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2017年8月28日 (月)

摂動論のアノマリー(第Ⅱ部)(コーヒー・ブレイク)

最初は,これまでと同じく自分のノートからの回顧録のような

ものを惰性的にダラダラと書くつもりで「摂動論のアノマリー」

の続き原稿を書こうと思ったのですが,つい,ここらで場理論や

くりこみ理論との関連,本論の要約を兼ねて,少し駄文

述べたくなりました。
 

 最初,本記事の副題を(閑話休題)にしようと思いましたが, 

閑話が余談や無駄話を指し,休題がそれを止めるという意味で 

あるとすると,これは余談をやめて本題に戻る,という意味に 

なり,これから余談を始めようと考えているときに使うの

逆かな?と思い,(コーヒー・ブレイク(coffee-break)) 

しました。。※
 

では,さらに閑話休題。。
 

本ブログ過去記事「弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)」では, 

自由中性子nのβ崩壊:n→p+e+ν~はカレント・カレント 

相互作用:int(/2)μμによる旧い扱いでした。
 

そして,μの軽粒子(レプトン;lepton)部分のV-Aカレント 

(vector-axialvector current)である[~γμ(1-γ5)ν], 

μのハドロン部分のn-pのV-Aカレント: 

[~γμ(1-αγ5)]の対,

あるいは,これらを構成する4粒子が1頂点に局所的に集中

して(/2)という定数因子の効果を受ける,という局所

相互作用の仮定に基づく理論構成でした。
 

これに対して,-pカレントとe-νカレントの間に質量

がμゲ-ジBoson:W が交換されるとするなら.上記の

頂点では単なる定数因子の寄与は,1/(2-μ2iε)

という伝播関数の形の因子の寄与に置き換わります。
 

しかし,この中性子のβ崩壊程度の現象では,相互作用が弱い

ため.通常のエネルギーレベルでの実験結果との比較は,

最低次近似の予測計算値との比較で十分なので,その範囲

では,どちらも実験との一致度という意味では大差ないの

ですが,
 

q → 大の高エネルギーでは.一方の定数は全く減衰しない

のに対して,Wを交換する相互作用では,少なくとも1/2

オーダーで減衰するため,紫外発散を避けて,くり込み可能

なり,QEDと同様な形での弱い相互作用の理論計算ができる

ようになります。

(※現時点では図にあるように可能性ではなく実際にWが発見

されています。)
 

そして,中性子のようなFermion崩壊ではなく荷電π中間子

π崩壊については,「弱い相互作用の旧理論(12),(13)

(Fermi理論)で書いたように,
 

主要な反応はπ→ μ+νμ~,次反応はπ→ e+ν~ 

ですが,これについてはハドロンカレント部分を-pカレント

代わりに中間子場の時空微分,or運動量に置き換え,aという

比率を掛けるという現象論的扱いを採用しました。


 (※
-pカレントがV-Aカレントであるのに対してπは

擬スカラー粒子なので(a∂μπ)は,Aのみ(axial-vector

=軸性ベクトルのみ)です。)
 

π→ μ+νμ~,π→ e+ν~の崩壊率の分岐比

は, 理論的計算でも,(π→e+ν~/π→μ+νμ~) 

(e/μ)2{(μ2-me2)/(μ2-mμ2)}2

2.31488×10-5×5.49 1.27×10-4なる値が得られ 

これは実験値ともよく一致してπ崩壊のほとんどの反応

は,π→ μ+νμ~であることがわかっています。
 

そして,π→ μ+νμ~ とπ→ e+ν~の崩壊率:

ωは,τを平均寿命として

ω=1/τ={2||2/(8π)}μ3(/μ)2(1-m2/μ2)2 

で与えられることを見ました。


  この式は,m=mμを代入すれば,
π→μ+νμ~の崩壊率: 

ωμ1/τμを,m=mμを代入すれば π→e+νe~

崩壊率:ω=1/τを与えます。

 そこで,
ほとんど全ての反応であるπ→μ+νμ~の

崩壊率:ωμの予測値は. 

ωμ1/τμ{2||2/(8π)}μ3(μ/μ)2(1-mμ2/μ2)2  

です。

 
一方,観測されているπの寿命は,

τ=(2.55±0.03)×108sec です。

  
それ故,ωμの予測式を.この観測値の

ω=1/τ~ 1/{(2.55±0.03)×108sec}に等置することから

||の値を決めることができます。

この計算を実行した結果,|| 0.93μと評価されました。
 

これが先の過去記事の主要な内容でした。
 

上記のように,荷電π中間子:π±の寿命は,10-8秒で

あるのに対して,前記事で見たように,中性π中間子:π0

寿命は, 10-17秒と極めて短いようです。
 

これは,荷電πの崩壊が弱いβ崩壊相互作用であるのに対して, 

π0の主要な崩壊:π02γは中間状態に強い相互作用プロセス 

を挟んでいても,比較的強い電磁相互作用によるためでしょう。
 

電荷を持ったπの崩壊が弱い相互作用により,電荷を持たない

中性のπ0の崩壊が電磁相互作用によるというのは皮肉な話では

あります。
 

PCACの項で,π→ μν~ の崩壊振幅において, 

<μν~|π> ~ <μν~|NN~><NN~|π 

なる核子Nの中間状態を仮定しました。


 

同じように,π0 2γの崩壊振幅を, 

2γ|π0> ~ <μν~|NN~><NN~|π0>とすれば,

この崩壊反応は次のように図示されます。
 

これは,中間内線のNを実際の核子と仮定した図ですが,Nを 

(,)(,)クォークで置き換えると,最近のQCD理論に

準ずる図になるでしょう。
 

そのうちでも,特に,π02γ崩壊に効くのは三角グラフの

寄与であり,それもアノマリー項以外の寄与は無視できる,

というものですから,



  
40年前の学生時代に初めてこの理論に接した頃は,

アノマリーというのは正に異常項であって,何らかの方法

で克服され削除されるべきもの」と先入観で捉えていたため.

現実の粒子の崩壊現象の説明に不可欠ものであると認識

したときには不思議なことと驚いた記憶があります。

さて,パリテイがマイナスの擬スカラー粒子である

π中間子,元々自発的対称性の破れのために出現する

はずの「南部-Goldstone粒子」1つとされています

から,その時点では質量はゼロです。
 

しかし,中性πの場合,質量を無視してゼロとすれば,崩壊率

ゼロ(π(0)=0 より)であり,アノマリーがないなら崩壊

禁止なので,π0は完全に安定な粒子ということになり,これは

実験事実に反します。
 

自発的対称性の破れの後,さらに残る対称性として質量ゼロ

では成立していたカイラル対称性が破れて,μ~ 135MeV程度

の質量を獲得した後にも,破れが小さくてFπ(μ2/2)

π(0)で近似し,PCACの「低エネルギー定理」が適用

できて,アノマリーこそがπ0 2γの崩壊率への寄与に結び

付くのである,という結論は,ここまで展開してきた場の理論

やくり込み理論等の方法論としての正しさを示す証拠かも

しれません。
 

さて.p,nクォークによるπ0(pp~-nn~)/2なる

表現対して,アノマリ-の重みSはカラー自由度の3を

掛けて,S=(1/2){(2/3)2-(1//3)2}×31/2であることを

見ました。
 

荷電π中間子では,π=np~であり,対応する軸性ベクトル 

カレントは,5μ(5 1μi5 2μ)/2 

(1/2)~γμγ5p+√2(σ∂μπ-πμσ)

+√20-1μπ0 でしたが,そもそも.π崩壊では2光子放出

という電磁頂点を含む三角グラフの介在は.最低次では不可能

なので,π崩壊にはアノマリーは無関係です。
 

しかし,π0でなくても中性中間子なら三角グラフが寄与する

ことが可能なはず「です。

例えば,η0中間子は,η0(pp~+nn~2λλ^)/6

表わされ,π0(pp~-nn~)/2のアナロジーで,Sは 

S=(1/6){(2/3)2(-l/3)22(-l/3)2}×31/6となります。
 

観測によると,質量はμη0 548MeV,μπ0135MeVであり,

計算評価すると 

ωη1/τη 7.6eV×(μη/μπ)3×(1/3) 170eV です

しかし,これは,η0崩壊の実験値(Primakoff効果)

324 MeVの約1/2倍ですから一致すると見るかどうかは

微妙です。

(※ここの計算は「ゲージ場の量子論()(九後汰一郎著)

参照して,ほぼ丸写ししました。)
 

(※私見では,上記考察では重みSはSfiへの寄与であり,

崩壊率ωは|fi|2に比例するため,崩壊率への重みはSで

なくS2で効くので,(1/3)じゃなく(1/9)を掛けるべきで,

結果,ωη1/τη 57MeVとなって上記の170MeVより,さら

に実験値の320 MeVからの差が大きくなるようです??。)
 

「ゲージ場の量子論()」によれば,アノマリーというのは

系のLagrangian,γ5を含むカイラルな項がある場合,

謂わゆるBRS対称性が成立せず,次元正則化や経路積分量子化

によっても.ゲージ不変,かつ,くり込み可能な処方が不可能

であることの反映であり,

 
対応原理で見られるような古典方程式から逆に
量子論の波動

方程式を導く正準量子化からの帰結であるWard恒等式のような

ものでも,紫外発散を伴なうような量子論的扱いでは正則化に

おいて破れが生じる現象を意味するようです。
 

ここで終わります。

(参考文献):

1.lectures on Elementary Particles and Quantum  

Field Theory(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

2. 九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()(培風館)

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