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2017年9月24日 (日)

場の量子論第Ⅱ部(11)(空間反転;パリティ 1)

  唐突ですが.昨年途中で中断した「場の量子論」の続きをアップします。 

自由場の理論を記述した過去記事:「相対論的場の量子論」

(1)(37)(場の量子論;第Ⅰ部)に続いて,相互作用する場に

ついて記述した「場の量子論第Ⅱ部」は2016年8/25(7)

最後に中断しました。
 

現在進行中の記事と並行して「場の量子論第Ⅱ部」の続き 

15章の「不連続対称性」から再開し「場の量子論第Ⅱ部(11) 

とします。
 

§15.10 Improper Symmetries(不連続対称性)
 

これまで,考えてきた対称演算は,全て無限小変換によって生成可能な 

ものでした。それらの対称性変換は,無限小変換の連続によって生成 

することができました。( Lie群の1と連結した部分)
 

しかし,相互作用項の性質として非常に役立つ,選択則(Selrction-rules) 

や必要情報を生み出す”Improper”または.不連続(離散的)な変換も存在 

します。
 

これらは,空間反転(Space-inversion;鏡映:Reflection),または,

パリティ(Parity):, 時間反転(Time-reversal):,および,

荷電共役(Charge-conjugation): の変換が代表的です.


,
以下,これらについて論じます
 

§15.11 Parity(パリティ)

 

パリティ変換の意味を定義するために,対象とする物質場のLagrangian 

密度に,測定装置の系(一般に外電磁場)との相互作用を示す項を加えます。

 

すなわち,-jμ()extμ()  

,全体系のLagrangian密度になります。

 

ここで,extμ(),系のカレント演算子:μ()

と相互作用する古典的に与えられた外場として扱うことにします。
 

もしも毒亭装置を反転させれば,系の状態を調べて解析すべき

外場が,~extμ()(ext0(,),extμ(,))

extμ(,)で与えられるような新しい物理系を考えるなら,

パリティが保存されるという意味は,この新しい系の動力学

(運動方程式)が元の系と同一になることです。
 

(11-1):測定装置を空間的に反転させると点における外場

,の装置では-にあったもので,3次元の極性ベクトル場は

空間的向きが反対となって現われ,3次元空間のスカラーならその

ままで現われます。
 

電場Eは極性ベクトル,磁場は軸性ベクトルであり,

B=∇×A,E=-∇A-∂A0/∂t なので,3次元極性ベクトル

0空間的にはスカラーと考えられます。

(111終わり※)
 

特に新しい系の作用:~=∫d4{-jμ()~extμ()}

が,あるユニタリ変換:によって,元の系の作用Jと関係付け

されれば,運動方程式は変化しません。

(※J~-1の場合です。)
 

,PL(,)-1(-x,), 

μ(,)-1=jμ(-x,)なる変換性を与え,場の交換関係

を不変に保つユニタリ変換とします。
 

(11-2):測定装置を反転することによって状態ベクトルが変換 

されますが,それはあるユニタリ演算子:によって,任意の状態 

ベクトル:|α>が,|α> → |α'>=|α>となるような

ものでなければなりません。
 

測定装置を対象とする物理系に対して空間反転することは,物理系

測定装置に対して空間反転することと全く同等であると

考えられます,これはJ~, → -と置換し,μ(,)

μ(-x,),~extμ()をAextμ()に変えてもJ~が変化しない

ことに相当します。
 

そうして,理論の不変性,運動方程式の不変性は, 

<α||β>=<α'|~|β'>によって保証されます。
 

つまり,<α||β>=<α|~|β>,あるいは, 

演算子式としてJ=~P or ~JP-1を成立させる 

ユニタリ演算子:Pが存在しさえすれば,物理系の空間反転に

対して,理論は不変です。 

 

古典論に対応付けるならJは,元の物理系の作用であり,

~ではなく,~Pが,新しい反転系の作用に対応します。
 

くどいかもいれませんが,~,とjμを構成する場の時空座標 

パラメータを変えたもの(外場の座標は生えない)に過ぎず,

場の空間座標のパラメータを→ -と変えたyとき,さらに

理論を不変に保つような場の内的変換(internal transformation)

を与える最終的なJの変換が~Pというわけです。

そこで,J=~Pはこの変換で作用が不変に保たれることを

保証しています。
 

<α||β>=<α|~|β>は,陽に書けば 

<α|∫d4{(,)-jμ(x、t)extμ(,)}|β> 

=<α|∫dt∫-3{(,)

-jμ(x、t)~extμ(,)}|β> です。
 

ところが,-3xは∫-3(-x)と書くことができ,ここでの

パリティ変換は外場を変換させないものを扱っているので.

(,)(,),μ(,)=jμ(,),

extμ()=Aextμ(),

 
あるいは,PL(,)-1(-x,),μ(,)-1=jμ(-x,)

なるが存在すれば,この変換が交換関係を不変に保つ限り,

つまり,[φiα(,),πjβ(,)]

[φiα(,),πjβ(,)] ,or

 

[φiα(,),πjβ(,)]

[φiα(,),πjβ(,)]を満たす限り,理論は不変に

保たれるといえます。 (11-2終わり※)
 

それ故,PL(,)-1(-x,), 

μ(,)-1=jμ(-x,),かつ,交換関係を不変に保つ

変換:が存在する場合,元の系と空間反転された新しい系とは同じ

力学法則を満足し,パリティが保存される,といいます。
 

さて,まず,自由粒子の理論を考えて自由粒子Lagrangian密度に

対して,上述の条件を満たす変換の演算子:を陽に作ることを

試みます。
 

Klein-Gordon方程式に従うスカラー粒子の場:φ()に対しては, 

φ(,)-1=±φ(-x,),明らかに, 

PL(,)-1(-x,), μ(,)-1=jμ(-x,), 

を満たし,正準交換関係を不変に保ちます。

 

(11-3):何故なら, 

(x,t)(1/2){μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ2(x,t)}より, 

PL(,)-1(-x,), 

PL(,)-1(1/2){μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ2(x,t)} 

(-x,) を意味します。
 

これは,φ2(x,t)-1=φ2(x,t)なら成立します。

 

中性スカラー場なら電磁場と相互作用する電磁カレントはゼロです。
 

荷電スカラー場の場合は,φ()は複素スカラー場で 

(x,t)=∂μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ(x,t)φ(x,t) 

より,|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら, 

PL(,)-1(-x,)が成立します。
 

カレントは, 

μ(,)i[φ(,)μφ(,){μφ(,)}φ(,)] 

なので,μ(,)-1=jμ(,), 

0(,)-1=j0(,),(,)-1=-(,) 

を意味します。
 

(,)i[φ(,)φ(,){φ(,)}φ(,)] 

(,)i[φ(,)-φ(,){-φ(,)}φ(,)] 

であり,∇-=-∇ですから,やはり,

|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら,μ(,)-1=jμ(,)

が成立します。
 

そして,実スカラー場なら,π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt) 

同時刻正準交換関係は,[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]

=-iδ3()でsが,これもφ2(x,t)-1=φ2(x,t)なら保存されます。

 

つまり,[π(-x,),φ(-x,)]i[0φ(,),φ(,)] 

=-iδ3() です。
 

複素場なら,π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt), 

π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt)で同時刻正準交換関係

[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]=-iδ3()

[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]=-iδ3() 

ですから,|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら,保存されます。

 

(11-3終わり※)
 

空間反転を2回連続行なうと,位相も含めて元に戻るるなら 

φ(,)-1=±φ(-x,)から,2φ(,)(-1)2=φ(,) 

が導かれrますから2=+1φ(,)-1=±φ(-x,)の右辺 

の符号:,-の選択は,この場で記述される粒子の内部パリティと

呼ばれるもの(量子数の1)を定義します。
 

()符号はスカラー粒子,()符号は擬スカラー粒子に対して現われる

もの,π中間子はパ,リティが()の擬スカラーです。
 

これは真空に作用して粒子を生成する場の特殊な変換規則です。

すなわち,φ()|0>をつくる場φの性質です。これは,異なる

粒子間の相互作用が導入されると決まるものです。

 

粒子の内部パリティは与えられた軌道角運動量の1状態にある

粒子の波動関数に関係する軌道パリティとは異なるものです。
 

真空からφ()|0>によって作られた1粒子に対して, 

角運動量状態l,つまり,|n=1;l>における波動関数:

()は次の性質を持ちます。
 

(,)=<0|φ(,)|n=1;l> 

(1)l0|φ(,)|n=1;l>=(1)l(,) 

これは,関数f()の偶奇性の叙述に他なりません。
 

つまり,まず,真空;|0>はパリティが偶()である:|0>=|0 

と規約されています。この真空に相対的に|n=1;l>のパリティ

は次のように書くことで見出されます。
 

<n=1;l{φ(,)|0>=<n=1;l{φ(,)^1|0 

=±<n=1;l{φ(,)|0>=±(1)l<n=1;l{φ(,)|0 

=±(1)l(,)です。
 

それ故, |n=1;l>の真空に対するパリティは粒子の内部パリティ(±)

,軌道関数の偶奇性(パリティ):(1)lの積となっていることがわかります。
 

|n=1;l>=±(1)l|n=1;l>です。
 

したがって,P状態(l=1)にある擬スカラーのπ中間子は偶()パリティ 

を持ちます。
 

スカラー場の運動量空間での展開によれば,パリティ変換は次の条件を 

満たします。
 

^()-1=a^(),^()-1=a^() です。 

 

(11-4): スカラー場の運動量k-空間での展開は, 

φ()=φ(,)=∫d3}^()()+a^()k()}

です。ただし,k()=fk(,)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx) 

(2π)-3/2(2ω)-1/2exp{i(0t-kx)}であり,ω(2+m2)1/2

逆展開から,^()

=∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)}] 

i∫d3[k(,)0φ(,)],


^()=∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)}] 

=-i∫d3[k(,)0φ(,)] を得ます。

 

ただし,

()0()=p()0(){0pq()}() 

です。
 

それ故,^()-1 

=±∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)} 

=±∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)} 

=±a^(),同様に,^()-1=a^()です。 

(11-4終わり※) 

 

そこで,,m個の同種粒子の固有状態の全ての運動量固有値 

:1,2,..を負の運動量状態に置き換えた,運動量固有値: 

1,2,..の新しい固有状態を生成させます。

 

しかし,この新状態は電荷などのチャージとか;粒子数とかの

空間座標に無関係な他の量子数については,元と変化がない状態

です。

 

すなわち,|1,2,..>=a^(1)^(2)..^(m)|0 

に対して,を作用させると,

 

|1,2,..m>=^(1) ^(2) .. ^(m)|0 

^(1)-1^(2)-1..^(m)-1|0 

(±1)m|^(1)^(2)..^(m)|0 

(±1)|1,2,..m>を得ます。

 

係数=パリティは,m個のスカラー粒子なら,(±1)=+1,m個の

擬スカラー粒子なら,(±1)(1)m です。 

 

,exp(i^)によってP^を導入します。

はユニタリ(unitary)ゆえ,exp(i^)-1exp(i^)

ですから, ^=P^です。つまり,^Hermite演算子です。
 

exp(i^)=Σn=0(in^n/!),かつ 

-1exp(i^)=Σn=0{in(-P^)n/!} より,
 

^()-1=a^()i[^,^()](i2/2!)[^,[^,^()]] 

..(in/!)[^[^,..[^,^()]+..=-a^() 

ただし,ここでは擬スカラー場に対応するものと仮定して,最右辺で 

()符号を選択しました。
 

この形式は,[^,^()]がa^()とa^()の1次結合になる 

であろうことを示唆しているため,λと符号を上の交換関係の関係式 

から決めるものとして,対称性から, 

[^,^()](λ/2){^()±a^()} と置いてみます。
 

すると,[^,^()](λ/2){^()±a^()} 

=±(λ/2){^()±a^()}ですから,

 

^()-1=a^()i[^,^()](i2/2!)[^,[^,^()]] 

..(in/!)[^[^,..[^,^()]+..=-a^(),

^()-1=a^()(1/2){iλ+(iλ)2/2!..(iλ)n/!..} 

×{^()±a^()}=a^()(1/2)[^()±a^()} 

(1/2)exp(iλ){^()±a^()}=-a^() 

に帰着します。(※厳密な証明は帰納法により可能です。) 

 

上式は擬スカラー場ですがスカラー場なら 

^()-1=a^()(1/2)[^()±a^()} 

(1/2)exp(iλ){^()±a^()}=a^()です。 

 

そこで,[^,^()](λ/2){^()+a^()}

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。 

 

そこで,これは,[^,^()](λ/2){^()+a^()} 

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。
 

そして,擬スカラー場については.このP^を求める方程式を解くこと 

ができます。すなわち擬スカラー場のP^をPps^と書けば,これに対する 

方程式は,[ps^,^()](π/2){^()+a^()}です。
 

ps^(π/2)∫d3^()と置けば, 

∫d3'[^('),^()]{^()+a^()}

それ故,[^(),^()] 

=δ3(k’-k)^(')+δ3(k'+k)^(') 

[^(),^(')]^(')[^(),^(')]^(') 

=-[^('),^()]^(')[^(').^()]^(') 

=-[{^(')^(')+a^(')^(')},^()]

です。
 

故に, ^() =-{^()^()+a^()^()}, 

ps^=-(π/2)∫d3^()^()+a^()^()}
 

したがって,擬スカラー場の空間反転(パリティ)演算子は, 

psexp(ips^) 

exp[(iπ/2)∫d3^()^()+a^()^()}] 

なる表現で与えられ,ps^()ps-1=-a^() 

が満足されます。
 

スカラー場については.[^,^()](λ/2){^()―a^()} 

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。


 スカラー場のP^をPs^と書けば,これを求める方程式は, 

[s^,^()](π/2){^()-a^()}です。
 

以下,擬スカラー場のケースと同様にして 

s^=-(π/2)∫d3[^()^()-a^()^()} 

sexp(ips^) 

exp[(iπ/2)∫d3k{^()^()-a^()^()} 

が得られ,s^()s-1=a^()が満足されます。
 

ps^=-(π/2)∫d3k{^()^()+a^()^()} 

s^=-(π/2)∫d3k{^()^()-a^()^()} 

は明らかにHermite演算子なので,この表現により, 

psexp(ips^),sexp(ips^)のユニタリ性は満たされ, 

また,真空:|0>のパリティは偶()である,という規約も,

ps^,s^が正規順序の形であり,ps^0>=Ps^|0>=0 なので 

自動的に満たされています。
 

途中ですが,今日はここで終わり次回は相互作用する場 

に拡張します。アップしたのですが文字化けが多く,時間をかけ

ても修復できず自分で削除しました。

 

原因不明です。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell  

Relativistic Quantum Fields (McGrawHill)

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