力学覚え書き(その1)
ノーベル医学生理学賞が体内時計。。物理学賞が重力波
ということで,思いついたことを少し。。
最初の思いつきは, 体内時計の時間が今の地球自転周期24時間と
約1時間のずれがあるらしい,という話と月や太陽の地球への重力
による潮汐力の効果で地球の自転速度が年々僅かずつ遅くなって
いるという話が結び付く?と浅薄な邪推をしたことでした。
しかし,これらは向きが逆の話で勘違いでした。。
宇宙空間に月と地球だけがあるとして月を質量がmの質点で近似
地球を質量がMで自転軸のまわりの慣性モーメントがIの剛体球で
近似,地球自転の角速度をω1,月が地球の周りを回る軌道を円軌道
で近似して回転角速度をω2とします。
自転する地球の半径をa,月が公転する半径(月と地球の距離)
をRとすると,月と地球は万有引力:F=-GMm/Rで互い
に引っ張り合っています。
このとき,地球のスピン角運動量は,S=Iω1,月の公転の軌道
角運動量はL=mR2ω2で与えられます。
普通に運動方程式を立てると,dS/dt=N,dL/dt=-N
です。Nは月が地球に及ぼすトルク(力のモーメント)です。
系の総角運動量:(S+L)は,系には外からのトルクが無く閉じて
いると仮定しているので保存されます。
すなわち,d(S+L)/dt=0です。
地球の自転軸と月の公転軸の角度(地球の赤道面が公転面と
なす角度)をθとすると,N=FRsinθ
=(-GMm/R2)Rsinθ
=-(GMm/R)sinθですから,地球の自転軸のまわりの
慣性モーメントIと月の質量mは一定とすると
解くべき方程式系は,I(dω1/dt)=-(GMm/R)sinθ(1),
および,m{d(R2ω2/dt)=(GMm/R)sinθ(2),あるいは,
ω2(dR/dt)={GM/(2R2)} sinθ-R(dω2/dt)(2)’
です。
(2)は,公転角速度ω2の変化が小さいとして無視する近似では
月と地球の距離Rが増加して離れていくことを意味する式
になります。
他方,剛体球近似では地球半径がaなら,I=(2/5)Ma2ですから
dω1/dt=-{5Gm/(2a2R)sinθの率で自転が遅くなります。
大体の見積りは,今の自転周期がT=24時間=24×3600秒で
ω1=2π/T,地球半径:a~ 6400km = 6.4×106m,
万有引力定数が:G ~ 6.67 × 10-11 Nm2 kg-2 月の質量
m~ 5.75×1022kg,月と地球の距離:R ~ 38万4千km
=3.84×108m
θ~23.5度=23.5π/180,sinθ~ 0.4 を代入して計算すると
dω/dt=-Gm
sinθ/(Ra2) ~ -10-11くらいです。
(※地軸の傾きは23.4度とか23.5度とか小学校で習ったけど月の
公転面の傾きθとしてこれを採用してもいいのかな?)
今から1万年=3.15×1011秒後ではω1の減少はΔω1~ -3,
10万年~ 3.15×1012秒が経つと,Δω1 ~ -30です。
現在は,自転角速度はω1~24×3600/(2π)~ 13758,ですが,
今から10万年経つと,30/137583=1/600の割合で角速度が小さく
なります。自転周期=1日が24時間=86400秒ですから,その1/600
は約150秒=2分30秒です。
大体の見積りでは10万年当たり.これだけ1日が延びる勘定です。
単純計算では,哺乳類,人類誕生の200万年前の自転周期-1日は
23時間くらいで,今よりも短いようです。。。
ありゃ昔の方が短かいのか??と,実際にはここで初めて勘違いに
気付きました。
体内時計の1日は25時間に近いことが知られているので,最初.
これは昔の方が1日が長くて,体内時計がこれに同期していた?
と考えたのでしたが.実は昔は今より回転が速かったのなら1日が
短いので反対でした。。相変わらず,オッチョコチョイです。
ところで,この計算自体合ってるのかな?自信はありません。
この頃は本当に字だけの本が読みたいけど,老眼鏡でも見えず,
判読疲れで細かい本は読めません。理科年表でさえ読み辛く
この頃は記憶に頼るか,ネットで調べて拡大する方が早いです、
とても不便です。
まあ,そういう意味では,計算しなくてもネットで探せば何でも
ある時代ですが,自分で確かめないとダメという性分なので。。
しかし,2億年続いた恐竜の滅亡は地磁気のNとSの逆転が原因?
とか言われているらしいし,月以外に太陽の影響もあるし氷河期も
あったし。。月が衛星になって何十億年も同ペースで,外から突然
の衝撃なども受けず,静かに閉じた系として進展してきたのか?も
疑問ですが。。
ところで,本ブログでは初等力学について.余りり論じてなかった
ので,これを機に剛体や質点系力学についておさらいしてみます。
これも,眼が悪くて参考書をろくに読めないので,主として記憶に
頼りますが。。
n個の質点から成る質点系があるとし,そのi番目の粒子質量を
mi,位置座標をriとして,その速度を,vi=dri/dtとします。
その運動量をpi=miviで定義すると,各々の質点が従う古典論の
Newtpnの運動方程式はdpi /dt=Fiです。
ここで,Fiは質点iに作用する力です。
質点iに作用する力:Fiは,n個の系の外部から作用する外力Fexti
と系の他の質点j(j≠i)がiに及ぼす内力:Fintjiの総和の和
に分割されます。すなわち,Fi=Fexti+∑j≠iFintjiです。
系内の粒子同士で互いに及ぼす内力:Fintjiは電気力.重力のような
もので.作用・反作用の法則から,Fintji=-Fintij、および,
(ri-rj)×Fintij=0 が満たされます。
ここで,双質量をM=Σmiとして,系の重心の位置ベクトルを
R=Σmiri/Mで定義します。
重心速度は,V=dR/dt=Σmivi/M,重心運動量はP=MV
=Σpiで与えられます。
dpi /dt=Fexti+∑j≠iFintjiを総和することで,重心運動
の方程式:dP/dt=ΣiFextiが得られます。
他方,質点iの原点の回りの角運動量をli=ri×piで定義すると,
dli/dt=(pi×pi)/mi+ri×(dpi/dt)
=ri×Fi=ri×Fexti+∑j≠i(ri×Fintji) が成立します。
系の総角運度量をL=Σili=Σi(ri×pi)とすると,
dL/dt=Σi(ri×Fexti)+Σi∑j≠i(ri×Fintji)
=Σi(ri×Fexti)=ΣiNexti=N と書けます。
ここで,位置rにある質点に働く力がFのとき,N=r×Fをその
質点にかかる原点:Oの回りのトルク(力のモ-メント)と呼ぶと,
Nextiは質点iにかかる外力だけのトルクであり,Nはその総和
を意味します。
最後の等式では,内力のトルクの総計がゼロを用いました。
何故なら,Σi∑j≠i(ri×Fintji)=(1/2)[Σi∑j≠i (ri×Fintji)
+Σj∑j≠i (rj×Fintij)]=(1/2)Σi,j(i≠j)(ri-rj)×Fintji=0
となるからです。
さて,今では通常の物質は全て微小な分子の集まりでできている
ことを知っています。そして.その個数は我々の常温,常圧で1cm3
の体積中に1022個も存在するオーダーなので,構成分子を質点と
みなしても,物質の塊は莫大な個数の質点系です。
このとき,系の内力は基本的に電気力で,それは分子を束縛する
分子間力と呼ばれています。
それ故,古典物理では物体を連続体近似することが多いようです。
例えば,気体,液体,固体を弾性体,気体,液体をそれぞれ,圧縮性,
非圧縮性の流体で近似したり,固体を剛体で近似します。
特に,剛体というのは弾性体的には応力が無限大で全く変形しない
理想的な固体モデルです。したがって,その物体内での異なる2点
(原点Oともう1点)の位置が指定できれば,その剛体の位置状態は
完全に決まります。
そこで,この2点の6個の座標の軌道を求める独立な6個の方程式
があり,これが解ければ 異なる2点の運動が定まります。
それ故,剛体の運動を定めるには,6個の方程式が必要十分です、
ところで,ここまでの質点系の論議で,重心運動の方程式:
dP/dt=ΣiFexti=Fは独立成分が3個の方程式です。
また,方程式:dL/dt=Σi(ri×Fexti)=ΣiNexti=N
も独立成分は3個で.合わせて独立成分6個の方程式なので,
これらを運動を決める必要十分な方程式と見ることができます。
1質点なら運動方程式は3個で十分だったのですが,大きさのある
剛体モデルなら6個に増えます。
特に,原点Oを含む固定軸の回りを角速度ωで回転している剛体は,
角運動量の総和:Lは.回転軸をz軸にとる座標系で
L=Σ(ri×mivi)={Σmi(xi2+yi2)}ω=Iω;
I=Σmi(xi2+yi2)と書けます。
このとき,Iを,このz軸のまわりの慣性モーメントと呼びます。
離散的なn個の質点でなく位置rにおける密度がρ(r)の連続体
ならI=∫Vd3rρ(r)r2sin2θ=2π∫d3rρ(r)r4sin2θと
書けます。
ただし,θは極座標表示:r=(x,y,z)
=(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ) の極角です。
特に密度が一様:ρ(r)=ρで半径がaの球の自転軸のまわり
の慣性モーメントなら,I=∫d3rρr2sin2θ
=2π∫0adrρr4∫-11d(cosθ)sin2θ=8πρa5/15です。
そこで,質量がMならM=4πρa3/3よりρ=3M/(4πa3)なので
I=(2/5)Ma2を得ます。
ここで特に,ri=R+r~iと書いて,重心座標と相対座標
を分離します。
両辺をtで微分するとv=V+v~i です。すぐわかるように,
Σimiv~i=0 なる性質があります。
故に,総運動エネルギーTは,T=(1/2)Σmiv,2
=(1/2)MV2+(1/2)Σmiv~i2+VΣmiv~i
=(1/2)MV2+(1/2)Σmiv~i2となり,Tは重心運動エネルギー:
TG=(1/2)MV2と相対運動エネルギー:T~=(1/2)Σmiv~i2
に分離されます。
系全体が重心を含むある固定軸の回りを角速度ωで回転
している剛体では, 固定軸をz軸に取ると,相対運動の速度
がv~i=(x~i2+y~i2)1/2ω で与えられるので,
相対運動のエネルギー=回転エネルギーは,
T~=(1/2)Σimiv~,2=(1/2)Σmiv~i2
=(1/2)Σ(x~i2+y~i2)1/2ω2=(1/2)I~ω2
で与えられます。
ここでは,L~=Σ(r~i×miv~i)=I~ω,;であり
I~=Σmi(x~i2+y~i2)です。
例題として,高校物理で学んだような物体が自分の重みで斜面を
下りてくる問題を考えます。
滑って下りてくるとき,物体を質量mの質点で近似して摩擦ゼロと
すると.質点の速度vはニュートン力学の力学的エネルギーの
保存則から斜面の最高点(出発点)からの降下高さhとすると,
位置エネルギー減少分=mgh=(1/2)mv2=運動エネルギー
の増加分ですから,その点での斜面上の速度の大きさは
v=(2gh)1/2です。
しかし,一般には物体は質点じゃなくて,大きさがあります。
斜面を下りてくるのがパチンコ玉のようなものとして半径が
aの剛体球近似し,今度は滑りは全く無く完全に転がり下りる
とし,蛇行せず直線的に転がるとして回転の角速度をωと
してみます。
v回転=aωで,慣性モーメントをIとすると回転エネルギ^―
は,(1/2)Iω2です。
球の中心=重心の速度の大きさも,v=aωですから重心運動の
運動エネルギーは,(1/2)mv2=(1/2)ma2ω2 です。
故にエネルギー保存則は,mgh=(1/2) ma2ω2+(1/2)Iω2
あるいは,,mgh=(1/2) mv2+(1/2)(I/a2)v2
=(1/2){m+(I/a2)}v2となり実質的に慣性モーメント分だけ
降下速度が減少します。
球の公式:I=(2/5)ma2を代入すると(9/10)mv2=mgh=から
v=(10gh/9)1/2です。
近似計算でしたが,半径が大きいほど,ゆっくり転がり下りてくる
というっ常識に合っています。
ところで地球から月を見ると,常に一方の面しか見えず,これは
自転周期と公転周期が全く一致しているためですが,地球への
月の潮汐力の反作用の結果であるとされています。
実際の地球の海の潮汐は,月だけでなく太陽も影響して新月や満月
では地球に対し両者がほぼ直線に並んで重力を及ぼすので気象に
特有のタイムラグありますが,こうしたとき大潮になるようです。
一般に,月に限らず,どの衛星や惑星の自転-公転系でも長時間が
経てば自転周期と公転周期が同期するところでバランスする
という共鳴現象がある,ことを以前から聞いています。
量子論でのプランク定数による束縛電子の離散的軌道でもない
だろうし古典軌道の固有周期運動が本当に整数比で安定になる
のか?という疑問と.それが真ならその理由は何か?について
興味津々ですが,生半可ではうまく計算できないので,そこらが
詳しい天体力学の本が読めたら読むということでPendingにして
終わります。
うらぶれ このみに ふくかぜかなし。。
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