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2017年10月28日 (土)

場の量子論第Ⅱ部(16)(時間反転2)

 まずはハロウィンも近いし 元気だしていこう。。。

オギノメチャンもアラキ師匠もビックリ!!

 

 

 さて,場の量子論第Ⅱ部,時間反転の続きです。
 

自由なHermiteスカラー場(実スカラー場):φに対しては, 

TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)を満足するという 

時間反転:Tの規準は次のようなの選択で満たされます。 

すなわち.φ(,)-1=±φ(,-t) です。
 

(16-1):(,)(1/2)(μφ∂μφ-m2φ2)より, 

φ(,)-1=±φ(,-t)なら, 

TL(,)-1 

(1/2)[{-∂0φ(,-t)}{0φ(,-t)} 

{∇φ(,-t)}2-m2φφ(,-t)2](,-t)
 

また,電磁カレントはjμ0 なので  

μ(,)-1=jμ(,-t)の成立は自明です。
 

φが実スカラー場でなく,荷電スカラー場(複素場)なら, 

(,)=:∂μφμφ-m2φφ:であり, 

μ(,)i{φμφ-(μφ)φ} です。
 

そこで,φ(,)-1=±φ(,-t)なら, 

複号同順でφ(,)-1=±φ(,-t)でもあり, 

確かに,TL(,)-1(,-t)が満足されます。
 

また,が反ユニタリで複素共役操作を含むため,. 

0(,)-1=j0(,-t),および, 

k(,)-1=-jk(,-t)が成立し 

μ(,)-1=jμ(,-t)も満たされます。 

(16-1終わり※)
 

π中間子場を3つの実成分から成る φ[φ1,φ2,φ3]で表わす 

,π中間子場は, 

φ(,)(1/2){φ1(,)iφ2(,)}, 

π中間子場は, 

φ*(,)(1/2){φ1(,)iφ2(,)} 

ですから,π0中間子:φ3について 

φ3(,)-1=±φ3(,-t)のとき,荷電πについても 

複号同順で,φ(,)-1=±φ(,-t),かつ, 

φ(,)-1=±φ(,-t)となるためには, 

φ1(,)-1=±φ(,-t),および, 

φ2(,)-1=-{±φ2(,-t)}となる必要が 

あります。
 

そこで,電磁場の時間反転:KUについて, 

^(,1)-1=a^(,1),^(,2)-1=-a^(,2) 

から,exp[(iπ/2)∫d3 

{^(,1)^(,1)-a^(,1)^(,1) 

+a^(,2)^(,2)+a^(,2)^(,2)}] 

を得たのと同様にして,
 

π中間子場でも,KUとして, 

exp[(±iπ/2)∫d3 

{1^()1^()-a1^()1^() 

+a2^()2^()+a2^()2^() 

+a3^()3^()+a3^()3^()}] 

を得ることがわかります。
 

次に,Dirac粒子場の論議に入ろうと思います。
 

しかし,ここでまず,以前の1粒子量子力学(Mechanics)の第5 

の空孔理論における時間反転の話を参照しようとしましたが,
 

本ブログでは, 

5章の§5.2荷電共役変換(Charge conjugation)について, 

201112/20の過去記事:Diracの空孔理論(2)(荷電共役) 

で紹介したのを最後に空孔理論の記事は中途半端に終わって 

いて,時間反転の項目については言及せずじまいでした。
 

そこで,取りあえず続きの§5.3真空偏極(Vacuum Polalization) 

から.一旦,1粒子空孔理論のおさらいに脱線しようと思います。
 

Diracの空孔理論(3
 

§5.3真空偏極(Vacuum Polalization) 

空孔理論は,負エネルギーの困難を除いた一方で,克服さるべき, 

新しい障害と,実験によって証明さるべき,新しい物理学の予言 

に至る道へと導きました。
 

例えば,電子の電荷の定義や,2つの電荷間の相互作用による真空の 

影響を考えます。正エネルギー電子は「負エネルギーの海」 

の電子たちから,静電的反発を受けます。
 

このため正エネルギー電子は近傍の真空を偏極させ,電子の実質的 

電荷密度は,素朴なそれ:ρ0()に偏極による分極電荷密度ρp() 

(真空に相対的に観測される量)をプラスしたものになります。
 

これらは次の図5.3に示すような空間分布をしています。
 

マクロな場,または遠方のテスト電荷が検知する電子の電荷は, 

∫d3{ρ0()+ρp()}=e です。 

このeが電子の謂わゆる"物理的電荷(physical charge)"です。
 

しかし,距離:r<Rでのテスト電荷に対しては,見かけ電荷は, 

r<R3{ρ0()+ρp()}であり,これはeより負となり, 

R → 0の極限では∫d3ρ0()=e0 

つまり,電子の"裸の電荷(bare charge)"に等しいです。 

間違いやすいですが,0,<eであり,|0|>||です。
 

この事実は,実際に水素原子のスペクトルでも観測されます。
 

この効果で電子の軌道角運動量l=0 のs準位はl≠0 の準位 

に比べて多く引き下げられます。 

何故なら,l=0 の波動関数は,マイナス電荷の値が大きくなる 

ため,相対的に陽子(水素原子核)に引き寄せられるからです。
 

この真空偏極の効果の具体的な評価計算は,テキストの第8章, 

(ブログ記事では「量子電磁力学の輻射補正」)でなされますが, 

Lamb-shift,わずかに減じる効果になることがわかります。
 

そこでは,また,孤立電子の"裸の電荷"の値と遠方での観測値 

がどのように結び付くのか?という問題を取り上げています。
 

もう1つの疑問は空孔理論そのものから生じるものです。 

空孔理論は,DiracによるDirac-seaの仮説によるものですが 

「真空の海の無限大の負電荷とは,一体何を意味するのか?」 

という疑問があります。
 

今のところは,この疑問の解釈は回避して,その仮説に基づく 

分布から,電子場が示す特別な方向は存在しないことに着目 

します。この分布には真空偏極による不均等性のみが観測 

されます。
 

§5.4時間反転とその他の対称性 

(TimeRiversal and Other Symmetrries)
 

さて,パリティ(空間反転)と時間反転に移ります。 

これは理論の連続Lorentz変換(proper transformation) 

論議に含まれない対称性操作)(Improper symmetry)です。
 

相互作用のゲージ不変性という追加対称性の存在は電磁場 

との極小相互作用変換の形:μ-eAμから明らかです。
 

パリティ変換については,既に,Pψ(,)=ψ’(,) 

exp(iφ)γ0ψ(,)としたとき,ψ’(,)が容易に 

空間反転された波動関数と解釈されることを見ました。
 

平面波解のパリティ変換は運動量を逆向きに変えます。 

しかし,古典的に期待されるように,スピンは変えません。
 

鏡映は単に鏡面に垂直な座標のみ逆にしますが,これは空間 

反転の後に垂直軸のまわりに180度回転すると得られ,回転 

は連続Lorentz変換にふくまれますから不連続変換としては 

パリテイと同じ対称性と見なされます。
 

次に時間反転に移ります。
 

粒子運動の物理的内容は,その波動関数ψ()で記述される 

状態の上での観測結果の集合の記録に用いられる運動像の 

フィルムによって描写されると考えられます。
 

このフィルムを逆向きに走らせる動画が物理的に実現可能な 

観測現象を記述しているなら,時間反転の下で不変といえます。
 

この時間反転対称性の解釈は,時刻tをt'=-tに変えたとき, 

同一の法則を持ったDirac方程式の形を再生できる変換が実行 

可能なら,理論の不変性が保証されると考えられます。
 

この望ましい時間反転変換を作るため,電磁場;μ() 

存在する場合,電荷がe0で質量がmの電子のDirac方程式  

(i-e-m)ψ()0,Hamiltonianを含む形の 

Schroedinger型方程式で表現します。
 

これは,i∂ψ(,)/∂t=Hψ 

{α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ(,) 

と書けます。
't'=-tとする時間反転で状態を変換する演算子 

と書き,引数を省略して,スピノル波動関数が. 

ψ() → ψ'(t')ψ()と変換されるとすれば,
 

これを i∂ψ/∂t=Hψに,ψ=-1ψ'(t=-t') 

代入して, 

(i-1)∂ψ'(t')/∂t'=--1ψ'(t') 

が得られます。
 

そこで,時間反転で方程式の形が不変であるためには 

()-1=-H(t'),i-1=-i,どちらか1 

が成立する必要があります。
 

t'=-tの下でのHの挙動を調べるため,スピノル:ψと相互 

作用する電磁場Aμの時間反転:t'=-tに対する挙動を見る必要 

があります。一般に時間の向きが逆転すると,電磁カレントが符号 

を変えるため,電磁ベクトルポテンシャルの変換は, 

(,) '(,t')=-A(,t') となることが 

要求されます。
 

一方,スカラーポテンシャルは,電荷によって生成されるので, 

Φ(,) → Φ'(,t')=Φ(,) です。
 

以上から,t'=-tの下での電磁場の変換は, 

μ(,) → A'μ(,t')=Aμ(,t')です。
 

これらは引数を省略すると,() → A'(t')=-()  

Φ() → Φ'(t')=Φ() と書けます。
 

ψ() →ψ'(t')ψ()なる変換は,正則行列:Tに 

よる,ψ'(t')=Tψ(),or ψ'α(t')=Tαβψβ()  

なる変換に同値であるとします。
 

そうして,まず,基本方程式: 

i∂ψ/∂t=Hψ={α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ 

の複素共役を取ると, 

i∂ψ/∂t=Hψ{α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ 

です。
 

これに,左からTを掛けてt'=-t,ψ'(t')=Tψ() 

を用いれば,i∂ψ'(t')/∂t'=(THT-1)ψ'(t') 

{(-Tα-1)(i∇-e)+Tβ-1m+eΦ}ψ'(t') 

を得ます。
 

それ故,方程式の形が不変なら.TH()-1­=H(t'),および, 

-Tα-1α, Tβ-1=β となることが必要です。
 

まず,テキストの表示では,β=γ0でβ=βですから,Tが 

どんな正則行列でもTβ-1=βは自動的に成立します。
 

そして.T=-iα1α3iγ1γ3なら,-Tα-1α,も成立 

します。
 

そういう意味で,この複素共役を取って正則行列:Tを掛ける 

という操作:()-1=H(t'),かつ,i-1=-i 

満たす演算子に対応しています。
 

変換:が古典的な時間反転を意味するものに対応することを 

見るために,t'=-t,ψ'(t')=Tψ().および, 

T=-iα1α3iγ1γ3を正エネルギー粒子の平面波解に適用 

してみます。
 

運動量が,スピンがの平面波成分は.一般解:ψ(,) 

射影演算子:(+m)/(2),(1+γ5)/2を掛けると 

得られます。
 

そして,実際に,T=iγ1γ3として操作:を適用すると, 

{(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ(,) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1ψ'(,t') 

{('+m)/(2)}{(1+γ5s')/2} を得ます。
 

ただし,p'=(0,),s'=(0,)です。
 

このことから,運動量が,スピンがの自由粒子解は時間反転 

では,空間成分ベクトル,が逆向きに移されることになります。
 

この操作はWignerの時間反転として知られ,1932年に初めて 

導入されました。
 

空間座標,および,時間座標の逆転:および,は理論を不変 

にする操作なので,望むなら陽電子の波動関数を作るのにも, 

それらの操作を含めた方がいい,と考えられます。
 

,,をまとめると, 

ψ(,t)=ψ'(,)exp(iφP)γ0ψ(,) 

ψ(,t)=ψ'(,)=Cγ0ψ(,t)=Cψ~(,t) 

C=iγ2γ0,および, 

ψ(,t)=ψ'(,-t)=Tψ(,) 

T=iγ1γ3 です。
 

これらの性質から, 

ψPCT(,-t)PCTψ(,) 

Cγ0(Tψ(,))exp(iφ0)γ0Cγ0*ψ(,), 

ですが,C=iγ2γ0,=-T=-iγ1γ3より, 

結局,ψPCT(,-t)iexp(iφ0)γ5ψ(,)
 

こうして,PCT変換された波動関数は,因子:iexp(iφ0)γ5 

掛けられ,空間,時間の両方での後方(=空間逆向き,かつ,過去) 

に向かって動く電子波動関数に対応するという簡単な関係が 

見出されました。(PCT定理)
 

そこで,(-pμ,μ)で特徴付けられる負エメルギー自由電子 

の運動量・スピンの固有状態に対しては, 

ψPCT(-x) 

iexp(iφ0)γ5(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ() 

­(+m)/(2)}{(1-γ5)/2}ψPCT(-x)
 

これは単に,スピンsの向きが異なるのみで,陽電子波動関数 

,iexp(iφ0)γ5を掛けて時空の逆向きに動く電子の波動関数 

と見なすことができることを示しています。
 

電磁力が存在する場合の任意の電子に対しては,下のような 

負エネルギー固有値方程式にこのPCT変換を行うことで, 

陽にこの解釈を証明できます。
 

すなわち,負エネルギー電子の固有値方程式は: 

α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ=-Eψ です。
 

空間反転,かつ,時間反転:x'μ=―xμの下では, 

A'μ(x')=Aμ()であり ∇'=-∇なので, 

α(i∇'-e')+βm+eΦ'}ψ=-Eψ です。
 

ψにPCT変換を行うとiexp(iφ0)γ5を掛ける操作だけ 

なので,α(i∇'+e')+βm-eΦ'}ψPCT(x') 

=+EψPCT(x') を得ます。
 

正エネルギー陽電子が負エネルギー電子が時空で逆向き 

に走るものとの解釈は,陽電子理論のStickekberg-Fenman 

描像の基礎です。
 

これは,次章の伝播関数の理論(Propagator Theory)で散乱理論 

を展開する際に,しばしば用いられる解釈です。 

そこでは,この考えが大きな利点をもたらすことがわかります。
 

結論として,電子の電磁場との相互作用の構造は,電子の 

量子電磁力学の古典的,非相対論的極限としての経験で示唆 

されていたことに注意する必要があります。ここで論じてきた 

対称性の存在は相互作用の形に依存しています。
 

例えば,陽子と中性子に対して論じられる第4章の非相対論近似 

で例示した型の相互作用は,Dirac方程式にσμνμνψの形の 

項を付け加えますが,この項が存在することは本章の対称性には 

何の影響も及ぼしません。
 

他のμ粒子,ニュートリノのようなスピンが1/2の粒子を他の 

よく知られた相互作用に拡張する際にも,こうしたTCP 

対称性が依然として存在すると仮定するのが,至極当然です。
 

しかし,こうした対称性が,現実に実験によって証明さるべき 

仮定であることを認識し,β崩壊のような相互作用が 

対称性を破ることを指摘した,LeeYangの偉大な貢献 

がありました。
 

しかし,操作:TCPの下での対称性は,連続Lorentz不変性 

および,通常のスピンと統計の関係という,はるかに弱い仮定 

によって保証されています。(Diracの空孔理論(3終わり※)
 

これでMechanicsの第5章は終わりなので, 

今日はここまでにします。
 

(参考文献): 

1.J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quabtun Mechanics” (McGrawHill) 

2..J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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