対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(3)
「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
対称性の自発的破れを起こす模型:2例を考察します。
1つはGoldstone模型,もう1つは南部-Jonalashino模型です。
まず,対称性の自発的破れが起きる最も簡単な例として,
次のLagrangian密度:Lを持つ系から成るGoldstone模型を
考えます。
L=∂μφ*∂μφ+μ2φ*φ-(λ/2)(φ*φ)2 です。
この系は複素スカラー場φのφ4-相互作用系で,通常の場
とは質量項:μ2φ*φの符号が逆であるのが,本質的違い
です。
それ故,通常の<0|φ(x)|0>=0 の真空:|0>の上では
φの場の励起モードは,負の2乗質量-μ2(虚数質量:±iμ)
を持つ謂わゆるタキオン(tachyon)となります。
タキオンモードの存在は,|k|<μに対して,その時間発展
がexp[±{-i(k2-μ2)1/2t}]=exp{±(μ2-k2)1/2t}で
与えられるので,|k|が小さい長波長側のモードは時間が
経つと指数関数的に増大し,もはや微小な励起に留まらなく
なります。
これは,元の基底モード=真空も時間発展で不安定である
ことを意味します。
この系が持つ対称性は,位相変換;
φ'(x)=exp(-iθ)φ(x),φ*'(x)=exp(iθ)φ*(x)
の下でのG=U(1)~ O(2)不変性です。
対応するNoetherカレント,および,チャージは
jμ=i{φ*∂μφ-(∂μφ*)φ}.
π=∂L/∂(∂0φ)=∂0φ*,
Q=i∫{φ*π*-πφ}です。
そして,i[Q,φ]=-iφ,i[Q,φ*]=iφ*,ですが,
これらは,同時刻正準交換関係:
[φ(x,t),π(y,t)]=iδ3(x-y),および,
[φ*(x,t),π*(y,t)]=-iδ3(x-y)から
従います。
一般に系の安定な真空の候補は有効ポテンシャル:
V(φ~)の∂V/∂φ~=0 で決まる停留点で
与えられます。
ただし,φ~(x)は,Heisenberg場(演算子):φ(x)の期待値
であり,それ故演算子ではなくてc-数です。
※(注3-1):有効ポテンシャルの定義,意味については,
本ブログの2014年9/21から2015年4/21までにアップした
過去記事:「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と
摂動論)」(1)~(12)において摂動論を記述した後,
有効作用・有効ポテンシャルの項に入る予定でしたが,
直前でこのシリーズを中断していました。
,
そこでこの記事シリーズから,適宜,必要事項を引用し,
これに追加して説明します。
便宜上,(12)のGrassmann 代数の知見と面倒な考察を
要するFermion場の話は考慮せず,(1) ~ (11)のBoson場
のみから成る系で考えます。
まず,時間tを含むHeisenberg表示の初期(始)状態,
終状態を,それぞれ,|φI,tI>,|φF,tF|>として,
その遷移振幅を,位相空間の積分:∫∫DπDφによる経路
積分で表わすと,
<φF,tF|φI,tI>
=∫∫φ(x,tI)=φI(x)φ(x,tF)=φF(x)DπDφ
×exp(i∫tItFd4x
[π(x)φd(x)-H(π(x),φ(x))]) となります。
この式の右辺から,先に∫Dπだけを実行して,配位空間
の積分:∫Dφのみによる積分表式にしたものは,
Nを比例定数として,
<φF,tF|φI,tI>
=N∫φ(x,tI)=φI(x)φ(x,tF)=φF(x)Dφ
×exp[i∫tItFd4xL(φ,∂φ)] です。
次に,特にGreen関数の経路積分を考えます。
必ずしもφの固有状態ではない一般の状態を想定し,
初期(始)状態を|ΨI,tI>,終状態を,|:ΨF,tF>として,
一般化されたN点Green関数を,
G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF)
≡<ΨF,tF|T[φ(x1)..φ(xN)]|ΨI,tI>
/<ΨF,tF|ΨI,tI>
=<ΨF,|exp(-iHtF)T[φ(x1)..
φ(xN)exp(iHtI)]|ΨI>
/<ΨF|exp{-iH(tF-tI)}|ΨI> によって,
定義します。
これを変形して,最終的にGreen関数の経路積分式として
G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF)
=NFI∫DφΨF*[φ(xF)] ΨI[φ(xF)]
φ(x1)..φ(xN)exp[i∫tItFd4xL(φ,∂φ)]
を得ます。
ここで,一般化されたGreen関数の生成汎関数:ZFI[J]
なるものを次のように定義して導入します。
すなわち,ZFI[J]
=<ΨF,tF||Texp{i∫d4xJ(x)φ(x)}| ΨI,tI>
/<ΨF,tF|ΨI,tI> です。
ZFI[J]をJでN階微分してJ=0 と置いたものが一般化
されたN点Green関数になります。
つまり,
[δNZFI[J]/δJ(x1)..δJ(xN)]jJ(x1)=..J(xN)=0
=G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF) です。
実は,これが,ZFI[J]が
G(N)(x1,..,xN; ΨI,tI;ΨF,tF)の生成汎関数
である,という意味です。
そして,一般化されたGreen関数は,特に初期状態:|ΨI>,
終状態:|ΨF>が共に系の真空状態 |0>であるとしたとき,
通常の意味のN点Green関数;
G(N)(x1,..,xN)=<0|T(φ(x1)..φ(xN))0>
に一致します。
さて,話は重複するかもしれませんが,
相互作用:Lint(φ)が存在して,Lagrangian密度Lが,
L(φ,∂φ)=(1/2)∂μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2(x)+Lint(φ)
で与えられる実スカラー粒子の場:φ(x)を想定します。
この相互作用しているスカラー粒子のN点Green関数G(N)は,
G(N)(x1,..,xN)=<0|T(φ(x1)φ(x2)..φ(xN)|0>
で与えられますが,これの生成汎関数を特にZ[J]とします。
Z[J]は,配位空間の経路積分によって
Z[J]=N∫Dφ exp[i∫d4x{(-1/2)φ(□+μ2)φ
+Lint(φ)+Jφ}]
=N∫Dφ exp[i{(-1/2)φ*(□+μ2)φ+J*φ}]
と書けます。
右辺の最後の式では,煩わしい∫d4xという表現を省略する
ため,時空座標xの任意関数φIx),ψ(x)に対して,内積と
呼ばれる演算:φ*ψを,φ*ψ=∫d4xφ(x)ψ(x)=ψ*φ
によって定義,導入しました。
Z[J]は,結局,
Z[J]=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0 なる式に表わせることが
わかります。
ただし,任意のφの汎関数F(φ)について,
<F(φ)>0
=(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}*F(φ))φ=0
と定義しました。
<F(φ)>0の意味はF(φ)に左から微分演算子:
exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}
=Σk=0∞(1/k!)(1/2)k(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}k
を作用させ,最後にφをゼロと置く操作です。
これは,<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0では,
級数展開Σk=0∞(1/k!) )1/2)k(δ/δφ)*iΔF*(δ/δφ)}k
のkの1次ごとにexp[i∫d4x{Lint(φ)}]から
φ(x)φ(y)のようなφの対を1つ取り除き,代わりに
自由場のFeynman伝播関数:
iΔF(x-y)=<0|TT(φin(x)φin(y)|0>
で置き換えるという操作を示しています。
そして,係数(1/2)はxとyの交換の自由度2で割ることを
意味します。
また,自由場のFeynman伝播関数は,Fourier積分の形で,
ΔF(x-y)
=∫d4k(2π)-4[exp{-ik(x―y)}/(k2-m2+iε)]
なるものです。
生成関数における指数関数の級数展開は,
Z[J]=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=Σm=0∞(1/m!)∫d4y1..d4ym
<iLint(y1).. iLint(ym)exp(iJ*φ)>0/(分母)
となります。
右辺の級数展開は相互作用LintがLに比べて,微小な摂動である
と考えたときの摂動展開級数そのものです。
(分母)=<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0の効果については,遷移
行列要素の摂動計算に考慮すべきでないと考えられる真空泡の
グラフを(分子)から相殺して除去する操作に関わるものなので,
本質的な寄与をする(分子)の各項について具体的計算方法を
考えます。
具体的には,< >0は.まず.φの2個の積の場合には,
明らかに,<φ(x1)φ(x2)>0=iΔF(x1-x2)
=[φin(x1)φin(x2)] です。
便宜上,iΔF(x1-x2)を,Symbolicに[φin(x1)φin(x2)]
なる記号で表現しました。
このように,φ(x1),φ(x2)の組をFeynman伝播関数
iΔF(x1-x2)で置き換える操作を縮約(contraction)
と呼びます。
以下.具体的に,経路積分による定式化を整理すれば,Feynman
グラフによる通常の伝統的摂動論の計算法に一致することが
示せることを記述しています。
また,Fermion場への一般化もできますが,今回これは省略
します。
ここまでは既に記述した過去シリーズ記事の(1)~(11)の内容です。
ここから今回本題の「有効作用と有効ポテンシャル,」の話
を追加します。
まず,Green関数の生成汎関数は,
Z[J]=<0|Texp(iJ*φ)]|0>
=<exp[i∫d4x{Lint(φ)+J*φ}]>0
/<exp[i∫d4x{Lint(φ)}>0
=N∫Dφexp[i{S[φ]+Jφ}] と表現されます。
このとき,Z[J]=exp{iW[J]}によって,W[J]
を定義します。
Pをproper連結グラフ(固有連結グラフ)とすると,
Z[J]=expPと表わせるので,iW[J]は連結固有Green関数
の生成汎関数です。
一方,W[J]=S[φ]+Jφと表わしていますが,具体的には
Jφ=∫d4xΣiJiφi(x),であり,S[φ]は作用積分の形で
S[φ]=∫d4xL(φ(x),∂φ(x)) です。
ここで,有効作用;Γ[φ]をW[J]から.汎関数のLegebdre変換:
Γ[φ]=W[J]-Jφ によって定義します。
ところで,
δZ/δJi=(iδW/δJi)Z
=i<0|φi(x)Texp(iJ*φ)]|0>より,
φ~i(x)=(δW/δJi)
=<0|φi(x)Texp(iJ*φ)]|0>/Zと置くと,
φ~i(x)=(δW/δJi)は,J(x)という外場が存在
するときの場:φi(x)の期待値を意味することが
わかります。
Γ[φ]をJi(x)でなく,上記の期待値:φ~i(x)の関数:
Γ[φ~]と考えると,Ji(x)=δΓ[φ~]/δφ~i(x)
です。
(※注:何故なら.WはJの関数と見ると,Wのφ~iによる微分
は,δW/δφ~i=Σk(δJk/δφ~i)(δW/δJk)
=Σk (δJk/δφ~i)φ~k であり,
一方,δ(Jφ)/δφ~i=(δJk/δφ~i)φ~k+Ji
なので,δΓ/δφi=δW/δφ~i-δ(Jφ)/δφ~i
=-Jiとなるからです。 (注終わり※)
有効作用:Γ[φ~]が重要な理由の1つは,これが1粒子
既約な頂点関数:Γ(n)の生成汎関数になっている。
つまり,Γ[φ~]=Σn=0∞∫d4x1..d4xn
φ~i1(x1)..φ~in(xn)Γ(n)(x1,..xn) となって
いる点です。
ここで,W[J]に効くグラフで伝播関数の線を1本切って
グラフが2つの部分に分離できるとき,その線を関節線
と呼びます。伝播関数の線が外線のそれであれば常に関節線
ですが,外線以外に関節線を持たないグラフを1粒子既約な
グラフ,内線にも関節線があるそれを1粒子可約なグラフと
呼びます。
結局,Γ[φ~]は量子効果であるループグラフを除く単純な
Treeレベルでは,hcをPlanck定数としたO(hc)を除く近似
で,古典的作用積分:S[φ~]=∫d4xL(φ~,∂φ~)に
一致します。
この有効作用の物理歴意味をさらによく理解すべく,より
特殊な場合を考えます。
外場Jと期待値φ~が共に時間x0=tに依存しない場合を
考えると,この場合.時間並進不変性があるので,W[J]や
Γ[φ~]の∫d4x表現から,無限大の時間因子:T=∫dx0
がくくり出せます。
すなわち,W[J(x)=J(x)] =-w[J(x)]∫dx0,
Γ[φ~(x)=φ~(x)]=-E[φ~(x)]∫dx0 です。
さらに,Jとφ~が時空座標xに完全に依存しない定数の場合.
W[J(x)=J]= =-w[J]∫d4x,
Γ[φ~(x)=φ~]=-V[φ~]∫d4x です。
最後の,V[φ~]はφ~の関数であり,有効ポテンシャル
と呼ばれます。
3次元空間のxの関数:φ~(x)の汎関数:E[φ~(x)]には
決まった名称はありませんが,V[φ~]にならって
有効エネルギーと呼んでおきます。
Jとφ~がt=x0に依存しないときを考えると,
Z[J]=exp{iW[J]}=exp{-iw[J]T}
=<0| exp{-iH[J]T}|0>,ただし,H[J]
=H-∫d3xJ(x)φ~(x)で,
Hはエネルギーを意味するHamiltonianです。
つまり,期待値の関数としては,
H=∫d3x{π~φ~-L(φ~,∂φ~)},
=-∫d3xL(φ~,∂φ~)=-Lです。
何故なら,φ~がt=x0に依存しないため,共役:
π~=∂L/∂(∂0φ~)=∂0φ~がゼロだからです。
そして,真空:|0>はエネルギーHの最低固有値状態
(基底状態)でしたが,ここでも-iε処法を採用している
とすれば,T=∫dx0=∞ の極限では,事実上,H[J]
=H-∫d3xJ(x)φ~(x)の基底状態:|0J>のみが
exp{-iw[J]T}=<0| exp{-iH[J]T}0>の|0>に
効きます。
それ故,T → ∞ではw[J]はH[J]の基底状態の
エネルギー固有値です。
つまり,H[J] |0J>=w[J] |0J> です。
他方,この)固有値問題は,量子力学の変分原理の問題と
同じく, <Ψ|Ψ>=1,<Ψ|φ(x)|Ψ>=φ~(x)の
下で,<Ψ|H|Ψ>を停留値にする停留解:|Ψ>を求める
停留問題とみなすことができます。
すなわち,この,H|Ψ>=E|Ψ>の解が,
|Ψ>=|0J>,E=w[J]を与えます。
したがって,場の理論で真空を探す問題では,予め並進
不変性を考慮して,E[φ(x)]のxに依存しないφ~の
関数である有効ポテンシャル:V[φi~]の停留点を
∂V[φ~]/∂φi~=0 から求めればいいです。
結局,有効ポテンシャル:V[φ~]は,場φi(x)の期待値が
φi~(定数)である条件下での基底状態のエネルギー密度と
解釈され,その最低の固有値に対応する状態が真空です。
(注3-1終わり※)
さて,上記注の前に,
複素スカラー場のGoldstone模型:
L=∂μφ*∂μφ+μ2φ*φ-(λ/2)(φ*φ)2 を
提示して一般に系の安定な真空の候補は有効ポテンシャル:
V(φ~)の∂V/∂φ~=0 で決まる停留点で与えられます。
ただし,φ~(x)は,Heisenberg場:φ(x)の期待値です。
と述べたところまで戻ります。
Goldstone模型では,φ~の関数としての有効ポテンシャルは
V0[φ~]=-μ2φ~*φ~+(λ/2)(φ~*φ~)2 と書けます。
このポテンシャルは,φ'(x)=exp(-iθ)φ(x)に対する
U(1)不変性を反映して,φ~の大きさ|φ~|のみに依存して
おり,図6.1に描いたの実軸での断面図をV軸の周りに回転
して得られるワインボトルの底部のような形をしています。
|φ~|の関数形に変形すると,
V0[φ~]=-μ2|φ~|2+(λ/2)|φ~|4ですから,
∂V0[φ~]/∂|φi~|=―2μ2|φ~|+2λ|φ~|3
=-2|φ~|2(μ2-λ|φ~|2)=0 より.
停留点は,元の不安定な真空に対応するφ~=0,と,
|φ|=v/√2=(μ2/λ)1/2 で与えられます。
|φ|=v/√2=(μ2/λ)1/2 は,Vの断面図を回転した
ワインボトルの底に当たる円周上の点を示しています。
この円周上の点は,どの点も物理的に同等ですが,どれか
1つの点を取って新しい真空とすれば,場φの位相を1つ
選び出すことになり,U(1)対称性を自発的に破ります。
特に,円周が実軸と交わる点をφ~を与える真空|0>に
取れば,これは,<0|φ(x)|0>=v/√2を実現します。
そこで,φ(x)={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2と定義
すれば,ψ(x),χ(x)は真空期待値がゼロの実スカラー
場です。
φ=(v+ψ+iχ)/√2を,
L=∂μφ*∂μφ+μ2φ*φ-(λ/2)(φ*φ)2
に代入して,m2=2μ2>0とすると,
L=(1/2){(∂μψ)2-m2ψ2}+(1/2)(∂μχ)2
-(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)-(λ/8)(ψ2+χ2)2
-V0[v/√2] を得ます。
ここで,V0[φ]=-μ2|φ|2+(λ/2)|φ|4
であり.φ~=<0|φ(x)|0>=v/√2ですから,
V0[φ~]=V0[v/√2]=-(μ2/2)v2+(λ/8)v4
です。
(※注3-2):上のLの式右辺を導出します。
まず,∂μφ*∂μφ=(∂μψ-i∂μχ)(∂μψ+i∂μχ)
=(∂μψ)2+(∂μχ)2 です。
次に,μ2φ*φ=(μ2/2){(v+ψ)2+χ2}
=(μ2/2){v2+(ψ2+χ2)+2vψ} です。
また,-(λ/2)(φ*φ)2
=-(λ/8){v4+(ψ2+χ2)2+4v2ψ2+2v2(ψ2+χ2)
+4v3ψ+4vψ(ψ2+χ2)} です。
ここで,v/√2=(μ2/λ)1/2,かつ,2μ2=m2より,
λv=√2μ√λ=m√λ,λv2=2μ2=m2 です。
そこで,まず,(μ2/2)(ψ2+χ2)-(λ/8)2v2(ψ2+χ2)=0,
(μ2/2)2vψ-(λ/8)4v3ψ=0 で(ψ2+χ2)の項やψの
1次の項は消えます。
そして,-(λ/8)4v2ψ2=-(1/2)m2ψ2,
-(λ/8)4vψ(ψ2+χ2)=-(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)
です。
残りは,(1/2)μ2v2-(λ/8)v4=-V0[v/√2]です。
(注3-2終わり※)
L=(1/2){(∂μψ)2-m2ψ2}+(1/2)(∂μχ)2
-(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)-(λ/8)(ψ2+χ2)2
-V0[v/√2]を見ると.ψは質量がm,χは質量ゼロ
のスカラー粒子を示しています。
φ=(v+ψ+iχ)/√2によって
<0|φ(x)|0>=v/√2であったのを,新しい場:
ψ,χでは,<0|ψ(x)|0>=<0|χ(x)|0>=0となる
ようシフトしたため,χは質量ゼロで出現したN.G.粒子
の場である,と解釈されます。
実際,これは,対称性が破れる前の元の系では,
jμ=i{φ*∂μφ-(∂μφ*)φ}.
π=∂L/∂(∂0φ)=∂0φ*,Q=i∫{φ*π*-πφ},
で.<0|i[Q,φ]|0>=<0|-iφ|0>=-iv/√2≠0
でしたが,
ψ,χは無矛盾な場として<0|i[Q,ψ]|0>=0,
<0|i[Q,χ]|0>=0 であるべきです。
そして,jμ=i{φ*∂μφ-(∂μφ*)φ}
=v(∂μχ)+..となることから,χはN.G.粒子の
漸近場と理解されます。
この近似レベルから.χが正しく規格化されたN.G.ボソン
のHeisenberg場とわかるので,前記事のカレントの漸近条件::
jμ(x) xo→±∞ → fπ∂μφas(x)+..,
と比較して,上記式は真空期待値の√2倍のvが.
崩壊定数fπを与えることを示しています。
以上で,Goldstone模型の話を終わります。
つい,本題から逸れた有効ポテンシャルの説明にのめり込んで
必要以上に冗長となり,長くなってしまいました。
今回はここまでにします。
次回はまず,「南部-Goldstoneの定理」の別証明を与え,
次にもう1つの例である「南部^Jonalasino模型」に進みます。
(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論(Ⅱ)」(培風館)
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