対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(5)
「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
対称性の自発的破れを起こす例として前のGoldstone模型
よりは自明でない例として「南部-Jonalashino模型」
(NJ)模型を考察します。
「南部-Jonalashino模型」のLagrangian密度:Lは.
L=Ψ~iγμ∂μΨ+(G/N)[(Ψ~Ψ)2+(Ψ~iγ5Ψ)2]
で与えられます。
ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,Fermion場:
ΨはN個のDirac場:ψのSU(N)変換群の基本表現を示す
列ベクトルであるとします。
すなわち,Ψ=[ψ1,..,ψN]Tとします。
そして,Ψ~ΓΨ=Σj=1NΨ~jΓψj と規約します。
元々の(NJ)模型は.N=1の単純な模型でした。
さて,このN-Fermion系は,位相変換U(1)
Ψ(x) → exp(-iθ)Ψ(x)の不変性以外に,カイラル
U(1)変換:Ψ(x) → exp(-iγ5θ)Ψ(x)の下での
不変性を持ちます。
その対称性成立のために,Lには,-mΨ~Ψ(mは質量行列)
のようなFermion質量項はない,としています。
ここからはカイラルU(1)対称性が,この系の動力学により
自発的に破れて.Ψが質量を獲得する可能性を調べます。
4次のfermion相互作用項:(G/N)(Ψ~Ψ)2の形を考慮すれば,
複合場:Ψ~Ψ(x)がゼロでない真空期待値;
<0|Ψ~Ψ|0>=-{N/(2G)}m ≠0 を実現すれば,Ψが
-mΨ~Ψの質量項を得ると期待されます。.
※(注5-1):Ψ~Ψ=Ψ^~Ψ^-{N/(2G)}mと置くことが
できれば,<0|Ψ^~Ψ^|0>=0 であり,(G/N)(Ψ~Ψ)2
=(G/N)(Ψ^~Ψ^)2― mΨ^~Ψ^+{N/(4G)}m2ですから
質量項:ー mΨ^~Ψ^ が出現します。
(注5-1終わり※)
このとき,Ψ → exp(-iγ5θ)Ψに対するΨ~Ψ,Ψ~iγ5Ψ
の変換則;Ψ~Ψ → Ψ~Ψcos(2θ)-Ψ~iγ5Ψsin(2θ),
および,Ψ~iγ5Ψ → Ψ~Ψsin(2θ)+Ψ~iγ5Ψcos(2θ)
と,カイラルカレント:j5μ=Ψ~γμγ5Ψによる
カイラルチャージ:Q5=∫d3xj50(x) により,
[iQ5,Ψ~iγ5Ψ(x)]=∫d3y[j50(y),Ψ~iγ5Ψ(x)]
=2Ψ~Ψ(x) となります。
※(注5-2):何故なら,無限小カイラル変換:
U(ε)=exp(-iγ5ε)=1-iγ5εの場合, Ψ →Ψ+δΨ
=U(ε)Ψ, δΨ=-iγ5εΨで,
Ψ~Ψ→ Ψ~Ψ-2εΨ~iγ5Ψ,
Ψ~iγ5Ψ→: Ψ~iγ5Ψ+ 2εΨ~Ψであり,
[iεQ5,Ψ~iγ5Ψ(x)]=2εΨ~Ψ(x)
とmばるからです。 (注5-2終わり※)
それ故,<0|Ψ~Ψ|0>≠0は,カイラルチャージQ5の対称性
の自発的破れ.を意味し,擬スカラー複合場:Ψ~iγ5Ψの
チャネルに擬スカラーのN.G.ボソンが現われることを
意味します。
" このN.G.ボソンは元のLagrangian密度の中には"素”
Heisenberg場として用意されていないので,動力学的に
結合状態(bound state)として供給される必要が
あります。
この問題を扱うのに補助場の方法
(auxiliary field method)と呼ばれる技法を用います。
Fermionの系のGreen関数の生成汎関数は,η,η~を
Grassman数の外場として,
Z[η,η~]=∫DΨDΨ~[expi∫d4x
{L+η~Ψ+ηΨ~}]で与えられます。
これにGauss積分の1を表わす因子:
1=∫Dσ'Dπ'[expi∫d4x[-{N/(2λ)}{σ'(x)2+π'(x)2}]
を挿入しても等式は不変です。
※(注5-3):ただし上の1の因子の等式が成立するかどうか?
は不変測度;Dσ'Dπ'の規格化に左右されますが,定数である
ことには間違いないし不変測度は定数倍の任意性を持つという
意味で,こう規格化するのは可能です,(注5-3終わり※)
積分変数:σ'(x),π'(x)を次のようにσ(x),π(x)に変数
置換します。すなわち,σ'=σ+(λ/N)(Ψ~Ψ),および,
π'=π+(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ) とします。
この変換で積分測度は不変:Dσ'Dπ'=DσDπ です。
系のLagrangian密度は,
L-{N/(2λ)}(σ'2+π'2)
=L-{N/(2λ)}[{σ+(λ/N)(Ψ~Ψ)}2
+{π+(λ/N)Ψ~iγ5Ψ)}2]
=Ψ~iγμ∂μΨ+(G/N)(Ψ~Ψ)2+(G/N)(Ψ~iγ5Ψ)2
-{N/(2λ)}(σ2+π2)-{λ/(2N)}(Ψ~Ψ)2
-{λ/(2N)}Ψ~iγ5Ψ)2-Ψ~(σ+iγ5π)Ψ
と表わせます。
よって,Z[η,η~]=∫DΨDΨ~DσDπ
[expi∫d4x{LY(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}]
が得られます。
ただし,LY(Ψ,Ψ~,σ,π)
=L-{N/(2λ)}[{σ+(λ/N)(Ψ~Ψ)}2
+{π+(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)}2]
=Ψ~iγμ∂μΨ
-{N/(2λ)}(σ2+π2)-Ψ~(σ+iγ5π)Ψ です。
ここで,Lの中の4次のFermion相互作用が全て相殺されて
消えるように,パラメータ:λを,λ=2G と選びました。
こうして,Lにおける4次のFermion相互作用は,湯川型相互
作用:Ψ~Ψσや.Ψ=iγ5Ψπに置き換えられました。
.ここで導入した場:σ(x),π(x)を補助場,LをLYに
書き換えるトリックを補助場による方法と呼びます。
その導出手順から,Lの系とLYの系が物理的に等価であるのは
明らかですが,経路積分によらなくても,LYにおいて補助場:
σ,πは運動項を持たないので.σ,πに対するEuler-Lagrange
の運動方程式が,σ=-(λ/N)Ψ~Ψ,π=-(λ/N)Ψ~iγ5Ψ
となり,これらをLYに代入すると,元のLに帰着するため,等価
なことが確かめられます。
そして,σ=-(λ/N)Ψ~Ψ,π=-(λ/N)Ψ~iγ5Ψ,から
σとπは,それぞれ,複合場:Ψ~ΨとΨ~iγ5Ψを代用する場
であると解釈されます。
LY系も元々はカイラルU(1)対称性を持っています。
Ψ(x)の変換は元のΨ → exp(-iγ5θ))Ψです。
補助場:(σ(x),π(x))の変換は,
(Ψ~Ψ(x),Ψ~iγ5Ψ(x))と同じ2成分ベクトルとして,
角度2θの(σ,π)平面の回転で与えられます。
そこで,項:-{N/(2λ)}(σ2+π2)は不変です。
しかし,-Ψ~σΨの項は,σ=-(λ/N)Ψ~Ψ,がゼロ
でない真空期待値を取る,という真空凝縮
(vacuum condensation)を起こせば,実質上.この項は
-<0|σ|0>Ψ~ΨとなってΨが<0|σ|0>≠0 の質量
を獲得し,結果,カイラルU(1)対称性を破ります。
ここでは,σとπの挙動にのみ関心があるので,生成汎関数
Z[η,η~]でη,=η~=0 としてFermionによる積分を先
に実行してしまえば;
(※DΨDΨ~積分はGauss積分なので,
Gauss積分公式:∫DψDψ*exp(ψ*Aψ)=DetA
(Aは4×4のガンマ行列)から, N成分のΨでは
N重積分分で,∫DΨDΨ~exp(Ψ~AΨ)=(DetA)N
です。
故に,∫DΨDΨ~exp[iΨ~{i∂-(σ+iγ5π)}Ψ]
=Det{-∂-i(σ+iγ5π)}N
=exp[NlnDet{-∂-i(σ+iγ5π)}] です。※)
それ故,
Z=∫DσDπ∫DΨDΨ~[expi∫d4x{LY(Ψ,Ψ~,σ,π)}]
とすると,Z=∫DπDσ[expiNSB[σ,π] と書けます。
ただし, NSB[σ,π]=N∫d4x[-{1/(2λ)}(σ2+π2)
-iln{Det{-∂-i(σ+iγ5π)}] です。
(※FermionのN個のN成分あったので,ln(Det)N=Nln(Det)
となり全体から,因子Nがくくり出せることに注意!!※)
この時点でNは作用積分全体にかかっているので,(1/hc)
と同様な定数因子です。
それ故,Z=∫DπDσ[expiNSB[σ,π],の作用:
SB[σ,π]=∫d4x∫d4x[-{1/(2λ)}(σ2+π2)
-ilnDet{-γμ∂μ-i(σ+iγ5π)}])で記述される
σ,πのループグラフ展開は(1/N)展開と同じに
なります。
Zの表記から有効作用を.Z=exp(iNΓ)として,
NΓ[σ,π]と書けば.Γ[σ,π]=SB[σ,π]+O(1/N)
です。
ここで,O(1/N)は1ループ以上の量子効果です。
すなわち,有効ポテンシャル:V[φ~]は,運動量piが全てゼロ
のときのn点頂点関数の生成関数という意味を持つことが
わかりました。
※(注5-4):前記事の(注4-1)から転載します。
Z[J],W[J]の経路積分表式:
Z[J]=exp(iW[J])=N∫Dφexp[i{S[φ]+Jφ}]
をΓ[φ~]=W[J]-Jφ=に代入し,単位にPlanck定数:hc
を復活させると,
Γ[φ~]=(-ihc)ln[∫Dφexp{(i/hc){S[φ]+J(φ-φ~)}]
となります。
経路積分Dφの積分変数を,φ → φ+φ~と変数置換して,
-Ji(x)=δΓ/δφiを代入すれば,
Γ[φ~]=(-ihc)ln[∫Dφexp{(i/hc){∫d4x
(L[φ+φ~]-(δΓ/δφ)φ)}] です。
L[φ+φ~]をc-数:φ~のまわりで量子場:φ(x)について
展開すると,L[φ+φ~]=L[φ~]+(∂L/∂φi)φi
+(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφj+Lint[φ;φ~]
と書けます。
ここで,|(iDF)-1φ~}ijは,|(iDF)-1φ~}ij
=(∂2L[φ+φ~]/∂φi∂φj)|φ=0=(∂2L[φ~]/∂φ~i∂φ~j)
で与えられますが,これはこの頂点2点関数が場:φの期待値がφ~
であるような真空上でのFeynman伝播関数の逆数になっているため
こう表記しました。
Lint[φ;φ~]は,φについては3次以上のφ~における相互作用項
です。
このL[φ+φ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると,
Γ[φ~]=∫d4xL[φ~]+Γ~[φ~]
Γ~[φ~]=(-ihc)ln∫Dφexp[(i/hc){∫d4x
[(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφj+Lint[φ;φ~]-(δΓ/δφ)φ}]
を得ます。
これで,うまい具合に有効作用:Γ[φ~]から,古典的作用積分:
S[φ~]=∫d4xL[φ~]が分離されました。
Γ~[φ~]の項はhcの1次以上のオーダーの量子効果で,
1粒子既約なループグラフの寄与を示しています。
(注5-4終わり※)
Γ~[φ~]のhcのオーダーでのループグラフ展開が,
ここでの(1/N)による展開と同等と考えられます。
以下,もっぱら(1/N)展開の最初の0次オーダーだけを考えます。
有効作用:Γ[σ,π]に対応する有効ポテンシャル:V[σ,π]
は,Γ[σ,π]=SB/∫dx0 に対して,
V[σ,π]=-SB/∫d4xで与えられる,という定義より,
V[σ,π]={1/(2λ)}(σ2+π2)
-(1/i)∫d4k(2π)-4 lnDet[ik-i(σ+iγ5π)] です。
このDet(determinant)は,Dirac場に対する4×4行列の
行列式を意味します。
Det[exp(iγ5θ)=exp{iθ(Trγ5)}=1であり,π/σ
=tan(2θ)で回転角2θを定義して,
lnDet[k-i(σ+iγ5π)]=lnTr[k-i(σ+iγ5π)]
=ln(k2-σ2-π2)を用います。
すると,V[σ,π]={1/(2λ)}(σ2+π2)
-(2/i)∫d4k(2π)-4 ln(k2-σ2-π2+iε) です。
最後の4次元積分はk → ∞ の紫外部で発散し,このまま
では,うまく定義されていません。
そこで,運動量kをEuclid化して,紫外部を切断する切断理論
(cut-off
theory)で,この模型を定義することにします。
すなわち,Euclid化運動量をkEμ=(k1,k2,k3,k4=k0/i)
として,(1/i)∫d4kf(-k2)=∫kE2≦Λ2d4kEf(kE2)
=π2∫0Λ2kE2f(kE2)dkE2 の定積分を定義します。
(1/i)∫d4k(2π)-4 ln(k2-σ2-π2+iε)
={1/(16π2)}∫0Λ2uln(-u-σ'2)du
={1/(32π2)}{(Λ4ln(Λ2+σ'2)-σ'4ln(1+Λ2/σ'2)
-(Λ4-2σ'2Λ2)/2} (σ'2=σ2+π2) なので,
V[σ,π]=V[0,0]+{1/(2λ)}(σ2+π2)
-{1/(16π2)}[Λ4ln{1+(σ2+π2)/Λ2}
-(σ2+π2)2ln{1+Λ2/σ2+π2)}-{Λ4-2(σ2+π2)Λ2}}
となります。
この有効ポテンシャル:V[σ,π]は,カイラル対称性を反映
して明らかに(σ,π)平面での回転で対称です。
これを,π=0の断面で見れば,Λ2 → 大 とするとき,
σ2 <<Λ2なら,
V[σ,π=0]-V[0,0]={1/λ-Λ2/(4π2)}(σ2 /2)であり,
σ2 >>Λ2なら,V[σ,π=0]-V[0,0]=σ2 /(2λ)
です。
したがって,結合定数:λ=2Gが小さくて,1/λ≧Λ2/(4π2)
となっている間は.停留点はσ=π=0しかなく,カイラル
対称性は維持されますが,λが大きくなって
,1/λ<Λ2/(4π2)になると原点よりもVが低い
(ワイン瓶底内の)停留点が現われ,カイラル対称性は自発的
に破れます。
こうした自発的破れが起きる最小の結合定数を臨界結合定数
(critical coupling constant)と呼びます。今の場合これを
λcrtと書けば,λcrt=4π2/Λ2 です。
λ>λcrtで,対称性が自発的に破れる場合,真空をπ=0 の断面
上の点に取るとすれば,σの期待値:<0|σ(x)|0>=σ0は,
Vの停留点条件:{∂V[σ,π=0]/∂σ}σ=σ0=σ0/λ
-σ0/(4π2){Λ2-σ02ln(1+σ02/Λ2)}=0 から決まります。
これは対称性の破れていない"ノーマル解";σ0=0 以外に,
λ>λcrt=4π2/Λ2 では
,4π2/(λ"2)=1-σ02/Λ2)ln(1+σ02/Λ2)で決まる
σ0≠0 の”スーパー解(super solution or 超伝導解)"
を持ちます。
4π2/(λΛ2)=1-(σ02/Λ2)ln(1+σ02/Λ2)の右辺は
図6.3に示すような(σ02/Λ2)の単調減少関数でλが
λcrt=4π2/Λ2 に達すると4π2/(λcrtΛ2)=1であり,
λ>λcrから解σ0が存在するようになって,λ → 大に
つれて,解σ0は単調増加します。
このσ0は,V[σ,0]={1/(2λ)}σ2
-(1/i)∫d4k(2π)-4 lnDet[i(k-σ)]をσで微分して
ゼロと置いても得られます。
lnDet[i(k-σ)]=Trln[i(k-σ)]ですから,Vをσで
微分して,σ0=λ∫d4k(2π)-4Tr {i/(k-σ0)}なる
方程式の解として.σ0が表現されます。
この右辺の量は,質量m=σ0の運動量表示の伝播関数:
,i/(k-σ0+iε)を持つFermionがまわるループグラフ
の寄与に相当していて,
「Fermionがm=σ0の質量を得たとしたとき,
(λ/N)(Ψ~Ψ)2の相互作用項を通して誘起される質量項
が,またm=σ0であるべきである。」という要求です。
これは 「南部-Jonnalashinoの自己無撞着条件
(self-consistent condition)」と呼ばれています。
上記計算から,λ>λcrtのときには,確かに動力学的に
カイラル対称性が破れることを見出しましたが,それに
対応する零質量のN.G.ボソンが果たして現われている
のでしょうか?
本記事の最初の方でNoetherカレントから求めた
カイラルチャージ:Q5の交換関係:
[iQ5,Ψ~iγ5Ψ(x)]=∫d3y[j50(y),Ψ~iγ5Ψ(x)]
=2Ψ~Ψ(x)を示しましたが,
これはN.G.粒子が,擬スカラー・チャネル,つまり,
π~ Ψ~iγ5Ψに現われるべきことを示しているので,
補助場π(x)の2点関数を計算してみます。
まず,(1/N)展開の第 0 次近似での有効作用;Γは
作用積分:SBで与えられます。すなわち,
Γ=SB=∫d4x[-{1/(2λ)(σ2+π2)
-ilnDet{-∂-i(σ+iγ5π)}} です。
このΓが,その生成汎関数となる頂点関数の展開における
2点頂点関数;Γ(2)(x)の運動量表示の展開係数を求める
と,それはΓ~(2)(p)(2π)4δ4(p+q)であり,これがπの
伝播関数の逆数{iΔF(p)}-1に対応するわけです。
これは,具体的には,[δ2Γ/δπ(p)δπ(q)]π=0,σ=σ0
なる運動量表示のπによる展開の2次の係数です。
lnDet=Trln なので
Γ~(2)(p)=-1/λ-∫d4k(2π)-4
Tr[(-iγ5){1/(k-σ0)}(-iγ5){1i/(k+p-σ0)}
と書けます。
途中計算は省略で,Fetynmanパラメータ積分公式を使って,
Γ~(2)(p)=-1/λ-∫01dx∫Λd4k(2π)-4
[4{k2-σ02―x(1-x)p2}/{k2-σ02―x(1-x)p2{2]
を得ますが,先の自己無撞着条件から,
これは結局ゼロとなりますから,
p~0 でΓ~(2)(p)=ΔF(p)-1~ 0+cp2+O(p4)
となり,場πの伝播関数は零質量の極を持つことが証明
されました。
そしてさらに,
Γ~(2)(p)=-1/λ-∫01dx∫Λd4k(2π)-4
[4{k2-σ02―x(1-x)p2}/{k2-σ02―x(1-x)p2{2]
は,kをEuclid化した後,初等的に計算可能で,これも
途中計算を省略で,最終結果は.
Γ~(2)(p)=-1/λ-{1/(4π2)}
[Λ2-(1/2)(2σ02-p^2)ln(1+Λ2/σ02)+(p^2/2)
|(2Λ2+4σ02-p2)/(4Λ2+4σ02-p2)}B(p2,Λ2+σ02)
-(p^2/2)B(p2,σ02) となります。
ただし,このΓ~(2)(p)はπ(x)の2点頂点関数だけでなく
σ(x)の2点頂点関数をも表わす式です。そして,p^2は,
π(x)の場合:p^2=p2を,σ(x)の場合:p^2=p2―4σ02
を意味します。
また,B(p2,M2)は,(-p2)≧0 なら,
B(p2,M2)={(4M2-p2)/(-p2)}1/2
×ln[{(4M2-p2)1/2+(-p2)1/2}
/{(4M2-p2)1/2-(-p2)1/2}]
={(4M2-p2)/(-p2)}1/2
2Tan-1{(-p2)/{4M2-p2)}1/2
0≦p2≦4M2なら,
B(p2,M2)={(4M2-p2)/p2}1/2 2Tan-1{p2/{4M2-p2)}1/2
です。
場:π(x)のくりこみ定数:Zπは,
Γ~(2)(p)=Zπ-1p2+O(p4)で定義されるので,
B(0,M2)=2を用いて,
Zπ-1={1/(8π2)} [ln(1+Λ2/σ02)-(Λ2+σ02)/Λ2]
=2∫d4kE(2π)-4(kE2+σ02)-2 を得ます。
場:πは系のLagrangian密度に-Ψ~iγ5Ψπの相互作用項を
持つので.くりこまれたNGボソン場:πr=Zπ-1/2πの
Fermion:Ψへの結合は,LintπΨΨ~=gπΨΨΨ~iγ5Ψπr;
gπΨΨ=Zπ-1/2 で与えられます。
この,結合定数:gπΨΨ=Zπ-1/2が元の基本結合定数:λ=2G
には直接依存せず,<0|σ(x)|0>=σ0だけから決まるのは
興味深いことです。
一方, Ψ~iγ5Ψ(x)
=-(N/λ)π(x)→ -(N/λ)Zπ1/2πr(x)
であり,<0|2Ψ~Ψ(x)|0>=-2(N/λ)<0|σ(x)|0>
=-2(N/λ)σ0 です。
そこで,[iQ5,Ψ~iγ5Ψ(x)]=∫d3y[j50(y),Ψ~iγ5Ψ(x)]
=2Ψ~Ψ(x) と,以前の記事での,
jμ(x) xo→±∞ → fπ∂μφas(x)+..,
[φas(x),φas(y)]=iD(x-y)
Φ(x) xo→±∞ → Z1/2φas(x)+..,fπZ1/2φ
=<0|δΦ|0>でのN.G.漸近場φasと.πrの比較に
よって.fπ=2(N/λ)σ0/{(N/λ)Zπ1/2}=2σ0Zπ^1/2
となって崩壊定数fπも求まります。
最後に,スカラー補助場:σ(x)のΓ~(2)(p)の計算結果において
注目すべきは,p^2=p2-4σ02=0で,Γ~(2)(p)=0 となること
です。すなわち,スカラーチャネルにも,mσ2=4σ02の質量を
持つ結合状態が生じています。
しかしm=σ0がFermion:Ψの質量ですから,p2=4σ02は,
丁度Ψ-Ψの2-Fermion状態の閾値であり,真の結合状態でなく
共鳴状態と考えられます。
「南部-Jonalashino模型」は.噛めば噛むほど味が出るような,
豊富で複雑な内容を含んでいて,少し計算を省略したにも
関わらず,長くなってしまいました。
今日はここで終わります。
この「対称性の自発的破れ」の項目は,このテキストの6章には
まだ続きがあるのですが,これもアップするかどうか?はPeding
とします。
(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論(Ⅱ)」(培風館)
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