摂動論のアノマリー(17)(第Ⅰ部終了)
摂動論のアノマリーの続きです。
§4.2.Explicit Second order Calculation
(摂動論の2次の要な計算):(※ 本節で第4省は終わり)
今度は摂動論の2次までで低エネルギー定理(131):
G~(0)=-2α/πを,陽にチェックする計算を
手短かに概説します。(※4章は本節が最後です。)
我々は,(γ5 -γσ-γρ )の三角グラフの6個の最低次の
輻射補正を計算します。そして,それらが,結局,相殺して
ゼロとなることを証明します。
最初のステップは.くり込まれた量:Γ~μ(p,p'),Γ~5p,p'),
SF'~(p)を計算することです。
(※もちろん,摂動の2次のみの計算です、)
これをなす最も簡明な方法は,次の手順です。
(a)切断:Λのある場のFeynmanルールを用いて,くりこまれて
いないΓμ,Γ5.SF'を計算する。
(b) 次には,(6a):
iSF'(p)=∫d4xexp(ipx)<0|T[ψ(x)ψ~(0)]|0>,
(6b):iDF' μν(p)
=∫d4xexp(iqx)<0|T[Aμ(x)Aν(0)]|0>
' (6c);iSF'(p) Γμ(p,p')SF'(p’)
=-∫d4xd4yexp(ipx)exp(ip'y)
<0|T[ψ(x)jμ(0)ψ~(y)]|0>,
および, 式(12) p=mなら,δm-Σ(p)=0.,
式(13)::p → mなら,SF'(p) → Z2/(p-m).
を用いて,くり込み定数:m0,Z2を計算する。
(c) 式(132):
SF'~=limkΛ→∞Z2-1SF',DF'~=limkΛ→∞Z3-1DF'
Γ~μ=limkΛ→∞Z2Γμ, mΓ~5=limkΛ→∞(m0Z2Γ5)
の処方を用いて,Λ → ∞の極限をとって,チルダ(~)
の量を見出す.
です。
この手法の摂動2次までの計算は次の通りです。
Γ~λ(2) (p,p')=γλ+{e2/(16π2)}∫01zdz∫01dy
(2γλln[{z2m2+(1-z)μ2}}/D]
-NΛ/D-(2m2γλP1)/{z2m2+(1-z)μ2})
Γ5(2)(p,p')=γ5+{e2/(16π2)}∫01zdz∫01dy
(8γ5ln[{z2m2+(1-z)μ2}/D]
+γ5N/D+(4m2γ5P2)/{z2m2+(1-z)μ2})
SF'~(2)(p)={p-m-Σ(2)(p)}-1
Σ(2)(p)={e2/(16π2)}∫01zdz∫01dy
(2g1ln[{z2m2+(1-z)μ2}}
/{-p2z(1-z)+zm2+(1-z)μ2}]+g2{m2-P2(1-z)2}
/{-p2z(1-z)+zm2+(1-z)μ2}
+(2m2pP1)/{z2m2+(1-z)μ2})..(134)
です。
ただし,D=(y2z-yz)p2+[(1-y)2z2-(1-y)z]p'2
+2y(1-y)z2pp'+z2m2+(1-z)μ2} です。
ここに,Nλ=―2mγλ―2{(1-z+yz)p'-yzp}
×γλ{(1-yz)p-(1-y)zp'}
+4m{(1-2yz)pλ+(1-2z+2yz)p'λ}
N=4m2-4{(1-yz)p-(1-y)zp'}
×{(1-z+yz)p'-yzp}+2m(p-p')
P1=z2-2zーp2,P2=1-2z,
g1=4m-p,g2=4m-2p ..(135)
です。
また,量;μ2は架空の仮想光子質量の平方で,各輻射補正
グラフの対数的赤外特異性を避けるために与えたものです。
(※しかし,6つの輻射補正の和は項の相殺のために,結局
のところ全く赤外発散を持ちません。)
そして,我々の計算手法が正しいことのチェックとして,
まず,ベクトルカレントの通常のWard恒等式の2次の等式
が満足されることが示せます。
すなわち,(p-p')λΓ~λ(2) (p,p')
=SF'~1(2)-1(p)-SF'~(2)~ -1(p') (136)の成立を
チェックします。
同様に.恒等式:
0=2mΓ5(2)(p,p)+SF'~(2)^1(p) γ5
+γ5SF'~(2) -1(p') ..(137)が満たされることを
示せます。
これはアノマリーのある軸性ベクトルのWard恒等式
(70):(p-p')μΓ5μ(p,p')
=2m0Γ5(p,p')+SF'-1(p)γ5
+γ5SF' -1(p')-i{α0/(4π)}F~(p.p')
のp'=pのケースのくり込み後の式です。
※(注17-1):(136)のWard恒等式は,
Λ~λ(p,p')=Γ~λ(p,p')-γλ と置けば,
2次の項に対するものとして,
(p-p')λΛ~λ(2)(p,p')=Σ(2)(p)-Σ(2)(p')
と書けます。
そして,Λ~λ(2)(p,p')={e2/(16π2)}∫01zdz∫01dy
(2γλln[{z2m2+(1-z)μ2}}/D]
-NΛ/D-(2m2γλP1)/{z2m2+(1-z)μ2}) です。
これらを具体的に計算すれば,私のノートでは11ページに
わたる 長い計算となりますが,確かに成立することを陽に
示すことができてはいます。
しかし,これを本ブログ記事に転記するのは割愛します。
(137)についても同様なのですが,これは私のノートでも
省略していました。 (注17-1終わり※)
次のステップは,(134)と(135)を次図の単純なSkelton三角形
に 適用します。
これは最低次の三角グラフに,最初に与えた6つの輻射補正
グラフをプラスするものです。
(↑ ※Skeltonなので最初の6つのグラフの頂点補正や自己
エネルギー補正は1点に縮められています。これら6つに,
補正なしグラフを加えた全てを表わしています。)
最後のステップはG~(k1k2)をk1=k2=0 の近傍でTaylor
展開することです。
何故なら,G~(0)はこの展開で最初に消えない項であるからです。
一般のk1とk2に対する積分は,とても手に負えないものですが,
この展開での主要なTaylor係数は,それほど複雑ではなく実行可能
で,ここでの証明にはそれで十分です、
(2)((2)((2)(
いくつかの直線的な代数と積分により(131):G~(0)=-2α/π
によって要求されるように,G~(0)への輻射補正の寄与は,実際
に相殺されて消えることを示すことができます。
※(注17-2):輻射補正なしの単純三角グラフを,くり込まれた
量で評価すると, (e0→e,m0 → m)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)|2imj5|0>
=G~(k1k2)k1ξk2τεξτσρε1σ*ε2ρ*(4k10k20)-1/2
=2im0Rσρε1σ*ε2ρ*(-ie2)(2π)-4(4k10k20)-1/2
ただし,(-ie2)(2π)-42mRσρ
=2∫d4r(2π)-4(-1)Tr[{i/(r+k1-m)}(-ieγσ)
{i/(r-m)}(-ieγρ){i/(r-k2-m)}γ5].
で,Rσρは定義されています。
そして,計算の結果,Rσρ=k1ξk2τεξτσρB1,
B1=8π2mI00(k1,k2)となることが示されました。
これから輻射補正なしの寄与では,G~(0)(0)=α/2π
であることを得ました。
以下では,因子;2imε1σ*ε2ρ*(4k10k20)-1/2は除外して
考察します。
そして,6つのグラフの輻射補正のRσρ寄と同様な寄与因子
を順に,R1,R2,..R6とすれば,
(-ie2)(2π)-4{e2/(16π2)}R1
=-2∫d4r(2π)-4(-1)
Tr[{i/(r+k1-m)}(-ieγσ){i/(r-m)}(-ieγρ){
i/(r-k2-m)}Λ~5(r+k2.r-k1)].
(-ie2)(2π)-4{e2/(16π2)}R2
=-2∫d4r(2π)-4(-1)
Tr[{i/(r+k1-m)}(-ie0γσ){i/(r-m)}(-ieγρ)
{i/(r-k2-m)(-iΣ~(r-k2)γ5)]
etc..です。
これらは,k1,k2,の多項式となり,k1=k2=0 のまわりで
Taylor展開すると,k1α,k2αの係数はそれぞれ,
(∂Rj/∂k1α)00 ,(∂Rj/∂k2α)00 (j=1,2,..,6)です。
添字:00 は(k1,k2)=(0,0)を意味します。
そして,これらRjはの計算結果は
Cjk1k2)k1ξk2τεξτσρなる形になるはずです。
そこで,例えば,k1αの係数:(∂Rj/∂k1α)00は.
Cj(k1k2)k2τεατσρ+{∂Cj/∂(k1k2)}
k2αk1ξk2τεξτσにおいて,k1=k2=0 とするもの
ですからゼロです。
そこでk1,k2の1次の係数は,全てゼロであることが
わかります。
一方,k1αk2βの係数:(∂2Rj/∂k1α∂k2β) 00は,
Cj(k1k2)εαβσρ+なk1,k2の1次以上の項)において
k1=k2=0 としたものなので,Cj(0)εαβσρとなり.これに
よるkの2次の項:Cj(0) k1αk2βεαβσρはRjのTaylor
展開で消えない最初の項です。
G~(0)へのの寄与は,これをk1ξk2τεξτσρ(4k10k20)-1/2
で割って,k1→ 0,k2→ 0の極限を取って得られるるので,
k1,k2のこれ以上の高次の展開項 の寄与はゼロです。
以上から,6つの(∂2Rj/∂k1α∂k2β) 00を求めて総和
すると,相殺してゼロになることを示せばよいことが
わかります。
これら6つのグラフの寄与を計算して,これらが最終的
に相殺してゼロになることを,昔のノートには確かに示して
ありましたが,これにはノートの実に20ページにわたる冗長
な計算を要していました。
当時,45歳とはいえ,気持ちは今より若かったので根気が続いた
のだろうと思います。さすがに,今さら詳細をfollowし,チェックしながら全部読み返す気にはならなかったので,これも割愛します。
(注17-2終わり※)
この項目のノートでの終了期日は1995年3月3日(金)となって
いました。
これで,A4ルーズりーフを閉じた私のファイルノートの1冊
が119ページで終わり,次からは2冊目に入り,第5章以下の重要
な応用の記述に移ります。
そこで今日は少し急いで計算も省略しましたが,ここまで
で終わりにします。ここまでをシリーズの第Ⅰ部とし,次
回の「摂動論のアノマリー(18)」からは第Ⅱ部という副題
を付ける予定です、
(参考文献):Lectures on Elementary Particles and
Quantum Field Theory(1970 Brandeis University
SummerInstitute in Theoretical Physics) VolumeⅠ
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