次発散は残ります。)

 
それ故,これら自身も軸性ベクトルカレントの発散に

おけるアノマリーに寄与しす。

 そうした
アノマリー項は,§2.2で,可能な引き算項に

ついて挙げたつの条件を満足するLorentz擬スカラー

でなければなりません。

 
そこで,これらも式(68)における右辺の最低次の三角

アノマリーと同一の形を持つ必要があることが容易に

わかる,と思います。

 そこで式(68)を次式に置き換えることによって三角

グラフの輻射補正に由来する三角アノマリーの可能性

を考慮に入れます。

 
すなわち,μ5μ()2i05

{α0/(4π)}(1+C)ξσ()τρ()εξστρ (100)

とします。

 
以下,上記の式(100)を「低エネルギー定理」の基礎となる

として用います。

 
先に進むため,真空:|0>と2光子状態:

|γ(1,ε1)γ(2,ε2)による(68)の行列要素を取ります。

 2
光子のKetベクトル:<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|の持つ

4元運動量k1,2偏光:ε12から形成できる唯一

の擬スカラーは1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρですから,

 (68),
または
(100)の各項の行列要素は全て,この表現形

因子として含むはずです。

 
そこで,<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ5μ|0

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) (101)

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|2i05|0

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) (101)

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0/(4π)}ξστρεξστρ|0

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2).(101)

と書くことができます。

 ここで,(1,2),(1,2),(1,2)はスカラー:

(1)2,(2)2,(12)の関数ですが,光子は共に実光子

なので,(1)2(2)20であり,結局,(12)のみの

関数です。

 等式
(100)の行列要素としての形は,,,Hによって

次のように単純な等式に書き直せます。

 
(1,2)=G(1,2)(1+C)Hk1,2) .(102)

です。

 この
(102)から[]亭エネルギー定理」を導出するため.,

次に定義する行列要素:

μ(41020)-1/2<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|5μ|0

についての注目すべき運動学的性質を用います。

 
前節で着目したように,Lorentz不変性,ゲージ不変性, 

Bose統計の要請は,μ次の一般形をとることを要求

します。

  これについては
「摂動論のアノマリー(6)」でのσρμ

 についての考察を参照します。


  
以下,煩雑さを避けるため,μを表現する係数を前に

σρμを表わすのに用いたのと,全く同じj(1,26)

で表わしますが,ここでは当然,前とは異なるものを

意味します。
 

μ=ε1σ*ε2ρ*[11τετσρμ+A22τετσρμ 

+A31ρ1ξ2τεξτσμ+A42ρ1ξ2τεξτσμ 

+A42ρ1ξ2τεξτσμ+A51σ1ξ2τεξτρμ 

+A62σ1ξ2τεξτρμ] .(103) 

と書くことができて

 
1(12)3(2)24,

2(1)25(12)6 であり,

3(k1,2=-6(k2,1,

4(1,2)=-A5(2,1) ,.(104)

です。

   
軸性カレントの発散の行列要素は,(1+k2)μμ

比例します。

  
ここで6つの4元ベクトル:,,,,,fによって

満足される恒等式を用います。

  すなわち,
(af)|bcde|(bf)|cdea|

(cf)|deab|(df)|eabc|

(ef)|abcd|=0 .(105) です。

ただし,(af)=a・f(aとfのスカラー積)

あり,|abcd|=aξτσηεξτση etc.

です。

  
※注13-1) (105)を証明します。
 

まず,|abcd|=aξτσρεξτσρ etc. 

明らかに4元ベクト:,,,dを列ベクトルとする

4×4行列の行列式に等しいです。

  
さらに,,,,,eを列ベクトルとする4×5行列

に,1(μ,μ,μ,μ,μ)を上に追加して5×5行列

つくり,その行列式を展開すると,  

μ|bcde|+bμ|cdea|+cμ|deab| 

+dμ|eabc|+eμ|abcd|を得ます。

  
この展開前の5×5行列式は.μが,0,1,2,3のどれでも

行が一致するので,ゼロです。

  
そこで両辺にfμを掛けてμで総和縮約すれば,

(af)|bcde|(bf)|cdea|(cf)|deab| 

(df)|eabc|+(ef)|abcd|=0 

が得られます。 (13-1終わり※),

  
さて,(af)|bcde|(bf)|cdea|

(cf)|deab|(df)|eabc|

(ef)abcd|=0 においてa=f=k1,b=k2,

c=k1+k2.d=ε1,e=ε2と置くことにより,
 

(1+k2)μμ

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ(106)

を得ます。(※ここは本文をそのまま直訳しただけです。) 

(13-2):上の式(106)を証明します。

  
(103)μを表わす式の両辺に(1+k2)μを掛けて, 

実光子条件:(1)2(1)20, および,光子の横波条件: 

1ε1=k2ε20 を適用します。

  
このとき,例えばk1τ1σετσρμのように,ετσρμ

同じ1が2個以上掛かった因子などはゼロと消えるため,
 

(1+k2)μμ 

(1+k2)μ[ε1σ*ε2ρ*{11τετσρμ

+A22τετσρμ+A31ρ1ξ2τεξτσμ

+A42ρ1ξ2τεξτσμ+A42ρ1ξ2τεξτσμ

+A51σ1ξ2τεξτρμ}]

  
=A1|1ε1ε2(1+k2)|+A2|2ε1ε2(1+k2)|

=A1|1ε1ε22|+A2|2ε1ε21| 

(1-A2)|1ε1ε22| となります。

  
そして,1(12)3(2)24(12)3, 

2(1)25(12)6(12)6 ですから 

(1+k2)μμ(3-A6) (12)|1ε1ε22| 

を得ます。

  
そして,|1ε1ε22|=ε1τ*ε2σ*1ξ2ρεξτσρ 

=ε1τ*ε2σ*1ξ2ρεξτσρ

=k1ξ2τε1*σε2*ρεξσρτ 

=k1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρですから,結局,

(106)が得られました。

  
どうも,本文に反して(106)を証明するだけなら,恒等式

(105)を使う必要はなかったようです。

   
しかし,ちなみに,一応,a=f=k1b=k2,

c=k1+k2.d=ε1,e=ε2を式(105)に代入して

みると.(1)2|2(1+k2)ε1ε2|

(21)|(1+k2)ε1ε21|

{(1+k2)1}|ε2ε112|

(ε11)|ε212(1+k2)|

(ε21)|k12(1+k2)ε1|0 

です。

  
(1)2(1)20, 1ε1=k2ε20 を用いると 

(21)(|2ε1ε21||2ε1ε21|

|ε2ε112|)0 です。


  
つまり,|2ε1ε21||2ε1ε21|

 |ε2ε112|を得ます。  (13-2終わり※)

  
さて,軸性ベクトルj5μ(真空 → 2光子)

行列要素:μ,

μ(41020)-1/2<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|5μ|0 

と定義されているので,

  
たった今証明した式(106):
 (1+k2)μμ

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ

,(1+k2)μ<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|5μ|0 

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

を意味します。

  
一方,(101):<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ5μ|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) 

の左辺:<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ5μ|0>は, 

明らかに,上記の,

(1+k2)μ<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|5μ|0 

の定数倍です。

  
つまり,

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) 

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

です。

  そして,
 (1,2)(12)のみの関数なので,

これをF(12)と書けば,(12) (12)

と結論されます。

   
故に,(0)0..(108) です。

   
これは,素朴な発散の(真空 → 2光子)の行列要素: 

(101): <γ(1,ε1)γ(2,ε2)|2i05|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) 

のG(1,2),
 

演算子:{α0/(4π)}ξστρεξστρの行列要素, 

つまり,(101): 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0/(4π)}ξστρεξστρ|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(1,2) 

のH(1,2)に関係付ける「低エネルギー定理」

を与えます。

   
すなわち,先の(102):

(1,2)=G(1,2)(1+C)Hk1,2) 

が成立しますが,これを,

(12)=G(12)(1+C)Hk12) 

と書けば,0=F(0)=G(0)(1+C)(0) 

が得られます。

  
したがって,(0)=-(1+C)(0) ..(109) です。
 

摂動論のゼロでない最低次では,Cは無視されます。 

(※何故ならCは三角グラフの高次補正の輻射補正係数です。)
 

(0)「摂動論のアノマリー(8)」で与えた,5μ,05,および

{α0/(4π)}ξστρεξστρに対するFeynmanルール: 

5μ() p←p' ⇔ γμγ5 

5()  p←p'  γ5 

{α0/(4π)}ξστρεξστρ  1,σ←k2,ρ  

⇔ (2α0/π)1ξ2τεξστρ 

から評価することができて,

(0)2α0/πです。故にG(0)=-2α0/π..(110)

です。

  ※
(注13-3:何故なら,1,2 0 の低エネルギー2光子

の極限上記のFeynmanルールから,

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0/(4π)}ξστρεξστρ|0 

(41020)-1/2(2α0/π)1ξ2τεξστρ 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(0)

と掛けるので,(0)2α0/π を得ます。

  
そして,(0)=-(1+C)(0)であり,1,2 0

低エネルギー2光子の極限では,C=0 ですから,

(0)=-2α0/π です。 (13-3終わり※)

(0)に対するこの結果は,もちろん,大した面倒も

なく,直接,式(61):σρ=k1ξ2τεξτσρ1,

1,8π2000(1,2) に与えられたGに対する

最低次の表現から導出できます。

  
すなわち,(0)

[iε1*σε2*ρ(i02)(2π)-4(20σρ)

/1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ]k1,k2 0

=e02(2π)-4(201) k1,k2 0

=-e02/(2π2)=-2α0/π.. (111)
 

となることがわかります。
 

(13-4):何故なら, 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|2i05|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ(12) 

,1,2 0 の低エネルギー極限では,
 

この最低次の寄与の表現:

(41020)-1/2iε1σ*ε2ρ*(i02)(2π)-4(20σρ) 

に等しいからです。  (13-4終わり※)
 

しかしながら,次節で詳細に見るように,「低エネルギー定理」 

の本当の重要性は,(0)に対する式(110)は.あらゆる輻射補正 

を注意深く考慮に入れても,なお",正確に正しい"ということ

です。(※ただし,(0)=-2α0/πではなく(0)=-2α/π

が正しいのですが。。)

  
これで第3章が終わったので,今日はここまでです。

  
参照ノートの日付は19951/26()です。2/1私の

45歳の誕生日直前です。

  お金になる研究者などの
仕事のためとかならともかく,

もっと人生イロイロあるのに,いい年をして何を真面目

に勉強してたんだか? 。まったく。。。
 
(※ 柔肌の熱き血潮に触れも見で,さみしからずや,

道を説く君(与謝野晶子)。。。)

 
さて,次回は,第4章,Absence of Radiative Corrections

(輻射補正の欠如)に入る予定です。

 
(参考文献):Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory

(1970) Brandeis University SummerInstitute in

Theoretical Physics) Volume

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