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2017年7月23日 (日)

摂動論のアノマリー(16)

  摂動論のアノマリーの続きです。
 

前回記事の最後では,
 

こうして,アノマリー項は三角グラフの特性のみに由来し,

それは通常のQEDのくり込み=輻射補正の影響を受けない

ことがわかりました。

    次は先述の「低エネルギー定理」もまた,輻射補正の影響
 

を受けない,ことを論じる予定です。
 

と書きました。
 

以下,その続きです。
 

さて,次に式(122):μ5μ()2i05() 

{α0^/(4π)}εξστ{ξσ()+FRξσ()} 

{τρ()+FRτρ()}

で示されていた,2i05()に対する「低エネルギー定理」

の考察に向かいます。
 

2光子と真空の間の(122)の両辺の項の行列要素を取り, 

次のように(12)の関数:Λ,Λ,Λを定義します。
 

すなわち,

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ5μ|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12)

(125)
 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|2i05|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12)

(125)
 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0^/(4π)}

(ξσ+FRξσ)(τρ+FRτρ)εξστρ|0

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12).

(125)

 とします。
 

すると,前の(101)(109)の手順を正確にたどれば,

同じように,「低エネルギー定理」が得られて,まず,,

Λ(0)=-HΛ(0)..(126)です。
 

さて,次は摂動のあらゆる次数まで,H(0)を計算します。
 

下に図示するように,Λ(12)に寄与する2つのタイプ

 diagramsがあります。


 

ここで,記号()を演算子; 

{α0^/(4π)}(ξσ+FRξσ)(τρ+FRτρ)εξστρ

の作用を記述するために用いました。
 

Diagram ()では上記の場の強さの演算子()が直接,光子

外線につながっており()のような光子散乱を含みません。
 

真空偏極部分と波動関数のくり込みの効果はα0^をα

の代わりに置き換えることに相当し,そこで次式を

得ます。

   
すなわち,Λ(0)()2α/π..(127) です。
 

Diagram ()では演算子()と自由外線2光子の間に

光子-光子散乱のグラフがあります。
 

軸性ベクトル発散のアノマリー項は,εξστρ因子の

反対称性の結果として(),(1+k2)に比例

します。
 

また,光子-光子散乱diaramの寄与は,それ自身12

比例します。
 

何故なら,前にも述べたように,光子のゲージ不変性

から各外線光子,それの場の強さテンソルを通して

coupleするからです。
 

そこで,Diagram ()の行列要素への寄与は

12(1+k2)に比例します。

  これを,(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ

Λ(12)と比較するとk12(1+k2),これより

kの高次なので,Λ(0)()0 ..(128) 

が得られます。
 

(16-1); まず,

(1/2)(1+k2)ξ(1+k2)τεξστρ=k1ξ2τεξστρ

ですから,(1+k2)ξ(1+k2)τの因子があると考えても

いいでしょう。
 

また,光子-光子散乱では散乱振幅はゲージ不変性を

満たす入射光子,または散乱光子の運動量をqとすると

頂点では (2μν-qμν)の形でcoupleします。
 

故にk1,2 →k1',2'の散乱なら,散乱振幅 

,(12μν-k1μ1ν),(22μν-k2μ2ν) , 

(1'2μν-k1'μ1'ν).(2'2μν-k2'μ2'ν) 

の因子を持つはずですが,

1,2 が外線の実光子なら12=k220 なので

(-k1μ1ν)(-k2μ2ν)(12)2の因子を持つ

はずです。
 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|

{α0^/(4π)}(ξσ+FRξσ)(τρ+FRτρ)|0}

(41020)-1/2(12)2(2+k2) です。
 

そこで,いずれにしろ,1,20に対して,上記行列

要素,(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ}

よりも1,2について高次でゼロに近づくため.
 

Λ(0)

lim1,20εξστρ[{<γ(1,ε1)γ(2,ε2)| 

{α0^/(4π)}(ξσ+FRξσ)(τρ+FRτρ)|0} 

/{(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ}]0 
 

です。(16-1終わり※)
 

(126).(127),(128)を結合すると,Λ(0)=-2α/π..(129) 

が得られます。
 

ここまでの議論では,切断Λを有限のままにしていました。
 

そこで,このGΛ(0)は正規化された場の修正Feynmanルール

で計算された行列要素です。
 

しかし2i05,あらゆる行列要素は,Λ → ∞の極限で

この切断Λには独立であることはわかります。
 

そこで,真空から2光子への軸性ベクトル発散のくり込まれた

行列要素:~(12)を次のように定義します。
 

~(12)limkΛ→∞Λ(1)..(130)
 

それ故,(129)から「低エネルギー定理」 

 ~(0)=-2α/π ..(131)を得ます。
 

ここで(130Iのくり込まれた行列要素の定義は,第1章

で記述したSkeltonグラフの構築によるものとは異なる

手続きのように見えることに気付きます。
 

Skelton展開によれば,素朴な発散式の任意のくり込まれた 

行列要素は,適切なSkeltonグラフを書き下し,その内線や 

頂点に,くり込まれた伝播関数や頂点,F'~,F'~,Γ~μ

とΓ~5を挿入付与することで,つくることができます。
 

これらの量は,Λに独立な極限では,次のように定義

されます。

F'~=limkΛ→∞2-1F',DF'~=limkΛ→∞3-1F 

Γ~μlimkΛ→∞2Γμ, mΓ~5limkΛ→∞02Γ5 (132)
 

すなわち,Skelton展開の構成は,まず第1,頂点部分と 

擬スカラー部分でΛ → ∞の極限をとり,それから

Skelton,その極限を代入することから成り立って

います。
 

しかし,(130):~(12)limkΛ→∞Λ(1)

では,これらの操作が逆向きに実行されています。

つまり,切断Λに依存する頂点部分や伝播関数を

Skeltonに代入し,それから最後にΛ → ∞の極限

を取っています。
 

この順序の交換は,得られた最終的なくり込まれた

行列要素の値に少しでも違いを起こし得るの

でしょうか?
 

単純な帰納的論旨によれば,この問いに対する答は

否定的です。
 

仮にj5の全ての行列要素に対して,摂動の(n-2)

まで,2つの手法が同じ答を与えると仮定します。
 

収束するSkeltonを持つn次の全ての行列要素に対し

2つの手法は明らかに一致しなければなりません。
 

次数勘定定理の式(11):D=43/2-Bによれば

発散する可能性があるSkeltonを持つ唯一のケースは

擬スカラー頂点それ自身だけであり,,そして真空から

2光子の行列要素です。
 

そうして.魏スカラー頂点部分Γ5自身に対しては,定義

によって2つの構成は一致します。
 

真空から2光子の行列要素に対しては2つの構成間の

可能な差異;ΔG~は次の性質を持たねば.なりません。
 

()ΔG~は光子運動量変数kとkの多項式でなければ

ならない。この要請は一般化されたユニタリ性から

導かれるもので,低次の行列要素(仮定によって(n-2)

次では2つの手法は一致する。)に対してn次のグラフ

の不連続性を関連付ける。
 

()ΔG~Weinbergの定理の要請を満足せねば

ならない。というのは,両方のつくり方から,得られる量

が共にそうだからである。

  このことは再び次のことを意味する。
 

=ξQ.2=-ξQ+ξR+Sとおけばξ → ∞

に対してΔG~は次の形を取る。
 

すなわち,ΔG~=k1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ

×(1,2の多項式)..(133)   である。
 

しかし,これはWeinbergの極限で,少なくともξ2で発散

しそれ故,性質()を破ります。
 

それ故,ΔG~0である他はありません。

結局,2つの構成法は一致し,帰納法によって全ての次数

で一致すると結論されます。
 

その結果,(131):~(0)=-2α/πの「低エネルギー定理」

は通常のSkelton展開から得られる,くり込まれた行列要素:

~にも当てはまり,そして,α2,α3..のG~(12)への2次

以上の全ての次数の寄与が(12)0では消える,という

注目すべき命題を得ました。
 

今日は,かなり短いですが§4.1が終わりなので.ここまで

にします。


  
次解は§4.2 Explicit Second-order calculations 

(摂動の2次の陽な計算)に入る予定です。
 

 (参考文献):Lectures on Elementary Particles and 

Quantum Field Theory(1970 Brandeis University  

SummerInstitute in Theoretical Physics) Volume

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