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2017年8月12日 (土)

3重3元クォ-ク模型の束縛ポテンシャル(修士論文;その1)

今から約役40年前の私の院生時代の本当の研究課題は

QEDにおるアノマリー関連問題である,などと自認

していましたが,それでは修士論文のテーマとしては

重荷過ぎて,当時の実力では,そうしたものを修了学年

書き上げることは不可能に近かったので,不本意

ながらクォークモデル関連の論文で,お茶を濁しました。
 

ブログ開始から11,今さら匿名にしても無意味でしょう。
 

私は,1976年当時,26歳で,神戸大学の谷川(安孝)研究室に

在籍していて北添徹郎助教授の指導で書いた論文を提出し.

取りあえず奥の院は修了したのでした。
 

風のうわさでは,北添さんはその後,宮崎大学教授になられ

何やら素粒子論とはかけ離れた研究をしていた。

と聞きました。
 

私は,その後,当時自大学には博士過程がなかったので,他大学

の博士課程進学を希望し,谷川先生には推薦状を書いて頂き

したが.2までしか書かない,と言われたので.厳選して

を受けました。
 

しかし,いずれも落ちました。

  当時は第2次?オイルショック
で就職難の時代でしたが,

アルバイトで食いつなぎながら.もう1年聴講生という形で

同じ研究室に残らせてもらい,再び論文を書いて博士課程

受験を画策しましたが,うまくいかず,谷川先生らに会社

などへの就職を薦められ,1977年には東京で27歳で,遅い

サラリーマンとなりました。
 

当時,同じ研究室の同窓生は2名だけで,唯一同窓のH君は

1976に広大理論研に合格してそこに行ったと聞きましたが

その後の消息は不明です。
 

さて,私が1976年に提出した拙い,恥ずかしい論文の控えを

ほぼ原文のまま,アップします。
 

論文は,内容が優れていれば長さではないと思いますが,学生

卒業論文や学位論文の多くは長さで勝負みたいなところが

あり,私のはA416ページくらいしかなく,それでも本当は

明示の必要のない裏計算の経緯なども載せてページを稼いで

います。
  
(↑※一応,「素粒子論研究」1976年6月号)に

「Quark Molecule」という題名で投稿したレポート

もあります。)

  しかし,ブログ記事としては長いと思うので,2回に分けて

連続アップにします。

  
以下は本文です。
 

33元クォ-ク模型の束縛ポテンシャルについて」

 (19762)
 
 

§1.序文 

1973,H.J.Lipkin33元クォ-クを束縛して複合粒子を

つくる非常に強い相互作用がカラー・ベクトルグルオンの

交換相互作用に起因しているという仮説に基づいて,1つの

束縛ポテンシャルの模型を提示した。(参照(1))
 

それによると,現在,観測にかかっているハドロンの質量

,クォークの質量と比較して無視できるほど小さいと

すれば,そうした質量スペクトルの領域でカラー1重項状態

の共鳴粒子のみが観測され,それゆえ,トライアリティゼロ

の共鳴粒子しか見出され得ないという結論に達している。

 
しかも,4体のトライアリティがゼロの複合系:qqq~~

関しては,カラー1重項の状態でも,もはや通常の中間子:

qq~が2個の散乱状態よりも安定な状態は実現され得ない

ので,結局,観測可能な領域での通常の中間子:qq~,および.

重粒子:qqq以外に余分の共鳴粒子(Exotic particle)

見出され得ないことが示されている。
 

しかし,これは束縛ポテンシャルの空間依存性がクーロン型

や調和振動子型のように,2粒子間の距離の変化に対して,

十分緩やか,かつ単調であるという仮定に基づいた近似に

よって示されることであった。
 

クォーク複合系がこうした緩やかで単調な中心力ポテンシャル

によって束縛されていると考えたときには,非相対論的量子力学

でよく知られているように,系の振動エネルギーと回転エネルギー

の大きさの程度がほぼ同一となり,


 
通常のハドロンがqq~,または
qqqの基底状態,および,その

回転励起状態のみで分類し尽くされる,という事実に矛盾した

結果を招くことになってしまう。
 

そこで,クォークが何らかの構造を持ち,そのために

ポテンシャル の空間依存性が分子型,つまり,2粒子間の有限な

距離で極値をとるような型になると考えれば,この困難は解消

されるように見える。
 

ところが,最近のDolgov-Okun-Zakharovの論文(参照[2])

よれば,Lipkinの提唱したものと同じ型のポテンシャルで,その

空間依存部分を分子型にすると,クォーク,反クォークの4体型

,あるいは5体の複合系で,通常のハドロンより低い質量スペクトル

を持つ共鳴粒子が存在しなければならないことがわかる。
 

こうした困難をカラー以外の自由度の効果を考えることなく, 

解決することが,この論文の目的である。
 

§3以下に示すように,カラーSU(3)群=SU(3)cの8重項 

ベクトルグルオンの他に8重項スカラーグルオン,および,  

1重項スカラーグルオン,を交換する相互作用を導入すると
 

ポテンシャルの空間部分を分子型として,通常のハドロン 

領域には,qq~,qqqqのカラー1重項の共鳴粒子しか 

出現し得ないという結論を引き出すことができる。
 

§2.Dolgov-Okun-Zakahrovの論文(参照[2])の概観 

クォーク,反クォークの任意のn体系に対して,Lipkinの提唱

したポテンシャルの型式は,

 V=(1/2)ΣijijΛiσΛσ ..(2-1) 
 

ここで,Λiσ(σ=1.2...8)はi番目のクォーク(反クォーク)

作用するSU(3)8個の生成元演算子,あるいは,その行列

表現である。
 

(2-1)においてvij ()が常に正で,有限な距離:r=r0において, 

極大値:vをとるような分子型ポテンシャルの場合を考えてみよう。
 

クォーク-反クォーク対:qq~,3つのクォーク:qqq

 対しては,このVは,

qq~=v12Λ1σΛ2σ(12/2)(C-21),..(2-2) qqq=v12Λ1σΛ2σ+v23Λ2σΛ3σ+v31Λ3σΛ1σ 

(12/2){2(1,2)21}(23/2){2(2,3)21} 

(31/2){2(3,1)21}  ..(2-2) となる。
 

ここに,,1,2,それぞれ,全系,1粒子,2粒子の 

次の)Casimir演算子である。
 

(2-2)を見れば,qq~,qqqは共にC=0で最小になり,それは

さらに,12=v,あるいは,12=v23=v31=vのとき最小値

をとることがわかる。
 

それらの最小値をVqq~min,qqqmin,と書けば,

qq~min=-vC1,qqqmin=-(3/2)vC1 となる。
 

そこでクォーク質量MをM=vC1/2(2/3)..(2-3) 

によって与えると,カラー1重項の中間子:qq~,重粒子

:qqqの質量は,Mに比して無視できるほど小さくなる。
 

一方,4体のトライアリティがゼロの系:qqq~~

2つのクォークと2つの反クォークが図-1のように,一辺

がr0の正方形の頂点を構成しているような特殊な配置を

考えると,

,

qqq~q~=v(Λ1σΛ3σ+Λ1σΛ4σ+Λ2σΛ3σ+Λ2σΛ4σ) 

+v12Λ1σΛ2σ+v34Λ3σΛ4σ 

(/2)(C-41)(1/2)(12-v){2(1,2)21} 

(1/2)(34-v){2(3,4)21}..(2-4)となる。
 

これは,1,2~,および,3,4~,それぞれ6重項

つくり,全体として重項をつくるようなカラー状態: 

つまり, 2(1,2)=C2(3,4)10/3,かつ,C=0であるような 

状態で最小になるが,このことから, 

4M+Vqqq~q~min(1/6)((12+v342) ..(2-5) 

が得られる。
 

(2-5において,12<v,34<vが明らかなので,結局, 

qqq~q~の共鳴状態では4M+Vqqq~q~min0となって

しまう。

 同様
なことは5,あるいは6体に対しても生じ.結局,

(2-1)のようなポテンシャルモデルでvijを分子型に選ぶ

,中間子:qq~,重粒子:qqqよりも小さい共鳴の存在

余儀なくされる。
 

これがDolgov-Okun-Zakharovの得た結論である。
 

§3.新しい束縛ポテンシャルの導入と複号共鳴粒子状態 

クォークの質量,および,束縛エネルギーが,通常の

ハドロンの質量に比して極端に大きく,束縛状態では

クォークの内部運動エネルギーが相当小さいと考えた

ときには非相対論的近似が有効である。
 

そして,1つの仮想グルオンを交換する全ての摂動の2次

のグラフの寄与の総和で与えられる2次の散乱振幅を1次

のポテンシャル散乱の散乱振幅,つまり,Born近似による

散乱振幅と対応させることによって,束縛ポテンシャルを

近似的に与えることができる。
 

すなわち,まず,クォークの複合系を束縛する

強力相互作用のハミルトニアン密度:int()

として,次の形式のものを導入する。
 

int()≡gV:Ψ~α()γμ(Λσ)αβσμ()Ψβ() 

+gSΨ~α()(Λ0)αβσ()Ψβ()..(3-1)
 

 ここに,Ψ()はカラー・クォークの,(),()

,カラー・グルオンの場を定める演算子,  

(Λσ)αβ(σ=1,2,..,8;α,β=1,2,3),SU(3)

 生成元の3×3表現行列要素,また,(Λ0)αβ=δαβ

である。
 

(3-1)で与えられるintに従って,始状態:|i>から

終状態: |f>に弾性散乱を受けるときの振幅の2次の近似

を非相対論的ポテンシャルに対応づける:
 

{(i)2/2!}∫d4xd4y<f|{int()int()}|i>/<0||0> 

(2πi)δ(f-Ei)∫d33(2π)-6 

exp{i(121'2')} 

[χ2’(2')χ1'(1')(,)χ1(1)χ2(2)]

..(3-2)
 

これによって,(,)を束縛ポテンシャルとして定義する

ことにする。

ここに,()4成分Diracスピノルの大成分,つまり

スピン波動関数であり,χはSU(3)の基本表現に

おけるカラー波動関数である。
 

また,プライムは終状態に,プライムの無いものは始状態

に対応しているものとする。

SU(3)8個の生成元演算子:Λσ,および,単位演算子:

Λ0反クォークを基底とする行列表現の要素を,便宜上,

(Λ~σ)αβ,および,(Λ~0)αβと置くことにすれば,全ての

2次のFeynman,それに対応する振幅は次のようになる。
 

 -q散乱について,非相対論的極限で考えられるものは ,

()V2(χ1’Λ1σχ1)(χ2’Λ2σχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分) 

()S2(χ1’Λ1σχ1)(χ2’Λ2σχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分) 

()S2(χ1’Λ10χ1)(χ2’Λ2oχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分)
 

 -~散乱では,上式でSU(3)の生成元行列:ΛをΛ~でΛ0

をΛ0~.Pauliスピノル:()をv()で置き換えたものが

得られる。


 

()V2(χ1’Λ1σχ1)(χ2’Λ~2σχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分) 

()S2(χ1’Λ1σχ1)(χ2’Λ~2σχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分) 

()S2(χ1’Λ10χ1)(χ2’Λ~2oχ2)((1’)(1))

((2’)(2))×(伝播関数依存部分) 

を得る。
 

ここで,(Λσ)αβ(Λ~σ)αβ,(Λ0)αβ(Λ~0)αβの関係

を明らかにさせておこう。
 

カラー・クォークqαの場の演算子をΨα^としたとき,

Λ^σをSU(3)の生成元演算子とすれば,交換関係は簡単な

考察によって評価できて, 

[Λ^σ,Ψα^](Λσ)αβΨβ^と書けるので, 

|α>=Ψα^|0,|~α>=Ψα^|0,Λ^σ0>=0

から,(Λ~σ)αβ=-(Λσ)βα=-(Λσ)Tαβを得る。
 

同様な考察から,(Λ~0)αβ=-(Λ0)βα=-δαβも得らえる。
 

以上の考察から,8重項ベクトルグルオン,8重項スカラー

グルオン,1重項スカラーグルオンの交換による非相対論的

束縛ポテンシャルの模型として,次のような一般形が得られる。
 

すなわち,任意個数nのクォーク反クォーク複号系の

総ポテンシャルをV()で記述すれば, 

()|(1+a)/2}{Σi=,j=q,i≠jijΛiΛj

+Σi=~,j=q~,i≠jijΛ~iΛ~j} 

(1-a)Σi=,j=q~,i≠jijΛiΛ~j(/2)Σ≠jij .(3-3)

と書ける。
 

ここで, ij,,j間の距離rijのみに依存する因子である。
 

,bはそれぞれ,8重項スカラーグルオン,1重項スカラー

グルオンのポテンシャルへの寄与に対応した実定数である。 

また,感嘆のために,ΛiσΛjσをΛiΛjと略記した。
 

ところで,n体共鳴粒子状態が存在するとすれば,それは必ず,

このV()固有状態でなければならないことは明らかである。
 

こうしたV()の固有値のうちで最小の値を与える状態,

つまり,n体系の基底状態は,零点振動などの量子効果を無視

した近似では,(n+1)/2個のvijのうち,いくつかがその

上限値をとり,残りのものが下限値を取るような粒子配置に

おいて実現されることが以下の簡単な考察からわかる。
 

すなわち,n体波動関数のカラー状態だけを指定する部分だけ

は任意に固定しておいて,カラー波動関数のみによるV()

期待値を考えると,

 
これは.
 |(1+a)/2}{Σi=,j=q,i≠jij<ΛiΛj

+Σi=~,j=q~,i≠jij<Λ~iΛ~j} 

(1-a)Σi=,j=q~,i≠jij<ΛiΛ~j>

(/2)Σ≠jij  というvij に関する1次関数となる。
 

したがって,この式でvij の各々を独立変数として扱えると

仮定すれば,

係数:(1+a)<ΛiΛj>+b.(1+a)<Λ~iΛ~j+bや,

(1-a)<ΛiΛ~j>+bの正,負に応じて,ijの下限,上限を

割り当てることによって問題としているカラー状態における

最小の固有値が得られるはずである。
 

もちろん, ijの全てを独立にとれるわけではなく実際の

粒子配置で考える際には,基底状態のポテンシャルが,ij

を全て独立として扱った場合のV()の最小期待値よりは

小さくはない,ことを述べられるにすぎない。
 

しかし,この論旨に基づいて基底状態におけるポテンシャル

の固有値の下限を見積もることができる。
 

以下の議論では,ijは原点から単調増加して,ある有限

な距離:ij=r0で極大値をとるような形をしていると

考え,さらに常に正であるとする。(下-4)

(つづく)

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