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2017年8月19日 (土)

摂動論のアノマリー(20)(第Ⅱ部:3)

 さて,また摂動論のアノマリーの続きです。

 π0 → 2γ崩壊の評価からです。
 

§5.2 Low Energy Theorem for π0 –Decay 

(π0 崩壊の低エネルギー定理)
 

(125)から(131)で見たように,アノマリーを持つWard恒等式 

,素朴な発散の真空から2光子への行列要素として,正確な 

「低エネルギー定理」を与えます。
 

一方,(150):μ53μ(π/2)π0 

+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ.; (S=Σjjj2) 

における素朴な発散:(π/2)π0,π0の場なので,
 

この場合,「低エネルギー定理」は,π0中間子の質量が

ゼロでのoff-shellに外挿された π0 2γの振幅に

ついての命題を与えることになります。
 

π0 2γの振幅:π(12)の標準定義は, 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12) 

.(153) です。
 

(20-1):始状態(initial stare):|i>=|π0 >から, 

終状態(final state):|f>=|γ(1,ε1)γ(2,ε2) 

への散乱行列(S行列)要素Sfi,および,^演算子は,

ユニタリ変換だけ異なる2つの完全系:incomibg漸近場

の状態と,outgoing漸近場の状態(散乱状態)を結び付ける

ものとして,

fi=<f;out| ;in>=<f;in|^|;in 

=<γ(1,ε1)γ(2,ε2); out|π0 ;in 

=<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|^|π0 ;in 

と定義されます。

 
(※子※S^演算子は,<f:in|=<f;out|S^で定義

されます。今の場合: |i>から|f>への遷移確率を示す

fi,散乱行列要素というより,π0 2γの崩壊行列要素

です。)
 

そして,LSZの還元公式(Reduction Formula)から, 

fii∫d4(2π)-3/2(20)-1/2 exp(iqx) 

(x+μ2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|π0()|0 

と書けます。
 

incoming状態は,x座標表示では,それぞれ, 

<x|π0 ;in>=(2π)-3/2(20)-1/2 exp(-iqx) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|x>σρ 

(2π)-3(41020)-1/2ε1σ*2ρ*exp(i1)εexp(i2) 

です。
 

そこで,S行列要素:fi,をx表示で, 

fii∫d4(2π)-9/2(20)-1/2exp{i(q-k1-k2)} 

(41020)-1/2ε1σ*ε2ρ*σρ(1,2:) と書きます。
 

そして(153)の<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12) 

の因子を.(2π)σρ(1,2:) 

=k1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12)と等置して,

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12) 

(2π)(41020)-1/2ε1σ*ε2ρ*(1,2:) 

とすれば,
 

fi(x+μ2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|π0()|0 

i∫d4(2π)-4 exp{i(1+k2)}

(2π)-3/2(20)-1/2exp(iqx) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)qπ0|0> 

となります。
 

それ故,(153)の<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)qπ0|0

,S行列要素: 

fi(x+μ2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|π0()|0 

から,|π0 ;in>の波動関数因子:

(2π)-3/2(20)-1/2exp(iqx)を除いたFourier変換

=運動量表示になっている,と考えられます。
 

(201終わり※)
 

さて,「摂動論のアノマリー(16)」においては. 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ5μ|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12).(125) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|2i05|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12) (125) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0^/(4π)}

(ξσ+FRξσ)(τρ+FRτρ)εξστρ|0

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρΛ(12) 

(125) と定義して,

  
係数:Λの くり込まれた量である
 (130):

~(12)limkΛ→∞Λ(1)に対して 

「低エネルギー定理」(131):~(0)=-2α/π 

を得ました。

  
この,(125)(131),

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12)

を比較すると,上記「低エネルギー定理」は,

~(0)=μ-2(π/2)π(0)=S(2α/π)..(154) 

すなわち,π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π) ..(154) 

を意味することがわかります。
 

(20-2):何故なら, 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0(1+k2)20 

{(1+k2)2+μ2)} 

×<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|π0|0(1+k2)20 

=<γ(1,ε1)γ(2,ε2)| μ2π0|0(1+k2)20

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(0)

です。
 

ところが,(150):μ53μ(π/2)π0 

+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ.から, 

μ2π0(2μ2/π)μ53μ(2μ2/π){α0/(4π)} 

ξστρεξστρ.  です。
 

よって,μ2<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|π0|0(1+k2)20  

(2μ2/π)<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ53μ|0(1+k2)20 

(2μ2/π)<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|{α0/(4π)} 

ξστρεξστρ|0 (1+k2)20  です。
 

それ故,(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(0) 

(S√2 /π)(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ~(0)
 

何故なら,明らかに∂μ53μ|0>=0なので, 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μ53μ|0(1+k2)200 です。
 

したがって,定理:~(0)=-2α/πより, 

(2μ2/π)π(0)=SG~(0)=S(2α/π) 

あるいは,π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π) 

が得られます。 (20-2終わり※)
 

(20-3):前の注釈の内容を見ると,(1+k2)2=μ2

のとき,π(12)=Fπ(μ2/2)0 となりそうですが, 

実際には,<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|π0|0> は, 

(1+k2)2=μ2に極を持つ,と考えられるため,この

質量殻の上でのFπ,つまりFπ(μ2/2)は一般にゼロには

なりません。
 

しかし,<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|π0|0>は 質量殻外の 

(1+k2)20 には極を持たないので.(1+k2)20 

のとき,(1+k2)2<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ~(12)

(1+k2)2はゼロです。 (20-3終わり※)
 

π0  2γ の崩壊行列要素は, 

fi(x+μ2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|π0()|0 

i∫d4(2π)-4 exp{i(1+k2)}

(2π)-3/2(20)-1/2exp(iqx) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)qπ0|0> 

で与えられます。,
 

そして.<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12) 

であったので,(154) 

π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π),低エネルギー

では π0  2γの振幅が,直接:(150):

μ53μ(π/2)π0+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ.

のアノマリー項に比例することを示しています。
 

したがって,もしもアノマリー項をゼロとしてomitしたら, 

(154)の代わりに,π(0)0 (155)が得られると予測され

ます。しかし,これは,実験事実に反して,π0  2γの崩壊

が禁止されることを意味します。
 

ここで.手短かに,(154)が示唆することのいくつかを

論じます。

  
()(154)によって予測されるπ0の崩壊実験の崩壊率は 

パラメータSに依存します。そして,このSは,Fermi粒子

の電荷Qと軸性結合定数gによって決まります。

(※ S=Σjj2 です。)
 

SU(3)のクォークモデルでは,それは中間子の交換によって

相互作用するFermi粒子:(ψ1,ψ2,ψ3)(,,λ)なる基本

3粒子の組から成り,その結合定数は,

(1,2,3)(1/2,1/2,0) です。
 

電磁カレントのU-スピン不変性から,基本粒子:(ψ1,ψ2,ψ3)

の電荷は,(,Q-1,Q-1)というパターンを持ちます。
 

(20-4):現在(2017)のところでは,ハドロンを構成する基本

粒子クォークはフレーバー(Flabour)自由度として,3種ではなく

6種:,,,,,(up,down,strange,charm,top,bottom)

存在する,とされていますが,1970年当時は,そのうちの3個:

,,sだけで基本クォークが構成されると予想されており,

それらu,,sを,,λと表記る習慣でした。
 

そこで,3成分のΨをΨ=(,,λ)なる縦成分表示で記述

します。

このSU(3)対称性を仮定した,σモデルでのカイラル回転の

無限小局所ゲージ変換は,Ψについては. 

Ψ {1(i/2)γ5Σ=18λ()}Ψであり,これに対応

する,8成分軸性ベクトルカレントは, 

5μ(1/2)Ψ~γμγ5λΨ

+σ∂μφ-φμσ+g0-1μπ0 

(a=1,2,。。,8)です。
 

ここで,λはアイソスピンSU(2)(τ1,τ2,τ3)に対応

する,SU(3)変換群の生成子(enerator),3×3行列

表現です。

そして,Φ(φ1,φ2,..φ8)は対応する8中間子です。
 

相互作用Hamiltonian密度: int, 

intinti(G√2)Ψ~γ5Ψ~ で与えられます。
 

ただし,Mは中間子(mesons)を行列要素とする3×3

行列で,M=λΦ=Σ=18(λφ)を意味します。

(※Mはトレースレスです。)
 

π0=φ3 なので,intにおいて,π0coupleできる部分を

陽に書くと,i(G√2)(~,~,λ~)γ5(λ3φ3)(,,λ)

です。

  
そして

,

ですから,j5 3μ(1/2)~γμγ5p-(1/2)~γμγ5

+σ∂μπ0-π0μσ+g0-1μπ0 です。


  
(※※ ちなみに荷電πなら,例えば,π|np~>であり, 

そのπ場は(φ1iφ2)/2で与えられます。
 

そこで,intの関連する部分は, 

i(G√2)(~,~,λ~)γ5(λ1φ11+λ2φ2)(,,λ)

のみであり,対応する軸性ベクトルカレントは, 

5μ(5 1μi5 2μ)/2 

(1/2)~γμγ5p+√2(σ∂μπ-πμσ)

+√20-1μπ0  と書けます。 ※※)
 

次に,-スピンというのは,SU(3)対称性群のI-スピン 

(アイソスピン)とは異なるSU(2)部分群で,これは電荷演算子

^可換な変換なので,その生成子;j^(j=1,2,3),

[j^,^]0 満たします。
 

^は3×3行列表示として対角化可能で,その対角要素

 (1,2,3)とすると,jQUj=Qから,2=Q3

得ます。

 
一方, -スピンからはp,nがI=1/2,I31/2,1/2 

状態で,Bをバリン数,Yをハイパーチャージとすると

p,nの核子Nでは「Y=B=1,Q=I3+Y/2という性質

があるので.Q2=Q11です。
 

そこで,(,,λ)の電荷が

(1,2,3)(,Q-1,Q-1)書けるわけです。
  (20-4終わり※)
 

クォークのパターン電荷:(,Q-1,Q-1)において,

主流モデルの分数電荷クォークでは,Q=2/3より,

(,Q-1,Q-1)(2/3,1/3.1/3)なので,

S=Σjj21/6です。
 

一方, Q=1やQ=0の整数荷電を仮定すると,S=±1/2

です。
 

ここで,π0の崩壊率(1/崩壊寿命)について次の公式が

あります。

すなわち,τ-1(μ3/64π)|π(μ2)|2..(157) です。
 

(20-5):上の(157)の証明です。
 

反応体積をV,時間をTとすると,単位体積当たりの遷移速度

,|fi|2/(VT) 

(2π)4δ4(q-k1-k2)(2π)-9(8k1020q)-1|π(μ2/2)|2 

×Σε1,ε2|1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ|2 

で与えられます。
 

何故なら,まず,fi4運動量保存の因子:

(2π)4δ4(q-k1-k2)を含み,VT=(2π)4δ4(0)と同定

されるので|fi|2/(VT)は,(2π)4δ4(q-k1-k2)を1個

含みます。


  そして
π0 2γ反応では,fiが規格化因子;

(2π)-3/2(210)-1/2,(2π)-3/2(220)-1/2,(2π)-3/2(2)-1/2

を持つため,これは|fi|2/(VT)には,

(2π)-9(8k1020q)-1の寄与です。
 

そして,(1+k2)2=μ2 のときk12=k220 より,

12=μ2/2なので係数:π(12)の寄与は,実は

π(μ2)ではなく,π(μ2/2) です。
 

そして,π0の静止系を想定すると,μ(q,)=(μ,0)

です。そこで,1=-2とおくと,k=||=μ/2,

です。故に,10=k20=k=μ/2です。
 

よっての向きを3(z軸)に取って,=k3

すると,1ξ2τでゼロでないのは,ξ=0,τ=3,

ξ=3,τ=0  のみです。

さらに,1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ22ε0 3σρにおいて

ε1,ε2は横波を示すのでε1=ε20,より,ゼロでない

のは,(σ,ρ)=(1,2),(2,1)のみで,このときε1*σε2*ρ

1です。
 

結局,Σε1,ε2|1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ|2 

|22ε0 312|2|22ε0 321|284  を得ます。
 

全空間Vに1個のπ0が存在するという規格化を考慮 

して,π01個当たりの崩壊確率を求めると 

τ-1(1/2!)∫d3132{|fi|2/(VT)} 

(μ3/64π)|π(μ2/2)|2 を得ます。
 

(1/2!)2光子の区別不可能性に起因する因子です。
 

(会用命終わり)  (20-5終わり※)
 

こうして,(157)の修正式:

τ-1(μ3/64π)|π(μ2/2)|2において,π(μ2/2)

π(0)で近似すると.π0崩壊の崩壊率の(近似)計算値と

して,次の値が得られます。
 

すなわち,S=1/6のなら τ-10.8 e..(158) 

S=±1/2なら  τ-17.4 e..(158) です。
 

一方,Rosenfeldによって引用されたπ0崩壊の崩壊率

実験値は,次の通りです。
 

すなわち,τexp -1(1.12±0.22)×1016 sec-1

(7.37±1.5) eV..(159)です。

(※ 現在での実験値は,τexp -1(7.48±0.32) e)
 

また,もしも最近のPrimakoff効果の実験が,上記の

Rosenfeld平均を含む初期の実験より信頼できるなら,

τexp -111eVにもなるという結果もあります。
 

とにかく,この結果からは,S=1/6の分数電荷クォーク

は強く排斥され,他方,Q=1やQ=0の整数電荷クォーク

からの予測値は実験と満足のいく一致を見る,という結果

を得ました。
 

(20-6):現在の見地では,クォークにはフレーバー自由度

とは独立にカラー自由度:3があってSU(3)対称性を持つ

ことがわかっており,これにより,S=(16)×3=1/2

なるため,逆に整数電荷では過剰で分数電荷モデルの方が有望

でほぼ確定的です。 (20-6終わり※)
 

さて,(158)(159)の明白で劇的な一致は,幾分偶発的な

ことです。この一致を偶発的と見るのは,逆に,実験での崩壊率

の不確かさと,PCAC論旨に含まれると予想される1020

の外挿誤差の存在のためです。
 

例えば,もしも,(154):

π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π)のfπに実験値をあてる

代わりに,Goldberger-Treimanの関係: 

2μ2/π ~ gV/(N)..(160),

(N:核子Nの質量,:πN結合定数 ~ 13.6, 

:核子軸性カレントの結合定数 ~ 1.22)

を代入するならS=±1/2の理論的予測は20%増加して

τ-1  9.1 eとなります。
 

いずれにしろ,実験結果との比較は,||1/2を示唆して

います。
 

途中ですが,以下は長くなるので今日はここで終わります。

 
 (参考文献):Lectures on Elementary Particles and Quantum  

Field Theory(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

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