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2017年9月11日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(4)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

今回,最初は「南部-Goldstoneの定理」の別証明、および, 

対称性の自発的破れの興味深いもう1つの例である

「南部-Jonalashino模型」の紹介と説明を行う予定でした

,「南部-Jonalashino模型」を詳しく説明しようとすると

とても長くなることがわかったので2つに分けて今回は,

「南部-Goldstoneの定理」の別証明の話だけにします。
 

(前置き):さて,前回,Goldstone模型で書き直したLagrangian 

密度:(1/2){(μψ)2-m2ψ2}(1/2)(μχ)2 

(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2-V0[/2] 

において,χの質量項がゼロで.ψの質量項が正しい符号の 

(1/2)2ψ2で出現した理由を考え直してみます。
 

これら場の2次の項は,の中のポテンシャル項:-V0[φ] 

だけに由来しており,その停留点:φ=φ~=v/2の周り

での 曲率=2×2行列:{2/∂φi∂φj}φ~=v/2 の固有値

が2乗質量のゼロとm2に対応している,ことに気付きます。
 

ポテンシャル:0[φ],前回の6.1で回転したワイン瓶

の底の形であることを示しましたが,この瓶底の1点:

φ~=v/2の周りで見ると動径方向(Reφ方向)の曲率が

最大で,それがψの2乗質量:2を与え,一方,円周方向

(Imφ方向),そもそもU(1)対称性によりポテンシャル

の値が変化しない方向ですから,曲率はゼロで,これが

..ボソン:χの零質量を与えるとわかります。
 

この見方は,..ボソンが,何故,零質量になるのかに

ついて,ポテンシャル項:0の持つ対称性から.直接視覚的

に明快な説明を与えるもので「南部-Goldstoneの定理」の

別証明の発想の基礎となります。
 

(定理の別証明):局所的Heisenberg場の一組:{Φ()}

理論の対称性の群Gのある既約表現の基底になっていると

します。(※線型表現の不変部分空間の基底であれば既約

でなくてもいいと主鱒が。。)
 

すなわち,次式が満たされているとします。 

[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()] 

=-iijΦj() (i=1,2..,)
 

 ij,この既約表現でのGの生成子T 

表現行列(要素)です。
 

Φi()は,一般に"素"Heisenberg場の多項式で与えられる 

複合場であり,[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()] 

=-iijΦj(),[i,Φi()]=δΦiが線型変換 

であると主張するものではありません。 

(※表現が線型表現であるだけです。)
 

この複合場:Φi()に対する外場:i()を導入し, 

exp(i[])=<0|exp[∫d4J i()Φi()]|0 

によってW[]を定義し,これのLegendre変換: 

Γ[Φ]=W[]J Φから有効作用:Γ[Φ],そして,Φ

が定数の場合として有効ポテンシャル:[Φ]が得られた

とします。
 

Γ[Φ],[Φ]は対称性群GのΦを基底とする線型表現

の無限小変換である線形変換:Φi → ΦiiεijΦj

の下で明らかに不変ですから,(∂V/∂Φ)jΦ0

が成立します。
 

これは,Φについての恒等式ですからさらに両辺をΦ

微分して,同じく,恒等式:

(2/∂Φ∂Φ)jΦ(∂V/∂Φ)j0  

を得ます。
 

ここで,ある真空|0>における複合場演算子:Φi()

期待値,i=<0|Φi()|0>とすると, 

[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()]

=-iijΦj()から,

0|[i,Φ()]{0>=<0|δΦ|0 

=-<0|iijΦ(){0>=-iij

と書けます。
 

それ故, 次のような対応があることになります。 

ij0 ⇔ T(破れていない生成子) 

ij0 ⇔ T() (破れた生成子)
 

一方,

(2/∂Φ∂Φ)jΦ(∂V/∂Φ)j0  

,∂V/∂Φ0の停留条件を満たすΦ=viで評価

すると,[2/∂Φ∂Φ]φ=vj0 です。
 

ところが一般に,0|Φi()|0>=vi0 となる真空上

Green関数,:Φi()を,vi+Φ^i()のように真空

期待値分viだけシフトして,0|Φ^i()|0>=0 となる

ような新しい無矛盾な場をΦ^i()として再定義する

必要があります。

  そして,有効作用;Γ[Φ]=Γ[Φ^],Φの周り

Taylor展開した級数: 

Γ[Φ]Γ[Φ^]Σn=0(1/!)∫d41..4n 

Φ^i1(1)..Φ^in(n)Γ()(1,..n) 

の係数:Γ()(1,..n),この真空上の新しい無矛盾な

:Φ^()1粒子既約な頂点関数を与えます。
 

このことから有効ポテンシャル:[Φ],Φの周り

Φ^によるTaylor展開の係数:(),運動量表示の

有効作用:-Γ~()(1,..n)のpj0 での値:

-Γ~()(0,..,0)に一致することがわかります。
 

特にn=2では,

[2/∂Φ∂Φ]φ=v-Γ~i,j(2)(p=0) 

-Δ -1ij{=0 です。 

ここで,Δ -12Green関数=Feynman伝播関数:

Δ() ij逆行列要素です。 

(※ iΔ()ij

=∫d4{exp(ipx)0|TΦi()Φj(0)|0})です。)


それ故,
[2/∂Φ∂Φ]φ=vj0 は,

(j)零ベクトルを意味しない限り,(j)

が行列:{(iΔ) -1}ij{=0固有値ゼロに属する固有

ベクトルであることを示しています。
 

1スカラー1粒子だけの系では,その質量がmなら,伝播関数

の運動量表示,Δ()1/(2-m2iε)ですから,

p=0 のとき,-Δ -1=m2です。
 

故に:行列(-Δ -1ij|=0)は質量を意味する行列であり,

対角化したときの対角成分=固有値は質量を意味します。
 

-Δ -1ij|=0の零固有値は固有ベクトル方向の場が零質量

を持つことを意味するため,破れた生成子:に対応する数

の独立な固有ベクトルv≠0 が零質量のN..粒子

として出現することを示しています。

(証明終わり)
 

(4-1):前回記事での有効作用・有効ポテンシャルの説明で 

必要なのに,落としてしまったと思われる部分を追加します。
 

有効作用:Γ[φ]1粒子既約な頂点関数:Γ()の生成汎関数

あったことから従う有効ポテンシャル:[φ]のもう1つの

側面に注意します。

  
頂点関数:Γ()の運動量表示Γ~()を運動量保存のδ関数

を外して定義します。すなわち, 

∫d41..4n exp{i11..inn}

Γ()i1/..in(1,..,n)

=Γ~() i1..in( (1,..,n)(2π)4δ4(1..+pn)

です。
 

有効作用の展開:Γ[φ]=Σn=0(1/!)∫d41..4n 

φi1(1)..φin(n)Γ()i1..in(1,..n) において, 

φi()をφ~i(定数)とし,[Φ]の定義式,および, 

(2π)4δ4(p=0)=∫d4 exp(ipx)|p=0を考慮すると,
 

[φ~]=-Σn=0(1/!)φ~i1..φ~inΓ~()i1..in(0...,0) 

を得ます。
 

すなわち,有効ポテンシャル:[φ~],運動量piが全て

ゼロのときのn点頂点関数の生成関数という意味を持つ

ことがわかりました。

  
さらに,[]の経路積分表式: 

[]exp(i[])­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}] 

を,Γ[φ~]=W[]­­Jφ=に代入し,自然単位に

Planck定数:c復活させると[φ~]

(ic)ln[φexp{(i/c){[φ](φφ~)}] 

となります。
 

経路積分φの積分変数を,φ → φ+φ~と変数置換して, 

-Ji()=δΓ/δφiを代入すれば, 

Γ[φ~](ic)ln[φexp{(i/c){∫d4 

([φφ~](δΓ/δφ)φ)}]  です。
 

[φφ~]をc-: φ~の周りで量子場:φ()につて 

展開すると,[φφ~][φ~](/∂φi)φi 

(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]

と書けます。
 

ここで,|(iF)-1φ~}ij,|(iF)-1φ~}ij 

(2[φφ~]/∂φi∂φj)|φ=0

(2[φ~]/∂φ~i∂φ~j) で与えられますが,これは

:φの期待値がφ~であるような真空の上でのFeynman

伝播関数の逆数となってるのでこう表記しました。
 

int[φ;φ~],φについては3次以上のφ~における

相互作用項です

  
この[φφ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると, 

Γ[φ~]=∫d4[φ~]+Γ~[φ~] 

Γ~[φ~](ic)lnφexp[(i/c){∫d4 

[(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]

(δΓ/δφ)φ}] を得ます。 

  
これで,うまい具合に有効作用:Γ[φ~]から,古典的作用積分: 

[φ~]=∫d4[φ~]が分離されました。
 

(4-1終わり※)
 

今回は短かいながらここまでにして,次回は本当に 

「南部-Jonalashino模型」の説明に進みます。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()(培風館)

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