« 2017年8月 | トップページ | 2017年10月 »

2017年9月

2017年9月25日 (月)

場の量子論第Ⅱ部(12)(空間反転;パリティ2)

 パリティの続きです。
 

ここまでは,()スカラー場の自由粒子(自由場)限定の論議でした 

,相互作用がある一般の系についても, 

PL(,)-1(-x,),および, 

μ(,)-1=jμ(-x,t)を見たし,生準交換関係を不変

に保つパリティ演算子を同様にして作ることができます。
 

そのときには,上記関係が依然として正しく,そこで,が理論

の対称性演算子として系のHamiltonian :H^と交換する。, 

つまり,[,^]0 であって,運動の恒量となるかどうか?を 

チェックする必要があります。
 

すなわち,一般に,PL(,)-1(-x,),および, 

μ(,)-1=jμ(-x,)を満たすをつくるために, 

最初,t=0 ,これを満たす,0 をつくります。
 

t=0 での相互作用する場を自由場(自由波)の完全系によって

展開すると,その展開係数は自由場と同じ交換代数を満たすので

は先の自由場の解と同じ形で得られます。
 

時刻tでのを得るためには,時間的に平行移動するため,系の 

Hamiltonian:^を用いればいいです。
 

すなわち,まず,0,0(,0)0-1(-x,0),  

0μ(,0)0-1=jμ(-x,0)を満たし,交換関係を不変 

保ちます。
 

このとき,()exp(i^)0 exp(i^),一般の 

時刻tで,条件:PL(,)-1(-x,),および, 

μ(,)-1=jμ(-x,)を満たし交換関係を不変 

保ちます。

(12-1):何故なら,

φ(,)exp(i^)φ(,0) exp(i^) より,

φ(,)-1exp(i^)0φ(,0)0-1 exp(i^) 

=±exp(i^)φ(,0) exp(i^)=±φ(,)
 

つまり,φ(,)-1=±φ(,)となるからです。 

(12-1終わり※)
 

もしも,,対称性演算子で,条件:[,^]0 を満たすなら 

()(0)0  です。
 

(12-2);[,^]exp(i^)[0,^]exp(i^)0 

なら.[0,^]0 であり,()0です。

(12-2終わり※)
 

次はDiracスピノル場に移ります。
 

Diracスピノル場については,条件: 

PL(,)-1(-x,),および,  

μ(,)-1=jμ(-x,)を満たし,交換関係を不変 

保つPとしてはPψ(x,t)-1=γ0ψ(ーx,t)を満たす 

ものを選択できれば満足されます。,
 

まず,Dirac方程式:(iγμμ-m)ψ()0 ,  

ψ'(,)=γ0ψ(,)に対して不変であることは 

既に,Bjorken-DrellMechanicsのテキスト第2章で詳しく  

述べられていることからの帰結です。
 

(12-3):本ブログでは,上記のMehanicsのg第2章の対応

部分は,20105/30の過去記事:「散乱の伝播関数の理論(8)

です。ここから必要部分を再掲載します。
 

変換が,proper(連続変換)であれimproper(不連続変換)であれ, 

Lorentz変換:x'μ=aμνν,または,略記法でx'=axに 

伴なう波動関数のLorentz変換: 

ψ'α(x’)=ψ'α(ax)=Sαβ()ψβ(),または.略記法で, 

ψ'(x')=ψ'(ax)=S()ψ()を考えます。
 

( det()=+1のときが,proper変換で,det()=-1のときが 

improper変換です。※)
 

すると,x'=axから逆変換-1対して,x=a-1x'ですから, 

ψ'(x')=S()ψ(-1x'),つまりψ'()=S()ψ(-1) 

です。
 

一方,ψ()=S(-1)ψ'(ax),ψ()=S-1()ψ'(ax)より, 

(-1) =S-1()なる関係が成立します。
 

また, ,/∂xμ(∂x'ν/∂xμ)(/∂x'ν) です。 

よってx'ν=aνμμより,μνμ∂'νです。
 

そこで,Dirac方程式(iγμμ-m)ψ()にx=a-1x', 

およびψ()=S-1()ψ'(x')を代入して左からS() 

掛けると,[i()γμ-1()νμ∂'ν-m]ψ'(x')0  

を得ます。
 

それ故,νμ()γμ-1()=γν,または, 

νμγμ=S-1()γν()が成立すれば, 

(iγν∂' ν-m)ψ(x')0 となって方程式が相対論的に共変 

になります。  (再掲載終了)
 

さて,aが空間反転を意味するなら, 

x'μ=aμνν(0,-x)=xμ=gμννより,  

μν=gμνです。そこで,条件;νμ()γμ-1()=γν 

においてaνμ=gνμより,()=γ0はとすれば,確かに, 

νμ()γμ-1()=gνμ=gνμγ0γμγ0=γνが成立 

します。
 

それ故,ψ'(,)=γ0ψ(,) ,または, 

ψ'(,)=γ0ψ(-x,)とすれば,

(iγμ μ-m)ψ'()0 が満たされます。
 

(12-3終わり※)
 

(12-4):自由Dirac粒子のLagrangian密度は, 

(,)=ψ~(,)(iγμ μ-m)ψ(,)です。
 

そこで,ψ(,)-1=γ0ψ(,)なら.  

PL(,)-1=ψ(-x,)(iγμ μ-m)γ0ψ(-x,) 

=ψ~(-x,)(iγ0γμγ0 μ-m)ψ(-x,) 

=ψ~(-x,)(iγμ μ-m)ψ(-x,)(-x,)です。
 

また,μ(,)=ψ~(,)γμψ(,)より, 

μ(,)-1=ψ(-x,)γμγ0ψ(-x,) 

=ψ~(-x,)γ0γμγ0ψ(-x,) 

=ψ~(-x,)γμψ(-x,)=jμ(-x,) 

です。
 

さらに,共役運動量が,πα()=∂/(0ψα)iψα()となる 

ことから,同時刻反交換関係:

{ψα(,),πβ(,)}iδαβδ3() 

{ψα(,),ψβ(,)}=δαβδ3()ですが, 

を作用させると,{ψα(,)-1,ψβ(,)-1 } 

{(γ0)αμψμ(,),ψν(,)(γ0)νβ} 

(γ0)2αβδ3()=δαβδ3() となって,交換関係 

も保存されます。 (12-4終わり※)
 

Dirac場に対してを陽に作るには,再び,直接,運動量展開の 

展開係数に対する作用を考えるのが便利です。
 

ψ(,)=∫d3(2π)-3/2(/)1/2 

Σ±s[^(,)(,)exp{i(t-px)} 

+d^(,)(,)exp{i(t-px)}]なる展開 

を作用させると,
 

ψ(,)-1=∫d3(2π)-3/2(/)1/2 

Σ±s[^(,)-1(,)exp{i(t-px)}

^(,)-1(,)exp{i(t-px)}] 

です。
 

他方,γ0ψ(-x,)=∫d3(2π)-3/2(/)1/2 

Σ±s[^(,)γ0(,)exp{i(t+px)} 

+d^(,)γ0(,)exp{i(t+px)}]
 

=∫d3(2π)-3/2(/)1/2 

Σ±s[^(,)γ0(,)exp{i(t-px)} 

+d^(,)γ0(,)exp{i(t-px)}] 

ですが, γ0(,)=u(,), 

γ0(,)=―v(,) です。
 

それ故,ψ(,)-1=γ0ψ(-xt)となることは, 

^(,)-1=b^(,),^(,)-1 

=-d^(,)を意味します。
 

のユニタリ性から.^(,)-1=b^(,) 

^(,)-1=-d^(,)も得られます。
 

^は真空に作用して,1つの電子,または重粒子(baryon) 

生成し,^,陽電子,または,反重粒子を生成するので, 

例えば,1つの電子は同じ軌道状態にある1つの陽電子と反対 

のパリティを持つことがわかります。
 

実は.の変換則として仮定したψ(,)-1=γ0ψ(,) 

,φ0を任意の実数として,ψ(,)-1exo(iφ0)γ0ψ(,) 

なる位相因子:exo(iφ0)を付加しても.ここまでの論議は成立します。
 

この位相の任意選択の下で,電子状態:^(,)0>は,空間反転 

の下でスカラーとして変換し,陽電子状態:^(,)0>は 

擬スカラーとして変換します。
 

相対的にs状態(l=0)にある電子-陽電子対(Positronium), 

位相に無関係に奇()のパリティを持ちます。
 

同様に相対的にs状態にある重粒子-反重粒子対のパリティは 

[,^]0 を満たす,対称操作となるような理論を扱う 

ときには,やはり,()です。
 

すなわち,∫d3{(2)^(,)^(,)0} 

=-∫d3{(2)^(,)^(,)0}です。
 

Dirac場に対しての陽な形を得るためには,スカラー場に対して 

やったのと同じ手順を実行すればいいです。
 

Dirac場のDiracとするとき,Diracexp(i^Dirac) 

と置いて,^Dirac=(-π/2)∫d3 

{^(,)^(,)-b^(,)^(,) 

+d^(,)^(,)-d^(,)^(,)} 

が得られます。
 

(12-5):つまり,Dirac,Diracexp(i^Dirac)と置いて, 

[^Dirac,^(,)](λ/2){^(,)±b^(,)}を仮定,
 

Dirac,^(,)-1Dirac=b^(,) 

(1/2)[^(,)±b^(,)} 

(1/2)exp(iλ){ ^(,)±b^(,)}=b^(,) 

なのでλ=-πとして,Diracexp(i^Dirac)=-1 

[^Dirac,^(,)](-π/2){^(,)-b^(,)} 

なら,恒等式になります。
 

同様に,[^Dirac,^(,)] 

(π/2){^(,)+d^(,)}なら, 

Dirac,^(,)-1Dirac=d^(,) 

(1/2)[^(,)+d^(,)} 

(1/2){^(,)+d^(,)} 

=-d^(,)が恒等式になります。
 

これらは,^Dirac=(-π/2)∫d3 

{^(,)^(,)-b^(,)^(,) 

+d^(,)^(,)-d^(,)^(,)} 

であれば満たされます。 

(12-5終わり※)

 
パリテイ操作の中にγ0が出現するため1つの影響はψ~γ5ψ

が擬スカラーになることです。
 

すなわち,ψ~(,)γ5ψ(,)-1 

=ψ(,)γ5γ0ψ(,)=-ψ~(,)γ5ψ(,) 

あるいは, 

ψ~(,)γ5ψ(,)-1=-ψ~(,)γ5ψ(,)です。
 

これは中間子-核子相互作用では重要です。 

例えば,モデルLagurangian:  

Ψ~(iγμμ-Mp)Ψ(1/2)(μφμφ)-μ2φφ) 

i0Ψτγ5Ψφ (ただし,Ψ[ψp,ψ],φ[φ1,φ2,φ3]) 

,実験で要求されるように中間子に対して擬スカラー操作を 

選択すると,そのときに限り,結合されたパリティ演算子: 

π+π0π-の下で,PL(,)-1(,) 

が満足されます。
 

最後に電磁場の内部パリティは対応論から決定されます。

なぜならそれは古典論を連想させるからです。 

それ故,光子について,(,)-1=-(,)です。
 

これはMaxwell Lagrangianを不変に保ちます。  

これはKlein-Gordon場に対して取られた方法をまねれば

得られます。

結局,光子はベクトル粒子なのでパリティは奇()です。
 

これでパリティの項目は終了です。 

次は荷電共役(粒子-反粒子対称性)の項目に移る予定です。

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell  

"Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年9月24日 (日)

場の量子論第Ⅱ部(11)(空間反転;パリティ 1)

  唐突ですが.昨年途中で中断した「場の量子論」の続きをアップします。 

自由場の理論を記述した過去記事:「相対論的場の量子論」

(1)(37)(場の量子論;第Ⅰ部)に続いて,相互作用する場に

ついて記述した「場の量子論第Ⅱ部」は2016年8/25(7)

最後に中断しました。
 

現在進行中の記事と並行して「場の量子論第Ⅱ部」の続き 

15章の「不連続対称性」から再開し「場の量子論第Ⅱ部(11) 

とします。
 

§15.10 Improper Symmetries(不連続対称性)
 

これまで,考えてきた対称演算は,全て無限小変換によって生成可能な 

ものでした。それらの対称性変換は,無限小変換の連続によって生成 

することができました。( Lie群の1と連結した部分)
 

しかし,相互作用項の性質として非常に役立つ,選択則(Selrction-rules) 

や必要情報を生み出す”Improper”または.不連続(離散的)な変換も存在 

します。
 

これらは,空間反転(Space-inversion;鏡映:Reflection),または,

パリティ(Parity):, 時間反転(Time-reversal):,および,

荷電共役(Charge-conjugation): の変換が代表的です.


,
以下,これらについて論じます
 

§15.11 Parity(パリティ)

 

パリティ変換の意味を定義するために,対象とする物質場のLagrangian 

密度に,測定装置の系(一般に外電磁場)との相互作用を示す項を加えます。

 

すなわち,-jμ()extμ()  

,全体系のLagrangian密度になります。

 

ここで,extμ(),系のカレント演算子:μ()

と相互作用する古典的に与えられた外場として扱うことにします。
 

もしも毒亭装置を反転させれば,系の状態を調べて解析すべき

外場が,~extμ()(ext0(,),extμ(,))

extμ(,)で与えられるような新しい物理系を考えるなら,

パリティが保存されるという意味は,この新しい系の動力学

(運動方程式)が元の系と同一になることです。
 

(11-1):測定装置を空間的に反転させると点における外場

,の装置では-にあったもので,3次元の極性ベクトル場は

空間的向きが反対となって現われ,3次元空間のスカラーならその

ままで現われます。
 

電場Eは極性ベクトル,磁場は軸性ベクトルであり,

B=∇×A,E=-∇A-∂A0/∂t なので,3次元極性ベクトル

0空間的にはスカラーと考えられます。

(111終わり※)
 

特に新しい系の作用:~=∫d4{-jμ()~extμ()}

が,あるユニタリ変換:によって,元の系の作用Jと関係付け

されれば,運動方程式は変化しません。

(※J~-1の場合です。)
 

,PL(,)-1(-x,), 

μ(,)-1=jμ(-x,)なる変換性を与え,場の交換関係

を不変に保つユニタリ変換とします。
 

(11-2):測定装置を反転することによって状態ベクトルが変換 

されますが,それはあるユニタリ演算子:によって,任意の状態 

ベクトル:|α>が,|α> → |α'>=|α>となるような

ものでなければなりません。
 

測定装置を対象とする物理系に対して空間反転することは,物理系

測定装置に対して空間反転することと全く同等であると

考えられます,これはJ~, → -と置換し,μ(,)

μ(-x,),~extμ()をAextμ()に変えてもJ~が変化しない

ことに相当します。
 

そうして,理論の不変性,運動方程式の不変性は, 

<α||β>=<α'|~|β'>によって保証されます。
 

つまり,<α||β>=<α|~|β>,あるいは, 

演算子式としてJ=~P or ~JP-1を成立させる 

ユニタリ演算子:Pが存在しさえすれば,物理系の空間反転に

対して,理論は不変です。 

 

古典論に対応付けるならJは,元の物理系の作用であり,

~ではなく,~Pが,新しい反転系の作用に対応します。
 

くどいかもいれませんが,~,とjμを構成する場の時空座標 

パラメータを変えたもの(外場の座標は生えない)に過ぎず,

場の空間座標のパラメータを→ -と変えたyとき,さらに

理論を不変に保つような場の内的変換(internal transformation)

を与える最終的なJの変換が~Pというわけです。

そこで,J=~Pはこの変換で作用が不変に保たれることを

保証しています。
 

<α||β>=<α|~|β>は,陽に書けば 

<α|∫d4{(,)-jμ(x、t)extμ(,)}|β> 

=<α|∫dt∫-3{(,)

-jμ(x、t)~extμ(,)}|β> です。
 

ところが,-3xは∫-3(-x)と書くことができ,ここでの

パリティ変換は外場を変換させないものを扱っているので.

(,)(,),μ(,)=jμ(,),

extμ()=Aextμ(),

 
あるいは,PL(,)-1(-x,),μ(,)-1=jμ(-x,)

なるが存在すれば,この変換が交換関係を不変に保つ限り,

つまり,[φiα(,),πjβ(,)]

[φiα(,),πjβ(,)] ,or

 

[φiα(,),πjβ(,)]

[φiα(,),πjβ(,)]を満たす限り,理論は不変に

保たれるといえます。 (11-2終わり※)
 

それ故,PL(,)-1(-x,), 

μ(,)-1=jμ(-x,),かつ,交換関係を不変に保つ

変換:が存在する場合,元の系と空間反転された新しい系とは同じ

力学法則を満足し,パリティが保存される,といいます。
 

さて,まず,自由粒子の理論を考えて自由粒子Lagrangian密度に

対して,上述の条件を満たす変換の演算子:を陽に作ることを

試みます。
 

Klein-Gordon方程式に従うスカラー粒子の場:φ()に対しては, 

φ(,)-1=±φ(-x,),明らかに, 

PL(,)-1(-x,), μ(,)-1=jμ(-x,), 

を満たし,正準交換関係を不変に保ちます。

 

(11-3):何故なら, 

(x,t)(1/2){μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ2(x,t)}より, 

PL(,)-1(-x,), 

PL(,)-1(1/2){μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ2(x,t)} 

(-x,) を意味します。
 

これは,φ2(x,t)-1=φ2(x,t)なら成立します。

 

中性スカラー場なら電磁場と相互作用する電磁カレントはゼロです。
 

荷電スカラー場の場合は,φ()は複素スカラー場で 

(x,t)=∂μφ(x,t)μφ(x,t)-m2φ(x,t)φ(x,t) 

より,|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら, 

PL(,)-1(-x,)が成立します。
 

カレントは, 

μ(,)i[φ(,)μφ(,){μφ(,)}φ(,)] 

なので,μ(,)-1=jμ(,), 

0(,)-1=j0(,),(,)-1=-(,) 

を意味します。
 

(,)i[φ(,)φ(,){φ(,)}φ(,)] 

(,)i[φ(,)-φ(,){-φ(,)}φ(,)] 

であり,∇-=-∇ですから,やはり,

|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら,μ(,)-1=jμ(,)

が成立します。
 

そして,実スカラー場なら,π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt) 

同時刻正準交換関係は,[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]

=-iδ3()でsが,これもφ2(x,t)-1=φ2(x,t)なら保存されます。

 

つまり,[π(-x,),φ(-x,)]i[0φ(,),φ(,)] 

=-iδ3() です。
 

複素場なら,π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt), 

π(,)=∂L/(0φ)i0φ(xt)で同時刻正準交換関係

[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]=-iδ3()

[π(,),φ(,)]i[0φ(,),φ(,)]=-iδ3() 

ですから,|φ(x,t)|2-1|φ(x,t)|2なら,保存されます。

 

(11-3終わり※)
 

空間反転を2回連続行なうと,位相も含めて元に戻るるなら 

φ(,)-1=±φ(-x,)から,2φ(,)(-1)2=φ(,) 

が導かれrますから2=+1φ(,)-1=±φ(-x,)の右辺 

の符号:,-の選択は,この場で記述される粒子の内部パリティと

呼ばれるもの(量子数の1)を定義します。
 

()符号はスカラー粒子,()符号は擬スカラー粒子に対して現われる

もの,π中間子はパ,リティが()の擬スカラーです。
 

これは真空に作用して粒子を生成する場の特殊な変換規則です。

すなわち,φ()|0>をつくる場φの性質です。これは,異なる

粒子間の相互作用が導入されると決まるものです。

 

粒子の内部パリティは与えられた軌道角運動量の1状態にある

粒子の波動関数に関係する軌道パリティとは異なるものです。
 

真空からφ()|0>によって作られた1粒子に対して, 

角運動量状態l,つまり,|n=1;l>における波動関数:

()は次の性質を持ちます。
 

(,)=<0|φ(,)|n=1;l> 

(1)l0|φ(,)|n=1;l>=(1)l(,) 

これは,関数f()の偶奇性の叙述に他なりません。
 

つまり,まず,真空;|0>はパリティが偶()である:|0>=|0 

と規約されています。この真空に相対的に|n=1;l>のパリティ

は次のように書くことで見出されます。
 

<n=1;l{φ(,)|0>=<n=1;l{φ(,)^1|0 

=±<n=1;l{φ(,)|0>=±(1)l<n=1;l{φ(,)|0 

=±(1)l(,)です。
 

それ故, |n=1;l>の真空に対するパリティは粒子の内部パリティ(±)

,軌道関数の偶奇性(パリティ):(1)lの積となっていることがわかります。
 

|n=1;l>=±(1)l|n=1;l>です。
 

したがって,P状態(l=1)にある擬スカラーのπ中間子は偶()パリティ 

を持ちます。
 

スカラー場の運動量空間での展開によれば,パリティ変換は次の条件を 

満たします。
 

^()-1=a^(),^()-1=a^() です。 

 

(11-4): スカラー場の運動量k-空間での展開は, 

φ()=φ(,)=∫d3}^()()+a^()k()}

です。ただし,k()=fk(,)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx) 

(2π)-3/2(2ω)-1/2exp{i(0t-kx)}であり,ω(2+m2)1/2

逆展開から,^()

=∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)}] 

i∫d3[k(,)0φ(,)],


^()=∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)}] 

=-i∫d3[k(,)0φ(,)] を得ます。

 

ただし,

()0()=p()0(){0pq()}() 

です。
 

それ故,^()-1 

=±∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)} 

=±∫d3[k(,){ ωφ(,)i0φ(,)} 

=±a^(),同様に,^()-1=a^()です。 

(11-4終わり※) 

 

そこで,,m個の同種粒子の固有状態の全ての運動量固有値 

:1,2,..を負の運動量状態に置き換えた,運動量固有値: 

1,2,..の新しい固有状態を生成させます。

 

しかし,この新状態は電荷などのチャージとか;粒子数とかの

空間座標に無関係な他の量子数については,元と変化がない状態

です。

 

すなわち,|1,2,..>=a^(1)^(2)..^(m)|0 

に対して,を作用させると,

 

|1,2,..m>=^(1) ^(2) .. ^(m)|0 

^(1)-1^(2)-1..^(m)-1|0 

(±1)m|^(1)^(2)..^(m)|0 

(±1)|1,2,..m>を得ます。

 

係数=パリティは,m個のスカラー粒子なら,(±1)=+1,m個の

擬スカラー粒子なら,(±1)(1)m です。 

 

,exp(i^)によってP^を導入します。

はユニタリ(unitary)ゆえ,exp(i^)-1exp(i^)

ですから, ^=P^です。つまり,^Hermite演算子です。
 

exp(i^)=Σn=0(in^n/!),かつ 

-1exp(i^)=Σn=0{in(-P^)n/!} より,
 

^()-1=a^()i[^,^()](i2/2!)[^,[^,^()]] 

..(in/!)[^[^,..[^,^()]+..=-a^() 

ただし,ここでは擬スカラー場に対応するものと仮定して,最右辺で 

()符号を選択しました。
 

この形式は,[^,^()]がa^()とa^()の1次結合になる 

であろうことを示唆しているため,λと符号を上の交換関係の関係式 

から決めるものとして,対称性から, 

[^,^()](λ/2){^()±a^()} と置いてみます。
 

すると,[^,^()](λ/2){^()±a^()} 

=±(λ/2){^()±a^()}ですから,

 

^()-1=a^()i[^,^()](i2/2!)[^,[^,^()]] 

..(in/!)[^[^,..[^,^()]+..=-a^(),

^()-1=a^()(1/2){iλ+(iλ)2/2!..(iλ)n/!..} 

×{^()±a^()}=a^()(1/2)[^()±a^()} 

(1/2)exp(iλ){^()±a^()}=-a^() 

に帰着します。(※厳密な証明は帰納法により可能です。) 

 

上式は擬スカラー場ですがスカラー場なら 

^()-1=a^()(1/2)[^()±a^()} 

(1/2)exp(iλ){^()±a^()}=a^()です。 

 

そこで,[^,^()](λ/2){^()+a^()}

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。 

 

そこで,これは,[^,^()](λ/2){^()+a^()} 

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。
 

そして,擬スカラー場については.このP^を求める方程式を解くこと 

ができます。すなわち擬スカラー場のP^をPps^と書けば,これに対する 

方程式は,[ps^,^()](π/2){^()+a^()}です。
 

ps^(π/2)∫d3^()と置けば, 

∫d3'[^('),^()]{^()+a^()}

それ故,[^(),^()] 

=δ3(k’-k)^(')+δ3(k'+k)^(') 

[^(),^(')]^(')[^(),^(')]^(') 

=-[^('),^()]^(')[^(').^()]^(') 

=-[{^(')^(')+a^(')^(')},^()]

です。
 

故に, ^() =-{^()^()+a^()^()}, 

ps^=-(π/2)∫d3^()^()+a^()^()}
 

したがって,擬スカラー場の空間反転(パリティ)演算子は, 

psexp(ips^) 

exp[(iπ/2)∫d3^()^()+a^()^()}] 

なる表現で与えられ,ps^()ps-1=-a^() 

が満足されます。
 

スカラー場については.[^,^()](λ/2){^()―a^()} 

()符号を選び,λ=πとしてexp(iλ) exp(iλπ)=-1 

とすれば,等式が確かに成立します。


 スカラー場のP^をPs^と書けば,これを求める方程式は, 

[s^,^()](π/2){^()-a^()}です。
 

以下,擬スカラー場のケースと同様にして 

s^=-(π/2)∫d3[^()^()-a^()^()} 

sexp(ips^) 

exp[(iπ/2)∫d3k{^()^()-a^()^()} 

が得られ,s^()s-1=a^()が満足されます。
 

ps^=-(π/2)∫d3k{^()^()+a^()^()} 

s^=-(π/2)∫d3k{^()^()-a^()^()} 

は明らかにHermite演算子なので,この表現により, 

psexp(ips^),sexp(ips^)のユニタリ性は満たされ, 

また,真空:|0>のパリティは偶()である,という規約も,

ps^,s^が正規順序の形であり,ps^0>=Ps^|0>=0 なので 

自動的に満たされています。
 

途中ですが,今日はここで終わり次回は相互作用する場 

に拡張します。アップしたのですが文字化けが多く,時間をかけ

ても修復できず自分で削除しました。

 

原因不明です。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell  

Relativistic Quantum Fields (McGrawHill)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月14日 (木)

人情時代劇

 9月11日から12日の深夜,イツモのように,なにげに時代劇専門チャンネルを見ていたら,山本周五郎作の人情時代劇が放送され,ラストで思わず,涙が出てきました。

 長年の仮面ウツ病。。さらに年齢のせいもあり少しのことでは驚かず,心も動かずで喜怒哀楽の感情が希薄になってきても年相応に少しは涙もろいようです。まあ,私の部屋はずっと一人暮らしなので涙を隠す必要なしですが。。。

 主演の乳母役の若い女優が個性的で,[「エ?池波志乃の若い時の作品?」と思いました。が,それにしてはほかの俳優が若いし,映像もカラーで新しそうでしたし色気はそれほど感じなかったので別人かな?

 顔は池波志乃かな?と思っても,体は線がほそいので,,後でネットでしらべてみると,趣里(しゅり)という女優でした。どうも水谷豊と伊藤蘭夫妻の長女ということでしたネ。演技は迫力ありました。。。

「趣里 画像」の画像検索結果

 うーん年甲斐もなくファンに」なりそう。山本周五郎作品はたしか「ぶらり信兵衛道場破り」とか,チャンバラでの殺し合いのある多くの勧善懲悪的時代劇とは違うようです。

 私が見たのは人情時代劇12作の第7話「初蕾」という話らしいです。

「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」とか,封建時代とはいえ,汚職ガラミなど,それなりの現代でも共感できる善悪の価値観に基づいて悪人を退治するという勧善懲悪的時代劇は,100%善人と100%悪人という,わかりやすい構図で,何も考えなくていいのでストレス解消にはります。

 将軍様,副将軍様の次にエライのは,お奉行様の「大岡越前」や「遠山の金さん,」,それに,池波正太郎の「鬼平犯科帳」,そして同心や与力ものから,「銭形平次」などの岡っ引きもの。。。現在なら全部警察ものですが。。

 日本人は(私も含めて),おカミの手先となって凶悪な犯人にをこらしめたり,逮捕する。。というドラマが,とても好きなようです。

 「必殺仕事人」のようなものは,おカミが手を出せないようなっ状況で,アメリカでは昔チャールズ・ブロンソンがやっていた,怒れる市民の復讐のための自警団のようなものでしょうか?それにしても殺し屋ですけど。。

 シバレンの「眠狂四郎」とかは,おカミのイヌじゃないし,,「子連れ狼」は,お尋ね者の方が主人公でした。

 NHK大河ドラマのような歴史ものは私は面倒くさくて見なくなりました。 

 藤沢周平のものは,「蝉しぐれ」とか「武士の一分」とか,ヤットーはありますが,,勧善懲悪というわけではなく,チャンバラもありますが,殺し合いなのに誰も怖がったり逃げたりしないヒーローものに比べて,真剣に対して死の恐怖心もあって腰が引けたりする,リアルな殺陣なども魅力的ですが。。

 スペースオペラのように舞台が宇宙というだけで,内容は現代社会の話と変わらない.昔読んだ「金星のターザン」シリーズとかバローズのSFのように,,山本周五郎の作品は時代背景が封建時代というだけで。。というほど単純じゃないような気もしました。

※ ちなみに。。。池波志乃の写真は↓

「池波志乃」の画像検索結果

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月13日 (水)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(5)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

対称性の自発的破れを起こす例として前のGoldstone模型 

よりは自明でない例として「南部-Jonalashino模型」 

(NJ)模型を考察します。
 

「南部-Jonalashino模型」のLagrangian密度:. 

=Ψ~iγμμΨ+(/)[(Ψ~Ψ)2(Ψ~iγ5Ψ)2]  

で与えられます。
 

ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,Fermion: 

ΨはN個のDirac:ψのSU()変換群の基本表現を示す 

列ベクトルであるとします。
 

すなわち,Ψ=[ψ1,..,ψ]とします。 

そして,Ψ~ΓΨ=Σj=1Ψ~Γψj と規約します。
 

元々の(NJ)模型は.N=1の単純な模型でした。
 

さて,このN-Fermion系は,位相変換U(1)

Ψ() exp(iθ)Ψ()の不変性以外に,カイラル

(1)変換:Ψ() exp(iγ5θ)Ψ()の下での

不変性を持ちます。
 

その対称性成立のために,には,-mΨ~Ψ(mは質量行列)

のようなFermion質量項はない,としています。
 

ここからはカイラルU(1)対称性が,この系の動力学により

自発的に破れて.Ψが質量を獲得する可能性を調べます。
 

4次のfermion相互作用項:(/)(Ψ~Ψ)2の形を考慮すれば, 

複合場:Ψ~Ψ()がゼロでない真空期待値; 

0|Ψ~Ψ|0>=-{/(2)}m ≠0 を実現すれば,Ψが 

-mΨ~Ψの質量項を得ると期待されます。.
 

(5-1):Ψ~Ψ=Ψ^~Ψ^{/(2)}mと置くことが 

できれば,0|Ψ^~Ψ^|0>=0 であり,(/)(Ψ~Ψ)2 

(/)(Ψ^~Ψ^)2 mΨ^~Ψ^{/(4)}2ですから

質量項:ー mΨ^~Ψ^ が出現します。 

(5-1終わり※)
 

このとき,Ψ → exp(iγ5θ)Ψに対するΨ~Ψ,Ψ~iγ5Ψ 

の変換則;Ψ~Ψ → Ψ~Ψcos(2θ)-Ψ~iγ5Ψsin(2θ), 

および,Ψ~iγ5Ψ → Ψ~Ψsin(2θ)+Ψ~iγ5Ψcos(2θ) 

,カイラルカレント:5μ=Ψ~γμγ5Ψによる 

カイラルチャージ:5=∫d350() により,
 

[i5,Ψ~iγ5Ψ()]=∫d3[50(),Ψ~iγ5Ψ()] 

2Ψ~Ψ() となります。
 

(5-2):何故なら,無限小カイラル変換:

(ε)exp(iγ5ε)1iγ5εの場合, Ψ →Ψ+δΨ

=U(ε)Ψ, δΨ=-iγ5εΨで, 

Ψ~Ψ→ Ψ~Ψ-2εΨ~iγ5Ψ,

Ψ~iγ5Ψ→: Ψ~iγ5Ψ+ 2εΨ~Ψであり,

[iεQ5,Ψ~iγ5Ψ()]2εΨ~Ψ() 

とmばるからです。  (5-2終わり※)
 

それ故,0|Ψ~Ψ|0>≠0,カイラルチャージQ5の対称性

自発的破れ.を意味し,擬スカラー複合場:Ψ~iγ5Ψの

チャネルに擬スカラーのN..ボソンが現われることを

意味します。

" 
このN..ボソンは元のLagrangian密度の中には"素 

Heisenberg場として用意されていないので,動力学的に

結合状態(bound state)として供給される必要が

あります。
 

この問題を扱うのに補助場の方法

(auxiliary field method)呼ばれる技法を用います。
 

Fermionの系のGreen関数の生成汎関数は,η,η~

Grassman数の外場として, 

[η,η~]=∫ΨΨ~[expi∫d4

{+η~Ψ+ηΨ~}]で与えられます。
 

これにGauss積分の1を表わす因子:

1=∫σ'π'[expi∫d4[{/(2λ)}{σ'()2+π'()2}] 

を挿入しても等式は不変です。
 

(5-3):ただし上の1の因子の等式が成立するかどうか?

不変測度;σ'π'の規格化に左右されますが,定数である 

ことには間違いないし不変測度は定数倍の任意性を持つという

意味で,こう規格化するのは可能です,(注5-3終わり※)
 

積分変数:σ'(),π'()を次のようにσ(),π()に変数 

置換します。すなわち,σ'=σ+(λ/)(Ψ~Ψ),および, 

π'=π+(λ/)(Ψ~iγ5Ψ) とします。 

この変換で積分測度は不変:σ'π'=σπ です。
 

系のLagrangian密度は, 

{/(2λ)}(σ'2+π'2) 

{/(2λ)}[{σ+(λ/)(Ψ~Ψ)}2

{π+(λ/)Ψ~iγ5Ψ)}2]

=Ψ~iγμμΨ+(/)(Ψ~Ψ)2(/)(Ψ~iγ5Ψ)2 

{/(2λ)}(σ2+π2){λ/(2)}(Ψ~Ψ)2

{λ/(2)}Ψ~iγ5Ψ)2-Ψ~(σ+iγ5π)Ψ 

と表わせます。
 

よって,[η,η~]=∫ΨΨ~σπ 

[expi∫d4{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}] 

が得られます。
 

ただし,(Ψ,Ψ~,σ,π) 

{/(2λ)}[{σ+(λ/)(Ψ~Ψ)}2

{π+(λ/)(Ψ~iγ5Ψ)}2] 

=Ψ~iγμμΨ

{/(2λ)}(σ2+π2)-Ψ~(σ+iγ5π)Ψ です。
 

ここで,Lの中の4次のFermion相互作用が全て相殺されて

消えるように,パラメータ:λを,λ=2G と選びました。
 

こうして,における4次のFermion相互作用は,湯川型相互

作用:Ψ~Ψσや.Ψ=iγ5Ψπに置き換えられました。
 

.ここで導入した場:σ(),π()を補助場,

書き換えるトリックを補助場による方法と呼びます。
 

その導出手順から,の系との系が物理的に等価であるのは

明らかですが,経路積分によらなくても,において補助場:

σ,πは運動項を持たないので.σ,πに対するEuler-Lagrange

の運動方程式,σ=-(λ/)Ψ~Ψ,π=-(λ/)Ψ~iγ5Ψ

となり,これらをに代入すると,元のに帰着するため,等価

なことが確かめられます。
 

そして,σ=-(λ/)Ψ~Ψ,π=-(λ/)Ψ~iγ5Ψ,から 

σとπは,それぞれ,複合場:Ψ~ΨとΨ~iγ5Ψを代用する場 

であると解釈されます。
 

系も元々はカイラルU(1)対称性を持っています。 

Ψ()の変換は元のΨ → exp(iγ5θ))Ψです。
 

補助場:(σ(),π())の変換は, 

(Ψ~Ψ(),Ψ~iγ5Ψ())と同じ2成分ベクトルとして, 

角度2θの(σ,π)平面の回転で与えられます。 

そこで,:{/(2λ)}(σ2+π2)は不変です。
 

しかし,-Ψ~σΨの項は,σ=-(λ/)Ψ~Ψ,がゼロ 

でない真空期待値を取る,という真空凝縮

(vacuum condensation)を起こせば,実質上.この項は

<0|σ|0>Ψ~ΨとなってΨが0|σ|0>≠0 の質量

を獲得し,結果,カイラルU(1)対称性を破ります。
 

ここでは,σとπの挙動にのみ関心があるので,生成汎関数

[η,η~]でη,=η~=0 としてFermionによる積分を先

に実行してしまえば;
 

(ΨΨ~積分はGauss積分なので, 

Gauss積分公式:ψψexp(ψAψ)Det 

(Aは4×4のガンマ行列)から, N成分のΨでは 

N重積分分で,ΨΨ~exp(Ψ~AΨ)(Det)

です。

  
故に,ΨΨ~exp[iΨ~{i(σ+iγ5π)}Ψ] 

Det{i(σ+iγ5π)} 

exp[lnDet{i(σ+iγ5π)}] です。※)
 

それ故,

Z=∫σπ∫ΨΨ~[expi∫d4{(Ψ,Ψ~,σ,π)}] 

とすると,Z=∫πσ[expiNS[σ,π] と書けます。
 

ただし, NS[σ,π]=N∫d4[{1/(2λ)}(σ2+π2) 

iln{Det{i(σ+iγ5π)}] です。 

(FermionのN個のN成分あったので,ln(Det)=Nln(Det) 

となり全体から,因子Nがくくり出せることに注意!!)
 

この時点でNは作用積分全体にかかっているので,(1/c)

と同様な定数因子です。
 

それ故,Z=∫πσ[expiNS[σ,π],の作用: 

[σ,π]=∫d4x∫d4[{1/(2λ)}(σ2+π2) 

ilnDet{-γμμi(σ+iγ5π)}])で記述される

σ,πのループグラフ展開は(1/)展開と同じに

なります。
 

Zの表記から有効作用を.Z=exp(iNΓ)として,

NΓ[σ,π]と書けば.Γ[σ,π]=S[σ,π]+O(1/)

です。

  
ここで,(1/)1ループ以上の量子効果です。 

すなわち,有効ポテンシャル:[φ~],運動量piが全てゼロ

のときのn点頂点関数の生成関数という意味を持つことが

わかりました。


 
(5-4):前記事の(注4-1)から転載します。 

[],[]の経路積分表式: 

[]exp(i[])­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}] 

をΓ[φ~]=W[]­­Jφ=に代入し,単位にPlanck定数:c 

を復活させると, 

Γ[φ~](ic)ln[φexp{(i/c){[φ](φφ~)}] 

となります。
 

経路積分φの積分変数を,φ → φ+φ~と変数置換して, 

-Ji()=δΓ/δφiを代入すれば, 

Γ[φ~](ic)ln[φexp{(i/c){∫d4 

([φφ~](δΓ/δφ)φ)}]  です。
 

[φφ~]をc-:φ~のまわりで量子場:φ()について 

展開すると,[φφ~][φ~](/∂φi)φi 

(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~] 

と書けます。
 

ここで,|(iF)-1φ~}ij,|(iF)-1φ~}ij 

(2[φφ~]/∂φi∂φj)|φ=0(2[φ~]/∂φ~i∂φ~j) 

で与えられますが,これはこの頂点2点関数が場:φの期待値がφ~ 

であるような真空上でのFeynman伝播関数の逆数になっているため 

こう表記しました。
 

int[φ;φ~],φについては3次以上のφ~における相互作用項 

です
 

この[φφ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると, 

Γ[φ~]=∫d4[φ~]+Γ~[φ~]

Γ~[φ~](ic)lnφexp[(i/c){∫d4 

[(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~](δΓ/δφ)φ}] 

を得ます。
 

これで,うまい具合に有効作用:Γ[φ~]から,古典的作用積分: 

[φ~]=∫d4[φ~]が分離されました。
 

Γ~[φ~]の項はhc1次以上のオーダーの量子効果で,

1粒子既約なループグラフの寄与を示しています。

(5-4終わり※)
 

 Γ~[φ~]のhcのオーダーでのループグラフ展開が,

ここでの(1/)による展開と同等と考えられます。
 

以下,もっぱら(1/)展開の最初の0次オーダーだけを考えます。
 

有効作用:Γ[σ,π]に対応する有効ポテンシャル:[σ,π] 

,Γ[σ,π]=S/∫dx0 に対して,

[σ,π]=-S/∫dで与えられる,という定義より,
 

[σ,π]{1/(2λ)}(σ2+π2) 

(1/i)∫d4(2π)-4 lnDet[ii(σ+iγ5π)] です。
 

このDet(determinant),Dirac場に対する4×4行列の 

行列式を意味します。
 

Det[exp(iγ5θ)exp{iθ(Trγ5)}1であり,π/σ 

tan(2θ)で回転角2θを定義して, 

lnDet[i(σ+iγ5π)]lnTr[i(σ+iγ5π)] 

ln(2-σ2-π2)を用います。
 

すると,[σ,π]{1/(2λ)}(σ2+π2) 

(2/i)∫d4(2π)-4 ln(2-σ2-π2iε) です。
 

最後の4次元積分はk → ∞ の紫外部で発散し,このまま 

では,うまく定義されていません。
 

そこで,運動量kをEuclid化して,紫外部を切断する切断理論 

(cut-off theory),この模型を定義することにします。
 

すなわち,Euclid化運動量をkμ(1,2,3,4=k0/i) 

として,(1/i)∫d4kf(-k2)=∫kE2≦Λ24(2) 

=π20Λ22(2)dk2 の定積分を定義します。
 

(1/i)∫d4(2π)-4 ln(2-σ2-π2iε) 

{1/(16π2)}0Λ2ln(-u-σ'2)du 

{1/(32π2)}{(Λ4ln(Λ2+σ'2)-σ'4ln(1+Λ2/σ'2) 

(Λ42σ'2Λ2)/2} (σ'2=σ2+π2) なので,
 

[σ,π]=V[0,0]{1/(2λ)}(σ2+π2) 

{1/(16π2)}[Λ4ln{1(σ2+π2)/Λ2} 

(σ2+π2)2ln{1+Λ2/σ2+π2)}{Λ42(σ2+π2)Λ2}} 

となります。
 

この有効ポテンシャル:[σ,π],カイラル対称性を反映

して明らかに(σ,π)平面での回転で対称です。
 

これを,π=0の断面で見れば,Λ2 → 大 とするとき, 

σ2 <<Λ2なら, 

[σ,π=0]-V[0,0]{1/λ-Λ2/(4π2)}(σ2 /2)であり,
 

σ2 >>Λ2なら,[σ,π=0]-V[0,0]=σ2 /(2λ)

です。


 

したがって,結合定数:λ=2Gが小さくて,1/λ≧Λ2/(4π2) 

となっている間は.停留点はσ=π=0しかなく,カイラル 

対称性は維持されますが,λが大きくなって

,1/λ<Λ2/(4π2)になると原点よりもVが低い

(ワイン瓶底内の)停留点が現われ,カイラル対称性は自発的

に破れます。
 

こうした自発的破れが起きる最小の結合定数を臨界結合定数 

(critical coupling constant)と呼びます。今の場合これを 

λcrtと書けば,λcrt4π2/Λ2 です。
 

λ>λcrt,対称性が自発的に破れる場合,真空をπ=0 の断面 

上の点に取るとすれば,σの期待値:0|σ()|0>=σ0, 

Vの停留点条件:{∂V[σ,π=0]/∂σ}σ=σ0=σ0/λ 

-σ0/(4π2){Λ2-σ02ln(1+σ02/Λ2)}0 から決まります。
 

これは対称性の破れていない"ノーマル解";σ00 以外に, 

λ>λcrt4π2/Λ2 では

,4π2/(λ"2)1-σ02/Λ2)ln(1+σ02/Λ2)で決まる 

σ00 スーパー解(super solution or 超伝導解)" 

を持ちます。
 

4π2/(λΛ2)1(σ02/Λ2)ln(1+σ02/Λ2)の右辺は

6.3に示すような(σ02/Λ2)の単調減少関数でλが

λcrt4π2/Λ2 に達すると4π2/(λcrtΛ2)1であり,

λ>λcrから解σ0存在するようになって,λ → 大に

つれて,解σ0は単調増加します。


 このσ0,[σ,0]{1/(2λ)}σ2 

(1/i)∫d4(2π)-4 lnDet[i(-σ)]をσで微分して

ゼロ置いても得られます。
 

lnDet[i(-σ)]=Trln[i(-σ)]ですから,Vをσで

微分して,σ0=λ∫d4(2π)-4r {i/(-σ0)}なる

方程式の解として.σ0が表現されます。
 

この右辺の量は,質量m=σ0の運動量表示の伝播関数:

,i/(-σ0iε)を持つFermionがまわるループグラフ

の寄与に相当していて, 

Fermionがm=σ0の質量を得たとしたとき,

(λ/)(Ψ~Ψ)2の相互作用項を通して誘起される質量項

,またm=σ0であるべきである。」という要求です。


  これは南部-Jonnalashinoの自己無撞着条件

(self-consistent condition)と呼ばれています。
 

上記計算から,λ>λcrtのときには,確かに動力学的に

カイラル対称性が破れることを見出しましたが,それに

対応する零質量のN..ボソンが果たして現われている

のでしょうか?
 

本記事の最初の方でNoetherカレントから求めた

カイラルチャージ:5の交換関係:

[i5,Ψ~iγ5Ψ()]=∫d3[50(),Ψ~iγ5Ψ()] 

2Ψ~Ψ()を示しましたが, 

これはN..粒子が,擬スカラー・チャネル,つまり,

π~ Ψ~iγ5Ψに現われるべきことを示しているので,

補助場π()の2点関数を計算してみます。
 

まず,(/)展開の第 0 次近似での有効作用;Γは

作用積分:で与えられます。すなわち, 

Γ=S=∫d4[{1/(2λ)(σ2+π2) 

ilnDet{-∂-i(σ+iγ5π)}} です。
 

このΓが,その生成汎関数となる頂点関数の展開における

頂点関数;Γ(2)()の運動量表示の展開係数を求める

,それはΓ~(2)()(2π)4δ4(p+q)であり,これがπの

伝播関数の逆数{iΔF()}-1に対応するわけです。
 

これは,具体的には,[δ2Γ/δπ()δπ()]π=0,σ=σ0 

なる運動量表示のπによる展開の2次の係数です。
 

lnDet=Trln なので 

Γ~(2)()=-1/λ-∫d4(2π)-4 

r[(iγ5){1/(-σ0)}(iγ5){1i/(-σ0)} 

と書けます。
 

途中計算は省略で,Fetynmanパラメータ積分公式を使って, 

Γ~(2)()=-1/λ-∫01dx∫Λ4(2π)-4 

[4{2-σ02―x(1-x)2}/{2-σ02―x(1-x)2{2] 

を得ますが,先の自己無撞着条件から,

これは結局ゼロとなりますから,

p~0 でΓ~(2)()=ΔF()-1 0+cp2+O(4)

となり,場πの伝播関数は零質量の極を持つことが証明

されました。
 

そしてさらに,

Γ~(2)()=-1/λ-∫01dx∫Λ4(2π)-4 

[4{2-σ02―x(1-x)2}/{2-σ02―x(1-x)2{2] 

,kをEuclid化した後,初等的に計算可能で,これも

途中計算を省略で,最終結果は.

Γ~(2)()=-1/λ-{1/(4π2)}

[Λ2(1/2)(2σ02-p^2)ln(1+Λ2/σ02)(^2/2)

|(2Λ24σ02-p2)/(4Λ24σ02-p2)}(2,Λ2+σ02) 

(^2/2)(2,σ02) となります。
 

ただし,このΓ~(2)()はπ(x)2点頂点関数だけでなく

σ()2点頂点関数をも表わす式です。そして,^2,

π()の場合:^2=p2,σ()の場合:^2=p24σ02

を意味します。
 

また,(2,2)は,(-p2)0 なら,

(2,2){(42-p2)/(-p2)}1/2 

×ln[{(42-p2)1/2(-p2)1/2}

/{(42-p2)1/2(-p2)1/2}] 

{(42-p2)/(-p2)}1/2 2Tan-1{(-p2)/{42-p2)}1/2
 

0≦p242なら,  

(2,2){(42-p2)/2}1/2 2Tan-1{2/{42-p2)}1/2 

です。
 

:π()のくりこみ定数:π,

Γ~(2)()=Zπ-12+O(4)で定義されるので,

(0,2)2を用いて, 

π-1{1/(8π2)} [ln(1+Λ2/σ02)(Λ2+σ02)/Λ2] 

2∫d4(2π)-4(2+σ02)-2 を得ます。
 

:πは系のLagrangian密度に-Ψ~iγ5Ψπの相互作用項を 

持つので.くりこまれたNGボソン場:πr=Zπ-1/2πの 

Fermion:Ψへの結合は,intπΨΨ=gπΨΨΨ~iγ5Ψπr 

πΨΨ=Zπ-1/2 で与えられます。
 

この,結合定数:πΨΨ=Zπ-1/2が元の基本結合定数:λ=2

には直接依存せず,0|σ()|0>=σ0だけから決まるのは

興味深いことです。
 

一方, Ψ~iγ5Ψ()

=-(/λ)π()→ -(/λ)π1/2π() 

であり,0|2Ψ~Ψ()|0=-2(/λ)0|σ()|0

=-2(/λ)σ0 です。
 

そこで,[i5,Ψ~iγ5Ψ()]=∫d3[50(),Ψ~iγ5Ψ()] 

2Ψ~Ψ() ,以前の記事での, 

μ() o→±∞ → fπμφas().., 

[φas(),φas()]i(x-y) 

Φ() o→±∞ → Z1/2φas()..,π1/2φ

=<0|δΦ|0でのN..漸近場φasと.πrの比較に

よって.π2(/λ)σ0/{(/λ)π1/2}2σ0π^1/2

となって崩壊定数πも求まります。
 

最後に,スカラー補助場:σ()のΓ~(2)()の計算結果において

注目すべきは,^2=p24σ020,Γ~(2)()0 となること

です。すなわち,スカラーチャネルにも,σ24σ02の質量を

持つ結合状態が生じています。

  しかしm=σ0Fermion:Ψの質量ですから,
24σ02,

丁度Ψ-Ψの2-Fermion状態の閾値であり,真の結合状態でなく

共鳴状態と考えられます。
 

「南部-Jonalashino模型」は.噛めば噛むほど味が出るような,

豊富で複雑な内容を含んでいて,少し計算を省略したにも

関わらず,長くなってしまいました。
 

今日はここで終わります。
 

この「対称性の自発的破れ」の項目は,このテキストの6章には

まだ続きがあるのですが,これもアップするかどうか?はPeding

とします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()(培風館)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月11日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(4)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

今回,最初は「南部-Goldstoneの定理」の別証明、および, 

対称性の自発的破れの興味深いもう1つの例である

「南部-Jonalashino模型」の紹介と説明を行う予定でした

,「南部-Jonalashino模型」を詳しく説明しようとすると

とても長くなることがわかったので2つに分けて今回は,

「南部-Goldstoneの定理」の別証明の話だけにします。
 

(前置き):さて,前回,Goldstone模型で書き直したLagrangian 

密度:(1/2){(μψ)2-m2ψ2}(1/2)(μχ)2 

(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2-V0[/2] 

において,χの質量項がゼロで.ψの質量項が正しい符号の 

(1/2)2ψ2で出現した理由を考え直してみます。
 

これら場の2次の項は,の中のポテンシャル項:-V0[φ] 

だけに由来しており,その停留点:φ=φ~=v/2の周り

での 曲率=2×2行列:{2/∂φi∂φj}φ~=v/2 の固有値

が2乗質量のゼロとm2に対応している,ことに気付きます。
 

ポテンシャル:0[φ],前回の6.1で回転したワイン瓶

の底の形であることを示しましたが,この瓶底の1点:

φ~=v/2の周りで見ると動径方向(Reφ方向)の曲率が

最大で,それがψの2乗質量:2を与え,一方,円周方向

(Imφ方向),そもそもU(1)対称性によりポテンシャル

の値が変化しない方向ですから,曲率はゼロで,これが

..ボソン:χの零質量を与えるとわかります。
 

この見方は,..ボソンが,何故,零質量になるのかに

ついて,ポテンシャル項:0の持つ対称性から.直接視覚的

に明快な説明を与えるもので「南部-Goldstoneの定理」の

別証明の発想の基礎となります。
 

(定理の別証明):局所的Heisenberg場の一組:{Φ()}

理論の対称性の群Gのある既約表現の基底になっていると

します。(※線型表現の不変部分空間の基底であれば既約

でなくてもいいと主鱒が。。)
 

すなわち,次式が満たされているとします。 

[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()] 

=-iijΦj() (i=1,2..,)
 

 ij,この既約表現でのGの生成子T 

表現行列(要素)です。
 

Φi()は,一般に"素"Heisenberg場の多項式で与えられる 

複合場であり,[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()] 

=-iijΦj(),[i,Φi()]=δΦiが線型変換 

であると主張するものではありません。 

(※表現が線型表現であるだけです。)
 

この複合場:Φi()に対する外場:i()を導入し, 

exp(i[])=<0|exp[∫d4J i()Φi()]|0 

によってW[]を定義し,これのLegendre変換: 

Γ[Φ]=W[]J Φから有効作用:Γ[Φ],そして,Φ

が定数の場合として有効ポテンシャル:[Φ]が得られた

とします。
 

Γ[Φ],[Φ]は対称性群GのΦを基底とする線型表現

の無限小変換である線形変換:Φi → ΦiiεijΦj

の下で明らかに不変ですから,(∂V/∂Φ)jΦ0

が成立します。
 

これは,Φについての恒等式ですからさらに両辺をΦ

微分して,同じく,恒等式:

(2/∂Φ∂Φ)jΦ(∂V/∂Φ)j0  

を得ます。
 

ここで,ある真空|0>における複合場演算子:Φi()

期待値,i=<0|Φi()|0>とすると, 

[i,Φi()]=∫d3i[0(y),Φi()]

=-iijΦj()から,

0|[i,Φ()]{0>=<0|δΦ|0 

=-<0|iijΦ(){0>=-iij

と書けます。
 

それ故, 次のような対応があることになります。 

ij0 ⇔ T(破れていない生成子) 

ij0 ⇔ T() (破れた生成子)
 

一方,

(2/∂Φ∂Φ)jΦ(∂V/∂Φ)j0  

,∂V/∂Φ0の停留条件を満たすΦ=viで評価

すると,[2/∂Φ∂Φ]φ=vj0 です。
 

ところが一般に,0|Φi()|0>=vi0 となる真空上

Green関数,:Φi()を,vi+Φ^i()のように真空

期待値分viだけシフトして,0|Φ^i()|0>=0 となる

ような新しい無矛盾な場をΦ^i()として再定義する

必要があります。

  そして,有効作用;Γ[Φ]=Γ[Φ^],Φの周り

Taylor展開した級数: 

Γ[Φ]Γ[Φ^]Σn=0(1/!)∫d41..4n 

Φ^i1(1)..Φ^in(n)Γ()(1,..n) 

の係数:Γ()(1,..n),この真空上の新しい無矛盾な

:Φ^()1粒子既約な頂点関数を与えます。
 

このことから有効ポテンシャル:[Φ],Φの周り

Φ^によるTaylor展開の係数:(),運動量表示の

有効作用:-Γ~()(1,..n)のpj0 での値:

-Γ~()(0,..,0)に一致することがわかります。
 

特にn=2では,

[2/∂Φ∂Φ]φ=v-Γ~i,j(2)(p=0) 

-Δ -1ij{=0 です。 

ここで,Δ -12Green関数=Feynman伝播関数:

Δ() ij逆行列要素です。 

(※ iΔ()ij

=∫d4{exp(ipx)0|TΦi()Φj(0)|0})です。)


それ故,
[2/∂Φ∂Φ]φ=vj0 は,

(j)零ベクトルを意味しない限り,(j)

が行列:{(iΔ) -1}ij{=0固有値ゼロに属する固有

ベクトルであることを示しています。
 

1スカラー1粒子だけの系では,その質量がmなら,伝播関数

の運動量表示,Δ()1/(2-m2iε)ですから,

p=0 のとき,-Δ -1=m2です。
 

故に:行列(-Δ -1ij|=0)は質量を意味する行列であり,

対角化したときの対角成分=固有値は質量を意味します。
 

-Δ -1ij|=0の零固有値は固有ベクトル方向の場が零質量

を持つことを意味するため,破れた生成子:に対応する数

の独立な固有ベクトルv≠0 が零質量のN..粒子

として出現することを示しています。

(証明終わり)
 

(4-1):前回記事での有効作用・有効ポテンシャルの説明で 

必要なのに,落としてしまったと思われる部分を追加します。
 

有効作用:Γ[φ]1粒子既約な頂点関数:Γ()の生成汎関数

あったことから従う有効ポテンシャル:[φ]のもう1つの

側面に注意します。

  
頂点関数:Γ()の運動量表示Γ~()を運動量保存のδ関数

を外して定義します。すなわち, 

∫d41..4n exp{i11..inn}

Γ()i1/..in(1,..,n)

=Γ~() i1..in( (1,..,n)(2π)4δ4(1..+pn)

です。
 

有効作用の展開:Γ[φ]=Σn=0(1/!)∫d41..4n 

φi1(1)..φin(n)Γ()i1..in(1,..n) において, 

φi()をφ~i(定数)とし,[Φ]の定義式,および, 

(2π)4δ4(p=0)=∫d4 exp(ipx)|p=0を考慮すると,
 

[φ~]=-Σn=0(1/!)φ~i1..φ~inΓ~()i1..in(0...,0) 

を得ます。
 

すなわち,有効ポテンシャル:[φ~],運動量piが全て

ゼロのときのn点頂点関数の生成関数という意味を持つ

ことがわかりました。

  
さらに,[]の経路積分表式: 

[]exp(i[])­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}] 

を,Γ[φ~]=W[]­­Jφ=に代入し,自然単位に

Planck定数:c復活させると[φ~]

(ic)ln[φexp{(i/c){[φ](φφ~)}] 

となります。
 

経路積分φの積分変数を,φ → φ+φ~と変数置換して, 

-Ji()=δΓ/δφiを代入すれば, 

Γ[φ~](ic)ln[φexp{(i/c){∫d4 

([φφ~](δΓ/δφ)φ)}]  です。
 

[φφ~]をc-: φ~の周りで量子場:φ()につて 

展開すると,[φφ~][φ~](/∂φi)φi 

(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]

と書けます。
 

ここで,|(iF)-1φ~}ij,|(iF)-1φ~}ij 

(2[φφ~]/∂φi∂φj)|φ=0

(2[φ~]/∂φ~i∂φ~j) で与えられますが,これは

:φの期待値がφ~であるような真空の上でのFeynman

伝播関数の逆数となってるのでこう表記しました。
 

int[φ;φ~],φについては3次以上のφ~における

相互作用項です

  
この[φφ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入すると, 

Γ[φ~]=∫d4[φ~]+Γ~[φ~] 

Γ~[φ~](ic)lnφexp[(i/c){∫d4 

[(1/2)φi|(iF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]

(δΓ/δφ)φ}] を得ます。 

  
これで,うまい具合に有効作用:Γ[φ~]から,古典的作用積分: 

[φ~]=∫d4[φ~]が分離されました。
 

(4-1終わり※)
 

今回は短かいながらここまでにして,次回は本当に 

「南部-Jonalashino模型」の説明に進みます。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()(培風館)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 8日 (金)

摂動論のアノマリー(21)(第Ⅱ部:4)

  摂動論のアノマリーの続きです。
 

コーヒー・ブレイクなどもあり,少し間が空いて,私自身も

今までの 経過を少し忘れかけているので,前回の

「摂動論のアノマリー(20)」の最後の部分を再掲載する

ことから.始めます。
 

前回最後の方では,
 

π0  2γ の崩壊行列要素は, 

fi(x+μ2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2);in|π0()|0 

i∫d4(2π)-4exp{i(1+k2)}

(2π)-3/2(20)-1/2exp(iqx) 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)qπ0|0

で与えられます。
 

そして.<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(12) 

であったので,(154):π(0)

(-α/π)(2)(2μ2/π),低エネルギーでは

π0  2γの振幅が,直接:(150):

μ53μ(π/2)π0+S{α0/(4π)}ξστρεξστρ 

のアノマリー項に比例することを示しています。
 

したがって,もしもアノマリー項をゼロとしてomitしたら, 

(154)の代わりに,π(0)0 (155)が得られると予測されます。
 

しかし,これは,実験事実に反して,π0  2γの崩壊が禁止される 

ことを意味します。
 

ここで.手短かに,(154)が示唆することのいくつかを論じます。
 

()(154)によって予測されるπ0の崩壊実験の崩壊率は, 

パラメータSに依存します。
 

そして,このSは,Fermi粒子の電荷Qと軸性結合定数gに 

よって決まります。(※ S=Σjj2 です。)
 

SU(3)のクォークモデルでは,それは中間子の交換によって

相互作用するFermi粒子:(ψ1,ψ2,ψ3)(,,λ)なる基本

3粒子の組から成り,その結合定数は,(1,2,3)

(1/2,1/2,0) です。
 

電磁カレントのU-スピン不変性から,基本粒子:(ψ1,ψ2,ψ3)

電荷は,(,Q-1,Q-1)というパターンを持ちます。
 

この(,Q-1,Q-1)において,主流モデルの分数電荷の

クォークでは,Q=2/3より,

(,Q-1,Q-1)(2/3,1/3.1/3) なので 

S=Σjj21/6です。
 

一方, Q=1やQ=0の整数荷電を仮定すると,S=±1/2です。
 

ここで,π0の崩壊率(1/崩壊寿命)について次の公式が

あります。すなわち,τ-1(μ3/64π)|π[μ2/2]|2..(157)

です。
 

これにおいて,π[μ2/2]をFπ[0]で近似するとπ0崩壊の

崩壊率の近似計算値として,次の値が得られます。 

S=1/6なら τ-10.8 e..(158) 

S=±1/2なら  τ-17.4 e..(158) です。
 

一方,Rosenfeldによって引用されたπ0崩壊の崩壊率の

実験値,

τexp -1(1.12±0.22)×1016 sec-1(7.37±1.5) e.(159) 

です。

(※ 現在の最新実験値では,τexp -1(7.48±0.32) e)
 

また,もしも,最近のPrimakoff効果の実験が,上記のRosenfeld 

平均を含む初期の実験よりも信頼できるなら,τexp -111eV 

になるという結果もあります。
 

とにかく,この結果からは,S=1/6の分数電荷クォークは強く

排斥され,他方,Q=1やQ=0の整数電荷クォークは実験と

満足のいく一致を見るという結果を得ました。
 

():現在の実情では,クォークにはフレーバー自由度とは

独立にカラー自由度3があってSU(3)の対称性を持つこと

がわかっており,これにより,S=(16)×3=1/2となるため,

整数電荷の方が過剰で分数電荷の方が有力です。(注終わり※)
 

予測計算値(158)と実験値(159)の明白で劇的な一致は,幾分

偶発的なことです。この一致を偶発的と見るのは,逆に,実験

での崩壊率の不確かさと,PCACの論旨に含まれると予想

される1020%の外挿誤差の存在のためです。
 

例えば,もしも,(154):

π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π) 

のfπに実験値を当てる代わりに,

Goldberger-Treimanの関係: 

2μ2/π ~ gV/(N)..(160)

(N:核子Nの質量,:πN結合定数 ~ 13.6,

:核子軸性ベクトルカレントの結合定数 ~ 1.22)

を代入するならS=±1/2の理論的予測は20%増加して

τ-1  9.1 eVとなるからです。
 

しかし,いずれにしろ,実験結果との比較は,||1/2を示唆 

しています。

というところで終わっています。(再掲載終了※)
 

今回はその続きです。
 

()π0崩壊の実験値と比較した結果によれば,||1/2ですが 

Sの符号は決まっていません。
 

しかしながら,Sの符号を定めるいくつかの異なる方法が

あります。その全てによる結果は一致しています。
 

1の方法は,π→ e+ν崩壊を調べることです。 

この崩壊のベクトル部分はπ0崩壊のFπのアイソスピン

回転と関連付けられ,軸性ベクトル部分は硬いπ中間子

テクニックを用いて評価できます。このプロセスに対する

実験的に測定可能な軸性ベクトルに対するべクトルの比が,

Sに,これが正の値であるという評価を与えました。
 

2の方法は前方光創成を用いることで,に比例するPrimakoff

振幅と前方の強い相互作用振幅の干渉を観測できます。
 

この後者のSの符号は,(,)共鳴:(Δ粒子)の領域のπの

光創成振幅の既知の符号から,有限エネルギー総和則によって

決定できます。
 

そして,その解析結果は再びSが正であることを示唆します。
 

第3の方法は,陽子のCompton散乱の分散関係に,極を支配する 

という論旨を適用することによって導出されるπ0  2γ振幅 

の近似表現:π=-4πα(κp/)(1/N)..(161) 

(154):π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π)と比較する

ことから成る方法です。

(※ κpは陽子の異常磁気モーメントです。)
 

(161)はπ0  2γの近似値として崩壊率:

τ-1  2.0.1 eVを与え,近似方法としては,かなり

の精度です。

  
いずれにしろ,またもSが正という評価です。

第4の提唱される方法は陽子のCompton散乱のデータ

を用いて,π交換ピ-スの干渉を測定することを試る方法であり,

この干渉がπに比例して,核子と核子の同種核(アイソトープ)

の交換ピースを伴なっています。
 

この提案の問題は,π中間子の交換ピースがBorn近似の形式: 

tFπ/(2-μ2),ポテンシャル形式:μ2π/(2-μ2)

どちらをとるか?がわからないことです。
 

物理的領域ではt<0 より,この不確かさは符号の曖昧さ

へと誘導し,この方法を,あやふやなものとします。
 

とにかく,前の3つの方法からはSが正であることを

学びました。このことは三元クォークについて,Q=1

電荷:(,Q-1,Q-1)(1,0,0)であることに賛同的で

あることを意味します。
 

(※しかし,カラー三元クオークを考えるなら,Q=2/3

(2/3.1/3.1/3)の方が有力です。)
 

() (154):π(0)(-α/π)(2)(2μ2/π) ,

興味深いモデルのクラスにおける摂動論のあらゆるオーダー

で正しいことを示しましたが,

(150):μ53μ(π/2)π0

+S{α0/(4π)}στρεξστρ.,上記の(154)

が非摂動的効果によって修正される可能性を扱って

はいません。

  
例えば,係数Sは基本場自身を含む三角グラフ同様,

基本場の束縛状態を含む三角グラフによる寄与を受けるべき

ではないのか?それとも,これはダブルカウントになるのか?

という問題です。

  
この疑問に対する答は不明です。我々の解析における可能

な非摂動的修正の無視は,純粋な仮説です。
 

() 今度は,三角アノマリーがomitされるとき,PCACに

よって示唆されるように,如何にしてπ0  2γ 崩壊が禁止

ではないのか?がわかるのか?という,より一般的な疑問に

対する定量的予測により,今の進路から退却してみます。
 

しかし,実験上はπ0  2γ 崩壊が禁止されないという

ことを強く示す1つの興味深い実験的テストが存在します。
 

このことを見るために,終光子の1つがoff-shell(質量殻の外) 

にある,例えば,1,2のうちk120 のケースに禁止の論旨

戻ってみます。
 

「摂動論のアノマリ^(13)」で示したように,軸性ベクトル

5μ(真空 → 2光子)の行列要素:μ, 

μ(41020)-1/2<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|5μ|0 

で定義すると,終状態の2光子が共に,on-Shell(質量殻上) 

なら,

  
(106):(1+k2)μμ
 

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

が成立します。

 
しかし,off-shell(質量殻外:120,またはk220)

場合,上式の右辺に次の項(107): 

(224-k125)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

が付け加わります。
 

120のとき<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μj5μ|0>は,

1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ2+βk12)に比例

します。βは1のオーダー「です。
 

(21-1):π02γへの崩壊では,μ2(1+k2)2ですが, 

(106),(107)から,120,220 なら,

(1+k2)μμ 

(3-A6)(12)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

-k125)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ

=k1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ{(3-A6)(12)-A512} 

(3-A6)1ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ 

×[(12){5/(6-A3)}12] です。
 

ところが, 

<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μj5μ|0> ∝ (1+k2)μμ 

であり, (12){5/(6-A3)}12 

(1/2){122(12)+k22}[{5/(6-A3)}1/2]12 

(1/2)(1+k2)2+βk12](1/2)(μ2+βk12) 

と書けます。 ここで,β={5/(6-A3)}1/2

しました。
 

いじょうから,<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|μj5μ|0

(μ2+βk12) です。
 

(21-1終わり※)
 

したがって,アノマリーなしのとき,崩壊振幅の光子on-shell

部分は因子μ2によって抑止されますが,光子off-shell部分は

抑止されないことがわかります。
 

※(21-2):崩壊のS行列要素は  

fi∝<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)π0|0 

(41020)-1/21ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ

π[(1+k2)2/2] 

(π/2)<γ(1,ε1)γ(2,ε2)|(□+μ2)μj5μ|0 

(41020)-1/21ξ2τε1*σε2*ρεξτσρ(π/2) 

{(1+k2)2+μ2}(1/2)(3-A6)(μ2+βk12)です。
 

もしも,120 on-shellにあれば,, 

π[μ2/2]

{μ2/(2π)}lim(1+k2)2→μ2 {μ2(1+k2)2} 

×{3(12)-A6(12)}  です。 

ただし,{3(12)-A6(12)}(1+k2)2=μ2

に極を持ちます。

  
π[0]0でFπ[μ2/2]=O[μ2]ですから,120  

[βk12]>>O[μ2]なら,この崩壊は禁止されないと

いえます。 

(21-2終わり※)
 

光子off-shell部分の振幅は,π0 → eγ で測定できる

ので,崩壊禁止という論旨は,次のことを予測します。
 

すなわち,このk120 のプロセスのk12依存性は 

{1(β/μ2)12}の形になるだろうということです。

これは,このπの崩壊が禁止されるなら,ρ中間子崩壊なら 

|1(β2/ρ2)12}となり,πの場合はこれよりはるかに

大きい傾きを持つだろうと予測されるわけです。
 

この傾きの最近の測定結果は,1+ak12

(a~(0.01±0.11/μ2)なる行列要素で,β~aμ2  ~ O(1)

に反し,明らかにπ0 2γ禁止に反する強い証拠を示す結果

となっています。
 

したがって.これまで非常に詳細に論じてきた三角アノマリー

ようなメカニズムが,(155):π(0)0によりπ0の崩壊を

禁止するという予測を回避するために,明確に必要であると

いうことが確認されたと考えられます。
 

短かいですが,これで§5.2が終わりなので,今日はここで

終わります。

次回は.§5.3 VVAアノマリー以外のアノマリーの可能性

を探す,Other Ward-Identity Anomalirs(他のWard恒等式の

アノマリー)の項目に入ります。
 

 (参考文献):Lectures on Elementary Particles and Quantum  

Field Theory(1970 Brandeis University SummerInstitute  

in Theoretical Physics) Volume

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 7日 (木)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(3)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

対称性の自発的破れを起こす模型:2例を考察します。
 

1つはGoldstone模型,もう1つは南部-Jonalashino模型です。
 

まず,対称性の自発的破れが起きる最も簡単な例として, 

次のLagrangian密度:を持つ系から成るGoldstone模型を

考えます。
 

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 です。 

この系は複素スカラー場φのφ4-相互作用系で,通常の場

とは質量項:μ2φφの符号が逆であるのが,本質的違い

です。
 

それ故,通常の<0|φ()|0>=0 の真空:|0>の上では

φの場の励起モードは,負の2乗質量-μ2(虚数質量:±iμ)

を持つ謂わゆるタキオン(tachyon)となります。
 

タキオンモードの存在は,||<μに対して,その時間発展

exp[±{i(2-μ2)1/2}]exp{±(μ22)1/2}

与えられるので,||が小さい長波長側のモードは時間が

経つと指数関数的に増大し,もはや微小な励起に留まらなく

なります。
 

これは,元の基底モード=真空も時間発展で不安定である

ことを意味します。
 

この系が持つ対称性は,位相変換;

φ'()exp(iθ)φ(),φ'()exp(iθ)φ()

の下でのG=U(1)~ O(2)不変性です。
 

対応するNoetherカレント,および,チャージは 

μi{φμφ-(μφ)φ}.

π=∂/(0φ)=∂0φ,

Q=i{φπ-πφ}です。
 

そして,i[,φ]=-iφ,i[,φ]iφ,ですが, 

これらは,同時刻正準交換関係: 

[φ(,),π(,)]iδ3(),および, 

[φ(,),π(,)]=-iδ3()から

従います。
 

一般に系の安定な真空の候補は有効ポテンシャル:

(φ~)の∂V/∂φ~0 で決まる停留点で

与えられます。

  
ただし,φ~(),Heisenberg(演算子):φ()期待値

であり,それ故演算子ではなくてc-数です。
 

(3-1):有効ポテンシャルの定義,意味については,

本ブログ20149/21から20154/21までにアップした

過去記事:「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と

摂動論)(1)(12)において摂動論を記述した後,

有効作用・有効ポテンシャルの項に入る予定でしたが,

直前でこのシリーズを中断していました。
,

そこでこの記事シリーズから,適宜,必要事項を引用し,

これに追加して説明します。
 

便宜上,(12)Grassmann 代数の知見と面倒な考察を

要するFermion場の話は考慮せず,(1) (11)Boson

のみから成る系で考えます。
 

まず,時間tを含むHeisenberg表示の初期()状態,

終状態を,それぞれ,|φ,,|φ,|>として,

その遷移振幅を,位相空間の積分:∫∫DπDφによる経路

積分で表わすと,
 

<φ,|φ,

=∫∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()DπDφ 

×exp(i∫tItF

[π()φ()(π(),φ())]) となります。
 

この式の右辺から,先に∫Dπだけを実行して,配位空間

の積分:Dφのみによる積分表式にしたものは,

Nを比例定数として, 

<φ,|φ, 

=N∫φ(,tI)φ()φ(,tF)φ()Dφ 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] です。
 

次に,特にGreen関数の経路積分を考えます。
 

必ずしもφの固有状態ではない一般の状態を想定し,

初期()状態を|Ψ,,終状態を,|:Ψ,F>として,

一般化されたN点Green関数を,

()(,..,; Ψ,;Ψ,F) 

≡<Ψ,F|[φ()..φ()]|Ψ, 

/<Ψ,F|Ψ, 

=<Ψ,|exp(iF)[φ()..

φ()exp(i)]|Ψ 

/<Ψ|exp{i(F-t)}|Ψ> によって,

定義します。
 

これを変形して,最終的にGreen関数の経路積分式として 

()(,..,; Ψ,;Ψ,F) 

=NFIDφΨ[φ()] Ψ[φ()]

φ()..φ()exp[i∫tItF(φ,∂φ)]

を得ます。
 

ここで,一般化されたGreen関数の生成汎関数:FI[]

なるものを次のように定義して導入します。
 

すなわち,FI[] 

=<Ψ,F||exp{i∫dxJ()φ()}| Ψ, 

/<Ψ,F|Ψ,> です。
 

FI[]をJでN階微分してJ=0 と置いたものが一般化

されたN点Green関数になります。 

つまり,

[δFI[]/δJ()..δJ()]jJ(x1)..(xN)0 

=G()(,..,; Ψ,;Ψ,F) です。
 

実は,これが,FI[]

()(,..,; Ψ,;Ψ,F)の生成汎関数

である,という意味です。
 

そして,一般化されたGreen関数は,特に初期状態:|Ψ, 

終状態:|Ψ>が共に系の真空状態 |0>であるとしたとき, 

通常の意味のN点Green関数; 

()(,..,)=<0|(φ()..φ())0 

に一致します。
 

さて,話は重複するかもしれませんが, 

相互作用:int(φ)が存在して,Lagrangian密度, 

(φ,φ)(1/2)μφμφ(1/2)μ2φ2()int(φ) 

で与えられる実スカラー粒子の場:φ()を想定します。
 

この相互作用しているスカラー粒子のN点Green関数G(), 

()(1,..,N)=<0|(φ(1)φ(2)..φ()|0 

で与えられますが,これの生成汎関数を特にZ[]とします。
 

[],配位空間の経路積分によって 

[]=N∫Dφ exp[i∫d{(1/2)φ(□+μ2)φ

int(φ)+Jφ}] 

=N∫Dφ exp[i{(1/2)φ*(□+μ2)φ+J*φ}]

と書けます。
 

右辺の最後の式では,煩わしい∫dxという表現を省略する

ため,時空座標xの任意関数φI),ψ()に対して,内積と

呼ばれる演算:φ*ψを,φ*ψ=∫dxφ()ψ()=ψ*φ

によって定義,導入しました。
 

[],結局,

[]=<exp[i∫d{int(φ)+J*φ}]0 

/exp[i∫d{int(φ)}0 なる式に表わせることが 

わかります。
 

ただし,任意のφの汎関数F(φ)について, 

(φ)0

(exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}*(φ))φ=0 

と定義しました。
 

(φ)0の意味はF(φ)に左から微分演算子: 

exp{(1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)} 

=Σk=0(1/k!)(1/2)k(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}

を作用させ,最後にφをゼロと置く操作です。
 

これは,exp[i∫d{int(φ)+J*φ}]0では, 

級数展開Σk=0(1/k!) )1/2)(δ/δφ)*iΔ*(δ/δφ)}

のkの1次ごとにexp[i∫d{int(φ)}]から

φ()φ()のようなφの対を1つ取り除き,代わりに

自由場Feynman伝播関数:

iΔ(x-y)=<0|(φin()φin()|0

で置き換えるという操作を示しています。
 

そして,係数(1/2)はxとyの交換の自由度2で割ることを

意味します。

また,自由場のFeynman伝播関数は,Fourier積分の形で, 

Δ(x-y)

=∫d4(2π)-4[exp{i(x―y)}/(2-m2iε)] 

なるものです。
 

生成関数における指数関数の級数展開は, 

[]=<exp[i∫{int(φ)+J*φ}]0 

/exp[i∫{int(φ)}0 

=Σ=0(1/m!)∫d41..  

iint(1).. iint()exp(i*φ)0/(分母) 

となります。
 

右辺の級数展開は相互作用intに比べて,微小な摂動である

考えたときの摂動展開級数そのものです。
 

(分母)=<exp[i∫{int(φ)}0の効果については,遷移

行列要素の摂動計算に考慮すべきでないと考えられる真空泡の

グラフを(分子)から相殺して除去する操作に関わるものなので,

本質的な寄与をする(分子)の各項について具体的計算方法を

考えます。
 

具体的には,< >0.まず.φの2個の積の場合には,

明らかに,φ(1)φ(2)0iΔ(1-x2)

[φin(1in(2)] です。

便宜上,iΔ(1-x2),Symbolic[φin(1in(2)] 

なる記号で表現しました。


  このように,φ(1),φ(2)の組をFeynman
伝播関数

iΔ(1-x2)で置き換える操作を縮約(contraction) 

と呼びます。
 

以下.具体的に,経路積分による定式化を整理すれば,Feynman

グラフによる通常の伝統的摂動論の計算法に一致することが

示せることを記述しています。

また,Fermion場への一般化もできますが,今回これは省略 

します。
 

ここまでは既に記述した過去シリーズ記事の(1)(11)の内容です。
 

ここから今回本題の「有効作用と有効ポテンシャル,」の話 

を追加します。
 

まず,Green関数の生成汎関数は, 

[]=<0|exp(iJ*φ)]|0 

=<exp[i∫{int(φ)+J*φ}]0

/exp[i∫{int(φ)}0

­­=N∫φexp[i{[φ]Jφ}] と表現されます。
 

このとき,[]exp{i[]}によって,[]

を定義します。
 

proper連結グラフ(固有連結グラフ)とすると,

[]expと表わせるので,i[]は連結固有Green関数

の生成汎関数です。
 

一方,[]=S[φ]+Jφと表わしていますが,具体的には 

Jφ=∫d4xΣiiφi(),であり,[φ]は作用積分の形で 

[φ]=∫d4(φ(),φ()) です。
 

ここで,有効作用;Γ[φ]をW[]から.汎関数のLegebdre変換: 

Γ[φ]=W[]Jφ によっ定義します。
 

ところで, 

δZ/δi(iδW/δi)

i0|φi()exp(iJ*φ)]|0より,

φ~i()(δW/δJi)

0|φ()exp(iJ*φ)]|0/と置くと,

φ~i()(δW/δi),()という外場が存在

するときの場:φ()の期待値を意味することが

わかります。
 

Γ[φ]をJ()でなく,上記の期待値:φ~i()の関数:

Γ[φ~]と考えると,()=δΓ[φ~]/δφ~i() 

です。

 
(※注:何故なら.WはJの関数と見ると,Wのφ~iによる微分

,δW/δφ~i=Σk(δJ/δφ~i)(δW/δJ) 

=Σk (δJ/δφ~i)φ~k であり, 

一方,δ(Jφ)/δφ~i(δJ/δφ~i)φ~+J

なので,δΓ/δφiδW/δφ~i-δ(Jφ)/δφ~i

=-Jiとなるからです。 (注終わり※)
 

有効作用:Γ[φ~]が重要な理由の1つは,これが1粒子

既約頂点関数:Γ()の生成汎関数になっている。

つまり,Γ[φ~]=Σn=0∫d41..4n 

φ~i1(1)..φ~in(n)Γ()(1,..n) となって

いる点です。
 

ここで,[]に効くグラフで伝播関数の線を1本切って

グラフが2つの部分に分離できるとき,その線を関節線

と呼びます。伝播関数の線が外線のそれであれば常に関節線

ですが,外線以外に関節線を持たないグラフを1粒子既約な

グラフ,内線にも関節線があるそれを1粒子可約なグラフと

呼びます。
 

結局,Γ[φ~]は量子効果であるループグラフを除く単純な

Treeレベルでは,cPlanck定数としたO(c)を除く近似

,古典的作用積分:[φ~]=∫d4(φ~,∂φ~)

一致します。
 

この有効作用の物理歴意味をさらによく理解すべく,より

特殊な場合を考えます。
 

外場Jと期待値φ~が共に時間x0=tに依存しない場合を

考えると,この場合.時間並進不変性があるので,[]

Γ[φ~]の∫d4x表現から,無限大の時間因子:T=∫dx0

がくくり出せます。
 

すなわち,[()=J()] =-w[()]∫dx0, 

Γ[φ~()=φ~()]=-E[φ~()]∫dx0  です。
 

さらに,Jとφ~が時空座標xに完全に依存しない定数の場合. 

[()=J]= =-w[]∫d4, 

Γ[φ~()=φ~]=-V[φ~]∫d4 です。
 

最後の,[φ~]はφ~の関数であり,有効ポテンシャル

と呼ばれます。
 

3次元空間のの関数:φ~()の汎関数:[φ~()]には 

決まった名称はありませんが,[φ~]にならって

有効エネルギーと呼んでおきます。
 

Jとφ~がt=x0に依存しないときを考えると, 

[]exp{i[]}exp{i[]} 

=<0| exp{i[]}0,ただし,[] 

-∫d3()φ~(),

Hはエネルギーを意味するHamiltonianです。
 

つまり,期待値の関数としては, 

=∫d3{π~φ~(φ~,∂φ~)},

=-∫d3(φ~,∂φ~)=-Lです。

何故なら,φ~がt=x0に依存しないため,共役:

π~=∂L/(0φ~)=∂0φ~がゼロだからです。
 

そして,真空:|0>はエネルギーHの最低固有値状態

(基底状態)でしたが,ここでも-iε処法を採用している

とすれば,T=∫dx0=∞ の極限では,事実上,[]

-∫d3()φ~()の基底状態:|0>のみが

exp{i[]}=<0| exp{i[]}0|0>に

効きます。
 

それ故,T → ∞ではw[][]の基底状態の

エネルギー固有値です。

つまり,[] |0>=w[] |0> です。
 

他方,この)固有値問題は,量子力学の変分原理の問題と

同じく, <Ψ|Ψ>=1,<Ψ|φ()|Ψ>=φ~()

下で,<Ψ||Ψ>を停留値にする停留解:|Ψ>を求める

停留問題とみなすことができます。
 

すなわち,この,|Ψ>=E|Ψ>の解が,

|Ψ>=|0,E=w[]を与えます。
 

したがって,場の理論で真空を探す問題では,予め並進

不変性を考慮して,[φ()]に依存しないφ~

関数である有効ポテンシャル:[φi~]の停留点を

∂V[φ~]/∂φi~0 から求めればいいです。
 

結局,有効ポテンシャル:[φ~],場φi()の期待値が

φi~(定数)である条件下での基底状態のエネルギー密度と

解釈され,その最低の固有値に対応する状態が真空です。
 

(3-1終わり※)
 

さて,上記注の前に, 

複素スカラー場のGoldstone模型: 

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

提示して一般に系の安定な真空の候補は有効ポテンシャル:

(φ~)∂V/∂φ~0 で決まる停留点で与えられます。
 

ただし,φ~(),Heisenberg:φ()の期待値です。
 

と述べたところまで戻ります。
 

Goldstone模型では,φ~の関数としての有効ポテンシャルは 

0[φ~]=-μ2φ~φ~(λ/2)(φ~φ~)2 と書けます。
 

このポテンシャルは,φ'()exp(iθ)φ()に対する

(1)不変性を反映して,φ~の大きさ|φ~|のみに依存して

おり,6.1に描いたの実軸での断面図をV軸の周りに回転

して得られるワインボトルの底部のような形をしています。
 

|φ~|の関数形に変形すると, 

0[φ~]=-μ2|φ~|2(λ/2)|φ~|4ですから, 

∂V0[φ~]/|φi~|=―2μ2|φ~|2λ|φ~|3 

=-2|φ~|2(μ2-λ|φ~|2)0 より. 

停留点は,元の不安定な真空に対応するφ~0,, 

|φ|=v/2(μ2/λ)1/2 で与えられます。
 

|φ|=v/2(μ2/λ)1/2 ,Vの断面図を回転した

ワインボトルの底に当たる円周上の点を示しています。

この円周上の点は,どの点も物理的に同等ですが,どれか

1つの点を取って新しい真空とすれば,場φの位相を1

選び出すことになり,(1)対称性を自発的に破ります。
 

特に,円周が実軸と交わる点をφ~を与える真空|0>に

取れば,これは,0|φ()|0>=v/2を実現します。
 

そこで,φ(){v+ψ()iχ()}/2と定義

すれば,ψ(),χ()は真空期待値がゼロの実スカラー

場です。

  
φ=(v+ψ+iχ)/2,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

に代入して,22μ20とすると, 

(1/2){(μψ)2-m2ψ2}(1/2)(μχ)2 

(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2

-V0[/2] を得ます。
 

ここで,0[φ]=-μ2|φ|2(λ/2)|φ|4 

であり.φ~0|φ()|0>=v/2ですから, 

0[φ~]=V0[/2]=-(μ2/2)2(λ/8)4 

です。
 

(※注3-2):上のの式右辺を導出します。
 

まず,μφμφ=(μψ-iμχ)(μψ+iμχ) 

(μψ)2(μχ)2 です。

  
次に,μ2φφ=(μ2/2){(v+ψ)2+χ2}

(μ2/2){2(ψ2+χ2)2vψ} です。

また,(λ/2)(φφ)2

=-(λ/8){4(ψ2+χ2)242ψ222(ψ2+χ2)

43ψ+4vψ(ψ2+χ2)} です。
 

ここで,/2(μ2/λ)1/2,かつ,2μ2=m2より, 

λv=√2μ√λ=m√λ,λv22μ2=m2  です。
 

そこで,まず,(μ2/2)(ψ2+χ2)(λ/8)22(ψ2+χ2)0, 

(μ2/2)2vψ-(λ/8)43ψ=0 (ψ2+χ2)の項やψの 

次の項は消えます。
 

そして,(λ/8)42ψ2=-(1/2)2ψ2,  

(λ/8)4vψ(ψ2+χ2)=-(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2) 

です。

残りは,(1/2)μ22(λ/8)4=-V0[/2]です。
 

(3-2終わり※) 
 

(1/2){(μψ)2-m2ψ2}(1/2)(μχ)2 

(m√λ/2)ψ(ψ2+χ2)(λ/8)(ψ2+χ2)2

-V0[/2]を見ると.ψは質量がm,χは質量ゼロ

のスカラー粒子を示しています。
 

φ=(v+ψ+iχ)/2によって

0|φ()|0>=v/2であったのを,新しい場:

ψ,χでは,0|ψ()|0>=<0|χ()|00となる

ようシフトしたため,χは質量ゼロで出現したN.G.粒子 

の場である,と解釈されます。
 

実際,これは,対称性が破れる前の元の系では, 

μi{φμφ-(μφ)φ}. 

π=∂/(0φ)=∂0φ,Q=i{φπ-πφ}, 

で.<0|i[,φ]|0>=<0|iφ|0>=-i/20 

でしたが,

  
ψ,χは無矛盾な場として<0|i[,ψ]|0>=0,
 

0|i[,χ]|0>=0 であるべきです。
 

そして,μi{φμφ-(μφ)φ}  

=v(μχ)..となることから,χはN..粒子の 

漸近場と理解されます。

   
この近似レベルから.χが正しく規格化されたN.G.ボソン

Heisenberg場とわかるので,前記事のカレントの漸近条件::

μ() o→±∞ → fπμφas()..,  

と比較して,上記式は真空期待値の√2倍のvが.

崩壊定数πを与えることを示しています。

   
以上で,Goldstone模型の話を終わります。


つい,本題から逸れた有効ポテンシャルの説明にのめり込んで

必要以上に冗長となり,長くなってしまいました。

今回はここまでにします。


 次回はまず,「南部-Goldstoneの定理」の別証明を与え,

次にもう1つの例である「南部^Jonalasino模型」に進みます。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()(培風館)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 1日 (金)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(2)

2017年も9月に入りました。

サッカー男子日本代表ワールドカップ出場決定おめでとう!

  
さて,「ゲージ場の理論」の続きです。
 

ここまでの準備の下で,自発的対称性の破れについての有名な 

「南部-Goldsttoneの定理」を述べて,これを証明します。
 

※「南部-Goldsttoneの定理」 

()理論が並進不変性と明白なLorentz不変性を持ち, 

()保存するベクトルカレントjμ()(μμ0)が存在して, 

()そのチャージ:Q=∫d30()の対称性が自発的に敗れて

いる。すなわち,0|i[,Φ()]|0>=<0|δΦ()|0>≠0 

を満たすスカラー場演算子Φ()が存在する。

と仮定する。
 

このとき理論には零質量の粒子(NG粒子:南部^Gpldsyone粒子) 

が存在して,カレントjμ()に結合している。
 

(証明) まず,0|[μ(),Φ()]|0>に対するスペクトル表示 

として,0|[μ(),Φ()]|0 

=∫0dσρ(σ)iμΔ(x-y,σ)が導かれます。
 

ただし,Δ(x-y,σ)は質量がσの自由スカラー粒子Φ: 

(□+σ) φ()0 の交換関係を示す不変デルタ関数: 

Δ(x-y,σ)[φ(),φ()]であり, 

スペクトル関数:ρ(σ), 

iμρ(σ-k)

(2π)3Σn,n’δ4(-k)0|μ(0)|n>

ηnn'-1<n'|Φ(0)|0> で与えられます。
 

系は(正定置とは限らない)完全性条件:

Σn,n'|n>ηnn’-1<n'|1 を満たすとします。

 スペクトル表示の導出には,

演算子(observable)O=jμ,Φが 並進共変性:

()exp(iPx)(0)exp(iPx)を満たすこと,

μがベクトル.Φがスカラーであること,

さらに,CPTの変換性:Θ=CPTとして,

ΘΦ(0)Θ-1=Φ(0),Θjμ(0)Θ-1=-jμ(0)

満たされること,を用います。
 

以下,この式を実際に導出します。
 

(1):0|[μ(),Φ()]|0>に, 

Σn,n'|n>ηnn'-1<n'|1 を挿入すると, 

0|[μ(),Φ()]|0 

=Σn,n'[0|exp(iPx)μ(0) exp(iPx)|n>ηnn'-1 

<n'|exp(iPy)Φ(0) exp(iPy)|0 

-<0|exp(iPy)Φ(0) exp(iPy)|n>ηnn'-1 

<n'|exp(iPx)μ(0)exp(iPx)|0] 

です。
 

故に,与式=Σn,n'[0|μ(0)|n>ηnn'-1<n'|Φ(0)|0 

exp{i(nx-pn')}-<0|Φ(0)|n>ηnn(-1<n'|j (0)|0 

exp{i(ny-pn')}]となります。
 

ここで,CPTの反ユニタリ変換性から, 

0|Φ(0)|n>=<0|ΘΦ(0)Θ-1|n>=<n|Φ(0)|0 

0|μ(0)|n>=<0|Θjμ(0)Θ-1|n>

=-<n|μ(0)|0です。

  さらに,ηnn'Hermite対称性から,ηn(n=より.

ηnn' -1(ηn'n-1)* です、

それ故, 

Σn,n'0|Φ(0)|n>ηnn'-1<n'|μ(0)|0

exp{i(ny-pn') 

=-Σn,n'0|μ(0)|n'>(ηn'n-1)<n|Φ(0)|0

exp{i(nx-pn'}] ですが,
 

不定計量であっても,ηnn'は実数にとることができて,4元運動量

は保存されるべきなので,n'=pnのときにのみηnn’0

対角化されていると仮定すると,


  
結局,
 0|[μ(),Φ()]|0

=Σn,n'0|Φ(0)|n>ηnn'-1<n'|Φ(0)|0 

[exp{in(x-y)}exp{in(x-y)}) です。
 

ここで,ρμ() 

(2π)3Σn,n'δ4(-k)0|μ(0)|n>ηnn'-1<n'|Φ(0)|0 

と置くと.ρμ(),00 のkμのみに依存するベクトル関数 

なので,ρμ()=-iμθ(0)ρ(2)と書くことができます。
 

そして,真空|0>は運動量演算子:μの固有値Pμ0 に

属する縮退していない最低エネルギーの基底状態であり,

|n>は,μ|n>=pnμ|n>を満たす固有状態ですが,これら

は全て真空:{0>にいくつかの粒子の生成演算子を作用させて

得られるものとしているので,2(n)20 なら,ρμ()

はゼロです。
 

すなわち,ρμ()=-iμθ(0)ρ(2),20 でのみ

ゼロでないというスペクトル条件を持ちます。
 

したがって.0|[μ(),Φ()]|0>の展開表現の最初に, 

1=∫d4kδ4(-k)を挿入すると,因子( iμ), 

μ[exp{i(x-y)},or -∂μ[exp{i(x-y)} 

で表わせるため,
 

0|[μ(),Φ()]|0 

=∫d4(2π)-3θ(0)ρ(2)

μ[exp{i(x-y)}exp{i(x-y)}]
 

=∫0dσ2ρ(σ2)∫d4(2π)-3δ(2-σ2) 

μ[ε(0)exp{i(x-y)}) 

=∫0dσ2ρ(σ2)μΔ(x―y, σ2) 

が得られます。 (1終わり※)
 

交換関係のスペクトル表示: 

0|[μ(),Φ()]|0>=∫0dσ2ρ(σ2)μΔ(x―y, σ2) 

から直ちに,T積のスペクトル表示: 

0|[μ()Φ(0)]|0>=∫0dσ2ρ(σ2)μΔ(, σ2) 

が従います。
 

この,両辺に左から,∫diμを掛けると,左辺は 

μμ0より,∫diμ0|[μ()Φ(0)]|0 

=∫diδ(0)0|[μ(),Φ(0)]|0 

=<0|i[,Φ(0)]|0>=<0|δΦ(0)|0>≠0 です。
 

一方,右辺は,∫diμ0dσ2ρ(σ2)

μΔ(, σ2) 

i∫d4x∫0dσ2ρ(σ2)□Δ(, σ2) です。
 

Δ(, σ2)=∫d4(2π)-4exp(ipx)/(2-σ2iε)

より,□Δ(, σ2)

=∫d4(2π)-4exp(ipx)(-p2)/(2-σ2+ε)  です。

故に,i∫dx∫0dσ2ρ(σ2)□Δ(, σ2) 

=∫0dσ2ρ(σ2)∫d4pδ()(i2)/(2-σ2+ε) 

=-i0dσ2{2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)}p=0 です。
 

それ故, 

i0dσ2{2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)}p=0 

=<0|δΦ(0)|0>≠0 ですが,これが成立するためには,

左辺の∫0dσ2の被積分関数:2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)

p=0の極限でもゼロでないことが必要です。
 

2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)

=ρ(σ2)+σ2ρ(σ2)/(2-σ2+ε) より, 

p=0では,limp→00dσ2{2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)} 

=∫0dσ2ρ(σ2)

limp→00dσ2[σ2ρ(σ2)/(2-σ2+ε)] です。
 

これがゼロでない寄与をするのは,σ20に零質量1粒子離散

スペクトル:∝δ(σ2)の寄与があるときのみであることが

わかります。
 

ρ(σ2)からσ20で有限な部分:ρ~(σ2)を分離して, 

ρ(σ2)=wδ(σ2)+ρ~(σ2) と書けば, 

w=<0|δΦ(0)|0>≠0 なる式を得ます。
 

すなわち,対称性の自発的破れがある:つまり,

0|δΦ(0)|0>≠0 である限り,スペクトル関数:ρ(σ2)

中にゼロでないwδ(σ2)項が存在する必要があります。
 

これはペクトル関数の定義:iμρ(σ-k) 

(2π)3Σn,n'δ4(-k)0|μ(0)|n>ηnn'-1

<n'|Φ(0)|0> から,理論の完全系:{|n>}の中に,零質量

1粒子状態:|(m=0)とそれと対をなす<(m=0)|

存在して,この零質量1粒子状態が,0|μ(0)|(m=0)>≠0,

(m=0)|Φ(0)|0>という形でカレントμや場Φに結合して

いることを意味しています。  (証明終わり)
 

この定理に関して,いくつかのコメントを与えておきます。
 

1) 真空期待値:0|δΦ(0)|0> は,オーダー・パラメータ 

(order parameter)と呼ばれ,これがゼロでないかどうかが,

自発的対称性の破れの有無を決定します。
 

オーダー・パラメータの演算子;δΦがLorentz不変性を

破らずゼロでない値を取るには,これはスカラーでなければ

なりません。
  
(※あるいは,不変テンソルgμνやεμνλσを含む

2階対称テンソル,および,4階反対称テンソルでもいいです。

例えば,(δΦ)μν2階対称テンソルなら,0|(δΦ)μν|0

=gμν×(定数) の真空期待値をとります。)
 

したがって,電荷Qがスカラーの場合,δΦに対応する場Φも

スカラーであり,定理の要求する 

..0|[μ()Φ()]|0|零質量極部分

=<0|δΦ|0(μ/2) のように,20 に極をつくる

..粒子もスカラーです。(※ F..Fourier変換)

すなわち,この極の存在は,

μ() o→±∞ → fπμφas().., 

ただし,[φas(),φas()]i(x-y) 

Φ() o→±∞ → Z1/2φas()..,

π1/2φ=<0|δΦ|0> を満たす零質量スカラーN..

粒子の漸近場(asymptotic field):φasの存在を意味します。
 

πはN..粒子:φasがカレントjμと結合する強さを示す 

結合定数で,崩壊定数と呼ばれます。
 

2) 不定計量を含むゲージ理論ではN..粒子が正の計量を

持つ物理的粒子であるかどうかについて,定理は何も主張して

いません。

もしもカレントjμがゲージ不変(BRSう不変)な演算子

でないなら,..粒子は不定計量粒子で有り得ます。
 

その場合,一般に,前の漸近条件は 

μ() o→±∞ → fπμφ~as().., 

[φ~as(),φas()]i(x-y) 

Φ() o→±∞ → Z1/2φas().., 

に置き換えられ,φ~asとφasが同一の漸近場である

必然性がなくなります。

(※ 何故なら|n>ηnn'<n'|mにおいて,|n(m=0) 

と<n'(m=0)|が同じ粒子である必要がありません。)
 

しかも,Φがスカラーですから,φasもスカラーですがjμ

の漸近場μφ~asのφ~asはスカラーという保証はなく, 

μ自身の漸近場が∂μφ~asでなくベクトル場:μas

縦波モードでもいいことになります。
 

実際,QCDのU(1)問題では,このようなことが起きている

ことが知られていて,μasは2階反対称テンソル場:

μνasを用いて,μas=εμνρσνρσas

与えられます。
 

3) 先に,対称性が自発的に敗れたときにはチャージ演算子Q

が無矛盾でなくなることを述べましたが,その直接的原因は,

カレント:μ()にN..粒子状態が効いてくるため,遠方

で十分速く減衰しないので,μ()の空間積分が発散して

しまう,ところにあります。
 

この事情を,μ() o→±∞ → fπμφas().., 

[φas(),φas()]i(x-y) 

を用いて,(..粒子:φasが正計量のときに)もう少し

詳しく評価してみます。
 

φas()の生成演算子をa()と書き,次のN..ボソン

粒子状態を考えます。

すなわち,|NG>=∫d3()()|0>です。
 

この波束状態のノルムは,交換関係:

[(),()]=δ3()より,

<NG|NG>=∫d3|()|2 で与えられるので,
 

例えば,(),あるKについて,||≦Kなら

()1/||α,||>Kならg()0 と取ると,

2|()|2||のベキが(1)より大きければ,この

ノルムはゼロです。
 

そこで,α<3/2であればノルムが収束し,状態: 

|NG>=∫d3()()|0>は無矛盾です。
 

ところが,この状態と真空でjμを挟んだ行列要素は, 

0|μ()|NG>=fπ0{μΦas()|NG> 

=fπ∫d3(2π)3/2(20)-1/2 (iμ)()evp(ikx) 

となり.これのμ=0 の時間成分をd3xで積分するとき, 

α>1/2なら発散します。
 

そこで,例えば,α=1と選択すると<0||NG>は発散して

いて,Qは無矛盾な演算子として存在できません。
 

これが,カレント:μ()にN..粒子状態が効いてきて,

遠方で十分速く減衰しないたの,0の空間積分が発散して

しまうのがチャージが無矛盾でなくなる原因となる1例です。
 

ここまでの計算で,φasが零質量であることを本質的には

使っていませんが,(0=||で使ってはいる?),μ

現われ得るスカラー粒子状態(漸近場)φasは∂μμ0

の条件から,□φas0 がsy従うので零質量以外は

有り得ません。
 

4) 次に重要な注意は,群Gの対称性が,部分群Hにまで自発的に

破れた場合に,..粒子がいくつ出現するか?についてです。
 

:GのLie代数:を形成する生成子:(A=1.2..dim)

うち,破れた生成子:()に対応するチャージ:,

またはカレント:μの各々に対して,先述の

「南部-Goldstoneの定理」が当てはまるので,()

の各々に対して,

μ() o→±∞ → fπμφ,as().//を満たす

..粒子漸近場:φ,asが存在します。
 

しかし,問題はこうしたφ,asが全て独立な場であるか

どうか?ということです。

もしも独立でないとすると,これらの適当な線形結合:

Σφ,asゼロとなってΣμには,.G。の

1粒子がなくなりΣは無矛盾なチャージとなって

しまいます。

これは対応する生成子Σ破れていない生成子

になることを意味するため,元の生成子{},閉じた

破れていない生成子の線型空間:()を張る独立な元で

あった,という仮定に矛盾します。
 

以上から,「独立な破れていない生成子:()の各々

に対して,各々1個ずつ独立な零質量のNG粒子が対応する。」

という命題が成立します。

それ故,対称性が自発的にGからHまで破れるときに現われる 

..粒子の個数は,dim(/)dimG-dimHで与えられます。
 

5) 先の定理では,チャージQがスカラーの場合に限りましたが,

この仮定はスペクトル表示の表現を簡単にするためにおいた

もので,本質的ではないです。

実際,チャージQを(Poicaew’群の生成子である並進のμ

Lorentz群の生成子Mμν以外の)ベクトル,テンソル,スピノル

に選べば,i0|[,Φ]|0>=<0|δΦ|0>≠0 である限り,

カレント; μ,および,Φに零質量のN..粒子が結合して

いることが示せます。
 

例えば,FermionBosonを結び付ける超対称性のチャージ

Qは,MajonaraスピノルのFermiチャージで,これが自発的に

破れると,MajonaraスピノルのN..Fermionが出現します。
 

ただ,注意すべきは,例えばベクトルチャージ:μの場合

にベクトル場:Φνに対して

i0|[μ,Φν]|0>=<0|δμΦν()|0>=gμν×(定数)

0 です,だからといって,すぐにベクトルN..ボソン

が存在するといえない点です。

それは,スカラーN..ボソンでも,この関係を満たすことが

できるからです。しかし,論理的にはテンソルN..ボソンの

可能性も除外はできません。
 

これに関連して知っていて損にはならない事実として.