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2017年8月11日 (金)

摂動論のアノマリー(19)(第Ⅱ部:2)

  摂動論のアノマリーの項目:

§5.1 The σ–models(σ-モデル or σ模型)の続きです。
 

さらなる作業を進めるのために,PCAC方程式

(141):μ5μ=-δ/δv=-(μ12/0)π

次のように書き換えるのが便利とわかります。.
 

すなわち,μ5μ=-(μ12/0)(3π)1/2πr ..(144)

tと書きます。(※つまり,π=(3π)1/2πrでZ3πとπr

を定義します。)
 

次に,π中間子の崩壊振幅:πを次式で定義します。 

<π()|5λ|0>=(20)-1/2(iλ/μ2)π/2.(145) 

ここで,μはπ中間子の質量です。

 

(※σモデルの完全版では,πの中で,中性軸性ベクトル

カレントが荷電アイソスピンパートナーを持つため, π

,荷電π中間子の弱い崩壊振幅に比例する量であること

がわかります。)
 

(19-1);前節で扱った,電気的に中性の軸性ベクトル

カレントだけでなく,荷電軸性ベクトルカレントと荷電中間子

を含む完全な(full)バージョンのσモデルは,荷電独立性

(強い相互作用のアイソスピン対称性)がこのモデルでも維持

されると仮定し,核子のアイソスピノル場:Ψ=(ψp,ψn),
 

および,π中間子のアイソベクトル場;π(π1,π2,π3)

を含む系を考えます。σについては電気的に中性の

アイソスカラーとします。

  
π中間子の粒子状態は, 

|π>=(|π1>+i|π2>)/2, 

|π>=(|π1>-i|π2>)/2,|π0>=|π3 

で定義されます。
 

1粒子状態は,|π>=(π)|0(k=1.23)のように, 

真空:|0>に場の生成演算子(π)を作用させて得られる 

ので,

  
上の粒子状態の表現は,粒子の消滅演算子から成る場:
 

πの表現としては,

π(π1iπ2)/2, π(π1iπ2)/2,  

π0=π3 と書けることを意味します。
 

今対象としているカイラルゲージ変換を,無限小の局所

ゲージパラメータv(),アイソ空間のベクトル()

として拡張,一般化します。

この意味で前節では,π(π1,π2,π3)の中性成分:

π3=π0のみが,π3 →π3+v(01+σ)と変換を受けた

のに」対して,これを.π π(01+σ) へと拡張

します。
 

これと連動して,アイソスピノル;Ψについては,Pauli

スピン回転σ行列をアイソ空間ではτ(τ1,τ2,τ3)

表記して導入し,アイソ空間の3次元ベクトルの増分

パラメータ2成分スピノルの増分パラメータ(τv)

へと変換して,前節でスピノルのカイラルゲージ変換が,

ψ → {1(i/2)γ5}ψであったのを,

Ψ→ {1{(i/2)γ5(τv)}Ψ へと拡張します。
 

σについては,σ → σ+vπが,σ → σ+(π)

変わるだけとします。
 

Lagrangian密度:,基本的に(138),ψをΨに,

πをπに書き換えるだけですが,ψとπが同時に変換を

受ける唯一の項:(-ψ~0iπγ5ψ)については,これを

{-Ψ~0i(τπ)γ5Ψ}に書き換えます。
 

よって,完全版σモデルでは, 

=Ψ~[iγμμ-G0({0-1+σ+i(τπ)γ5}]Ψ 

+λ0{4σ240σ(σ2π2)+g02(σ2π2)2} 

(μ02/2)(20-1σ+σ2π2) 

(1/2){(π)2(∂σ)2}(μ12/2)(π2+σ2) 

です。
 

この場合,軸性ベクトルカレントもアイソベクトルで,

それを太字で5μと表わせば,5μ=-δ/(μ) 

(1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(μπ)π(μσ)

+g0-1(μπ).で与えられます。
 

そして,その4次元発散は, 

μ5μ=-δ/δ=-(μ12/0)π です。
 

中性のπ0に対する先の軸性カベクトルカレントj5μ()

,今の5μ()のアイソ第3成分です。
 

それを,5μ(3)()と表わし,(145) 

<π()|5μ|0>=(20)-1/2(iμ/μ2)π/2 

<π0()|5λ(3)|0>=(20)-1/2(iμ/μ2)π/2

書き直します。
 

前述したように,荷電π中間子場は,

π(π1iπ2)/2,π(π1iπ2)/2,であり,

粒子状態は,|π>=|π1iπ2/2,

|π>=|π1iπ2/2 です。
 

πの崩壊におけるレプトン関連以外の因子:π→ 真空

という行列要素の向きを逆転させると,真空 → πが対応

するはずです。つまり,|π>=|π1iπ2/2に対し,

<π|=<π1iπ2|/2 と考えられます。
 

そして,5μ(3) (1/2)Ψ~γμγ5τ3Ψ+σ(μπ3)

-π3(μσ)+g0-1(μπ3)ですが,これをアイソ回転する

ことにより,5μ() (1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(μπ)

-π(μσ)+g0-1(μπ)となるはずです。

  
ただし,τ(τ1iτ2)/2,π(π1iπ2)/2 

そこで,<π()|5μ()|0 

=<{(π1 iπ2)/2}()|(5μ(1) i5μ(2))/2|0 

(20)-1/2(iμ/μ2)π/2 となります。

ここで,k=1,2,3の各々のπkは同じkのカレントj5μ() 

とのみcoupleできて,kに関わらず, 

<π|5μ()|0>=(20)-1/2(iμ/μ2)π/2 

となる。という対称性を仮定しました。
 

因子:(iμ),πの崩壊相互作用部分の行列要素が, 

<πi()|0-1μπ|0>=(20)-1(iμ)(2)

なる形で与えられるという現象論的推論から出ます。
 

そして,σを含む項の寄与は,先に述べた通り,項がπと

交換するので,<0|σ|0>からゼロです。

(19-1終わり※)
 

式(145):

<π()|5μ|0>=(20)-1/2(iμ/μ2)π/2.

の発散を取り,(144):μ5μ=-(μ12/0)(3π)1/2πr

を代入して,<π()|πr |0>=(20)-1/2を用いる

と次式を得ます。
 

すなわち,-(μ12/0)(3π)1/2=fπ/2..(146)です。
 

(19-2):(146)の証明です。 

(145)から,4次元発散を取ると, 

<π()| μ5μ|0>=(20)-1/2(2/μ2)π/2

です。何故なら.0|^()^()μexp(iqx)|0

から(iμ)因子が出てくるからです。
 

そして,πが実粒子(外線),2=μ2なら 

<π()|μ5μ|02=μ2(20)-1/2π/2 

です。
 

この右辺は,丁度,μ5μ=-(μ12/0)(3π)1/2πr 

,<π()|と真空:|0>で挟んだものに等しく,

<π()|πr |0>=(20)-1/2より,これは,

-(μ12/0)(3π)1/2<π()|πr|0

=-(μ12/0)(3π)1/2 (20)-1/2 に等しいことが

わかります。

  
つまり,-(μ12/0)(3π)1/2 (20)-1/2

(20)-1/2π/2  を得ます。 

  
(192終わり※)
 

そこで,(144):μ5μ=-(μ12/0)(3π)1/2πr

くり込み定数は除去されて,このPCAC方程式を

完全に物理量だけで書き表わせます。 

すなわち,μ5μ(π/2)π..(147) です。
 

(19-3)PCACの意味とfπの意味
 

(岩波講座)現代物理学の基礎(11)「素粒子論」より 

|π()>=|π|π|π()

+ΣNN~|NN~><NN~|π()> と展開します。
 

崩壊:π→μ+νe~,第1項の振幅と見ても,第2項

の振幅で見ても同じであると仮定します。

(つまり,|π->の{μν~>への崩壊は,|NN~の中間状態

を通しての反応以外にはないと考えるわけです。)
 

|π()>=|π|π|π(), 

かつ, |π()>=ΣNN~|NN~><NN~|π()

であって右辺第1項も第2項も同一とします。
 

右辺の第1項は,現象論的相互作用:

π(μπ){μ~γμ(1-γ5)ν}による摂動

Hamiltonian:π→μνの1次近似の崩壊振幅であり,

これは <Hπ→μν

(/2)∫d4x<0|μπ|π() 

×{μ~()γμ(1-γ5)ν()}なる計算式で評価

されます。
 

ここで,0|μπ|π()

(2π)-3/2(20)-1(iμ)πで係数:πを定義して

おきます。

  
この現象論的弱い相互作用での最低次近似

によるπ→μ+νe~の崩壊率の計算結果と実験値

の比較,1/τπ→μν{2π2/(8πμ)}(μ/μ)2

3.84×107sec-1 によって,πの大きさが,

|π|0.97μと評価されます。 

(ここで,μはπの質量,μはμの質量です。)

 

(※※ 本ブログの20163/21の過去記事; 

「弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)(12)」では,

荷電π中間子の崩壊について記述しました。


 

そこでは,今のaπ,単にaと表記され|| 0.87μ

または,|| 0.93μと評価されました。
 

||,1つの核子あたりのπ中間子の雲の 存在

確率振幅を意味する量と考えられています。※※)
 

レプトンカレントの因子:{μ~γμ(1-γ5)ν},^μ

で表わせば,π→μ+νe~の崩壊振幅は, 

<μν~|^μ{0><0|(Gaπ/2)(μπ)|π

<π|π()と表わされます。
 

これが,|π()>=|π|π|π() 

+ΣNN~|NN~><NN~|π()>における右辺

1の寄与です。

  
一方,2項の寄与は,ΣNN~<μν~|^μ{0 

0|(Gaπ/2)(μπ)|NN~><NN~|π() 

=<μν~|^μ{0

0|(/)(Gaπ/2)5μ()|π() 

です。

πの方のカレント相互作用の寄与:(Gaπ/2)(μπ)

.軸性ベクトルカレント部分 ;

(Gaπ/2)(/)5μ()のみに対応すると見るのは

π-が擬スカラーなので,相互作用:μπは軸性ベクトル

であり,そこでNのV-A弱カレントのAのみの寄与に相当

すると考えられるからです。
 

それ故,1項=第2項という仮定が満たされるためには, 

=g/として,π0|μπ|π() 

=r0|5μ() |π()> が必要十分です。
 

この式の左辺の4次元発散を取れば,  

0|μ5μ() |π()

=aπ0|□π|π()=-aπμ20|π|π()

となります。
 

ここで,自由π中間子の運動方程式:(□+μ2)π0

用いました。
 

それ故,π/2=-aπμ2/(r=g/ 

と置けば,μ5μ(π2)πなる式を得ます。
 

これが,荷電π中間子でなく中性のπ0中間子の場合は 

μ5μ(π/2)π0 ですから,これで定義された

πが上のそれと同じなら,これは荷電πの崩壊率に

比例します。   <19-3終わり※)
 

ここまでは電磁場の存在しないσモデルを論じてきました。 

電磁場を含めるためには.Lagrangianに次の2項を加える

だけでいいです。

すなわち,に-(1/4)μνμν -e0ψ~γμψμ.. 

(148)の2項を加えます。
 

すると,三角グラフの存在のために,(147)のPCACの

方程式:μ5μ(π/2)πは次のように修正されます。
 

μ5μ

(π/2)π(1/2){α0/(4π)}ξστρεξστρ(149)

です。

  
この右辺のアノマリー項の因子(1/2),単に,(141): 

5μ(1/2)ψ~γμγ5ψ+σ(μπ)-π(μσ)

+g0-1(μπ) の最初の核子項に現われる因子(1/2)

反映したものです。

  
適切に正規化された(くり込まれた)Feynmanルールを

導入し,前章までの論旨を同様に実行することにより,(149)

が電磁相互作用と強い相互作用の両方の摂動論のあらゆる

オーダーまで正しいことを示すことができます。
 

言いかえると,三角グラフへの如何なる仮想光子,

仮想中間子の輻射補正も,アノマリー項の係数を変える

ことはありません。
 

上述の考察の全ては,直接,σモデルのたった今考察した

アイソスピンのSU(2)(,)系や,ハドロンの全対称性;

SU(3)(,n、λ)への一般化へと拡張することが

できます。

  
SU(3)のケースには,Ψは3成分(ψ1,ψ2,ψ3)

置き換えられ,スカラーー中間子σと擬スカラー中間子は

,9重項粒子(nonet:1重項+8重項)で置き換えられ,軸性

ベクトルカレントj5μは8成分の軸性ベクトルカレント

5μとなり,π0に対応するのは,その第3成分;53μ 

となります。
 

π0に対してのアノマリーを持つPCAC方程式は,

このとき,次式になります。 

μ53μ

(π/2)π0+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ.(150) 

です。 ただし,S=Σjjj2 です。
 

π0はくり込まれた中性π中間子の場,j53μ

中に素粒子場として現われるj番目のFermion の電荷,

j,その結合定数です。


  つまり,53μ=Σjjψ~jγμγ5ψj(中間子項)..(151)
 

です。

  
(150),再び,摂動論のあらゆる有限オーダーまでで正しい

式です。

  
Sに対する表現:S=Σjjj2の解釈は,アノマリーの

総係数が個々の素Fermi粒子を全て巻き込む各々の三角グラフ

の寄与の総和によることを意味します。

  式
(150):μ53μ

(π/2)π0+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ 

,素朴な発散:53(=電磁場のないときの∂μ53μ)

正準なπ中間子の場によるものでないようなモデル

にも拡張されます。

  
第4章(§4)の論旨は,基本的に,素朴な発散の乗法的

くり込み可能性に依存していたので,; 

μ53μ=D53+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ

(152),素朴な発散:53が乗法的くり込み可能な任意の

くり込まれた場の理論にいて,正しいと予測されます。
 

(76)(79)の論旨によって,素朴な発散の乗法的くり込み

可能性は電磁場がないときは(/2)が有限であること

示しているので,

  
電磁場がないときに有限な(/)を持つ任意くり込み

可能な場理論において,電磁効果が付加されても.(152)

正確であると述べることにより,上述の言明を再び表明する

ことができます。
 

π中間子として滑らかに挿入された場があって,π中間子

が,その質量殻の近傍にある限り,式(152)でD53

(π/2)π0置き換えるのが有効と思われます。

  
こうして,(152):

μ53μ=D53+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ. 

,特殊な場理論モデルでなく,より一般的なクラスの

モデルでも正確なPCAC方程式と考えられます。
 

さて,これで§5.1が終わり,次に

§5.2:π0崩壊の低エネルギー定理の項目に入るところまで

きたので,今日はここで終わります。

  
(参考文献):Lectures on Elementary Particles and Quantum 

Field Theory(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

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