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2017年10月19日 (木)

場の量子論第Ⅱ部(15)(時間反転1)

 場の量子論第Ⅱ部の続きです。時間反転に入ります。
 

§15.13 Time Reversal(時間反転)
 

時間反転変換は時間の向きをtからt'=-tに変化させます。
 

1粒子のDirac理論において,この変換をつくったときには,それは 

tをt'=-tに変化させるだけでなく,波動関数の複素共役をとり 

γ2だけが純虚数行列であるような表示でT=iγ1γ3を掛けると, 

対称性変換になることを見出しました。
 

場の理論では物理状態を,時刻:t'=-tで逆向きに進んでいる 

動画フィルムを見るような状態に変換する1つの演算子: 

求めます。
 

密度に測定装置の系(外電磁場)との相互作用項を加えます。 

すなわち,-jμextμ() です。
 

量子条件:i[μ,φr()]=∂μφr()を見るとは1粒子の理論 

同様,線型演算子ではないことが明らかです。
 

何故なら,例えば,[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tを考える 

とき,仮に作用を不変に保ちφr(,), 

rsφs(,)φr(,)-1に変換するユニタリ演算子: 

求められれば,[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tの両辺に 

左から,右から-1を掛けることにより,  

[-1,φrs(,)]=-i∂φs(,)/∂tを得ます。
 

これから, 

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tを得るには-1, 

が-Hに変換される必要があります。
 

(15-1):時間反転変換に対し,任意の状態:{α>がユニタリ変換 

されて,{α>→|α> になると考えると, 

<α|φr(,)|β>=W-1rs<α|φ(,)|β>が 

古典論でのφ'r(,)=W-1rsφ(,)なる変換への 

対応原理を示していますが,これは, 

φr(,)-1=Wrsφ(,)と読めます。
 

そして,φr(,)=W-1rsφ(,)と同値です。
 

はユニタリ演算子としているので線型変換ですから, 

rsがtの関数でないなら,時間反転に対して, 

(i){∂φr(,)/∂t}-1(i)rs{∂φ(,)/∂t} 

irs{∂φ(,)/∂t'} です。(t'=-t’) 

これは,直接.対応原理から導くこともできます。
 

一方,<α|[,φr(,)]|β> 

(i)<α|{∂φr(,)/∂t}|β> より, 

<α|[,φr(,)|β> 

i<α|{∂φr(,)/∂t'}|β>
 

つまり,-1rs<α|[,φg(,)|β> 

i--1rs<α|{∂φs(,)/∂t'}|β>,
 

または,rs<α|[-1,φg(,)]|β> 

irs<α|{∂φs(,)/∂t'}|β> 

です。
 

ユニタリ変換であるなら,Wは正則行列なので,結局, 

[-1,φr(,)]i∂φr(,-t')/∂t' 

を得ます。
 

ところが,対応原理によれば,H=P0であって, 

がユニタリなLorentz変換に対応する演算子なら, 

μνを時間反転に対応するLorentz変換:μ →aμνν 

の係数として,-1,=a0ννと書けるはずです。
 

したがって,時間反転してt'=-tとするとき, 

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tなる理論が不変 

なら,-1=-H or =-Hが必要です。
 

(15-1終わり※)
 

しかし,変換の前後でHの固有状態の固有値は真空はゼロですが 

それ以外は正値でなければならないので,-1=-Hとなる 

ことは物理的基盤から考えて,受け容れることができません。
 

何故なら,|α>=|α>でが線型ユニタリなら,|α> 

=E|α>となるため,-1=-Hなら,-H|α>=E|α> 

ですが,これはE>0であれば矛盾し,不可能だからです。
 

こうした状況故に,Mechanicsの第5章におけると同じく 

時間反転変換:,非ユニタリとして「全てのc数について 

複素共役を取れ」という指令:にユニタリ:を掛けたもの 

として与えられると考えます。
 

すなわち,KU-1=H が成立すれば,  

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tはの下で不変です。
 

Lagrangian密度:-jμ()extμ()の言葉でいえば,次の 

ような性質を持ち,正準交換関係を不変に保つようなが存在すれば 

理論は時間反転不変です。

 すなわち,TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)なる性質です。
 

よって,電磁カレントは逆向きになり,電荷は時間反転で不変です。
 

これは外場が時間反転でAextμ(,) → Aextμ(,-t)と変換 

されるので,古典論との対応から要求されることです。
 

そこで,μ(,)-1=jμ(,-t)によって, 

μ(,)extμ(,) → jμ(,-t)extμ(,-t) 

が得られます。
 

そこで,は作用:(2,1)=∫12dt∫d3(,) 

次のように変換します。 

すなわち,(2,1)-1=∫12dt∫d3(,-t) 

=∫-t2-ttdt∫d3(,)=J(-t1,-t2)です。
 

(-t1,-t2)はJ(2,1)を時間のずらし(平行移動)だけ 

変えますが,時間のずらしは理論の1つの対称性変換です。 

それ故TL(,)-1(,-t).および. 

μ(,)-1=jμ(,-t)を満たすが存在することが, 

時間反転不変のための満足できる規準を与えます。
 

(15-2):(-t1,-t2) =∫-t2-ttdt∫d3(,) 

=∫12dt∫d3(,t-(1+t2))ですから, 

これはt→t-(1+t2)なる時間の平行移動です。
 

すなわち,(,t-(1+t2)) 

exp{i(1+t2)}(,)exp{i(1+t2)}であり, 

それ故,(-t1,-t2) 

exp{i(1+t2)}(2,1)exp{i(1+t2)}です。
 

したがって, 

[exp{i(1+t2)}](2,1)[exp{i(1+t2)}]-1 

=J(2,1)となり,[exp{i(1+t2)}]という 

時間反転と時間のずらしを組み合わせた変換が対称性変換 

となります。
 

しかし,以上の考察は私自身にも奇異に感じられます。
 

むしろ,次のように考えるのが伝統的場の理論であり,自然です。 

すなわち.は反線型な演算子であると考えます。

これは,(|α>+b|β>)=a|α>+b|β>,および, 

<α||β>=<α|UK|β> 

=<α||β>=<β|α>=<α|β> を意味します。
 

最後の等式は,実は,反ユニタリ性を実現するための物理的要請 

です。つまり,時間反転演算子はユニタリでなく-1です。
 

しかし,作用積分が時間反転の下で不変であるという要請は 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|12dt∫d3(,)|β> 

と表現されます。
 

すなわち,<α|(-t1,-t2)|β>=<α|(2,1)|β> 

です。
 

ところが,任意の<α{,|β>について< α||β>=<α|β> 

が成り立つという等式は, 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|TT-1(-t1,-t2)|β> 

=<α|-1(-t1,-t2)|β>* の成立を意味します。
 

他方,JはHermite演算子なので. 

<α|(2,1)|β>=<α|(2,1)|β>です。
 

よって,作用積分の不変性: 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|(2,1)|β>は, 

 <α|-1(-t1,-t2)|β>* =<α|(2,1)|β> 

と同値です。
 

それ故,-1(-t1,-t2)=J(2,1)です。
 

つまり,JがHermiteであることから,作用の不変性が 

-(-t1,-t2)=J(2,1)という形でなく, 

-1(-t1,-t2)=J(2,1),または 

-(2,1)-1=J(-t2,-t2)という形で表わされること 

がわかりました。したがって,こういう意味で 

TL(,)-1(,-t).および. 

μ(,)-1=jμ(,-t)を満たすが存在すれば理論 

が不変であることが保証されます。

 (15-2終わり※)
 

(15-3):量子論が,ある変換の下で不変であることは, 

状態ベクトルを位相を無視した射線(ray)=同値類と考えたとき, 

観測される物理量(observable):Oの行列要素のノルム(絶対津): 

|<α||β>{が変換の前後で不変なことが要求されるのみです。
 

したがって,変換で状態が,|α> → |α'>, |β> → |β'> 

と変わるとき,|<α'||β'>{|<α||β>{ さえ, 

満たされれば,<α'||β'>=<α||β>:つまり, 

ユニタリか?,<α'||β'>=<α||β>つまり, 

反ユニタリか?は問われません。
 

しかし,恒等変換;|α'>=|α,|β'>=|β> から 

連続的に移行できる連続変換対称性(proper symmmetry)では, 

行列要素の連続性から変換はユニタリであるべきで,
 

反ユニタリとなる可能性は,不連続変換対称性 

(Imprpoer symmetry)の変換の中にあるのみです。
 

もっとも,ここでは射線としての期待値や確率だけを実在 

と考える立場で状態の位相を無視しましたが,量子論の深層 

では,状態の位相は,"量子のもつれ(entanglement)"の1つ 

として意味を持ち,観測可能なAharanov-Bohm効果や,仮説 

ですが,Diracのモノポール理論における電荷や磁荷の量子化,
 

または,物質場の位相変換は謂わゆるゲージ変換という意味 

で重要であり,例えばFermi粒子の電磁相互作用では光子場 

の線積分がスピノル場の位相として働くとき,アノマリーに 

寄与したりしますから,単純に位相を無視するのが常に妥当 

とは限りませんが。。 

 (15-3終わり※)
 

さて,ここまでの章で,論じてきた様々な自由場について 

陽に作ることを考えます。
 

まず,電磁場(光子場)から始めます。
 

時間反転で外電磁場がAextμ(,) → Aextμ(,-t) 

と変換されるのと同じく,(,)-1=-(.-t) 

であるべきです。
 

この変換は,()=-(1/4)μνμν 

=-(1/2)(νμ-∂μν)νμ 

(1/2)(22)で与えられる,Coulombゲージ(縦波ゲージ) 

Maxwellの自由lagrangian密度に対して, 

TL(,)-1(,-t) を満足します。
 

そして因子Kがあるおかげで,同時刻交換関係: 

[μ(,),ν(,)]0,,[πk(,),πj(,)]0, 

 [πk(,),0(,)]0,および, 

 [πk(,),j(,)]iδtrijδ3(x-) 

が不変に保たれます。 

( (δtrijδ3(x-)=∫d3(2π)-3exp{i()} 

×(δij-kij/2) です。)
 

(15-4): [πk(,),j(,)]iδtrijδ3(x-) 

のみを考察します。
 

まず,()=-(1/4)μνμν 

=-(1/2)(νμ-∂μν)νμ 

(1/2)(22)より, 

πk=∂/(0)=-∂0-∂k0 です。
 

そして,k(,)-1,=-Ak(,-t). 

0(,)-1,=A0(,-t) なので, 

(0)(,)-1=∂0(,-t). 

(0)(,)-1=∂0(,-t),
 

故に,πk(,)-1,=πk(,-t)です。
 

したがって, 

<α|[πk(,),j(,)]|β>は時間反転後に, 

<α|[πk(,),j(,)]|β>に変換されますが,
 

これは,<α|[πk(,),j(,)]|β> 

=<α|-1 [πk(,),j(,)]|β> 

<α|[-1πk(,),-1j(,)]|β> 

=<α|[πk(,-t), j(,-t)]|β>となり.
 

結局,<α|[πk(,),j(,)]|β> 

iδtrijδ3(x-)<α|β>を得ます。
 

<α|[πk(,),j(,)]|β> 

iδtrijδ3(x-)<α|β>と比較すると<α|β> 

<α|β>=<β|α> 

に変わるという違いはありますが交換関係は 

保持されます。  (注15-4終わり※)
 

光子場の運動量空間でのFourier展開: 

(,)=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12[ε(,λ) 

{^(,λ)exp(iωkt+ikx)

+a^(,λ)exp(iωkt-i)}] 

KUを作用させると,
 

(,)-1=-(.-t), 

∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12[ε(,λ) 

{^(,λ)-1exp(iωkt-ikx) 

^(,λ)-1exp(iωkt+i)}]
 

=-∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12[ε(,λ) 

{^(,λ)exp(iωkt+ikx) 

+a^(,λ)exp(iωkt-i)}]
 

=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12[ε(,λ) 

{^(,λ)exp(iωkt-ikx) 

+a^(,λ)exp(iωkt+i)}] です。
 

この展開では,自由光子の進行方向に垂直な縦波光子の偏極 

(偏光)ε(,1) -ε(,1),ε(,2)ε(,2) 

を満たすように選択するという規約が採用されているため,
 

^(,1)-1=a^(,1), ^(,2)-1=-a^(,2) 

が得られます。
 

スカラー場のパリティ演算子:の陽な形の導出などを 

参照すれば,電磁場の時間反転:KUについて, 

exp[(iπ/2)∫d3 

{^(,1)^(,1)-a^(,1)^(,1) 

+a^(,2)^(,2)+a^(,2)^(,2)}] 

を得ます。
 

今日はここで終わります。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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