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2017年10月31日 (火)

場の量子論第Ⅱ部(17)(時間反転3)

   Happy ハロウィン!!

 場の量子論第Ⅱ部,時間反転の続きです。

1粒子量子力学理論に脱線しましたが,改めて場の理論における 

Dirac粒子の時間反転の論議に戻ります。.
 

Dirac場については,時間反転の演算子:として次のような形 

のものを求めます。 

すなわち,ある正則行列:T=(αβ)について, 

ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t),or  

ψ(,)-1=Tψ(,-t) と書けるとします。
 

この変換:.時間反転不変性を満たすためには, 

条件:TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)が満足され, 

反交換関係:{ψα(,),ψ~β(,)}=δ3()δαβ, 

および,{ψα(,),ψβ(,)}0, 

{ψ~α(,),ψ~β(,)}0 を不変に保つ 

必要があります。
 

ここで,前記事の1粒子量子力学(空孔理論)の時間反転変換として, 

見出された行列:Tが,上記のψ(,)-1=Tψ(,-t) 

を与えるTと同じであれば.上の時間反転不変の条件が全て満足 

されることが,容易に証明できます。
 

すなわち,1粒子と同じく,T=iγ1γ3とします。 

このとき,Tγμ-1(γμ)(γμ)であり, 

T=T=T-1=-T* です。
 

そして,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t)より. 

T=KUとして,から複素共役(Hermite共役): 

を分離すれば,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

です。
 

故に,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

ψα(,)γ0αλ-1=Tαβψβ(,-t)γ0αλ 

ψ~λ(,)-1=ψβ(,-t)αβγ0αλ 

=ψσ(,-t)γ0σβαβγ0αλ です。
 

T=iγ1γ3 とすれば, 

=-iγ1γ3(T‘)=Tなので,αβ=Tβα 

そこでγ0σβαβγ0αλ=γ0σββαγ0αλ=Tσλ 

γ0(iγ1γ3)γ0iγ1γ3より,結局, 

γ0σβαβγ0αλ=Tσλ です。
 

したがって,ψ~λ(,)-1=ψσ(,-t)σλ 

ψ~λ(,)-1=ψ(,-t)T=ψ(,-t)-1 

を得ます。
 

そこで,自由Dirac場のLagrangian: 

(,t=ψ~(,)(iγμμ-m)ψ(,) 

=ψ~(,)(iγ00iγ-m)ψ(,)に対して, 

TL(,)-1 

=ψ~(,-t)-1(iγ00iγ-m)Tψ(,-t) 

=ψ~(,-t)(iγ00iγ-m)ψ(,-t) 

=ψ~(,t')(iγμ∂'μ-m)ψ(,t') 

(,t’)(,-t) が成立します。
 

また,電磁カレントは正規順序で, 

μ(.)=:ψ~(.)γμψ(.):で定義されます。 

これは,詳しくは, 

μ(.)=ψ~(.)γμψ(.)-<0|ψ~γμψ|0>: 

=ψ(.)γ0γμψ(.)-<0|ψ~γμψ|0> です。
 

そこで,μ(,)-1 

{Tψ(,-t)}Tγ0γμ-1Tψ(.-t) 

-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=ψ(,-t)-1(γ0γμ)* Tψ(.-t) 

-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=ψ~(.-t)γμψ(.-t)-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=jμ(.-t) です。
 

よって,μ(,)-1=jμ(,-t)の成立 

も示されました。
 

同時刻の正準反交換関係の保存も示せますが,

簡単なので証明は省略します。
 

しかし,この変換の性質は1粒子理論と同じではありません。
 

1粒子理論では,スピノル波動関数の複素共役を取れ,という 

指令の下で,ψ(,) → Tψ(,-t) としたのでした。
 

しかし,場理論では,場の演算子に対する類似の変換: 

ψ(,) → Tψ(,-t)は受け容れることができません。 

何故なら,これは例えば静止した1電子状態を1陽電子状態に 

変換してしまうからです。 

(※例えばb^(,)|0> → d^(,)|0)
 

の陽な形を得るために,運動量空間に移ります。

Dirac電子場のFourier展開は, 

ψ(,)=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)(,)exp(ipt+ipx) 

+d^(,)(,)exp(ipt-ipx)}です。
 

これに時間反転;KUの変換を適用するとき, 

ψ(,)-1=Tψ(,-t)という式は,
 

ψ(,)-1=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)-1(,)exp(ipt-ipx) 

^(,)-1(,)exp(ipt+ipx)}
 

=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)Tu(,)exp(ipt-ipx) 

+d^(,)Tv(,)exp(ipt+ipx)} 

なることを意味します。
 

ところが1粒子理論での時間反転の議論から 

次式が導かれます。 

Tu(,)=u(,-s)exp{iα(,)}, 

Tv(,)=v(,-s)exp{iα(,)}, です。 

ただし,α(,),α(,)はスピン状態に依存する 

位相因子です。
 

(17-1):前記事からの引用:します。 

1粒子波動関数ψ(,t)に操作:を適用するとき 

=-tでψ(,)= ψ'(,t')=Tψ(,t'), 

となり,T=iγ1γ3ですから,
 

{(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ(,t) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1ψ'(,t') 

{('+m)/(2)}{(1+γ5')/2}ψ'(,t') です。 

ただし,p'=(0,),s'=(0,)です。
 

それ故,(,){(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}(,) 

を満たすu(,)に対して, 

(,)=Tu(,) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1(,) 

{('+m)/(2)}{(1+γ5')/2}(,) です。
 

そこでTu(,)=cu(―p,-)  

(,)=c(-p,)  

=-iγ1γ3 =-Tより, 

Tu(,)=-c(,),
 

同様に,Tv(,)=-d(,) 

||||1です。 (17-1終わり※)
 

これらに再びTを適用しT21を用いると, 

α±(,)=π+α±(,―s)(mod(2π)) 

であることがわかります。
 

(17-2):何故なら, 

(,)=Tu(,-s)exp{iα(,)} 

=-T(,-s)exp{iα(,)} 

=-u(,) exp{iα(,-s)+α(,)}  

(,)=Tv(,-s)exp{iα(,)} 

=-T(,-s)exp{iα(,)} 

=-v(,) exp{iα(,-s)+α(,)} 

です。 (注17-2終わり※)
 

したがって, 

^(,)-1=-b^(,-s)exp{iα(,)}, 

^(,)-1=-d^(,-s)exp{iα(,)} 

なら,ψ(,)-1=Tψ(,-t) が満足されます。
 

,これを2つのユニタリ変換の積に分割する方法で最も 

容易に見出されます。すなわち,21とします。
 

1は位相因子を除去するための変換です。 

1^(,)11exp{iα(,)}^(,), 

1^(,)11exp{iα(,)}^(,)
 

これは,明らかに, 

1exp[i∫d3Σ±s{α(,)^(,)^(,) 

-α(,)^(,)^(,)}] 

とすれば満たされます。
 

一方,2,2^(,)21= -b^(,―s), 

2^(,)21= -d^(,―s)  

を満たすユニタリ変換です。
 

これは,前にパリティ演算子:をつくったのと同じ方法で, 

2exp[i(π/2)∫d3Σ±s 

{^(,)^(,)+b^(,)^(,) 

-d^(,)^(,)-d^(,)^(,)}]  

と書けることがわかります。
 

さて,こうして作った21, 

^(,)-1=-b^(,-s)exp{iα(,)}, 

^(,)-1=-d^(,-s)exp{iα(,)} 

を満たしますが,そこでエネルギーEp(2+m2)1/2.運動量, 

スピンを持つ1自由電子の時間反転状態は,同じ正エネルギーを 

持つことを除けば,運動量もスピンも逆向きのEp.,, 

1自由電子状態になります。
 

これは,波動関数による表現では, 

ψp..(,)=<0|ψ(,)|1電子状態;, 

=<0|ψ(,)|1電子状態;, 

=<0|UKψ(,)|1電子状態;, 

=<0|ψ(,)-1|( 1電子状態;,) 

=-exp{iα(.)} 

0|ψ(.-t)| 1電子状態;-, 

exp{iα(.)}Tψp.-.-(,-t)  です。
 

これは,1粒子理論におけるように,時間反転の波動関数 

が互いに複素共役の関係になることを示しています。
 

自由場でなく,相互作用する場のケースでは,既に作った演算子 

を借りてきます。もっとも,t=0における場の演算子は展開 

のみを得るわけですが,交換関係は自由場と変わりませんから, 

その形の自由場で見出せるあらゆる形式を保持して0を作る 

ことができます。
 

0ψα(,0)0-1=Tαβψβ(,0) 

 0φ(,0)0-1=±φ(,0) 

 0φd(,0)0-1=-{±φd(,0)} 

0(,0)0-1=-(,0) 

0d(,0)0-1d (,0)} 

 (※ただし,φd=∂0φ=∂φ/∂t,d=∂0=∂/∂t 

です。)
 

0はa^,,^.^.をt=0で評価される以下に列挙した 

展開式の展開係数で置き換えて作られたのと同じ形とします。
 

ψ(,0)=∫d3(/p)1/2Σ±s 

{^(,)~(,) exp(ipx) 

+d^(,)(,)exp(ipx)}
 

ψ(,0)=∫d3(/p)1/2Σ±s 

{^(,)~(,)γ0 exp(ipx) 

+d^(,)~(,)γ0 exp(ipx)}.
 

(,0)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2Σλ=12ε(,λ) 

{^(,λ) exp(ikx)+a^(,λ)exp(ikx)}
 

d(,0)(i)∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2ωΣλ=12ε(,λ) 

{^(,λ) exp(ikx)-a^(,λ)exp(ikx)}
 

(※Ep(2+m2)1/2,ω||) です。
 

また,φ(,0)

=∫d3{^()(,0)+a^()k(,0)} 

φd(,0)

(i)∫d3ω{^()(,0)

-a^()k(,0)} 

k(,0)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(i), 

k(,0)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(i),

ω(2+μ2)1/2 
 

そして,任意の時刻tにおけるを形成するため,  

exp(iHt)0 exp(iHt)と書けば,  

例えばψα(,0)-1  

exp(iHt)0ψα(,0)0-1 exp(iHt)  

=Tαβexp(iHt)ψβ(,0)exp(iHt)  

=Tαβψβ(,-t)であり,これは求めるスピノルの  

時間反転変換を意味します。
 

このように作られた, 

条件:TL(,)-1(,-t).  

および.μ(,)-1=jμ(,-t)を満たし, 

[,]0 のケースには理論の対象操作であり0 

に単純化されます。
 

これで時間反転の項目は終わりなので今日はここまでです。
 

次回は次節の「TCP定理」を論じる予定です。 

β崩壊のような弱い相互作用ではやCの破れが見られます 

,TCPという対称性は,相互作用形のより弱い仮定の下 

で成立するということが,定理として存在しています。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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